説明

塗布、現像方法及び塗布、現像装置。

【課題】レジストを塗布し、露光後に現像を行ってレジストパターンを形成するにあたって、レジスト表面に残渣が付着することで生ずる現像欠陥を抑制すること。
【解決手段】ウエハWの表面にレジスト液を塗布してレジスト膜を形成し、その後レジスト膜が形成されたウエハWの表面を露光して、この露光処理されたウエハWの表面に、酸性アルコールLを供給して、当該表面に形成されているレジスト膜の低分子層の一部を溶解し、さらに、その後行われる現像処理に用いられる現像液に対する当該低分子層の溶解性を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板にレジスト液を塗布し、露光後の基板に対して現像を行う塗布、現像装置及び塗布、現像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程におけるフォトリソグラフィ工程は、基板の表面に例えば化学増幅型のレジスト液を塗布し、その後、露光装置にてレジスト膜を所定のマスクを介して露光処理し、次に、レジスト膜を現像処理することによって、ウエハ上に所定のレジストパターンを形成することにより行われる。
【0003】
ところでレジスト液中には低分子成分が含まれ、この低分子成分には、現像液に不溶解であって残渣となる残渣発生因子が含まれている。そしてレジスト膜を形成したときにその表面に数nm程度の低分子層が形成され、この低分子層は露光処理及び加熱処理(PEB:Post Exposure Bake)の後にも残留し続ける。図13(a)、(b)は低分子成分に含まれる不溶解成分Pがレジスト膜Rの表面部分に残留している様子を示す。図13中101は下地膜、〇印は酸(H+)を示している。この不溶解成分Pは図13(c)に示すように現像液により現像処理された後においても残渣としてレジストパターンの溝部10やレジスト部位の側壁等に残留する。
【0004】
その後、ウエハを回転させながら中心部に純水を供給することによりスピン純水リンスが行われるが、線幅がより微細化するとパターン内に残存して現像欠陥を引き起こしやすくなる。また下地膜101よりもレジスト膜Rにおける水の接触角が大きい場合が多く、特に液浸露光に用いられるレジスト液は撥水性のものを使用することが検討されていることから、この場合には、純水を振り切るときに実施例で説明する図11(a)に示すように純水が途切れて液滴となって残留し、不溶解成分Pを含有した純水リンスWLがレジストパターンの溝部10に取り残された状態で乾燥するため、当該溝部10に不溶解成分Pが残留して、現像欠陥となる。以上の結果、予め得ようとしているレジストパターンに悪影響を与え、半導体製造プロセスの歩留りが低下してしまう。
【0005】
また、図13(d)に示すように純水リンスによって取り除くことができなかった不溶解成分Pが、レジスト膜Rに付着して後の検査工程で光学的な理由等で検査をクリアすることができず、この結果、欠陥品として扱われ、先の場合と同様に半導体製造プロセスの歩留りの低下の原因となる。
【0006】
一方、特許文献1には、ウエハを露光処理し、加熱処理した後に、さらに酸処理することによって残渣の発生を抑制する手法が記載されている。また、特許文献2には、ウエハを現像処理する前に、当該ウエハへ酸性の液体を供給し、残渣の発生を抑制する手法が記載されている。しかし、レジストは酸に溶解するため、これらの発明では形成されるレジスト膜の膜減りの度合いが大きくなる不具合がある。
【0007】
【特許文献1】特開2001−215734号
【特許文献2】特開2003−324063号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような事情の下になされたものであり、その目的は、レジストを塗布し、露光後に現像を行ってレジストパターンを形成するにあたり、レジスト表面に残渣が付着することで生ずる現像欠陥を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る塗布、現像方法は、基板の表面にレジスト液を塗布してレジスト膜を形成する工程と、
レジスト膜が形成された基板の表面を露光する工程と、
露光処理された基板の表面に、アルコールを供給して、当該表面を洗浄する洗浄工程と、
その後、基板の表面に現像液を供給して、レジストパターンを形成する現像工程と、を備えたことを特徴とする。
