基板洗浄ノズルおよびそれを用いる基板洗浄方法ならびに基板洗浄装置
【課題】 ノズル口から噴出するカーテン状の液膜がテーパ状に広がることを抑制し、さらにノズルの液膜噴出点を基板表面に近づけ、かつ基板表面に対して低角度で液膜を噴出することができる基板洗浄ノズルを提供する。
【解決手段】 搬送される基板に向けて洗浄液を噴出して基板表面を洗浄するための基板洗浄ノズル1は、基板の搬送方向に直交する方向に延びてスリット状に形成されるノズル口であって、互いに略平行になるように形成される2つの第1ノズル口2と第2ノズル口3とを有する。第1および第2ノズル口2,3から洗浄液がそれぞれ噴出されて形成される液膜流れ7a,7bは、互いに引付け合って一重のカーテン状の液膜流れ7cを形成する。
【解決手段】 搬送される基板に向けて洗浄液を噴出して基板表面を洗浄するための基板洗浄ノズル1は、基板の搬送方向に直交する方向に延びてスリット状に形成されるノズル口であって、互いに略平行になるように形成される2つの第1ノズル口2と第2ノズル口3とを有する。第1および第2ノズル口2,3から洗浄液がそれぞれ噴出されて形成される液膜流れ7a,7bは、互いに引付け合って一重のカーテン状の液膜流れ7cを形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板洗浄ノズルおよびそれを用いる基板洗浄方法ならびに基板洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば半導体の基板の表面に異物が存在すると、該半導体基板を用いる電子デバイスの動作不良につながるので、半導体基板を用いる電子デバイスの製造工程においては、半導体基板の洗浄が必要不可欠である。したがって、電子デバイス製造工程では、多種多様な基板の洗浄方法が開発されて実用化されている。
【0003】
最近では、超音波を印加した比抵抗18MΩ・cm以上を有する純水(いわゆる超純水)、または高圧にした超純水を、様々な形状をしたノズルから基板に向けて噴出し、基板表面に作用する物理的な力によって基板表面に付着している異物を除去する洗浄装置が開発されている。
【0004】
超純水を洗浄液として用いる洗浄装置は、沸酸、アンモニア水+過酸化水素水、塩酸+過酸化水素水、硫酸+過酸化水素水、オゾン添加水、水素+アンモニア添加水などの薬品または機能水と称されるガスを添加した超純水による洗浄装置と併用されることが多く、主に薬品またはガスを添加した超純水による洗浄工程を実施した後のさらなる洗浄に用いる洗浄装置として位置づけられることが多い。
【0005】
また、超音波を印加した超純水と高圧にした超純水とを連続して基板に向けて噴出して洗浄する洗浄装置も提案されている(特許文献1参照)。特許文献1において提案される洗浄装置では、まず、超音波を印加した超純水を基板に噴出することによって基板に付着している異物を基板表面から離脱させ、その後高圧にした超純水をスリット状のノズル口を有するノズルから噴出し、基板表面から離脱された状態で基板表面上に滞留している異物を、基板表面上に形成される超純水の流れによって、基板表面外に排出するようにして洗浄する。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示される従来の洗浄装置には以下のような問題がある。従来の洗浄装置に備わるスリット状のノズル口を有するノズルから高圧にした超純水を噴出した場合、ノズルから高速で噴出することによってノズル周辺に存在する空気と噴出される超純水との粘性摩擦相互作用に起因してカーテン状に形成される超純水の液膜が、ノズルから距離を隔てるのに伴ってテーパ状に広がってしまう現象が顕著に現れる。超純水の液膜が広がる現象によって、基板表面に到達した超純水が有する異物を基板表面から除去排出する物理的な力が著しく低下するという問題がある。
【0007】
また、基板表面に形成される超純水の流れは、基板表面上でより高速であるほど異物を除去排出する効果が向上するけれども、より高速な流れを作り出すためには、ノズルの噴出点が基板表面に対してより近く、またより低い噴出角度でカーテン状の液膜をノズルから噴出することが望ましい。
【0008】
しかしながら、液膜の噴出点と基板との距離、また液膜の噴出角度はノズルの形状および構造に制限されるので、基板表面とノズルの液膜噴出点とを近接させると噴出角度を小さくすることができず、噴出角度を小さくすると基板表面とノズルの液膜噴出点との距離が大きくなる。いずれにしても、液膜の噴出点と基板表面との距離が長くなるので、前述のようにカーテン状に形成される液膜がテーパ状に広がる現象が現れることになり、基板表面上の異物に対する物理的除去排出力低下につながる。
【0009】
【特許文献1】特開平7−6991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、ノズル口から噴出するカーテン状の液膜がテーパ状に広がることを抑制し、さらにノズルの液膜噴出点を基板表面に近づけ、かつ基板表面に対して低角度で液膜を噴出することができる基板洗浄ノズルおよびそれを用いる基板洗浄方法ならびに基板洗浄装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、搬送される基板に向けて洗浄液を噴出して基板の表面を洗浄することに用いられる基板洗浄ノズルにおいて、
基板の搬送方向に直交する方向に延びてスリット状に形成されるノズル口であって、互いに略平行になるように形成される2つの第1ノズル口と第2ノズル口とを有することを特徴とする基板洗浄ノズルである。
【0012】
また本発明は、洗浄液を供給するために形成される1つの洗浄液供給口と、
洗浄液供給口に連なり洗浄液供給口から供給される洗浄液を貯留する1つの洗浄液貯留部とを備え、
洗浄液貯留部は、第1および第2ノズル口に連通するように形成されることを特徴とする。
【0013】
また本発明は、洗浄液を供給するために形成される第1洗浄液供給口と、
第1洗浄液供給口に連なり第1洗浄液供給口から供給される洗浄液を貯留する第1洗浄液貯留部と、
洗浄液を供給するために形成される第2洗浄液供給口と、
第2洗浄液供給口に連なり第2洗浄液供給口から供給される洗浄液を貯留する第2洗浄液貯留部とを備え、
第1洗浄液貯留部が第1ノズル口に連通するように形成され、第2洗浄液貯留部が第2ノズル口に連通するように形成されることを特徴とする。
【0014】
また本発明は、略平行になるように形成される第1ノズル口と第2ノズル口との平行間隔の距離が、500μm以下であることを特徴とする。
【0015】
また本発明は、スリット状に形成される第1ノズル口のスリット幅と第2ノズル口のスリット幅とが、等しいことを特徴とする。
【0016】
また本発明は、スリット状に形成される第1ノズル口のスリット幅と第2ノズル口のスリット幅とが、異なることを特徴とする。
【0017】
また本発明は、スリット状に形成されるノズル口のスリット幅が、300μm以下であることを特徴とする。
【0018】
また本発明は、少なくとも洗浄液に接する部位の素材が、ステンレス鋼であるSUS316またはSUS316Lから成ることを特徴とする。
【0019】
また本発明は、搬送される基板に向けて洗浄液を噴出して基板の表面を洗浄する基板洗浄方法において、
前記いずれかの基板洗浄ノズルを、搬送される基板の表面に対して、ノズル口から噴射される洗浄液によって形成される液膜面の成す角度が予め定める角度になるように配置し、
基板を一方方向に搬送し、
基板洗浄ノズルから基板の表面に向けて洗浄液を噴出させて基板の表面を洗浄することを特徴とする基板洗浄方法である。
【0020】
また本発明は、搬送される基板に向けて洗浄液を噴出して基板の表面を洗浄する基板洗浄方法において、
前記いずれかの基板洗浄ノズルを、搬送される基板の表面に対して、ノズル口から噴射される洗浄液によって形成される液膜面の成す角度が予め定める角度になるように配置し、
基板を一方方向に搬送し、
第1洗浄液供給口に供給する洗浄液の圧力と、第2洗浄液供給口に供給する洗浄液の圧力とが等しくなるように洗浄液を供給し、
基板洗浄ノズルから基板の表面に向けて洗浄液を噴出させて基板の表面を洗浄することを特徴とする基板洗浄方法である。
【0021】
また本発明は、搬送される基板に向けて洗浄液を噴出して基板の表面を洗浄する基板洗浄方法において、
前記いずれかの基板洗浄ノズルを、搬送される基板の表面に対して、ノズル口から噴射される洗浄液によって形成される液膜面の成す角度が予め定める角度になるように配置し、
基板を一方方向に搬送し、
第1洗浄液供給口に供給する洗浄液の圧力と、第2洗浄液供給口に供給する洗浄液の圧力とが異なるように洗浄液を供給し、
基板洗浄ノズルから基板の表面に向けて洗浄液を噴出させて基板の表面を洗浄することを特徴とする基板洗浄方法である。
【0022】
また本発明は、第1洗浄液供給口に供給する洗浄液の圧力と第2洗浄液供給口に供給する洗浄液の圧力との差が、1.0MPa以下であることを特徴とする。
【0023】
また本発明は、洗浄液は、比抵抗が18MΩ・cm以上の純水であることを特徴とする。
【0024】
また本発明は、洗浄液供給口に供給される洗浄液の圧力が、1.2MPa以上であることを特徴とする。
【0025】
また本発明は、搬送される基板に向けて洗浄液を噴出して基板の表面を洗浄する基板洗浄装置において、
基板を一方方向に搬送する基板搬送手段と、
基板を臨んで設けられる前記いずれかの基板洗浄ノズルと、
基板洗浄ノズルのノズル口から噴出される洗浄液によって形成される液膜面と基板表面との成す角度が予め定める角度になるように基板洗浄ノズルを保持するノズル保持手段とを含むことを特徴とする基板洗浄装置である。
【0026】
また本発明は、搬送される基板に向けて洗浄液を噴出して基板の表面を洗浄する基板洗浄装置において、
基板を一方方向に搬送する基板搬送手段と、
基板を臨んで設けられる前記いずれかの基板洗浄ノズルと、
基板洗浄ノズルに形成される第1洗浄液供給口に配管を介して接続されて洗浄液を圧送する第1圧送ポンプと、
基板洗浄ノズルに形成される第2洗浄液供給口に配管を介して接続されて洗浄液を圧送する第2圧送ポンプと、
基板洗浄ノズルのノズル口から噴出される洗浄液によって形成される液膜面と基板表面との成す角度が予め定める角度になるように基板洗浄ノズルを保持するノズル保持手段とを含み、
第1洗浄液供給口に洗浄液を供給する第1圧送ポンプの設定圧力と、第2洗浄液供給口に洗浄液を供給する第2圧送ポンプの設定圧力とが異なることを特徴とする基板洗浄装置である。
【0027】
また本発明は、第1圧送ポンプと第1洗浄液供給口との間に設けられる第1圧力調整バルブと、
第2圧送ポンプと第2洗浄液供給口との間に設けられる第2圧力調整バルブとを含むことを特徴とする。
【0028】
また本発明は、装置に用いる洗浄液は、比抵抗が18MΩ・cm以上の純水であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、基板洗浄ノズルは、基板の搬送方向に直交する方向に延びてスリット状に形成されるノズル口であって、互いに略平行になるように形成される2つの第1ノズル口と第2ノズル口とを有する。このことによって、第1ノズル口から噴出されて形成される洗浄液の液膜流れと、第2ノズル口から噴出されて形成される洗浄液の液膜流れとが引付け合い、一重のカーテン状の液膜流れが形成されるので、液膜流れがテーパ状に広がることが抑制される。したがって、基板洗浄ノズルの液膜噴出点を基板表面に近づけるとともに、基板表面に対して低角度で液膜を噴出することができる。
【0030】
また本発明によれば、基板洗浄ノズルは、洗浄液を供給する1つの洗浄液供給口と、洗浄液供給口に連なり洗浄液供給口から供給される洗浄液を貯留する1つの洗浄液貯留部とを備え、洗浄液貯留部が第1および第2ノズル口に連通するように形成される。このことによって、1つの洗浄液供給系を設けるだけで2つのノズル口に洗浄液を供給できるとともに、ノズル口に対する洗浄液の円滑な供給が可能になり、ノズル口の延びる方向における洗浄液の圧力分布を均一にすることができる。
【0031】
また本発明によれば、基板洗浄ノズルは、第1洗浄液供給口と、該第1洗浄液供給口に連なるとともに第1ノズル口に連通する第1洗浄液貯留部と、第2洗浄液供給口と、該第2洗浄液供給口に連なるとともに第2ノズル口に連通する第2洗浄液貯留部とを備える。このように第1および第2ノズル口のそれぞれに連通して洗浄液貯留部が設けられることによって、各ノズル口のそれぞれに円滑に洗浄液を供給することができるとともに、ノズル口の延びる方向における洗浄液の圧力分布を一層均一にすることができる。
