説明

基板処理装置の調整方法

【課題】本発明は、搬送機構の搬送先の位置調整を単純な構成で低コストにできる基板処理装置の調整方法を提供する。
【解決手段】
調整工程においては、ピン75に代えて、治具100を使用する。治具100は、取付穴72aにはめ込むことが可能な直径6mmの円筒形の胴部101と、その胴部101と同軸に形成された直径8mmの円筒形の頭部102とからなる。ウエハWがサセプタ72上に載置されるべき正しい位置から外れて載置されたときにはそのウエハWと治具100が接触するので、オペレータはハンドHがウエハWを治具100に接触せずに載置できるように、ハンドHの位置等を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハや液晶表示装置用ガラス基板等(以下、単に「基板」と称する)に対して熱処理等の所定の処理を施す基板処理装置の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいて、不純物導入は半導体ウエハ内にpn接合を形成するための必須の工程である。現在、不純物導入は、イオン打ち込み法とその後のアニール法によってなされるのが一般的である。イオン打ち込み法は、ボロン(B)、ヒ素(As)、リン(P)といった不純物の元素をイオン化させて高加速電圧で半導体ウエハに衝突させて物理的に不純物注入を行う技術である。注入された不純物はアニール処理によって活性化される。この際に、アニール時間が数秒程度以上であると、打ち込まれた不純物が熱によって深く拡散し、その結果接合深さが要求よりも深くなり過ぎて良好なデバイス形成に支障が生じるおそれがある。
【0003】
そこで、極めて短時間で半導体ウエハを加熱するアニール技術として、近年フラッシュランプアニール(FLA)が注目されている。フラッシュランプアニールは、キセノンフラッシュランプ(以下、単に「フラッシュランプ」とするときにはキセノンフラッシュランプを意味する)を使用して半導体ウエハの表面にフラッシュ光を照射することにより、不純物が注入された半導体ウエハの表面のみを極めて短時間(数ミリセカンド以下)に昇温させる熱処理技術である。キセノンフラッシュランプの放射分光分布は紫外域から近赤外域であり、従来のハロゲンランプよりも波長が短く、シリコンの半導体ウエハの基礎吸収帯とほぼ一致している。よって、キセノンフラッシュランプから半導体ウエハにフラッシュ光を照射したときには、透過光が少なく半導体ウエハを急速に昇温することが可能である。また、数ミリセカンド以下の極めて短時間のフラッシュ光照射であれば、半導体ウエハの表面近傍のみを選択的に昇温できることも判明している。このため、キセノンフラッシュランプによる極短時間の昇温であれば、不純物を深く拡散させることなく、不純物活性化のみを実行することができるのである。
【0004】
ところで、この種の基板処理装置には、装置内の所定の処理位置の載置部等に対して基板を搬送する搬送機構が付設されるのが一般的である。この場合、所定の位置に基板が搬送されないと、例えば基板の受け渡しが適切に行われなかったり、また基板の処理が適切に行われなかったりする。このため、例えば基板処理装置を含むシステムの立ち上げ作業の際、あるいはシステムのメンテナンス等の際には、搬送機構が基板を所定の位置まで搬送しているか否かを確認し、基板の搬送された位置がずれている場合には、搬送機構の搬送先の位置調整が行われている。
【0005】
この位置調整の方法として、例えばCCDカメラが搭載された軌跡検出用ウエハを搬送
アームに保持させ、搬送アームにより軌跡検出用ウエハを搬送し、CCDカメラにより搬
送アームの搬送先の停止位置を検出することが提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
また、静電容量センサを取り付けた位置検出用ウエハを用いて載置部との相対位置を検出して位置調整することも提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−243479号公報