また、前記アルコールは酸と混合されて供給されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る塗布、現像方法は、露光された基板を現像工程の前に加熱処理する加熱工程を含み、
前記洗浄工程は、前記加熱工程の前に行われることを特徴とする構成としてもよく。
また、露光された基板を現像工程の前に加熱処理する加熱工程を含み、
前記洗浄工程は、前記加熱工程の後に行われることを特徴とする構成としてもよい。
【0011】
本発明に係る塗布、現像装置は、基板の表面にレジスト液を塗布する塗布モジュールと、レジスト膜が形成され、露光された基板を現像する現像モジュールと、を備えた塗布、現像装置において、
基板保持部とこの基板保持部に保持された基板の表面を洗浄するためにアルコールを吐出する洗浄ノズルとを有する洗浄モジュールと、
露光された基板に対して現像モジュールにて現像が行なわれる前に前記洗浄モジュールにて洗浄を行うように制御信号を出力する制御部と、を備えたことを特徴とする。
また、前記塗布、現像装置は、前記洗浄ノズルからアルコールを酸に混合した薬液を前記基板の表面に吐出するための薬液供給系を備えたことを特徴とする構成としてもよい。
また、前記塗布、現像装置は、露光された基板を現像する前に加熱処理する加熱モジュールを備え、
前記制御部は、露光された基板に対して、前記加熱モジュールに搬入する前に洗浄モジュールにて洗浄を行なうように制御信号を出力することを特徴とする構成としてもよく。
【0012】
また、露光された基板を現像する前に加熱処理する加熱モジュールを備え、
前記制御部は、露光された基板に対して、前記加熱モジュールにて加熱処理された後に洗浄モジュールにて洗浄を行なうように制御信号を出力することを特徴とする構成としてもよい。
また、前記塗布、現像装置の前記洗浄モジュールにおける基板保持部は、現像モジュールにおける基板保持部を兼用していることを特徴とする構成としてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、基板に形成されたレジスト膜を露光処理した後、現像処理する前に、当該レジスト膜にアルコール、または酸とアルコールとの混合液を供給している。このため、現像欠陥を引き起こすレジスト膜表面の残渣発生因子を予め除去し、またレジスト膜における水の接触角を小さくできることから、後述の実施例からも明らかなように現像欠陥の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の形態に係る塗布、現像装置に露光装置を接続したパターン形成システム全体の構成を図1〜図3を用いて説明する。図中のCは基板であるウエハWを例えば25枚収納することができる密閉型キャリア(FOUP)であり、このキャリアCはキャリアブロックB1にて塗布、現像装置へ搬出入されるものである。当該キャリアブロックB1は、キャリアCを載置することができる載置部11を複数有したキャリア搬入部12と、載置部11から見て前方の壁面に設けられる開閉部13と、この開閉部13を介してキャリアCからウエハWを取り出し、後述する処理ブロックB2へ受け渡す受け渡しアームA1とにより構成されている。
【0015】
前記キャリアブロックB1の隣には処理ブロックB2が設けられている。この処理ブロックB2は、キャリアブロックB1側から順に棚ユニットU1、U2、U3と、メインアームA2、A3とが交互に配列して設けられ、当該棚ユニットU1、U2、U3の並びと反対側には液処理モジュールU4、U5が設けられている。前記メインアームA2、A3は、各棚ユニットU1、U2、U3及び各液処理モジュールU4、U5間のウエハWの受け渡しを行うものである。
【0016】
前記棚ユニットU1、U2、U3は、図3に示すようにウエハWを加熱処理する加熱モジュール、ウエハWを冷却する冷却モジュール(CPL)及び受け渡しのためのステージを有する受け渡しモジュール(TRS)等を備えている。加熱処理としては、レジスト塗布後の加熱処理(PAB)、現像前の加熱処理(PEB)、現像後の加熱処理(POST)等が挙げられ、図3では各加熱処理の名称を加熱モジュールの名称として便宜上記載してある。なお、図2及び図3において各モジュールの配列は便宜上のものである。
【0017】
