説明

基板処理装置及び半導体装置の製造方法

【課題】処理室内を短時間で冷却することができる基板処理装置及び半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】基板処理装置10は、ウエハ1を処理する処理室12と、処理室12の外周側に設けられたヒータ39と、ヒータ39の外周側に設けられた内側壁34と、内側壁34との間に空間36を形成して設けられる外側壁35と、空間36に設けられる冷却された水冷ジャケットと、内側壁34及び外側壁35の一方と接触する接触位置と、内側壁34及び外側壁35のいずれにも接触しない非接触位置との間で水冷ジャケットを移動させる移動機構64と、移動機構64を制御するコントローラとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板を処理する処理室と、この処理室を加熱するヒータユニットとを備えている基板処理装置において、前記ヒータユニットは前記処理室の外側を取り囲むように敷設された発熱体と、この発熱体を取り囲むように敷設された第一反射体と、この第一反射体の外側を空間をとって取り囲むように敷設された第二反射体と、前記空間を排気する排気管と、前記空間にガスを供給する供給管とを備えている基板処理装置が知られている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−311648号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の基板処理装置では、処理室内を冷却することに時間を要するとの問題点があった。
【0005】
本発明の目的は、処理室内を短時間で冷却することができる基板処理装置及び半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基板を処理する処理室と、前記処理室の外周側に設けられ、前記処理室を加熱する発熱体と、前記発熱体の外周側に設けられる環状の内側壁と、前記内側壁の外周側との間に間隙を形成して設けられる環状の外側壁と、前記間隙に設けられる冷却された環状の冷却部材と、前記内側壁及び前記外側壁の少なくともいずれか一方と接触する接触位置と、前記内側壁及び前記外側壁のいずれにも接触しない非接触位置との間で前記冷却部材を移動させる移動機構と、少なくとも前記移動機構を制御する制御部と、を有する基板処理装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、処理室内を短時間で冷却することができる基板処理装置及び半導体装置の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明の実施の形態を図面に即して説明する。
【0009】
図1及び図2には、本発明の第1の実施形態に係る基板処理装置10が示されている。基板処理装置10は、バッチ式縦形ホットウオール形酸化・拡散装置として構成されている。
【0010】
基板処理装置10は、中心線が垂直になるように縦に配されて固定的に支持された縦形のプロセスチューブ11を有する。プロセスチューブ11は、石英(SiO)が用いられて上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。
プロセスチューブ11の円筒状の中空部によって、基板として用いられるウエハ1を処理する処理室12が形成される。処理室12では、複数のウエハ1が一括して処理される。また、プロセスチューブ11の下端部に形成された開口部は炉口13として用いられる。炉口13を介して、処理室12内にウエハ1が出し入れされる。
【0011】
プロセスチューブ11の外側には、均熱チューブ14が、プロセスチューブ11に被さるように設けられている。均熱チューブ14は、例えば炭化シリコンで形成され、上端が閉塞し、下端が開口していて、プロセスチューブ11よりも大径の円筒形状をしている。また、均熱チューブ14には、上端閉塞壁には通気孔14aが開設されている。
【0012】
プロセスチューブ11と均熱チューブ14との間には、通気路15がドーナツ形状に形成されており、通気路15には冷媒として用いられる、例えばクリーン空気が流通するようになっている。通気路15内のクリーン空気は、通気孔14aから排出される。尚、通気孔14aは設けなくても良い。
【0013】
また、基板処理装置10は、筐体16を有する。筐体16は、プロセスチューブ11、及び均熱チューブ14を重力方向下方から支持する。
【0014】
また、基板処理装置10は、排気管17を有する。排気管17は、一端部が、プロセスチューブ11の側壁の下端部に接続されている。排気管17の他端部は、排気装置(図示せず)に接続されている。排気装置は、排気により、処理室12を所定の圧力に保つために用いられている。
【0015】
また、基板処理装置10は、ガス導入管18を有する。ガス導入管18は、プロセスチューブ11側壁の下端部の排気管17とは別の位置に設けられている。
【0016】
プロセスチューブ11の下方には、シールキャップ21が設けられている。シールキャップ21は、円板形状で形成され、プロセスチューブ11の中心線の延長線上を、ボートエレベータ(図示せず)によって昇降されるように設けられている。
【0017】
シールキャップ21の上方には、断熱キャップ22が設けられている。断熱キャップ22は、プロセスチューブ11の炉口13の近傍を断熱するために用いられていて、複数本の保持部材23によって複数枚の断熱板24を水平にかつ互いに中心を揃えた状態で整列して保持することができるようになっている。
【0018】
断熱キャップ22の上には、円板形状に形成されたサブヒータユニット25が、断熱キャップ22と同軸かつ水平に設置されている。サブヒータユニット25の上には、ボート26が垂直に立設されている。ボート26は複数本の保持部材27によって複数枚のウエハ1を水平にかつ互いに中心を揃えた状態で整列して保持するように構成されている。シールキャップ21には、処理室12内の温度を検知する温度検知器として用いられる温度センサ28が上下方向に挿入されている。
【0019】
均熱チューブ14の外側には、ヒータユニット30が均熱チューブ14を全体的に囲うように設置されている。ヒータユニット30は、筐体16によって垂直に支持されている。また、ヒータユニット30は、薄い鋼板等によって円筒形状に形成されたケース31を有していて、ケース31の内周面にはセラミックファイバー等の断熱材32が薄く内張りされている。
【0020】
断熱材32は、その内側に、所謂魔法瓶構造の断熱槽33が同心円に設置されている。断熱槽33は、内側壁34と外側壁35とを有している。
