説明

基準周波数発生装置

【課題】比較器が出力する追従誤差に応じて適切な制御を行い、外乱の影響によっても基準周波数信号の精度が低下しない構成の基準周波数発生装置を提供する。
【解決手段】基準周波数発生装置は、電圧制御発振器と、位相比較器と、制御器と、ファジィ補償器と、を備える。電圧制御発振器は、基準周波数信号を出力する。位相比較器は、基準周波数信号を分周した信号と、リファレンス信号と、を比較して位相差を算出する。制御器は、位相差を考慮して制御電圧信号を電圧制御発振器に出力する。ファジィ補償器は、位相差が急激な変動をしているか否かを、ファジィ理論を用いて判定する。そして、ファジィ補償器は、位相差が急激な変動をしていると判定した場合は、当該位相差が基準周波数信号に影響を及ぼさないように補償値を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基準周波数信号がリファレンス信号に同期するように発振器を制御する基準周波数発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば携帯電話の基地局やデジタル放送の送信局等では、信号を送信するタイミングや周波数の同期を行うために必要とされる高精度な基準周波数信号を、基準周波数発生装置を用いて供給することが行われている。
【0003】
この種の基準周波数発生装置では、基準周波数信号を高精度に保つために、位相同期回路(Phase Locked Loop、PLL回路)等の同期回路が用いられている。この位相同期回路では、基準周波数信号を分周した比較用信号と、GPS受信機等から得られる高確度なリファレンス信号との位相差を算出しており、その位相差に基づいて発振器を制御することで高精度な基準周波数信号を発生させている。この種の基準周波数発生装置を開示したものとして例えば特許文献1がある。
【0004】
特許文献1の基準周波数発生装置は、ループフィルタ(制御器)を用いて電圧制御発振器の出力する基準周波数信号を設定する構成になっている。ループフィルタは、リファレンス信号と、基準周波数信号を分周した信号(比較用信号)と、の追従誤差(位相差)に基づいて操作量を決定している。この操作量で電圧制御発振器を制御することにより、電圧制御発振器の基準周波数信号を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−17408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、GPS衛星が送信した信号が建物及び地形等の障害物によって反射し、GPS受信機が複数の経路から同じ信号を受信してしまう現象(マルチパス)が生じることがある。また、各種の妨害電波等により、GPS受信機から得られる高精度なリファレンス信号に加え、想定外の信号がリファレンス信号として入力されてしまうことがある。また、水晶振動子を共振器として用いた電圧制御発振器は、周波数ジャンプを起こすことがある。
【0007】
想定外のリファレンス信号が入力されたり、周波数ジャンプが発生したりすると、比較器が算出する追従誤差は大きな値をとる。そして、この追従誤差を小さくするような制御が電圧制御発振器に対して行われると、オーバーシュート及びハンチングが発生し、基準周波数信号の周波数が一定値を維持せずに変動を起こすことがある。このような想定外の追従誤差が発生した場合は、当該追従誤差を可能な限り考慮せずに電圧制御発振器を制御することが望ましい。このような制御は、ループフィルタのバンド幅を狭めることで達成される。
【0008】
一方、電圧制御発振器は、入力される電圧に応じて異なる周波数を発生するように構成されている。そして、電圧制御発振器に入力される電圧と電圧制御発振器が出力する周波数との対応関係を示す周波数特性は、時間の経過や温度の変化に従って変化する。なお、以下の説明では、温度の変化に従って変化した周波数特性を温度特性と称することがある。
【0009】
従って、温度変化等が生じると、同じ電圧を電圧制御発振器に入力している場合であっても、基準周波数信号の周波数が目標値からズレた値になってしまう。しかし、比較器が算出する追従誤差が小さくなるように電圧制御発振器を制御することで、基準周波数信号の周波数を目標値に固定することができる。つまり、温度特性によって追従誤差が発生した場合は、当該追従誤差を素早く小さくするように電圧制御発振器を制御することが望ましい。このような制御は、ループフィルタのバンド幅を広げることで達成される。
【0010】
以上から、ループフィルタのバンド幅を狭めると、想定外の追従誤差の影響を軽減できるが、温度特性に対する追従性が低下する。一方、ループフィルタのバンド幅を広げると、温度特性に素早く追従できるが、想定外の追従誤差の影響が増大してしまう。従って、追従誤差に対して適切な制御を行うことは難しく、この点において改善の余地が残されていた。
【0011】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、比較器が出力する追従誤差に応じて適切な制御を行い、外乱の影響によっても基準周波数信号の精度が低下しない構成の基準周波数発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0012】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0013】