液処理モジュールU4、U5は、塗布液例えばレジスト液や現像液といった薬液を収容する薬液収容部18の上に、塗布モジュール(COT)、現像モジュール(DEV)、反射防止膜形成モジュール(BARC)を複数段に積層した構成を取っている。前記塗布モジュール(COT)はウエハWへレジスト液を塗布するものであり、前記現像モジュール(DEV)はウエハWを現像処理するものであり、前記反射防止膜形成モジュール(BARC)はウエハWに反射防止膜を形成するものである。
【0018】
処理ブロックB2のキャリアブロックB1の反対側には、インターフェイスブロックB3が接続されている。さらに、このインターフェイスブロックB3に露光装置B4が接続されている。前記インターフェイスブロックB3は図4に示すように第1搬送室21及び第2搬送室22より構成されている。第1搬送室21は、第1のインターフェイスアーム(IFアーム)A4と、バッファモジュールBMと、高精度温度調整ユニット等を積層して構成された棚ユニットU6、薬液リンスモジュール3を備えている。また、第2搬送室22は第2のIFアームA5を備えている。
【0019】
第1のIFアームA4は、処理ブロックB2と第2搬送室22間におけるウエハWの搬送を行い、また、バッファモジュールBMや棚ユニットU6へウエハWを搬送する。第2のIFアームは第1搬送室21と露光装置B4との間でウエハWを搬送し、また、薬液リンスモジュール3への搬送も行う。前記棚ユニットU6は、ウエハWの受け渡しを行うモジュールと、高精度温度調整モジュール(ICPL)とが上下に積層されたものである。
【0020】
前記露光装置B4は、搬入ステージ23と、搬出ステージ24を有し、ウエハWを例えばドライ露光するものである。前記搬入ステージ23は、インターフェイスブロックB3からウエハWを搬入するための載置部であり、前記搬出ステージ24は、インターフェイスブロックB3へウエハWを搬出するための載置部である。
【0021】
次に薬液リンスモジュール3を図4を用いて説明する。図4中31は筐体であり、この筐体31の側壁にはウエハWを搬出入するための搬出入口33が設けられている。この搬出入口33はシャッター32により開閉されるものである。図中34は基板保持部であるスピンチャックであり、ウエハWを真空吸着することで水平に保持することが可能である。また、このスピンチャック34は、回転駆動部35により鉛直軸回りに回転することができ、ウエハWの受け渡しができるように昇降することが可能である。前記筐体31内にはスピンチャック34を取り囲むようにカップ36が設けられており、このカップ36の底部は気液分離を行えるように環状の外側部37A、内側部37Bに区画されている。前記外側部37Aには廃液管38の一端が接続され、この廃液管38の他端は酸性アルコール供給部5に接続されている。また、前記内側部37Bには排気管39が接続され、カップ36の排気を行うことができる。
【0022】
薬液リンスモジュール3は、酸性溶液とアルコールとの混合溶液である酸性アルコールLをウエハWへ供給するための薬液ノズル41を有している。また、薬液ノズル41には薬液供給管43の一端が接続されており、この薬液供給管43の他端はバルブや流量計等で構成される液供給機器系44を介して酸性アルコール供給部5に接続されている。前記液供給機器系44は、後述する制御部100により制御され、酸性アルコールの流量等を調節することができる。前記酸性アルコールLには酸が含有されるため、薬液リンスモジュール3の各部は耐酸性の強い材料により構成することが好ましい。例えば薬液ノズル41はPFA(テトラフルオロエチレン)などの耐酸性の強い樹脂により構成される。
【0023】
次に酸性アルコール供給部5は図5に示すように、浄化部4、酸性アルコール貯留タンク51及び酸性溶液貯留タンク71を有している。前記浄化部4は、酸性アルコールL中に含まれるおそれのある有機物等のパーティクルを除去するためのフィルタ(図示しない)を備えている。このため、薬液リンスモジュール3にて供給された酸性アルコールLは、排液管38を介して浄化部4にて精製され、酸性アルコール貯留部51へ貯留される。前記酸性アルコール貯留タンク51には、アルコール例えば4−メチルー2ペンタノール及び酸性溶液からなる酸性アルコールLが貯留され、当該酸性アルコールLに薬液供給管43の一端が浸されている。この薬液供給管43の他端は液供給機器系44を介して薬液ノズル41に接続されている。
【0024】
