説明

塗布方法及び装置

【課題】 超音波振動を与えることにより被塗工材に対する塗工液の塗布が均一に行える塗布方法及び装置を得る。
【解決手段】 モータ6で回転させるバックアップロール1の回転軸3の一端に該バックアップロール1に超音波振動を与える超音波振動子15を接続し、バックアップロール1の回転軸3の他端に超音波振動を遮断または減衰させるカップリング19を介してモータ6の出力軸7を接続し、バックアップロール1に超音波振動を与えてバックアップロール1を超音波振動させることにより、バックアップロール1に接する被塗工材2を介して被塗工材2に接する塗工液9と被塗工材2との界面20a,20bに微細振動を与えつつ塗工液9を被塗工材2の面に塗布する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、金属板、紙、プラスチックフィルム、ガラス、繊維、ゴム、木材等のシート状あるいはウエブ状の被塗工材に各種の液状物質からなる塗工液を塗布する塗布方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ウエブ状の被塗工材に塗工液を塗布する塗布装置としては、ロールコータ、ナイフコーター、グラビアコーター、ダイコーター、エクストルージョンコーター、ロッドコータおよびブレードコーター等の各種の装置がよく知られている。
【0003】
これらの塗布装置は塗工液を被塗工材に塗布する工程において上記の塗布装置の機械的な設計製作精度や塗工液の組成さらには液物性や被塗工材の性状や品質的なバラツキなど諸要因により発生する塗布工程上の問題や、多種多様な高度機能を要求する製品に対応するべく分離や沈降や凝集などの発生し易いフィラーを含有した塗工液を塗布する場合の問題を改善するべく各種の工夫が施されてきた。
【0004】
本出願人は、この種の塗布装置による塗布状態を改善するために、本出願前に塗布装置に超音波振動子を取り付けて塗布装置を強制的に振動させ、塗布装置を構成する個体装置と塗工液とが接する界面に個体装置を伝播する振動を指向させる機構とし、界面に微細な振動運動を起こさせることにより塗工液の流動を円滑化し、良好な塗布状態が得られる塗布装置を提案した(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2006−224093号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献で開示されている塗布装置によれば、超音波振動による塗工液の流動が円滑となり塗布状態の改善はみられるものの、塗布装置本体に超音波振動を連続して発現するにはより大きな超音波出力が必要となり、この結果、超音波振動による振動変位が期待値以上に大きくなり界面での微細振動が発生せず過大な気泡の発生や発熱を引き起こすおそれがあることがわかった。また、塗布装置を超音波振動が励起しやすい構造にするのは構造設計上の制約が多く、安定した超音波振動を得ることが難しいといったこと、さらにはまた、塗布装置の構成部品を支持体に固定するボルトなど締結の強さによって超音波振動の励振が不安定となり超音波振動が発現しない場合があるといった問題があることがわかった。
【0006】
本発明者は、これらの問題を解決すべく試験研究を重ねた結果、ウエブ状の被塗工材の搬送路を構成するバックアップロールを超音波振動させることに着目し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明の目的は、超音波振動を与えることにより被塗工材に対する塗工液の塗布が均一に行える塗布方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために請求項1に記載の発明は、回転するバックアップロールを備えて前記バックアップロールの外周面に被塗工材を沿わせて走行させつつ塗工液を前記被塗工材の面に塗布する塗布装置のいずれかの部分を強制的に振動させて前記塗工液が前記被塗工材に接する界面に振動運動を発現させる塗布方法であって、前記バックアップロールに超音波振動を与えて前記バックアップロールを超音波振動させることにより、前記バックアップロールに接する前記被塗工材を介して該被塗工材に接する前記塗工液と前記被塗工材との界面に微細振動を与えつつ前記塗工液を前記被塗工材の面に塗布することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の、前記バックアップロールに超音波振動を与える方向は前記バックアップロールの軸方向であることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