塗布装置、及び塗布方法
【課題】液槽内に収容された塗布液にワークを浸漬させて塗装を行う際に、液槽内にワークを投入・排出する動作に伴って塗布液面が上下動することを防止して液面高さを一定に安定させて保持することにより、μm単位の膜厚を均一に得ることができる塗布装置、及び塗布方法を提供する。
【解決手段】塗布液10を収容した液槽2と、ワークWを塗布液中に投入・排出させるワーク投入・排出機構と、ワークとは異なる体積要素を前記塗布液中に投入・排出動作させる体積要素投入・排出機構と、を備え、投入・排出機構によるワークの投入・排出動作と同期させながら体積要素投入・排出機構を作動させることにより、液槽内の塗布液の液面高さを一定に維持するように構成した。
【解決手段】塗布液10を収容した液槽2と、ワークWを塗布液中に投入・排出させるワーク投入・排出機構と、ワークとは異なる体積要素を前記塗布液中に投入・排出動作させる体積要素投入・排出機構と、を備え、投入・排出機構によるワークの投入・排出動作と同期させながら体積要素投入・排出機構を作動させることにより、液槽内の塗布液の液面高さを一定に維持するように構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はディッピング法、或いは浸漬法と呼称される塗布方法を用いて塗布液をワークに塗布するための塗布装置、及び塗布方法に関し、より具体的には、光学式プリンタや複写機などの構成部品である感光体、定着ローラ、現像ローラ、転写ローラなどに用いられる円筒もしくは円柱部材、樽状部材、或いは鼓状部材への塗布液の塗布装置、塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から平面、自由曲面、円筒、或いは円柱部材の表面に膜を形成するには塗装による手法が用いられている。スプレーや刷毛による塗装は、数十μm〜数mmの厚さを有した塗膜を得るには簡便な構成で安価にできるので適した方法である。しかしながら、20μm以下の比較的薄い膜を得るには、スプレーや刷毛による塗装では膜厚むらが発生するため難しい。
ワークが平板であれば、数〜20μm程度の均一な膜が得られるスピンコート法の利用が考えられる。しかしながらスピンコート法はワークに塗布した溶液を遠心力で吹き飛ばして均一な膜を得る方法であるため、ワーク表面が平坦でないと均一な膜を形成しにくいという欠点がある。そのためスピンコート法による塗布を、凹凸のある面や円筒、円柱といったワーク形状に適用した場合には塗膜むらが発生するので、このようなワークにはディッピング法が用いられる。
ディッピング法、或いは浸漬法とよばれる塗布方法は、溶液が充填された液槽内にワークを浸漬させ、ワークを溶液から引き上げることでワーク表面に溶液の膜を形成し、次にこの膜を乾燥させることで均一な塗膜をワーク表面に形成する方法である。ディッピング法は簡単な設備で精密な薄膜を形成でき、生産性、コストの点で有利であるため広く使われているが、一般的に数十μm以上の膜形成に適用されることが多い。
【0003】
近年、プリンタや複写機の構成部品、たとえば感光体、定着ローラ、現像ローラ、転写ローラにはさまざまな機能を持たせるために、ワーク表面に数μmオーダーの膜を形成することが求められつつある。ディッピング法では数十μm程度の膜は比較的簡単に得られるが、数μmオーダーの膜をワーク全体に均一に形成するには、溶液の粘度、ワークの撥水性、引き上げ速度、膜の乾燥速度を精密に制御する必要がある。特にワークが長尺である場合には、引き上げを開始してから溶液からワ−クを全て引き上げるまでに数十分〜1時間程度かかる場合があり、溶液がワークの引き上げ方向にだれたり、ワークの上部と下部とで乾燥時間の違いから膜厚が変化したり、引き上げ方向と直交する方向に筋ができたり、風などの外乱の影響で魚の鱗状の模様が発生する。均一な膜を得るためにはノウハウが必要であり、使用する溶液やワークごとに調整しなくてはならない。
先にあげたプリンタや複写機の構成部品の製造過程で使用する溶液としては、溶剤系、水系などがあり、溶液に添加される材料の機能としては弾性、導電性、耐熱性、撥水性、耐久性、光機能性などがある。その為、ディッピングで溶液に添加する材料としてシリコン、ゴム、フッ素、有機光材料などが考えられる。
【0004】
ところで、近年、レーザ技術の発展、なかでも波長400nm近傍の青色レーザの発明により、フォトリソ工程という半導体プロセスを使ったダイレクト露光の可能性が新たに考えられている。従来、半導体プロセスは平面に対する膜形成に適した工法であるため、感光体、定着ローラ、現像ローラ、転写ローラといった円筒或いは円柱の構成部品には半導体プロセスでの機能膜形成には適さないとされてきた。しかし、これらのワークにレジストを薄く、均一に塗布することができれば、青色レーザを用いたダイレクト露光による機能膜形成の有力な手段になり得ると考えられる。なお、必ずしも青色レーザによる露光の必要は無く、キセノンランプやその他の方法による露光によってもかまわないが、ネガ型のレジストを用いた場合には青色レーザを用いたほうが効率がよい。
しかしながら、レジストは従来のディッピング法で用いられている有機溶剤やゴム系などの材料に比べて材料単価が10〜1000倍程度も高価である。またレジストは大気中の酸素で酸化され、劣化すしやすいという欠点もある。一般的に、ディッピング法による量産では効率を考えて、大型の液槽、たとえば1000x2000x600mmサイズの液槽に溶液を満たし、20〜30個のワークをまとめて漬ける方法をとっている。しかし、レジストのように酸化しやすい溶液でこのような方法をとった場合には、溶液が広い面積で大気に触れることになり、短期間でレジストが劣化するという問題がある。
【0005】
特許文献1(特開平7−268662号公報)には、ワークの表面に塗膜を形成するに際して、ワークの一端を固定部により垂直の姿勢で保持し、固定部を上下動させるための駆動モータを駆動させて溶液を入れた液槽にワークを下降させて浸漬した後、ワークを引き上げることにより、ワークの表面に塗膜を形成する画像表示装置の製造方法が開示されている。
しかし、特許文献1の製造方法には、液面の高さを制御する機構がないため、ワークの引き上げによってワークの体積分だけ液面が下降することとなる。
図11(a)(b)はディッピング法の概念図であり、(a)に示した投入時にはワークWは液槽101内の塗布液102内に浸漬された状態となる。このとき塗布液102の液面102aと液槽101の上端部との間には塗布液が蒸発して滞留したいわゆる蒸気層が存在する。(a)に示したワークWが浸漬された状態での蒸気層をA、(b)に示したワークを引き上げた状態での蒸気層をBとすると、蒸気層Aに比べて蒸気層Bの方が蒸気層の厚さが厚くなっている。この蒸気層の中では通常の大気中に比べてワークに塗布した塗布液の蒸発が遅くなるので、例えば、蒸気層の厚さが想定よりも厚い場合には、塗布液が重力によって下方に引きずられて所望の塗膜厚さT1よりも実際の膜厚T2が薄くなってしまう不具合がある。ワークWの引き上げによって液面高さが変わると、この蒸気層の厚さも変わるために、ワークの上部では蒸気層が薄くなり、ワークの下部では蒸気層が厚くなる。そのため塗膜が重力によって下方に引きずられる時間がワークの上部と下部では異なるので、前述のように塗膜厚さが変わったり、ワークに引き上げ方向の筋が発生する要因となる。
