説明

基板洗浄方法、半導体装置の製造方法及び基板洗浄装置。

【課題】基板表面に形成されたパターンの倒壊や除去された汚染物質の再付着を防止しつつ基板表面の汚染物質を確実に除去する基板洗浄方法、半導体装置の製造方法及び基板洗浄装置を提供する。
【解決手段】基板を回転させながら薬液を基板に供給して基板表面を洗浄する基板洗浄方法であって、基板12に第1の薬液を供給して基板12表面を第1の薬液で満たす工程と、第1の薬液で満たした基板12表面に対して第2の薬液を用いて二流体ジェット洗浄法により基板12表面を洗浄する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の基板表面を洗浄する基板洗浄方法、半導体装置の製造方法及び基板洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ等の基板を洗浄する方法として、基板を薬液槽内に浸して洗浄する方法と、基板を回転させながら薬液を投入する方法とが知られている。これらは、薬液と基板表面の汚染物質との化学反応により汚染物質を除去して基板を洗浄する洗浄方法である。
【0003】
近年においては、基板表面により微細なパターンを形成する傾向があり、基板表面の洗浄方法もこの微細なパターンに応じた方法が用いられている。薬液と汚染物質との化学反応のみでは汚染物質の除去が困難な場合、超音波洗浄、二流体ジェット洗浄及びブラシ洗浄等の物理的な力を付加して基板表面の汚染物質を除去する洗浄方法が用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
より微細な汚染物質を除去するためには、付加する物理的な力を大きくする、すなわち、例えば超音波洗浄では印加する超音波の出力、例えば二流体ジェット洗浄では投入する流体の圧力又は流速を大きくする必要がある。しかしながら、付加する物理的な力を大きくすると、基板表面に形成されたパターンが倒壊するとの問題があった。また、二流体ジェット洗浄では、基板に投入される液量が少ないため除去された汚染物質が再度基板に付着するとの問題があった。
【0005】
本発明の目的は、上記従来の問題を解消し、基板表面の汚染物質を確実に除去する基板洗浄方法、半導体装置の製造方法及び基板洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴とするところは、基板を回転させながら薬液を基板に供給して基板表面を洗浄する基板洗浄方法であって、基板に第1の薬液を供給して基板表面を該第1の薬液で満たす工程と、前記第1の薬液で満たした基板表面に対して第2の薬液を用いて二流体ジェット洗浄法により基板表面を洗浄する工程とを有する基板洗浄方法にある。
【0007】
本発明の第2の特徴とするところは、基板を回転させながら薬液を基板に供給して基板表面を洗浄する洗浄工程を有する半導体装置の製造方法であって、前記洗浄工程は、基板に第1の薬液を供給して基板表面を第1の薬液で満たす工程と、前記第1の薬液で満たした基板表面に対して第2の薬液を用いて二流体ジェット洗浄法により基板表面を洗浄する工程とを有する半導体装置の製造方法にある。
【0008】
本発明の第3の特徴とするところは、基板を支持する支持具と、前記支持具を回転させる回転機構と、基板に対して第1の薬液を供給する第1の薬液吐出ノズルと、基板に対して第2の薬液とガスとを供給する二流体ジェット吐出ノズルと、基板を支持した支持具を回転させつつ、前記第1の薬液吐出ノズルより基板に対して前記第1の薬液を供給した後、前記二流体ジェット吐出ノズルより基板に対して第2の薬液とガスとを供給するように制御するコントローラと、を有する基板洗浄装置にある。
【0009】
好適には、前記第1の薬液は、純水、炭酸水、水素水及びオゾン水の少なくとも1つを含む機能水からなる液体、フッ化水素酸、硝酸及び塩酸の少なくとも1つを含む混酸からなる液体、アンモニア水を含むアルカリ溶液からなる液体、界面活性剤を含む溶剤及び有機溶剤の少なくとも1つを含む液体、及び少なくとも2種類の前記液体を組み合わせた液体からなる。
【0010】
好適には、前記第2の薬液は、純水、炭酸水、水素水及びオゾン水の少なくとも1つを含む機能水からなる液体、フッ化水素酸、硝酸及び塩酸の少なくとも1つを含む混酸からなる液体、アンモニア水を含むアルカリ溶液からなる液体、界面活性剤を含む溶剤及び有機溶剤の少なくとも1つを含む液体、及び少なくとも2種類の前記液体を組み合わせた液体からなる。
【0011】
好適には、前記第1の薬液と前記第2の液体とは同一の液体からなる。
【0012】
