説明

基板搬送用治具及びそれを用いた素子基板の製造方法

【課題】基板搬送用治具への基板の着脱によりその基板を用いて製造した素子基板における素子特性の変化及び異物の付着を抑制する。
【解決手段】被搬送基板1を表面に保持するための保持体10を備え、保持体10の表面に被搬送基板1を吸着させるように構成された吸着機構15,20と、吸着機構15,20による被搬送基板1の吸着及びその吸着の解除を行うように構成された吸着制御機構16とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板搬送用治具及びそれを用いた素子基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、液晶表示装置は、軽量化等の観点から薄型化が進められている。薄型の液晶表示装置をガラス基板を用いて製造する場合には、薄いガラス基板を単体でスパッタリング装置、CVD(Chemical Vapor Deposition)装置、エッチング装置等の種々の製造装置の内部に搬送して、そのガラス基板に種々の処理を行うと、製造中にガラス基板が損傷して割れやすい。このため、ガラス基板を基板搬送用治具に貼り付けた状態で各製造装置に搬送して処理を行うことが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ガラス基板やプラスチック基板等の基板を保持する手段として紫外線硬化型の粘着剤が支持体上に設けられた液晶表示素子製造用治具(基板搬送用治具)が開示されており、この治具に粘着剤を介して基板を貼り付けた状態でその基板に所定の加工を施した後に、粘着剤に紫外線を照射することによりその粘着剤の粘着力を低下させ、治具から基板を剥離することが開示されている。そして、これによれば、単体では強度や剛性のない基板材料を用いても液晶表示素子を製造することが可能になる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−105896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の液晶表示素子製造用治具を用いた製造方法では、TFT(Thin Film Transistor)基板等のアクティブマトリクス基板を作製する場合に、治具から基板を剥離する際の紫外線の照射により、その基板に形成されたTFT等の半導体素子の特性が変化して、そのアクティブマトリクス基板を用いて製造した液晶表示装置の表示品位が低下する虞がある。さらに、治具から剥離した後の基板に粘着剤が残って、この粘着剤が基板に貼り付けられる偏光板との間に介在することにより、液晶表示装置の表示品位が低下したり外観不良となる虞もあるので、改善の余地がある。
【0006】
本発明は、斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、基板搬送用治具への基板の着脱によりその基板を用いて製造した素子基板における素子特性の変化及び異物の付着を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明は、保持体への被搬送基板の吸着及びその吸着の解除を行うことにより、基板搬送用治具に被搬送基板を着脱するようにしたものである。
【0008】
具体的に、本発明に係る基板搬送用治具は、被搬送基板を表面に保持するための保持体を備える基板搬送用治具であって、上記保持体の表面に被搬送基板を吸着させるように構成された吸着機構と、上記吸着機構による被搬送基板の吸着及び該吸着の解除を行うように構成された吸着制御機構とを有していることを特徴とする。
【0009】
