説明

塗工装置及びその洗浄方法

【課題】複雑な配管経路を有する塗工装置で、特により少量の塗工液を精密に塗工することが求められるものに対し、非分解のまま短時間で内部を良好に洗浄することが可能な塗工装置を提供する技術が望まれていた。
【解決手段】インキ吐出部3と、塗工液供給ポンプ20と、塗工液貯蔵容器19と、これらを接続する塗工液配管21とを具備するインキ吐出印刷装置100において、前記塗工液配管21に、気体と溶剤を交互に送り出し、気体と溶剤の界面の通過で前記塗工液配管を洗浄する洗浄手段としての洗浄装置101が接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工装置、及び塗工装置の洗浄方法に関する。塗工装置は、液吐出部を備えるものである。塗工装置は、その液吐出部の種類により異なるが、例えば、インキ吐出印刷装置、ダイコータ、スピンコータ、各種印刷装置を挙げることができる。また、この塗工装置で製造するものとしてカラーフィルタが例示でき、スピンコータ又はダイコータで着色レジストの薄膜を形成し、フォトリソグラフィー法にパターン形成してカラーフィルタを製造できる。また、前記製造物としてエレクトロルミネセンス素子も例示でき、この有機発光層を、インキ吐出印刷装置等を用いて形成する。また、この外、回路基板、薄膜トランジスタ、マイクロレンズ、バイオチップ等を製造することができる。特に液吐出部としてインキ吐出部を備え、インキ吐出印刷(Ink−jet)により塗布を行なうインキ吐出印刷装置(Ink−jet Printer)の配管(塗工液配管)の内部を洗浄することが可能な塗工装置に好適である。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、液吐出部としてダイコータを備えた塗工装置を用いて塗工する場合には、グラビアコート(gravure coat),ロールコート(roll coar),スライドコート(slide coat),カーテンコート(curtain coat),エクストルージョンコート(extrusion coat)等の色々な方式が用途に応じて用いられている。中でも、品質の高い安定した塗工を高速で行なう際には、エクストルージョンコートあるいはカーテンコートまたはスライドコート等が採用され、液吐出部としてスリットノズル(slit nozzle)を有するダイヘッドが使用されている。
【0003】
スリットノズルを有する液吐出部は、塗工量の幅方向の均一化を図るため、スリットの開口厚み(ギャップ)を狭く設定し、しかもマニホールド(manifold)は比較的大きな容積を確保するのが一般的である。
【0004】
しかし、通常液吐出部は、微小な開口部とその直前の大容積の液貯留部とを有する構造ゆえ、内部の液置換性が悪い。そのうえ、上記ダイヘッドは、多量の液体を一時に流すことが困難であり、塗工液の切り替え発生時など洗浄が必要となった際に洗浄性が極めて悪いという問題を抱えている。
【0005】
従って、上述のような液吐出部の洗浄を実際に行なう状況においては、多量の溶剤等を長い時間をかけて通液させている。あるいは、より確実な効果を期するため、液吐出部を分解して清掃するといった対応がとられている。したがって、いずれの場合も、時間的にも作業量的にも過大な負荷となっている。
【0006】
上記の問題に対し、液吐出部内部を短時間で効率よく洗浄する、スリットノズルを持つ液吐出部の洗浄方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
さらに、液吐出部のスリットノズル先端に残留した固形化しつつある塗工液を、作業能率の低下を招くことなく完全に除去することのできる、スリットノズルの洗浄方法及び洗浄機構も知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0008】
一方で、液吐出部に塗工液を供給するため該液吐出部に接続される配管部分においては、液吐出部のスリットノズル先端から塗工液を均一かつ安定して吐出させる目的から、塗工液用フィルターや塗工液供給ポンプ(定流量ポンプ)等が取り付けられるのが一般的である。
【0009】
従って配管部分も、内面が複雑な形状をなしているか、あるいは大容積の液貯留構造となっている箇所を有する結果となり、洗浄性が極めて悪い。そのため、これ(配管部分)も、実際に洗浄を行なう状況においては、多量の溶剤等を長い時間をかけて通液させている。あるいは、より確実な効果を期するため、ポンプ等においては分解して清掃し、配管においては場合により新しいものに交換するといった対応がとられている。したがって、いずれの場合も、液吐出部内部の洗浄と同様に過大な負荷となっている。
【0010】
上記の問題に対しては、圧縮気体あるいはピグ(pig)を用いることにより、洗浄時の塗料ロス(loss)を低減するとともに少量の洗浄溶剤を用いて短時間で効率よく洗浄できる、ダイコータ(die−coater)塗料洗浄装置が知られている(例えば、特許文献3参照)。
また、液吐出部としてインキ吐出部を備えた塗工装置において、この塗工装置の配管内部に洗浄液を送液して洗浄する方法が知られている(例えば、特許文献4)。
【特許文献1】特開平7−132267号公報
【特許文献2】特開2003−10767号公報
【特許文献3】特開平9−85153号公報