、モータで回転させるバックアップロールを備えて前記バックアップロールの外周面に被塗工材を沿わせて走行させつつ塗工液を前記被塗工材の面に塗布する塗布装置のいずれかの部分を強制的に振動させて前記塗工液が前記被塗工材に接する界面に振動運動を発現させる塗布装置であって、前記バックアップロールの回転軸の一端に該バックアップロールに超音波振動を与える超音波振動子が接続され、前記バックアップロールの回転軸の他端に前記超音波振動を遮断または減衰させるカップリングを介して前記モータの出力軸が接続されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の、前記超音波振動子は、前記バックアップロールの軸方向に超音波振動を与える構造であることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載の、前記バックアップロールの前記回転軸と一緒に回転する前記超音波振動子は、前記回転軸に支持されたスリップリングを介して固定側の超音波発信器に電気的に接続されていることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項3または4に記載の、前記カップリングは、非金属を介して接続される構造であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の塗布方法によれば、前記バックアップロールに超音波振動を与えて前記バックアップロールを超音波振動させることにより、前記バックアップロールに接する前記被塗工材を介して該被塗工材に接する前記塗工液と前記被塗工材との界面に微細振動を与えつつ前記塗工液を前記被塗工材の面に塗布するので、前記バックアップロールの超音波振動により前記被塗工材がその幅方向の全体に一様に超音波振動し、少なくとも前記被塗工材に接する部分の前記塗工液の表面が一様に撹拌状態になり、前記被塗工材に接する部分の前記塗工液が滞留しなくなり、前記塗工液の塗布を一様な厚みで均一に行うことができる。
【0015】
また、超音波振動は前記バックアップロールにだけ与えるから、従来の塗布装置本体に超音波振動を与えるものに比べ超音波出力が小さくてすみ、超音波振動による振動変位が大きくならず、界面での微細振動を確実に発生させることができ、過大な気泡の発生や発熱といった事態は生じない。また、前記バックアップロールの支持構造は、前記バックアップロールの振動に影響を与える構造とはなっていないので、前記バックアップロールに安定した超音波振動の発現を得ることができる。
【0016】
請求項2に記載の塗布方法によれば、請求項1に記載の、前記バックアップロールに超音波振動を与える方向が前記バックアップロールの軸方向であるので、前記バックアップロールの軸方向に一様に超音波振動を与えることができ、前記バックアップロールの軸方向の各部分に均一な超音波振動が得られる。
【0017】
請求項3に記載の塗布装置によれば、前記バックアップロールの回転軸の一端に該バックアップロールに超音波振動を与える超音波振動子が接続されているので、前記バックアップロールの超音波振動により前記被塗工材がその幅方向の全体に一様に超音波振動し、少なくとも前記被塗工材に接する部分の前記塗工液の表面が一様に撹拌状態になり、前記被塗工材に接する部分の前記塗工液が滞留しなくなり、前記塗工液の塗布を一様な厚みで均一に行うことができる。また、前記バックアップロールの回転軸の他端に前記超音波振動を遮断または減衰させるカップリングを介して前記モータの出力軸が接続されているので、前記バックアップロールの超音波振動が前記モータの出力軸から散逸することが防止され、前記バックアップロールに安定した超音波振動の発現を得ることができる。
【0018】
また、超音波振動は前記バックアップロールにだけ与えるから、従来の塗布装置本体に超音波振動を与えるものに比べ超音波出力が小さくてすみ、超音波振動による振動変位が大きくならず、界面での微細振動を確実に発生させることができ、過大な気泡の発生や発熱といった事態は生じない。また、前記超音波振動子の負荷も軽減されることから、前記超音波振動子として従来に比べて小型のものを使用することができる。また、前記バックアップロールの支持構造は、前記バックアップロールの振動に影響を与える構造とはなっていないので、前記バックアップロールに安定した超音波振動の発現を得ることができる。
【0019】
請求項4に記載の塗布装置によれば、請求項3に記載の、前記超音波振動子が、前記バックアップロールの軸方向に超音波振動を与える構造であるので、前記バックアップロールの軸方向に一様に超音波振動を与えることができ、前記バックアップロールの軸方向の各部分に均一な超音波振動が得られる。