【特許文献2】特開2009−54665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1、特許文献2のような手法では、静電容量センサやCCDカメラなどの光学的または電気的な構成が必要となり、構造が複雑化し高コストとなってしまう。本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、搬送機構の搬送先の位置調整を単純な構成で低コストにできる基板処理装置の調整方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決する為に、請求項1に係わる発明は、基板を搬送機構により基板処理装置の載置台に引き渡す際の引渡し位置を調整する基板処理装置の調整方法において、前記載置台に、基板が正位置から外れて載置されたとき当該基板に接触する調整用治具を装着する治具装着工程と、基板を前記搬送機構に保持させ、前記調整用治具が装着された前記載置台に対して引渡し動作を行わせつつ、当該引渡し動作を観察する引渡動作観察工程と、前記引渡動作観察工程において基板と前記調整用治具との接触が発生した場合に、当該引渡し動作時における前記載置台と前記搬送機構との相対位置を調整する調整工程と、前記引渡動作観察工程において基板と前記調整用治具との接触が発生しなかった場合に、前記調整用治具を前記載置台から取り外す取外し工程と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に係わる発明は、請求項1記載の基板処理装置の調整方法において、前記調整用治具は、基板が前記載置台に載置されるべき所定位置にあるときの外周縁に沿って配置されるものであることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係わる発明は、請求項1記載の基板処理装置の調整方法において、前記治具装着工程は、前記載置台に形成された取付穴に前記調整用治具をはめ込み装着するものであることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係わる発明は、請求項3記載の基板処理装置の調整方法において、前記取付穴は、基板処理時に、基板の位置ずれを防止するピンが装着されるものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、搬送機構の搬送先の位置調整を単純な構成で低コストにできる基板処理装置の調整方法が提供できる。
【0014】
特に請求項3の発明によれば、載置台に取付穴を形成することで、調整用治具を間単に装着することができる。
【0015】
さらに請求項4の発明によれば、基板の位置ずれ防止用のピンと調整用治具とで装着する取付穴を兼用でき、さらに単純かつ低コストに実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明が適用される熱処理装置の構成を示す縦断面図である。
【図2】図1の熱処理装置のガス路を示す断面図である。
【図3】保持部の構成を示す断面図である。
【図4】ホットプレートを示す平面図である。
【図5】図1の熱処理装置の構成を示す縦断面図である。
【図6】ピンと調整用治具を示す断面図である。
【図7】調整方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
<1.熱処理装置の構成>
【0019】
まず、本発明を実施する熱処理装置の全体構成について説明する。図1は、本発明に係る熱処理装置1の構成を示す縦断面図である。熱処理装置1は基板として略円形の半導体ウエハWに光を照射してその半導体ウエハW(以下、単にウエハWと称する)を加熱するランプアニール装置である。
【0020】
熱処理装置1は、ウエハWを収容する略円筒形状のチャンバー6と、複数のフラッシュランプFLを内蔵するランプハウス5と、を備える。また、熱処理装置1は、チャンバー6およびランプハウス5に設けられた各動作機構を制御してウエハWの熱処理を実行させるメインコントローラ3を備える。そしてこの熱処理装置1には、所定のウエハ供給格納機構(例えばFOUPであり、図示は省略している)と、そのウエハ供給格納機構との間でウエハWを搬送する搬送ロボットが設けられ、その搬送ロボットのハンドHによってウエハWがチャンバー6に対して搬入および搬出される。
【0021】
チャンバー6は、ランプハウス5の下方に設けられており、略円筒状の内壁を有するチャンバー側部63、および、チャンバー側部63の下部を覆うチャンバー底部62によって構成される。また、チャンバー側部63およびチャンバー底部62によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。熱処理空間65の上方は上部開口60とされており、上部開口60にはチャンバー窓61が装着されて閉塞されている。
【0022】