本発明の観点によれば、以下の構成の基準周波数発生装置が提供される。即ち、この基準周波数発生装置は、発振器と、比較器と、制御器と、補償器と、を備える。前記発振器は、基準周波数信号を出力する。前記比較器は、基準周波数信号に基づいて得られる比較用信号と、リファレンス信号と、を比較して信号同士のズレを示す追従誤差を算出し、追従誤差信号として出力する。前記制御器は、追従誤差を考慮して、前記発振器に基準周波数信号を発生させるための制御信号を当該発振器に出力する。前記補償器は、追従誤差の示す挙動に基づいて補償値を決定して、制御信号を補うための補償信号を出力する。前記補償器は、追従誤差が急激な変動をしているか否かをファジィ理論を用いて判定する。そして、前記補償器は、追従誤差が急激な変動をしていると判定した場合は、当該追従誤差が基準周波数信号に影響を及ぼさないように補償値を決定する。
【0014】
即ち、追従誤差には、発振器の温度特性の影響により発生した追従すべきものと、妨害波の受信、マルチパス、及び周波数ジャンプ等により発生した追従すべきでないものと、が存在する。この点、上記の構成によれば、追従すべきでない追従誤差が示す特有の挙動(急激な変動)に着目し、ファジィ理論を用いて判定しているため、発生した追従誤差に追従させるべきか否かについて妥当な判定結果を得ることができる。そのため、例えばバンド幅を狭めた制御器に本発明の補償器を備えることで、発振器の温度特性に追従させつつ、妨害波の受信及びマルチパス等の影響を軽減させることができる。
【0015】
前記の基準周波数発生装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記補償器は、追従誤差が急激な変動をしているか否かを、追従誤差の時間変化率である追従誤差勾配に対してパターンマッチングを行うことで判定する。
【0016】
これにより、追従すべきでない追従誤差が示す特有の挙動をパターンマッチングによって、より的確に捉えることができるので、発生した追従誤差に追従させるべきか否かについて精度の良い判定を行うことができる。従って、妨害波の受信、マルチパス、及び周波数ジャンプ等の影響を一層軽減させることができる。
【0017】
前記の基準周波数発生装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記補償器は、追従誤差勾配が0に近づくにつれてグレードが小さくなるメンバシップ関数で定義されたファジィ集合を設定している。そして、前記ファジィ集合のグレードが第1範囲にあって、かつ直近の状態において前記ファジィ集合のグレードが第1範囲又は第2範囲にあるときに、補償器は、追従誤差が急激な変動をしていると判定する。ただし、第2範囲は、第1範囲より小さいグレードで構成された範囲である。
【0018】
即ち、急激な変動をしている追従誤差を小さくするように発振器が制御されるとオーバーシュートが発生し、追従誤差及び追従誤差勾配が0の前後を振動することがある(ハンチング)。この点、上記の構成においては、ハンチングが起こったときに追従誤差勾配が示す挙動の特徴を捕捉するように制御をおこなっているため、発生した追従誤差に追従させるべきか否かについて精度の良い判定を行うことができる。
【0019】
前記の基準周波数発生装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、追従誤差が急激な変動をしていると判定された状態から、追従誤差が急激な変動をしていないと判定された状態に遷移した場合において、前記補償器は、状態が遷移してから所定の時間は、追従誤差が基準周波数信号に影響を及ぼさないように補償値を決定する。
【0020】
即ち、追従誤差勾配が示す挙動のみから判定を行った場合は、追従誤差がハンチングの山部分と谷部分にあるとき等に、追従誤差勾配が小さい値を連続してとることがあり、判定を誤ってしまうことがある。この点、上記の構成においては、判定の誤りが予想される時間においても、追従誤差が基準周波数信号に影響を及ぼさないように補償値を決定しているため、判定の誤りによって基準周波数信号の精度が低下することを効果的に防止することができる。
【0021】
前記の基準周波数発生装置において、前記補償器は、追従誤差が急激な変動をしていないと判定した場合は、当該追従誤差が小さくなるように補償値を決定することが好ましい。
【0022】
これにより、追従すべき追従誤差(例えば、発振器の温度特性によって生じる追従誤差)については、適切に追従を行うように補償値を決定することができる。そのため、温度変化による周波数ドリフトによって基準周波数信号の周波数が変化することを防止できる。
【0023】
前記の基準周波数発生装置において、前記補償器は、追従誤差及び追従誤差勾配をファジィ化して所定のファジィルールを適用することで補償値を決定することが好ましい。
【0024】
これにより、追従すべき追従誤差の大きさ等に応じて妥当な補償値を設定することにより、当該追従誤差に効果的に対応することができる。そのため、基準周波数信号の精度が低下した場合においても、良好な精度に戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る基準周波数発生装置を概略的に示すブロック図。