【特許文献4】特開2004−66735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ダイコータやインキ吐出印刷装置など各種の塗工装置の、液吐出部洗浄性の悪さや配管洗浄性の悪さに対し、特許文献1に記載されている技術では、液吐出部内部に溶剤を導入するとともに、配管の液吐出部接続部付近から不活性ガス(inert gas)を吹き込むことにより溶剤を「気泡流」化させ、液吐出部のマニホールド内壁およびスリットノズルを効率的に洗浄しようとしている。
【0012】
しかしこの方法では、より少量の塗工液を精密に塗布することが求められる分野、例えば液晶表示装置用カラーフィルター(color filter)の製造などにおいて使用されるスリットギャップ0.1mm前後のダイヘッドや微細なインキ吐出口を多数有する液吐出部に対しては充分な効果を得ることができない。また、配管部分に対してこの方法を適用することはできない。
【0013】
なぜなら、特許文献1に記載されている実施例によると、スリットギャップ(slit gap)0.5mmのダイヘッドに対して3.0l/minの洗浄液を流しながら1.0l/minの窒素を吹き込んでいる。実際、この程度の流量を確保できないと液体内に気泡が分散した乱流である「気泡流」にならない。通常30〜300ml/min程度の吐出量で使用される上記スリットギャップ0.1mm前後のダイヘッドやインキ吐出部においてこのような大流量を得ることは極めて困難で、結果、洗浄液は気液の2層に分離してしまって所期の洗浄状態を維持できないからである。
【0014】
また、配管部分においても、狭くかつ長い管内を通過するうちに気泡流は分散状態を失なって2層に分離してしまうため、同じく所期の洗浄状態を維持できない。
【0015】
特許文献2では、液吐出部のスリットノズル先端に対し、仰角を設けて置かれたノズルから洗浄液を、伏角を設けて置かれたノズルからエアー(air)を噴射して洗浄を行なう方法および機構が示されている。しかし、これはノズル外側を対象とするものであり、内面の洗浄については想定されていない。
【0016】
また、特許文献3には、圧縮気体を、配管内に直接導入する、あるいはピグを挿入したのちに圧縮気体によって、これ(圧縮気体)を移動させることで、配管内に残る塗料を除き、続く洗浄を容易にする装置について記載されている。
【0017】
さらに同公報には、塗料押し出し後の配管に、圧縮気体と洗浄用溶剤をミックス(mix)した気体混合洗浄剤を供給することで、洗浄用溶剤のみを圧送する場合に比べて洗浄効果を低下させることなく、少量の洗浄用溶剤で配管洗浄を可能とする装置についても述べられている。
【0018】
しかし、これらいずれの装置をもってしても、塗工液供給ポンプ等が接続された配管部分ならびに液吐出部の全てに対しては、適用することができないか、あるいは適用できても充分な効果をあげることができない。
【0019】
なぜなら、圧縮気体を配管内に直接導入した場合、気体導入後も配管内に残留する塗料(塗工液)が乾燥して異物となる恐れがあるからである。また、ピグを挿入して移動させる場合、金属粉の塗膜への混入を嫌う分野等でしばしば使用される樹脂配管を損傷する恐れがあるからである。
【0020】
より少量の塗工液を精密に塗布することが求められる分野において、塗工液の乾燥異物発生は、即ち塗膜不良発生を意味するものである。また、配管が損傷すると塗工液をより落としにくくなる原因にもなる。さらにピグには、ポンプ等の内面形状が複雑な箇所やスリットノズル等の狭小箇所で詰まる問題がある。
【0021】
他方、気体混合洗浄剤を供給する場合でも、装置に気体と溶剤の混合を制御する機構を特段に設けない限り、ポンプや液吐出部の洗浄は不完全となる。実際、特許文献3には、ポンプについて容易に分離・分解清掃が行なわれるよう配管継手により接続すべき旨の記述がある。
【0022】
また、特許文献4に示された方法では、塗工装置(インキ吐出印刷装置)内部に残存するインキと洗浄に用いる溶剤の相溶性によって、ソルベントショックを発生する問題があった。また、洗浄に際して配管内部及びインキ吐出部内に十分に洗浄液を行き渡らせるため、大量の洗浄液が必要であった。
【0023】
本発明は、上記した塗工装置の洗浄における従来の問題点を解決すべくなされたものであって、塗工装置の複雑な配管経路と液吐出部とを、特により少量の溶剤によって洗浄することである。また、塗工装置や液吐出部を分解せずに短時間で内部を良好に洗浄する洗浄手段を備えた塗工装置及び塗工装置の洗浄方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0024】
請求項1にかかる本願発明は、少なくとも液吐出部と、塗工液供給ポンプと、塗工液貯蔵容器と、これらを接続する塗工液配管とからなる塗工装置において、上記塗工液配管に洗浄手段が接続されていることを特徴とする塗工装置を提供する。このようにすることにより、上記塗工液配管途中から、気体と溶剤を交互に送り出した洗浄流体を任意の気液比率に保ちながら、該洗浄流体を該塗工液配管に送り出すことが可能となり、配管内部および液吐出部内部を高い効果で清浄化することが可能な洗浄を行える塗工装置を提供することができる。
【0025】
請求項2にかかる本願発明は、請求項1記載の塗工装置において、洗浄手段が、塗工液貯蔵容器から取り外した塗工液配管の端部を連結できる機構を有する配管に接続されていることを特徴とする塗工装置を提供する。このようにすることにより、上記塗工液配管端部を洗浄手段に連結して、請求項1と同様の洗浄を行なえる塗工装置を提供することができる。
【0026】