チャンバー6の天井部を構成するチャンバー窓61は、光学ガラスの一種であるBK7(ホウケイ酸クラウン光学ガラス)によって形成された円板形状部材である。BK7は、可視光および近赤外線は透過するものの、波長3μm以上の赤外線に対しては不透明である。すなわち、BK7によって形成されたチャンバー窓61は、ランプハウス5からチャンバー6内に照射される光のうち波長3μm以上の光を遮光するフィルターとして機能する。従って、ランプハウス5から出射された光のうち熱処理空間65に入射するのは波長3μm未満の光である。
【0023】
チャンバー6の本体を構成するチャンバー底部62およびチャンバー側部63は、例えば、ステンレススチール等の強度と耐熱性に優れた金属材料にて形成されており、チャンバー側部63の内側面の上部のリング631は、光照射による劣化に対してステンレススチールより優れた耐久性を有するアルミニウム(Al)合金等で形成されている。
【0024】
また、熱処理空間65の気密性を維持するために、チャンバー窓61とチャンバー側部63とはOリングによってシールされている。すなわち、チャンバー窓61の下面周縁部とチャンバー側部63との間にOリングを挟み込むとともに、クランプリング90をチャンバー窓61の上面周縁部に当接させ、そのクランプリング90をチャンバー側部63にネジ止めすることによって、チャンバー窓61をOリングに押し付けている。
【0025】
チャンバー底部62には、保持部7を貫通してウエハWをその下面(ランプハウス5からの光が照射される側とは反対側の面)から支持するための複数(本実施の形態では3本)の支持ピン70が立設されている。支持ピン70は、例えば石英により形成されており、チャンバー6の外部から固定されているため、容易に取り替えることができる。
【0026】
チャンバー側部63は、ハンドHによってウエハWを搬入および搬出を行うための搬送開口部66を有し、搬送開口部66は、軸662を中心に回動するゲートバルブ185により開閉可能とされる。チャンバー側部63における搬送開口部66とは反対側の部位には熱処理空間65に処理ガス(例えば、窒素(N<SUB>2</SUB>)ガスやヘリウム(He)ガス、アルゴン(Ar)ガス等の不活性ガス、あるいは、酸素(O<SUB>2</SUB>)ガス等)を導入する導入路81が形成され、その一端は弁82を介して図示省略の給気機構に接続され、他端はチャンバー側部63の内部に形成されるガス導入バッファ83に接続される。また、搬送開口部66には熱処理空間65内の気体を排出する排出路86が形成され、弁87を介して図示省略の排気機構に接続される。
【0027】
図2は、チャンバー6をガス導入バッファ83の位置にて水平面で切断した断面図である。図2に示すように、ガス導入バッファ83は、図1に示す搬送開口部66の反対側においてチャンバー側部63の内周の約1/3に亘って形成されており、導入路81を介してガス導入バッファ83に導かれた処理ガスは、複数のガス供給孔84から熱処理空間65内へと供給される。
【0028】
また、熱処理装置1は、チャンバー6の内部においてウエハWを水平姿勢にて保持しつつ光照射前にその保持するウエハWの予備加熱を行う略円板状の保持部7と、保持部7をチャンバー6の底面であるチャンバー底部62に対して昇降させる保持部昇降機構4と、を備える。図1に示す保持部昇降機構4は、略円筒状のシャフト41、移動板42、ガイド部材43(本実施の形態ではシャフト41の周りに3本配置される)、固定板44、ボールネジ45、ナット46およびモータ40を有する。チャンバー6の下部であるチャンバー底部62には保持部7よりも小さい直径を有する略円形の下部開口64が形成されており、ステンレススチール製のシャフト41は、下部開口64を挿通して、保持部7(厳密には保持部7のホットプレート71)の下面に接続されて保持部7を支持する。
【0029】
移動板42にはボールネジ45と螺合するナット46が固定されている。また、移動板42は、チャンバー底部62に固定されて下方へと伸びるガイド部材43により摺動自在に案内されて上下方向に移動可能とされる。また、移動板42は、シャフト41を介して保持部7に連結される。
【0030】
モータ40は、ガイド部材43の下端部に取り付けられる固定板44に設置され、タイミングベルト401を介してボールネジ45に接続される。保持部昇降機構4により保持部7が昇降する際には、駆動部であるモータ40がメインコントローラ3の制御によりボールネジ45を回転し、ナット46が固定された移動板42がガイド部材43に沿って鉛直方向に移動する。この結果、移動板42に固定されたシャフト41が鉛直方向に沿って移動し、シャフト41に接続された保持部7が図1に示すウエハWの受渡位置と、図5に示すウエハWの処理位置との間で滑らかに昇降する。
【0031】