この構成によると、保持体の表面に被搬送基板を吸着させるように構成された吸着機構と、その吸着機構による被搬送基板の吸着及びその吸着の解除を行うように構成された吸着制御機構とを有しているため、吸着制御機構に基づき吸着機構で保持体の表面に被搬送基板を吸着させることよって、粘着剤を用いることなく被搬送基板を保持体に保持させることが可能になる。そして、保持体に保持させた被搬送基板の吸着を吸着制御機構により解除することによって、紫外線の照射等の処理を行うことなく、被搬送基板を保持体から容易に分離することが可能になる。したがって、この基板搬送用治具を用いて素子基板を製造する場合には、被搬送基板を保持体から分離する際に被搬送基板に形成した半導体素子の特性が変化することがなく、且つ保持体から分離した後の被搬送基板に粘着剤等の異物が残ることもないので、基板搬送用治具への被搬送基板の着脱によりその被搬送基板を用いて製造した素子基板における素子特性の変化及び異物の付着が抑制される。そして、その素子基板を用いて製造した表示装置の表示品位及び製造効率を高めることが可能になる。
【0010】
上記構成において、上記吸着機構は、一端が上記保持体の表面に形成された吸着口、他端が接続口をそれぞれ構成する排気通路と、上記接続口に接続可能な排気手段とを有し、上記吸着制御機構は、上記吸着口と上記接続口との間で上記排気通路を開閉する開閉弁を有していてもよい。
【0011】
この構成によると、保持体の表面に被搬送基板を載置すると共に排気手段を接続口に接続してその排気手段により被搬送基板と保持体との間の空気及び排気通路内の空気を接続口を介して排気して排気通路を減圧することによって被搬送基板を吸着口で吸着し、続いて開閉弁を閉状態にすることにより、排気通路の減圧状態が維持されるため、吸着口での被搬送基板の吸着が維持されて被搬送基板が保持体に保持される。そして、このように被搬送基板が保持体に保持された状態において、開閉弁を開状態にすることにより、接続口から排気通路内に空気が給気されて吸着口での被搬送基板の吸着が解除され、被搬送基板を保持体から分離することが可能になる。したがって、本発明の作用効果が具体的に奏される。
【0012】
また、上記保持体は、上記被搬送基板に接触するクッション性を有する緩衝部を備えていることが好ましい。
【0013】
ところで、被搬送基板を保持体に吸着して保持させる際に、異物である金属やガラス等の欠片が被搬送基板と保持体との間に介在していると、その異物により被搬送基板の一部が集中応力を受けて表面が傷つきやすい。これに対して、上記構成のように、被搬送基板に接触するクッション性を有する緩衝部を保持体が備えていることにより、その保持体の緩衝部と被搬送基板との間に異物が介在した状態で被搬送基板を保持体に保持させたとしても、異物により被搬送基板が受ける集中応力が緩衝部によって緩和され、被搬送基板が傷つくことが抑制される。
【0014】
また、上記保持体は、上記被搬送基板を保持した状態で、該被搬送基板の周端面と該保持体の周端面とが一致するように形成されていることが好ましい。
【0015】
この構成によると、保持体の位置とその保持体に保持された被搬送基板の位置とが一致するため、素子基板等を製造するための製造装置において保持体を位置決めピン等でステージ上に位置決めすることにより、その保持体に保持された被搬送基板を製造装置のステージ上に容易に位置決めすることが可能になる。
【0016】
また、その他に、上記保持体は、上記被搬送基板を保持した状態で、該被搬送基板の少なくとも一部が該保持体よりも突出するように形成されていることが好ましい。
【0017】
仮に、保持体が、被搬送基板を保持した状態で、その被搬送基板が保持体よりも突出しないように、すなわち保持体上に被搬送基板が収まるように形成されている場合には、素子基板等を製造するための製造装置において、位置決めピン等でステージ上に保持体を位置決めすることによりその保持体に保持された被搬送基板を位置決めすることになるが、被搬送基板が位置精度良く所定の位置で保持体に保持されていないと、ステージに対する保持体の位置決めを精度良く行ったとしても保持体に対する被搬送基板の保持位置の位置ずれ分ステージに対して被搬送基板に位置ずれが生じることとなる。
【0018】
これに対して、上記構成のように、保持体が、被搬送基板を保持した状態で、その被搬送基板の少なくとも一部が保持体よりも突出するように形成されている場合には、製造装置において被搬送基板における保持体よりも突出した部分を位置決めピン等でステージ上に位置決めすることにより、保持体に対する位置に拘わらず製造装置のステージ上に被搬送基板を精度良く位置決めすることが可能になる。
【0019】