【0020】
請求項5に記載の塗布装置によれば、請求項3または4に記載の、前記バックアップロールの前記回転軸と一緒に回転する前記超音波振動子は、前記回転軸に支持されたスリップリングを介して固定側の超音波発信器に電気的に接続されているので、前記バックアップロールの前記回転軸と一緒に回転する超音波振動子に電気信号を支障なく与えることができる。
【0021】
請求項6に記載の塗布装置によれば、請求項3または4に記載の、前記カップリングは、非金属を介して接続される構造であるので、前記カップリングの機械的連結と超音波振動の遮断または減衰を良好に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る塗布方法及び装置を実施するための最良の形態を、図面に示す実施例により詳細に説明する。
【0023】
図1及び図2は本発明に係る塗布装置の第1実施例を示したもので、図1は本実施例の塗布装置の要部概略断面図、図2は図1の概略正面図である。
【0024】
本実施例の塗布装置は、バックアップロールで支持した被塗工材に塗工液を直接塗布する塗布装置に本発明を適用したものである。
【0025】
本実施例の塗布装置では、バックアップロール1の外周面の周方向の一部に被塗工材2を沿わせて走行させるようになっている。被塗工材2としては、例えば、金属板、紙、プラスチックフィルム、ガラス、繊維、ゴム、木材等のシート状あるいはウエブ状のものである。バックアップロール1は、その中心の回転軸3の両端が軸受4,5で回転自在に支持されている。バックアップロール1の回転軸3はモータ6の出力軸7の回転力が与えられて回転駆動されるようになっている。モータ6の出力軸7は軸受8で回転自在に支持されている。バックアップロール1の下面の外周に沿わされている被塗工材2の下側には、塗工液9を供給する塗工装置基体10が配置されている。塗工装置基体10は内部に塗工液収容室11が形成され、その上には塗工液収容室11に連通してスリット12が末広がりに形成されている。スリット12の上端の幅は、被塗工材2の幅より広く形成されている。塗工液9は塗工液収容タンク28に収容されていて、定量ポンプ13で逐次一定量が配管14を経て塗工液収容室11に送液されるようになっている。
【0026】
バックアップロール1の回転軸3の一端には、該バックアップロール1に超音波振動を与えるホーン形の超音波振動子15が接続されている。このため超音波振動子15は、バックアップロール1の回転軸3と一緒に回転するようになっている。本例の超音波振動子15は、バックアップロール1の回転中、連続して該バックアップロール1の軸方向に超音波振動を与える構造になっている。バックアップロール1の回転軸3と一緒に回転する超音波振動子15は、回転軸3に支持されたスリップリング16を介して固定側の超音波発信器17に電気ケーブル18で電気的に接続されている。
【0027】
バックアップロール1の回転軸3の他端には接続軸3aが回転軸3と一体に形成され、接続軸3aに、超音波振動を遮断または減衰させる連結機構としてのカップリング19を介してモータ6の出力軸7が接続されている。
【0028】
カップリング19は、ポリエチレン等の非金属を介して接続される構造である。ポリエチレンをカップリング19の材料として用いる場合は、例えば厚さ5mmにして回転軸3の他端の接続軸3aとモータ6の出力軸7の間に挟んで固定することにより形成されている。カップリング19の材料は、この他に、例えば、テトラフルオロエチレン、ナイロン、塩化ビニール、ポリプロピレン等のプラスチック材料や、紙、木材、竹、布、皮革、合成繊維、合成皮革等の材料も使用することができる。
【0029】
次に、このような塗布装置による被塗工材2に対する塗工液9の塗布方法について説明する。被塗工材2は、モータ6で回転するバックアップロール1の外周面の周方向の下面に沿わせて連続的に走行させる。塗工液収容タンク28に収容した塗工液9は、定量ポンプ13で逐次一定量を配管14を経て塗工装置基体10内の塗工液収容室11に送液する。塗工液収容室11内の塗工液9は、末広がりのスリット12を経てバックアップロール1の下面の被塗工材2に接触するようになっている。バックアップロール1の回転中、該バックアップロール1に超音波振動子15によりバックアップロール1の軸方向に,換言すればバックアップロール1の長手方向に、連続して超音波振動を与える。超音波振動子15には、固定側の超音波発信器17から電気ケーブル18を経て、回転軸3に支持されたスリップリング16を介して電気信号を与える。
【0030】