【0032】
また本発明によれば、第1ノズル口と第2ノズル口との平行間隔の距離が500μm以下になるように形成されるので、第1ノズル口から噴出されて形成される液膜と、第ノズル口から噴出されて形成される液膜とが引付け合う力を、好適に発現させることができる。
【0033】
また本発明によれば、第1ノズル口のスリット幅と第2ノズル口のスリット幅とが、等しくなるように形成されるので、第1および第2ノズル口から噴出されて形成される液膜を、ほぼ真直ぐの軌跡で精度よく基板表面に到達させることができる。
【0034】
また本発明によれば、第1ノズル口のスリット幅と第2ノズル口のスリット幅とが、異なるように形成されるので、第1および第2ノズル口から噴出されて形成される液膜を、曲率を有する軌跡で基板表面に到達させることができる。このことによって、基板洗浄ノズルの液膜の噴出点を基板表面に一層近づけ、また一層低角度で噴出させるように配置することが可能になる。
【0035】
また本発明によれば、ノズル口のスリット幅が300μm以下に形成されるので、基板の表面洗浄に適した流速で洗浄液を噴出させることができる。
【0036】
また本発明によれば、基板洗浄ノズルは、少なくとも洗浄液に接する部位の素材がステンレス鋼であるSUS316またはSUS316Lから成る。このことによって、洗浄液に対する不純物の溶出が抑制されるので、洗浄効果を高めることができる。またSUS316またはSUS316Lは、樹脂等の素材に比べて強度が優れるので、ノズルの耐久性を向上することができる。
【0037】
また本発明によれば、基板の洗浄に前記いずれかの基板洗浄ノズルが用いられるので、高速な液膜流れを形成することが可能であり、洗浄効率の高い基板洗浄方法が実現される。
【0038】
また本発明によれば、第1洗浄液供給口に供給する洗浄液の圧力と第2洗浄液供給口に供給する洗浄液の圧力との差が、1.0MPa以下に設定されるので、第1ノズル口から噴出される液膜と、第2ノズル口から噴出される液膜とが円滑に一体化してカーテン状の液膜流れが形成される。
【0039】
また本発明によれば、洗浄液として比抵抗が18MΩ・cm以上の純水が用いられるので、高い洗浄能力を発現することができる。
【0040】
また本発明によれば、洗浄液供給口には、1.2MPa以上の圧力で洗浄液が供給されるので、高い洗浄能力を発現することができる。
【0041】
また本発明によれば、基板洗浄ノズルから噴出して形成されるカーテン状の液膜流れがテーパ状に広がることなく、かつ高速で基板に衝突するので、高い洗浄能力を発現することのできる基板洗浄装置が提供される。
【0042】
また本発明によれば、第1洗浄液供給口に洗浄液を供給する第1圧送ポンプの設定圧力と、第2洗浄液供給口に洗浄液を供給する第2圧送ポンプの設定圧力とが異なるので、ノズル口から噴出される液膜に曲率を与えるとともに、曲率の大きさを自在に調整することが可能である。
【0043】
また本発明によれば、第1圧送ポンプと第1洗浄液供給口との間には第1圧力調整バルブが設けられ、第2圧送ポンプと第2洗浄液供給口との間には第2圧力調整バルブが設けられるので、第1および第2洗浄液供給口にそれぞれ供給する洗浄液の設定圧力を容易に調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
図1は本発明の実施の第1形態である基板洗浄ノズル1の構成を簡略化して示す切断端面図であり、図2は図1に示す基板洗浄ノズル1から液膜流れが噴出されている状態を示す図である。
【0045】
本実施の形態に示す基板洗浄ノズル1は、不図示の搬送される基板に向けて洗浄液を噴出して基板の表面を洗浄することに用いられる。この基板洗浄ノズル1で用いられる洗浄液は、基板表面に付着している異物を除去するために用いられる液体を意味し、たとえば酸性薬液、アルカリ性薬液、有機物薬液、ガスが溶存された純水などが挙げられ、なかでも望ましくは比抵抗が10MΩ・cm以上の純水、さらに望ましくは比抵抗が18MΩ・cm以上の純水(いわゆる超純水)が好適である。
【0046】
基板洗浄ノズル1は、大略細長い直方体形状を有し、不図示の基板の搬送方向に直交する方向に延びてスリット状に形成されるノズル口であって、互いに略平行になるように形成される2つの第1ノズル口2、第2ノズル口3と、洗浄液を供給するために形成される1つの洗浄液供給口4と、洗浄液供給口4に連なり洗浄液供給口4から供給される洗浄液を貯留する1つの洗浄液貯留部5であって第1および第2ノズル口2,3に連通するように形成される洗浄液貯留部5とを含む。
【0047】
本実施の形態では、基板洗浄ノズル1は、日本工業規格(JIS)G4303に規定されるオーステナイト系ステンレス鋼であるSUS316から成る。SUS316は、洗浄液に対する不純物の溶出が少ないので洗浄効果を高めることができ、また樹脂等の素材に比べて強度が優れるので、ノズルの耐久性を向上することができる。なお基板洗浄ノズル1の素材は、SUS316に限定されることなく、たとえばSUS316Lであっても良い。また、ノズル全体がSUS316またはSUS316Lである必要がなく、少なくともノズル内面の洗浄液に接する部分のみがSUS316またはSUS316Lから成る構成であっても良い。しかしながら、本実施形態の基板洗浄ノズル1では加工の容易性からSUS316の一体構造とした。
【0048】
基板洗浄ノズル1は、長手方向に垂直な断面における洗浄液の流路がL字状に形成され、L字の一方の端部側に洗浄液供給口4が形成され、L字の他方の端部側に2つのノズル口である第1および第2ノズル口2,3が略平行になるように形成され、L字のコーナー部に洗浄液貯留部5が形成される。基板洗浄ノズル1では、洗浄液供給口4から洗浄液貯留部5まで1本の流路が形成され、L字の他方の端部であるノズル口付近において、流路内に1つの間挿板6が設けられることによって、ノズル口が第1ノズル口2と第2ノズル口3との2つに分けられる。
【0049】
基板洗浄ノズル1は、基板の搬送方向に対して直交する方向である基板の幅方向(以後、この方向を単に幅方向と呼ぶ:図1の紙面に対して垂直な方向)に細長く延び、洗浄対象とする基板の幅方向長さ以上の長さに形成される。第1および第2ノズル口2,3に連通し、洗浄液流過方向上流側に洗浄液貯留部5を形成することによって、洗浄液供給口4から加圧されて供給される洗浄液の第1および第2ノズル口2,3での前記幅方向における圧力分布を均一にすることができる。
【0050】
基板洗浄ノズル1において、間挿板6が設けられることによって第1ノズル口2と第2ノズル口3とが形成される部分の洗浄液噴出方向の長さL1(便宜上、この長さをスリット長さL1と呼ぶ)は、1mm以上10mm以下、望ましくは1mm以上5mm以下に設定される。スリット長さL1が、1mm未満では、純水の助走距離が短くなるので、第1および第2ノズル口2,3から吐出される液膜をカーテン状に保持することが難しくなり、10mmを超えると、圧力損失により純水吐出流速が5m/s以上にならない場合がある。
【0051】
また第1および第2ノズル口2,3の洗浄液噴出方向に直交しかつ前記幅方向に直交する方向(ノズル厚さ方向)の寸法W1(便宜上、この寸法をスリット幅W1と呼ぶ)は、10μm以上300μm以下に設定され、望ましくは30μm以上100μm以下に設定される。本実施形態の基板洗浄ノズル1では、第1ノズル口2のスリット幅と第2ノズル口3のスリット幅とが等しい幅W1に形成される。スリット幅W1が、10μm未満では、圧力損失により純水吐出流速が5m/s以上にならない場合があり、300μmを超えると、カーテン状の液膜厚みが増大することにより、基板表面に流れる液膜厚みも増大し、純水の流れが基板表面近傍ではなく液膜表層のみで形成され、基板に付着している異物の除去効果が薄れることになる。
【0052】
また第1ノズル口2と第2ノズル口3とのノズル厚さ方向の間隔すなわち平行間隔であり、間挿板6の厚さに相当する距離であるノズル間距離D1は、50μm以上500μm以下の範囲に設定され、望ましくは50μm以上200μm以下で設定される。ノズル間距離D1が、50μm未満では、ノズル直近で2つの液膜が接触してしまい、一本のスリットノズルと同じ吐出状態になり、500μmを超えると、2つの液膜が接触することが難しくなる。
【0053】
なお特にノズル間距離D1が50μm以上200μm以下で設定されるとき、第1および第2ノズル口2,3の先端から略10mm以下までの距離で、後述する一重のカーテン状の液膜流れが安定して形成される。
【0054】
以下に図2を参照し、基板洗浄ノズル1から洗浄液を噴出するときの現象について説明する。不図示の圧送ポンプで加圧された洗浄液7が、洗浄液供給口4を通して洗浄液貯留部5に送られる。洗浄液貯留部5からノズル口へ向って流過する洗浄液7は、間挿板6によって第1ノズル口2を流過する第1液膜流れ7aと第2ノズル口3を流過する第2液膜流れ7bとに分けられる。各液膜流れ7a,7bは、第1および第2ノズル口2,3の出口からカーテン状の液膜流れとしてそれぞれ噴出される。
【0055】
第1および第2ノズル口2,3からそれぞれ噴出される液膜流れ7a,7bが、少なくとも5m/秒以上の噴出速度を有するとき、間挿板6の洗浄液流過方向下流側に、カーテン状の各液膜流れ7a,7b同士の間に空間8が形成され、この空間8内の空気とカーテン状の液膜流れ7a,7bとの粘性摩擦相互作用によって、空間8内の空気は除除に排出され、結果的に空間8の気圧が低下する。空間8の気圧が低下することによって、第1液膜流れ7aと第2液膜流れ7bとが、吸引されて引付け合い、一重のカーテン状の液膜流れ(以後、便宜上一重液膜流れと呼ぶ)7cが形成される。
【0056】
また、第1および第2ノズル口2,3から噴出される液膜流れ7a,7bが少なくとも5m/秒以上の噴出速度を有するとき、第1および第2ノズル口2,3周辺の空気と、第1および第2液膜流れ7a,7bとの粘性摩擦相互作用によって、流速が速い第1空気流れ9および第2空気流れ10が形成される。この第1および第2空気流れ9,10の流れ方向と、一重液膜流れ7cの流れ方向とが同一方向であることから、第1および第2空気流れ9,10と一重液膜流れ7cとの界面における粘性摩擦相互作用が小さくなるので、一重液膜流れ7cは、速度が減衰されることなく、かつテーパ状に広がることもなく、第1および第2ノズル口2,3の出口からある程度の距離までカーテン状の流れ形状が保たれる。
【0057】
なお第1および第2ノズル口2,3から噴出される液膜流れ7a,7bが少なくとも5m/秒以上の噴出速度を有し、一重液膜流れ7cが第1および第2ノズル口2,3の出口からある程度の距離までカーテン状の流れ形状を保つためには、基板洗浄ノズル1の形状にも依るけれども、洗浄液供給口4に供給される洗浄液7の圧力が少なくとも1.2MPa以上であることが望ましい。
【0058】
図3は本発明の実施の第2形態である基板洗浄ノズル11の構成を簡略化して示す切断端面図であり、図4は図3に示す基板洗浄ノズル11から液膜流れが噴出されている状態を示す図である。本実施形態の基板洗浄ノズル11は、実施の第1形態の洗浄ノズル1に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0059】
基板洗浄ノズル11は、洗浄液を供給するために形成される第1洗浄液供給口12と、第1洗浄液供給口12に連なり第1洗浄液供給口12から供給される洗浄液を貯留する第1洗浄液貯留部13と、洗浄液を供給するために形成される第2洗浄液供給口14と、第2洗浄液供給口14に連なり第2洗浄液供給口14から供給される洗浄液を貯留する第2洗浄液貯留部15とを備え、第1洗浄液貯留部13が第1ノズル口2に連通するように形成され、第2洗浄液貯留部15が第2ノズル口3に連通するように形成される。
【0060】
基板洗浄ノズル11では、間挿板16を洗浄液流過方向上流側へさらに延長するとともに端部が対向壁18に連なるようにして隔壁板17を形成することによって、第1洗浄液供給口12、第1洗浄液貯留部13、第1ノズル口2と連なる洗浄液の流過空間と、第2洗浄液供給口14、第2洗浄液貯留部15、第2ノズル口3と連なる洗浄液の流過空間とに区分される。第1および第2ノズル口2,3に、独立した第1洗浄液貯留部13と第2洗浄液貯留部15とをそれぞれ連通するようにして設けることによって、第1および第2ノズル口2,3からそれぞれ噴出される洗浄液の幅方向の圧力分布を一層均一にすることができる。
