説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】小型で、しかも基板表面を良好に処理することができる基板処理装置および基板処理方法を提供する。
【解決手段】乾燥処理を実行する前に処理空間162の湿度を低下させており、乾燥処理を低湿度雰囲気で行っているため、基板乾燥により基板表面にウォーターマーク等が発生するのを効果的に抑えることができる。また、乾燥性能を高めるために置換処理を行っているが、湿度が低下した処理空間でIPA液が蒸発するため、IPA乾燥時に発生する気化熱に起因する乾燥不良を効果的に抑えて基板乾燥を良好に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板に処理液を供給して処理液により基板を湿式処理した後に基板を乾燥する基板処理装置および基板処理方法に関するものである。なお、処理対象となる基板には、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(電界放出ディスプレイ:Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板等が含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの電子部品の製造工程では、薬液による薬液処理および純水などのリンス液によるリンス処理が行われた後、基板表面に付着するリンス液を除去すべく、乾燥処理が実行される。例えば特許文献1に記載の装置は、基板を水平姿勢にて保持するスピンベースと、スピンベースを回転させるモータと、スピンベースに対向して設けられた雰囲気遮断板と、雰囲気遮断板を回転させるモータと、スピンベースに保持された基板Wの周囲を取り囲むカップとを備えており、次のようにして薬液処理、リンス処理および乾燥処理を実行する。この装置では、搬送ロボットによって未処理の基板がスピンベースに渡されて保持される。次に、雰囲気遮断板がスピンベースに近接して基板の上方を覆うとともに、カップがスピンベースおよび雰囲気遮断板の周囲を囲むように位置する。その後、スピンベースおよび雰囲気遮断板を回転しながら基板に対して薬液による薬液処理および純水によるリンス処理が行われる。そして、純水によるリンス処理が終了した後、基板をそのまま回転させ続けて基板に付着した水滴を遠心力によって振り切る(乾燥処理)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−273360号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したように従来技術では、雰囲気遮断板をスピンベースに近接させた状態のままスピンベースおよび雰囲気遮断板が回転して基板の乾燥処理を行っているため、雰囲気遮断板の駆動用モータや該モータの駆動力を伝達させる駆動力伝達機構などが必要となり、これが基板処理装置の製造コストの増大要因となっていた。また、上記基板処理装置を装備する基板処理システムのプットプリントを低減させるために、基板処理装置の積層配置が提案されているが、雰囲気遮断板の駆動用モータや駆動力伝達機構の存在がそれを阻害する要因のひとつとなっていた。というのも、雰囲気遮断板の駆動用モータや駆動力伝達機構は雰囲気遮断板の上方位置に配設せざるを得ず、その分だけ装置が上下方向に大型化する傾向にあったためである。
【0005】
そこで、雰囲気遮断板を回転させることなく基板処理を行うことも検討されている。しかしながら、雰囲気遮断板を静止したまま基板処理すると、基板表面にウォーターマーク等が発生してしまい、基板を良好に処理することができなかった。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、小型で、しかも基板表面を良好に処理することができる基板処理装置および基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかる基板処理装置は、水平姿勢で回転する基板の周囲をカップで取り囲んで処理空間を形成するとともに、処理空間を排気しながら、基板に処理液を供給して処理液により基板を湿式処理した後に基板を乾燥する基板処理装置であって、上記目的を達成するため、処理空間に乾燥気体を供給する気体供給手段と、処理空間を開放状態と半密閉状態に切り換える切換手段と、処理空間の排気を調整する排気調整手段とを備え、湿式処理の際には切換手段が処理空間を開放状態に切り換える一方、湿式処理後かつ乾燥処理前には切換手段が処理空間を半密閉状態に切り換え、気体供給手段が乾燥気体を処理空間に供給するとともに排気調整手段が処理空間の排気を湿式処理時よりも抑えて処理空間内の湿度を低下させることを特徴としている。
【0008】
また、この発明にかかる基板処理方法は、上記目的を達成するため、回転する基板の周囲をカップで取り囲んで処理空間を形成するとともに、開放状態の処理空間を排気しながら基板に処理液を供給して処理液により基板を湿式処理する湿式処理工程と、湿式処理工程後に処理空間を半密閉状態に切り換え、半密閉状態の処理空間に乾燥気体を供給しながら処理空間の排気を湿式処理時よりも抑えて処理空間内の湿度を低下させる湿度低下工程と、湿度低下工程後に基板を乾燥させる乾燥工程とを備えたことを特徴としている。
【0009】
このように構成された発明(基板処理装置および基板処理方法)では、カップにより取り囲まれた処理空間内で基板に処理液が供給されて処理液による湿式処理が基板に施される。この湿式処理に際しては、処理空間は開放状態で排気されているため、湿式処理時に処理空間内で発生する処理液雰囲気が効率よく処理空間から排出される。また、この湿式処理後で、かつ乾燥処理の前に、処理空間が開放状態から半密閉状態に切り換えられる。そして、その半密閉状態の処理空間に乾燥気体が供給されるとともに、処理空間の排気を湿式処理時よりも抑えられている。このため処理空間内の湿度が効率よく低下し、その湿度低下処理後に乾燥処理を実行することで基板表面でのウォーターマーク等の発生が抑制されつつ基板が乾燥される。なお、乾燥気体としては、相対湿度は10%以下のものを採用するのが望ましい。
【0010】
また、乾燥性能を高めるために、湿式処理後かつ乾燥処理前に基板に低表面張力液を供給して基板に付着している処理液を低表面張力液に置換してもよい。このような置換処理を行う場合には後述するように低表面張力液の乾燥時に発生する気化熱に起因して乾燥不良を起こしやすくなるが、乾燥処理前に湿度低下処理を施すことで乾燥不良を効果的に抑制することができる。
【0011】
また、湿式処理中に処理空間に向けて乾燥気体を供給するように構成してもよく、これによって湿式処理中に発生する処理液のミストが処理空間から上方に飛散するのを抑制することができ、カップ上方に配置される構成部品が上記ミストにより汚染されるのが効果的に防止される。