【0006】
また、液槽101の開口部が広いと塗布液の溶液が経時的に蒸発するので、塗布液の粘度が上昇し、これによって塗膜の厚さが変わるという問題がある。また、塗布液がレジストのように酸化に弱ければ、大気に接触する面積が広い液槽では、塗布液の酸化による劣化が進み、高価な塗布液を最後まで使い切ることなく破棄せねばならなかった。
また、ワークを塗布液に投入すると液槽の液面は上昇し、ワークを引き上げると液面はワークの体積分だけ降下する。そのため液槽の内面には塗布液が付着するが、この塗布液は蒸気層の中にあるために半乾きの状態となる。この半乾きの塗布液があとから補充される塗布液と何らかの状態で混ざり合うと不均一な塗布液となり、ディッピング時に塗布むらが発生しやすくなり、留まりを悪化させる要因となっていた。
【0007】
次に、特許文献2(特開平8−314163号公報)には、オーバーフロー型ディッピング法が開示されている。
特許文献2に開示された塗布装置は、液槽の下部から塗布液を供給し、同量の塗布液をオーバーフローさせることで液面高さを一定にする構成である。乱れの無い安定した液面を確保するためには、液槽の下部から供給する塗布液が層流となって液槽内を上昇し、液槽の上端から液槽の外周方向に均等に流れていくことが必要である。ところで、高価な塗布液の塗布装置内での使用量を減らすためには、液槽の内径に対してワークの外径を大きくさせると効果的である。しかしながら特許文献2の装置においてこの構成を採用すると、液槽の下部から供給された塗布液はワークの下部によって液槽の外周部に押しやられてワークに沿って液槽内を上昇するので、塗布液の流れが乱流になりやすい。乱流のまま塗布液が液面まで上昇すると、塗布液の移動方向が液槽の外周方向に変わるので液面付近で渦が発生し、液面が微視的には上下する。したがって、ワークの表面に形成する塗膜に引き上げ方向と直交する方向に同心円状の塗膜むらが発生してワークの膜厚が変化するという問題があった。
【0008】
また、液槽の容積に対してワークの容積が大きいとオーバーフローする流量が多くなるので供給側の供給量も多くなり、配管内の塗布液の圧送圧が上昇するので配管内の塗布液に脈流を生じ、液槽内の塗布液の流れがばらつき、渦が発生して液面が乱れ、液面を微小に上下させるために、ワークの表面に形成する塗膜に引き上げ方向と直交する方向に同心円状の塗膜むらが発生してワークの膜厚が変化するという問題があった。
また、オーバーフローさせると、循環による配管との摩擦熱によって塗布液の液温が徐々に上昇し、塗布液の粘性が変化するので、膜厚が徐々に変化していくという問題があった。
また、循環によるポンプや配管部での摺動抵抗により、塗布液に分散させた機能材料、例えば光機能材料が劣化し、初期に塗布したワークと、しばらくオーバーフローさせてから塗布したワークでは感光性能や露光特性に差が生じる問題があった。
また、循環用の配管はメンテナンス性を容易にするため、複数の部材から構成されることがある。これらの部材同志の接続には接続部にゴムなどを用いたパッキンが設けられることが多い。しかし、この接続部に塗布液が固着してしまい配管を分離しにくくなりメンテナンス性を低下させたり、固着した塗布液が循環中の塗布液に混入してワークに欠陥を生じる問題もあった。
【0009】
また、オーバーフローさせる構成では、液槽以外にも受け皿、オーバーフロー配管、貯留槽で大気と接触するので、塗布液が酸化して劣化する面積が広くなる。循環によって液面近傍の塗布液も撹拌されるので、ワークに塗布される直前の塗布液以外も酸素にさらされることになり、塗布液の劣化を進めるという問題もあった。
また、空気との接触面積が広くなるので徐々に塗布液中の溶剤が蒸発し、濃縮されることによって、オーバーフロー配管や貯留槽の壁面に塗布液中の樹脂や光機能材料などが析出してくることがあった。この析出した物質は再び塗布槽に混入することもあり、ワークに付着した場合はワークに欠陥を生じさせる要因ともなった。
【特許文献1】特開平7−268662号公報
【特許文献2】特開平8−314163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、液槽内に収容された塗布液にワークを浸漬させて塗装を行う際に、液槽内にワークを投入・排出する動作に伴って塗布液面が上下動することを防止して液面高さを一定に安定させて保持することにより、μm単位の膜厚を均一に得ることができる塗布装置、及び塗布方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、ディッピング法により塗布液をワークに塗布する塗布装置において、前記塗布液を収容した液槽と、前記ワークを前記塗布液中に投入・排出させるワーク投入・排出機構と、前記ワークとは異なる体積要素を前記塗布液中に投入・排出動作させる体積要素投入・排出機構と、を備え、前記ワーク投入・排出機構による前記ワークの投入・排出動作と同期させながら前記体積要素投入・排出機構を作動させることにより、前記液槽内の塗布液の液面高さを一定に維持するように構成したことを特徴とする。
本発明によれば、ワークが液槽に投入・排出されても、液面高さを一定にし、変動の無い安定した液面を有する塗布装置を得ることができる。
請求項2の発明は、請求項1において、前記体積要素は、固体部材であることを特徴とする。
本発明によれば、取扱性のよい体積要素を確保することにある。
請求項3の発明は、請求項2において、前記固体部材は、前記ワークの引き上げ方向に直交する面内において前記ワークと同一の断面積を有することを特徴とする。
本発明によれば、ワークの投入・排出速度と、体積要素の投入・排出速度を同一にすることができる。
【0012】
請求項4の発明は、請求項2又は3において、前記固体部材は、前記ワークと同一の外形形状を有することを特徴とする。
本発明によれば、ワークの投入・排出速度と、体積要素の投入・排出速度を同一にすることができる。
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れか一項において、前記ワーク投入・排出機構により前記ワークを前記液槽内に投入・排出させる動作と、前記体積要素投入・排出機構により前記体積要素を前記液槽内に投入・排出させる動作とを連動させる連動機構を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、ワークと体積要素を駆動するための機構(アクチエータ)を連動させて1ユニット化することができる。
請求項6の発明は、請求項1において、前記体積要素は、塗布液であることを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項1において、前記体積要素は補助タンクであり、該補助タンクを上下に動かすことにより、前記塗布液を液槽内に投入・排出させることを特徴とする。
本発明によれば、液体の体積要素の投入・排出機構を得ることができる。