【0061】
以下図4を参照し、基板洗浄ノズル11から洗浄液を噴出するときの現象について説明する。不図示の1台の圧送ポンプで加圧された洗浄液7が、第1および第2洗浄液供給口12,14を通して第1および第2洗浄液貯留部13,15にそれぞれ送られるか、または不図示の2台の圧送ポンプで加圧された洗浄液7が、各圧送ポンプから第1および第2洗浄液供給口12,14を通して第1および第2洗浄液貯留部13,15にそれぞれ送られる。ただし、本実施形態の基板洗浄ノズル11においては、2台の圧送ポンプから洗浄液を第1および第2洗浄液供給口12,14へそれぞれ送る場合であっても、その両洗浄液の圧力は、等しい圧力に設定される。
【0062】
第1洗浄液貯留部13と第2洗浄液貯留部15とは、隔壁板17によって区画されるので、第1洗浄液貯留部13に至った洗浄液7が第1ノズル口2へ流過して第1液膜流れ7aを形成して第1ノズル口2の出口から噴射され、第2洗浄液貯留部15に至った洗浄液7が第2ノズル口3へ流過して第2液膜流れ7bを形成して第2ノズル口3の出口から噴出される。
【0063】
第1および第2ノズル口2,3の出口からそれぞれカーテン状に噴出される第1および第2液膜流れ7a,7bの噴出以降の作用については、実施の第1形態の基板洗浄ノズル1の場合と同一であるので、説明を省略する。
【0064】
図5は本発明の実施の第3形態である基板洗浄ノズル21の構成を簡略化して示す切断端面図であり、図6は図5に示す基板洗浄ノズル21から液膜流れが噴出されている状態を示す図である。本実施形態の基板洗浄ノズル21は、実施の第1形態の基板洗浄ノズル1に類似し対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0065】
基板洗浄ノズル21において注目すべきは、スリット状に形成される第1ノズル口22のスリット幅W2と、第2ノズル口23のスリット幅W3とが、異なるように形成されることである。基板洗浄ノズル21では、間挿板6を第1ノズル口22寄りに設けることによって、第1ノズル口22のスリット幅W2が、第2ノズル口23のスリット幅W3よりも小さく(W2<W3)なるように構成される。
【0066】
スリット幅W2,W3は、いずれも10μm以上300μm以下の範囲内で設定されるけれども、望ましくはスリット幅W2が30μm以上50μm未満、スリット幅W3が50μm以上200μm以下に設定される。各スリット幅がこのように設定されるとき、一重液膜流れ24cが、第1液膜流れ24aの方に曲りながら速度が減衰されることなく、かつテーパ状に広がることもなく、第1および第2ノズル口22,23の出口からある程度の距離までカーテン状に流れ形状を保つことができる。
【0067】
以下図6を参照し、基板洗浄ノズル21から洗浄液を噴出するときの現象について説明する。不図示の圧送ポンプで加圧された洗浄液24が、洗浄液供給口4を通して洗浄液貯留部5に送られる。洗浄液貯留部5からノズル口へ向って流過する洗浄液24は、間挿板6によって第1ノズル口22を流過する第1液膜流れ24aと第2ノズル口23を流過する第2液膜流れ24bとに分けられる。各液膜流れ24a,24bは、第1および第2ノズル口22,23の出口からカーテン状の液膜流れとしてそれぞれ噴出される。
【0068】
基板洗浄ノズル21においては、第1ノズル口22および第2ノズル口23に連通する洗浄液貯留部5における洗浄液24の圧力が共通であるにも関らず、第1ノズル口22のスリット幅W2が、第2ノズル口23のスリット幅W3よりも小さくなるように構成されるので、第1液膜流れ24aの流速V1が、第2液膜流れ24bの流速V2よりも遅く(V1<V2)なる。したがって、第1液膜流れ24aと第2液膜流れ24bとが互いに引付け合って形成される一重液膜流れ24cは、流速が遅い第1液膜流れ24aの方に曲がる曲率を有するように形成される。
【0069】
また、第1および第2液膜流れ24a,24bと、ノズル周辺の空気との粘性摩擦相互作用によってそれぞれ形成される第1および第2空気流れ25,26は、一重液膜流れ24cの進行方向に沿って形成されるので、第1および第2空気流れ25,26と一重液膜流れ24cとの界面における粘性摩擦相互作用が小さくなり、一重液膜流れ24cは、速度が減衰されることなく、かつテーパ状に広がることもなく、第1および第2ノズル口22,23の出口からある程度の距離まで曲率を有した状態でカーテン状の流れ形状が保たれる。
【0070】
図7は本発明の実施の第4形態である基板洗浄ノズル31の構成を簡略化して示す切断端面図であり、図8は図7に示す基板洗浄ノズル31から液膜流れが噴出されている状態を示す図である。本実施形態の基板洗浄ノズル31は、実施の第2形態の洗浄ノズル11に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0071】
基板洗浄ノズル31は、間挿板16と隔壁板17とによって、第1洗浄液供給口12、第1洗浄液貯留部13、第1ノズル口32と連なる洗浄液の流過空間と、第2洗浄液供給口14、第2洗浄液貯留部15、第2ノズル口33と連なる洗浄液の流過空間とに区分されるとともに、スリット状に形成される第1ノズル口32のスリット幅W2と、第2ノズル口33のスリット幅W3とが、異なるように形成される。実施の第3形態の基板洗浄ノズル21と同様に、基板洗浄ノズル31においても、第1ノズル口32のスリット幅W2が、第2ノズル口33のスリット幅W3よりも小さく(W2<W3)なるように構成される。
【0072】
以下図8を参照し、基板洗浄ノズル21から洗浄液を噴出するときの現象について説明する。不図示の2台の圧送ポンプで加圧された洗浄液34が、各圧送ポンプから第1および第2洗浄液供給口12,14を通して第1および第2洗浄液貯留部13,15にそれぞれ送られる。ただし、本実施形態の基板洗浄ノズル31においては、2台の圧送ポンプから洗浄液を第1および第2洗浄液供給口12,14へそれぞれ送る場合、その両洗浄液の圧力は、等しい圧力に設定される。第1洗浄液貯留部13と第2洗浄液貯留部15とは、隔壁板17によって区画されるので、第1洗浄液貯留部13に至った洗浄液3が第1ノズル口32へ流過して第1液膜流れ34aを形成して第1ノズル口32の出口から噴出され、第2洗浄液貯留部15に至った洗浄液34が第2ノズル口33へ流過して第2液膜流れ34bを形成して第2ノズル口33の出口から噴出される。
【0073】
基板洗浄ノズル31では、実施の第3形態の基板洗浄ノズル21と同様に、第1ノズル口32のスリット幅W2が、第2ノズル口23のスリット幅W3よりも小さくなるように構成されるので、第1液膜流れ34aと第2液膜流れ34bとが互いに引付け合って形成される一重液膜流れ34cは、流速が遅い第1液膜流れ34aの方に曲がる曲率を有するように形成される。
【0074】
また、第1および第2液膜流れ34a,34bと、ノズル周辺の空気との粘性摩擦相互作用によってそれぞれ形成される第1および第2空気流れ35,36も、実施の第3形態の基板洗浄ノズル21の場合と同様に作用するので、一重液膜流れ34cは、速度が減衰されることなく、かつテーパ状に広がることもなく、第1および第2ノズル口32,33の出口からある程度の距離まで曲率を有した状態でカーテン状の流れ形状が保たれる。
【0075】
実施の第3および第4形態の基板洗浄ノズル21,31によれば、第1ノズル口のスリット幅と第2ノズル口のスリット幅とが、異なるように形成され、第1および第2ノズル口から噴出されて形成される一重液膜流れを、曲率を有する軌跡で基板表面に到達させることができるので、液膜流れの噴出点を基板表面に一層近づけ、また一層低角度で噴出させるように配置することが可能になる。
【0076】
図9は、本発明のもう一つの実施形態である基板洗浄装置40の構成を簡略化して示す図である。ここで、本発明のもう一つの実施形態である基板洗浄装置40を、本発明の基板洗浄ノズルの実施形態に続けて実施の第5形態と呼ぶ。以降の基板洗浄装置に係る本発明の変形例を示す実施形態についても、これに続く通し番号で表すことにする。
【0077】
本実施形態の基板洗浄装置40は、搬送される基板41に向けて洗浄液を噴出して基板41の表面を洗浄することに用いられ、基板41を矢符42にて示す一方方向に搬送する基板搬送手段43と、基板41を臨んで設けられる前記実施の第1形態の基板洗浄ノズル1と、基板洗浄ノズル1の洗浄液供給口4に接続されて洗浄液7を供給する圧送ポンプ44と、基板洗浄ノズル1のノズル口2,3から噴出される洗浄液によって形成される一重液膜流れ7cの膜面45(以後、液膜面と呼ぶ)と、基板表面41aとの成す角度αが、予め定める角度になるように基板洗浄ノズル1を保持するノズル保持手段46とを含む。
【0078】
基板洗浄装置40における洗浄対象である基板41としては、たとえばシリコンウエハまたはガラス基板などが挙げられる。洗浄液7としては、基板洗浄ノズル1に関して述べたように、たとえば酸性薬液、アルカリ性薬液、有機物薬液、ガスが溶存された純水などが挙げられ、なかでも比抵抗が18MΩ・cm以上の超純水が好適に用いられる。
【0079】
基板搬送手段43は、複数の搬送ローラ47と、搬送ローラ47を矢符48方向に回転駆動させる不図示のローラ駆動手段とを含む。複数設けられる搬送ローラ47は、すべてがローラ駆動手段に接続されて回転駆動されるように構成されても良く、また1個の搬送ローラ47が回転駆動され、残余の搬送ローラ47は駆動搬送ローラ47にプーリと無端ベルトで連結されて従動回転されるように構成されても良い。いずれの構成であっても、基板41は、矢符48方向に回転する搬送ローラ47上に載置されて、矢符42方向に搬送される。
【0080】
圧送ポンプ44は公知の液体圧送ポンプを用いることができる。圧送ポンプ44は、不図示の洗浄液槽に配管で接続され、洗浄液槽に収容される洗浄液を、洗浄液供給配管49を介して基板洗浄ノズル1の洗浄液供給口4へ供給する。
【0081】
ノズル保持手段46は、一種のマニピュレータである。ノズル保持手段46は、基板洗浄ノズル1を保持した状態で、図9の紙面に垂直な保持軸50まわりに角変位移動可能に構成される。このことによって、ノズル保持手段46は、保持する基板洗浄ノズル1のノズル口2,3から噴出される一重液膜流れ7cの液膜面45と基板表面41aとの成す角度αを変化させることができ、また保持する基板洗浄ノズル1のノズル口2,3と基板表面41aとの離隔距離を変化させることができる。
【0082】
基板洗浄装置40において、基板洗浄ノズル1と基板41との相対的配置は、基板41の種類および洗浄液の種類によって適宜選択設定されるけれども、配置の一例を示すと以下のようである。
【0083】
たとえば、基板洗浄ノズル1は、基板41の上方であって、基板41搬送方向下流側から上流側に向って洗浄液を噴出できるように基板表面41aに対向して配置され、基板41の搬送速度が5000mm/min以下、たとえば2500mm/minであるとき、基板洗浄ノズル1のノズル口最下端部と基板表面41aとの離隔距離Gが10mm以下、望ましくは5mm以下、上記角度αが45度であるように配置される。なお、圧送ポンプ44で基板洗浄ノズル1の洗浄液供給口4に供給される洗浄液7の圧力は1.2MPa以上であることが望ましい。
【0084】
上記に一例を示すように基板洗浄ノズル1と基板41とが配置される状態で、基板搬送手段43によって基板41を矢符42で示す一方方向に搬送し、基板洗浄ノズル1の第1および第2ノズル口2,3から基板表面41aに向けて洗浄液の一重液膜流れ7cを噴出させて基板表面41aを洗浄する。このとき、洗浄ノズルとして本発明の基板洗浄ノズル1を用いるので、基板洗浄ノズル1から噴出される液膜流れ7cが、減衰することなく、かつテーパ状に広がることなく基板表面41aに衝突することによって、基板41の表面41a全体に付着している異物を効果的に除去することが可能である。
【0085】
図10は、本発明の実施の第6形態である基板洗浄装置60の構成を簡略化して示す図である。本実施の形態の基板洗浄装置60は、実施の第5形態の基板洗浄装置40に類似し対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。基板洗浄装置60において注目すべきは、基板洗浄ノズルとして実施の第3形態の基板洗浄ノズル21を備えることである。
【0086】