【0012】
また、切換手段の構成については任意であるが、次のような態様を採用することができる。すなわち、第1態様として、開口部と対向する対向面を有するとともにカップの上方位置で上下方向に移動自在に設けられた遮断部材と、遮断部材を上下方向に昇降移動させる遮断部材昇降機構とを備えた切換手段を用いることができ、その切換手段は、遮断部材を開口部に近接移動させることで開口部を対向面で覆って処理空間を半密閉状態に切り換える一方、遮断部材を開口部から上方に離間移動させて処理空間を開放状態に切り換える。このように構成された切換手段を採用した場合には。対向面に複数の貫通孔を形成し、気体供給手段から供給される乾燥気体を複数の貫通孔を介して処理空間に吐出するように構成してもよい。
【0013】
また、切換手段の第2態様として、開口部に対応した筒状形状を有するとともに処理空間に沿って上下方向に昇降自在な筒状部材と、筒状部材を上下方向に昇降移動させる筒状部材昇降機構とを備えた切換手段を用いることができ、その切換手段は、筒状部材を上昇移動させることで筒状部材の上端部を気体供給手段に近接または接続させて処理空間を半密閉状態に切り換える一方、筒状部材を気体供給手段から下方に離間移動させて処理空間を開放状態に切り換える。
【0014】
また、切換手段の第3態様として、開口部に対応した蛇腹形状を有するとともに上端部が気体供給手段に接続固定されたまま処理空間に沿って上下方向に伸縮自在な蛇腹部材と、蛇腹部材を上下方向に伸縮させる伸縮機構とを備えた切換手段を用いることができ、その切換手段は、蛇腹部材を下方に伸張させることで蛇腹部材の下端部を開口部に近接または接続させて処理空間を半密閉状態に切り換える一方、下端部を開口部から上方に収縮させて処理空間を開放状態に切り換える。
【0015】
さらに、排気調整手段として、排気管よりも細い口径を有するとともに排気管から分岐して再び排気管に連通されたバイパス配管と、バイパス配管が排気管から分岐する分岐位置とバイパス配管が排気管に連通する連通位置との間で排気管に介挿された開閉弁とを備えたものを用いてもよい。そして、湿式処理時には開閉弁を開くことで比較的大きな排気量で処理空間を排気することができ、湿式処理時に処理空間内で発生する処理液雰囲気が効率よく処理空間から排出される。一方、湿度低下処理時には開閉弁を閉じて処理空間の排気量を湿式処理時よりも抑えることで処理空間の湿度を短時間で低下させることができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、湿式処理後かつ乾燥処理前に、半密閉状態の処理空間に乾燥気体を供給するとともに処理空間の排気を湿式処理時よりも抑えて処理空間内の湿度を低下させているので、乾燥処理を良好に行うことができる。また、雰囲気遮断板を回転させる必要がなくなり、上下方向における装置サイズを小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は本発明を好適に適用することのできる基板処理システムを示す図である。より詳しくは、図1(a)は基板処理システムの上面図であり、図1(b)は基板処理システムの側面図である。この基板処理システムは、半導体ウエハ等の円盤状の基板Wに対して処理液や処理ガスなどによる処理を施すための枚葉式の基板処理装置としての処理ユニットを複数備える処理システムである。この基板処理システムは、基板Wに対して処理を施す基板処理部PPと、この基板処理部PPに結合されたインデクサ部IDと、処理流体(液体または気体)の供給/排出のための構成を収容した処理流体ボックス11,12とを備えている。
【0018】
インデクサ部IDは、基板Wを収容するためのカセットC(複数の基板Wを密閉した状態で収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)、SMIF(Standard
Mechanical Interface)ポッド、OC(Open Cassette)など)を複数個保持することができるカセット保持部21と、このカセット保持部21に保持されたカセットCにアクセスして、未処理の基板WをカセットCから取り出したり、処理済の基板をカセットCに収納したりするためのインデクサロボット22とを備えている。
【0019】
各カセットCには、複数枚の基板Wが「ロット」という一単位で収容されている。複数枚の基板Wはロット単位で種々の基板処理装置の間に搬送され、各基板処理装置でロットを構成する各基板Wに対して同一種類の処理が施される。各カセットCは、複数枚の基板Wを微小な間隔をあけて上下方向に積層して保持するための複数段の棚(図示省略)を備えており、各段の棚に1枚ずつ基板Wを保持することができるようになっている。各段の棚は、基板Wの下面の周縁部に接触し、基板Wを下方から保持する構成となっており、基板Wは表面(パターン形成面)を上方に向け、裏面を下方に向けたほぼ水平な姿勢でカセットCに収容されている。
【0020】
基板処理部PPは、平面視においてほぼ中央に配置された基板搬送ロボット(基板搬送装置)13と、この基板搬送ロボット13が取付けられたフレーム30とを有している。このフレーム30には、図1(a)に示すように、水平方向に複数個(この実施形態では4個)の処理ユニット1A、2A、3A、4Aが基板搬送ロボット13を取り囲むように搭載されている。この実施形態では、処理ユニット1A〜4Aとして例えば半導体ウエハのようなほぼ円形の基板Wに対して所定の処理を施す処理ユニットがフレーム30に搭載されている。また、図1(b)に示すように、各処理ユニットの下段にはそれぞれもう1つの処理ユニットが設置されている。すなわち、処理ユニット1A〜4Aの下段に、処理ユニット1B〜4Bがそれぞれ設けられており、上下2段の積層構造が採用されている。
【0021】
基板搬送ロボット13は、インデクサロボット22から未処理の基板Wを受け取ることができ、かつ処理済の基板Wをインデクサロボット22に受け渡すことができる。より具体的には、例えば、基板搬送ロボット13は、当該基板処理部PPのフレーム30に固定された基台部と、この基台部に対して昇降可能に取付けられた昇降ベースと、この昇降ベースに対して鉛直軸回りの回転が可能であるように取付けられた回転ベースと、この回転ベースに取付けられた一対のハンドとを備えている。一対の基板保持ハンドは、それぞれ、上記回転ベースの回転軸線に対して近接/離間する方向に進退可能に構成されている。このような構成により、基板搬送ロボット13は、インデクサロボット22および処理ユニット1A〜4A、1B〜4Bのいずれかに対して基板保持ハンドを向け、その状態で基板保持ハンドを進退させることができ、これによって、基板Wの受け渡しを行うことができる。
【0022】