請求項3にかかる本願発明は、請求項1または2記載の塗工装置において、洗浄手段が、溶剤容器と、この溶剤容器に接続されている溶剤配管と、混合用気体貯蔵容器と、この混合用気体貯蔵容器に接続されている混合用気体配管と、上記溶剤配管の終端と混合用気体配管の終端とを接続する混合用弁と、この混合用弁から伸びる洗浄流体配管とを備えており、溶剤と混合用気体の流量および混合比率を調整する機能を有することを特徴とした塗工装置を提供する。このようにすることにより、上記混合用弁で混ぜ合わされた洗浄流体を任意の気液比率に保ちながら送り出すことが可能となり、配管内部および液吐出部内部を高い効果で清浄化することが可能な塗工装置を提供することができる。
【0027】
請求項4にかかる本願発明は、溶剤容器に溶剤使用量測定機構を、混合用気体貯蔵容器に気体使用量測定機構を備え、溶剤および混合用気体の使用量に応じて上記混合用弁の開閉を制御する手段を有することを特徴とする請求項3記載の塗工装置を提供する。このようにすることにより、溶剤あるいは気体、またはその混合物である上記洗浄流体の導入・非導入を、溶剤・気体の使用量に応じて細かく制御することを通じ、上記塗工装置における液置換性が悪く洗浄が困難な部位に対して、乾燥を伴わずに塗工液を気体で置換し、次いで内部の液面を上下させ気液界面の通過で発生する気液分配平衡を利用すること可能となる。そのため、該部位を高い効果で清浄化することが可能な塗工装置を提供することができる。
【0028】
請求項5にかかる本願発明は、溶剤の流速制御手段を有することを特徴とする請求項3または4記載の塗工装置を提供するものである。これにより、気体と溶剤を適切な混合状態に保つための、洗浄溶剤の動的流速制御を行なうことが可能になった塗工装置を提供することができる。なお、動的流速制御とは、混合用気体と溶剤との比率を、成り行きまかせではなく、指定した比率に制御することをさしている。また、動的流速制御には、洗浄状態の監視や、その監視結果に基づき全体の制御システム(弁の調整等)にフィードバック(feedback)すること等を含めてよい。
【0029】
請求項6にかかる本願発明は、混合用気体の流速制御手段を有することを特徴とする請求項3または4または5記載の塗工装置を提供するものである。これにより、気体と溶剤を適切な混合状態に保つための、混合用気体の動的流速制御を行なうことが可能になった塗工装置を提供することができる。
【0030】
請求項7にかかる本願発明は、前記洗浄手段が2種以上の溶剤を用い、塗工液と相溶性の高い溶剤から低い溶剤を順次流す手段を有することを特徴とする請求項1に記載の塗工装置を提供するものである。このようにすることにより、ソルベントショック(solvent shock)を抑制することができる。
【0031】
請求項8にかかる本願発明は、液吐出部と、塗工液供給ポンプと、塗工液貯蔵容器と、これらを接続する塗工液配管とを具備する塗工装置を洗浄する塗工装置の洗浄方法であって、前記塗工液配管に、気体と溶剤とを交互に送出することにより、前記塗工液配管内にこれらを流通させ、気体と溶剤との界面により該塗工液配管を洗浄する塗工装置の洗浄方法を提供する。このようにすることにより、配管内部および液吐出部内部を高い効果で塗工することができる。
【0032】
請求項9にかかる本願発明は、2種以上の溶剤を用い、塗工液と相溶性の高い溶剤から低い溶剤を順次流すことを特徴とする請求項8に記載の塗工装置の洗浄方法を提供する。このようにすることによりソルベントショックを抑制することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明により、複雑な配管及び微細な液吐出部を備える塗工装置で、特により少量の塗工液を精密に塗工することが求められるものに対し、非分解のまま短時間で内部を良好に洗浄することが可能な塗工装置及び塗工装置の洗浄方法を提供することが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明の塗工装置は、塗工液貯蓄タンクと、この貯蓄タンクに配管を介して接続されている液吐出部とを含んで備えるあらゆる塗工装置を含むものである。具体的には、塗工装置は、インキ吐出印刷装置、スリットコータ、ダイコータ、ディスペンサ、スピンコータ、各種印刷装置等の塗工装置を含むものである。
また塗工装置の液吐出部として、インキ吐出部、フォトレジスト吐出部(ダイコータの吐出部、スピンコータの吐出部など)や、凸版印刷装置、凹版印刷装置、平版印刷装置、反転印刷機等の印刷装置のインキ供給部などを挙げることができる。本発明の塗工装置は、複数のインキ吐出口を備えるインキ吐出部を有するインキ吐出印刷装置の配管内部及びインキ吐出部を洗浄するのに好適に用いることができる。
また、塗工装置は、カラーフィルタ、液晶材料、有機エレクトロルミネセンス素子、回路基板、バイオチップ、感熱記録材料、経皮吸収製剤等の部材の塗工に適しており、高精度・高精密の塗工が要求される。このため、この配管及び液吐出部の洗浄に際しては高い洗浄能力が要求される。
【0035】
以下、塗工装置としてインキ吐出印刷装置を適用した場合を例に、本発明の実施形態を順次説明するが、本発明は、インキ吐出印刷装置に限定されるものでなく、前述した各種塗工装置に適用できるものである。
【0036】