内側壁34は、後述する発熱体としてのヒータ39の外周側に設けられる環状の内側壁として用いられていて、均熱チューブ14の外径よりも大径の円筒形状を有している。外側壁35は、内側壁34と同軸状であって、内側壁34の外周側との間に空間36を形成して設けられる環状の外側壁として用いられていて、内側壁34よりも大径の円筒形状を有している。内側壁34により加熱空間420が形成されている。
【0021】
また、内側壁34及び外側壁35は、金属やセラミック及び絶縁物等の耐熱性を有する材料で本体が形成され、本体の表面が電解研磨等により鏡面仕上げされている。好ましくは、内側壁34及び外側壁35の本体の表面には、酸化シリコン(SiO)、もしくは窒化シリコン(SiN)、又は酸化シリコン(SiO)及び窒化シリコン(SiN)の多重コーティング層から形成された反射コーティング膜が被着されていて、この反射コーティング膜により内側壁34及び外側壁35の反射率が高められると良い。
【0022】
内側壁34及び外側壁35の材質は、後述するヒータ39と同素材とすることが望ましい。これにより、内側壁34及び外側壁35の耐熱性、熱特性を熱源であるヒータ39と同様にすることができる。また、内側壁34をヒータ39同素材とする場合、内側壁34とヒータ39との間の通電を防止するための絶縁材を用いて、内側壁34とヒータ39とを隔離することが望ましい。
【0023】
空間36は、内側壁34の外周側と、外側壁35の内周側との間に形成される隙間として用いられていて、内側壁34と外側壁35とが同心円に配置されることにより形成されている。
【0024】
また、空間36の上下流端部には、冷却媒体であり、例えば気体である空気(クリーン空気)、もしくは不活性ガスとしての窒素ガスを流通させるための供給管37と排出管38とがそれぞれ接続されている。
【0025】
好ましくは、空間36は気密空間とし、空気断熱部として用いると良い。空間36の例えば上端部に、例えば蓋等により形成された開閉機構を設け、通常は蓋等を閉じて、空間36を閉鎖空間とし、冷却がなされるときは、空間36の内圧と外圧との差によって蓋等が開き、空間36内が冷却されるようにすることが望ましい。これにより、冷却速度の向上が図れる。
蓋等の開閉機構は、駆動源からの駆動伝達を受けて開閉するようにしても良い。この場合、後述する移動機構64と兼用し、移動機構64を切り替えて用いるようにしても良いし、移動機構64とは別の駆動源を用いても良い。
【0026】
内側壁34の内側には、処理室12を加熱する発熱体として用いられるヒータ39が設けられている。ヒータ39は、例えば珪化モリブデン(MoSi)で形成され、均熱チューブ14の周囲を包囲するように同心円に設けられている。ヒータ39は、珪化モリブデン(MoSi)に替えて、金属発熱材、カーボンを用いても良い。
【0027】
また、ヒータ39は、垂直方向に複数のヒータ部に分割されている。ヒータ39の分割された部分は、温度コントローラ(図示せず)と接続されていて、温度コントローラによって、互いに連携し、独立してシーケンス制御されるように構成されている。
【0028】
また、ヒータ39としては、断面形状が円形、又は楕円形である棒状のヒータや、平面にパターンを形成したヒータを用いても良い。また、ヒータ39を密に配置して、ヒータの表面積を大きくすれば、大きくした表面積に応じて、ウエハ1を高速で加熱することができるようになる。また、放熱が他の部分よりも大きい上部及び下部に配置されたヒータ39の密度を、他の部分に配置されたヒータ39の密度よりも密にすれば、処理室12を均一に加熱することができる。
【0029】
断熱槽33と均熱チューブ14との間には冷却空気41を流通させるための冷却空気通路42が、均熱チューブ14を全体的に包囲するように形成されている。
また、断熱槽33の下端部には冷却空気41を冷却空気通路42に供給する給気管43が接続されており、給気管43に供給された冷却空気41は冷却空気通路42の全周に拡散するようになっている。
また、断熱槽33の上端には断熱材等によって形成されたカバー44が被せられており、カバー44の中央部には排気口45が開設され、排気口45には排気路46が接続されている。排気口45に対向する位置にサブヒータユニット47が設置されている。
【0030】
空間36内には、冷却部材としての水冷ジャケット60が設けられている。水冷ジャケット60は、例えば強制的に、冷却される環状の冷却部材として用いられていて、内側壁34及び外側壁35と同軸状であり、円筒形状で形成されている。
【0031】
水冷ジャケット60には、水冷ジャケット60を水冷するために用いられる水冷装置62と、水冷ジャケット60を移動させるために用いられる移動機構64とが装着されている。
移動機構64は、水冷ジャケット60を、内側壁34及び外側壁35の少なくともいずれか一方に接触する接触位置と、内側壁34及び外側壁35のいずれにも接触しない非接触位置との間で移動させる。図1及び図2には、水冷ジャケット60が、内側壁34及び外側壁35と非接触位置にある状態が示されている。
【0032】
水冷ジャケット60が内側壁34に接触すると、内側壁34より水冷ジャケット60の温度が低いため、水冷ジャケット60へと熱が伝導し、内側壁34が冷却される。また、水冷ジャケット60が外側壁35に接触すると、外側壁35より水冷ジャケット60の温度が低いため、水冷ジャケット60へと熱が伝導し、外側壁35が冷却される。
【0033】
図3(a)には、水冷ジャケット60の第1の例が示されている。
図3(a)に示されるように、水冷ジャケット60の第1の例は、2つジャケット本体66、66を有する。ジャケット本体66、66は、それぞれ半円筒形で形成され、2つのジャケット本体66、66の両端部が互いに当接することで、円筒形状となる。また、ジャケット本体66、66には、先述の移動機構64がそれぞれ接続されている。
好ましくは、水冷ジャケット60が内側壁34と接触した状態で、水冷ジャケット60の両端部が互いに当接するように形成すると良い。このようにすると、外側壁35にくらべ高温になりがちであり、基板の温度制御に直接影響を与えやすい内側壁34をむらなく効率的に冷却することができる。
【0034】
ジャケット本体66、66の外側壁35(図1参照)と対向する面には、それぞれパイプ68、68が取り付けられている。パイプ68は、ジャケット本体66の長手方向に沿った長手方向部分68aと、互いに隣り合う長手方向部分68aを連結する連結部分68bとを有している。パイプ68、68には、それぞれ一端部側に先述の水冷装置62からの水の供給がなされ、他端部側から水冷装置62へと水が戻される。
【0035】
図3(b)には、水冷ジャケット60の第2の例が示されている。
先述の第1の例では、ジャケット本体66、66は、ぞれぞれ半円筒形を有していたのに対して、この第2の例では、さらに、ジャケット本体66、66は上下に分割され配置されている。また、この第2例では、パイプ68は、ジャケット本体66、66の周方向に沿った周方向部分68cと、互いに隣り合う周方向部68cを連結する連結部68dとを有している。