また、酸性アルコール貯留タンク51にはその上部より、加圧用ガス供給管61の一端側が貯留されている酸性アルコールLに接触しない位置に突入する形で設けられている。また、加圧用ガス供給管61の他端側はバルブや流量調整部で構成されるガス供給機器系62を介してガス供給源63に接続されている。このガス供給源63は、不活性ガスであるアルゴンArを酸性アルコール貯留タンク51へ供給し、当該酸性アルコール貯留タンク51内を加圧することによって、酸性アルコールLを薬液供給管43を介して薬液ノズル41へ押し出す役割を持つものである。前記ガス供給機器系62は後述する制御部100により制御されており、ガス供給源63より流れ出るガスの流量等を調整することができる。
【0025】
また、酸性アルコール貯留タンク51には、酸化還元電位(ORP)測定器からなる酸性度モニタ64が設けられている。この酸性度モニタ64の先端部位は検出部65であり、酸性アルコールLに浸された状態で、酸性アルコールLの酸化還元電位を測定する。この測定された結果は、制御部100へ信号として送信され、当該制御部100はその信号に基づいてpH値を演算する。
【0026】
また、酸性アルコール貯留タンク51には、その上部より酸性溶液供給管66の一端が、突入して設けられており、酸性溶液供給管66の他端は、バルブV1を介して酸性溶液貯留タンク71へ接続され、後述の酸性溶液Eへ浸されている。前記バルブV1の開閉は、後述する制御部100により制御されている。
【0027】
前記酸性溶液貯留タンク71には、酸性溶液Eが貯留されている。この酸性溶液Eは、酸性溶液供給管66を介して酸性アルコール貯留タンク51へ流入し、酸性アルコールLの酸性度を高める役割を有する。当該酸性溶液Eとしては、トリフェニルスルホニウム塩((C6H5)S+CF3SO3-)、o-ニトロベンジルエステル(NO2(C6H5)CH2S2Ar)やトリフルオロメタンスルホン酸(CF3SO3H)等が用いられる。また、酸性溶液貯留タンク71には、加圧用ガス供給管72の一端が接続されており、この加圧用ガス供給管72の一端は酸性溶液Eに接触しない構成を取っている。また、加圧用ガス供給管72の他端は、バルブや流量調整部等で構成されるガス供給機器系73を介してガス供給源74に接続されている。このガス供給源74は、不活性ガスであるアルゴンArを酸性溶液貯留タンク71へ供給し、当該酸性溶液貯留タンク71内を加圧することによって、酸性溶液Eを酸性溶液供給管66を介して酸性アルコール貯留タンク51へ押し出す役割を持つものである。前記ガス供給機器系73は、後述する制御部100に制御され、ガス供給源74より供給されるガスの流量等を調節することができる。
【0028】
制御部100は、例えばプログラム格納部を有したコンピュータであり、当該プログラム格納部にはウエハWへのレジスト塗布及び現像処理等が行えるように命令が組み込まれたプログラムが収納されている。このプログラムが制御部100に読み出されることによって、各搬送手段、各供給機器系、各処理モジュール内での処理が制御される構成を取っている。当該プログラムは、例えば、フレキシブルディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスクまたはメモリーカード等の記憶媒体を介してコンピュータへインストールされる。
【0029】
塗布、現像装置のオペレータは、コンピュータの入力画面より、酸性アルコールLのpH値の範囲を設定でき、制御部100はこの設定されたpH値の範囲に、酸性度モニター64を用いて、観測している酸性アルコールLのpH値が収まっているか否かを判別することができる。この実施形態では、pH値の範囲は例えばpH4〜6に設定される。これは、レジスト表面の親水性を高め、残渣の除去効率を上昇させ、かつ形成されるレジストパターンに悪影響を与えないようにするためである。
【0030】
制御部100は、pH値が設定範囲より大きいと判定したときには、バルブV1及びガス供給機器系73に制御信号を送り、酸性溶液貯留タンク71内の酸性溶液Eを酸性アルコール貯留タンク51へ供給し、酸性アルコールLの酸性度が設定範囲内となるように構成されている。また、制御部100は、pH値が設定範囲より小さいと判定したときには、例えば図示しないアラーム発生手段に信号を送り、アラームを発生させる構成を取っている。
【0031】