まず、本発明の第1の実施形態を、図1を参照して説明する。本実施形態のインキ吐出印刷装置100は、塗工液貯蔵容器19から付属装置(例えば、塗工液供給ポンプ20等)を通じてインキ吐出部3へと接続されている配管(塗工液配管)21の途中から、洗浄手段としての洗浄装置(例えば、洗浄流体送出手段としての洗浄流体送出装置)101によって気体と液体が交互に送り出されてなる洗浄流体を送り出すことにより、上記塗工液配管21内部を高い効果で洗浄する機能を持つものである。複数のインキ吐出部を並べて用いる場合、分配器33を設ける。塗工液はこの分配器33を通じて、複数のインキ吐出部3に分配される。分配器33の構造を図7に示す。分配器33をバルブを通じて、各インキ吐出部に接続することで、インキ吐出部への塗工液の供給を調節できる。
【0037】
図1は、洗浄流体を導入するための配管(洗浄流体供給配管)11が弁(導入弁)12を介して塗工液配管21と接続されたインキ吐出印刷装置100の一例を示している。なお、図1中符号23は塗工液用フィルター、符号24は塗工液導入弁、符号25は空気抜き弁(air vent valve)、符号26は塗工液受け、符号27は廃液槽、符号110は液吐出部(インキ吐出部)を示している。導入弁12、塗工液導入弁24、及び空気抜き弁25は、制御手段としての制御部(図示せず)によって、夫々その開閉が制御されている。
【0038】
前記導入弁12より、インキ吐出部3側は塗工時と同方向の流れで、塗工液供給側は塗工時と逆方向の流れで洗浄流体が送り出される。なお、塗工液供給側を洗浄している間は、塗工液貯蔵容器19を廃液回収機構としての廃液回収容器(図示せず)に付け替えておく。
【0039】
なお、このような廃液回収機構の他、他の機構を本発明は含むものであっても良い。例えば、搬送機構や塗工厚調整機構などである。
【0040】
また、上記洗浄流体の導入箇所は、図1に二点鎖線で示すように、ポンプ20と塗工液用フィルター23との間や、塗工液用フィルター23と塗工液配管21の端部(塗工液配管21のうちの塗工液貯蔵容器19に挿入される端部)等に設けてもよい。
【0041】
さらに、上記洗浄流体の導入箇所は、塗工液配管途中に限定されるものではなく端部でもよい。この場合は、洗浄流体を導入するための配管11に連結機構を用意しておき、洗浄時には、塗工液貯蔵容器19から塗工液配管21を取り外して上記連結機構につなげることとなる。
【0042】
以下、本発明の第2の実施形態を図2を参照して説明する。図2は、洗浄流体の導入箇所を塗工液配管21端部からとした場合の、洗浄流体を導入するための配管11が連結機構を介して接続されたインキ吐出印刷装置(Ink−jet Printer)100の一例を示している。図2中符号22は連結機構としての易接続継手(one−touch coupler)を示している。なお、他の構成は第1の実施形態と同様であるから、重複する説明は図に同符号を付して重複する説明を省略する。
【0043】
上記第1及び第2の実施形態のインキ吐出印刷装置100のように、洗浄流体は、塗工液配管21途中あるいは端部から導入されるが、その際、洗浄流体の気液混合比率および送り出し流量を、目的である洗浄が最も効果を発揮できる値に保たれるように設定することが肝要である。これがなされなければ、溶剤使用量の多少の低減は可能でも溶剤のみを流す方法に比べた洗浄程度の改善はあまり期待できない。
【0044】
なお、最適な気液混合比率は、配管長,配管径,途中に設置してある機器・器具,充填されている塗工液および使用洗浄溶剤の粘度等によっても異なってくるが、加圧状態において、概ね気体:溶剤の体積比率は1:2〜3:1程度が好ましい。
【0045】
また最適な流量も同様に各種条件により異なってくるが、概ね塗工時の吐出量の1〜3倍程度が好ましい。
【0046】
ここで強調しておきたいのは、この洗浄流体が、溶剤の中に微小な気泡が分散された系にあるわけではない、という点である。
【0047】
本発明において「気体と溶剤を交互に送り出し、気体と溶剤の界面の通過で洗浄する」とは、気体と溶剤が短い周期で規則的に送り出される態様を指すものであって、例えば、配管11,21内においては気体と溶剤がそれぞれ約3ml〜20mlごとに通過する状況となるのが好ましい。これにより、配管11,21内壁を気体と溶剤の界面が通過する際に発生する気液分配平衡を利用して、配管21の壁面から液相に塗工液を溶出させて清浄化する。
【0048】
実際の塗工装置における洗浄手段としては、気体と溶剤が短い周期で送り出されるよう、気液混合比率および送り出し流量が最適な値に保たれる機構が備えられていればよい。例えば、気体と溶剤の送り出し圧力が一定の比に保たれるようにすること、気体・溶剤の流路断面積を絞ってそれぞれの送出量を制限すること等が考えられるが、これらに限定されない。
【0049】
しかし、洗浄しようとする塗工液配管の構成や洗浄時点で残っている塗工液、および使用する洗浄溶剤の粘度等によって、最適な気体と溶剤の送り出し量や混合比率は異なってくるため、これらを任意に設定できると便利である。
【0050】
上記のような事情に対応し、インキ吐出印刷装置100としては、溶剤と混合用気体の流量および混合比率を調整する機能を有する構成とすることも可能である。
【0051】
以下、本発明の第3の実施形態を図3を参照して説明する。図3は、溶剤と混合用気体の流量および混合比率を調整する機能を有する洗浄手段101を備えるインキ吐出印刷装置100の一例を示す概略図である。本実施形態では、洗浄手段101は、洗浄機溶剤供給部1及び洗浄機混合用気体供給部2を有して構成されている。
【0052】