また、本発明に係る素子基板の製造方法は、上記基板搬送用治具を用いて素子基板を製造する方法であって、上記保持体の表面に上記被搬送基板を吸着させることにより、該被搬送基板を上記保持体に保持させる保持工程と、上記保持体に保持された被搬送基板に半導体素子を形成する素子形成工程と、上記半導体素子が形成された被搬送基板の吸着を解除して、該被搬送基板を上記保持体から分離する分離工程とを含むことを特徴とする。
【0020】
この製造方法によると、保持工程では、保持体の表面に被搬送基板を吸着させることにより被搬送基板を保持体に保持させるため、粘着剤を用いることなく被搬送基板が保持体に保持される。次に、素子形成工程では、保持体に保持された被搬送基板に半導体素子を形成する。その後、分離工程では、半導体素子が形成された被搬送基板の吸着を解除して、その被搬送基板を保持体から分離するため、紫外線の照射等の処理を行うことなく被搬送基板が保持体から容易に分離される。したがって、保持体から被搬送基板を分離する際に被搬送基板に形成した半導体素子の特性が変化することがなく、且つ保持体から分離した後の被搬送基板に粘着剤等の異物が残ることもないので、基板搬送用治具への被搬送基板の着脱によりその被搬送基板を用いて製造した素子基板における素子特性の変化及び異物の付着が抑制される。そして、その素子基板を用いて製造した表示装置の表示品位及び製造効率が高められる。
【0021】
上記被搬送基板は、ガラス基板であり、厚さが0.3mm以下であってもよい。
【0022】
この製造方法によると、厚さが0.3mm以下の薄型のガラス基板を用いた素子基板の製造において、本発明の作用効果が具体的に奏される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、保持体への被搬送基板の吸着及びその吸着の解除を行うことにより基板搬送用治具に被搬送基板を着脱するので、基板搬送用治具への被搬送基板の着脱によりその被搬送基板を用いて製造した素子基板における素子特性の変化及び異物の付着を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態1の基板搬送用治具を概略的に示す平面図である。
【図2】図1のII−II線断面を概略的に示す図である。
【図3】実施形態1に係るTFT基板の製造方法における保持工程を示す断面図である。
【図4】実施形態1に係るTFT基板の製造方法におけるTFTアレイ層形成工程を示す断面図である。
【図5】実施形態1に係るTFT基板の製造方法における分離工程を示す断面図である。
【図6】実施形態2の基板搬送用治具を概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、本発明は、以下の各実施形態に限定されるものではない。
【0026】
《発明の実施形態1》
図1〜図5は、本発明に係る基板搬送用治具及びそれを用いた素子基板の製造方法の実施形態1を示している。図1は、本実施形態の基板搬送用治具Jを概略的に示す平面図である。図2は、図1のII−II線に沿って基板搬送用治具Jを概略的に示す断面図である。図3〜図5は、後述するように、本実施形態のTFT基板の製造方法における各工程を示す図である。
【0027】
基板搬送用治具Jは、図1及び図2に示すように、ガラス基板やプラスチック基板等の被搬送基板(図2に2点鎖線で示す)1を表面に保持するための保持体10と、保持体10の表面に被搬送基板1を吸着させるように構成された吸着機構と、吸着機構による被搬送基板1の吸着及びその吸着の解除を行うように構成された吸着制御機構とを備えている。
【0028】
保持体10は、ガラス状合金等からなる矩形升状の剛体部11と、その剛体部11の内部に設けられて被搬送基板1に接触するクッション性を有する緩衝部12とで構成されている。緩衝部12は、例えば耐熱性を有するセラミック繊維シートやPDMS(ポリジメチルシロキサン)系ハイブリッド材料からなるシート等で構成されている。この緩衝部12は、剛体部11の内部全体に配置され、図2に示すように、剛体部11の各側壁の頂面と緩衝部12の表面とが一致するように設けられている。そして、保持体10は、剛体部11の各側壁の頂面及び緩衝部12の表面で構成される平面で被搬送基板1を保持するように構成され、被搬送基板1を保持した状態で、その被搬送基板1の周端面と保持体10の周端面とが一致するように形成されている。