インデクサロボット22は、装置全体を制御する制御部により指定されたカセットCから未処理の基板Wを取り出して基板搬送ロボット13に受け渡すとともに、基板搬送ロボット13から処理済の基板Wを受け取ってカセットCに収容する。処理済の基板Wは、当該基板Wが未処理の状態のときに収容されていたカセットCに収容されてもよい。また、未処理の基板Wを収容するカセットCと処理済の基板Wを収容するカセットCとを分けておいて、未処理の状態のときに収容されていたカセットCとは別のカセットCに処理済の基板Wが収容されるように構成してもよい。
【0023】
次に、上記した基板処理システムに搭載される処理ユニットの実施形態について説明する。なお、図1の基板処理システムでは、8個の処理ユニットが搭載されているが、これらの処理ユニットはいずれも以下に説明する処理ユニット100と同一の構造とすることができる。
【0024】
図2は本発明にかかる基板処理装置としての処理ユニットの第1実施形態を示す図であり、同図(a)は遮断部材を下方から見た底面図であり、同図(b)は構成を示す模式図である。また、図3は図2の処理ユニットを制御する電気的構成を示すブロック図である。この処理ユニット100は、半導体ウエハ等の基板Wの表面に付着している不要物を除去するための洗浄処理に用いられる枚葉式の処理ユニットである。より具体的には、基板表面に対してフッ酸などの薬液による薬液処理および純水やDIW(脱イオン水:deionized water)などのリンス液によるリンス処理を施し、さらに基板W上のリンス液をIPA(isopropyl alcohol:イソプロピルアルコール)液で置換した後に、基板Wを乾燥させる装置である。
【0025】
この処理ユニット100では、処理チャンバー102の天井部分にファンフィルタユニット(FFU)104が配置されている。このファンフィルタユニット104はファン104aおよびフィルタ104bを有しており、ファン104aによって外部から取り込んだ空気をフィルタ104bで清浄にして「清浄気体」として処理チャンバー102の中央空間に送り込む。この中央空間にはスピンチャック106が配置されている。このスピンチャック106は基板表面を上方に向けた状態で基板Wを略水平姿勢に保持して回転させるものである。また、このスピンチャック106は、回転支軸108がモータを含むチャック回転機構110の回転軸に連結されており、チャック回転機構110の駆動により回転軸112(鉛直軸)回りに回転可能となっている。これら回転支軸108およびチャック回転機構110は、円筒状のケーシング114内に収容されている。また、回転支軸108の上端部には、円盤状のスピンベース116が一体的にネジなどの締結部品によって連結されている。したがって、処理ユニット全体を制御するユニット制御部118からの動作指令に応じてチャック回転機構110を駆動させることによりスピンベース116が回転軸112回りに回転する。また、ユニット制御部118はチャック回転機構110を制御してスピンベース116の回転速度を調整する。
【0026】
スピンベース116の周縁部付近には、基板Wの周縁部を把持するための複数個のチャックピン120が立設されている。チャックピン120は、円形の基板Wを確実に保持するために3個以上設けてあればよく、スピンベース116の周縁部に沿って等角度間隔で配置されている。チャックピン120のそれぞれは、基板Wの周縁部を下方から支持する基板支持部と、基板支持部に支持された基板Wの外周端面を押圧して基板Wを保持する基板保持部とを備えている。また、各チャックピン120は、基板保持部が基板Wの外周端面を押圧する押圧状態と、基板保持部が基板Wの外周端面から離れる解放状態との間を切り替え可能に構成されている。
【0027】
スピンベース116に対して基板Wが受渡しされる際には、複数個のチャックピン120を解放状態とし、後述する基板処理を基板Wに対して行う際には、複数個のチャックピン120を押圧状態とする。このように押圧状態とすることによって、複数個のチャックピン120は基板Wの周縁部を把持してその基板Wをスピンベース116から所定間隔を隔てて略水平姿勢に保持することができる。これにより、基板Wはその表面を上方に向け、裏面を下方に向けた状態で支持される。なお、基板保持機構としてはチャックピン120に限らず、基板裏面を吸引して基板Wを支持する真空チャックを用いてもよい。
【0028】
スピンチャック106により保持された基板Wの上方位置には、薬液吐出ノズル122とリンス液吐出ノズル124が取り付けられたノズルアーム125が配置されている。これらのうち薬液吐出ノズル122は薬液供給ユニット126(図3)と接続されている。この薬液供給ユニット126はフッ酸またはBHF(Buffered Hydrofluoric acid:バッファードフッ酸)などの基板洗浄に適した薬液をノズル122側に供給可能となっている。そして、ユニット制御部118からの指令に応じて薬液供給ユニット126が薬液吐出ノズル122に向けて薬液を圧送すると、ノズル122から薬液が基板Wに向けて吐出される。また、薬液吐出ノズル122と同様に、リンス液吐出ノズル124にもリンス液供給ユニット128(図3)が接続されており、薬液処理された基板Wに向けてリンス液を吐出させてリンス処理を実行可能となっている。そして、これらのノズル122、124が取り付けられたノズルアーム125にはノズルアーム移動機構130が接続されており、ユニット制御部118からの動作指令に応じてノズルアーム移動機構130が駆動されることで、基板Wの表面上方の吐出領域と吐出領域から側方に退避した待機位置との間でノズル122、124は移動可能となっている。さらに、吐出領域においても、ノズルアーム移動機構130によりノズル122、124は基板表面の中央部上方と周縁部上方との間を往復移動可能となっている。なお、この実施形態では、回転支軸108は中空管構造を有しており、リンス液供給ユニット128からリンス液が供給されて回転支軸108の内部空間に配置されたノズルの上端部に形成されたノズル孔(図示省略)からリンス液を基板裏面に向けて吐出することが可能となっている。
【0029】
ケーシング114の周囲には、受け部材134が固定的に取り付けられている。この受け部材134には、円筒状の仕切り部材が3個立設されている。そして、これらの仕切り部材とケーシング114の組み合わせにより3つの空間が排液槽135a〜135cとして形成されている。また、これらの排液槽135a〜135cの上方には本発明の「カップ」に相当するスプラッシュガード136がスピンチャック106に水平姿勢で保持されている基板Wの周囲を包囲するようにスピンチャック106の回転軸112に沿って昇降自在に設けられている。このスプラッシュガード136は回転軸112に対して略回転対称な形状を有しており、スピンチャック106と同心円状に径方向内側から外側に向かって配置された2つのガードを備えている。そして、ガード昇降機構138の駆動によりスプラッシュガード136を段階的に昇降させることで、回転する基板Wから飛散する薬液やリンス液などを分別して排液させることが可能となっている。