スリット12から供給される塗工液9は、バックアップロール1の下面の被塗工材2との間で界面20a,20bを形成する。この状態でバックアップロール1を超音波振動させることにより、バックアップロール1に接する被塗工材2を介して該被塗工材2に接する塗工液9と被塗工材2との界面20a,20bに微細振動を与えつつ塗工液9を被塗工材2の面に塗布層21として塗布する。本例では、超音波振動子15が、バックアップロール1の軸方向に超音波振動を与えて、バックアップロール1の軸方向に一様に超音波振動を与える。このようにバックアップロール1の軸方向に一様に超音波振動を与えると、バックアップロール1の軸方向の各部分に均一な超音波振動が得られる。
【0031】
このようにすると、バックアップロール1の超音波振動により被塗工材2がその幅方向の全体に一様に超音波振動し、少なくとも被塗工材2に接する部分の塗工液9の表面が一様に撹拌状態になり、被塗工材2に接する部分の塗工液9が滞留しなくなり、塗工液9の塗布を一様な厚みで均一に行うことができる。
【0032】
バックアップロール1の回転軸3と一緒に回転する超音波振動子15は、回転軸3に支持されたスリップリング16を介して固定側の超音波発信器17に電気的に接続されているので、バックアップロール1の回転軸3と一緒に回転する超音波振動子15に電気信号を支障なく与えることができる。
【0033】
バックアップロール1の回転軸3の他端の接続軸3aには、超音波振動を遮断または減衰させるカップリング19を介してモータ6の出力軸7が接続されているので、バックアップロール1の超音波振動がモータ6の出力軸7から散逸することが防止され、バックアップロール1に安定した超音波振動の発現を得ることができる。また、超音波振動はバックアップロール1にだけ与えるから、超音波振動子15として従来に比べて小型のものを使用することができる。また、モータ6の出力軸7をバックアップロール1の回転軸3から切り離すカップリング19は、非金属を介して接続される構造であるので、カップリング19の機械的連結と超音波振動の遮断または減衰を良好に行うことができる。
【0034】
図3は本発明に係る塗布装置の第2実施例を示した要部概略断面図である。なお、第1実施例と、対応する部分には同一符号を付けて示している。
【0035】
本実施例の塗布装置は、グラビアコータに本発明を適用したものである。本実施例の塗布装置は、上側に存在するバックアップロール1側の構成は、第1実施例と同様になっている。バックアップロール1の下面の外周に沿わされている被塗工材2の下側には、グラビアロール22の外周が接触して配置されている。このグラビアロール22は、モータの如き図示しない駆動手段で回転駆動されるようになっている。グラビアロール22の下部は、塗工液溜め23内の塗工液9に浸けられている。グラビアロール22の外周に付着した塗工液9は、ドクター装置24で過剰なものがそぎ落とされて計量され、適正な量の塗工液9が塗布層21として被塗工材2に塗布されるようになっている。
【0036】
このような構成の塗布装置も、第1実施例と同様の効果を得ることができる。
【0037】
図4は本発明に係る塗布装置の第3実施例を示した要部概略断面図である。なお、第1実施例と、対応する部分には同一符号を付けて示している。
【0038】
本実施例の塗布装置は、ナイフコータに本発明を適用したものである。本実施例の塗布装置は、バックアップロール1側の構成は、第1実施例と同様になっている。ただし、被塗工材2はバックアップロール1に対してその下側から水平に入り、外周の半部を回って、上側から水平に出て行くようになっている。
【0039】
本例では、被塗工材2を回転保持するバックアップロール1と堰板25とナイフ26で構成される液溜め27に塗工液9を保持し、バックアップロール1に保持された被塗工材2とナイフ26の先端との間に形成された間隙で、塗工液9を計量し、走行する被塗工材2の面に塗布層21として塗布するようになっている。
【0040】
このような構成の塗布装置も、第1実施例と同様の効果を得ることができる。
【0041】
図5乃至図9は、それぞれカップリング19の構成の一例及びその周辺を示した概略断面図である。
【0042】
図5に示すカップリング19は、非金属で板状となったカップリング部19aで形成されていて、バックアップロール1の回転軸3の他端の接続軸3aとモータ6の出力軸7の間に挿入され、それぞれに固定されている。カップリング部19aの材料は、第1実施例と同様である。カップリング部19aの厚さは0.5mm以上が好ましく、2mmから20mmが好適であるが、これらの値に制約されるものではない。
【0043】