【図2】ファジィ補償器が行う処理を示すフローチャート。
【図3】位相差及び位相差勾配のデータの例を示すグラフ。
【図4】位相差勾配のファジィ化について説明するグラフ。
【図5】追従すべきでない位相差の発生により、位相差勾配に対するファジィ集合のグレードが変動する例を示すグラフ。
【図6】位相差のファジィ化について説明するグラフ。
【図7】補償値の候補を決定するためのファジィルールを説明する表。
【図8】補償値の候補のグレードを決定するためのmin−max演算を説明する表。
【図9】min−max演算の結果から補償値を決定する方法を説明する説明図。
【図10】温度変動に起因する電圧制御発振器の周波数ドリフトによって生じる1PPS出力タイミングの定常誤差が抑制されることを示すグラフ。
【図11】ファジィ補償器によってリファレンス信号の受信不良発生時における10MHz信号の変動が抑えられていることを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に発明の実施の形態について説明する。初めに、図1を参照して、基準周波数発生装置10の全体構成について説明する。図1は、本実施形態の基準周波数発生装置10を概略的に示したブロック図である。
【0027】
本実施形態の基準周波数発生装置10は、携帯電話の基地局、地上デジタル放送の送信局及びWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)通信設備等に用いられるものであり、接続されるユーザ側の機器に基準周波数信号及びそれにコヒーレントなタイミングパルス(1PPS)信号を提供するものである。以下に、基準周波数発生装置10の各部の構成について説明していく。
【0028】
図1に示すように、本実施形態の基準周波数発生装置10は、電圧制御発振器(発振器)15と、分周器16と、位相比較器(比較器)12と、制御器13と、ファジィ補償器(補償器)14と、を備える。
【0029】
基準周波数発生装置10には、GPS受信機20とGPSアンテナ21からなるGPS受信部が接続されており、このGPS受信部は基準周波数発生装置10にリファレンス信号を供給する。より具体的には、GPS受信機20は、GPSアンテナ21がGPS衛星から受信した電波に含まれる測位用信号に基づいて、前記リファレンス信号としての1PPS信号(1秒周期信号)を生成し、基準周波数発生装置10に出力するよう構成されている。図1に示すように、GPS受信機20で生成されて基準周波数発生装置10に供給されたリファレンス信号は、位相比較器12に入力される。
【0030】
電圧制御発振器15は、外部から印加される電圧のレベルによって出力する周波数を変更可能に構成されている。この電圧制御発振器15としては、例えば水晶振動子を共振器として使用したTCXO(Temperature Compensated Crystal Oscillator、温度補償型水晶発振器)を用いることができる。この電圧制御発振器15によって出力された基準周波数信号は、外部のユーザ側のシステムへ出力されるとともに、分周器16に入力される。
【0031】
分周器16は、電圧制御発振器15から入力される基準周波数信号を分周して高い周波数から低い周波数に変換し、得られた比較用信号を位相比較器12へ出力するように構成されている。なお、この位相比較用信号は、タイミングパルス信号として外部に対しても出力されている。例えば、電圧制御発振器15が出力する基準周波数が10MHzである場合、分周器16は、電圧制御発振器15が出力する10MHzの信号を分周比1/10000000で分周して、リファレンス信号の周波数と等しい1Hzの位相比較用信号を生成する。
【0032】
位相比較器12は、リファレンス信号と、分周器16で分周された前記比較用信号と、の位相差を追従誤差として算出し、その位相差に基づく位相差信号(追従誤差信号)を出力する。位相比較器12が出力した位相差信号は、制御器13及びファジィ補償器14に入力される。
【0033】
制御器13はI−P制御器等によって構成されており、前記位相差信号の電圧レベルに基づいて制御電圧信号を生成する。この制御電圧信号は、電圧制御発振器15へ出力される。また、この制御器13はバンド幅が比較的狭い構成となっており、発生した位相差に緩やかに追従させるように電圧制御発振器15を制御している。
【0034】
ファジィ補償器14は、制御器13と並列に配置されている。このファジィ補償器14には、制御器13と同様に位相差信号が入力されており、この位相差の挙動に応じて適切な補償値を決定している。そして、この補償値に基づいた補償信号を電圧制御発振器15へ出力することで、制御器13の出力する制御電圧信号を補っている。
【0035】
電圧制御発振器15は、制御器13から出力された制御電圧信号とファジィ補償器14から出力された補償信号とに基づいて基準周波数信号を出力する。
【0036】
なお、本実施形態において補償値とは、電圧制御発振器15の出力する周波数をどれだけ変化させるかを示す値である。具体的には、補償値を0にすると、制御器13のバンド幅をそのまま(比較的狭いまま)用いることができる。そして、補償値を変化させることで、制御器13のバンド幅を広げたのと同等の効果が得られるようになっている。なお、このファジィ補償器14がどのように補償値を決定するかの詳細については後述する。