好適には、前記第1の薬液と前記第2の薬液とは異なる液体からなる。
【0013】
好適には、二流体ジェットに用いるガスは、窒素、二酸化炭素及びアルゴンの少なくとも1つを含む不活性ガス、酸素、オゾン及び酸化窒素の少なくとも1つを含む酸化性ガス、エチレンを含む有機ガス、及び少なくとも2種類の前記ガスを組み合わせたガスからなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、基板表面に形成されたパターンの倒壊を抑制するとともに基板表面の汚染物質を確実に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に、本発明の実施の形態に係る基板洗浄装置10の一例を示す。基板洗浄装置10は、基板12を支持する支持具14、該支持具14を回転させる回転機構16、基板12に対して第1の薬液を供給する第1の薬液吐出ノズル18、基板12に対して第2の薬液とガスとを供給する二流体ジェット吐出ノズル20及び基板洗浄装置10を構成する各要素を制御するコントローラ22を有する。
【0016】
支持具14は、回転機構16の回転軸16aの先端部に固定され、基板12を支持している。基板12は、回転軸16a及び支持具14の回転に伴って所定の回転方向(例えば図1の矢印A方向)に回転するようになっている。
【0017】
薬液吐出ノズル18は、支持具14に支持された基板12上方の略中心部に配置され、先端の吐出口18aが基板12の表面に対向するように下向きに設けられている。この薬液吐出ノズル18は、第1のアーム24の先端部近傍で保持され、第1のアーム24は、第1のアーム保持部25に方持ち式に水平姿勢で保持されている。薬液吐出ノズル18には、第1の薬液供給ライン26が接続され、該第1の薬液供給ライン26には第1のバルブ28を介して第1の薬液供給源30が接続されている。
【0018】
第1の薬液供給源30には、第1の薬液が貯蔵されている。この第1の薬液は、基板12表面の微細な汚染物を懸濁又は溶解させるための液体であり、純水、炭酸水、水素水及びオゾン水の少なくとも1つを含む機能水からなる液体、フッ化水素酸、硝酸及び塩酸の少なくとも1つを含む混酸(2種以上の酸の混合物)からなる液体、アンモニア水を含むアルカリ溶液からなる液体、界面活性剤を含む溶剤及び有機溶剤の少なくとも1つを含む液体、及び少なくとも2種類の前記液体を組み合わせた液体からなる。
【0019】
薬液吐出ノズル18は、第1のバルブ28が開放されると、第1の薬液供給源30内に貯蔵された第1の薬液を第1の薬液供給ライン26及び吐出口18aを介して、基板12表面へ供給するようになっている。
【0020】
二流体ジェット吐出ノズル20は、支持具14に支持された基板12の上方に配置され、先端の吐出口20aが基板12の表面に対向するように下向きに設けられている。この二流体ジェット吐出ノズル20は、第2のアーム32の先端部近傍で保持され、第2のアーム32は、第2のアーム保持部33に方持ち式に水平姿勢で保持されている。第2のアーム32は、アーム移動機構(図示省略)により略水平方向に移動可能に設けられており、二流体ジェット吐出ノズル20を基板12の中心部と周辺部との間で往復移動(例えば図1の矢印B方向及びC方向へ移動)させることができる。
【0021】
二流体ジェット吐出ノズル20には、第2の薬液供給ライン34が接続され、該第2の薬液供給ライン34には第2のバルブ36を介して第2の薬液供給源38が接続されている。また、二流体ジェット吐出ノズル20には、ガス供給ライン40が接続され、該ガス供給ライン40には第3のバルブ42を介してガス供給源44が接続されている。
【0022】
第2の薬液供給源38には、第2の薬液が貯蔵されている。この第2の薬液は、基板12表面の汚染物質を剥離させるための液体であり、純水、炭酸水、水素水及びオゾン水の少なくとも1つを含む機能水からなる液体、フッ化水素酸、硝酸及び塩酸の少なくとも1つを含む混酸からなる液体、アンモニア水を含むアルカリ溶液からなる液体、界面活性剤を含む溶剤及び有機溶剤の少なくとも1つを含む液体、及び少なくとも2種類の前記液体を組み合わせた液体からなる。
【0023】
ガス供給源44には、後述する二流体ジェット洗浄に用いるガスが貯蔵されている。このガスは、窒素、二酸化炭素及びアルゴンの少なくとも1つを含む不活性ガス、酸素、オゾン及び酸化窒素の少なくとも1つを含む酸化性ガス、エチレンを含む有機ガス、及び少なくとも2種類の前記ガスを組み合わせたガスからなる。
【0024】