本発明の実施形態に係る塗布、現像装置の作用を図6及び7を用いて説明する。ウエハWを収納したキャリアCが、載置部11に載置され、開閉部13に接続される。この開閉部13を介して、ウエハWは受け渡しアームA1より取り出され、棚ユニットU1の受け渡しモジュールTRSを介してメインアームA2へ受け渡される。当該ウエハWはメインアームA2を介して以下に述べる各モジュールに搬送される。先ず、ウエハWは棚ユニットU1の図示しない疎水化処理モジュールADHに搬送され、疎水化処理される。その後、ウエハWは棚ユニットU1の冷却ユニットCPLに搬送され、冷却処理される。次に、ウエハWは液処理ユニット4の塗布モジュールCOTに搬送され、レジストの塗布処理が行われ、その表面にレジスト膜が形成される。なお、化学増幅型のレジストを用いる場合には、前記疎水化処理の代わりに液処理ユニット4の反射防止膜ユニットBARCにて反射防止膜の形成処理が行われる。
【0032】
次に、ウエハWの露光装置までの搬送及び処理される経路は、図3においてPAB→CPL2→TRS2→メインアームA3→TRS3→第1のIFアームA4→BM→棚ユニットU6に設けられた高精度温調ユニット→第2のIFアームA5→搬入ステージ23となる。こうしてレジスト膜の形成に関連する一連の処理・搬送が行われる(ステップS1)。その後、ウエハWは、図示しない露光装置B4内の所定の場所にてドライ露光処理される(ステップS2)。続いて、露光処理されたウエハWは、搬出ステージ24に載置され、第2のIFアームA5を介して第1搬送室21の薬液リンスモジュール3に搬送される。
【0033】
ウエハWは搬出入口33を通り、上昇して待機しているスピンチャック34の上へメインアームA3により載置され、前記スピンチャック34は所定の位置まで下降する。次に、ウエハWは駆動部35がスピンチャック34を回転することによって、鉛直軸回りに回転する。続いて、薬液ノズル41は、図示しない待機場所よりウエハW上の中央部へ移動し、当該ウエハWへ酸性アルコールLを供給する(ステップS3)。この酸性アルコールLは、ウエハWの回転による遠心力により中心部から周縁部へ広げられる。このとき薬液が仮に酸性溶液のみであれば、レジスト膜Rの表層が溶解して膜減りが大きくなってしまうが、アルコールが含まれていることから溶解作用が抑えられる。そして、酸性アルコールL中の水素イオンHがレジスト膜Rの表層に浸透し(図7(a)参照)、後の現像液の供給によりレジスト膜Rの表層部分の不溶解成分Pを除去する作用に寄与することとなる。一方アルコールがレジスト膜Rに供給されていることからレジスト膜Rの水の接触角が小さくなり、後の現像工程時において洗浄効果を高める役割を果たすこととなる。その後、ウエハWへの酸性アルコールLの供給が停止し、しばらくの間、ウエハWは回転し続け、乾燥される。この乾燥後、ウエハWの回転は停止し、当該ウエハWはメインアームA3により薬液リンスモジュール3から搬送される。
【0034】
その後、ウエハWは棚ユニットU3の加熱モジュールPEBへ搬送され、加熱処理される(ステップS4)。この加熱処理によって、露光時に発生したレジスト(化学増幅型レジスト)膜中の酸(H+)が連鎖的に拡散して例えば現像液に対して溶解性になる。(図7(b)参照)。次に、ウエハWは棚ユニットU3の現像モジュールDEVへ搬送され、現像液が供給されることでレジストパターンが形成される(ステップS5)。このとき、レジスト膜Rの表層は酸性アルコールLの供給に起因して酸(H+)が広がっており、この酸により当該表層部分である低分子層が溶解され、その結果、不溶解成分も溶解して消失する。従って、現像液により露光部分が溶解したときにウエハWの表面上においては、酸性アルコールLの供給プロセスを行わない場合に比べて不溶解成分Pが低減した状態となる。続いて、ウエハWを回転させながらその表面に純水が供給されて、現像液が洗い流される。レジスト膜Rの表面はアルコールにより既に接触角が小さくなっているため、図11(b)に示すように純水の分離が起こりにくく、残留している不溶解成分Pなどが円滑に除去されていく。続いて純水の供給を止め、スピン乾燥処理がなされる(ステップS6、図7(d))。
【0035】
その後の、ウエハWの搬送及び処理経路は、メインアームA3→POST→メインアームA2→CPL4→受け渡しアームA1→キャリアCとなる。メインアームA2、A3では、1サイクルの中で定められた順序でユニット間の搬送を行い、1サイクルが終了すると次のサイクルに移るサイクル搬送制御が行われている。これに対して第1IFアームA4及び第2IFアームA5は、メインアームA2、A3に対して非同期で搬送を行う。
【0036】