【0013】
請求項8の発明は、請求項7において、重力の作用する方向と直交する面内における前記補助タンクの断面積と前記ワークの断面積とが同一であることを特徴とする。
本発明によれば、ワークの投入・排出速度と、補助タンクの上下移動速度を同一にすることができる。
請求項9の発明は、請求項7又は8において、前記補助タンクの内部形状と前記ワークの外形形状とが同一であることを特徴とする。
本発明によれば、ワークの投入・排出速度と、補助タンクの上下移動速度を同一にすることができる。
請求項10の発明は、請求項7乃至9の何れか一項において、前記補助タンクは前記ワーク投入・排出機構に固定され、前記ワークと同時に上下動することを特徴とする。
本発明によれば、ワークと補助タンクの駆動機構(アクチエータ)を1つにすることができる。
請求項11の発明は、請求項1乃至10の何れか一項において、前記塗布液の液面高さを検知する液面センサと、該液面センサの出力に応じてワーク投入・排出機構、又は体積要素投入・排出機構の何れか一方、若しくは両方の動作を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、液面の高さを検知し、ディッピング開始位置を制御することができる。
【0014】
請求項12の発明は、請求項1乃至11の何れか一項において、前記液槽内に新たな塗布液を補充する補充手段を備えることを特徴とする。
本発明によれば、液槽に常に一定の塗布液を確保することができる。
請求項13の発明は、請求項1乃至12の何れか一項において、前記塗布液のろ過手段を有することを特徴とする。
本発明によれば、塗布液に混入した異物を除去することができる。
請求項14の発明は、液槽内に収容された塗布液内にワークを投入・排出させて前記塗布液を前記ワークに塗布する方法において、前記塗布液を前記液槽に収容する工程と、前記ワークの投入・排出動作と同期させながら前記ワークとは異なる体積要素を前記塗布液内に投入・排出動作させる工程と、からなり、前記塗布液の液面高さを一定に維持することを特徴とする。
本発明によれば、ワークが液槽に投入・排出されても、液面高さを一定にし、変動の無い安定した液面を有する塗布方法を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1によれば、長尺なワークであっても、数μmオーダの均一な薄い塗膜を高速に形成し、レジストを劣化させず、効率よく塗布することができる。
請求項2によれば、液面高さを調整することができる。
請求項3によれば、簡便な制御系でディッピングが可能になる。
請求項4によれば、簡便な制御系でディッピングが可能になる。
請求項5によれば、アクチエータ数を減らせるので、装置がコンパクトになりコストを低減できる。
請求項6によれば、液面高さを調整することができる。
請求項7によれば、液面高さを一定に保つことができる。
請求項8、9によれば、簡便な制御系でディッピングが可能になる。請求項3に同じ。
請求項10によれば、装置をコンパクトにでき、コストを低減できる。
請求項11によれば、ディッピング開始位置を決定することができる。
請求項12によれば、消耗した塗布液を補充し、液面高さを一定にすることができる。
請求項13によれば、長尺なワークであっても、数μmオーダーの均一な薄い塗膜を高速に形成し、レジストを劣化させず、効率よく塗布することができる。
請求項14によれば、長尺なワークであっても、数μmオーダーの均一な薄い塗膜を高速に形成し、レジストを劣化させず、効率よく塗布する方法を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。
図1(a)(b)及び(c)は本発明の塗布装置の原理を示す図であり、溶液中への体積要素の投入状態を示した図である。
即ち、本発明のディッピング法により塗布液をワークWに塗布する塗布装置1は、塗布液10を入れた液槽2と、ワークWを塗布液10中に投入・排出させるワーク投入・排出機構と、ワーク投入・排出機構によるワークの投入・排出動作と同期させながら、ワークとは異なる体積要素を塗布液中に投入・排出動作させる体積要素投入・排出機構と、により、液槽内の塗布液の液面高さを一定に維持するように構成したものである。
ワーク投入・排出機構、体積要素投入・排出機構としては、ワーク、或いは体積要素を保持して一定の軌道で進退動作させ得る保持手段、移動機構(ギヤ、プーリ、ワイヤ等々)、及び駆動源(モータ、ソレノイド)を備えたものを利用することができる。
本実施形態によれば、同一の液槽2内の塗布液10中に体積要素を投入・排出することで、ワークWが塗布液に投入・排出されても、液面の高さを一定に保つことができる。
【0017】
図1(a)の塗布装置1は、上面が開放した筒状の液槽2の底部(体積要素=固体部材)3が図示しない体積要素投入・排出機構(アクチュエータ)によって上下動作する構成を備えており、底部(底板)3が上下動作することによって、ワークWの投入、排出によって塗布液(例えば、レジスト液)10の液面が上下に変動することを防ぐことができる。
図1(b)は他の実施形態に係る塗布装置1を示し、この塗布装置1では、液槽2の底板3に設けた気密穴3aから液槽内の塗布液10中に体積要素としての固体部材4が出没するように上下動作する。1つ、又は複数の固体部材4を塗布液内に出没させることにより液面高さを制御する。このときワークWと固体部材(体積要素)4の外形形状が異なる場合には、塗布液中に投入・排出される体積も異なってくるので、ワークWと固体部材4の投入・排出速度を異ならせる必要があり、制御性は低下する。一方、ワークWの引き上げ方向(垂直方向)に直交する面内(水平面内)における固体部材4の断面積とワークWの断面積とが等しければ、ワークと固体部材の投入・排出速度を同じにすることにより液槽の液面を一定にできるので、制御性がよくなるというメリットがある。例えば、図1(c)に示すように、液槽2の側面に設けた気密穴2aからワークWの外形状と同じ外形状の固体部材(体積要素)5が漏れ止めシール部(図示せず)を介して塗布液10中に出入りするように構成した場合には、ワークWの体積と、塗布液中に投入・排出される固体部材5の体積が同一なので、ワークと固体部材5を同じ速度(方向は反対)にて投入・排出することができる。また液面高さを検出する超音波センサ(図示せず)で、塗布液の液面高さを検出するように構成する。そして、図示しない制御手段は、超音波センサからの検知情報により液面高さが規定の高さに無い場合には、体積要素投入・排出機構を作動させて固体部材5を投入・排出して液面が規定の高さになるように制御する。
【0018】
図2(a)乃至(e)は複数のワークW1、W2を別個の液槽A、B内にディッピングする場合の構成例、手順を示す図である。例えば、底面が平坦な1つ或いは複数の円筒状液槽2を水平な面上に設置し、それぞれの液槽2の側面間を配管15で接続して連通させ、液槽内の塗布液が移動できるようにする。図2は2つのワークW1、W2を2つの液槽A、Bに夫々浸漬する場合の例である。