そして、図1に示すウエハWの受け渡し位置においては、ハンドHにウエハWが載置されて搬送され、図1に示すように支持ピン70上方でハンドHが若干下降して支持ピン70上にウエハWが載置される。その後、ハンドHは図中の右方向に退避し、ゲートバルブ185が閉じられるとともに、保持部7が図5に示すウエハWの処理位置まで上昇して保持部7の上面のサセプタ72にウエハWが載置される。
【0032】
移動板42の上面には略半円筒状(円筒を長手方向に沿って半分に切断した形状)のメカストッパ451がボールネジ45に沿うように立設されており、仮に何らかの異常により移動板42が所定の上昇限界を超えて上昇しようとしても、メカストッパ451の上端がボールネジ45の端部に設けられた端板452に突き当たることによって移動板42の異常上昇が防止される。これにより、保持部7がチャンバー窓61の下方の所定位置以上に上昇することはなく、保持部7とチャンバー窓61との衝突が防止される。
【0033】
また、保持部昇降機構4は、チャンバー6の内部のメンテナンスを行う際に保持部7を手動にて昇降させる手動昇降部49を有する。手動昇降部49はハンドル491および回転軸492を有し、ハンドル491を介して回転軸492を回転することより、タイミングベルト495を介して接続されるボールネジ45を回転して保持部7の昇降を行うことができる。
【0034】
チャンバー底部62の下側には、シャフト41の周囲を囲み下方へと伸びる伸縮自在のベローズ47が設けられ、その上端はチャンバー底部62の下面に接続される。一方、ベローズ47の下端はベローズ下端板471に取り付けられている。べローズ下端板471は、鍔状部材411によってシャフト41にネジ止めされて取り付けられている。保持部昇降機構4により保持部7がチャンバー底部62に対して上昇する際にはベローズ47が収縮され、下降する際にはべローズ47が伸張される。そして、保持部7が昇降する際にも、ベローズ47が伸縮することによって熱処理空間65内の気密状態が維持される。
【0035】
図3は、保持部7の構成を示す断面図である。保持部7は、ウエハWを予備加熱(いわゆるアシスト加熱)するホットプレート(加熱プレート)71、および、ホットプレート71の上面(保持部7がウエハWを保持する側の面)に設置されるサセプタ72を有する。保持部7の下面には、既述のように保持部7を昇降するシャフト41が接続される。サセプタ72は石英(あるいは、窒化アルミニウム(AIN)等であってもよい)により形成され、その上面にはウエハWの移動、位置ずれを防止するピン75(詳細は後述する)がウエハWの周囲に配置される。サセプタ72は、その下面をホットプレート71の上面に面接触させてホットプレート71上に設置される。これにより、サセプタ72は、ホットプレート71からの熱エネルギーを拡散してサセプタ72上面に載置されたウエハWに伝達するとともに、メンテナンス時にはホットプレート71から取り外して洗浄可能とされる。
【0036】
ホットプレート71は、ステンレススチール製の上部プレート73および下部プレート74にて構成される。上部プレート73と下部プレート74との間には、ホットプレート71を加熱するニクロム線等の抵抗加熱線76が後述の如く配設されてヒータを構成し、導電性のニッケル(Ni)ロウが充填されて封止されている。また、上部プレート73および下部プレート74の端部はロウ付けにより接着されている。
【0037】
図4は、ホットプレート71を示す平面図である。図4に示すように、ホットプレート71は、保持されるウエハWと対向する領域の中央部に同心円状に配置される円板状のゾーン711および円環状のゾーン712、並びに、ゾーン712の周囲の略円環状の領域を周方向に4等分割した4つのゾーン713〜716を備え、各ゾーン間には若干の間隙が形成されている。また、ホットプレート71には、支持ピン70が挿通される3つの貫通孔77が、ゾーン711とゾーン712との隙間の周上に120°毎に設けられる。
【0038】
6つのゾーン711〜716のそれぞれには、相互に独立した抵抗加熱線76(図4には図示せず)が配設されて各ゾーン711〜716のそれぞれに対応するヒータを個別に構成している。その各ゾーン711〜716のヒータは個別に加熱制御が可能であり、保持部7に保持されるウエハWは、これらのヒータにより加熱される。また、ゾーン711〜716のそれぞれには、熱電対を用いて各ゾーンの温度を計測するセンサ710が埋め込んで設けられている。各センサ710は略円筒状のシャフト41の内部を通る配線を介してメインコントローラ3に接続される。
【0039】