【0037】
以上のようにして、位相同期回路(Phase Locked Loop、PLL回路)30のループが形成される。そして、GPS受信機20が高確度なリファレンス信号を生成して基準周波数発生装置10に供給し、当該リファレンス信号に対してPLLがロックしていると、経時変化や周囲の温度変化等に起因して修正すべき位相差が生じたとしても、素早く追従し、良好な精度の基準周波数信号を出力し続けることができる。
【0038】
以下、図2を参照して、ファジィ補償器14が行う処理について説明する。図2は、ファジィ補償器14が行う処理を示すフローチャートである。
【0039】
ファジィ補償器14は、位相差が急激な変動をしているか否かを、ファジィ理論を用いて判定して、その判定結果に応じて補償値の算出方法を切り替えている。
【0040】
まず、位相差が生じる原因、位相差が示す挙動、及び当該位相差に対して行うことが好ましい制御について説明する。マルチパス及び妨害電波等が発生したり、電圧制御発振器15に周波数ジャンプが生じたりして発生した位相差は、急激な変動を示す。この位相差は想定外の位相差であるため、このような位相差に対しては、位相差を0に近づけるような制御を行わないことが好ましい。
【0041】
一方、温度特性の影響によって生じた位相差は、緩やかな変動を示す。このような位相差に対しては、位相差を0に近づけるような制御を行うことが好ましい。位相差を0に近づけることで、温度特性の影響によって生じた基準周波数信号の周波数のズレを修正することができるからである。つまり、追従すべきでない位相差は急激な変動を示し、追従すべき位相差は緩やかな変動を示す。
【0042】
次に、位相差が急激な変動をしているか否かを判定する方法を詳細に説明する。本実施形態では、位相差の時間変化率(以下では位相差勾配と称する)をファジィ化してパターンマッチングを行う方法を用いている。
【0043】
初めに、図3及び図4を参照して、位相差勾配のファジィ化について説明する。図3は、位相差及び位相差勾配のデータの例を示すグラフである。図4は、位相差勾配のファジィ化について説明するグラフである。
【0044】
前述のように、ファジィ補償器14には位相比較器12から位相差信号が入力されている。ファジィ補償器14は、この位相差信号に基づいて位相差を取得し、当該位相差を時間で微分することで位相差勾配を取得している(S101)。なお、このようにして取得される位相差及び位相差勾配のデータの例を図3に示している。
【0045】
そして、ファジィ補償器14は、取得した位相差勾配をファジィ化している(S102)。具体的には、ファジィ補償器14は位相差勾配に対してN,ZE,Pの3つのファジィ集合を設定してファジィ化を行っている。ここで、Nはnegative(負),Pはpositive(正),ZEはzero(0)を示している。つまり、本実施形態におけるファジィ化では位相差勾配を、当該位相差勾配の大きさを基準として、NからPの3段階に分けている。
【0046】
そして、この3つのファジィ集合は、図4に示すようなメンバシップ関数によって定義されている。ここで、図4において、縦軸は各ファジィ集合に属する度合い(グレード)を示しており、横軸は位相差勾配を示している。つまり、図4は、ある位相差勾配が、どのファジィ集合にどの程度属しているのかを示している。
【0047】
このメンバシップ関数に基づいて各ファジィ集合のグレードを求める方法を具体的に説明する。以下では、経過時間がt1及びt2であるときの各ファジィ集合のグレードを求める方法を説明する。t1における位相差勾配は、図3に示すように、−βより少し小さい値である。このとき、図4で示すNのメンバシップ関数(左側の点線のグラフ)からNのグレードは1である。同様に、他の2つのファジィ集合のグレードは0である。また、t2における位相差勾配は、0と−βとの間であってやや0に近い値である。このときは、Nのグレードは0.4であり、ZEのグレードは0.6である。なお、Pのグレードは0である。
【0048】
次に、ファジィ補償器14は、ファジィ化した位相差勾配が示す挙動に基づいて、生じた位相差が急激な変動をしているか否かを、パターンマッチングを行うことで判定している(S103)。
【0049】
このパターンマッチングについて、図5を参照して説明する。図5は、追従すべきでない位相差の発生により位相差勾配に対するファジィ集合のグレードが変動する例を示すグラフである。
【0050】
追従すべきでない位相差は、追従すべき位相差よりも変動が大きいため、位相差を0に近づけるように電圧制御発振器15を制御すると、図5に示すように、オーバーシュート及びハンチングが発生する。なお、図5(a)は、追従すべきでない位相差及び位相差勾配の例を示しており、図5(b)は、図5(a)のように位相差勾配が推移したときのファジィ集合のグレードを示している。
【0051】
本実施形態では、上記で示した特有の挙動(振動)に対してパターンマッチングを行う構成になっている。本実施形態のファジィ補償器14は、以下の3つの条件のうち何れか1つを満たしたときに、位相差が急激な変動をしていると判定するようになっている。3つの条件を順に説明すると、条件(1)は、Pのグレードが1であって、直近のPのグレードが1又は0であることである。条件(2)は、Nのグレードが1であって、直近のNのグレードが1又は0であることである。条件(3)は、上記の何れかの条件が満たされなくなった後の所定時間内であることである。なお、ファジィ補償器14は、上記の3つの条件のうち何れも満たさないときは、位相差が急激な変動をしていないと判定するようになっている。