尚、第1の例、及び第2の例では、2つのジャケット本体66、66にそれぞれ取り付けられたパイプ68、68は、互いに連結されていないが、伸縮自在なフレキシブルチューブを用いて2つのパイプ68、68を連結し、冷却水を導通可能に構成しても良い。
【0036】
また、第1の例、又は第2の例において、パイプ68をジャケット本体66に螺旋状に巻きつけるように装着しても良い。また、この実施形態では、内側壁34、外側壁35を冷却するために、水冷装置62を用い、パイプ68内を流す冷却用の媒体として水を用いているが、水以外の液体や気体を冷却用の媒体として、内側壁34、外側壁35を冷却しても良い。但し、冷却用の媒体としては、気体よりも液体を用いることが望ましい。液体を冷却用の媒体として用いれば、気体を用いる場合と比較して、高い冷却効率が得られる。
【0037】
また、第1の例、及び第2の例では、ジャケット本体66の外周側にパイプ68を装着しているが、これに替えて、ジャケット本体66の内周側にパイプ68を装着しても良い。また、好ましくは、ジャケット本体66の内周側と外周側との双方にパイプ68を装着すると、よりいっそう高い冷却効果が得られる。
【0038】
また、ジャケット本体66の内周側、及び外周側の少なくともいずれか一方にパイプ68を装着することに替えて、ジャケット本体66内に、冷却水等の冷却媒体が流れる流路を形成しても良い。ジャケット本体66内に流路を形成する場合、例えば、ジャケット本体66を2層化(ブロック化)し、2つの層の間に流路を形成すれば良い。
パイプ68を装着する場合、外側壁35、又は内側壁34に対して、パイプ68だけが接触して、ジャケット本体66は接触しない可能性が生じてしまう。これに対して、ジャケット本体66内に冷却水の流れる流路を形成すれば、ジャケット本体66と、外側壁35、内側壁34との接触面積を大きくすることができる。
【0039】
図4及び図5には、移動機構64が示されている。
移動機構64は、ジャケット本体66を移動させるための駆動源として用いられる空気シリンダ70を有する。空気シリンダ70は、外側壁35に固定されたシリンダ本体72と、シリンダ本体72に装着され、シリンダ本体72からの突出量が変わるように移動する移動片74とを有する。また、移動機構64は、ジャケット本体66を移動可能に支持する支持機構76を有する。支持機構76は、外側壁35に対して摺動することができるように取り付けられた摺動部材78を有し、摺動部78の端部が、ジャケット本体66に接続されている。
【0040】
以上のように構成された移動機構64では、空気シリンダ70を駆動させることで、摺動部材78に支持された状態で、水冷ジャケット60が、内側壁34に接触する位置と、外側壁35に接触する位置と、内側壁34及び外側壁35のいずれにも接触しない位置との間で移動する。
【0041】
この実施形態では、空気シリンダ70を用いて水冷ジャケット60を移動させているが、空気シリンダ70を用いることに替えて、例えば電動シリンダを用いて水冷ジャケット60を移動させても良い。また、また、空気シリンダ70を用いることに替えて、例えば、モータとボールねじ等を用いて水冷ジャケット60を移動させても良い。この際、空気シリンダを用いる場合も、モータとボールねじとを用いる場合も、空気シリンダ70を用いる場合と同様に、支持機構76を設けることが望ましい。
【0042】
また、この実施形態では、水冷ジャケット60は、2つジャケット本体66、66を有しているが、ジャケット本体66は3個以上であっても良い。
【0043】
図6には、内側壁34、外側壁35、及びジャケット本体66の形状の一例が説明されている。
ジャケット本体66の内側の面661の曲率、すなわち、ジャケット本体66の内側壁34に対向する面の曲率は、内側壁34の外側の面340の曲率、すなわち内側壁34のジャケット本体66と対向する面の曲率と同じとなっている。このため、ジャケット本体66の内側の面661と、内側壁34の外側の面340とは隙間なく接触可能である。
【0044】
また、ジャケット本体66の外側の面660の曲率、すなわち、ジャケット本体66の外側壁35に対向する面の曲率は、外側壁35の内側の面351の曲率、すなわち外側壁35のジャケット本体66と対向する面の曲率と同じとなっている。このため、例えば、冷却水の流路をジャケット本体66内に埋め込むように形成した場合、ジャケット本体66の外側の面660と、外側壁35の内側の面351とは隙間なく接触可能である。
【0045】
図7には、内側壁34、外側壁35、及びジャケット本体66の形状の第1の変形例が説明されている。
この変形例では、先述の例と同様に、ジャケット本体66の内側の面661の曲率は、内側壁34の外側の面340の曲率と同じとなっている。このため、ジャケット本体66の内側の面661と、内側壁34の外側の面340とは隙間なく接触可能である。
【0046】
また、ジャケット本体66の外側の面660の曲率は、ジャケット本体66の内側の面661の曲率と同じである。このため、外側壁35の内側の面351の曲率は、ジャケット本体66の外側の面660の曲率よりも大きく、外側壁35の内側の面351と、ジャケット本体66の外側の面660との間には隙間が形成される。
そこで、この第1の変形例では、外側壁35の内側の面351に、ジャケット本体66の外側の面660と内側の曲率が同じプレート80を設けて、さらに、このプレート80と外側壁35との間に熱伝導用の連結部材80a、80aを設けて、ジャケット本体66とプレート80とが隙間なく接触し、熱伝導を促進することができるようにしている。
【0047】
図8には、内側壁34、外側壁35、及びジャケット本体66の形状の第2の変形例が説明されている。
この変形例では、先述の例と同様に、ジャケット本体66の内側の面661の曲率は、内側壁34の外側の面340の曲率と同じとなっている。このため、ジャケット本体66の内側の面661と、内側壁34の外側の面340とは隙間なく接触可能である。
【0048】
また、ジャケット本体66の外側の面660の曲率は、ジャケット本体66の内側の面661の曲率と同じであり、さらに、外側壁35の内側の面351の曲率もジャケット本体66の内側の面661の曲率と同じとなるように変形されている。このため、ジャケット本体66の外側の面660と外側壁35の内側の面351とは、隙間なく接触可能である。
【0049】
図9には、内側壁34、外側壁35、及びジャケット本体66の形状の第3の変形例が説明されている。
この変形例では、先述の例と同様に、ジャケット本体66の内側の面661の曲率は、内側壁34の外側の面340の曲率と同じとなっている。このため、ジャケット本体66の内側の面661と、内側壁34の外側の面340とは隙間なく接触可能である。