したがって、第1ノズル口22から噴出されて形成される第1液膜流れ24aと、第2ノズル口23から噴出されて形成される第2液膜流れ24bとが互いに引付け合って形成される一重液膜流れ24cは、流速が遅い第1液膜流れ24aの方に曲がる曲率を有するように形成され、速度が減衰されることなく、かつテーパ状に広がることもなく、第1および第2ノズル口22,23の出口からある程度の距離まで曲率を有した状態でカーテン状の流れ形状が保たれた状態で基板表面41aに衝突する。
【0087】
このような基板洗浄装置60によれば、実施の第5形態の基板洗浄装置40と同じ効果を奏することができるとともに、曲率を有するように一重液膜流れ24cを噴出することができるので、基板洗浄ノズル21の液膜流れの噴出点であるノズル口22,23を基板表面41aに一層近づけ、また角度αを一層小さくして低角度で噴出させるように配置することが可能になる。
【0088】
図11は、本発明の実施の第7形態である基板洗浄装置70の構成を簡略化して示す図である。本実施の形態の基板洗浄装置70は、実施の第5形態の基板洗浄装置40に類似し対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0089】
基板洗浄装置70は、基板洗浄ノズルとして実施の第2形態の基板洗浄ノズル11を備え、基板洗浄ノズル11に形成される第1洗浄液供給口12に第1配管71を介して接続されて第1洗浄液72を圧送する第1圧送ポンプ73と、基板洗浄ノズル11に形成される第2洗浄液供給口14に第2配管74を介して接続されて第2洗浄液75を圧送する第2圧送ポンプ76とをさらに含み、第1洗浄液供給口12に第1洗浄液72を供給する第1圧送ポンプ73の設定圧力P1と、第2洗浄液供給口14に第2洗浄液75を供給する第2圧送ポンプ76の設定圧力P2とが異なることを特徴とする。
【0090】
たとえば、第1圧送ポンプ73の設定圧力P1と第2圧送ポンプ76の設定圧力P2との関係がP1<P2であるとき、第1ノズル口2から噴出されて形成されるカーテン状の第1液膜流れ72aの噴出速度V3は、第2ノズル口3から噴出されて形成されるカーテン状の第2液膜流れ75aの噴出速度V4よりも遅く(V3<V4)なる。したがって、第1液膜流れ72aと第2液膜流れ75aとが引付け合って形成される一重液膜流れ77は、第1液膜流れ72aの方に曲げられることになる。このとき、第1圧送ポンプ73の設定圧力P1と第2圧送ポンプ76の設定圧力P2との圧力差ΔP(=|P1−P2|)が、1.0MPa以下であることが望ましい。圧力差ΔPが1.0MPaを超えると、2つの液膜流れの吐出速度の差が過大になるので、カーテン状の1つの液膜流れにならない。
【0091】
なお、本実施形態の基板洗浄装置70では、第1圧送ポンプ73の設定圧力P1と、第2圧送ポンプ76の設定圧力P2とを等しくして基板洗浄のズル11へ供給することも可能である。このとき一重液膜流れ77は、曲率を有することなく真直ぐな軌跡で基板表面41aに達する。
【0092】
実施の第5形態の場合に準じて基板洗浄ノズル11と基板41との相対配置を定め、基板搬送手段43によって基板41を矢符42で示す一方方向に搬送し、基板洗浄ノズル11の第1および第2ノズル口2,3から基板表面41aに向けて洗浄液の一重液膜流れ77を噴出させ、第1液膜流れ72aの方へ曲がる曲率を有する一重液膜流れ77によって基板表面41aを洗浄する。
【0093】
このような基板洗浄装置70を用いる基板洗浄方法によれば、第1および第2圧送ポンプ73,76の洗浄液を圧送する設定圧力を調整することによって、実施の第5形態の基板洗浄装置40と実施の第6形態の基板洗浄装置60との効果を、選択する形で奏することができる。
【0094】
図12は、本発明の実施の第8形態である基板洗浄装置80の構成を簡略化して示す図である。本実施の形態の基板洗浄装置80は、実施の第7形態の基板洗浄装置70に類似し対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0095】
基板洗浄装置80は、第1圧送ポンプ73と第1洗浄液供給口12との間に第1圧力調整バルブ81が設けられ、第2圧送ポンプ76と第2洗浄液供給口14との間に第2圧力調整バルブ82が設けられることを特徴とする。
【0096】
このように圧送ポンプ73,76と洗浄液供給口12,14との間に、圧送ポンプ73,76から送出される洗浄液の圧力を調整することのできる圧力調整バルブ81,82をそれぞれ設けることによって、第1および第2洗浄液供給口12,14にそれぞれ供給する洗浄液の設定圧力P1,P2を独立して容易に調整することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の実施の第1形態である基板洗浄ノズル1の構成を簡略化して示す切断端面図である。
【図2】図1に示す基板洗浄ノズル1から液膜流れが噴出されている状態を示す図である。
【図3】本発明の実施の第2形態である基板洗浄ノズル11の構成を簡略化して示す切断端面図である。
【図4】図3に示す基板洗浄ノズル11から液膜流れが噴出されている状態を示す図である。
【図5】本発明の実施の第3形態である基板洗浄ノズル21の構成を簡略化して示す切断端面図である。
【図6】図5に示す基板洗浄ノズル21から液膜流れが噴出されている状態を示す図である。
【図7】本発明の実施の第4形態である基板洗浄ノズル31の構成を簡略化して示す切断端面図である。
【図8】図7に示す基板洗浄ノズル31から液膜流れが噴出されている状態を示す図である。
【図9】本発明のもう一つの実施形態である基板洗浄装置40の構成を簡略化して示す図である。
【図10】本発明の実施の第6形態である基板洗浄装置60の構成を簡略化して示す図である。
【図11】本発明の実施の第7形態である基板洗浄装置70の構成を簡略化して示す図である。
【図12】本発明の実施の第8形態である基板洗浄装置80の構成を簡略化して示す図である。
【符号の説明】
【0098】
1,11,21,31 基板洗浄ノズル
2,22,32 第1ノズル口
3,23,33 第2ノズル口
4,12,14 洗浄液供給口
5,13,15 洗浄液貯留部
6,16 間挿板
7,24,34 洗浄液
8 空間
9,10,25,26,35,36 空気流れ
17 隔壁板
40,60,70,80 基板洗浄装置
41 基板
43 基板搬送手段
44,73,76 圧送ポンプ
45 液膜面
46 ノズル保持手段
81,82 圧力調整バルブ
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板洗浄ノズルおよびそれを用いる基板洗浄方法ならびに基板洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば半導体の基板の表面に異物が存在すると、該半導体基板を用いる電子デバイスの動作不良につながるので、半導体基板を用いる電子デバイスの製造工程においては、半導体基板の洗浄が必要不可欠である。したがって、電子デバイス製造工程では、多種多様な基板の洗浄方法が開発されて実用化されている。
【0003】
最近では、超音波を印加した比抵抗18MΩ・cm以上を有する純水(いわゆる超純水)、または高圧にした超純水を、様々な形状をしたノズルから基板に向けて噴出し、基板表面に作用する物理的な力によって基板表面に付着している異物を除去する洗浄装置が開発されている。
【0004】
超純水を洗浄液として用いる洗浄装置は、沸酸、アンモニア水+過酸化水素水、塩酸+過酸化水素水、硫酸+過酸化水素水、オゾン添加水、水素+アンモニア添加水などの薬品または機能水と称されるガスを添加した超純水による洗浄装置と併用されることが多く、主に薬品またはガスを添加した超純水による洗浄工程を実施した後のさらなる洗浄に用いる洗浄装置として位置づけられることが多い。
【0005】
また、超音波を印加した超純水と高圧にした超純水とを連続して基板に向けて噴出して洗浄する洗浄装置も提案されている(特許文献1参照)。特許文献1において提案される洗浄装置では、まず、超音波を印加した超純水を基板に噴出することによって基板に付着している異物を基板表面から離脱させ、その後高圧にした超純水をスリット状のノズル口を有するノズルから噴出し、基板表面から離脱された状態で基板表面上に滞留している異物を、基板表面上に形成される超純水の流れによって、基板表面外に排出するようにして洗浄する。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示される従来の洗浄装置には以下のような問題がある。従来の洗浄装置に備わるスリット状のノズル口を有するノズルから高圧にした超純水を噴出した場合、ノズルから高速で噴出することによってノズル周辺に存在する空気と噴出される超純水との粘性摩擦相互作用に起因してカーテン状に形成される超純水の液膜が、ノズルから距離を隔てるのに伴ってテーパ状に広がってしまう現象が顕著に現れる。超純水の液膜が広がる現象によって、基板表面に到達した超純水が有する異物を基板表面から除去排出する物理的な力が著しく低下するという問題がある。
【0007】
また、基板表面に形成される超純水の流れは、基板表面上でより高速であるほど異物を除去排出する効果が向上するけれども、より高速な流れを作り出すためには、ノズルの噴出点が基板表面に対してより近く、またより低い噴出角度でカーテン状の液膜をノズルから噴出することが望ましい。
【0008】
しかしながら、液膜の噴出点と基板との距離、また液膜の噴出角度はノズルの形状および構造に制限されるので、基板表面とノズルの液膜噴出点とを近接させると噴出角度を小さくすることができず、噴出角度を小さくすると基板表面とノズルの液膜噴出点との距離が大きくなる。いずれにしても、液膜の噴出点と基板表面との距離が長くなるので、前述のようにカーテン状に形成される液膜がテーパ状に広がる現象が現れることになり、基板表面上の異物に対する物理的除去排出力低下につながる。
【0009】
【特許文献1】特開平7−6991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、ノズル口から噴出するカーテン状の液膜がテーパ状に広がることを抑制し、さらにノズルの液膜噴出点を基板表面に近づけ、かつ基板表面に対して低角度で液膜を噴出することができる基板洗浄ノズルおよびそれを用いる基板洗浄方法ならびに基板洗浄装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、搬送される基板に向けて洗浄液を噴出して基板の表面を洗浄することに用いられる基板洗浄ノズルにおいて、
基板の搬送方向に直交する方向に延びてスリット状に形成されるノズル口であって、互いに略平行になるように形成される2つの第1ノズル口と第2ノズル口とを有することを特徴とする基板洗浄ノズルである。
【0012】
また本発明は、洗浄液を供給するために形成される1つの洗浄液供給口と、
洗浄液供給口に連なり洗浄液供給口から供給される洗浄液を貯留する1つの洗浄液貯留部とを備え、
洗浄液貯留部は、第1および第2ノズル口に連通するように形成されることを特徴とする。
【0013】
また本発明は、洗浄液を供給するために形成される第1洗浄液供給口と、
第1洗浄液供給口に連なり第1洗浄液供給口から供給される洗浄液を貯留する第1洗浄液貯留部と、
洗浄液を供給するために形成される第2洗浄液供給口と、
第2洗浄液供給口に連なり第2洗浄液供給口から供給される洗浄液を貯留する第2洗浄液貯留部とを備え、
第1洗浄液貯留部が第1ノズル口に連通するように形成され、第2洗浄液貯留部が第2ノズル口に連通するように形成されることを特徴とする。
【0014】
また本発明は、略平行になるように形成される第1ノズル口と第2ノズル口との平行間隔の距離が、500μm以下であることを特徴とする。
【0015】
また本発明は、スリット状に形成される第1ノズル口のスリット幅と第2ノズル口のスリット幅とが、等しいことを特徴とする。
【0016】
また本発明は、スリット状に形成される第1ノズル口のスリット幅と第2ノズル口のスリット幅とが、異なることを特徴とする。
【0017】
また本発明は、スリット状に形成されるノズル口のスリット幅が、300μm以下であることを特徴とする。
【0018】
また本発明は、少なくとも洗浄液に接する部位の素材が、ステンレス鋼であるSUS316またはSUS316Lから成ることを特徴とする。
【0019】
また本発明は、搬送される基板に向けて洗浄液を噴出して基板の表面を洗浄する基板洗浄方法において、
前記いずれかの基板洗浄ノズルを、搬送される基板の表面に対して、ノズル口から噴射される洗浄液によって形成される液膜面の成す角度が予め定める角度になるように配置し、
基板を一方方向に搬送し、