【0052】
条件(1)及び条件(2)によって、位相差勾配の絶対値が高い値を推移しているとき(直近のグレードが1のとき)と、位相差勾配が大幅に上昇したとき(直近のグレードが0のとき)を検出している。なお、このような位相差勾配の挙動は、温度特性に起因した位相差勾配には見られないものである。
【0053】
そして、条件(1)及び条件(2)のみでは、図5において経過時間が27秒〜30秒のとき等のように、位相差勾配が示す挙動を全て検出できる訳ではない。これは、位相差勾配が正から負に推移するときに0近傍の値を連続してとってしまうからである。ファジィ補償器14は、この箇所を条件(3)によって検出している。なお、図5(b)において、ZEはパターンマッチングに用いていないため、グラフの表示を省略している。
【0054】
ファジィ補償器14はこのパターンマッチングの結果、位相差が急激な変動をしていると判定したときに補償値を0と決定している(S104)。前述のように、補償値を0にすると、バンド幅が比較的狭い構成で電圧制御発振器15を制御できるため、基準周波数信号が想定外のリファレンス信号等に極力影響されないようにできる。なお、図5に示す例において、位相差が急激な変動をしていると判定されている経過時間(補償値が0と決定されている経過時間)を太線で示している。
【0055】
次に、図6から図9までを参照して、位相差が急激な変動をしていないと判定した場合の補正値の決定方法について説明する。図6は、位相差のファジィ化について説明するグラフである。図7は、補償値の候補を決定するためのファジィルールを説明する表である。図8は、補償値を決定するためのmin−max演算を説明する表である。図9は、min−max演算の結果に基づいて補償値を決定する方法について説明する説明図である。
【0056】
位相差が急激な変動をしていないと判定したときは、ファジィ補償器14は、位相差に対してファジィ化を行っている(S105)。
【0057】
初めに、位相差のファジィ化について、図6を参照して説明する。本実施形態では、位相差に対してNB,NS,ZE,PS,PBの5つのファジィ集合を設定してファジィ化を行っている。ここで、N,ZE,Pが示す意味は位相差勾配をファジィ化したときに用いた意味と同じである。そして、Bはbig(大)、Sはsmall(小)を示している。つまり、位相差勾配と同様に位相差に関しても、当該位相差の大きさを基準としてファジィ化を行っている。
【0058】
この5つのファジィ集合は、図6で示すメンバシップ関数によって定義されている。以下では、経過時間がt1及びt2であるときの各ファジィ集合のグレードを求める方法を説明する。t1における位相差は0である。このとき、図6で示すZEのメンバシップ関数(中央の太線のグラフ)から、ZEのグレードは1であり、他の4つのファジィ集合のグレードは0である。同様に、t2における位相差は、−α2と−α3との間であって−α3に近い値である。このとき、NBのグレードは0.8であり、NSのグレードは0.2である。他の3つのファジィ集合のグレードは0である。なお、図6において、経過時間がt1及びt2であるときの各ファジィ集合のグレードを記載しているが、グレードが0のファジィ集合(例えば、t1におけるZE以外のファジィ集合)についてはファジィ集合の記載を省略している。
【0059】
ファジィ補償器14は、次に、位相差及び位相差勾配が属するファジィ集合に基づいて補償値の候補を選定している(S106)。図7に示すように、ファジィ補償器14には、位相差が属するファジィ集合と、位相差勾配が属するファジィ集合と、から補償値の候補を定めるための表が予め設定されている。具体的には、位相差が属するファジィ集合がNBであって位相差勾配が属するファジィ集合がNであるときに、補償値の候補はNBであるといったファジィルールが全ての組み合わせに対して設定されている。なお、図7において、Mはmedium(中)を示している。その他の文字が示す意味は、位相差及び位相差勾配をファジィ化したときに用いた意味と同じである。この補償値の候補は、位相差及び位相差勾配が大きいほど、大きな値を示すようになっている。
【0060】
そして、グレードが0より大きいファジィ集合の組み合わせが示す値を、補償値の候補とするように構成されている。例えば、経過時間がt2のときは、位相差に対するファジィ集合のうち、NB,NSのグレードが0より大きく(図6を参照)、位相差勾配に対するファジィ集合のうち、N,ZEのグレードが0より大きい(図4を参照)。そのため、補償値の候補としては、NB,NM,NSが選定される。
【0061】
ファジィ補償器14は、次に、補償値の候補のグレードを算出している(S107)。本実施形態では、このグレードを算出する方法としてmin−max演算が用いられている。つまり、以下の手順で補償値の候補のグレードを求めている。即ち、位相差と位相差勾配から補償値の候補のグレードを求める際には、位相差及び位相差勾配のグレードのうち最小値を用いる。そして、補償値の候補のグレードが複数存在する場合には、該当する複数のグレードのうち最大値を用いる。