本発明の実施形態に係る塗布、現像装置によれば、ウエハWに形成されたレジスト膜Rを露光処理した後に、当該レジスト膜Rへ酸性アルコールLを供給している。このため既に詳述したように現像液をレジスト膜Rに供給したときに不溶解成分Pも含めて表層部分が溶解し、不溶解成分Pが低減する。そして、アルコールによりレジスト膜Rの表面の接触角が小さくなっていることも加わって不溶解成分Pが排出されやすくなり、その結果、不溶解成分Pに起因する現像欠陥を低減できる。また、未露光部に不溶解成分Pが残存することも抑えられるので、後の検査工程で欠陥として取り扱われることが防止される。
【0037】
また、他の実施形態として前記酸性アルコールLの処理(ステップS3)を加熱処理(ステップS4)後、現像処理(ステップS5)前に行ってもよい。この場合では酸性アルコールLによる処理後、すぐに現像処理が行えるように例えば薬液リンスモジュール3を現像モジュールDEVと組み合わせること、即ち現像モジュールに薬液ノズル及び薬液供給ライン等を設け、薬液処理に用いるカップやスピンチャックについては現像モジュールの部材を利用することが好ましい。このような実施形態について図8を参照しながら述べる。なお、薬液リンスモジュール3の各部と同一に構成された部分については、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0038】
この構成の場合では、同一のモジュール内にて酸性アルコールLの供給と、現像後の純水リンスによる洗浄が行われるため、有機溶媒である酸性アルコールLと純水リンスを分離して廃液することが望ましい。そこで、当該現像モジュール(DEV)では、第1カップ81、第2カップ82、第3カップ83に分かれたカップ体80を用い、前記第1カップ81と第2カップ82とで囲まれる環状の空間を、純水リンスが流れる水溶液廃液流路84として使用し、また、第2カップ82と第3カップ83とで囲まれる環状の空間を、酸性アルコールLが流れる有機溶媒廃液流路85として使用することで、水溶液と有機溶媒を分離して廃液することが可能となる。
【0039】
前記水溶液廃液流路84の下端には第1水溶液廃液管86aの一端が接続され、第1水溶液廃液管86aの他端は第2水溶液廃液管86bに嵌合されている。この第2水溶液廃液管86bの下端は、気液分離部87aに接続され、この気液分離部87aに第3水溶液廃液管86c及び排気管88aが接続しており、気液の分離を行うことができる。また、有機溶媒廃液流路85の下端には第1有機溶媒廃液管89aの一端が接続され、第1有機溶媒廃液管89aの他端は第2有機溶媒廃液管89bに嵌合されている。この第2有機溶媒廃液管89bの下端は、気液分離部87bに接続され、この気液分離部87bには、さらに、第3有機溶媒廃液管89c及び排気管88bが接続されている。2つの排気管88a、88bは下流にて合流し、1つの排気管88を構成する。
【0040】
前記カップ体80は、昇降機構90により昇降可能に構成されている。純水リンス処理が行われるときは、第2カップ82の高さとスピンチャック34に保持されたウエハWの高さとが同じになるように、カップ体80の高さが調整され、これにより、純水リンスを水溶液廃液流路84へ流すことができる。また、酸性アルコールLの供給が行われるときには、第3カップ83の高さとウエハWの高さとが同じになるように、カップ体80の高さが調整され、これにより、酸性アルコールLを有機溶媒流路85へ流すことができる。なお、第1水溶液廃液管86a及び第2水溶液廃液管86b、第1有機溶媒廃液管89a及び第2有機溶媒廃液管89bはそれぞれ嵌合しているため、カップ体80の昇降に対応することが可能である。
【0041】
図中91は現像液ノズルであり、図示しない現像液供給源より現像液が供給されて、ウエハWへ現像液を吐出することができる。図中92は純水ノズルであり、図示しない純水リンス供給源より純水リンスが供給され、ウエハWへ純水リンスを吐出して現像液を洗い流す役割を持っている。
【0042】
また、前述のドライ露光に変えて液浸露光を行うときは、一般的に露光処理後に図示しない専用の純水リンスモジュールにて洗浄が行われるが、この純水リンスモジュールと薬液リンスモジュール3とを前述の現像装置の場合と同様に一つのモジュールとし、一連のレジストパターン形成処理を行ってもよい。この場合でも、水溶液と有機溶媒を分離して廃液する構成を取るものとする。
【0043】