ホットプレート71が加熱される際には、センサ710により計測される6つのゾーン711〜716のそれぞれの温度が予め設定された所定の温度になるように、各ゾーンに配設されたヒータの抵抗加熱線76への電力供給量がメインコントローラ3により制御される。メインコントローラ3による各ゾーンの温度制御はPID(Proportional Integral Derivative)制御により行われる。ホットプレート71では、ウエハWの熱処理(複数のウエハWを連続的に処理する場合は、全てのウエハWの熱処理)が終了するまでゾーン711〜716のそれぞれの温度が継続的に計測され、各ゾーンに配設されたヒータの抵抗加熱線76への電力供給量が個別に制御されて、すなわち、各ゾーンに内蔵されたヒータの温度が個別に制御されて各ゾーンの温度が設定温度に維持される。なお、各ゾーンの設定温度は、基準となる温度から個別に設定されたオフセット値だけ変更することが可能とされる。
【0040】
6つのゾーン711〜716にそれぞれ配設されるヒータの抵抗加熱線76は、シャフト41の内部を通る電力線を介して電力供給源(図示省略)に接続されている。電力供給源から各ゾーンに至る経路途中において、電力供給源からの電力線は、マグネシア(マグネシウム酸化物)等の絶縁体を充填したステンレスチューブの内部に互いに電気的に絶縁状態となるように配置される。なお、シャフト41の内部は大気開放されている。
【0041】
次に、ランプハウス5は、チャンバー6内の保持部7の上方に設けられている。ランプハウス5は、筐体51の内側に、複数本(本実施形態では30本)のキセノンフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、を備えて構成される。また、ランプハウス5の筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。ランプハウス5の底部を構成するランプ光放射窓53は、石英により形成された板状部材である。ランプハウス5がチャンバー6の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53がチャンバー窓61と相対向することとなる。ランプハウス5は、チャンバー6内にて保持部7に保持されるウエハWにランプ光放射窓53およびチャンバー窓61を介してフラッシュランプFLから光を照射することによりウエハWを加熱する。
【0042】
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が保持部7に保持されるウエハWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。
【0043】
また、リフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射された光を保持部7の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されて梨地模様を呈する。このような粗面化加工を施しているのは、リフレクタ52の表面が完全な鏡面であると、複数のフラッシュランプFLからの反射光の強度に規則パターンが生じてウエハWの表面温度分布の均一性が低下するためである。
【0044】
また、メインコントローラ3は、熱処理装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。メインコントローラ3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、メインコントローラ3は、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備えている。
【0045】
上記の構成以外にも熱処理装置1は、ウエハWの熱処理時にフラッシュランプFLおよびホットプレート71から発生する熱エネルギーによるチャンバー6およびランプハウス5の過剰な温度上昇を防止するため、様々な冷却用の構造を備えている。例えば、チャンバー6のチャンバー側部63およびチャンバー底部62には水冷管(図示省略)が設けられている。また、ランプハウス5は、内部に気体流を形成して排熱するための気体供給管55および排気管56が設けられて空冷構造とされている(図1参照)。また、チャンバー窓61とランプ光放射窓53との間隙にも空気が供給され、ランプハウス5およびチャンバー窓61を冷却する。
【0046】
上記構成において、フラッシュランプFLやホットプレート71のヒータを構成する抵抗加熱線76は、熱処理実行時において、ウエハWがサセプタ72の所定位置(実施形態では中央位置)に載置された場合を正規の処理状態として、その状態で所定の温度分布、均一性が得られるように設計され、制御される。