【0062】
t2における補償値の候補のグレードを具体的に求める方法について説明する。図8に示す各ファジィ集合の横のカッコ内は、t2における当該ファジィ集合のグレードを示している。そして、NB(位相差が属するファジィ集合)のグレードが0.8であって、N(位相差勾配が属するファジィ集合)のグレードが0.4であるときは、小さい方の値である0.4が補償値の候補のグレードとなる。同様の手法によって得られる補償値の候補のグレードは、図8におけるカッコ内に示している。
【0063】
そして、補償値の候補のファジィ集合について2つ以上のグレードが得られた場合は、大きい方のグレードを当該ファジィ集合のグレードとする(max演算)。例えば、図8に示すように、NMには0.2と0.6の2つのグレードが算出されるが、この場合、補償値の候補のグレードとしては、大きいほうの0.6を採用する。
【0064】
ファジィ補償器14は、次に、このようにして求められた補償値の候補のグレードの重心を求めることで、補償値を決定している(S108)。t2における補償値の候補のグレードから具体的に重心を求めると、以下の式(1)となる。
【数1】

【0065】
式(1)を計算して得られた値が補償値として出力される。図9に示すように、本実施形態における補償値は、−γ3と−γ2との間であって−γ2寄りの値となる。
【0066】
このように、位相差が急激な変動をしていないと判定したときは、位相差及び位相差勾配の値に応じた適切な補償値が出力されるようになっている。これにより、追従すべき位相差に対して素早く追従させることができる。
【0067】
以上のようにして補償値が決定されると、補償値に基づいて補償信号が生成され、電圧制御発振器15に出力される(S109)。
【0068】
次に、図10及び図11を参照して、上記で説明したファジィ補償器14を用いたときの効果について説明する。図10は、ファジィ補償器14によって、温度変動に起因する電圧制御発振器15の周波数ドリフトによって生じる1PPS出力タイミングの定常誤差が抑制されることを示すグラフである。図11は、ファジィ補償器14によってリファレンス信号の受信不良発生時における10MHz信号の変動が抑えられていることを示すグラフである。
【0069】
本実施形態の構成においては、位相差の挙動に基づいて、修正すべき位相差と修正すべきでない位相差とを推定可能であるが、従来の構成ではこのような推定ができないため、バンド幅を固定値として制御器に設定していた。そのため、バンド幅を広くすると修正すべき位相差を素早く修正できるが、修正すべきでない位相差に対しても素早く修正を行ってしまう。バンド幅を狭くすると、修正すべきでない位相差にはそれほど影響されないが、修正すべき位相差を修正するために時間が掛かっていた。
【0070】
以下では、バンド幅を狭めた設定の制御器を備えた形態(従来例1)及びバンド幅を広げた設定の制御器を備えた形態(従来例2)を本実施形態と比較した例を示す。
【0071】
初めに、修正すべき位相差が入力された場合において、従来例1と本実施形態との比較を行った。具体的には、周囲温度の変化等によって生じる周波数ドリフト(図10(a)に示している)を発生させたときの、1PPSタイミング信号の定常偏差(目標値に対して遅れているか進んでいるか)を計測した。この結果を図10(b)に示している。図10(b)において縦軸は偏差であり、中央の0の値が目標値を表している。そして、目標値から遅れた値を上側に、目標値から進んだ値を下側に示している。図10(b)から明らかなように、従来例1に比べて本実施形態は、偏差が小さくなっている。なお、従来例2が示す結果は、本実施形態とほぼ同じ値を取っていた。
【0072】
次に、修正すべきでない位相差が入力された場合において、従来例2と本実施形態との比較を行った。具体的には、リファレンス信号の受信不良等に起因したパルス状の信号(図11(a)に示している)を入力し、10MHzの周波数の変動(10MHzより周波数がどれだけ高いか又は低いか)を計測した。この結果を図11(b)に示している。図11(b)において縦軸は周波数の変動を示しており、中央の0の値が10MHzを表している。そして、10MHzよりも高い周波数を上側に、10MHzよりも低い周波数を下側に示している。図11(b)から明らかなように、従来例2に比べて本実施形態は、周波数の変動が小さくなっている。特に、オーバーシュートが素早く減衰している。なお、従来例1が示す結果は、本実施形態とほぼ同じ値を取っていた。
【0073】
このように、本実施形態のファジィ補償器14によって、修正すべき位相差に対しては、バンド幅を広くした制御器と同等に、素早く位相差を0に近づけるように電圧制御発振器15を制御することができる。一方、修正すべきでない位相差に対しては、バンド幅を狭めた制御器と同等に、位相差をあまり考慮しないように電圧制御発振器15を制御することができる。
【0074】