【0050】
また、ジャケット本体66の外側の面660の曲率は、ジャケット本体66の内側の面661の曲率と同じである。このため、外側壁35の内側の面351の曲率は、ジャケット本体66の外側の面660の曲率の曲率よりも大きく、外側壁35の内側の面351と、ジャケット本体66の外側の面660との間には隙間dが形成される。
そして、この第3の変形例では、隙間dに合せた均熱ブロック82、82が、例えば所定の間隔で外側壁35の内側の面351に取り付けられている。
【0051】
図10には、外側壁35の変形例が示されている。
この変形例では、ジャケット本体66の外周側にパイプを装着しているタイプの水冷ジャケット60に対応するべく、外側壁35に凹部35aが形成されている。凹部35aには、水冷ジャケット60が外側壁35に接触するように移動した際に、ジャケット本体66の外側壁35の対向する面に取り付けられたパイプ68が嵌りこむ。このため、水冷ジャケット60のパイプ68だけが外側壁35に接するのではなく、水冷ジャケット60が外側壁35に接するようになる。
【0052】
図11には、基板処理装置10が有するコントローラ100が示されている。
コントローラ100は、少なくとも移動機構64を制御する制御部として用いられ、制御回路102を有し、制御回路102に温度センサ28からの出力が入力され、制御回路102からの出力で、少なくとも水冷装置62、移動機構64、ヒータ39、サブヒータユニット25、及びサブヒータユニット47が制御される。また、制御回路102には、操作手段として用いられる操作パネル104が取り付けられている。
【0053】
以上のように構成された基板処理装置10においては、処理室12内におけるウエハ1の処理温度と、処理室内の温度を上昇させる昇温工程にあるか、処理室内の温度を処理温度に安定させて所定の範囲内に保ち、基板を処理する処理工程あるか、処理室内の温度を下降させる降温工程にあるかに応じて、コントローラ100による制御がなされる。また、コントローラ100による制御では、ヒータ39が発する熱の温度に応じた波長の変化と、ウエハ1の熱特性とが考慮される。
【0054】
図12には、ヒータ39が発する発熱温度と、ピーク波長と関係が示されている。図12において、縦軸は波長(μm)を示し、横軸は温度(℃)を示している。
また、図13には、シリコンで構成されるウエハ1の熱特性として、温度と、ウエハ1が熱を反射する反射率及び熱を放射する放射率との関係が示されている。図13においては、縦軸は、ウエハ1が熱を放射する放射率と、ウエハ1が熱を反射する反射率とを示し、横軸は温度(℃)を示している。
【0055】
図12に示されるように、ヒータ39等が発する熱の波長は、温度が50℃以上250℃未満程度の低温領域においては、4μmから6μm程度である。そして、温度が250℃以上500℃未満の中温領域、及び温度が500℃以上1050℃未満の高温領域では、波長は2.2μmから4μm程度となっている。
【0056】
図13に示されるように、ウエハ1は、温度が50℃以上250℃未満程度までの低温領域では、反射率が高く逆に放射率(吸収率)が低い。このため、この温度領域では、ウエハ1に熱は吸収されにくく、ウエハ1は加熱されにくい。一方、温度が250℃以上となると、ウエハ1が熱を吸収する割合が、温度上昇に応じて上昇することがわかる。
尚、ウエハ1が最も吸収しやすいピーク波長は、0.9μm程度である。また、プロセスチューブ11は石英(SiO)で形成され、波長が4μm以上の熱を吸収するため、波長が4μm以上の熱ではウエハ1の温度が上昇しにくい。
【0057】
以上のヒータ39の発する熱線の波長と温度との関係、及びウエハ1の熱特性から、低温領域でウエハ1を効率よく加熱するためには、ヒータ39自体の温度を上げて、発光波長を短くすることが有効であることがわかる。すなわち、ヒータ39の周辺の温度と、ヒータ39との温度とに温度差を設けて、ヒータ39から発せられる熱の温度を250℃以上1050℃未満とすると、波長が2.2μmから4μm程度となり、ウエハ1が熱を吸収しやすくなる。そして、ヒータ39の周辺の温度と、ヒータ39との温度差を設けるためには、内側壁34を冷却することが有効である。一方、500℃以上の温度領域では、内側壁34を冷却しすぎると加熱空間420が冷却されすぎてしまう問題が生じやすくヒータへの電力、冷却媒体の消費量等、エネルギー効率が悪くなる。
【0058】
コントローラ100は、温度領域が25℃以上250℃未満程度の低温領域であって、昇温工程にある場合か若しくは処理工程にある場合には、ヒータ39の出力を上げるとともに、移動機構64を制御して、水冷ジャケット60を内側壁34に接触させた状態とする。
すなわち、低温領域では、ヒータ39が発する熱のピーク波長が4μmから6μmとウエハ1に吸収されにくい波長であり、しかも、石英(SiO)で構成されるプロセスチューブ11に、波長が4μm以上の熱線が吸収されるため、ウエハ1の温度が上昇しにくい。
【0059】
そこで、コントローラ100は、ヒータ39が発する熱のピーク波長を短くするように、ヒータ39の出力を上げるとともに、内側壁34が冷却されるように水冷ジャケット60が内側壁34に接触する状態とする。また、水冷ジャケット60を内側壁34に接触させた状態とすることで、温度のオーバーシュート(温度が目標温度よりも高くなってしまうこと)が生じにくくなり、制御性が向上するとともに、温度を安定させる安定時間が短縮される。また、処理室に処理ガスを供給して基板を処理する際にも、安定した温度で処理することが可能となり、膜厚均一性や膜質均一性が向上する。
【0060】
ここで、そもそも温度のオーバーシュートが生じる原因は、処理室12を形成するプロセスチューブが一定の熱容量を有するため、このプロセスチューブからの放熱により、温度変化にブレーキが効かないことがある。その対策として、フィードバック制御であるPID制御の積分動作を固定的にパターン化し設定しても、オーバーシュートを抑制し難かった。これに対して、この実施形態に係る基板処理装置10では、水冷ジャケット60を移動させることで、冷却の状態を迅速かつ細やかな調整することができ、温度のオーバーシュートを抑制することができる。
【0061】
また、コントローラ100は、温度領域が25℃以上250℃未満の低温領域であって、降温工程にある場合には、処理室12内の温度の降下に要する時間である降温時間を短縮するために、水冷ジャケット60を内側壁34に接触した状態とする。
【0062】
また、コントローラ100は、温度領域が250℃以上500℃未満の中温領域であって、昇温工程にある場合には、熱のピーク波長をさらに短くするために、ヒータ39の出力を上げるとともに、内側壁34が冷却されるように水冷ジャケット60を内側壁34に接触させた状態とする。また、水冷ジャケット60を内側壁34に接触させた状態とすることで、温度のオーバーシュートが生じにくくなり、制御性が向上する。