まず、図2(a)では液槽AにはワークW1を未投入とし、液槽BにはワークW2を投入した状態にする。両ワークW1、W2は同じ外形状を有している。次に、図2(b)のように液槽AにワークW1を所望の速度で投入し、同じ速度、及びタイミングで液槽BからワークW2を排出する。液槽AではワークW1の体積分だけ液面が盛り上がることになるが、この余分な塗布液10は配管15で接続された液槽Bに流れ込むことで液槽Aの液面は一定になる。液槽Bでは流れ込んだ塗布液で液面が盛り上がることになるが、予め投入されていたワークW2を引き上げて排出することでワークW2分の体積が減り、結果的に両液槽内の液面の高さは一定になる。したがって、2つのワークの投入・排出速度を同じにすれば、液槽A、Bの液面は常に一定となる。このときワークの投入・排出のために少なくとも2つ以上のアクチエータ(ワーク投入・排出機構、図示せず)により駆動することが必要である。
【0019】
次いで、図2(c)に示すように液槽B側でワークW2を引き上げ、ワークW2の底面が液面と一致した時点一旦停止させ、表面張力でワークW2に付着した余分な液を塗布液に戻す。
次に、図2(d)に示すように、引き上げたワークW2に代えて、液槽B内に新しいワークW2`を投入する。次に、図2(e)に示すように(a)とは逆に、液槽AからワークW1を引き上げ、液槽Bには液槽AのワークW1と同じ速度でワークW2`を投入する。以降、図2(b)乃至(d)の工程を液槽A、Bを逆にして順次繰り返す。もちろん、塗布液はワークに塗工されるので、液面は少しずつではあるが低下していく。その場合は、塗布液を液槽内に補充するか、または適切な分散媒で塗布液の粘度や濃度を調整しながら液面の高さを元に戻す。また液面高さを検出する超音波センサ(図示せず)で、塗布液の液面高さを検出する。液面高さが規定の高さに無い場合には、ワークを投入・排出して規定の高さになるように制御する。
【0020】
図3(a)(b)は図2のワーク投入・排出手順を別構成で実現した例を示している。図2では2つのワークに夫々対応して少なくとも2つ以上のアクチエータが必要であった。図3(a)ではワークを投入・排出するための図示しないワーク投入・排出機構(アクチエータ)の個数を減らすために、液槽Aと液槽Bに夫々投入・排出されるワークW1、W2、若しくはワークの把持機構(図示せず)をワイヤー16で接続し、ワイヤー16を滑車17に巻き回して吊り下げる構造になっている。この構造によれば、滑車17を回転させるためのワーク投入・排出機構を1つ用いるだけで塗布装置全体を駆動することができる。もちろん、滑車側ではなく、ワイヤー16側に駆動用のアクチエータを用いてもよい。また必ずしもワイヤーである必要はなく、金属または樹脂のベルトやチェーンなどでも構わない。
図3(b)のように、滑車の替わりに天秤状のリンク機構18を用いても同様の効果を発揮する。即ち、支点18aにより天秤棒18bの中心部を支持すると共に、天秤棒18bの両端部にワイヤー(或いは、金属製のアーム等の棒材)18cを取り付けて垂らし、その先端に各ワークW1、W2を取り付けても良い。
このようにワーク投入・排出機構によりワークを液槽内に投入・排出させる動作と、体積要素投入・排出機構により体積要素を液槽内に投入・排出させる動作とを連動させる連動機構を備えることにより、両機構を一つのユニット化することができる。
【0021】
次に、図4(a)乃至(d)は液槽の構成例を示すものである。図4(a)は図2で使用した液槽の構成例である。或いは、液槽2として図4(b)のようにU字管を用いてもよいし、(c)のように8の字形状の液槽2で行ってもよい。また、(d)のようにU字状の液槽2の両開口部に蓋19をつけて更に蒸気層を安定させるように構成してもよい。
なお、図4(a)乃至(d)に示した各構成は、あらゆるサイズ、形状のワークと液槽との間で成立する訳ではない。塗布液を使った実験によって最適な寸法パラメータがあることがわかった。ワークの膜厚が数μm、膜厚公差±1μm以下、ワーク外径がφ10〜30mm、ワーク長さ200〜400mmの場合には、次の要件を備えることが好ましい。
[1]液槽2の外径をD1、ワークWの外径をD2としたときに、D1−D2<20mmの関係を満たすこと。
[2]ワークおよび体積要素の投入・排出速度が0.1〜30mm/Secを満たすこと。
[3]液槽上面と液面の距離(蒸気層の幅)が20mm以下を満たすこと。
【0022】
次に、図5、図6を用いて、本発明の他の実施形態に係る塗布装置について説明する。
まず、図5は液槽2の底部3に設けた気密穴3aからワークWと同じ外径を有した体積要素20が内部に突出している例を示している。液槽2内に事前に濃度や粘度を調整した塗布液10が液面10aまで充填されている。この塗布液としては先に述べたように多様なものがあるが、ここでは揮発性のあるレジストを充填したものとする。液槽2の底部3に設けた気密穴3a(漏れ止めシール3b付き)を介して体積要素20である支持ロッド21が液槽内部に突出されている。漏れ止めシール3bはレジスト10との相性によって決定されるが、一般的にはフッ素系のオイルシールが用いられることが多い。
また、この支持ロッド21は塗布液の液面10aを突き抜けて上方まで伸びており、支持ロッド先端には、ワークを固定するための雄螺子状の接続ねじ21aが突出してある。この塗布液の液面10aと液槽の上端との間は蒸気層22と呼ばれ、レジスト10の溶媒が気化して滞留している。レジスト10の溶媒は空気より重いことが多いので、外部からの送風などで対流が起きなければほぼ一定の濃度を保っている。また液面の変動が無ければ、液面と液槽上端の距離が変わらないので、蒸気層22の厚さは一定である。蒸気層が一定なので、塗膜の乾燥条件も一定になり、長尺のワークを投入しても膜厚変動や、塗膜むらの発生が抑制され、高速に引き上げることができる。この蒸気層をさらに安定させるために液槽上部にふたを設置してもよい。
【0023】
図6(a)乃至(f)は図5の構成を備えた液槽2を用いてディッピングを行った例を示している。最初は図6(a)のように支持ロッド21の上部が液面10a上に出ており、ワークWは液槽の外にある状態である。次に(b)のようにワークWを支持ロッド21と接続ねじ21aで固定し、ワークWと支持ロッド21との間に隙間が無い状態にする。このときワークと支持ロッドの直径は同じなので、外観上、1つの円柱であるように見える。次に(c)のように、所望の速度で、支持ロッド21を引き下げ、塗布液10中にワークWを入れて、ワーク表面に塗布液をディップする。このときワーク投入による液面の乱れを静定させるために、約10秒程度静止する。
次に、図6(d)のように、支持ロッド21を引き上げてゆき、ワーク表面に塗布液の膜を形成する。このときワークと支持ロッドの外径が等しいので、単位時間あたりに塗布液中に投入・排出されるワーク及び支持ロッドの体積が等しくなり、液面は上下することなく一定の高さを維持する。ただし、ワークの表面に塗布液が塗布されてゆくので、その分だけ液面は若干下がってゆくが、ディッピングによる膜形成には影響しない範囲である。また、図1のような構成を備えた塗布装置の場合では、液面高さは一定であっても体積要素3、4、5の出し入れによって塗布液中で乱流が発生し、液面の乱れにつながっていたが、図6の構成では、体積要素としての支持ロッド21とワークWとが接続されているので、ワークと支持ロッドとの間に塗布液が入り込む隙間が無く、また外径も等しいのでワークを引き上げても乱流が発生しにくく、安定した液面を確保できる。