【0047】
図6(A)は直径300mmのウエハW用の熱処理装置1の保持部7を構成するサセプタ72の詳細と、正規の処理状態におけるウエハWのサセプタ72への載置位置を示している。サセプタ72には、ウエハWが置かれる所定位置すなわちサセプタ72の中央位置の周囲に沿って、取付穴72aが6箇所形成される。取付穴72aは直径6mmで、サセプタ72の中心を含む直径303mmの円を囲むようにその円に外接して等間隔に6箇所形成される。ピン75は石英製であって、取付穴72aにちょうどはめ込まれる大きさの円柱状に形成され、ピン75の上面75aは角度約15度の傾斜面に形成され、かかる傾斜面がサセプタ72の中心側すなわちウエハWが置かれる側が低くなるように取り付けられる。またサセプタ72の中心側に位置する上面75aの低い側の端部は、サセプタ72表面よりもやや低い高さとなるよう取り付けられる。
【0048】
この種の熱処理装置1においては、急激な温度変化によりウエハWの表面が局部的に膨張あるいは収縮等を起こし、それに伴う基板の反りなどの変形や、その反りが発生しあるいは元に戻る際にウエハWのサセプタ72に対する位置ずれが起こることがある。しかるに、本熱処理装置1においては、上記ピン75の構造により、仮にウエハWの移動、位置ずれが起ころうとしても、傾斜した上面75aにウエハWの端縁が乗り上げることで、その位置ずれの発生を抑制し、また傾斜した上面75aに乗り上げることでウエハWに大きな応力がかかってウエハWが破損することをも防止している。
【0049】
図1、図5に示すように、本実施形態の熱処理装置1は、石英プローブ18および波形計測部20を備える。石英プローブ18は、石英製の導光ロッドであり、チャンバー側部63およびリング631を貫通して設けられている。石英プローブ18は、その長手方向が水平方向に沿うように設けられている。図5に示すように、石英プローブ18が設置される高さ位置は処理位置に保持されるウエハWの高さ位置よりも若干上方であることが好ましい。また、石英プローブ18の基端はチャンバー側部63を貫通してチャンバー6の外部に面している。なお、石英プローブ18は、その先端が処理位置のウエハWに向かうように傾斜して設けられていても良い。
【0050】
<2.熱処理装置の動作>
【0051】
<2−1.熱処理装置における処理手順全体の概要>
【0052】
次に、上記の構成を有する熱処理装置1の動作について説明する。この熱処理装置1を使用する場合、主として次の2つの工程を実行する。
(1)搬送ロボットのハンドHによる搬送位置確認および調整工程
(2)熱処理実行工程
熱処理装置1の使用にあたっては、実際のウエハWの処理に先立ち、まず(1)の搬送ロボットのハンドHによるウエハWの搬送位置確認および調整工程が実行される。そしてその後に、(2)のウエハWの熱処理実行工程が実行される。それぞれの工程について以下に説明する。
【0053】
<2−2.(1)搬送位置確認および調整工程の内容>
【0054】
上述の通り、フラッシュランプFLやホットプレート71のヒータを構成する抵抗加熱線76は、熱処理実行工程において、ウエハWがサセプタ72の所定位置(実施形態では中央位置)に載置された場合を正規の処理状態として、その状態で所定の温度分布、均一性が得られるように設計され、制御される。従って、搬送ロボットのハンドHは、ウエハWをサセプタ72に搬送する際に、ウエハWが正規の処理状態となるようにサセプタ72の所定位置に置くように動作しなければならない。熱処理装置1の設置後の立ち上げ時や、サセプタ72の清掃、搬送ロボットなどのメンテナンスを行った場合の装置の再起動時には、この(1)の搬送位置確認および調整工程を実行し、ウエハWが所定の位置に置かれるかを確認し、もし位置がずれている場合にはその調整を行う。
【0055】
この工程においては、ピン75に代えて、治具100を使用する。治具100はウエハWがサセプタ72上に載置されるべき正しい位置を規定し、ウエハWが正しい位置から外れて(ずれて)載置されたときにはそのウエハWと接触する構造を有する。詳細に説明すると、治具100は、取付穴72aにはめ込むことが可能な直径6mmの円筒形の胴部101と、その胴部101と同軸に形成された直径8mmの円筒形の頭部102とからなり、合計6本をサセプタ72の6箇所の取付穴72aに図6(B)の如くはめ込んで使用する。そしてこの状態でウエハWを正しい位置に載置した場合、ウエハWの全周にわたってその外周と治具100との間に0.5mmの隙間を保つことができるようになり、ウエハWが治具100に接触せずに載置できた場合には、0.5mmの精度でウエハWを正しい位置に載置できたことになる。この工程では、ウエハWをハンドHで搬送したとき、この図6(B)に示す状態となるように、ハンドH等を調整する。