【0029】
そして、保持体10には、図1に示すように、緩衝部12の表面に複数の吸着口13が碁盤目状に形成されており、一端がそれら各吸着口13、他端が接続口14をそれぞれ構成する排気通路15が設けられている。この排気通路15は、図2に示すように各吸着口13から緩衝部12の内部に延びると共に、図1に示すように、各吸着口13を互いに繋ぐように矩形の網目を有する網状に形成され、さらに剛体部11の側壁を貫通して保持体10の外部に延びる1つの共通通路15kを有し、その共通通路15kの先端が接続口14を構成している。この接続口14は、保持体10とは別体に設けられた排気手段である真空ポンプの吸い込みポートに接続可能に構成されている。これら排気通路15及び真空ポンプが本実施形態における吸着機構を構成している。
【0030】
さらに、排気通路15には、各吸着口13と接続口14との間でこの排気通路15を開閉する開閉弁16が設けられている。この開閉弁16は、例えば、共通通路15kにおける保持体10の外部に配置された部分に設けられ、真空ポンプを接続口14に接続したときに開状態となり、その真空ポンプを接続口14から取り外したときに閉状態となるように構成されている。さらに、開閉弁16は、開閉状態を制御するための開閉スイッチを有し、その開閉スイッチを作業者が手動で切り替えることによっても電動で開閉可能に構成されている。この開閉弁16が本実施形態の吸着制御機構を構成している。
【0031】
上記構成の基板搬送用治具Jは、各吸着口13で吸着することにより保持体10の表面に被搬送基板1を保持し、その被搬送基板1の吸着を解除することにより被搬送基板1を保持体10から分離するようになっている。
【0032】
−製造方法−
次に、上記基板搬送用治具Jを用いて素子基板としてTFT基板を製造する方法について、図3〜図5を参照しながら説明する。図3は、基板搬送用治具Jに被搬送基板1を保持させた状態を概略的に示す断面図である。図4は、基板搬送用治具Jに保持させた被搬送基板1にTFTアレイ層を形成した状態を概略的に示す断面図である。図5は、基板搬送用治具JからTFT基板を分離している状態を概略的に示す断面図である。尚、本実施形態では、被搬送基板1としてガラス基板を用いて製造する場合を例に挙げて説明する。このガラス基板1は、厚さが例えば0.07mm以上且つ0.3mm以下である。
【0033】
本実施形態のTFT基板の製造方法は、保持工程、TFTアレイ層形成工程(素子形成工程)及び分離工程を含む。
【0034】
<保持工程>
まず、図3に示すように、保持体10の表面にガラス基板1を載置した後、接続口14に真空ポンプ20を接続して開閉弁16を開状態にすると共に接続した真空ポンプ20を駆動して、ガラス基板1と保持体10との間の空気及び排気通路15内の空気を接続口14を介して排気する。そのことにより、排気通路15を減圧してガラス基板1を各吸着口13で吸着する。次いで、真空ポンプ20を接続口14から取り外した後に、その真空ポンプ20の駆動を停止させる。このとき、真空ポンプ20の取り外しによって開閉弁16を閉状態にすることにより、排気通路15の減圧状態が維持されるため、各吸着口13でのガラス基板1の吸着が維持されて保持体10にガラス基板1が保持される。
【0035】
<TFTアレイ層形成工程>
上記保持工程で基板搬送用治具Jに保持されたガラス基板1を、液晶表示装置の製造に一般的に用いられるスパッタリング装置、CVD装置、エッチング装置等の種々の製造装置の内部を搬送して、その搬送したガラス基板1に対して種々の処理を行う。このとき、各製造装置において、位置決めピン等でステージ上に保持体10を位置決めすることによりガラス基板1を位置決めして、そのガラス基板1に処理を行う。このように各製造装置によってガラス基板1に処理をそれぞれ行うことにより、図4に示すように、ゲート線、ソース線、TFT(半導体素子)及び画素電極を有するTFTアレイ層2をガラス基板1上に形成して、TFT基板3を作製する。こうしてガラス基板1を基板搬送用治具Jに保持して各製造装置に搬送することにより、搬送によりガラス基板1が割れることが抑制されると共に、各製造装置へのガラス基板1の搬入の際にガラス基板1が傷つくことが抑制される。