以上に説明したように、基準周波数発生装置10は、電圧制御発振器15と、位相比較器12と、制御器13と、ファジィ補償器14と、を備える。電圧制御発振器15は、基準周波数信号を出力する。位相比較器12は、基準周波数信号に基づいて得られる比較用信号と、リファレンス信号と、を比較して信号同士のズレを示す位相差を算出し、位相差信号として出力する。制御器13は、位相差を考慮して、電圧制御発振器15に基準周波数信号を発生させるための制御電圧信号を当該電圧制御発振器15に出力する。ファジィ補償器14は、位相差の示す挙動に基づいて補償値を決定して、制御電圧信号を補うための補償信号を出力する。そして、ファジィ補償器14は、位相差が急激な変動をしているか否かをファジィ理論を用いて判定する。そして、ファジィ補償器14は、位相差が急激な変動をしていると判定した場合は、当該位相差が基準周波数信号に影響を及ぼさないように補償値を0と決定する。
【0075】
即ち、位相差には、発振器の温度特性により発生した追従すべきものと、妨害波の受信、マルチパス、及び電圧制御発振器15の周波数ジャンプ等により発生した追従すべきでないものと、が存在する。この点、上記の構成によれば、追従すべきでない追従誤差が示す特有の挙動(急激な変動)に着目し、ファジィ理論を用いて判定しているため、発生した位相差に追従すべきか否かについて妥当な判定結果を得ることができる。そのため、追従すべき位相差には、適切な補償値を設定して、制御器13のバンド幅を広げるのと同等の構成ができる。一方、追従すべきでない位相差には、補償値を0にして、制御器13のバンド幅を狭いまま用いることができる。
【0076】
また、本実施形態の基準周波数発生装置10において、ファジィ補償器14は、位相差が急激な変動をしているか否かを、位相差の時間変化率である位相差勾配に対してパターンマッチングを行うことで判定している。
【0077】
これにより、追従すべきでない位相差が示す特有の挙動をパターンマッチングによって、より的確に捉えることができるので、位相差が急激な変動をしているか否かについて精度の良い判定を行うことができる。従って、妨害波の受信及びマルチパス等の影響を一層軽減させることができる。
【0078】
また、本実施形態の基準周波数発生装置10において、ファジィ補償器14は、位相差勾配が0に近づくにつれてグレードが小さくなるメンバシップ関数で定義されたファジィ集合(N及びP)を設定している。そして、ファジィ集合のグレードが1であって、かつ直近の状態においてファジィ集合のグレードが1又は0であるときに、ファジィ補償器14は、位相差が急激な変動をしていると判定している。
【0079】
即ち、急激な変動をしている位相差を少なくするように電圧制御発振器15に対して制御が行われるとオーバーシュートが発生し、位相差及び位相差勾配が0の前後を振動することがある(ハンチング)。この点、上記の構成においては、ハンチングが起こったときに位相差勾配が示す挙動の特徴を、条件(1)及び条件(2)によって捉えることにより判定を行っているため、位相差が急激な変動をしているか否かについて精度の良い判定を行うことができる。
【0080】
また、本実施形態の基準周波数発生装置10においては、条件(1)及び条件(2)に基づいて、位相差が急激な変動をしていると判定された状態から、位相差が急激な変動をしていないと判定された状態に遷移した場合において、ファジィ補償器14は、状態が遷移してから所定の時間は、位相差が急激な変動をしていると判定する(条件(3))。
【0081】
即ち、位相差勾配が示す挙動のみから判定を行った場合は、位相差がハンチングの山部分と谷部分にあるとき等に、位相差勾配が0を連続してとることがあり、判定を誤ってしまうことがある。この点、上記の構成においては、判定の誤りが予想される時間においても、条件(3)を設定することで、位相差が基準周波数信号に影響を及ぼさないように補償値を決定しているため、判定の誤りによって基準周波数信号の精度が低下することを効果的に防止することができる。
【0082】
また、本実施形態の基準周波数発生装置10において、ファジィ補償器14は、位相差が急激な変動をしていないと判定した場合は、当該位相差が小さくなるように補償値を決定している。
【0083】
これにより、修正することが好ましい位相差(例えば、電圧制御発振器15の温度特性によって生じる位相差)については、適切に修正を行うように補償値を決定することができる。そのため、温度変化による周波数ドリフトによって基準周波数信号の周波数が変化することを防止できる。
【0084】
また、本実施形態の基準周波数発生装置10において、位相差及び位相差勾配をファジィ化してファジィルールを適用することで補償値を決定している。
【0085】
これにより、修正すべき位相差の大きさに応じて妥当な補償値を設定することにより、外乱が出力信号に及ぼす影響を抑制することができる。そのため、電圧制御発振器15の温度特性により基準周波数信号の精度が低下した場合においても、良好な精度に素早く戻すことができる。
【0086】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0087】
上記実施形態では、GPS衛星からの信号に基づいてリファレンス信号を生成する構成であるが、GPS以外のGNSS(Global Navigation Satellite System)を利用する場合においても、上記実施形態の構成を適用することができる。GPS以外のGNSSとしては、例えばGLONASSやGALILEO等を挙げることができる。また、外部装置が生成したリファレンス信号を取得する構成としても良い。
【0088】