【0030】
また、排液槽135aには、図2(b)に示すように排気管160の一方端が接続されている。この排気管160の他方端は図示を省略する排気装置に接続されている。このため、排気管160を介して排液槽135aおよび処理空間162を排気可能となっている。しかも、この実施形態では、排気管160に排気調整機構164が介挿されており、ユニット制御部118からの指令に応じて排気調整機構164が処理空間162からの排気量を調整可能となっている。なお、上記した処理空間162とは、スプラッシュガード136がスピンチャック106に保持された基板Wの周囲を取り囲むことで形成される空間であり、当該処理空間162で薬液処理、リンス処理、置換処理および乾燥処理が実行される。
【0031】
こうして形成される処理空間162とファンフィルタユニット(FFU)104の間に、遮断部材166が配置されている。この遮断部材166は、図2に示すように、スプラッシュガード136の円筒状内部空間を上方から見た開口部136aよりも大きな外径を有する円盤形状を有しており、その下面が開口部136aと対向する対向面168となっている。この対向面168には、複数の貫通孔170が穿設されている。また、遮断部材166の内部は中空となっており、当該中空領域に対して乾燥気体供給ユニット172(図3)から乾燥窒素ガス(例えば相対湿度が10%以下に調整された窒素ガス)が供給される。したがって、乾燥窒素ガスが乾燥気体供給ユニット172から遮断部材166に圧送されると、貫通孔170を介して乾燥窒素ガスが処理空間162に向けて吐出される。このように、本実施形態では、乾燥気体供給ユニット172が本発明の「気体供給手段」に相当している。
【0032】
また、遮断部材166の中央部には、IPA液吐出ノズル174が取り付けられている。このノズル174の先端部176は基板Wの中央部を指向する一方、ノズル174の後端部はIPA液供給ユニット178(図3)に接続されている。そして、ユニット制御部118からの指令に応じてIPA液供給ユニット178からIPA液が圧送されることで、IPA液吐出ノズル174から基板Wの表面中央部に向けてIPA液を供給可能となっている。このように、本実施形態では、IPA液吐出ノズル174とIPA液供給ユニット178は本発明の「液体供給手段」として機能している。
【0033】
このように構成された遮断部材166には、遮断部材昇降機構180が接続されている。このため、遮断部材昇降機構180の駆動により遮断部材166がスプラッシュガード136の直上位置まで下降されると、対向面168がスプラッシュガード136の開口部136aを覆って処理空間162が半密閉状態となる。逆に、遮断部材166がスプラッシュガード136の上方に上昇移動されると、対向面168がスプラッシュガード136の開口部136aから離間して処理空間162が開放状態となる。このように、本実施形態では、遮断部材166と遮断部材昇降機構180が本発明の「切換手段」として機能している。
【0034】
次に、上記のように構成された処理ユニット(基板処理装置)100の動作について図4および図5を参照しつつ詳述する。この実施形態では、ユニット制御部118がメモリ(図示省略)に記憶されているプログラムにしたがって装置各部を制御して基板Wに対して薬液処理、リンス処理、置換処理および乾燥処理を施す。これらのうち薬液処理およびリンス処理が本発明の「湿式処理」に相当しており、薬液処理ではフッ酸などの薬液が本発明の「処理液」として、またリンス処理ではDIWなどのリンス液が本発明の「処理液」として用いられる。
【0035】
ユニット制御部118はスプラッシュガード136を降下させてスピンチャック106をスプラッシュガード136の開口部136aから突出させる。このとき、遮断部材166は開口部136aの上方位置に移動されている。また、両ノズル122、124ともスプラッシュガード136の外側に退避している。そして、この状態で基板搬送ロボット13により未処理の基板Wが処理チャンバー102内に搬入される。より具体的には、基板表面を上方に向けた状態で基板Wが装置内に搬入され、スピンチャック106に保持される。これに続いて、スプラッシュガード136が1段階上昇されるとともに基板Wに対して薬液処理が開始される(図4(a))。
【0036】
薬液処理では、薬液吐出ノズル122が基板表面の中央部上方に位置するようにノズルアーム移動機構130がノズルアーム125を移動させるとともに、チャック回転機構110の駆動によりスピンチャック106に保持された基板Wを200〜1200rpmの範囲内で定められる回転速度(例えば800rpm)で回転させる。また、薬液供給ユニット126がフッ酸を薬液として薬液吐出ノズル122に向けて圧送して当該ノズル122から基板表面に供給する。こうして基板表面の中央部に供給されたフッ酸は遠心力により径方向に広げられ、フッ酸による基板表面のエッチング処理(薬液処理)が実行される。
【0037】
薬液処理が完了すると、リンス液吐出ノズル124が薬液吐出ノズル122と入れ替わって基板表面の中央部上方に位置するようにノズルアーム移動機構130がノズルアーム125を移動させる。そして、リンス液吐出ノズル124からリンス液が吐出される。また、回転支軸108の上端部に形成されたノズル孔(図示省略)からリンス液が基板裏面に向けて吐出される。こうして基板表裏面に吐出されたリンス液は基板Wの回転の遠心力によって基板Wの表裏全面に拡がり、リンス液によるリンス処理が行われる。なお、この実施形態では、リンス処理の最終時点では、基板Wの回転速度は300rpmに減速されている。
【0038】
上記した薬液処理およびリンス処理時においては、図4(a)に示すように、遮断部材166は開口部136aの上方位置(本実施形態ではスプラッシュガード136から208mmだけ上方に離れた位置)に移動されており、処理空間162は開放状態となっている。しかも、排気調整機構164により、処理空間162から比較的大容量の排気(この実施形態では、−200Pa、風速5m/秒)が行われている。このため、処理液(薬液およびリンス液)で形成される雰囲気、つまり処理液雰囲気を効率よく処理空間162から排出することができる。また、この実施形態では、上記排出効率をさらに高めるという目的と、薬液処理およびリンス処理中に発生する処理液のミストは上方に飛散して遮断部材166の対向面(パンチングプレート面)168に付着するのを防止する目的から、遮断部材166から乾燥窒素ガス(同図の白抜き矢印)が開口部136aに向けて、例えば220〜250(L/min)で吐出されている。もちろん、排気調整のみによりミスト付着などの問題を解消することができる場合には、薬液およびリンス処理での乾燥窒素ガスの吐出を省略してもよい。
【0039】