ここで、フィードバック制御であるPID制御のみでは防止することが難しいオーバーシュートを生じにくくすることができる理由は、水冷ジャケット60を移動させることで、冷却の状態を迅速かつ細やかな調整することができるためである。
【0063】
また、コントローラ100は、温度領域が250℃以上500℃未満の中温領域であって、処理工程にある場合には、温度上昇に伴ったヒータユニット30外部への放熱量の増大を抑制すべく、水冷ジャケット60を内側壁34及び外側壁35のいずれにも接触しない状態とし、内側壁34の冷却を停止させる。これにより、ヒータ39で消費される電力が少なくなり、エネルギー効率が向上する。また、例えば、クリーンルーム等の基板処理装置10が設置された場所の温度上昇を抑制することができ、該場所を冷却するためのエネルギー消費を抑制することができる。
【0064】
尚、温度領域が中温領域であって、処理工程にある場合には、水冷ジャケット60を内側壁34及び外側壁35のいずれにも接触しない状態とすることに替えて、水冷ジャケット60を外側壁35に接触させるようにしても良い。これにより、さらにヒータユニット30外部への放熱量が減るため、ヒータ39で消費される電力が少なくなり、エネルギー効率が向上する。また、例えば、クリーンルーム等の基板処理装置10が設置された場所の温度上昇をさらに抑制することができ、該場所を冷却するためのエネルギ消費を抑制することができる
【0065】
また、コントローラ100は、温度領域が250℃以上500℃未満の中温領域であって、降温工程にある場合には、処理室12の温度を短時間で降下させるために、水冷ジャケット60を内側壁34に接触した状態とする。
【0066】
また、コントローラ100は、温度領域が500℃以上1050℃未満の高温領域であって、昇温工程にある場合には、ヒータ39の出力を確保するとともに、処理室12内の温度を高温に保つため、水冷ジャケット60を内側壁34及び外側壁35のいずれにも接触しない状態とする。これにより、ヒータ39で消費される電力が少なくなり、エネルギー効率が向上する。また、例えば、クリーンルーム等の基板処理装置10が設置された場所の温度上昇を抑制することができ、該場所を冷却するためのエネルギー消費を抑制することができる。
尚、水冷ジャケット60を内側壁34及び外側壁35のいずれにも接触しない状態とすることに替えて、水冷ジャケット60を外側壁35に接触させるようにしても良い。これにより、さらにヒータユニット30外部への放熱量が減るため、ヒータ39で消費される電力が少なくなり、エネルギー効率が向上する。また、例えば、クリーンルーム等の基板処理装置10が設置された場所の温度上昇を抑制することができ、該場所を冷却するためのエネルギー消費を抑制することができる。
【0067】
また、コントローラ100は、温度領域が500℃以上1050℃未満の高温領域であって、処理工程にある場合には、移動機構64を制御して、水冷ジャケット60を外側壁35に接触させる状態とする。水冷ジャケット60を外側壁35に接触させることで、基板処理装置10外部へ放出される熱の量を抑制することができ、例えば、クリーンルーム等の基板処理装置10が設置された場所の温度上昇を抑制することができ、該場所を冷却するためのエネルギー消費を抑制することができる。
【0068】
また、コントローラ100は、温度領域が500℃以上1050℃未満の高温領域であって、降温工程にある場合には、処理室12の温度を短時間で降下させるために、水冷ジャケット60を内側壁34に接触した状態とする。
【0069】
尚、高温領域の上限は、例えばOリング等の耐熱温度の低い部材の劣化を抑制するために、本実施形態のような拡散炉では1050℃程度に、CVD炉では850℃程度に定められるが、耐熱温度の低い部材の熱劣化の問題が解消する場合、1050℃以上の温度としても良い。
【0070】
次に、基板処理装置10を用いた、例えばIC等の半導体装置の製造方法について説明する。
【0071】
基板処理装置10でなされる半導体装置の製造方法は、処理室12を加熱するヒータ39の外周側に設けられる環状の内側壁34と、内側壁34の外周側に、内側壁34との間に隙間を形成して設けられる環状の外側壁35との間の隙間に設けられる環状の水冷ジャケット60を、内側壁34及び外側壁35の少なくともいずれか一方と接触する接触位置と、内側壁34及び外側壁35のいずれにも接触しない非接触位置との間で移動させる移動機構64によって、内側壁34に接触する接触位置に移動させる工程と、処理室12でウエハ1を処理する工程とを有する。
【0072】
以下、基板処理装置10でなされる半導体装置の製造方法を、工程毎に、より具体的に説明する。尚、以下で説明する各工程は、コントローラ100によって、基板処理装置10の各部が制御されることによって実現される。
【0073】
半導体装置を製造するにあたっては、まず、複数枚のウエハ1を整列した状態で保持したボート26が、シールキャップ21の上に複数枚のウエハ1が鉛直方向に並んだ状態となるように置かれる。次に、ボート26が、ボートエレベータ(不図示)によって上方に持ち上げられるようにして、プロセスチューブ11の炉口13から処理室12に搬入(ボートローディング)され、シールキャップ21に支持されたままの状態で処理室12にセットされる。
【0074】
次に、処理室12が所定の圧力となるように排気管17によって排気され、所定の温度となるようににヒータ39によって昇温される。
【0075】
次に、処理室12の圧力および温度が所定の値に達して安定すると、ガス導入管18を介して、処理ガスが、処理室12に例えば所定の流量で導入され、ウエハ1に所望の処理がなされる。
【0076】
次に、所定の処理時間が経過した後であって、例えば、処理ガスの導入が停止された後に、窒素ガス等のパージガスが処理室12にガス導入管18から導入されるとともに、処理室12内が排気管17を用いて排気される。また、プロセスチューブ11と均熱チューブ14との間の通気路15、均熱チューブ14と断熱槽33との間の冷却エア通路42及び断熱槽33の空間36に、冷却エア41がそれぞれ供給されて流通されることにより、処理室12が冷却される。
【0077】
次に、処理室12の温度が所定の温度までに下降すると、ボート26は、シールキャップ21に支持された状態のままボートエレベータ(不図示)によって、下方に移動するようにして、処理室12の炉口13から搬出(ボートアンローディング)される。以降、これらの工程がが繰り返されることにより、基板処理装置10によってウエハ1に対する所望の処理が実施される。
【0078】