二流体ジェット吐出ノズル20は、第2のバルブ36及び第3のバルブ42が開放されると、第2の薬液供給ライン34を介して供給された第2の薬液をガス供給ライン40を介して供給されたガスに混合し、吐出口20aから第2の薬液をガスと共に吐出させ、基板12表面へ供給するようになっている。
【0025】
コントローラ22は、回転機構16、アーム移動機構(図示省略)、第1のバルブ28、第2のバルブ36及び第3のバルブ42に電気的に接続されており、支持具12に支持された基板12の回転数、二流体ジェット吐出ノズル20の位置、第1のバルブ28、第2のバルブ36及び第3のバルブ42の開度を制御する。
【0026】
次に、図1のような構成の基板洗浄装置10を用いて、半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として基板を洗浄する方法について説明する。
【0027】
コントローラ22は、回転機構16を駆動し、基板12を支持した支持具14を回転させ、第1のバルブ28を開放する。第1の薬液供給源30内の第1の薬液は、第1の薬液供給ライン26を介して第1の薬液吐出ノズル18の吐出口18aから吐出し、基板12に供給される。続いて、コントローラ22は、基板12表面が第1の薬液で満たされると、第1のバルブ28を閉塞する。基板12表面の微細な汚染物質は、第1の薬液中に懸濁又は溶解する。すなわち、微細な汚染物質は、基板12の表面から第1の薬液中に移動する。
【0028】
コントローラ22は、第2のバルブ36及び第3のバルブ42を開放する。第2の薬液供給源38内の第2の薬液は、第2の薬液供給ライン34を介して二流体ジェット吐出ノズル20に供給される。また、ガス供給源44の内ガスは、ガス供給ライン40を介して二流体ジェット吐出ノズル20に供給される。二流体ジェット吐出ノズル20は、第2の薬液とガスとを所定の割合で混合し、吐出口20aから第2の薬液をガスと共に吐出し、基板12に供給する。これにより一旦基板12の表面から第1の薬液中に移動した微細な汚染物質は、第1の薬液中に懸濁又は溶解した状態で系外へと排出される。
【0029】
このように、コントローラ22は、基板12を支持した支持具14を回転させながら、第1の薬液吐出ノズル18より基板12に対して第1の薬液を供給した後、二流体ジェット吐出ノズル20より基板12に対して第2の薬液とガスとを供給するように制御する。
【0030】
第2の薬液とガスとの2つの流体を混合させて吐出する二流体ジェット洗浄法を用いることにより、第2の薬液の液滴が加速された状態で基板12表面へ供給され、第1の薬液の供給により基板12の表面から第1の薬液中に移動した汚染物質が基板12から剥離し、第1の薬液と共に基板12の表面から除去される。このようにして、第1の薬液で満たした基板12表面に対して第2の薬液を用いて二流体ジェット洗浄法により基板12表面を洗浄する。
【0031】
なお、二流体ジェット吐出ノズル20としては、図2の(a)に示すように、二重管構造とすることが好ましい。すなわち、通常の二流体ジェット吐出ノズル200は、図2の(b)に示すように、ガスが供給されるガス供給管200bの周囲に第2の薬液が供給される薬液管200cが配置され、ガス供給管200bから供給されたガスを吐出口200aから吐出することにより、第1の薬液を除きながら薬液管200cから供給された第2の薬液を基板に吹き付けるようになっており、第1の薬液が基板上に残り、第2の薬液が基板に到達するのに偏りが生じるおそれがある。それに対し図2の(a)に示す二重管構造の二流体ジェット吐出ノズル20は、ガス1が供給される第1のガス供給管20b、この第1のガス供給管20bの周囲に設けられ、第2の薬液が供給される薬液管20c、及びこの薬液管20cの周囲に設けられ、ガス2が供給される第2のガス供給管20dを有する。このため、第2のガス供給管20dに供給されたガス2が吐出口20aから基板に吐出されることにより第1の薬液が除かれて空間が形成され、この空間に第1のガス供給管20bから供給されたガス1で第2の薬液を基板に吹き付けることになり、第2の薬液を偏りなく基板に到達させることができる。
【0032】
以上のように、本発明によれば、第1の薬液で満たした基板表面に対して第2の薬液を用いて二流体ジェット洗浄法により基板表面を洗浄するので、一度除去された汚染物質が再度基板へ付着することを防止することができ、基板の洗浄時間及び使用する薬液量を低減することができる。また、第1の薬液中に第2の薬液及びガスを吐出するので、基板表面に形成されたパターンに作用する物理的な力が軽減され、パターンの倒壊を抑制することができる。また、基板表面に形成されたパターンや汚染物質の種類等に応じて第1の薬液及び第2の薬液を使い分けることができるので、より確実に基板表面の汚染物質を除去することができる。