リンス処理が完了すると、同図(b)に示すように、遮断部材昇降機構180が作動して遮断部材166をスプラッシュガード136の直上位置(例えば開口部136aから10mmの高さ位置)まで下降させてスプラッシュガード136の開口部136aを対向面168で覆う。これによって、処理空間162が半密閉状態となる。また、排気調整機構164により処理空間162からの排気を抑えており(この実施形態では、−20Pa、風速0.5m/秒)、これらの設定により処理空間162内の湿度を効果的に低下させることができる。この実施形態では、上記したように相対湿度10%以下の乾燥窒素ガスを用いているので、処理空間162内の湿度を当該乾燥窒素ガスの相対湿度と同程度にまで低下させることができる。また、この湿度低下処理中において、基板Wの回転速度が比較的速い場合には、基板表面のリンス液の液膜が部分的に乾燥してしまい、ウォーターマークが発生したり、基板表面に形成されたパターンが倒壊するなどの不具合が発生する可能性がある。そこで、実湿度低下処理中においては基板Wの回転速度を50rpm以下に減速するのが望ましい。これらの点を考慮して本実施形態では、次の処理条件で
基板Wの回転速度:5rpm
排気:−20Pa、風速0.5m/秒
処理時間:1分
遮断部材166とスプラッシュガード136のギャップ:10mm
処理空間162の湿度を20%以下に低下させている。
【0040】
それに続いて、半密閉状態でかつ乾燥窒素ガスを供給した状態のまま、置換処理および乾燥処理を連続して行う。すなわち、IPA液供給ユニット178からIPA液が圧送されてIPA液吐出ノズル174から基板Wの表面中央部に向けてIPA液が供給される(図5(a))。これによって、基板Wの表面中央部ではリンス液の液膜中央部がIPA液に置換されて置換領域が形成され、さらにIPA液供給が継続されることで、置換領域が基板Wの径方向に拡大して基板表面の全面がIPA液に置換される。また、この置換処理の後、基板Wが300〜4000rpmで高速回転されて基板Wの乾燥処理が実行される。
【0041】
基板Wの乾燥処理が終了すると、ユニット制御部118はチャック回転機構110を制御して基板Wの回転を停止させる。そして、遮断部材166をスプラッシュガード136の上方位置に上昇移動させるとともにスプラッシュガード136を降下させて、スピンチャック106をスプラッシュガード136の上方から突出させる。その後、基板搬送ロボット13が処理済の基板Wを処理ユニット100から搬出して、1枚の基板Wに対する一連の基板処理が終了する。そして、次の基板Wについても、上記と同様の処理が実行される。
【0042】
以上のように、この実施形態によれば、乾燥処理を実行する前に処理空間162の湿度を低下させており、乾燥処理を低湿度雰囲気で行っているため、基板乾燥により基板表面にウォーターマーク等が発生するのを効果的に抑えることができる。また、この実施形態では乾燥性能を高めるために置換処理を行っているが、湿度が低下した処理空間162でIPA液が蒸発するため、図6に示す現象が発生するのを効果的に抑えて基板乾燥を良好に行うことができる。
【0043】
図6はIPA液の蒸発に起因する乾燥不良の発生メカニズムを模式的に示す図である。このようにIPA液などの比較的揮発性の高い溶剤が蒸発する際には、基板回転の遠心力とIPA蒸発に伴いIPA液膜が移動していく。また、IPA蒸発によりIPA液膜の端部では基板表面が乾燥されて露出するが、IPA蒸発と同時に気化熱が発生して露出領域の周辺温度が局部的にかつ急激に低下する(同図(a))。このとき、露出領域の周辺に多量の水蒸気成分が存在すると、上記温度低下により露出領域に凝集して水滴として付着することがある(同図(b))。このような現象はIPA液膜の乾燥移動にしたがって順次発生するため、帯状の乾燥不良が発生してしまう。このような乾燥不良は基板表面の周辺湿度に大きく依存しているため、本実施形態のように乾燥処理に先立って処理空間162の湿度を大幅に低減しておくことで上記乾燥不良を効果的に、しかも確実に防止することができる。したがって、IPA液などを用いて置換処理を行う装置や方法では、非常に有用な技術と言える。
【0044】
また、上記実施形態では、湿式処理(薬液およびリンス処理)に際して、処理空間162を開放状態に設定しながら比較的大容量で処理空間162を排気しているため、湿式処理時に処理空間162内で発生する処理液雰囲気を効率よく処理空間162から排出することができ、処理液(薬液およびリンス液)がスプラッシュガード136の周辺に飛散するのを効果的に防止することができる。また同時に、湿式処理中に処理空間162に向けて乾燥窒素ガスを供給しているため、湿式処理中に発生する処理液のミストが処理空間162から上方に飛散するのを抑制することができ、遮断部材166が上記ミストにより汚染されるのを効果的に防止することができる。
【0045】
また、湿式処理と湿度低下処理で排気量を相違させているので、次の作用効果も得られる。湿式処理では上記したように処理液のミストを処理空間162から効率的に排出するために排気量を高めているが、その排気量のまま湿度低下処理を実行してもよい。しかしながら、この場合、当該排気量に見合った量の乾燥窒素ガスを処理空間162に供給する必要があり、乾燥気体供給ユニット172にかかる負荷が大きくなり、当該ユニット172の大型化や高出力化を招いてしまう。これに対し、本実施形態のように排気調整機構164を設け、上記のように排気量を調整することで上記問題を解消して乾燥気体供給ユニット172の小型化を図ることができる。また、乾燥窒素ガスの消費量を抑えることができ、ランニングコストの面でも優れている。
【0046】
また、この実施形態によれば、スプラッシュガード136の上方位置では遮断部材166を単に昇降自在に設けるのみであるため、雰囲気遮断板の昇降駆動および回転駆動が必要となっていた従来装置と比べて装置構成を簡素に、しかも上下方向における装置サイズを小型化することができる。その結果、図1に示すように、処理ユニットを上下方向に積層配置することが可能となり、基板処理システムのフットプリントを大幅に縮小することができる。
【0047】
図7は本発明にかかる基板処理装置としての処理ユニットの第2実施形態を示す図であり、同図(a)はリンス処理を行う際の動作を示す一方、同図(b)は湿度低下処理、置換処理および乾燥処理を行う際の動作を示している。また、図8は図7の処理ユニットを制御する電気的構成を示すブロック図である。この処理ユニット100が第1実施形態のそれと大きく相違する点は、(1)切換手段の構成と、(2)乾燥窒素ガスおよびIPA液の供給形態であり、その他の構成は基本的に共通する。そこで、以下の説明においては、相違点を中心に説明し、共通構成については同一または相当符号を付して説明を省略する。
【0048】