基準周波数発生装置10の内部にGPS受信機20を配置し、自機の内部で1PPS信号(リファレンス信号)を生成する構成に変更することができる。
【0089】
本実施形態のファジィ補償器14は、位相差及び位相差勾配を上記のようにファジィ化しているが、これらのファジィ集合を定義するメンバシップ関数は任意の関数を用いることができる。また、例えば位相差については4つのファジィ集合を用いるといったように、任意の個数のファジィ集合を設定することができる。
【0090】
パターンマッチングを行うときに用いた条件は、本実施形態で示した例に限定されず、様々な条件を設定することができる。
【0091】
上記実施形態では、追従誤差として位相比較器12が算出した位相差を用いているが、挙動に基づいて追従すべき追従誤差と追従すべきでない追従誤差とを判定可能であれば、他の値を追従誤差として用いることができる。
【0092】
上記実施形態では、電圧制御発振器15として、温度補償型の水晶発振器であるTCXOを用いる例を示したが、TCXOの他にも、電圧制御発振器15としてOCXO(Oven Controlled Crystal Oscillator、恒温槽付水晶発振器)等の水晶発振器を用いることができる。また、電圧制御発振器15は、水晶発振器に限られず、例えばルビジウム発振器等を用いることができる。
【0093】
電圧制御発振器15の周波数は10MHzとすることに限らず、ユーザが要求する信号周波数に応じて別の周波数のものを使用しても良い。
【0094】
制御器13は、電圧制御発振器15に出力する制御電圧信号を適切に制御できる限り、P制御、I制御及びD制御のうち少なくとも1つを実行可能な制御器に代えることができる。
【0095】
PLL回路30は、供給されるリファレンス信号に同期して電圧制御発振器15を制御する構成である限り、他の同期回路(DLL回路等)を使用することもできる。
【0096】
電圧制御発振器15の部分に別の同期回路を配置し、異なる周波数を生成して出力する構成に変更することができる。
【符号の説明】
【0097】
10 基準周波数発生装置
12 位相比較器(比較器)
13 制御器
14 ファジィ補償器(補償器)
15 電圧制御発振器(発振器)
30 PLL回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準周波数信号を出力する発振器と、
基準周波数信号に基づいて得られる比較用信号と、リファレンス信号と、を比較して信号同士のズレを示す追従誤差を算出し、追従誤差信号として出力する比較器と、
追従誤差を考慮して、前記発振器に基準周波数信号を発生させるための制御信号を当該発振器に出力する制御器と、
追従誤差の示す挙動に基づいて補償値を決定して、制御信号を補うための補償信号を出力する補償器と、
を備え、
前記補償器は、追従誤差が急激な変動をしているか否かをファジィ理論を用いて判定し、
追従誤差が急激な変動をしていると判定した場合は、当該追従誤差が基準周波数信号に影響を及ぼさないように補償値を決定することを特徴とする基準周波数発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基準周波数発生装置であって、
前記補償器は、追従誤差が急激な変動をしているか否かを、追従誤差の時間変化率である追従誤差勾配に対してパターンマッチングを行うことで判定することを特徴とする基準周波数発生装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基準周波数発生装置であって、
前記補償器は、追従誤差勾配が0に近づくにつれてグレードが小さくなるメンバシップ関数で定義されたファジィ集合を設定しており、
前記ファジィ集合のグレードが第1範囲にあって、かつ直近の状態において前記ファジィ集合のグレードが第1範囲又は第1範囲より小さいグレードで構成された第2範囲にあるときに、追従誤差が急激な変動をしていると判定することを特徴とする基準周波数発生装置。
【請求項4】
請求項3に記載の基準周波数発生装置であって、
追従誤差が急激な変動をしていると判定された状態から、追従誤差が急激な変動をしていないと判定された状態に遷移した場合において、
前記補償器は、状態が遷移してから所定の時間は、追従誤差が基準周波数信号に影響を及ぼさないように補償値を決定することを特徴とする基準周波数発生装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の基準周波数発生装置であって、
前記補償器は、追従誤差が急激な変動をしていないと判定した場合は、当該追従誤差が小さくなるように補償値を決定することを特徴とする基準周波数発生装置。
【請求項6】
請求項5に記載の基準周波数発生装置であって、
前記補償器は、追従誤差及び追従誤差勾配をファジィ化して所定のファジィルールを適用することで補償値を決定することを特徴とする基準周波数発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−146919(P2011−146919A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6019(P2010−6019)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】