以上で説明をした各工程中における、少なくとも処理室12が昇温される工程から処理室12が冷却される工程までにおいて、水冷ジャケット60は、処理室12内の温度に応じて、所定の位置に配置されるように移動する。以下、処理室12内の温度領域が25℃以上250℃未満である場合を例として、水冷ジャケット60の動作(移動)を説明する。
【0079】
水冷ジャケット60は、ヒータ39の出力が上げられる工程であり、処理室12が昇温される工程(昇温工程)か若しくは処理室12内の温度を安定させて所定の範囲内に保ち、ウエハ1を処理する工程(処理工程)にある場合は、内側壁34に接触した状態にある。処理室12内の温度が、25℃以上250℃未満の温度領域では、ヒータ39が発する熱のピーク波長が4μmから6μmとウエハ1に吸収されにくい波長であり、しかも、石英(SiO)で構成されるプロセスチューブ11に、波長が4μm以上の熱線が吸収されるため、ウエハ1の温度が上昇しにくい。そこで、ヒータ39が発する熱のピーク波長を短くするために、水冷ジャケット60は、内側壁34が冷却されるように内側壁34に接触した状態とされる。
【0080】
また、水冷ジャケット60は、処理室12を冷却する工程においても、水冷ジャケット60は、内側壁34に接触した状態にある。これにより、処理室12内の温度の降下に要する時間である降温時間が短縮される。
【0081】
図14には、本発明の第2実施形態に用いられる処理室12が模式的に示されている。
先述の第1の実施形態に係る基板処理装置10は、バッチ式、縦形で、複数のウエハ1を処理するように構成されていた。これに対して、この第2の実施形態に係る基板処理装置10は、処理室12内で1枚のウエハ1を処理するように構成されている。
すなわち、この第2の実施形態に係る基板処理装置10では、処理室12内に設けられたサセプタ84に1枚のウエハ1が載置され、このウエハ1がガス導入管18から処理室12内に導入されたガスによって処理される。
【0082】
また、先述の第1の実施形態に係る基板処理装置10では、ヒータ39、内側壁34、水冷ジャケット60、及び外側壁35は、円筒形状をしていた。これに対して、この第2の実施形態では、ヒータ39、内側壁34、水冷ジャケット60、及び外側壁35は、ウエハ1と同一形状である円板形状をしている。
また、先述の第1の実施形態に係る基板処理装置10では、ヒータ39、内側壁34、水冷ジャケット60、及び外側壁35は、同軸状に内側から外側に向かって配置されていた。これに対して、この第2の実施形態に係る基板処理装置10では、ヒータ39、内側壁34、水冷ジャケット60、及び外側壁35は、縦方向に配置されている。すなわち、処理室12の上方と下方とに、ヒータ39、内側壁34、水冷ジャケット60、及び外側壁35が、それぞれ処理室12から近い順に配置されている。
【0083】
また、先述の第1の実施形態に係る基板処理装置10では、移動機構64は、水冷ジャケット60を、円筒形状をなす水冷ジャケット60の半径方向に移動させた。これに対して、この第2の実施形態に係る基板処理装置10では、水冷ジャケット60を上下方向に移動させる。
すなわち、移動機構64は、水冷ジャケット60を上下動させることで、外側壁35に接触する位置と、内側壁34に接触する位置と、外側壁35及び内側壁34のいずれにも接触しない位置の間で移動させる。尚、図14には、水冷ジャケット60が、外側壁35及び内側壁34のいずれにも接触しない位置に配置された状態が示されている。
【0084】
尚、以上で説明した以外の第2の実施形態に係る基板処理装置10の構成及び制御は、先述の第1の実施形態に係る基板処理装置10と同じである。
【0085】
以上のように構成された第1の実施形態に係る基板処理装置10、及び第2の実施形態に係る基板処理装置10によれば、膜質、膜厚均一性に優れたウエハ1の処理が可能である。
【0086】
すなわち、熱伝達の種類として、伝導、伝達(対流)、輻射の三作用があるが、例えば、50℃から250℃程度までの低温領域で、ウエハ1を処理する際には、PID制御を用いて制御を行うと、特に熱輻射による加熱効率が悪いとの弊害を解消するため、高速に昇温すべく、ヒータ39等の発熱体により多くのパワーを印加するように制御がなされる。
この場合、処理室12を形成するプロセスチューブが一定の熱容量を有するため、このプロセスチューブからの放熱により、温度変化にブレーキが効かないことがあり、昇温工程から安定化工程に移行する際に、温度のオーバーシュートが生じてしまう。ここで、温度のオーバーシュートを回避するために、設定値と実測値のと偏差から制御量を算出するフィードバック制御であるPID制御で、ヒータ39等による過大な加熱を行わないようにする調整しようとすると、例えば、温度を200℃まで上昇させて、安定するまでに長い時間を必要としてしまう。
【0087】
また、たとえ、過大な加熱の原因となるPID演算における積分動作を事前に実行した温度特性結果から最適値を求め、パターン化して設定することで所望の特性が得られる制御方式を用いたとしても、出力値が完全にゼロになってしまう区間が生じてしまい、温度制御できない状態が生じてしまう虞がある。このため、従来の技術においては、ウエハ1の熱履歴を良好に制御することが難しく、ウエハ1の膜質・膜厚均一性が悪くなってしまうことがあるとの問題があった。
これに対して、第1の実施形態に係る基板処理装置10、及び第2の実施形態に係る基板処理装置10によれば、処理温度、加熱温度に応じたフレキシブルな対応が可能であり、かつ温動履歴の迅速かつ細やかな調整が可能であり、膜質、膜厚均一性に優れたウエハ1の処理が可能である。
【0088】
また、第1の実施形態に係る基板処理装置10、及び第2の実施形態に係る基板処理装置10は、内側壁34及び外側壁35とは別部材として水冷ジャケット60を設け、水冷ジャケット60を、内側壁34及び外側壁35のいずれかと接触する状態とし、非接触の状態とするように移動させる移動機構64を有している。このため、例えばパイプ68に流れる冷却水によって、予め強制的に冷却された水冷ジャケット60を、内側壁34及び外側壁35のいずれかと接触する状態とした際には、固体同士の熱伝導作用により速やかに、内側壁34及び外側壁35のいずれかに蓄積された熱を奪うことができる。
一方、例えば、600℃等、高い温度でウエハ1を処理する場合、処理室12内の温度が十分に高ければ、水冷ジャケット60を、内側壁34及び外側壁35と非接触状態とすることで、水冷ジャケット60によって、内側壁34及び外側壁35が熱を奪われることなく、高温に保たれた処理室12内でのウエハ1の処理が可能となる。
【0089】
ここで、第1の実施形態に係る基板処理装置10において、水冷ジャケット60を、内側壁34及び外側壁35のいずれにも接触しない位置、内側壁34に接触する位置、及び外側壁35に接触する位置で移動させることに替えて、水冷ジャケット60に替えて設けられた断熱材を上下に移動させたり、該断熱材を処理室12の外周側で回転させたりしても、第1の実施形態と同様の効果を奏するようにも思われる。