この第2実施形態では、処理チャンバー102の天井部分に乾燥気体供給ユニット172が配置されており、乾燥気体供給ユニット172から処理チャンバー102の中央空間に向けて乾燥窒素ガスが吐出されている。また、乾燥気体供給ユニット172の下方側近傍には、複数の貫通孔を有するパンチングプレート154が配置されており、乾燥気体供給ユニット172からの乾燥窒素ガスはパンチングプレート154により水平方向に拡散されて処理空間162に送り込まれる。このように、第2実施形態では乾燥気体供給ユニット172とパンチングプレート154が本発明の「気体供給手段」として機能している。
【0049】
また、乾燥気体供給ユニット172の中央部には、IPA液吐出ノズル174が取り付けられている。そして、第1実施形態と同様に、ユニット制御部118からの指令に応じてIPA液供給ユニット178からIPA液が圧送されることで、IPA液吐出ノズル174から基板Wの表面中央部に向けてIPA液を供給可能となっている。
【0050】
また、第2実施形態では、薬液吐出ノズル122とリンス液吐出ノズル124が互いに独立して移動するように構成されている。すなわち、薬液吐出ノズル122には薬液ノズル移動機構182が接続されており、ユニット制御部118からの動作指令に応じて薬液ノズル移動機構182が駆動されることで、基板Wの表面上方の吐出領域と吐出領域から側方に退避した待機位置との間でノズル122は移動可能となっている。さらに、吐出領域においても、薬液ノズル移動機構182によりノズル122は基板表面の中央部上方と周縁部上方との間を往復移動可能となっている。
【0051】
また、リンス液吐出ノズル124には、リンスノズル移動機構184が接続されており、ユニット制御部118からの動作指令に応じてリンスノズル移動機構184が駆動されることで、基板Wの表面上方の吐出領域と吐出領域から側方に退避した待機位置との間でノズル124は移動可能となっている。また吐出領域においても、リンスノズル移動機構184によりノズル124は基板表面の中央部上方と周縁部上方との間を往復移動可能となっている。
【0052】
この実施形態では、スプラッシュガード136がスピンチャック106に保持された基板Wの周囲を取り囲んでおり、基板Wとスプラッシュガード136の間に円環状の空間140が形成されている。そして、この円環状空間140に対して隔壁部142が進退移動自在となっている。隔壁部142は円筒状部材144と、円筒状部材144の下端部に連設された拡張スカート部材146を備えている。すなわち、円筒状部材144の内径は円盤形状を有するスピンベース116の外径よりも大きく、しかも円筒状部材144の外径はスプラッシュガード136の円筒状内部空間を上方から見た開口部の内径よりも小さくなっており、円環状空間140を上下方向に垂直に昇降可能な形状となっている。一方、拡張スカート部材146は円筒状部材144から円筒状部材144の外径方向にスカート状に拡張された形状を有しており、円筒状部材144の昇降移動と一緒に、3つの排液槽135a〜135cのうちの最も内側の排液槽135aの内部およびその上方を昇降移動可能となっている。
【0053】
このように構成された隔壁部142には、隔壁昇降機構148が接続されており、ユニット制御部118からの動作指令に応じて隔壁昇降機構148が駆動されることで、隔壁部142が垂直に昇降移動する。隔壁昇降機構148は、モータ1481とモータ1481に接続されたボールネジ1482より構成される。モータ1481は受け部材134の下方に配置され、受け部材134を貫通してボールネジ1482が立設される。こうすることでモータ1481への処理液の付着を防止することができる。ボールネジ1482に装着されたブランケットは隔壁部142の側面に固定され、ボールネジ1482がモータ1481によって回転されることでブランケットが昇降し、それに伴い隔壁部142が昇降駆動される。この隔壁昇降機構148は隔壁部142の周囲に少なくとも3ヶ所配置され、同時に駆動することで安定して隔壁部142を昇降できる。尚、モータとボールネジに代えてエアーシリンダーを用いてもよい。
この実施形態では、隔壁部142の上昇移動によって、円筒状部材144が円環状空間140に位置して基板Wとスプラッシュガード136を区切るとともに拡張スカート部材146が排液槽135aの上方で基板Wの側方位置に位置する(図7(b))。一方、隔壁部142の降下移動によって、円筒状部材144が円環状空間140から下方に離れた退避空間(図7(b)の符号141)に移動すると、基板Wとスプラッシュガード136の間に区切りがなくなり、基板Wおよびスピンチャック106から飛散する処理液(薬液やリンス液)をスプラッシュガード136により補集可能となるとともに拡張スカート部材146が排液槽135a内に位置する(図7(a))。
【0054】
また、この実施形態では、隔壁部142が上昇移動した時、円筒状部材144の上端部がパンチングプレート154に近接または接続されて処理空間162が半密閉状態となる。逆に、隔壁部142の降下移動によって、円筒状部材144の上端部がパンチングプレート154から下方に離間して処理空間162が開放状態となる。このように、第2実施形態では、隔壁昇降機構148が本発明の「筒状部材昇降機構」として機能し、円筒状部材144と隔壁昇降機構148が本発明の「切換手段」として機能している。
【0055】
このように構成された第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、基板搬送ロボット13により未処理の基板Wが処理チャンバー102内に搬入された後、湿式処理(薬液処理およびリンス処理)、湿度低下処理、置換処理および乾燥処理が実行される。すなわち、隔壁部142が降下移動して処理空間162が開放状態となっている状態で、回転する基板Wの表面中央部にフッ酸が薬液として供給されて基板表面のエッチング処理(薬液処理)が実行される。また、薬液処理が完了すると、薬液吐出ノズル122が待機位置に戻される一方、リンス液吐出ノズル124が薬液吐出ノズル122と入れ替わって基板表面の中央部上方に移動される。そして、リンス液吐出ノズル124からリンス液が吐出されてリンス処理が実行される(図7(a))。
【0056】
リンス処理が完了すると、同図(b)に示すように、リンス液吐出ノズル124が待機位置に戻される一方、隔壁昇降機構148が作動して隔壁部142を上昇移動させて円筒状部材144の上端部をパンチングプレート154に近接または接続させる。これによって、処理空間162が半密閉状態となる。また、排気調整機構164により処理空間162からの排気を抑えており(この実施形態では、−20Pa、風速0.5m/秒)、これらの設定により処理空間162内の湿度を効果的に低下させることができる。この実施形態においても、第1実施形態と同様に相対湿度10%以下の乾燥窒素ガスを用いているので、処理空間162内の湿度を当該乾燥窒素ガスの相対湿度と同程度にまで低下させることができる。
【0057】