【0024】
次に図6(e)のように支持ロッド21の上側に位置するワークWの下端が液面10aに達したときにしばらく静止し、ワークと支持ロッドの間にある僅かなつなぎ目(段差)に溜まった塗布液を表面張力により液槽に戻し均一な膜を得る。この工程を省略すると、塗膜に塗布液が溜まってだまができる場合がある。
次に図6(f)のように支持ロッド21の上端部を液面10aよりも上方に突出させてワークWを支持ロッド21からはずし、ワークの乾燥工程で乾燥させて、レジストの塗膜を得る。この工程を繰り返していくと、少しずつレジストが減ってゆくため、塗布液の投入・排出口(図示せず)からレジストを追加投入して液面を常に一定にする。またレジストにごみなどが混入した場合には配管(図示せず)を経由して外部のフィルタ(図示せず)でレジストのごみを除去し、投入・排出口からレジストを再投入して常に塗布液の特性を安定にする。
【0025】
次に、図7、図8、図9を用いて他の実施形態について説明する。
この実施形態に係る塗布装置1は、2つの円筒状の液槽2の底部3間をチューブ25により連通接続しており、チューブ25を介して一方の液槽内の塗布液10を他方の液槽へ流入可能に構成されている。そして、一方の液槽を他方の液槽よりも所定の高い位置に配置することにより他方の液槽内の塗布液の液面の位置を所定に設定する一方で、ワークを他方の液槽内に投入した場合には一方の液槽を下降させて他方の液槽内から塗布液を一方の液槽内に移動させるようにしている。この実施形態は、体積要素として固体部材ではなく、塗布液(或いは、補助タンク)を利用している点が特徴的である。
本実施形態では、ワークWを投入する側の液槽2を液槽26、ワークWを投入しない側の液槽2を補助タンク27とする。まず最初に塗布液10を充填した液槽26内にワークWを投入することで液槽26内の液面が上昇する。このとき予め上方の退避位置に配置されていた補助タンク27を退避位置から所定距離だけ下降させることにより、チューブ25を介して液槽26に投入されたワークの体積分の塗布液10が補助タンク27側に流入する。このことによって液槽26内の液面10aの高さ位置は一定に保たれる。
【0026】
次に、図8の実施形態では、補助タンク27の内部形状がワークWの外形状と等しくなるように設定されている。図7の場合と同様にチューブ25によって液槽26と補助タンク27は接続されている。液槽26にワークWを投入することで塗布液の液面10aが上昇する、このとき補助タンク27を上方の退避位置から下降させることにより、チューブ25を介して液槽26に投入されたワークの体積分の塗布液が補助タンク27に流入する。このことによって液槽26側の液面は一定に保たれる。
ところで、重力が作用する方向と直交する面(水平面)内における補助タンク27の断面積とワークWの断面積とが同一である場合に、ワークの投入・排出速度と補助タンクの上昇・下降速度を同じにすることにより、液槽26の液面を一定にできるので制御性がよくなるというメリットがある。補助タンク27の内部形状がワークの外形形状と等しければ、ワークの投入・排出速度と補助タンクの上昇・下降速度を同一にすることができ、制御性が向上する。
【0027】
次に、図9により図8の実施形態を実現するための装置構成を説明する。
垂直に配置された直動ステージ31の移動テーブル32に保持機構(図示せず)を介してワークWが固定されている。この移動テーブル32にはワークWの外形形状と同一の内部形状を有する補助タンク27が固定されている。補助タンク27と液槽26はチューブ25を介して接続され、塗布液10が互いに流入可能である。このとき直動ステージ31を駆動して、移動テーブル32を下降させると、ワークWが塗布液10中に浸漬する。補助タンク27もワークWと同様に移動テーブル32に固定されていて一体に昇降するので、チューブ25を介して液槽26の塗布液10が補助タンク27に流入する。この流入量はワークが塗布液中に浸漬した体積と同じであるので、結果的に液面10aは一定に維持される。移動テーブル32が上昇してワークが塗布液から排出される場合には先のとは逆になり、結果として液面の高さは同じに維持される。
移動テーブル32を備えた直動ステージ31、保持機構は、ワーク投入・排出機構を構成している。
補助タンク27は、ワーク投入・排出機構に固定され、ワークと同時に上下動するため、補助タンク、或いは塗布液を体積要素して利用して液面を安定化させることができる。
また、塗布液の液面高さを検知する図示しない液面センサを設け、該液面センサの出力に応じてワーク投入・排出機構、又は体積要素投入・排出機構の何れか一方、若しくは両方の動作を制御する制御手段(CPU)と、を備えることにより、自動制御による液面の安定化が可能となる。
【0028】
次に、図10は図2に示した本発明に係る塗布装置を量産に適した構成とする場合の構成例を示している。
この塗布装置40は、複数の液槽Aから成るA列と、複数の液槽Bから成るB列と、これらの底部を支えるベース41と、を備えている。前後位置関係で隣接し合う各液槽Aと各液槽Bとは、ベース21内部に設置された配管により底部間をそれぞれ連通接続されている。図2で説明したように、先に手前側にあるB列の各液槽B内にワークW2を入れておき、A組の各液槽A内のワークW1は液槽Aから出しておく。次にB組の各ワークW2を各液槽Bから引き上げると同時に、A組の各ワークW1をB組と同じ速度で液槽Aに投入することで、両液槽A、B内の液面の高さを一定にし、蒸気層の幅も一定にする。このような構成をとることで、空気に触れる面積を最小限にし、酸化しやすいレジストを使い切ることができる。また、液面を安定化することで、塗膜むらやワークの上端と下端で膜厚のばらつきを低減し、蒸気層の幅を一定にすることで、高速に引き上げることができる。
なお、液槽内に新たな塗布液を補充する図示しない補充手段を備えることにより、消耗した塗布液を補充し、液面高さを一定にすることができる。
また、図示しない塗布液のろ過手段を有することにより、長尺なワークであっても、数μmオーダーの均一な薄い塗膜を高速に形成し、レジストを劣化させずに効率良く薄膜を均一に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】(a)(b)及び(c)は本発明の塗布装置の原理を示す図であり、溶液中への体積要素の投入状態を示した図である。
【図2】(a)乃至(e)は他の実施形態に係る塗布装置による塗布手順を示す図である。
【図3】(a)及び(b)は体積要素投入・排出機構の構成例を示す図である。
【図4】(a)乃至(d)は液槽の構成例を示す図である。
【図5】(a)及び(b)は本発明の他の実施形態に係る塗布装置の構成、及び動作説明図である。
【図6】(a)乃至(f)は図5の構成を備えた液槽を用いてディッピングを行った例を示した図である。