【0090】
しかしながら、断熱材を上下に移動させたり、断熱材を処理室12の外周側で回転させたりしても、断熱材自体が大きな熱容量を有しているため、断熱材に蓄積される熱を効率よく奪うことができず、結果的に処理室12内の温度を下げる時間が長くかかってしまう。このため、例えば、所定の処理温度から、例えばウエハ1を処理室12から搬出する温度まで下げる場合等に、降温時の降温速度(温度降下レート)を、第1の実施形態に係る基板処理装置10と同程度に、大きくすることは困難である。
【0091】
本発明は、特許請求の範囲に記載した事項を特徴とするが、さらに次に付記した事項も含まれる。
【0092】
〔付記1〕
基板を処理する処理室と、
前記処理室の外周側に設けられ、前記処理室を加熱する発熱体と、
前記発熱体の外周側に設けられる環状の内側壁と、
前記内側壁の外周側との間に間隙を形成して設けられる環状の外側壁と、
前記間隙に設けられる冷却された環状の冷却部材と、
前記内側壁及び前記外側壁の少なくともいずれか一方と接触する接触位置と、前記内側壁及び前記外側壁のいずれにも接触しない非接触位置との間で前記冷却部材を移動させる移動機構と、
少なくとも前記移動機構を制御する制御部と、
を有する基板処理装置。
【0093】
〔付記2〕
前記冷却部材は、前記内側壁に対向する面の曲率が、前記内側壁の前記冷却部材に対向する面の曲率と等しい付記1記載の基板処理装置。
【0094】
〔付記3〕
前記冷却部材は、前記外側壁に対向する面の曲率が、前記外側壁の前記冷却部材に対向する面の曲率と等しい付記1又は2記載の基板処理装置。
【0095】
〔付記4〕
基板を処理する処理室と、
前記処理室の外側に設けられ、前記処理室を加熱する発熱体と、
前記発熱体の外側に設けられる内側壁と、
前記内側壁の外側との間に間隙を形成して設けられる外側壁と、
前記間隙に設けられる冷却された冷却部材と、
前記内側壁と接触する接触位置と、前記外側壁と接触する接触位置との間で前記冷却部材を移動させる移動機構と、
少なくとも前記移動機構を制御する制御部と、
を有する基板処理装置。
【0096】
〔付記5〕
処理室を加熱する発熱体の外周側に設けられる環状の内側壁と、前記内側壁の外周側に設けられる環状の外側壁との間の隙間に設けられる環状の冷却部材を、前記内側壁及び前記外側壁の少なくともいずれか一方と接触する接触位置と、前記内側壁及び前記外側壁のいずれにも接触しない非接触位置との間で移動させる移動機構によって、前記内側壁に接触する接触位置に移動させる工程と、前記処理室で基板を処理する工程と、を有する半導体装置の製造方法。
【0097】
〔付記6〕
前記制御部は、前記処理室内の温度、及び該温度の変化の少なくともいずれか一方に応じて、前記移動機構を制御する付記1乃至4いずれか記載の基板処理装置。
【0098】
〔付記7〕
前記制御部は、前記処理室内での基板の処理温度が、25℃以上250℃未満で設定されている際に、前記冷却部材を前記内側壁に接触させるように前記移動機構を制御する付記1乃至4いずれか記載の基板処理装置。
【0099】
〔付記8〕
前記制御部は、前記処理室内での基板の処理温度が、25℃以上250℃未満で設定されている際に、前記処理室内の温度を上昇させる工程、前記処理室内の温度を上昇させた温度に安定させる工程、前記処理室内で基板を処理する工程、及び前記処理室内の温度を降下させる工程のいずれの工程中でも、前記冷却部材が前記内側壁に接触するように、前記移動機構を制御する付記7記載の基板処理装置。
【0100】
〔付記9〕
前記制御部は、前記処理室内での基板の処理温度が25℃以上500℃未満で設定されている際に、少なくとも前記処理室内の温度を上昇させる工程中は、前記冷却部材が前記内側壁に接触するように前記移動機構を制御する付記1乃至4いずれか記載の基板処理装置。
【0101】
〔付記10〕
前記制御部は、前記処理室内での基板の処理温度が500℃以上1050℃以下で設定される際に、少なくとも前記処理室内で基板を処理する工程中は、前記冷却部材が前記外側壁に接触するように前記移動機構を制御する付記1乃至4いずれか記載の基板処理装置。
【0102】
〔付記11〕
前記移動機構は、前記冷却部材を、前記内側壁の前記冷却部材に対向する面に垂直な方向に移動させる付記1乃至4いずれか記載の基板処理装置。
【0103】
〔付記12〕
少なくとも前記内側壁は、前記発熱体と同材質で構成される付記1乃至4いずれか記載の基板処理装置。
【0104】
〔付記13〕
前記制御部は、前記処理室内での基板の処理温度が、予め定められた所定温度以上の場合は、前記冷却部材を前記外側壁に接触させ、前記処理室内での処理温度が前記所定温度よりも低い場合は、前記冷却部材を前記内側壁に接触させるように前記移動機構を制御して基板を処理する付記1乃至4いずれか記載の基板処理装置。
【0105】
〔付記14〕
前記制御部は、前記処理室内での基板の処理温度が、予め範囲が定められた複数の温度領域のいずれの範囲内にあるかに応じて、前記冷却部材が、前記内側壁及び前記外側壁のいずれにも接触しない位置、前記内側壁に接触する位置、及び前記外側壁に接触する位置のいずれかに配置されるように前記移動機構を制御する付記1乃至4いずれか記載の基板処理装置。
【0106】
〔付記15〕
前記制御部は、前記処理室内の温度の変動状態と、前記処理室内における基板の処理温度が予め範囲が定められた複数の温度領域のいずれの範囲内にあるかとに応じて、前記冷却部材が前記内側壁及び前記外側壁のいずれにも接触しない位置、前記内側壁に接触する位置、及び前記外側壁に接触する位置のいずれかに配置されるように前記移動機構を制御する付記1乃至4いずれか記載の基板処理装置。
【0107】
〔付記16〕
前記制御部は、前記処理室内の温度変動状態が、前記処理室内の温度が降下する温度降下工程中には、前記冷却部材を前記内側壁に接触するように前記移動機構を制御する付記1乃至4いずれか記載の基板処理装置。
【0108】
〔付記17〕
基板を処理する処理室と、
前記処理室の外周側に設けられ、前記処理室を加熱する発熱体と、
前記発熱体の外周側に設けられる環状の内側壁と、
前記内側壁の外周側との間に間隙を形成して設けられる環状の外側壁と、
前記間隙に設けられる冷却された環状の冷却部材と、
前記内側壁及び前記外側壁の少なくともいずれか一方と接触する接触位置と、前記内側壁及び前記外側壁のいずれにも接触しない非接触位置との間で前記冷却部材を移動させる移動機構と、
を有する加熱装置。
【0109】
〔付記18〕
前記冷却部材は、前記内側壁に対向する面の曲率が、前記内側壁の前記冷却部材に対向する面の曲率と等しい付記17記載の加熱装置。