それに続いて、半密閉状態でかつ乾燥窒素ガスを供給した状態のまま、第1実施形態と同様に、置換処理および乾燥処理を連続して行う。その後、ユニット制御部118はチャック回転機構110を制御して基板Wの回転を停止させる。そして、隔壁部142を降下移動させて円筒状部材144を円環状空間140から下方に離れた退避空間(図7(b)の符号141)に移動させるとともにスプラッシュガード136を降下させて、スピンチャック106をスプラッシュガード136の上方から突出させる。その後、基板搬送ロボット13が処理済の基板Wを処理ユニット100から搬出して、1枚の基板Wに対する一連の基板処理が終了する。そして、次の基板Wについても、上記と同様の処理が実行される。
【0058】
以上のように、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、乾燥処理を実行する前に処理空間162の湿度を低下させており、乾燥処理を低湿度雰囲気で行っているため、基板乾燥により基板表面にウォーターマーク等が発生するのを効果的に抑えることができる。
【0059】
また、上記第2実施形態では、隔壁部142の昇降移動により処理空間162を開放状態と半密閉状態の切換を行っているが、隔壁部142の代わりに別部材により処理空間162を開放状態と半密閉状態に切り換えてもよい。例えば図9に示すように、開口部136aに対応した蛇腹形状を有する蛇腹部材186を用いてもよく、第2実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0060】
図9は本発明にかかる基板処理装置としての処理ユニットの第3実施形態を示す図であり、同図(a)はリンス処理を行う際の動作を示す一方、同図(b)は湿度低下処理、置換処理および乾燥処理を行う際の動作を示している。また、図10は図9の処理ユニットを制御する電気的構成を示すブロック図である。この実施形態が第2実施形態と大きく相違する点は、隔壁部142の代わりに蛇腹部材186を用いている点であり、その他の構成は基本的に共通する。そこで、以下の説明においては、相違点を中心に説明し、共通構成については同一または相当符号を付して説明を省略する。
【0061】
この第3実施形態では、蛇腹部材186の上端部がパンチングプレート154に接続される一方、下端部が伸縮自在となっている。また、蛇腹部材186にはエアーシリンダーやモータとボールネジによる蛇腹伸縮機構188が接続されており、蛇腹伸縮機構188により伸縮駆動される。ユニット制御部118からの指令により蛇腹伸縮機構188が作動して蛇腹部材186が収縮されると、図9(a)に示すように、蛇腹部材186の下端部が開口部136aの上方に移動して処理空間162が開放状態となる。逆に、同図(b)に示すように、蛇腹伸縮機構188により蛇腹部材186が伸張すると、蛇腹部材186の下端部が開口部136aに近接または接触して処理空間162が半密閉状態となる。このように、第3実施形態では、蛇腹部材186と蛇腹伸縮機構188が本発明の「切換手段」として機能している。
【0062】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。上記した実施形態では、排気調整機構164としては、排気量をコントロールできるものであれば、その構成や動作等については特に限定されるものではなく、任意であるが、例えば図11に示す排気調整機構164を採用することができる。
【0063】
図11は本発明にかかる基板処理装置で採用可能な排気調整機構を示す図である。この排気調整機構164は、排気管160よりも細い口径を有するとともに排気管160から分岐して再び排気管160に連通されたバイパス配管164aと、バイパス配管164aが排気管160から分岐する分岐位置P1とバイパス配管164aが排気管160に連通する連通位置P2との間に介挿された開閉弁164bとを備えている。そして、湿式処理(薬液およびリンス処理)時には、ユニット制御部118からの指令にしたがって開閉弁164bを開いて比較的大容量で処理空間162を排気可能となっている。一方、湿度低下処理時にはユニット制御部118からの指令にしたがって開閉弁164bを閉じて処理空間162の排気量を湿式処理時のそれよりも抑える。
【0064】
また、上記した実施形態の置換処理では、基板表面に形成されたパターンが倒壊するなどの不具合を防止して乾燥性能を高めるために処理液よりも表面張力が低い低表面張力液を基板に供給しており、低表面張力液としてIPA液を用いて置換処理を行っている。IPA100%であっても、IPAとDIWの混合液であってもよい。また、低表面張力液としては、IPA液以外に、エチルアルコール、メチルアルコールの各種有機溶媒を用いるようにしてもよい。また、各種アルコールの蒸気を有機溶媒成分としてDIWに溶解させて低表面張力液を生成するようにしてもよい。なお、乾燥処理の前に置換処理を行っているが、これは必須処理ではなく、省略してもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、本発明の「乾燥気体」として乾燥窒素ガスを用いているが、これ以外の乾燥気体、例えば乾燥空気などを用いることができる。
【0066】
また、上記実施形態では、半導体ウエハ等の円盤状基板Wに対して薬液処理、リンス処理、(置換処理)および乾燥処置を行う装置および方法に本発明を適用しているが、基板Wの種類や処理内容はこれに限定されるものではなく、処理液を基板に供給して湿式処理を施した後に当該基板を乾燥する基板処理装置および方法に本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などを含む基板全般に湿式処理および乾燥処理を施す基板処理装置および方法に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明を好適に適用することのできる基板処理システムを示す図である。
【図2】本発明にかかる基板処理装置としての処理ユニットの第1実施形態を示す図である。
【図3】図2の処理ユニットを制御する電気的構成を示すブロック図である。
【図4】図2の処理ユニットの動作を示す図である。
【図5】図2の処理ユニットの動作を示す図である。
【図6】IPA液の蒸発に起因する乾燥不良の発生メカニズムを模式的に示す図である。
【図7】本発明にかかる基板処理装置の第2実施形態を示す図である。
【図8】図7の処理ユニットを制御する電気的構成を示すブロック図である。
【図9】本発明にかかる基板処理装置の第3実施形態を示す図である。
【図10】図9の処理ユニットを制御する電気的構成を示すブロック図である。
【図11】排気調整機構の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0069】
1A〜4A、1B〜4B、100…処理ユニット(基板処理装置)