【0036】
<分離工程>
上記TFT形成工程で作製されたTFT基板3を保持した基板搬送用治具Jにおける開閉弁16を作業者が手動で開状態にして、接続口14を介して排気通路15内に空気を給気し、各吸着口13でのTFT基板3の吸着を解除することにより、図5に示すように、TFT基板3を保持体10から分離する。
【0037】
以上のようにして、本実施形態のTFT基板3を製造することができる。また、上記保持工程で基板搬送用治具Jに保持されたガラス基板1に対し、カラーフィルタ及び共通電極等を形成することにより、CF(Color Filter)基板を製造することができ、それら両基板を液晶材料を介して貼り合わせることにより、薄型の液晶表示装置を製造することができる。
【0038】
−実施形態1の効果−
したがって、この実施形態1によると、保持工程では、保持体10の表面にガラス基板1を吸着させることによりガラス基板1を保持体10に保持させるため、粘着剤を用いることなくガラス基板1を保持体10に保持できる。そして、分離工程では、TFT基板3の吸着を解除してそのTFT基板3を保持体10から分離するため、紫外線の照射等の処理を行うことなくTFT基板3を保持体10から容易に分離できる。したがって、TFT基板3を保持体10から分離する際にTFT基板3におけるTFTの特性が変化することがなく、且つ保持体10から分離した後のTFT基板3に粘着剤等の異物が残ることもないので、基板搬送用治具Jへのガラス基板1の着脱によりそのガラス基板1を用いて製造したTFT基板3におけるTFT特性の変化及び異物の付着を抑制できる。そして、そのTFT基板3を用いて製造した液晶表示装置の表示品位及び製造効率を高めることができる。
【0039】
ところで、この実施形態1の液晶表示装置と同様の薄型の液晶表示装置を製造する方法として、基板搬送用治具を用いずに比較的厚いガラス基板を単体で各製造装置に搬送してTFT基板及びCF基板をそれぞれ作製し、それら両基板を貼り合わせた後に、各基板のガラス基板をエッチングや研磨等により薄くする方法が知られているが、この製造方法ではTFT基板とCF基板とを貼り合わせた後にそれら各基板のガラス基板を薄型化するための処理を行うので手間がかかる。
【0040】
これに対して、この実施形態1によると、厚さが0.07mm以上且つ0.3mm以下の薄型のガラス基板1を基板搬送用治具Jに保持して各製造装置に搬送させてそれぞれ作製したTFT基板3及びCF基板を貼り合わせて液晶表示装置を製造するので、TFT基板3とCF基板とを貼り合わせた後にこれら各基板を薄型化するための処理を行う必要がなく、製造効率を高めることができる。
【0041】
また、この実施形態1によると、被搬送基板1に接触するクッション性を有する緩衝部12を保持体10が備えていることにより、その保持体10の緩衝部12とガラス基板1との間に異物が介在した状態でガラス基板1を保持体10に保持させたとしても、異物によりガラス基板1が受ける集中応力を緩衝部12によって緩和でき、ガラス基板1が傷つくことを抑制できる。
【0042】
また、この実施形態1によると、保持体10が、被搬送基板1を保持した状態で、その被搬送基板1の周端面と保持体10の周端面とが一致するように形成されていることにより、保持体10の位置とその保持体10に保持されたガラス基板1の位置とが一致するため、各製造装置において位置決めピン等でステージ上に保持体10を位置決めすることにより、その保持体10に保持されたガラス基板1を各製造装置のステージ上に容易に位置決めできる。
【0043】
《発明の実施形態2》
図6は、本発明に係る基板搬送用治具の実施形態2を示している。尚、以降の各実施形態では、図1〜図5と同じ部分については同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。図6は、本実施形態の基板搬送用治具Jを概略的に示す平面図である。
【0044】
上記実施形態1では、保持体10は、被搬送基板1を保持した状態で、その被搬送基板1の周端面と保持体10の周端面とが一致するように形成されているとしたが、本実施形態では、保持体10は、図6に示すように、被搬送基板1を保持した状態で、その被搬送基板1の一方の隣り合う側辺部がL字状に保持体10よりも突出するように形成されている。