基板洗浄ノズルから基板の表面に向けて洗浄液を噴出させて基板の表面を洗浄することを特徴とする基板洗浄方法である。
【0020】
また本発明は、搬送される基板に向けて洗浄液を噴出して基板の表面を洗浄する基板洗浄方法において、
前記いずれかの基板洗浄ノズルを、搬送される基板の表面に対して、ノズル口から噴射される洗浄液によって形成される液膜面の成す角度が予め定める角度になるように配置し、
基板を一方方向に搬送し、
第1洗浄液供給口に供給する洗浄液の圧力と、第2洗浄液供給口に供給する洗浄液の圧力とが等しくなるように洗浄液を供給し、
基板洗浄ノズルから基板の表面に向けて洗浄液を噴出させて基板の表面を洗浄することを特徴とする基板洗浄方法である。
【0021】
また本発明は、搬送される基板に向けて洗浄液を噴出して基板の表面を洗浄する基板洗浄方法において、
前記いずれかの基板洗浄ノズルを、搬送される基板の表面に対して、ノズル口から噴射される洗浄液によって形成される液膜面の成す角度が予め定める角度になるように配置し、
基板を一方方向に搬送し、
第1洗浄液供給口に供給する洗浄液の圧力と、第2洗浄液供給口に供給する洗浄液の圧力とが異なるように洗浄液を供給し、
基板洗浄ノズルから基板の表面に向けて洗浄液を噴出させて基板の表面を洗浄することを特徴とする基板洗浄方法である。
【0022】
また本発明は、第1洗浄液供給口に供給する洗浄液の圧力と第2洗浄液供給口に供給する洗浄液の圧力との差が、1.0MPa以下であることを特徴とする。
【0023】
また本発明は、洗浄液は、比抵抗が18MΩ・cm以上の純水であることを特徴とする。
【0024】
また本発明は、洗浄液供給口に供給される洗浄液の圧力が、1.2MPa以上であることを特徴とする。
【0025】
また本発明は、搬送される基板に向けて洗浄液を噴出して基板の表面を洗浄する基板洗浄装置において、
基板を一方方向に搬送する基板搬送手段と、
基板を臨んで設けられる前記いずれかの基板洗浄ノズルと、
基板洗浄ノズルのノズル口から噴出される洗浄液によって形成される液膜面と基板表面との成す角度が予め定める角度になるように基板洗浄ノズルを保持するノズル保持手段とを含むことを特徴とする基板洗浄装置である。
【0026】
また本発明は、搬送される基板に向けて洗浄液を噴出して基板の表面を洗浄する基板洗浄装置において、
基板を一方方向に搬送する基板搬送手段と、
基板を臨んで設けられる前記いずれかの基板洗浄ノズルと、
基板洗浄ノズルに形成される第1洗浄液供給口に配管を介して接続されて洗浄液を圧送する第1圧送ポンプと、
基板洗浄ノズルに形成される第2洗浄液供給口に配管を介して接続されて洗浄液を圧送する第2圧送ポンプと、
基板洗浄ノズルのノズル口から噴出される洗浄液によって形成される液膜面と基板表面との成す角度が予め定める角度になるように基板洗浄ノズルを保持するノズル保持手段とを含み、
第1洗浄液供給口に洗浄液を供給する第1圧送ポンプの設定圧力と、第2洗浄液供給口に洗浄液を供給する第2圧送ポンプの設定圧力とが異なることを特徴とする基板洗浄装置である。
【0027】
また本発明は、第1圧送ポンプと第1洗浄液供給口との間に設けられる第1圧力調整バルブと、
第2圧送ポンプと第2洗浄液供給口との間に設けられる第2圧力調整バルブとを含むことを特徴とする。
【0028】
また本発明は、装置に用いる洗浄液は、比抵抗が18MΩ・cm以上の純水であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、基板洗浄ノズルは、基板の搬送方向に直交する方向に延びてスリット状に形成されるノズル口であって、互いに略平行になるように形成される2つの第1ノズル口と第2ノズル口とを有する。このことによって、第1ノズル口から噴出されて形成される洗浄液の液膜流れと、第2ノズル口から噴出されて形成される洗浄液の液膜流れとが引付け合い、一重のカーテン状の液膜流れが形成されるので、液膜流れがテーパ状に広がることが抑制される。したがって、基板洗浄ノズルの液膜噴出点を基板表面に近づけるとともに、基板表面に対して低角度で液膜を噴出することができる。
【0030】
また本発明によれば、基板洗浄ノズルは、洗浄液を供給する1つの洗浄液供給口と、洗浄液供給口に連なり洗浄液供給口から供給される洗浄液を貯留する1つの洗浄液貯留部とを備え、洗浄液貯留部が第1および第2ノズル口に連通するように形成される。このことによって、1つの洗浄液供給系を設けるだけで2つのノズル口に洗浄液を供給できるとともに、ノズル口に対する洗浄液の円滑な供給が可能になり、ノズル口の延びる方向における洗浄液の圧力分布を均一にすることができる。
【0031】
また本発明によれば、基板洗浄ノズルは、第1洗浄液供給口と、該第1洗浄液供給口に連なるとともに第1ノズル口に連通する第1洗浄液貯留部と、第2洗浄液供給口と、該第2洗浄液供給口に連なるとともに第2ノズル口に連通する第2洗浄液貯留部とを備える。このように第1および第2ノズル口のそれぞれに連通して洗浄液貯留部が設けられることによって、各ノズル口のそれぞれに円滑に洗浄液を供給することができるとともに、ノズル口の延びる方向における洗浄液の圧力分布を一層均一にすることができる。
【0032】
また本発明によれば、第1ノズル口と第2ノズル口との平行間隔の距離が500μm以下になるように形成されるので、第1ノズル口から噴出されて形成される液膜と、第ノズル口から噴出されて形成される液膜とが引付け合う力を、好適に発現させることができる。
【0033】
また本発明によれば、第1ノズル口のスリット幅と第2ノズル口のスリット幅とが、等しくなるように形成されるので、第1および第2ノズル口から噴出されて形成される液膜を、ほぼ真直ぐの軌跡で精度よく基板表面に到達させることができる。
【0034】
また本発明によれば、第1ノズル口のスリット幅と第2ノズル口のスリット幅とが、異なるように形成されるので、第1および第2ノズル口から噴出されて形成される液膜を、曲率を有する軌跡で基板表面に到達させることができる。このことによって、基板洗浄ノズルの液膜の噴出点を基板表面に一層近づけ、また一層低角度で噴出させるように配置することが可能になる。
【0035】
また本発明によれば、ノズル口のスリット幅が300μm以下に形成されるので、基板の表面洗浄に適した流速で洗浄液を噴出させることができる。
【0036】
また本発明によれば、基板洗浄ノズルは、少なくとも洗浄液に接する部位の素材がステンレス鋼であるSUS316またはSUS316Lから成る。このことによって、洗浄液に対する不純物の溶出が抑制されるので、洗浄効果を高めることができる。またSUS316またはSUS316Lは、樹脂等の素材に比べて強度が優れるので、ノズルの耐久性を向上することができる。
【0037】
また本発明によれば、基板の洗浄に前記いずれかの基板洗浄ノズルが用いられるので、高速な液膜流れを形成することが可能であり、洗浄効率の高い基板洗浄方法が実現される。
【0038】
また本発明によれば、第1洗浄液供給口に供給する洗浄液の圧力と第2洗浄液供給口に供給する洗浄液の圧力との差が、1.0MPa以下に設定されるので、第1ノズル口から噴出される液膜と、第2ノズル口から噴出される液膜とが円滑に一体化してカーテン状の液膜流れが形成される。
【0039】
また本発明によれば、洗浄液として比抵抗が18MΩ・cm以上の純水が用いられるので、高い洗浄能力を発現することができる。
【0040】
また本発明によれば、洗浄液供給口には、1.2MPa以上の圧力で洗浄液が供給されるので、高い洗浄能力を発現することができる。
【0041】
また本発明によれば、基板洗浄ノズルから噴出して形成されるカーテン状の液膜流れがテーパ状に広がることなく、かつ高速で基板に衝突するので、高い洗浄能力を発現することのできる基板洗浄装置が提供される。
【0042】
また本発明によれば、第1洗浄液供給口に洗浄液を供給する第1圧送ポンプの設定圧力と、第2洗浄液供給口に洗浄液を供給する第2圧送ポンプの設定圧力とが異なるので、ノズル口から噴出される液膜に曲率を与えるとともに、曲率の大きさを自在に調整することが可能である。
【0043】
また本発明によれば、第1圧送ポンプと第1洗浄液供給口との間には第1圧力調整バルブが設けられ、第2圧送ポンプと第2洗浄液供給口との間には第2圧力調整バルブが設けられるので、第1および第2洗浄液供給口にそれぞれ供給する洗浄液の設定圧力を容易に調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
図1は本発明の実施の第1形態である基板洗浄ノズル1の構成を簡略化して示す切断端面図であり、図2は図1に示す基板洗浄ノズル1から液膜流れが噴出されている状態を示す図である。
【0045】
本実施の形態に示す基板洗浄ノズル1は、不図示の搬送される基板に向けて洗浄液を噴出して基板の表面を洗浄することに用いられる。この基板洗浄ノズル1で用いられる洗浄液は、基板表面に付着している異物を除去するために用いられる液体を意味し、たとえば酸性薬液、アルカリ性薬液、有機物薬液、ガスが溶存された純水などが挙げられ、なかでも望ましくは比抵抗が10MΩ・cm以上の純水、さらに望ましくは比抵抗が18MΩ・cm以上の純水(いわゆる超純水)が好適である。
【0046】
基板洗浄ノズル1は、大略細長い直方体形状を有し、不図示の基板の搬送方向に直交する方向に延びてスリット状に形成されるノズル口であって、互いに略平行になるように形成される2つの第1ノズル口2、第2ノズル口3と、洗浄液を供給するために形成される1つの洗浄液供給口4と、洗浄液供給口4に連なり洗浄液供給口4から供給される洗浄液を貯留する1つの洗浄液貯留部5であって第1および第2ノズル口2,3に連通するように形成される洗浄液貯留部5とを含む。
【0047】
本実施の形態では、基板洗浄ノズル1は、日本工業規格(JIS)G4303に規定されるオーステナイト系ステンレス鋼であるSUS316から成る。SUS316は、洗浄液に対する不純物の溶出が少ないので洗浄効果を高めることができ、また樹脂等の素材に比べて強度が優れるので、ノズルの耐久性を向上することができる。なお基板洗浄ノズル1の素材は、SUS316に限定されることなく、たとえばSUS316Lであっても良い。また、ノズル全体がSUS316またはSUS316Lである必要がなく、少なくともノズル内面の洗浄液に接する部分のみがSUS316またはSUS316Lから成る構成であっても良い。しかしながら、本実施形態の基板洗浄ノズル1では加工の容易性からSUS316の一体構造とした。
【0048】
基板洗浄ノズル1は、長手方向に垂直な断面における洗浄液の流路がL字状に形成され、L字の一方の端部側に洗浄液供給口4が形成され、L字の他方の端部側に2つのノズル口である第1および第2ノズル口2,3が略平行になるように形成され、L字のコーナー部に洗浄液貯留部5が形成される。基板洗浄ノズル1では、洗浄液供給口4から洗浄液貯留部5まで1本の流路が形成され、L字の他方の端部であるノズル口付近において、流路内に1つの間挿板6が設けられることによって、ノズル口が第1ノズル口2と第2ノズル口3との2つに分けられる。
【0049】
基板洗浄ノズル1は、基板の搬送方向に対して直交する方向である基板の幅方向(以後、この方向を単に幅方向と呼ぶ:図1の紙面に対して垂直な方向)に細長く延び、洗浄対象とする基板の幅方向長さ以上の長さに形成される。第1および第2ノズル口2,3に連通し、洗浄液流過方向上流側に洗浄液貯留部5を形成することによって、洗浄液供給口4から加圧されて供給される洗浄液の第1および第2ノズル口2,3での前記幅方向における圧力分布を均一にすることができる。
【0050】
基板洗浄ノズル1において、間挿板6が設けられることによって第1ノズル口2と第2ノズル口3とが形成される部分の洗浄液噴出方向の長さL1(便宜上、この長さをスリット長さL1と呼ぶ)は、1mm以上10mm以下、望ましくは1mm以上5mm以下に設定される。スリット長さL1が、1mm未満では、純水の助走距離が短くなるので、第1および第2ノズル口2,3から吐出される液膜をカーテン状に保持することが難しくなり、10mmを超えると、圧力損失により純水吐出流速が5m/s以上にならない場合がある。
【0051】