136…スプラッシュガード(カップ)
136a…開口部
140…円環状空間
144…円筒状部材
148…隔壁昇降機構(筒状部材昇降機構)
154…パンチングプレート
160…排気管
162…処理空間
164…排気調整機構
164a…バイパス配管(排気調整機構)
164b…開閉弁(排気調整機構)
166…遮断部材
168…対向面
172…乾燥気体供給ユニット(気体供給手段)
174…IPA液吐出ノズル(液体供給手段)
178…IPA液供給ユニット(液体供給手段)
180…遮断部材昇降機構
186…蛇腹部材
188…蛇腹伸縮機構
P1…分岐位置
P2…連通位置
W…基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平姿勢で回転する基板の周囲をカップで取り囲んで処理空間を形成するとともに、前記処理空間を排気しながら、前記基板に処理液を供給して前記処理液により前記基板を湿式処理した後に前記基板を乾燥する基板処理装置であって、
前記処理空間に乾燥気体を供給する気体供給手段と、
前記処理空間を開放状態と半密閉状態に切り換える切換手段と、
前記処理空間の排気を調整する排気調整手段とを備え、
前記湿式処理の際には前記切換手段が前記処理空間を開放状態に切り換える一方、
前記湿式処理後かつ前記乾燥処理前には前記切換手段が前記処理空間を半密閉状態に切り換え、前記気体供給手段が前記乾燥気体を前記処理空間に供給するとともに前記排気調整手段が前記処理空間の排気を前記湿式処理時よりも抑えて前記処理空間内の湿度を低下させる
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記処理液よりも表面張力が低い低表面張力液を前記基板に供給する液体供給手段をさらに備え、
前記液体供給手段は前記湿式処理後かつ前記乾燥処理前に前記基板に前記低表面張力液を供給して前記基板に付着している前記処理液を前記低表面張力液に置換する請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記気体供給手段は前記湿式処理中に前記処理空間に向けて前記乾燥気体を供給する請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記カップは上方に開口した開口部を有し、
前記切換手段は、前記開口部と対向する対向面を有するとともに前記カップの上方位置で上下方向に移動自在に設けられた遮断部材と、前記遮断部材を上下方向に昇降移動させる遮断部材昇降機構とを備えており、
前記切換手段は、前記遮断部材を前記開口部に近接移動させることで前記開口部を前記対向面で覆って前記処理空間を前記半密閉状態に切り換える一方、前記遮断部材を前記開口部から上方に離間移動させて前記処理空間を前記開放状態に切り換える請求項1ないし3のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記対向面に複数の貫通孔が形成されており、前記気体供給手段から供給される前記乾燥気体が前記複数の貫通孔を介して前記処理空間に吐出される請求項4記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記カップは上方に開口した開口部を有し、
前記気体供給手段は前記開口部の上方位置に配置されて下方に向けて前記乾燥気体を吐出し、
前記切換手段は、前記開口部に対応した筒状形状を有するとともに前記処理空間に沿って上下方向に昇降自在な筒状部材と、前記筒状部材を上下方向に昇降移動させる筒状部材昇降機構とを備えており、
前記切換手段は、前記筒状部材を上昇移動させることで前記筒状部材の上端部を前記気体供給手段に近接または接続させて前記処理空間を前記半密閉状態に切り換える一方、前記筒状部材を前記気体供給手段から下方に離間移動させて前記処理空間を前記開放状態に切り換える請求項1ないし3のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記カップは上方に開口した開口部を有し、
前記気体供給手段は前記開口部の上方位置に配置されて下方に向けて前記乾燥気体を吐出し、
前記切換手段は、前記開口部に対応した蛇腹形状を有するとともに上端部が前記気体供給手段に接続固定されたまま前記処理空間に沿って上下方向に伸縮自在な蛇腹部材と、前記蛇腹部材を上下方向に伸縮させる伸縮機構とを備えており、
前記切換手段は、前記蛇腹部材を下方に伸張させることで前記蛇腹部材の下端部を前記開口部に近接または接続させて前記処理空間を前記半密閉状態に切り換える一方、前記下端部を前記開口部から上方に収縮させて前記処理空間を前記開放状態に切り換える請求項1ないし3のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記処理空間は排気管を介して排気されており、
前記排気調整手段は前記排気管よりも細い口径を有するとともに前記排気管から分岐して再び前記排気管に連通されたバイパス配管と、前記バイパス配管が前記排気管から分岐する分岐位置と前記バイパス配管が前記排気管に連通する連通位置との間で前記排気管に介挿された開閉弁とを備え、前記湿式処理時には前記開閉弁を開く一方、前記湿度低下処理時には前記開閉弁を閉じて前記処理空間の排気量を前記湿式処理時よりも抑える
請求項1ないし7のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記乾燥気体の相対湿度は10%以下である請求項1ないし8のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項10】
回転する基板の周囲をカップで取り囲んで処理空間を形成するとともに、開放状態の前記処理空間を排気しながら前記基板に処理液を供給して前記処理液により前記基板を湿式処理する湿式処理工程と、
前記湿式処理工程後に前記処理空間を半密閉状態に切り換え、前記半密閉状態の前記処理空間に乾燥気体を供給しながら前記処理空間の排気を前記湿式処理時よりも抑えて前記処理空間内の湿度を低下させる湿度低下工程と、
前記湿度低下工程後に前記基板を乾燥させる乾燥工程と
を備えたことを特徴とする基板処理方法。
【請求項11】
前記湿式処理工程後かつ前記乾燥工程前に、前記処理液よりも表面張力が低い低表面張力液を前記基板に供給して前記基板に付着している前記処理液を前記低表面張力液に置換する置換工程をさらに備えた請求項10記載の基板処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2009−158565(P2009−158565A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−332286(P2007−332286)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】