図6に示すカップリング19は、非金属で筒状となったカップリング部19bで形成されていて、バックアップロール1の回転軸3の他端の接続軸3aとモータ6の出力軸7の対向する両端に嵌められ、それぞれに固定されている。カップリング部19bの材料は、第1実施例と同様である。バックアップロール1の回転軸3の他端の接続軸3aとモータ6の出力軸7の対向する両端間には間隙Lが形成されている。間隙Lは、0.5mm以上が好ましく、2mmから20mmが好適であるが、これらの値に制約されるものではない。
【0044】
図7に示すカップリング19は、図6に示すカップリング19のバックアップロール1の回転軸3の他端の接続軸3aとモータ6の出力軸7の対向する両端間の間隙Lにカップリング部19cを挿入しており、カップリング部19cとカップリング部19bとでカップリング19を構成している。カップリング部19cの材料は、第1実施例と同様である。
【0045】
図8に示すカップリング19は、非金属で環状となったカップリング部19dで構成されていて、バックアップロール1の回転軸3の他端の接続軸3aとモータ6の出力軸7の間に挿入され、それぞれに固定されている。カップリング部19dは、円形、楕円形、箱形等の環構造になっている。カップリング部19dの材料は、第1実施例と同様である。
【0046】
図9に示すカップリング19は、非金属で門型状のカップリング部19eで構成されていて、バックアップロール1の回転軸3の他端の接続軸3aとモータ6の出力軸7の間に挿入され、それぞれに固定されている。カップリング部19eはの材料は、第1実施例と同様である。
【0047】
なお、カップリング19の構造は、上記例に限定されるものではない。
【実施例】
【0048】
[実施例1]
本発明に基づき図1、図2において、バックアップロール1として直径120mm、有効面長300mmのクローム鍍金表面仕上げの厚さ10mm中空ステンレスロールを使用し、そして、カップリング19は、ポリエチレンを材料とした厚さ5mmの板状のカップリング部19aで形成された図5に示すカップリング19を使用し、超音波発信器17(多賀電気製PS−250型出力28KHZ)から電気ケーブル13とスリップリング16を介して電気信号をバックアップロール1に直結した超音波振動子15を励振し、該バックアップロール1に超音波振動を発現させた。
【0049】
バックアップロール1の表面に200mmのピンセットをあて、共振音の発生で該バックアップロール1に発現した超音波振動を確認し、さらにオムロン製拡大顕微鏡倍率4700倍で該バックアップロール1の表面の振動変位を測定した結果、超音波発信器17の出力レベル大、中、小に対応して0.3μm〜0.7μm、0.1μm〜0.4μm、0.1μm以下の数値を得た。
【0050】
さらに、カップリング19を連結せず切り離した状態で超音波振動がバックアップロール1の表面で発現しているのをピンセットの共振音と拡大顕微鏡で確認することができた。
【0051】
他方、図2に示すカップリング19を金属製のもので行ったところ、超音波振動子15の励振が不安定となり、超音波発信器17に備えられた警報アラームが点灯して作動せず、またモータ6により該バックアップロール1を回転させても同様に超音波振動が発現しないことをピンセットと拡大顕微鏡で確認した。
【0052】
[実施例2]
本発明の主旨に基づき図1において、東レ製PETフイルム25μmを被塗工材2に使用し、塗工液9として市販のアサヒペン製シリコンアクリル樹脂青色塗料を水で2倍に希釈し塗布した。バックアップロール1を順転方向に回転速度1m毎分で運転して観察した結果、超音波発信器17の警報アラームが作動することなく超音波振動子15を励振し、バックアップロール1に超音波振動が発現することが、バックアップロール1の表面にピンセットを当てることにより共振音の発生で確認できた。さらに、超音波発信器17の出力電源を入り切りして、バックアップロール1の下方に位置する塗工装置基体10のスリット12に導かれ先端で塗工液9と該バックアップロール1に回転保持される被塗工材2とが接し、界面20aおよび20bを形成し、塗布層21を得る塗布の運転において、界面20aおよび20bの状況を詳しく観察した結果、超音波振動を発生しない場合と比較して界面20aおよび20bでの塗工液9の運動が明らかに異なることを見出し、該バックアップロール1に発現した超音波振動は該バックアップロール1に保持されている被塗工材2を介して塗工液9と形成する界面20aおよび20bに伝播することが確認できた。
【0053】