洗浄手段101は、溶剤を収容する溶剤容器4と、この溶剤容器4に接続されている溶剤配管5と、混合用気体を収容する混合用気体貯蔵容器14と、この混合用気体貯蔵容器14に接続されている混合用気体配管15と、溶剤配管5の終端と混合用気体配管15の終端とを接続する混合用弁10と、この混合用弁10から延びる洗浄流体送出配管104と、前記溶剤の流量、前記混合用気体の流量、及びこれらの混合比率を調整する調整機構とを備えている。混合用弁10は、溶剤および前記混合用気体の使用量に応じて、制御手段としての制御部(図示せず)でその開閉が制御されている。前記調整機構は、例えば、溶剤用開閉弁6と、溶剤用送り出し量調整機構7と、混合用気体用開閉弁16と、混合用気体用送り出し量調整機構17とを備えて構成されている。溶剤用開閉弁6及び混合用気体用開閉弁16の開閉は、前記制御部によって制御させることができる。
【0053】
なお、図3中符号8は溶剤の使用量を測定する溶剤使用量測定機構としての溶剤流量計、符号9は溶剤用フィルター、符号13はロードセル、符号18は混合用気体の使用量を測定する気体使用量測定機構としての混合用気体流量計を示している。他の構成は第1の実施形態と同様であるから、重複する説明は図に同符号を付して重複する説明を省略する。
【0054】
本実施形態のインキ吐出印刷装置100では、塗工液配管21の構成、あるいは、塗工液や洗浄溶剤の粘度等を勘案して、溶剤容器4の送り出し量調整機構7および混合用気体配管15の混合用気体流量調整弁(混合用気体用送り出し量調整機構)17の開度を設定することで、混合用弁10で気体と溶剤が設定に応じた任意の比率で混合され、導入弁12から塗工液配管(インキ吐出印刷装置の配管)21内に送り込まれる。
【0055】
このように溶剤と混合用気体の流量および混合比を調節する洗浄流体調整機構としては、混合用気体と溶剤の流量をそれぞれ調整し、洗浄流体状態では制御しない構成が簡単で好ましいが、これに限らず、溶剤を調節せず混合用気体の流量調整と全体の洗浄流体の流量を調節する構成、混合比を決めておき規定混合溶剤を流量調整する構成、全ての段階で調節する構成なども可能である。
【0056】
また流量調整は、弁によるものが一般的であるが、定量ポンプなどの各種手段によるものでも構わない。さらに、配管としては、同様に単なる三又の他、弁などの洗浄流体調整機構の一部をなす各種混合器具を用いることが可能である。
【0057】
第1乃至第3の実施形態で示したインキ吐出印刷装置100では、塗工液配管21に、気体と溶剤とが混合された洗浄流体を送出することにより、該洗浄流体を前記塗工液配管21内に流通させ、該塗工液配管を洗浄することができる。
【0058】
なお、このような塗工装置の洗浄方法によって、インキ吐出部3内や配管21内を効率よく清浄化できるが、塗工液供給ポンプ20やインキ吐出部3など、液置換性が悪く洗浄が困難な部位においては、従来の方法に比べると洗浄される程度は高いものの依然として塗工液が微量残留する。
【0059】
このような液置換性が悪く洗浄が困難な部位に対しては、気体あるいは溶剤、またはその混合物である上記洗浄流体の導入・非導入を、使用溶剤重量・気体混合体積に応じて細かく制御することによって、該部位を高い効果で洗浄する構成も可能である。この場合、例えば、第3の実施形態のインキ吐出印刷装置100のように構成し、溶剤容器4に設けられたロードセル13の示す重量変化および混合用気体配管15に設けられた流量計18の積算値から、あらかじめ測定しておいた洗浄が困難な部位の内容積に合わせて、塗工液の気体による置換,溶剤充填,溶剤排出の各動作を行ない、気液界面通過による気液分配平衡を利用した洗浄を達成するとよい。
【0060】
この洗浄方法における洗浄の推移を、図4および図5で示されるインキ吐出部3を図3に示されるインキ吐出印刷装置100に適用した場合を例にして、以下に記す。
【0061】
塗工終了時点では、インキ吐出部内の塗工液(吐出液)溜まり28は塗工液が残存している。そこでまず、塗工液供給口30から洗浄流体を送り込むことによって塗工液を置換する。
【0062】
この際、洗浄流体のうち溶剤分は塗工液とともにインキ吐出口29から排出され、上部から気体が溜まっていくことにより、最終的には乾燥の恐れなしに液体が滞留しやすい箇所を含め内部を全て気体で満たすことができる。
【0063】
次いで、塗工液が排出されきった時点を見計らって今度は溶剤のみを塗工液(吐出液)溜まり28内に送り込み、溶剤で満たす。ここでインキ吐出部に空気抜き口(air vent port)31が存在すれば、これを開とすることでより効率的に溶剤を充填できる。塗工液が排出されきった時点は、塗工液(吐出液)溜まり28の容積と、装置に備えられたロードセル13により求まる溶剤使用量および混合用気体流量計18により積算された混合用気体使用量との比較から判断することができる。
【0064】
最後に、塗工液(吐出液)溜まり28が溶剤で満たされた時点を見計らって再び洗浄流体を送り込み、溶剤を排出させる。この際、上部から気体がたまってゆき、気液の界面が通過する際に発生する気液分配平衡を利用して壁面から液相に塗工液を溶出させて清浄化する。
【0065】
以上一回の洗浄動作で効果が不充分な場合、溶剤充填と排出を繰り返すことでより完全な洗浄を期することも可能である。また、洗浄が終了したのちに気体のみを送り込むことによって乾燥を行ない、次の塗工に備えることもできる。溶剤で満たされた時点は、同様に塗工液(吐出液)溜まり28の容積と溶剤使用量との比較から判断することができる。
【0066】
もちろん、使用量の測定は、溶剤を重量変化により、気体を流量の積算により行なう上記の方式が簡便であるが、他の手段によっても構わない。
【0067】