【0045】
本実施形態の基板搬送用治具Jは、上記実施形態1と同様に、複数の吸着口13及び接続口14を有する排気通路15と、その排気通路15を各吸着口13と接続口14との間で開閉する開閉弁16とを備え、その他の構成についても上記実施形態1と同様であり、被搬送基板1に対するサイズのみが異なっている。
【0046】
−製造方法−
本実施形態においても、被搬送基板1として厚さが0.07mm以上且つ0.3mm以下のガラス基板を用いてTFT基板3を製造する場合について説明する。尚、本実施形態のTFT基板3の製造方法も、上記実施形態1と同様に、保持工程、TFTアレイ層形成工程及び分離工程を含む。
【0047】
<保持工程>
上記実施形態1と同様にして、保持体10の表面に載置したガラス基板1を各吸着口13で吸着させてそのガラス基板1を保持体10に保持させる。
【0048】
<TFTアレイ形成工程>
上記実施形態1と同様に、基板搬送用治具Jに保持されたガラス基板1を、スパッタリング装置、CVD装置、エッチング装置等の各製造装置に搬送して、そのガラス基板1に対して種々の処理を行うことにより、TFT基板3を作製する。このとき、本実施形態では、基板搬送用治具Jに保持したガラス基板1の保持体10よりも突出した各側辺部を位置決めピン等でステージ上に位置決めして、そのガラス基板1に処理を行う。
【0049】
<分離工程>
上記実施形態1と同様にして、TFT基板3を保持した基板搬送用治具Jにおける各吸着口13でのTFT基板3の吸着を解除することにより、TFT基板3を保持体10から分離する。
【0050】
以上のようにして、本実施形態のTFT基板3を製造することができる。
【0051】
−実施形態2の効果−
したがって、この実施形態2によると、基板搬送用治具Jが上記実施形態1と同様に構成されていることにより、上記実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0052】
ところで、仮に、保持体10が、被搬送基板1を保持した状態で、その被搬送基板1が保持体10よりも突出しないように、すなわち保持体10上に被搬送基板1が収まるように形成されている場合には、各製造装置において、位置決めピン等でステージ上に保持体10を位置決めすることによりその保持体10に保持されたガラス基板1を位置決めすることになるが、ガラス基板1が位置精度良く所定の位置で保持体10に保持されていないと、ステージに対する保持体10の位置決めを精度良く行ったとしても保持体10に対するガラス基板1の保持位置の位置ずれ分ステージに対してガラス基板1に位置ずれが生じることとなる。
【0053】
これに対して、この実施形態2によると、保持体10が、被搬送基板1を保持した状態で、その被搬送基板1の一方の隣り合う側辺部が保持体10よりも突出するように形成されており、各製造装置においてガラス基板1における保持体10よりも突出した各側辺部を位置決めピン等でステージ上に位置決めするため、保持体10に対する位置に拘わらず各製造装置のステージ上にガラス基板1を精度良く位置決めできる。
【0054】
《その他の実施形態》
上記実施形態1では、保持体10が剛体部11及び緩衝部12で構成されているとしたが、本発明はこれに限られず、保持体10はガラス板等の単一の板状体で構成されていてもよい。
【0055】
また、上記実施形態1では、開閉弁16が共通通路15kに設けられているとしたが、本発明はこれに限られず、開閉弁16は、各吸着口13毎に排気通路15内に設けられていてもよい。
【0056】
また、上記実施形態1では、排気通路15は1つの共通通路15kを有しているとしたが、本発明はこれに限られず、排気通路15は剛体部11における2つ以上の側壁に共通通路15kをそれぞれ有し、これら各共通通路15k毎に開閉弁16が設けられていてもよい。このように構成されていれば、保持体10に対して複数方向から排気通路15の排気及び給気を行うことが可能になり、排気通路15の給気と排気とを保持体に対して異なる方向から行うことが可能になる。
【0057】