【図7】他の実施形態に係る塗布装置の構成を示す図である。
【図8】図7の変形例を示す図である。
【図9】(a)及び(b)は図8の実施形態を実現するための装置構成を説明する図である。
【図10】図2に示した本発明に係る塗布装置を量産に適した構成とする場合の構成例を示す図である。
【図11】(a)及び(b)はディッピング法の概念図である。
【符号の説明】
【0030】
1…塗布装置、2…液槽、2a…気密穴、3…底板、3a…気密穴、3b…シール、4…固体部材、5…固体部材、10…塗布液、10a…液面、15…配管、16…ワイヤー、17…滑車、18…リンク機構、18a…支点、18b…天秤棒、19…蓋、20…体積要素、21…ベース、21…支持ロッド、22…蒸気層、25…チューブ、26…液槽、27…補助タンク、31…直動ステージ、32…移動テーブル、40…塗布装置、41…ベース
【技術分野】
【0001】
本発明はディッピング法、或いは浸漬法と呼称される塗布方法を用いて塗布液をワークに塗布するための塗布装置、及び塗布方法に関し、より具体的には、光学式プリンタや複写機などの構成部品である感光体、定着ローラ、現像ローラ、転写ローラなどに用いられる円筒もしくは円柱部材、樽状部材、或いは鼓状部材への塗布液の塗布装置、塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から平面、自由曲面、円筒、或いは円柱部材の表面に膜を形成するには塗装による手法が用いられている。スプレーや刷毛による塗装は、数十μm〜数mmの厚さを有した塗膜を得るには簡便な構成で安価にできるので適した方法である。しかしながら、20μm以下の比較的薄い膜を得るには、スプレーや刷毛による塗装では膜厚むらが発生するため難しい。
ワークが平板であれば、数〜20μm程度の均一な膜が得られるスピンコート法の利用が考えられる。しかしながらスピンコート法はワークに塗布した溶液を遠心力で吹き飛ばして均一な膜を得る方法であるため、ワーク表面が平坦でないと均一な膜を形成しにくいという欠点がある。そのためスピンコート法による塗布を、凹凸のある面や円筒、円柱といったワーク形状に適用した場合には塗膜むらが発生するので、このようなワークにはディッピング法が用いられる。
ディッピング法、或いは浸漬法とよばれる塗布方法は、溶液が充填された液槽内にワークを浸漬させ、ワークを溶液から引き上げることでワーク表面に溶液の膜を形成し、次にこの膜を乾燥させることで均一な塗膜をワーク表面に形成する方法である。ディッピング法は簡単な設備で精密な薄膜を形成でき、生産性、コストの点で有利であるため広く使われているが、一般的に数十μm以上の膜形成に適用されることが多い。
【0003】
近年、プリンタや複写機の構成部品、たとえば感光体、定着ローラ、現像ローラ、転写ローラにはさまざまな機能を持たせるために、ワーク表面に数μmオーダーの膜を形成することが求められつつある。ディッピング法では数十μm程度の膜は比較的簡単に得られるが、数μmオーダーの膜をワーク全体に均一に形成するには、溶液の粘度、ワークの撥水性、引き上げ速度、膜の乾燥速度を精密に制御する必要がある。特にワークが長尺である場合には、引き上げを開始してから溶液からワ−クを全て引き上げるまでに数十分〜1時間程度かかる場合があり、溶液がワークの引き上げ方向にだれたり、ワークの上部と下部とで乾燥時間の違いから膜厚が変化したり、引き上げ方向と直交する方向に筋ができたり、風などの外乱の影響で魚の鱗状の模様が発生する。均一な膜を得るためにはノウハウが必要であり、使用する溶液やワークごとに調整しなくてはならない。
先にあげたプリンタや複写機の構成部品の製造過程で使用する溶液としては、溶剤系、水系などがあり、溶液に添加される材料の機能としては弾性、導電性、耐熱性、撥水性、耐久性、光機能性などがある。その為、ディッピングで溶液に添加する材料としてシリコン、ゴム、フッ素、有機光材料などが考えられる。
【0004】
ところで、近年、レーザ技術の発展、なかでも波長400nm近傍の青色レーザの発明により、フォトリソ工程という半導体プロセスを使ったダイレクト露光の可能性が新たに考えられている。従来、半導体プロセスは平面に対する膜形成に適した工法であるため、感光体、定着ローラ、現像ローラ、転写ローラといった円筒或いは円柱の構成部品には半導体プロセスでの機能膜形成には適さないとされてきた。しかし、これらのワークにレジストを薄く、均一に塗布することができれば、青色レーザを用いたダイレクト露光による機能膜形成の有力な手段になり得ると考えられる。なお、必ずしも青色レーザによる露光の必要は無く、キセノンランプやその他の方法による露光によってもかまわないが、ネガ型のレジストを用いた場合には青色レーザを用いたほうが効率がよい。
しかしながら、レジストは従来のディッピング法で用いられている有機溶剤やゴム系などの材料に比べて材料単価が10〜1000倍程度も高価である。またレジストは大気中の酸素で酸化され、劣化すしやすいという欠点もある。一般的に、ディッピング法による量産では効率を考えて、大型の液槽、たとえば1000x2000x600mmサイズの液槽に溶液を満たし、20〜30個のワークをまとめて漬ける方法をとっている。しかし、レジストのように酸化しやすい溶液でこのような方法をとった場合には、溶液が広い面積で大気に触れることになり、短期間でレジストが劣化するという問題がある。
【0005】
特許文献1(特開平7−268662号公報)には、ワークの表面に塗膜を形成するに際して、ワークの一端を固定部により垂直の姿勢で保持し、固定部を上下動させるための駆動モータを駆動させて溶液を入れた液槽にワークを下降させて浸漬した後、ワークを引き上げることにより、ワークの表面に塗膜を形成する画像表示装置の製造方法が開示されている。
しかし、特許文献1の製造方法には、液面の高さを制御する機構がないため、ワークの引き上げによってワークの体積分だけ液面が下降することとなる。
図11(a)(b)はディッピング法の概念図であり、(a)に示した投入時にはワークWは液槽101内の塗布液102内に浸漬された状態となる。このとき塗布液102の液面102aと液槽101の上端部との間には塗布液が蒸発して滞留したいわゆる蒸気層が存在する。(a)に示したワークWが浸漬された状態での蒸気層をA、(b)に示したワークを引き上げた状態での蒸気層をBとすると、蒸気層Aに比べて蒸気層Bの方が蒸気層の厚さが厚くなっている。この蒸気層の中では通常の大気中に比べてワークに塗布した塗布液の蒸発が遅くなるので、例えば、蒸気層の厚さが想定よりも厚い場合には、塗布液が重力によって下方に引きずられて所望の塗膜厚さT1よりも実際の膜厚T2が薄くなってしまう不具合がある。ワークWの引き上げによって液面高さが変わると、この蒸気層の厚さも変わるために、ワークの上部では蒸気層が薄くなり、ワークの下部では蒸気層が厚くなる。そのため塗膜が重力によって下方に引きずられる時間がワークの上部と下部では異なるので、前述のように塗膜厚さが変わったり、ワークに引き上げ方向の筋が発生する要因となる。
【0006】