以上において、現像処理の前にウエハWに供給する薬液としては酸性溶液を含まないアルコールであっても現像欠陥の効果が得られる。即ちアルコールをレジスト膜Rに供給するとレジスト膜Rの水の接触角が小さくなる働きがあり、またアルコール供給時にレジスト膜Rの表層がわずかに除去されることから、不溶解成分Pを低減できる作用もあり、その結果本発明の効果が得られる。
【実施例】
【0044】
従来の通り塗布、現像処理を行ったウエハWを比較例とし、加熱処理前にアルコールリンス処理を行ったウエハWを実施例1とし、加熱処理前に酸性アルコールLによる処理を行ったウエハWを実施例2とする。そして、各ウエハWについて、レジスト塗布後、薬液リンス後、現像後の各段階における水の接触角と、現像後の膜減り量と、現像後の欠陥数を調べた。図9の縦軸は純水に対する接触角であり、図10の縦軸は現像後の膜減り量である。なお、前記欠陥数は図9に各ウエハWに対応して示してある。アルコールリンスには4−メチルー2ペンタノールを使用し、酸性アルコールLには4−メチルー2ペンタノールに酸性の液を加えたものを使用した。
【0045】
比較例では、現像欠陥は56736個、接触角はレジスト塗布後及び現像処理後共に93°であり、膜減り量は0.25nmであった。実施例1では、現像欠陥は32949個、接触角はアルコールリンス後は74°、現像処理後は71°であり、膜減り量は0.88nmであった。従って、アルコールリンスを行うことにより現像欠陥が比較例と比べ約24000個減少している。また、アルコールリンスを行った場合、接触角はレジスト後と比べ約20°低下し、膜減り量は約0.6nm増大していることが分かる。一般的なArF/KrFレジストの表面にはPAG・クエンチャ・添加剤といった様々な現像残渣因子になりうる成分が存在している可能性があり、アルコールリンス処理を行うことで、現像残渣因子成分の一部が除去されることになる。
【0046】
次に実施例2では、現像欠陥は8個、接触角は酸性アルコールリンス後は60°、現像処理後は61°であり、膜減り量は6.87nmであった。従って、現像欠陥は比較例、実施例1に比べ大幅に減少している。また、酸性アルコールリンスを行った場合、接触角はレジスト塗布後に比べ約30°低下し、膜減り量は大幅に増加した。以上のことより、加熱処理前にアルコールリンスで洗浄することによって、接触角を低下させることができ、現像欠陥を減らすことができる。さらに、酸性のアルコールリンスを行うことによってその効果を増大させることができ、膜減り量に関しては比較例、実施例1に比べ大幅に増大している。
【0047】
また、比較例では接触角が大きいため、図11(a)に示すように現像後の純水リンスWLが下地101上またはレジスト膜R上にて液分離が起こる。このため、局所的に存在する純水リンスWLが乾燥することによって、レジストパターンの欠陥となっていることが分かる。実施例1及び実施例2では、接触角が小さくなるため、図11(b)に示すように現像後の純水リンスWLが下地101上に広がり液分離が抑えられる。このため、乾燥工程で純水リンスWLが局所的に乾燥することを避けることができ、欠陥が少なくなることが分かる。
【0048】
次に、純水リンス(リンスA)と現像欠陥の低減を目的としたリンス洗浄を最適化したリンス(リンスB)による現像欠陥の除去効率の比較実験を行った。現像処理前に酸性アルコールLによる処理が行われたウエハWと酸性アルコールLによる処理が行われていないウエハWに分けて記載する。
[酸性アルコールLによる処理が行われていないウエハW]
図12(a)は、現像後にリンスAでウエハWを洗浄したものであり、黒点で表される現像欠陥の数は58464個であった。図12(b)は、現像後にリンスBでウエハWを洗浄したものであり、現像欠陥は3844個であった。このことより、リンスBの現像欠陥の除去効率は約93%であることが分かる。
[酸性アルコールLによる処理が行われたウエハW]
図12(c)は現像後にリンスAでウエハWを洗浄したものであり、現像欠陥は26816個であった。図12(a)との現像欠陥の差は約21000個であり、大幅に欠陥が改善されている。また、図12(d)は現像後にリンスBでウエハWを洗浄したものであり、現像欠陥は644個であった。図12(b)との現像欠陥の差は約3000個であり、欠陥数が改善されていることが分かる。また、リンスBによる現像欠陥の除去効率は約98%であり、現像前にウエハWが酸性アルコールLによる処理が行われることにより除去効率が上昇していることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態に係る塗布、現像装置の平面図である。