また第1および第2ノズル口2,3の洗浄液噴出方向に直交しかつ前記幅方向に直交する方向(ノズル厚さ方向)の寸法W1(便宜上、この寸法をスリット幅W1と呼ぶ)は、10μm以上300μm以下に設定され、望ましくは30μm以上100μm以下に設定される。本実施形態の基板洗浄ノズル1では、第1ノズル口2のスリット幅と第2ノズル口3のスリット幅とが等しい幅W1に形成される。スリット幅W1が、10μm未満では、圧力損失により純水吐出流速が5m/s以上にならない場合があり、300μmを超えると、カーテン状の液膜厚みが増大することにより、基板表面に流れる液膜厚みも増大し、純水の流れが基板表面近傍ではなく液膜表層のみで形成され、基板に付着している異物の除去効果が薄れることになる。
【0052】
また第1ノズル口2と第2ノズル口3とのノズル厚さ方向の間隔すなわち平行間隔であり、間挿板6の厚さに相当する距離であるノズル間距離D1は、50μm以上500μm以下の範囲に設定され、望ましくは50μm以上200μm以下で設定される。ノズル間距離D1が、50μm未満では、ノズル直近で2つの液膜が接触してしまい、一本のスリットノズルと同じ吐出状態になり、500μmを超えると、2つの液膜が接触することが難しくなる。
【0053】
なお特にノズル間距離D1が50μm以上200μm以下で設定されるとき、第1および第2ノズル口2,3の先端から略10mm以下までの距離で、後述する一重のカーテン状の液膜流れが安定して形成される。
【0054】
以下に図2を参照し、基板洗浄ノズル1から洗浄液を噴出するときの現象について説明する。不図示の圧送ポンプで加圧された洗浄液7が、洗浄液供給口4を通して洗浄液貯留部5に送られる。洗浄液貯留部5からノズル口へ向って流過する洗浄液7は、間挿板6によって第1ノズル口2を流過する第1液膜流れ7aと第2ノズル口3を流過する第2液膜流れ7bとに分けられる。各液膜流れ7a,7bは、第1および第2ノズル口2,3の出口からカーテン状の液膜流れとしてそれぞれ噴出される。
【0055】
第1および第2ノズル口2,3からそれぞれ噴出される液膜流れ7a,7bが、少なくとも5m/秒以上の噴出速度を有するとき、間挿板6の洗浄液流過方向下流側に、カーテン状の各液膜流れ7a,7b同士の間に空間8が形成され、この空間8内の空気とカーテン状の液膜流れ7a,7bとの粘性摩擦相互作用によって、空間8内の空気は除除に排出され、結果的に空間8の気圧が低下する。空間8の気圧が低下することによって、第1液膜流れ7aと第2液膜流れ7bとが、吸引されて引付け合い、一重のカーテン状の液膜流れ(以後、便宜上一重液膜流れと呼ぶ)7cが形成される。
【0056】
また、第1および第2ノズル口2,3から噴出される液膜流れ7a,7bが少なくとも5m/秒以上の噴出速度を有するとき、第1および第2ノズル口2,3周辺の空気と、第1および第2液膜流れ7a,7bとの粘性摩擦相互作用によって、流速が速い第1空気流れ9および第2空気流れ10が形成される。この第1および第2空気流れ9,10の流れ方向と、一重液膜流れ7cの流れ方向とが同一方向であることから、第1および第2空気流れ9,10と一重液膜流れ7cとの界面における粘性摩擦相互作用が小さくなるので、一重液膜流れ7cは、速度が減衰されることなく、かつテーパ状に広がることもなく、第1および第2ノズル口2,3の出口からある程度の距離までカーテン状の流れ形状が保たれる。
【0057】
なお第1および第2ノズル口2,3から噴出される液膜流れ7a,7bが少なくとも5m/秒以上の噴出速度を有し、一重液膜流れ7cが第1および第2ノズル口2,3の出口からある程度の距離までカーテン状の流れ形状を保つためには、基板洗浄ノズル1の形状にも依るけれども、洗浄液供給口4に供給される洗浄液7の圧力が少なくとも1.2MPa以上であることが望ましい。
【0058】
図3は本発明の実施の第2形態である基板洗浄ノズル11の構成を簡略化して示す切断端面図であり、図4は図3に示す基板洗浄ノズル11から液膜流れが噴出されている状態を示す図である。本実施形態の基板洗浄ノズル11は、実施の第1形態の洗浄ノズル1に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0059】
基板洗浄ノズル11は、洗浄液を供給するために形成される第1洗浄液供給口12と、第1洗浄液供給口12に連なり第1洗浄液供給口12から供給される洗浄液を貯留する第1洗浄液貯留部13と、洗浄液を供給するために形成される第2洗浄液供給口14と、第2洗浄液供給口14に連なり第2洗浄液供給口14から供給される洗浄液を貯留する第2洗浄液貯留部15とを備え、第1洗浄液貯留部13が第1ノズル口2に連通するように形成され、第2洗浄液貯留部15が第2ノズル口3に連通するように形成される。
【0060】
基板洗浄ノズル11では、間挿板16を洗浄液流過方向上流側へさらに延長するとともに端部が対向壁18に連なるようにして隔壁板17を形成することによって、第1洗浄液供給口12、第1洗浄液貯留部13、第1ノズル口2と連なる洗浄液の流過空間と、第2洗浄液供給口14、第2洗浄液貯留部15、第2ノズル口3と連なる洗浄液の流過空間とに区分される。第1および第2ノズル口2,3に、独立した第1洗浄液貯留部13と第2洗浄液貯留部15とをそれぞれ連通するようにして設けることによって、第1および第2ノズル口2,3からそれぞれ噴出される洗浄液の幅方向の圧力分布を一層均一にすることができる。
【0061】
以下図4を参照し、基板洗浄ノズル11から洗浄液を噴出するときの現象について説明する。不図示の1台の圧送ポンプで加圧された洗浄液7が、第1および第2洗浄液供給口12,14を通して第1および第2洗浄液貯留部13,15にそれぞれ送られるか、または不図示の2台の圧送ポンプで加圧された洗浄液7が、各圧送ポンプから第1および第2洗浄液供給口12,14を通して第1および第2洗浄液貯留部13,15にそれぞれ送られる。ただし、本実施形態の基板洗浄ノズル11においては、2台の圧送ポンプから洗浄液を第1および第2洗浄液供給口12,14へそれぞれ送る場合であっても、その両洗浄液の圧力は、等しい圧力に設定される。
【0062】
第1洗浄液貯留部13と第2洗浄液貯留部15とは、隔壁板17によって区画されるので、第1洗浄液貯留部13に至った洗浄液7が第1ノズル口2へ流過して第1液膜流れ7aを形成して第1ノズル口2の出口から噴射され、第2洗浄液貯留部15に至った洗浄液7が第2ノズル口3へ流過して第2液膜流れ7bを形成して第2ノズル口3の出口から噴出される。
【0063】
第1および第2ノズル口2,3の出口からそれぞれカーテン状に噴出される第1および第2液膜流れ7a,7bの噴出以降の作用については、実施の第1形態の基板洗浄ノズル1の場合と同一であるので、説明を省略する。
【0064】
図5は本発明の実施の第3形態である基板洗浄ノズル21の構成を簡略化して示す切断端面図であり、図6は図5に示す基板洗浄ノズル21から液膜流れが噴出されている状態を示す図である。本実施形態の基板洗浄ノズル21は、実施の第1形態の基板洗浄ノズル1に類似し対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0065】
基板洗浄ノズル21において注目すべきは、スリット状に形成される第1ノズル口22のスリット幅W2と、第2ノズル口23のスリット幅W3とが、異なるように形成されることである。基板洗浄ノズル21では、間挿板6を第1ノズル口22寄りに設けることによって、第1ノズル口22のスリット幅W2が、第2ノズル口23のスリット幅W3よりも小さく(W2<W3)なるように構成される。
【0066】
スリット幅W2,W3は、いずれも10μm以上300μm以下の範囲内で設定されるけれども、望ましくはスリット幅W2が30μm以上50μm未満、スリット幅W3が50μm以上200μm以下に設定される。各スリット幅がこのように設定されるとき、一重液膜流れ24cが、第1液膜流れ24aの方に曲りながら速度が減衰されることなく、かつテーパ状に広がることもなく、第1および第2ノズル口22,23の出口からある程度の距離までカーテン状に流れ形状を保つことができる。
【0067】
以下図6を参照し、基板洗浄ノズル21から洗浄液を噴出するときの現象について説明する。不図示の圧送ポンプで加圧された洗浄液24が、洗浄液供給口4を通して洗浄液貯留部5に送られる。洗浄液貯留部5からノズル口へ向って流過する洗浄液24は、間挿板6によって第1ノズル口22を流過する第1液膜流れ24aと第2ノズル口23を流過する第2液膜流れ24bとに分けられる。各液膜流れ24a,24bは、第1および第2ノズル口22,23の出口からカーテン状の液膜流れとしてそれぞれ噴出される。
【0068】
基板洗浄ノズル21においては、第1ノズル口22および第2ノズル口23に連通する洗浄液貯留部5における洗浄液24の圧力が共通であるにも関らず、第1ノズル口22のスリット幅W2が、第2ノズル口23のスリット幅W3よりも小さくなるように構成されるので、第1液膜流れ24aの流速V1が、第2液膜流れ24bの流速V2よりも遅く(V1<V2)なる。したがって、第1液膜流れ24aと第2液膜流れ24bとが互いに引付け合って形成される一重液膜流れ24cは、流速が遅い第1液膜流れ24aの方に曲がる曲率を有するように形成される。
【0069】
また、第1および第2液膜流れ24a,24bと、ノズル周辺の空気との粘性摩擦相互作用によってそれぞれ形成される第1および第2空気流れ25,26は、一重液膜流れ24cの進行方向に沿って形成されるので、第1および第2空気流れ25,26と一重液膜流れ24cとの界面における粘性摩擦相互作用が小さくなり、一重液膜流れ24cは、速度が減衰されることなく、かつテーパ状に広がることもなく、第1および第2ノズル口22,23の出口からある程度の距離まで曲率を有した状態でカーテン状の流れ形状が保たれる。
【0070】
図7は本発明の実施の第4形態である基板洗浄ノズル31の構成を簡略化して示す切断端面図であり、図8は図7に示す基板洗浄ノズル31から液膜流れが噴出されている状態を示す図である。本実施形態の基板洗浄ノズル31は、実施の第2形態の洗浄ノズル11に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0071】
基板洗浄ノズル31は、間挿板16と隔壁板17とによって、第1洗浄液供給口12、第1洗浄液貯留部13、第1ノズル口32と連なる洗浄液の流過空間と、第2洗浄液供給口14、第2洗浄液貯留部15、第2ノズル口33と連なる洗浄液の流過空間とに区分されるとともに、スリット状に形成される第1ノズル口32のスリット幅W2と、第2ノズル口33のスリット幅W3とが、異なるように形成される。実施の第3形態の基板洗浄ノズル21と同様に、基板洗浄ノズル31においても、第1ノズル口32のスリット幅W2が、第2ノズル口33のスリット幅W3よりも小さく(W2<W3)なるように構成される。
【0072】
以下図8を参照し、基板洗浄ノズル21から洗浄液を噴出するときの現象について説明する。不図示の2台の圧送ポンプで加圧された洗浄液34が、各圧送ポンプから第1および第2洗浄液供給口12,14を通して第1および第2洗浄液貯留部13,15にそれぞれ送られる。ただし、本実施形態の基板洗浄ノズル31においては、2台の圧送ポンプから洗浄液を第1および第2洗浄液供給口12,14へそれぞれ送る場合、その両洗浄液の圧力は、等しい圧力に設定される。第1洗浄液貯留部13と第2洗浄液貯留部15とは、隔壁板17によって区画されるので、第1洗浄液貯留部13に至った洗浄液3が第1ノズル口32へ流過して第1液膜流れ34aを形成して第1ノズル口32の出口から噴出され、第2洗浄液貯留部15に至った洗浄液34が第2ノズル口33へ流過して第2液膜流れ34bを形成して第2ノズル口33の出口から噴出される。
【0073】
基板洗浄ノズル31では、実施の第3形態の基板洗浄ノズル21と同様に、第1ノズル口32のスリット幅W2が、第2ノズル口23のスリット幅W3よりも小さくなるように構成されるので、第1液膜流れ34aと第2液膜流れ34bとが互いに引付け合って形成される一重液膜流れ34cは、流速が遅い第1液膜流れ34aの方に曲がる曲率を有するように形成される。
【0074】
また、第1および第2液膜流れ34a,34bと、ノズル周辺の空気との粘性摩擦相互作用によってそれぞれ形成される第1および第2空気流れ35,36も、実施の第3形態の基板洗浄ノズル21の場合と同様に作用するので、一重液膜流れ34cは、速度が減衰されることなく、かつテーパ状に広がることもなく、第1および第2ノズル口32,33の出口からある程度の距離まで曲率を有した状態でカーテン状の流れ形状が保たれる。
【0075】
実施の第3および第4形態の基板洗浄ノズル21,31によれば、第1ノズル口のスリット幅と第2ノズル口のスリット幅とが、異なるように形成され、第1および第2ノズル口から噴出されて形成される一重液膜流れを、曲率を有する軌跡で基板表面に到達させることができるので、液膜流れの噴出点を基板表面に一層近づけ、また一層低角度で噴出させるように配置することが可能になる。