また、液槽101の開口部が広いと塗布液の溶液が経時的に蒸発するので、塗布液の粘度が上昇し、これによって塗膜の厚さが変わるという問題がある。また、塗布液がレジストのように酸化に弱ければ、大気に接触する面積が広い液槽では、塗布液の酸化による劣化が進み、高価な塗布液を最後まで使い切ることなく破棄せねばならなかった。
また、ワークを塗布液に投入すると液槽の液面は上昇し、ワークを引き上げると液面はワークの体積分だけ降下する。そのため液槽の内面には塗布液が付着するが、この塗布液は蒸気層の中にあるために半乾きの状態となる。この半乾きの塗布液があとから補充される塗布液と何らかの状態で混ざり合うと不均一な塗布液となり、ディッピング時に塗布むらが発生しやすくなり、留まりを悪化させる要因となっていた。
【0007】
次に、特許文献2(特開平8−314163号公報)には、オーバーフロー型ディッピング法が開示されている。
特許文献2に開示された塗布装置は、液槽の下部から塗布液を供給し、同量の塗布液をオーバーフローさせることで液面高さを一定にする構成である。乱れの無い安定した液面を確保するためには、液槽の下部から供給する塗布液が層流となって液槽内を上昇し、液槽の上端から液槽の外周方向に均等に流れていくことが必要である。ところで、高価な塗布液の塗布装置内での使用量を減らすためには、液槽の内径に対してワークの外径を大きくさせると効果的である。しかしながら特許文献2の装置においてこの構成を採用すると、液槽の下部から供給された塗布液はワークの下部によって液槽の外周部に押しやられてワークに沿って液槽内を上昇するので、塗布液の流れが乱流になりやすい。乱流のまま塗布液が液面まで上昇すると、塗布液の移動方向が液槽の外周方向に変わるので液面付近で渦が発生し、液面が微視的には上下する。したがって、ワークの表面に形成する塗膜に引き上げ方向と直交する方向に同心円状の塗膜むらが発生してワークの膜厚が変化するという問題があった。
【0008】
また、液槽の容積に対してワークの容積が大きいとオーバーフローする流量が多くなるので供給側の供給量も多くなり、配管内の塗布液の圧送圧が上昇するので配管内の塗布液に脈流を生じ、液槽内の塗布液の流れがばらつき、渦が発生して液面が乱れ、液面を微小に上下させるために、ワークの表面に形成する塗膜に引き上げ方向と直交する方向に同心円状の塗膜むらが発生してワークの膜厚が変化するという問題があった。
また、オーバーフローさせると、循環による配管との摩擦熱によって塗布液の液温が徐々に上昇し、塗布液の粘性が変化するので、膜厚が徐々に変化していくという問題があった。
また、循環によるポンプや配管部での摺動抵抗により、塗布液に分散させた機能材料、例えば光機能材料が劣化し、初期に塗布したワークと、しばらくオーバーフローさせてから塗布したワークでは感光性能や露光特性に差が生じる問題があった。
また、循環用の配管はメンテナンス性を容易にするため、複数の部材から構成されることがある。これらの部材同志の接続には接続部にゴムなどを用いたパッキンが設けられることが多い。しかし、この接続部に塗布液が固着してしまい配管を分離しにくくなりメンテナンス性を低下させたり、固着した塗布液が循環中の塗布液に混入してワークに欠陥を生じる問題もあった。
【0009】
また、オーバーフローさせる構成では、液槽以外にも受け皿、オーバーフロー配管、貯留槽で大気と接触するので、塗布液が酸化して劣化する面積が広くなる。循環によって液面近傍の塗布液も撹拌されるので、ワークに塗布される直前の塗布液以外も酸素にさらされることになり、塗布液の劣化を進めるという問題もあった。
また、空気との接触面積が広くなるので徐々に塗布液中の溶剤が蒸発し、濃縮されることによって、オーバーフロー配管や貯留槽の壁面に塗布液中の樹脂や光機能材料などが析出してくることがあった。この析出した物質は再び塗布槽に混入することもあり、ワークに付着した場合はワークに欠陥を生じさせる要因ともなった。
【特許文献1】特開平7−268662号公報
【特許文献2】特開平8−314163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、液槽内に収容された塗布液にワークを浸漬させて塗装を行う際に、液槽内にワークを投入・排出する動作に伴って塗布液面が上下動することを防止して液面高さを一定に安定させて保持することにより、μm単位の膜厚を均一に得ることができる塗布装置、及び塗布方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、ディッピング法により塗布液をワークに塗布する塗布装置において、前記塗布液を収容した液槽と、前記ワークを前記塗布液中に投入・排出させるワーク投入・排出機構と、前記ワークとは異なる体積要素を前記塗布液中に投入・排出動作させる体積要素投入・排出機構と、を備え、前記ワーク投入・排出機構による前記ワークの投入・排出動作と同期させながら前記体積要素投入・排出機構を作動させることにより、前記液槽内の塗布液の液面高さを一定に維持するように構成したことを特徴とする。
本発明によれば、ワークが液槽に投入・排出されても、液面高さを一定にし、変動の無い安定した液面を有する塗布装置を得ることができる。
請求項2の発明は、請求項1において、前記体積要素は、固体部材であることを特徴とする。
本発明によれば、取扱性のよい体積要素を確保することにある。
請求項3の発明は、請求項2において、前記固体部材は、前記ワークの引き上げ方向に直交する面内において前記ワークと同一の断面積を有することを特徴とする。
本発明によれば、ワークの投入・排出速度と、体積要素の投入・排出速度を同一にすることができる。
【0012】
請求項4の発明は、請求項2又は3において、前記固体部材は、前記ワークと同一の外形形状を有することを特徴とする。
本発明によれば、ワークの投入・排出速度と、体積要素の投入・排出速度を同一にすることができる。
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れか一項において、前記ワーク投入・排出機構により前記ワークを前記液槽内に投入・排出させる動作と、前記体積要素投入・排出機構により前記体積要素を前記液槽内に投入・排出させる動作とを連動させる連動機構を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、ワークと体積要素を駆動するための機構(アクチエータ)を連動させて1ユニット化することができる。
請求項6の発明は、請求項1において、前記体積要素は、塗布液であることを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項1において、前記体積要素は補助タンクであり、該補助タンクを上下に動かすことにより、前記塗布液を液槽内に投入・排出させることを特徴とする。
本発明によれば、液体の体積要素の投入・排出機構を得ることができる。
【0013】
請求項8の発明は、請求項7において、重力の作用する方向と直交する面内における前記補助タンクの断面積と前記ワークの断面積とが同一であることを特徴とする。
本発明によれば、ワークの投入・排出速度と、補助タンクの上下移動速度を同一にすることができる。