【図2】前記塗布、現像装置の斜視図である。
【図3】前記塗布、現像装置の側面図である。
【図4】前記塗布、現像装置に内蔵される薬液リンスモジュールの縦断側面図である。
【図5】前記薬液リンスモジュールに接続される酸性アルコール供給部の構成を模式的に示したものである。
【図6】前記塗布、現像装置により行われる処理の流れを示した図である。
【図7】前記塗布、現像装置により行われる処理に伴って変化するレジストの様子を模式的に示したものである。
【図8】他の実施の形態に係る薬液リンスモジュールの縦断側面図である。
【図9】実施例、比較例で測定されたウエハの接触角を示すグラフである。
【図10】実施例、比較例で測定されたレジストの膜減り量を示すグラフである。
【図11】純水リンス処理された直後のウエハの縦断面図である。
【図12】実験にて測定された現像欠陥の発生量を示す図である。
【図13】従来の塗布・現像方法により処理されるウエハ上のレジスト膜の様子を模式的に示したものである。
【符号の説明】
【0050】
W ウエハ
R レジスト
P 不溶解成分
L 酸性アルコール
COT レジスト塗布モジュール
PEV 加熱モジュール
DEV 現像モジュール
3 薬液リンスモジュール
41 薬液ノズル
51 酸性アルコール貯留タンク
71 酸性溶液貯留タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面にレジスト液を塗布してレジスト膜を形成する工程と、
レジスト膜が形成された基板の表面を露光する工程と、
露光処理された基板の表面に、アルコールを供給して、当該表面を洗浄する洗浄工程と、
その後、基板の表面に現像液を供給して、レジストパターンを形成する現像工程と、を備えたことを特徴とする塗布、現像方法。
【請求項2】
前記アルコールは酸と混合されて供給されることを特徴とする請求項1に記載の塗布、現像方法。
【請求項3】
露光された基板を現像工程の前に加熱処理する加熱工程を含み、
前記洗浄工程は、前記加熱工程の前に行われることを特徴とする請求項1または2に記載の塗布、現像方法。
【請求項4】
露光された基板を現像工程の前に加熱処理する加熱工程を含み、
前記洗浄工程は、前記加熱工程の後に行われることを特徴とする請求項1または2に記載の塗布、現像方法。
【請求項5】
基板の表面にレジスト液を塗布する塗布モジュールと、レジスト膜が形成され、露光された基板を現像する現像モジュールと、を備えた塗布、現像装置において、
基板保持部とこの基板保持部に保持された基板の表面を洗浄するためにアルコールを吐出する洗浄ノズルとを有する洗浄モジュールと、
露光された基板に対して現像モジュールにて現像が行なわれる前に前記洗浄モジュールにて洗浄を行うように制御信号を出力する制御部と、を備えたことを特徴とする塗布、現像装置。
【請求項6】
前記洗浄ノズルからアルコールを酸に混合した薬液を前記基板の表面に吐出するための薬液供給系を備えたことを特徴とする請求項5に記載の塗布、現像装置。
【請求項7】
露光された基板を現像する前に加熱処理する加熱モジュールを備え、
前記制御部は、露光された基板に対して、前記加熱モジュールに搬入する前に洗浄モジュールにて洗浄を行なうように制御信号を出力することを特徴とする請求項5または6に記載の塗布、現像装置。
【請求項8】
露光された基板を現像する前に加熱処理する加熱モジュールを備え、
前記制御部は、露光された基板に対して、前記加熱モジュールにて加熱処理された後に洗浄モジュールにて洗浄を行なうように制御信号を出力することを特徴とする請求項5または6に記載の塗布、現像装置。
【請求項9】
前記洗浄モジュールにおける基板保持部は、現像モジュールにおける基板保持部を兼用していることを特徴とする請求項5または6に記載の塗布、現像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−44233(P2010−44233A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208452(P2008−208452)
【出願日】平成20年8月13日(2008.8.13)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】