【0033】
なお、第1の薬液と第2の液体とは同一の液体でもよく、また、第1の薬液と前記第2の薬液とは異なる液体でもよい。
【0034】
本発明の基板洗浄装置は、基板の製造工程にも適用することができる。
SOI(Silicon On Insulator)ウエハの一種であるSIMOX(Separation by Implanted Oxygen)ウエハの製造工程の一工程に本発明の基板洗浄装置を適用する例について説明する。
【0035】
まずイオン注入装置等により単結晶シリコンウエハ内へ酸素イオンをイオン注入する。その後、酸素イオンが注入されたウエハを熱処理装置を用いて、例えばAr、O雰囲気のもと、1300℃〜1400℃、例えば1350℃以上の高温でアニールする。これらの処理により、ウエハ内部にSiO層が形成された(SiO層が埋め込まれた)SIMOXウエハが作製される。その後、本発明の基板洗浄装置を用いて、SIMOXウエハの表面の汚染物質を除去する。
【0036】
また、SIMOXウエハの他、水素アニールウエハやArアニールウエハの製造工程の一工程に本発明の基板洗浄装置を適用することも可能である。また、この他、エピタキシャルウエハの製造工程の一工程に本発明の基板洗浄装置を適用することも可能である。
【0037】
また、本発明の基板洗浄装置は、実施形態で説明したように、半導体装置(デバイス)の製造工程に適用することも可能である。例えば、ウェハに対するCVD、酸化、拡散、アニール処理等の基板処理工程の前または後に、本発明の基板洗浄装置を用いることも可能である。すなわち、半導体デバイスの製造工程の一工程としての洗浄工程を行う場合においても、本発明の基板洗浄装置を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、半導体ウエハやガラス基板等の基板表面を洗浄する基板洗浄方法、半導体装置の製造方法及び基板洗浄装置において基板表面の汚染物質を確実に除去する必要があるものに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態に係る基板洗浄装置全体を示す斜視図である。
【図2】(a)は本発明の実施形態に係る二流体ジェット吐出ノズルを示す断面図、(b)は比較例に係る二流体ジェット吐出ノズルを示す断面図である。
【0040】
10 基板洗浄装置
12 基板
14 支持具
16 回転機構
18 第1の薬液吐出ノズル
20 二流体ジェット吐出ノズル
22 コントローラ
30 第1の薬液供給源
38 第2の薬液供給源
44 ガス供給源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を回転させながら薬液を基板に供給して基板表面を洗浄する基板洗浄方法であって、
基板に第1の薬液を供給して基板表面を該第1の薬液で満たす工程と、
前記第1の薬液で満たした基板表面に対して第2の薬液を用いて二流体ジェット洗浄法により基板表面を洗浄する工程と、
を有することを特徴とする基板洗浄方法。
【請求項2】
基板を回転させながら薬液を基板に供給して基板表面を洗浄する洗浄工程を有する半導体装置の製造方法であって、
前記洗浄工程は、
基板に第1の薬液を供給して基板表面を第1の薬液で満たす工程と、
前記第1の薬液で満たした基板表面に対して第2の薬液を用いて二流体ジェット洗浄法により基板表面を洗浄する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
基板を支持する支持具と、
前記支持具を回転させる回転機構と、
基板に対して第1の薬液を供給する第1の薬液吐出ノズルと、
基板に対して第2の薬液とガスとを供給する二流体ジェット吐出ノズルと、
基板を支持した支持具を回転させつつ、前記第1の薬液吐出ノズルより基板に対して前記第1の薬液を供給した後、前記二流体ジェット吐出ノズルより基板に対して第2の薬液とガスとを供給するように制御するコントローラと、
を有することを特徴とする基板洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−226900(P2008−226900A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−58781(P2007−58781)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】