【0056】
図7はかかる確認と調整の方法を示すフローチャートであり、これを用いて以下に説明する。まず、サセプタ72が清掃等を行うために取り外されている場合には、これをオペレータがホットプレート71の上部に取り付ける(ステップS1)。次に、オペレータは6個の治具100をサセプタ72の6箇所の取付穴72aにはめ込んで装着する(ステップS2)。次にオペレータは、熱処理装置1の動作モードとして「搬送チェックモード」をメインコントローラ3に入力する(ステップS3)。メインコントローラ3はこの「搬送チェックモード」が設定されると、以下のステップによる制御を実行する。
まずメインコントローラ3は、「搬送チェックモード」のレシピ内容として「加熱:No(しない)」「搬送:Slow(低速)」を設定する(ステップS4)。そして、搬送系(すなわち搬送ロボットのハンドHおよびサセプタ72)の位置を初期化し、それらを待機位置に位置させる(ステップS5)このとき搬送ロボットのハンドHは原点位置に移動し、サセプタ72は支持ピン70に対して下降した図1に示す位置とされる。ハンドHとサセプタ72の初期化が終了すると、メインコントローラ3は、ステップS4で設定したレシピ、すなわち「ホットプレート71およびフラッシュランプFLによる加熱を行わず」、「ハンドHによるウエハWの搬送速度およびサセプタ72の昇降速度を低速」の設定に従い、熱処理装置1を動作させる(ステップS6)。このとき、熱処理装置1においては、ウエハ供給格納機構からウエハWを1枚取り出し、ハンドHによって保持してチャンバー6に搬送し、ハンドHが支持ピン70の上方で若干下降していったん支持ピン70上に引き渡した後、ハンドHは退避し、サセプタ72の上昇によって支持ピン70からサセプタ72に引き渡す一連の搬送動作が低速の設定で行われる。
【0057】
このとき、オペレータはかかるサセプタ72の相対的上昇によってしてウエハWが支持ピン70からサセプタ72に引き渡される様子を注視して観察し(ステップS7)、ウエハWが治具100と接触したか否かを判断する(ステップS8)。このときオペレータは、ウエハWがサセプタ72に載置される前後の動きを注視し、治具100との接触音がないか、また治具100に乗り上げた後でサセプタ72の表面に落下していないか、注意する。
【0058】
このステップS8の判断によって、ウエハWが治具100と接触した場合には、ウエハWが所定の位置に搬送されていないのであるから、オペレータはメインコントローラ3によって熱処理装置1をメンテナンスモードに切り換えて、搬送ロボットのハンドHの搬送先の位置を修正するティーチング作業を行う(ステップS9)。ここではウエハWが治具100と接触した位置を考慮して、接触しなくなる位置に搬送するように搬送先の位置を調整する。そしてステップS3に戻る。
【0059】
このステップS8の判断によって、ウエハWが治具100と接触しなかった場合(一度は接触したが、ステップS9の調整の結果、接触しなくなった場合も含む)は、ウエハWが所定の位置に所定の位置精度で搬送されるように、サセプタ72や搬送ロボットのハンドHが位置設定されていることを意味する。この場合、そのままチェックモードの動作を続けてウエハWがウエハ供給格納機構に搬送されて戻るのを待って、治具100を取り外し、ピン75を取り付けて(ステップS10)、搬送位置確認および調整工程を終了する。
【0060】
<2−3.(2)熱処理実行工程の内容>
【0061】
次に(2)熱処理実行工程について説明する。この工程において、処理対象となるウエハWはイオン打ち込み法により不純物(イオン)が注入された半導体基板であり、注入された不純物の活性化が熱処理装置1による光照射加熱処理(アニール)により実行される。この工程においては、まず、図1に示すように、保持部7が下がった位置(すなわちウエハWの受け渡し位置)として、ゲートバルブ185を開放した状態で、搬送ロボットのハンドHが処理対象であるウエハWを保持して保持部7の支持ピン70の上まで搬送して若干下降し、図1に示すように支持ピン70上にウエハWを載置する。その後、ハンドHは図中の右方向に退避し、ゲートバルブ185を閉じ、保持部7を上昇させて、図5に示すようにウエハWをサセプタ72上の所定の位置に載置する。
【0062】