さらに、洗浄動作の制御は、このような使用量等をもとにした制御のほか、洗浄流体あるいは溶剤・気体の流速等と経過時間と照らし合わせることによる制御等でもよい。その場合には、例えば、インキ吐出印刷装置100に、溶剤の流速を制御する溶剤用流速制御手段(例えば、流速計)や、混合用気体の流速を制御する混合気体用流速制御手段(例えば流速計)を設けても良い。また、インキ吐出印刷装置100には、加圧した混合用気体を弁を介して溶剤に混ぜることにより、前記弁よりも下流側の配管内に流れる溶剤及び混合用気体のうちの少なくとも一方の流速を変化させるように構成した流速制御手段を用いることもできる。
【0068】
さらに図3に示すインキ吐出部3を備えるインキ吐出印刷装置100においては、例えば、送り出し量調整機構7および混合用気体流量調整弁17の開度と洗浄経過時間の比較から洗浄流体の押し出し量を計算して動作を行なってもよいし、可能ならば洗浄度の測定をして洗浄動作を制御しても構わない。
【0069】
上記洗浄に際して使用する溶剤は特に限定されないが、通常液吐出部の材質としては、金属が使用されていること、および洗浄後の乾燥の容易さを考慮すると、メタノール,エタノール,イソプロパノール,シクロヘキサン,アセトン,2−ブタノン,ジクロロメタン等の低沸点有機化合物が適すると考えられる。また、液吐出部として、インキ吐出部を用いる場合は、エステル系洗浄液を用いることができ、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGMEとも称される。)を好適に用いることができる。
【0070】
同様に使用する気体も特に限定されないが、溶剤として低級アルコールや低分子ケトン等の引火性のある物質を採用する場合には、窒素やアルゴン等の不活性ガスを選択することが望ましい。
【0071】
また、使用する溶剤を2種類以上として洗浄を行なうことも可能である。この場合、溶剤容器・ロードセル・溶剤流量計等を複数用意し、切り替え弁を介して混合用弁に配管を接続することになる。
【0072】
上記洗浄動作をなす機構については、該洗浄の要旨を実現可能であれば形態を問わないが、プログラマブルロジックコントローラー(PLC)により各種監視・制御を行なうのが制御のタイムラグが少なく繊細な制御が比較的容易で好ましい。
【0073】
以上、本発明による塗工装置配管洗浄において重要な要素となるのが、洗浄流体吐出率および送り出し量が最適の値に保たれることであり、これが溶剤の送り出し量調整機構7と混合用気体流量調整弁17の設定により調整されることは述べた通りである。しかし、同一の液吐出部を洗浄する場合においても、上記気液混合比率および吐出達成する溶剤の送り出し量調整機構7と混合用気体流量調整弁17の設定値が常に一定であるとは限らない。
【0074】
なぜなら、前述設定値が、洗浄前に充填されている塗工液の種類によって異なり得るのはもちろんのこと、さらには洗浄の進展による配管内の塗工液残量の減少によってすら変わってくる可能性があるからである。これは、塗工液によって粘度が異なること、また通常塗工液に比べ粘度の低い溶剤によって塗工液が置換されてゆくことで、押し出しに対する配管の抵抗が変化してしまうことによる。
【0075】
加えて、上記のような洗浄環境の変化によって最適気液混合比率を達成する設定値が移動しても、洗浄溶剤の流速制御を動的に行なって、混合状態を維持する機能を有する装置とするのも可能である。
【0076】
同じく、上記のような洗浄環境の変化によって最適気液混合比率を達成する設定値が移動しても、混合用気体の流速制御を動的に行なって、混合状態を維持する機能を有する装置とするのも可能である。
【0077】
上記両装置とも、溶剤容器4に設けられたロードセル13の示す重量変化率および混合用気体配管15に設けられた流量計18の計測値から、気液の混合比率および洗浄流体の送り出し量を計算し、本発明の請求項5にかかる発明による装置においては溶剤の送り出し量調整機構7に、同請求項6にかかる発明による装置においては混合用気体流量調整弁17に、結果を帰還(フィードバック)させることによって該機能を実現する。
【0078】
以下、本発明の第4の実施形態を図6を参照して説明する。本実施形態のインキ吐出印刷装置100は、高精度・高精密の塗工が要求される。本実施形態のインキ吐出印刷装置100は、塗工ユニット部110と、溶剤貯蔵部300及び乾燥ガスユニット部200を有する洗浄処理部400からなっている。
【0079】
塗工ユニット部110は、塗工する塗工液が貯蔵される塗工液貯蔵容器19と、塗工液がインキ吐出部3に供給される際にインキ吐出口等から塗工液をいつも均一に形成するために、ゴミなどの異物を取り除くための塗工液用フィルター23と、さらに塗工液を塗工液貯蔵容器19から移送させるための塗工液供給ポンプ20と、塗工液を吐出するインキ吐出部3と、さらにインキ吐出部3から落ちる塗工液を受けて止める塗工液受け26と、塗工液受け26に落ちた塗工液とインキ吐出部3に供給され余分の塗工液を貯める廃液槽27とを備えている。インキ吐出部3と塗工液受け26を除いて各部分が樹脂製パイプあるいはステンレス製パイプまたは金属製パイプの内面を樹脂加工等を施したパイプで配管されている。
【0080】
塗工ユニット部110は、以下のように動作する、塗工液貯蔵容器19に貯えられている塗工液は塗工液供給ポンプ20の駆動により塗工液貯蔵容器19から配管の途中にある塗工液用フィルター23を通って塗工液供給ポンプ20に入る。さらに、塗工液供給ポンプ20の吐出方向に接続されている配管を通ってインキ吐出部3に塗工液が供給される。インキ吐出部3に供給された余分な塗工液は廃液槽27に回収される。