【0076】
図9は、本発明のもう一つの実施形態である基板洗浄装置40の構成を簡略化して示す図である。ここで、本発明のもう一つの実施形態である基板洗浄装置40を、本発明の基板洗浄ノズルの実施形態に続けて実施の第5形態と呼ぶ。以降の基板洗浄装置に係る本発明の変形例を示す実施形態についても、これに続く通し番号で表すことにする。
【0077】
本実施形態の基板洗浄装置40は、搬送される基板41に向けて洗浄液を噴出して基板41の表面を洗浄することに用いられ、基板41を矢符42にて示す一方方向に搬送する基板搬送手段43と、基板41を臨んで設けられる前記実施の第1形態の基板洗浄ノズル1と、基板洗浄ノズル1の洗浄液供給口4に接続されて洗浄液7を供給する圧送ポンプ44と、基板洗浄ノズル1のノズル口2,3から噴出される洗浄液によって形成される一重液膜流れ7cの膜面45(以後、液膜面と呼ぶ)と、基板表面41aとの成す角度αが、予め定める角度になるように基板洗浄ノズル1を保持するノズル保持手段46とを含む。
【0078】
基板洗浄装置40における洗浄対象である基板41としては、たとえばシリコンウエハまたはガラス基板などが挙げられる。洗浄液7としては、基板洗浄ノズル1に関して述べたように、たとえば酸性薬液、アルカリ性薬液、有機物薬液、ガスが溶存された純水などが挙げられ、なかでも比抵抗が18MΩ・cm以上の超純水が好適に用いられる。
【0079】
基板搬送手段43は、複数の搬送ローラ47と、搬送ローラ47を矢符48方向に回転駆動させる不図示のローラ駆動手段とを含む。複数設けられる搬送ローラ47は、すべてがローラ駆動手段に接続されて回転駆動されるように構成されても良く、また1個の搬送ローラ47が回転駆動され、残余の搬送ローラ47は駆動搬送ローラ47にプーリと無端ベルトで連結されて従動回転されるように構成されても良い。いずれの構成であっても、基板41は、矢符48方向に回転する搬送ローラ47上に載置されて、矢符42方向に搬送される。
【0080】
圧送ポンプ44は公知の液体圧送ポンプを用いることができる。圧送ポンプ44は、不図示の洗浄液槽に配管で接続され、洗浄液槽に収容される洗浄液を、洗浄液供給配管49を介して基板洗浄ノズル1の洗浄液供給口4へ供給する。
【0081】
ノズル保持手段46は、一種のマニピュレータである。ノズル保持手段46は、基板洗浄ノズル1を保持した状態で、図9の紙面に垂直な保持軸50まわりに角変位移動可能に構成される。このことによって、ノズル保持手段46は、保持する基板洗浄ノズル1のノズル口2,3から噴出される一重液膜流れ7cの液膜面45と基板表面41aとの成す角度αを変化させることができ、また保持する基板洗浄ノズル1のノズル口2,3と基板表面41aとの離隔距離を変化させることができる。
【0082】
基板洗浄装置40において、基板洗浄ノズル1と基板41との相対的配置は、基板41の種類および洗浄液の種類によって適宜選択設定されるけれども、配置の一例を示すと以下のようである。
【0083】
たとえば、基板洗浄ノズル1は、基板41の上方であって、基板41搬送方向下流側から上流側に向って洗浄液を噴出できるように基板表面41aに対向して配置され、基板41の搬送速度が5000mm/min以下、たとえば2500mm/minであるとき、基板洗浄ノズル1のノズル口最下端部と基板表面41aとの離隔距離Gが10mm以下、望ましくは5mm以下、上記角度αが45度であるように配置される。なお、圧送ポンプ44で基板洗浄ノズル1の洗浄液供給口4に供給される洗浄液7の圧力は1.2MPa以上であることが望ましい。
【0084】
上記に一例を示すように基板洗浄ノズル1と基板41とが配置される状態で、基板搬送手段43によって基板41を矢符42で示す一方方向に搬送し、基板洗浄ノズル1の第1および第2ノズル口2,3から基板表面41aに向けて洗浄液の一重液膜流れ7cを噴出させて基板表面41aを洗浄する。このとき、洗浄ノズルとして本発明の基板洗浄ノズル1を用いるので、基板洗浄ノズル1から噴出される液膜流れ7cが、減衰することなく、かつテーパ状に広がることなく基板表面41aに衝突することによって、基板41の表面41a全体に付着している異物を効果的に除去することが可能である。
【0085】
図10は、本発明の実施の第6形態である基板洗浄装置60の構成を簡略化して示す図である。本実施の形態の基板洗浄装置60は、実施の第5形態の基板洗浄装置40に類似し対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。基板洗浄装置60において注目すべきは、基板洗浄ノズルとして実施の第3形態の基板洗浄ノズル21を備えることである。
【0086】
したがって、第1ノズル口22から噴出されて形成される第1液膜流れ24aと、第2ノズル口23から噴出されて形成される第2液膜流れ24bとが互いに引付け合って形成される一重液膜流れ24cは、流速が遅い第1液膜流れ24aの方に曲がる曲率を有するように形成され、速度が減衰されることなく、かつテーパ状に広がることもなく、第1および第2ノズル口22,23の出口からある程度の距離まで曲率を有した状態でカーテン状の流れ形状が保たれた状態で基板表面41aに衝突する。
【0087】
このような基板洗浄装置60によれば、実施の第5形態の基板洗浄装置40と同じ効果を奏することができるとともに、曲率を有するように一重液膜流れ24cを噴出することができるので、基板洗浄ノズル21の液膜流れの噴出点であるノズル口22,23を基板表面41aに一層近づけ、また角度αを一層小さくして低角度で噴出させるように配置することが可能になる。
【0088】
図11は、本発明の実施の第7形態である基板洗浄装置70の構成を簡略化して示す図である。本実施の形態の基板洗浄装置70は、実施の第5形態の基板洗浄装置40に類似し対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0089】
基板洗浄装置70は、基板洗浄ノズルとして実施の第2形態の基板洗浄ノズル11を備え、基板洗浄ノズル11に形成される第1洗浄液供給口12に第1配管71を介して接続されて第1洗浄液72を圧送する第1圧送ポンプ73と、基板洗浄ノズル11に形成される第2洗浄液供給口14に第2配管74を介して接続されて第2洗浄液75を圧送する第2圧送ポンプ76とをさらに含み、第1洗浄液供給口12に第1洗浄液72を供給する第1圧送ポンプ73の設定圧力P1と、第2洗浄液供給口14に第2洗浄液75を供給する第2圧送ポンプ76の設定圧力P2とが異なることを特徴とする。
【0090】
たとえば、第1圧送ポンプ73の設定圧力P1と第2圧送ポンプ76の設定圧力P2との関係がP1<P2であるとき、第1ノズル口2から噴出されて形成されるカーテン状の第1液膜流れ72aの噴出速度V3は、第2ノズル口3から噴出されて形成されるカーテン状の第2液膜流れ75aの噴出速度V4よりも遅く(V3<V4)なる。したがって、第1液膜流れ72aと第2液膜流れ75aとが引付け合って形成される一重液膜流れ77は、第1液膜流れ72aの方に曲げられることになる。このとき、第1圧送ポンプ73の設定圧力P1と第2圧送ポンプ76の設定圧力P2との圧力差ΔP(=|P1−P2|)が、1.0MPa以下であることが望ましい。圧力差ΔPが1.0MPaを超えると、2つの液膜流れの吐出速度の差が過大になるので、カーテン状の1つの液膜流れにならない。
【0091】
なお、本実施形態の基板洗浄装置70では、第1圧送ポンプ73の設定圧力P1と、第2圧送ポンプ76の設定圧力P2とを等しくして基板洗浄のズル11へ供給することも可能である。このとき一重液膜流れ77は、曲率を有することなく真直ぐな軌跡で基板表面41aに達する。
【0092】
実施の第5形態の場合に準じて基板洗浄ノズル11と基板41との相対配置を定め、基板搬送手段43によって基板41を矢符42で示す一方方向に搬送し、基板洗浄ノズル11の第1および第2ノズル口2,3から基板表面41aに向けて洗浄液の一重液膜流れ77を噴出させ、第1液膜流れ72aの方へ曲がる曲率を有する一重液膜流れ77によって基板表面41aを洗浄する。
【0093】
このような基板洗浄装置70を用いる基板洗浄方法によれば、第1および第2圧送ポンプ73,76の洗浄液を圧送する設定圧力を調整することによって、実施の第5形態の基板洗浄装置40と実施の第6形態の基板洗浄装置60との効果を、選択する形で奏することができる。
【0094】
図12は、本発明の実施の第8形態である基板洗浄装置80の構成を簡略化して示す図である。本実施の形態の基板洗浄装置80は、実施の第7形態の基板洗浄装置70に類似し対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0095】
基板洗浄装置80は、第1圧送ポンプ73と第1洗浄液供給口12との間に第1圧力調整バルブ81が設けられ、第2圧送ポンプ76と第2洗浄液供給口14との間に第2圧力調整バルブ82が設けられることを特徴とする。
【0096】
このように圧送ポンプ73,76と洗浄液供給口12,14との間に、圧送ポンプ73,76から送出される洗浄液の圧力を調整することのできる圧力調整バルブ81,82をそれぞれ設けることによって、第1および第2洗浄液供給口12,14にそれぞれ供給する洗浄液の設定圧力P1,P2を独立して容易に調整することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の実施の第1形態である基板洗浄ノズル1の構成を簡略化して示す切断端面図である。
【図2】図1に示す基板洗浄ノズル1から液膜流れが噴出されている状態を示す図である。
【図3】本発明の実施の第2形態である基板洗浄ノズル11の構成を簡略化して示す切断端面図である。
【図4】図3に示す基板洗浄ノズル11から液膜流れが噴出されている状態を示す図である。
【図5】本発明の実施の第3形態である基板洗浄ノズル21の構成を簡略化して示す切断端面図である。
【図6】図5に示す基板洗浄ノズル21から液膜流れが噴出されている状態を示す図である。
【図7】本発明の実施の第4形態である基板洗浄ノズル31の構成を簡略化して示す切断端面図である。
【図8】図7に示す基板洗浄ノズル31から液膜流れが噴出されている状態を示す図である。
【図9】本発明のもう一つの実施形態である基板洗浄装置40の構成を簡略化して示す図である。
【図10】本発明の実施の第6形態である基板洗浄装置60の構成を簡略化して示す図である。
【図11】本発明の実施の第7形態である基板洗浄装置70の構成を簡略化して示す図である。
【図12】本発明の実施の第8形態である基板洗浄装置80の構成を簡略化して示す図である。
【符号の説明】
【0098】
1,11,21,31 基板洗浄ノズル
2,22,32 第1ノズル口
3,23,33 第2ノズル口
4,12,14 洗浄液供給口
5,13,15 洗浄液貯留部
6,16 間挿板
7,24,34 洗浄液
8 空間
9,10,25,26,35,36 空気流れ
17 隔壁板
40,60,70,80 基板洗浄装置
41 基板
43 基板搬送手段
44,73,76 圧送ポンプ
45 液膜面
46 ノズル保持手段
81,82 圧力調整バルブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される基板に向けて洗浄液を噴出して基板の表面を洗浄することに用いられる基板洗浄ノズルにおいて、
基板の搬送方向に直交する方向に延びてスリット状に形成されるノズル口であって、互いに略平行になるように形成される2つの第1ノズル口と第2ノズル口とを有することを特徴とする基板洗浄ノズル。
【請求項2】
洗浄液を供給するために形成される1つの洗浄液供給口と、
洗浄液供給口に連なり洗浄液供給口から供給される洗浄液を貯留する1つの洗浄液貯留部とを備え、
洗浄液貯留部は、第1および第2ノズル口に連通するように形成されることを特徴とする請求項1記載の基板洗浄ノズル。
【請求項3】
洗浄液を供給するために形成される第1洗浄液供給口と、
第1洗浄液供給口に連なり第1洗浄液供給口から供給される洗浄液を貯留する第1洗浄液貯留部と、
洗浄液を供給するために形成される第2洗浄液供給口と、
第2洗浄液供給口に連なり第2洗浄液供給口から供給される洗浄液を貯留する第2洗浄液貯留部とを備え、
第1洗浄液貯留部が第1ノズル口に連通するように形成され、第2洗浄液貯留部が第2ノズル口に連通するように形成されることを特徴とする請求項1記載の基板洗浄ノズル。