次に、処理対象となるウエハWの加熱処理を行う。具体的には、まず保持部7のホットプレート71のヒータを作動させてサセプタ72を介してウエハWを予備加熱(いわゆるアシスト加熱)する。所定の温度までウエハWを予備加熱したところで、続いてフラッシュランプFLから強力な瞬間的な光照射を行って短時間でウエハWを急速に加熱する。そしてこれら所定の加熱処理が終了すると、保持部7を下降させ、ウエハWを支持ピン70で支持し、ゲートバルブ185を開放してハンドHが処理対象であるウエハWを搬出する。
【0063】
なお、この実施形態において、治具100の配置や数、治具100の頭部102の大きさは、ウエハWをサセプタ72に載置する位置に要求される正確さによって決定すればよい。例えば、頭部の大きさを直径7mmにした場合には、載置する位置の精度は低下するが、調整作業が容易になる。
【0064】
<3.効果>
【0065】
本実施形態におけるハンドHの搬送位置確認および調整方法によれば、搬送先の位置調整を任意の精度で、単純な構成で低コストに行うことができる。
【0066】
調整用の治具100は取付穴72aにはめ込むだけで簡単に装着できる。しかも取付穴72aは、ウエハWの処理時にウエハWの移動、位置ずれを防止するピン75の装着と兼用して使用するので、構造も単純簡単であり低コストに実現できる。
【0067】
<4.変形例>
【0068】
本実施形態では、ウエハWがサセプタ72上に載置されるべき正しい位置を規定し、基板が正しい位置から外れて(ずれて)載置されたときにはその基板と接触する調整用治具として、ピン75の取付穴72aにはめ込む円筒形の治具100を使用したが、これ以外の形状、構造のものを使用することもできる。図6(C)は、調整用治具として、サセプタ72の上縁にはめ込む石英製のリング103を用いる例を示す。この例では、サセプタ72に取付穴を形成する必要がなく、リング103の内縁103aの大きさ形状によって載置位置精度を設定することができる。
【0069】
また、この実施形態ではランプアニール装置に適用した例を示したが、これに限らず、レーザ加熱装置や冷却装置、あるいはアライメント装置など各種装置の調整にも利用できる。治具の素材も、石英に限らず、利用装置に応じてステンレス、アルミ等の金属、アルミナなどの非金属等を利用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 熱処理装置
3 メインコントローラ
4 保持部昇降機構
6 チャンバー
7 保持部
70 支持ピン
71 ホットプレート
72 サセプタ
75 ピン
100 治具
101 胴部
102 頭部
103 リング
FL フラッシュランプ
W 半導体ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を搬送機構により基板処理装置の載置台に引き渡す際の引渡し位置を調整する基板処理装置の調整方法において、
前記載置台に、基板が正位置から外れて載置されたとき当該基板に接触する調整用治具を装着する治具装着工程と、
基板を前記搬送機構に保持させ、前記調整用治具が装着された前記載置台に対して引渡し動作を行わせつつ、当該引渡し動作を観察する引渡動作観察工程と、
前記引渡動作観察工程において基板と前記調整用治具との接触が発生した場合に、当該引渡し動作時における前記載置台と前記搬送機構との相対位置を調整する調整工程と、
前記引渡動作観察工程において基板と前記調整用治具との接触が発生しなかった場合に、前記調整用治具を前記載置台から取り外す取外し工程と、
を備えたことを特徴とする基板処理装置の調整方法。
【請求項2】
請求項1記載の基板処理装置の調整方法において、
前記調整用治具は、基板が前記載置台に載置されるべき所定位置にあるときの外周縁に沿って配置されるものであることを特徴とする基板処理装置の調整方法。
【請求項3】
請求項1記載の基板処理装置の調整方法において、
前記治具装着工程は、前記載置台に形成された取付穴に前記調整用治具をはめ込み装着するものであることを特徴とする基板処理装置の調整方法。
【請求項4】
請求項3記載の基板処理装置の調整方法において、
前記取付穴は、基板処理時に、基板の位置ずれを防止するピンが装着されるものであることを特徴とする基板処理装置の調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−54257(P2012−54257A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193006(P2010−193006)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】