【0081】
洗浄処理部400からのびる配管は、導入弁12を介して、塗工ユニット部110と接続している。このとき、洗浄処理部400と塗工ユニット部110との接続箇所は、図6に二点鎖線で示すように、ポンプ20と塗工液用フィルター23との間や、塗工液用フィルター23と塗工液配管21の端部(塗工液配管21のうちの塗工液貯蔵容器19に挿入される端部)等に設けてもよい。
【0082】
溶剤貯蔵部300は、ソルベントショック(solvent shock)を抑止するため、2種類以上の溶剤を貯えることができる2個以上例えば4個の溶剤タンク51a,51b,51c,51dを備えている。下流側の溶剤タンク内の溶剤ほど、上流側の溶剤タンク内の溶剤よりも塗工液との相容性が高い。また、下流側の溶剤タンク内の溶剤ほど、上流側の溶剤タンク内の溶剤よりも洗浄性が低い。
【0083】
各々の溶剤タンク51a,51b,51c,51dには、塗工液との相溶性のあるものから順次洗浄性の高い溶剤へと切り換えていくために、各溶剤タンク51a,51b,51c,51dの上流側に三方コップ型のタンク切り換え用弁53a,53b,53c,53dが設けられている。なお、タンク切り換え用弁53a,53b,53c,53dの操作は、外部から操作信号を入力することで行うことができる。また、タンク切り換え用弁53a,53b,53c,53dの操作は、人手による操作によって行ってもよい。
【0084】
また、洗浄のバラツキをなくすために溶剤の重量制御をおこなうロードセル54a,54b,54c,54dが、夫々溶剤タンク51a,51b,51c,51dの底部に設けられている。さらに、溶剤容器4から移送される溶剤の洗浄バラツキをなくすために溶剤の流速を制御するための溶剤流量制御弁56が設けられている。溶剤流量制御弁56の吐出側には、溶剤の流量を計測する溶剤用流量計52が設けられている。溶剤用流量計52を通過した溶剤は溶剤の中の異物等を取るための溶剤用フィルター55を通過して乾燥ガスユニット部200からのガスと交わる切り換え弁57が施されている場所に到達し、さらに洗浄時には塗工ユニット部110の塗工液切り換え弁12から洗浄するための溶剤が移送されて塗工ユニット部110の配管あるいはインキ吐出部内部を順次相溶性のある溶剤により洗浄される。また、洗浄時に溶剤と窒素等の乾燥用ガスとを混合して塗工ユニット部110に送り込み、気液界面により塗工ユニット部の配管あるいはインキ吐出部3を洗浄することもできる。溶剤は、切り替え弁73に達するまで溶剤用配管70内を流れる。
【0085】
乾燥ガスユニット部200は、配管あるいはインキ吐出部3の内部を乾燥させるためのガスを貯蔵する乾燥用ガスタンク58と、ガスの流速を制御するための乾燥用ガスガス流量制御部59と、乾燥用ガスガス流量制御部59を通過したガスの流量を計測する乾燥用ガス流量計60と、各溶剤タンク51a,51b,51c,51dに夫々対応するように並列に設けられた4つのガス流量制御部とを備えている。溶剤タンク51aに対応するガス流量制御部は、溶剤タンク51aから吐出される溶剤にガスを混入させるためのものであって、圧力制御弁80aと、ガス流量制御弁81aと、ガス流量計82aとを備えている。溶剤タンク51bに対応するガス流量制御部は、溶剤タンク51bから吐出される溶剤にガスを混入させるためのものであって、圧力制御弁80bと、ガス流量制御弁81bと、ガス流量計82bとを備えている。溶剤タンク51cに対応するガス流量制御部は、溶剤タンク51cから吐出される溶剤にガスを混入させるためのものであって、圧力制御弁80cと、ガス流量制御弁81cと、ガス流量計82cとを備えている。溶剤タンク51dに対応するガス流量制御部は、溶剤タンク51dから吐出される溶剤にガスを混入させるためのものであって、圧力制御弁80dと、ガス流量制御弁81dと、ガス流量計82dとを備えている。
【0086】
このインキ吐出印刷装置100では、以下のようにしてインキ吐出印刷装置100の洗浄を行う。
【0087】
まず、溶剤タンク51aから溶剤を吐出させる。溶剤タンク51aに対応するガス流量制御部の制御によって、この溶剤にガスを混入させる。溶剤タンク51aからの溶剤の吐出を停止させる。次に、溶剤タンク51bから溶剤を吐出させる。溶剤タンク51bに対応するガス流量制御部の制御によって、この溶剤にガスを混入させる。溶剤タンク51bからの溶剤の吐出を停止させる。次に、溶剤タンク51cから溶剤を吐出させる。溶剤タンク51cに対応するガス流量制御部の制御によって、この溶剤にガスを混入させる。溶剤タンク51cからの溶剤の吐出を停止させる。次に、溶剤タンク51dから溶剤を吐出させる。溶剤タンク51dに対応するガス流量制御部の制御によって、この溶剤にガスを混入させる。溶剤タンク51dからの溶剤の吐出を停止させる。最後に、切り替え弁57よりも下流側を全て乾燥させる。
【0088】
以上のように、本実施形態のインキ吐出印刷装置100によれば、高精度・高精密の塗工が要求されるような場合であっても、塗工ユニット部110を良好に洗浄することができる。
【0089】
なお、配管およびインキ吐出部の洗浄時/乾燥時は、洗浄処理部と接続された導入弁12よりも下流側、すなわち塗工液貯蔵容器19側の配管については、洗浄用溶剤が逆流するおそれがある。そのため、塗工液貯蔵容器19の手前に弁を設け、廃液槽27と接続して切り替えることで塗工液貯蔵容器19が汚染されるのを防ぐが、塗工液貯蔵容器19そのものを廃液を受けるための廃液缶等と交換するのが好ましい。