超音波発信器17の出力を切り、超音波振動を発現しない状態では、塗工液9中に含まれる気泡が塗工装置基体10の先端と塗工液9の界面が接している界面20aで部分的に塗工液9が小さく回流しながら停滞し、また染料の凝集塊も滞留している状況が観察され、さらには被塗工材2の塗布層21でこれらに起因する縦筋状の濃淡が多数確認された。一方、超音波発信器17の出力を入れ、超音波振動を発現させた状態では、界面20aの同じ部分で塗工液9の中に含まれる微細な気泡が界面に飛び出して集合するのが認められ、また塗工液9の微細な染料の凝集塊が滞留することなく移動して塗布されるのが確かめられ、気泡による縦筋や染料塊に起因する尾引き状の塗布ムラが改善され、良好な塗布面質が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る塗布装置の第1実施例を示した要部概略断面図である。
【図2】図1の概略正面図である。
【図3】本発明に係る塗布装置の第2実施例を示した要部概略断面図である。
【図4】本発明に係る塗布装置の第3実施例を示した要部概略断面図である。
【図5】カップリングの構成の一例及びその周辺を示した概略断面図である。
【図6】カップリングの構成の他例及びその周辺を示した概略断面図である。
【図7】カップリングの構成の他例及びその周辺を示した概略断面図である。
【図8】カップリングの構成の他例及びその周辺を示した概略断面図である。
【図9】カップリングの構成の他例及びその周辺を示した概略断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 バックアップロール
2 被塗工材
3 回転軸
3a 接続軸
4,5 軸受
6 モータ
7 出力軸
8 軸受
9 塗工液
10 塗工装置基体
11 塗工液収容室
12 スリット
13 定量ポンプ
14 配管
15 超音波振動子
16 スリップリング
17 超音波発信器
18 電気ケーブル
19 カップリング
19a,19b,19c,19d,19e カップリング部
20a,20b 界面
21 塗布層
22 グラビアロール
23 塗工液溜め
24 ドクター装置
25 堰板
26 ナイフ
27 液溜め
28 塗工液収容タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転するバックアップロールを備えて前記バックアップロールの外周面に被塗工材を沿わせて走行させつつ塗工液を前記被塗工材の面に塗布する塗布装置のいずれかの部分を強制的に振動させて前記塗工液が前記被塗工材に接する界面に振動運動を発現させる塗布方法であって、前記バックアップロールに超音波振動を与えて前記バックアップロールを超音波振動させることにより、前記バックアップロールに接する前記被塗工材を介して該被塗工材に接する前記塗工液と前記被塗工材との界面に微細振動を与えつつ前記塗工液を前記被塗工材の面に塗布することを特徴とする塗布方法。
【請求項2】
前記バックアップロールに超音波振動を与える方向は前記バックアップロールの軸方向であることを特徴とする請求項1に記載の塗布方法。
【請求項3】
モータで回転させるバックアップロールを備えて前記バックアップロールの外周面に被塗工材を沿わせて走行させつつ塗工液を前記被塗工材の面に塗布する塗布装置のいずれかの部分を強制的に振動させて前記塗工液が前記被塗工材に接する界面に振動運動を発現させる塗布装置であって、
前記バックアップロールの回転軸の一端に該バックアップロールに超音波振動を与える超音波振動子が接続され、前記バックアップロールの回転軸の他端に前記超音波振動を遮断または減衰させるカップリングを介して前記モータの出力軸が接続されていることを特徴とする塗布装置。
【請求項4】
前記超音波振動子は、前記バックアップロールの軸方向に超音波振動を与える構造であることを特徴とする請求項3に記載の塗布装置。
【請求項5】
前記バックアップロールの前記回転軸と一緒に回転する前記超音波振動子は、前記回転軸に支持されたスリップリングを介して固定側の超音波発信器に電気的に接続されていることを特徴とする請求項3または4に記載の塗布装置。
【請求項6】
前記カップリングは、非金属を介して接続される構造であることを特徴とする請求項3または4に記載の塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−254963(P2009−254963A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106230(P2008−106230)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(390039608)株式会社川上鉄工所 (7)
【Fターム(参考)】