【0110】
〔付記19〕
前記冷却部材は、前記外側壁に対向する面の曲率が、前記外側壁の前記冷却部材に対向する面の曲率と等しい付記17又は18記載の加熱装置。
【0111】
〔付記20〕
基板を処理する処理室と、
前記処理室の外側に設けられ、前記処理室を加熱する発熱体と、
前記発熱体の外側に設けられる内側壁と、
前記内側壁の外側との間に間隙を形成して設けられる外側壁と、
前記間隙に設けられる冷却された冷却部材と、
前記内側壁と接触する接触位置と、前記外側壁と接触する接触位置との間で前記冷却部材を移動させる移動機構と、
を有する加熱装置。
【0112】
〔付記21〕
処理室を加熱する発熱体の外側に設けられる内側壁と、前記内側壁の外側に設けられる外側壁との間の隙間に設けられる冷却部材を、移動機構によって前記内側壁に接触させて、前記処理室内で基板を処理する半導体装置の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0113】
以上述べたように、本発明は、例えばウエハ等の基板を処理する基板処理装置と、半導体装置の製造方法とに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る基板処理装置を示す概略横断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る基板処理装置の一部を拡大して示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る基板処理装置が有する水冷ジャケットを示し、図3(a)は、水冷ジャケットの第1の例を示す斜視図であり、図3(b)は、水冷ジャケットの第2の例を示す斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る基板処理装置が有する移動機構を示す断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る基板処理装置が有する移動機構を拡大して示し、図5(a)は図4における点線Aで囲まれた部分を拡大して示す断面図であり、図5(b)は図4におけるB−B線断面を示す断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る基板処理装置が有する内側壁、外側壁、及びジャケット本体の形状の一例を示す断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る基板処理装置が有する内側壁、外側壁、及びジャケット本体の形状の第1の変形例を示す断面図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る基板処理装置が有する内側壁、外側壁、及びジャケット本体の形状の第2の変形例を示す断面図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る基板処理装置が有する内側壁、外側壁、及びジャケット本体の形状の第3の変形例を示す断面図である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る基板処理装置が有する外側壁の変形例を示し、図10(a)は断面図であり、図10(b)は図10(a)のC−C線側から見た図である。
【図11】本発明の第1の実施形態に係る基板処理装置が有するコントローラを示すブロック図である。
【図12】本発明の第1の実施形態に係る基板処理装置が有するヒータが発する発熱温度と、ピーク波長と関係とを示すグラフである。
【図13】本発明の第1の実施形態に係る基板処理装置で処理されるウエハの熱特性を示すグラフである。
【図14】本発明の第2の実施形態に係る基板処理装置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0115】
1 ウエハ
10 基板処理装置
12 処理室
28 温度センサ
34 内側壁
35 外側壁
36 空間
39 ヒータ
60 水冷ジャケット
62 水冷装置
64 移動機構
66 ジャケット本体
68 パイプ
76 支持機構
100 コントローラ
102 制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する処理室と、
前記処理室の外周側に設けられ、前記処理室を加熱する発熱体と、
前記発熱体の外周側に設けられる環状の内側壁と、
前記内側壁の外周側との間に間隙を形成して設けられる環状の外側壁と、
前記間隙に設けられる冷却された環状の冷却部材と、
前記内側壁及び前記外側壁の少なくともいずれか一方と接触する接触位置と、前記内側壁及び前記外側壁のいずれにも接触しない非接触位置との間で前記冷却部材を移動させる移動機構と、
少なくとも前記移動機構を制御する制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項2】
前記冷却部材は、前記内側壁に対向する面の曲率が、前記内側壁の前記冷却部材に対向する面の曲率と等しい請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記冷却部材は、前記外側壁に対向する面の曲率が、前記外側壁の前記冷却部材に対向する面の曲率と等しい請求項1又は2記載の基板処理装置。
【請求項4】
基板を処理する処理室と、
前記処理室の外側に設けられ、前記処理室を加熱する発熱体と、
前記発熱体の外側に設けられる内側壁と、
前記内側壁の外側との間に間隙を形成して設けられる外側壁と、
前記間隙に設けられ、強制的に冷却された冷却部材と、
前記内側壁と接触する位置と、前記外側壁と接触する位置との間で前記冷却部材を移動させる移動機構と、
少なくとも前記移動機構を制御する制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項5】
処理室を加熱する発熱体の外周側に設けられる環状の内側壁と、前記内側壁の外周側に設けられる環状の外側壁との間の隙間に設けられる環状の冷却部材を、前記内側壁及び前記外側壁の少なくともいずれか一方と接触する接触位置と、前記内側壁及び前記外側壁のいずれにも接触しない非接触位置との間で移動させる移動機構によって、前記内側壁に接触する接触位置に移動させる工程と、
前記処理室で基板を処理する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−40952(P2010−40952A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−204968(P2008−204968)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】