【0090】
また、溶剤タンク51a,51b,51c,51d内の溶剤は、塗工液と相溶性によって適宜選択することができる。例えば塗工液に用いられているメイン溶剤がシクロヘキサノン溶剤の際には、シクロヘキサノン溶剤で20KPa〜100KPaの押し出し圧力で洗浄し、さらに2−ブタノン溶剤を用いて30KPa〜100KPaの押し出し圧力で洗浄するとよい。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、塗工装置、特にインキ吐出部により塗布を行なうインキ吐出印刷装置の配管の内部の洗浄性に優れた塗工装置に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る塗工装置を示す概略図。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る塗工装置を示す概略図。
【図3】本発明の第3の実施形態に係る塗工装置を示す概略図。
【図4】インキ吐出部の一例を示す正面図。
【図5】図4のインキ吐出部を示す右側面図。
【図6】本発明の第4の実施形態に係る塗工装置を示す概略図。
【図7】分配器の構造を示す概略図。
【符号の説明】
【0093】
1…洗浄機溶剤供給部、 2…洗浄機混合用気体供給部、 3…インキ吐出部、 4…溶剤容器、 5…溶剤配管、 6…溶剤用開閉弁、 7…溶剤用送り出し量調整機構、 8…溶剤流量計、 9…溶剤用フィルター、 10…混合用弁、 11…洗浄流体供給配管、 12…導入用弁、 13…ロードセル、 14…混合用気体貯蔵容器、 15…混合用気体配管、 16…混合用気体用開閉弁、 17…混合用気体用送り出し量調整機構(混合用気体流量調整弁)、 18…混合用気体流量計、 19…塗工液貯蔵容器、 20…塗工液供給ポンプ、 21…塗工液配管、 22…易接続継手(ワンタッチカプラー)、 23…塗工液用フィルター、 24…塗工液導入弁、 25…空気抜き弁(エアベントバルブ弁)、 26…塗工液受け、 27…廃液槽、 28…吐出液溜まり、 29…インキ吐出口、 30…塗工液導入口、 31…空気抜き口(エアベントポート)、32…インキ吐出駆動装置 33…分配器 100…インキ吐出印刷装置、 101…洗浄装置(洗浄手段)、 104…洗浄流体送出配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、液吐出部と、塗工液供給ポンプと、塗工液貯蔵容器と、これらを接続する塗工液配管とを具備する塗工装置において、
前記液吐出部がインキ吐出部であり、
前記塗工液配管に、気体と溶剤を交互に送り出し、気体と溶剤の界面の通過で前記塗工液配管を洗浄する洗浄手段が接続されていることを特徴とする塗工装置。
【請求項2】
請求項1記載の塗工装置において、
前記塗工液貯蔵容器は、前記塗工液配管の端部に設けられており、
前記塗工液配管は、前記塗工液貯蔵容器を取り外したときに該端部に連結可能な連結機構を有する配管を備え、
前記洗浄手段は、前記配管に接続されていることを特徴とする塗工装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の塗工装置において、
前記洗浄手段が、
溶剤を収容する溶剤容器と、この溶剤容器に接続されている溶剤配管と、混合用気体を収容する混合用気体貯蔵容器と、この混合用気体貯蔵容器に接続されている混合用気体配管と、前記溶剤配管の終端と前記混合用気体配管の終端とを接続する混合用弁と、この混合用弁から延びる洗浄流体送出配管と、前記溶剤の流量、前記混合用気体の流量、及びこれらの混合比率を調整する調整機構と、を具備することを特徴とする塗工装置。
【請求項4】
請求項3記載の塗工装置において、
前記溶剤の使用量を測定する溶剤使用量測定機構を設け、
前記混合用気体の使用量を測定する気体使用量測定機構を設け、
前記溶剤および前記混合用気体の使用量に応じて前記混合用弁の開閉を制御する制御手段をさらに具備することを特徴とする塗工装置。
【請求項5】
請求項3記載の塗工装置において、
前記溶剤の流速を制御する流速制御手段をさらに具備することを特徴とする塗工装置。
【請求項6】
請求項3記載の塗工装置において、
前記混合用気体の流速を制御する流速制御手段をさらに具備することを特徴とする塗工装置。
【請求項7】
請求項1記載の塗工装置において、
前記洗浄手段が2種以上の溶剤を用い、塗工液と相溶性の高い溶剤から低い溶剤を順次流す手段を有することを特徴とする塗工装置。
【請求項8】
液吐出部と、塗工液供給ポンプと、塗工液貯蔵容器と、これらを接続する塗工液配管とを具備する塗工装置を洗浄する塗工装置の洗浄方法であって、
前記液吐出部がインキ吐出部であり、
前記塗工液配管に、気体と溶剤とを交互に送出することにより、前記塗工液配管内に流通させ、気体と溶剤との界面により該塗工液配管を洗浄することを特徴とする塗工装置の洗浄方法。
【請求項9】
請求項8記載の塗工装置の洗浄方法において、
2種以上の溶剤を用い、塗工液と相溶性の高い溶剤から低い溶剤を順次流すことを特徴とする塗工装置の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−69143(P2007−69143A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−260397(P2005−260397)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】