【請求項4】
略平行になるように形成される第1ノズル口と第2ノズル口との平行間隔の距離が、
500μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の基板洗浄ノズル。
【請求項5】
スリット状に形成される第1ノズル口のスリット幅と第2ノズル口のスリット幅とが、等しいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の基板洗浄ノズル。
【請求項6】
スリット状に形成される第1ノズル口のスリット幅と第2ノズル口のスリット幅とが、異なることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の基板洗浄ノズル。
【請求項7】
スリット状に形成されるノズル口のスリット幅が、
300μm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の基板洗浄ノズル。
【請求項8】
少なくとも洗浄液に接する部位の素材が、
ステンレス鋼であるSUS316またはSUS316Lから成ることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の基板洗浄ノズル。
【請求項9】
搬送される基板に向けて洗浄液を噴出して基板の表面を洗浄する基板洗浄方法において、
前記請求項1〜8のいずれか1つに記載の基板洗浄ノズルを、搬送される基板の表面に対して、ノズル口から噴射される洗浄液によって形成される液膜面の成す角度が予め定める角度になるように配置し、
基板を一方方向に搬送し、
基板洗浄ノズルから基板の表面に向けて洗浄液を噴出させて基板の表面を洗浄することを特徴とする基板洗浄方法。
【請求項10】
搬送される基板に向けて洗浄液を噴出して基板の表面を洗浄する基板洗浄方法において、
前記請求項3〜8のいずれか1つに記載の基板洗浄ノズルを、搬送される基板の表面に対して、ノズル口から噴射される洗浄液によって形成される液膜面の成す角度が予め定める角度になるように配置し、
基板を一方方向に搬送し、
第1洗浄液供給口に供給する洗浄液の圧力と、第2洗浄液供給口に供給する洗浄液の圧力とが等しくなるように洗浄液を供給し、
基板洗浄ノズルから基板の表面に向けて洗浄液を噴出させて基板の表面を洗浄することを特徴とする基板洗浄方法。
【請求項11】
搬送される基板に向けて洗浄液を噴出して基板の表面を洗浄する基板洗浄方法において、
前記請求項3〜8のいずれか1つに記載の基板洗浄ノズルを、搬送される基板の表面に対して、ノズル口から噴射される洗浄液によって形成される液膜面の成す角度が予め定める角度になるように配置し、
基板を一方方向に搬送し、
第1洗浄液供給口に供給する洗浄液の圧力と、第2洗浄液供給口に供給する洗浄液の圧力とが異なるように洗浄液を供給し、
基板洗浄ノズルから基板の表面に向けて洗浄液を噴出させて基板の表面を洗浄することを特徴とする基板洗浄方法。
【請求項12】
第1洗浄液供給口に供給する洗浄液の圧力と第2洗浄液供給口に供給する洗浄液の圧力との差が、1.0MPa以下であることを特徴とする請求項11記載の基板洗浄方法。
【請求項13】
洗浄液は、比抵抗が18MΩ・cm以上の純水であることを特徴とする請求項9〜12のいずれか1つに記載の基板洗浄方法。
【請求項14】
洗浄液供給口に供給される洗浄液の圧力が、1.2MPa以上であることを特徴とする請求項9〜13のいずれか1つに記載の基板洗浄方法。
【請求項15】
搬送される基板に向けて洗浄液を噴出して基板の表面を洗浄する基板洗浄装置において、
基板を一方方向に搬送する基板搬送手段と、
基板を臨んで設けられる前記請求項1〜8のいずれか1つに記載の基板洗浄ノズルと、
基板洗浄ノズルのノズル口から噴出される洗浄液によって形成される液膜面と基板表面との成す角度が予め定める角度になるように基板洗浄ノズルを保持するノズル保持手段とを含むことを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項16】
搬送される基板に向けて洗浄液を噴出して基板の表面を洗浄する基板洗浄装置において、
基板を一方方向に搬送する基板搬送手段と、
基板を臨んで設けられる前記請求項3〜8のいずれか1つに記載の基板洗浄ノズルと、
基板洗浄ノズルに形成される第1洗浄液供給口に配管を介して接続されて洗浄液を圧送する第1圧送ポンプと、
基板洗浄ノズルに形成される第2洗浄液供給口に配管を介して接続されて洗浄液を圧送する第2圧送ポンプと、
基板洗浄ノズルのノズル口から噴出される洗浄液によって形成される液膜面と基板表面との成す角度が予め定める角度になるように基板洗浄ノズルを保持するノズル保持手段とを含み、
第1洗浄液供給口に洗浄液を供給する第1圧送ポンプの設定圧力と、第2洗浄液供給口に洗浄液を供給する第2圧送ポンプの設定圧力とが異なることを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項17】
第1圧送ポンプと第1洗浄液供給口との間に設けられる第1圧力調整バルブと、
第2圧送ポンプと第2洗浄液供給口との間に設けられる第2圧力調整バルブとを含むことを特徴とする請求項16記載の基板洗浄装置。
【請求項18】
洗浄液は、比抵抗が18MΩ・cm以上の純水であることを特徴とする請求項15〜17のいずれか1つに記載の基板洗浄装置。
【請求項1】
搬送される基板に向けて洗浄液を噴出して基板の表面を洗浄することに用いられる基板洗浄ノズルにおいて、
基板の搬送方向に直交する方向に延びてスリット状に形成されるノズル口であって、互いに略平行になるように形成される2つの第1ノズル口と第2ノズル口とを有することを特徴とする基板洗浄ノズル。
【請求項2】
洗浄液を供給するために形成される1つの洗浄液供給口と、
洗浄液供給口に連なり洗浄液供給口から供給される洗浄液を貯留する1つの洗浄液貯留部とを備え、
洗浄液貯留部は、第1および第2ノズル口に連通するように形成されることを特徴とする請求項1記載の基板洗浄ノズル。
【請求項3】
洗浄液を供給するために形成される第1洗浄液供給口と、
第1洗浄液供給口に連なり第1洗浄液供給口から供給される洗浄液を貯留する第1洗浄液貯留部と、
洗浄液を供給するために形成される第2洗浄液供給口と、
第2洗浄液供給口に連なり第2洗浄液供給口から供給される洗浄液を貯留する第2洗浄液貯留部とを備え、
第1洗浄液貯留部が第1ノズル口に連通するように形成され、第2洗浄液貯留部が第2ノズル口に連通するように形成されることを特徴とする請求項1記載の基板洗浄ノズル。
【請求項4】
略平行になるように形成される第1ノズル口と第2ノズル口との平行間隔の距離が、
500μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の基板洗浄ノズル。
【請求項5】
スリット状に形成される第1ノズル口のスリット幅と第2ノズル口のスリット幅とが、等しいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の基板洗浄ノズル。
【請求項6】
スリット状に形成される第1ノズル口のスリット幅と第2ノズル口のスリット幅とが、異なることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の基板洗浄ノズル。
【請求項7】
スリット状に形成されるノズル口のスリット幅が、
300μm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の基板洗浄ノズル。
【請求項8】
少なくとも洗浄液に接する部位の素材が、
ステンレス鋼であるSUS316またはSUS316Lから成ることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の基板洗浄ノズル。
【請求項9】
搬送される基板に向けて洗浄液を噴出して基板の表面を洗浄する基板洗浄方法において、
前記請求項1〜8のいずれか1つに記載の基板洗浄ノズルを、搬送される基板の表面に対して、ノズル口から噴射される洗浄液によって形成される液膜面の成す角度が予め定める角度になるように配置し、
基板を一方方向に搬送し、
基板洗浄ノズルから基板の表面に向けて洗浄液を噴出させて基板の表面を洗浄することを特徴とする基板洗浄方法。
【請求項10】
搬送される基板に向けて洗浄液を噴出して基板の表面を洗浄する基板洗浄方法において、
前記請求項3〜8のいずれか1つに記載の基板洗浄ノズルを、搬送される基板の表面に対して、ノズル口から噴射される洗浄液によって形成される液膜面の成す角度が予め定める角度になるように配置し、
基板を一方方向に搬送し、
第1洗浄液供給口に供給する洗浄液の圧力と、第2洗浄液供給口に供給する洗浄液の圧力とが等しくなるように洗浄液を供給し、
基板洗浄ノズルから基板の表面に向けて洗浄液を噴出させて基板の表面を洗浄することを特徴とする基板洗浄方法。
【請求項11】
搬送される基板に向けて洗浄液を噴出して基板の表面を洗浄する基板洗浄方法において、
前記請求項3〜8のいずれか1つに記載の基板洗浄ノズルを、搬送される基板の表面に対して、ノズル口から噴射される洗浄液によって形成される液膜面の成す角度が予め定める角度になるように配置し、
基板を一方方向に搬送し、
第1洗浄液供給口に供給する洗浄液の圧力と、第2洗浄液供給口に供給する洗浄液の圧力とが異なるように洗浄液を供給し、
基板洗浄ノズルから基板の表面に向けて洗浄液を噴出させて基板の表面を洗浄することを特徴とする基板洗浄方法。
【請求項12】
第1洗浄液供給口に供給する洗浄液の圧力と第2洗浄液供給口に供給する洗浄液の圧力との差が、1.0MPa以下であることを特徴とする請求項11記載の基板洗浄方法。
【請求項13】
洗浄液は、比抵抗が18MΩ・cm以上の純水であることを特徴とする請求項9〜12のいずれか1つに記載の基板洗浄方法。
【請求項14】
洗浄液供給口に供給される洗浄液の圧力が、1.2MPa以上であることを特徴とする請求項9〜13のいずれか1つに記載の基板洗浄方法。
【請求項15】
搬送される基板に向けて洗浄液を噴出して基板の表面を洗浄する基板洗浄装置において、
基板を一方方向に搬送する基板搬送手段と、
基板を臨んで設けられる前記請求項1〜8のいずれか1つに記載の基板洗浄ノズルと、
基板洗浄ノズルのノズル口から噴出される洗浄液によって形成される液膜面と基板表面との成す角度が予め定める角度になるように基板洗浄ノズルを保持するノズル保持手段とを含むことを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項16】
搬送される基板に向けて洗浄液を噴出して基板の表面を洗浄する基板洗浄装置において、
基板を一方方向に搬送する基板搬送手段と、
基板を臨んで設けられる前記請求項3〜8のいずれか1つに記載の基板洗浄ノズルと、
基板洗浄ノズルに形成される第1洗浄液供給口に配管を介して接続されて洗浄液を圧送する第1圧送ポンプと、
基板洗浄ノズルに形成される第2洗浄液供給口に配管を介して接続されて洗浄液を圧送する第2圧送ポンプと、
基板洗浄ノズルのノズル口から噴出される洗浄液によって形成される液膜面と基板表面との成す角度が予め定める角度になるように基板洗浄ノズルを保持するノズル保持手段とを含み、
第1洗浄液供給口に洗浄液を供給する第1圧送ポンプの設定圧力と、第2洗浄液供給口に洗浄液を供給する第2圧送ポンプの設定圧力とが異なることを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項17】
第1圧送ポンプと第1洗浄液供給口との間に設けられる第1圧力調整バルブと、
第2圧送ポンプと第2洗浄液供給口との間に設けられる第2圧力調整バルブとを含むことを特徴とする請求項16記載の基板洗浄装置。
【請求項18】
洗浄液は、比抵抗が18MΩ・cm以上の純水であることを特徴とする請求項15〜17のいずれか1つに記載の基板洗浄装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−255532(P2006−255532A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−73736(P2005−73736)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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