上記各実施形態では、被搬送基板1として厚さが0.07mm以上且つ0.3mm以下のガラス基板を用いてTFT基板3を製造する場合について説明したが、被搬送基板1として、厚さが0.07mmよりも薄いガラス基板や、プラスチック基板等の他の基板を用いてTFT基板を製造することも可能である。また、素子基板として、液晶表示装置を構成するTFT基板3を例示したが、本発明はこれに限られず、有機EL(Electro Luminescence)表示装置等、他の表示装置の製造にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上説明したように、本発明は、基板搬送用治具及びそれを用いた素子基板の製造方法について有用であり、特に、基板搬送用治具への基板の着脱によりその基板を用いて製造した素子基板における素子特性の変化及び異物の付着を抑制することが要望される基板搬送用治具及びそれを用いた薄型の素子基板の製造方法に適している。
【符号の説明】
【0059】
J 基板搬送用治具
1 被搬送基板(ガラス基板)
2 TFTアレイ層
3 TFT基板(素子基板)
10 保持体
12 緩衝部
13 吸着口
14 接続口
15 排気通路
16 開閉弁
20 真空ポンプ(減圧手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送基板を表面に保持するための保持体を備える基板搬送用治具であって、
上記保持体の表面に被搬送基板を吸着させるように構成された吸着機構と、
上記吸着機構による被搬送基板の吸着及び該吸着の解除を行うように構成された吸着制御機構とを有している
ことを特徴とする基板搬送用治具。
【請求項2】
請求項1に記載の基板搬送用治具において、
上記吸着機構は、一端が上記保持体の表面に形成された吸着口、他端が接続口をそれぞれ構成する排気通路と、上記接続口に接続可能な排気手段とを有し、
上記吸着制御機構は、上記吸着口と上記接続口との間で上記排気通路を開閉する開閉弁を有している
ことを特徴とする基板搬送用治具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の基板搬送用治具において、
上記保持体は、上記被搬送基板に接触するクッション性を有する緩衝部を備えている
ことを特徴とする基板搬送用治具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の基板搬送用治具において、
上記保持体は、上記被搬送基板を保持した状態で、該被搬送基板の周端面と該保持体の周端面とが一致するように形成されている
ことを特徴とする基板搬送用治具。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の基板搬送用治具において、
上記保持体は、上記被搬送基板を保持した状態で、該被搬送基板の少なくとも一部が該保持体よりも突出するように形成されている
ことを特徴とする基板搬送用治具。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の基板搬送用治具を用いて素子基板を製造する方法であって、
上記保持体の表面に上記被搬送基板を吸着させることにより、該被搬送基板を上記保持体に保持させる保持工程と、
上記保持体に保持された被搬送基板に半導体素子を形成する素子形成工程と、
上記半導体素子が形成された被搬送基板の吸着を解除して、該被搬送基板を上記保持体から分離する分離工程とを含む
ことを特徴とする素子基板の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の素子基板の製造方法において、
上記被搬送基板は、ガラス基板であり、厚さが0.3mm以下である
ことを特徴とする素子基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−205912(P2010−205912A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49553(P2009−49553)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】