請求項9の発明は、請求項7又は8において、前記補助タンクの内部形状と前記ワークの外形形状とが同一であることを特徴とする。
本発明によれば、ワークの投入・排出速度と、補助タンクの上下移動速度を同一にすることができる。
請求項10の発明は、請求項7乃至9の何れか一項において、前記補助タンクは前記ワーク投入・排出機構に固定され、前記ワークと同時に上下動することを特徴とする。
本発明によれば、ワークと補助タンクの駆動機構(アクチエータ)を1つにすることができる。
請求項11の発明は、請求項1乃至10の何れか一項において、前記塗布液の液面高さを検知する液面センサと、該液面センサの出力に応じてワーク投入・排出機構、又は体積要素投入・排出機構の何れか一方、若しくは両方の動作を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、液面の高さを検知し、ディッピング開始位置を制御することができる。
【0014】
請求項12の発明は、請求項1乃至11の何れか一項において、前記液槽内に新たな塗布液を補充する補充手段を備えることを特徴とする。
本発明によれば、液槽に常に一定の塗布液を確保することができる。
請求項13の発明は、請求項1乃至12の何れか一項において、前記塗布液のろ過手段を有することを特徴とする。
本発明によれば、塗布液に混入した異物を除去することができる。
請求項14の発明は、液槽内に収容された塗布液内にワークを投入・排出させて前記塗布液を前記ワークに塗布する方法において、前記塗布液を前記液槽に収容する工程と、前記ワークの投入・排出動作と同期させながら前記ワークとは異なる体積要素を前記塗布液内に投入・排出動作させる工程と、からなり、前記塗布液の液面高さを一定に維持することを特徴とする。
本発明によれば、ワークが液槽に投入・排出されても、液面高さを一定にし、変動の無い安定した液面を有する塗布方法を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1によれば、長尺なワークであっても、数μmオーダの均一な薄い塗膜を高速に形成し、レジストを劣化させず、効率よく塗布することができる。
請求項2によれば、液面高さを調整することができる。
請求項3によれば、簡便な制御系でディッピングが可能になる。
請求項4によれば、簡便な制御系でディッピングが可能になる。
請求項5によれば、アクチエータ数を減らせるので、装置がコンパクトになりコストを低減できる。
請求項6によれば、液面高さを調整することができる。
請求項7によれば、液面高さを一定に保つことができる。
請求項8、9によれば、簡便な制御系でディッピングが可能になる。請求項3に同じ。
請求項10によれば、装置をコンパクトにでき、コストを低減できる。
請求項11によれば、ディッピング開始位置を決定することができる。
請求項12によれば、消耗した塗布液を補充し、液面高さを一定にすることができる。
請求項13によれば、長尺なワークであっても、数μmオーダーの均一な薄い塗膜を高速に形成し、レジストを劣化させず、効率よく塗布することができる。
請求項14によれば、長尺なワークであっても、数μmオーダーの均一な薄い塗膜を高速に形成し、レジストを劣化させず、効率よく塗布する方法を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。
図1(a)(b)及び(c)は本発明の塗布装置の原理を示す図であり、溶液中への体積要素の投入状態を示した図である。
即ち、本発明のディッピング法により塗布液をワークWに塗布する塗布装置1は、塗布液10を入れた液槽2と、ワークWを塗布液10中に投入・排出させるワーク投入・排出機構と、ワーク投入・排出機構によるワークの投入・排出動作と同期させながら、ワークとは異なる体積要素を塗布液中に投入・排出動作させる体積要素投入・排出機構と、により、液槽内の塗布液の液面高さを一定に維持するように構成したものである。
ワーク投入・排出機構、体積要素投入・排出機構としては、ワーク、或いは体積要素を保持して一定の軌道で進退動作させ得る保持手段、移動機構(ギヤ、プーリ、ワイヤ等々)、及び駆動源(モータ、ソレノイド)を備えたものを利用することができる。
本実施形態によれば、同一の液槽2内の塗布液10中に体積要素を投入・排出することで、ワークWが塗布液に投入・排出されても、液面の高さを一定に保つことができる。
【0017】
図1(a)の塗布装置1は、上面が開放した筒状の液槽2の底部(体積要素=固体部材)3が図示しない体積要素投入・排出機構(アクチュエータ)によって上下動作する構成を備えており、底部(底板)3が上下動作することによって、ワークWの投入、排出によって塗布液(例えば、レジスト液)10の液面が上下に変動することを防ぐことができる。
図1(b)は他の実施形態に係る塗布装置1を示し、この塗布装置1では、液槽2の底板3に設けた気密穴3aから液槽内の塗布液10中に体積要素としての固体部材4が出没するように上下動作する。1つ、又は複数の固体部材4を塗布液内に出没させることにより液面高さを制御する。このときワークWと固体部材(体積要素)4の外形形状が異なる場合には、塗布液中に投入・排出される体積も異なってくるので、ワークWと固体部材4の投入・排出速度を異ならせる必要があり、制御性は低下する。一方、ワークWの引き上げ方向(垂直方向)に直交する面内(水平面内)における固体部材4の断面積とワークWの断面積とが等しければ、ワークと固体部材の投入・排出速度を同じにすることにより液槽の液面を一定にできるので、制御性がよくなるというメリットがある。例えば、図1(c)に示すように、液槽2の側面に設けた気密穴2aからワークWの外形状と同じ外形状の固体部材(体積要素)5が漏れ止めシール部(図示せず)を介して塗布液10中に出入りするように構成した場合には、ワークWの体積と、塗布液中に投入・排出される固体部材5の体積が同一なので、ワークと固体部材5を同じ速度(方向は反対)にて投入・排出することができる。また液面高さを検出する超音波センサ(図示せず)で、塗布液の液面高さを検出するように構成する。そして、図示しない制御手段は、超音波センサからの検知情報により液面高さが規定の高さに無い場合には、体積要素投入・排出機構を作動させて固体部材5を投入・排出して液面が規定の高さになるように制御する。
【0018】
図2(a)乃至(e)は複数のワークW1、W2を別個の液槽A、B内にディッピングする場合の構成例、手順を示す図である。例えば、底面が平坦な1つ或いは複数の円筒状液槽2を水平な面上に設置し、それぞれの液槽2の側面間を配管15で接続して連通させ、液槽内の塗布液が移動できるようにする。図2は2つのワークW1、W2を2つの液槽A、Bに夫々浸漬する場合の例である。
まず、図2(a)では液槽AにはワークW1を未投入とし、液槽BにはワークW2を投入した状態にする。両ワークW1、W2は同じ外形状を有している。次に、図2(b)のように液槽AにワークW1を所望の速度で投入し、同じ速度、及びタイミングで液槽BからワークW2を排出する。液槽AではワークW1の体積分だけ液面が盛り上がることになるが、この余分な塗布液10は配管15で接続された液槽Bに流れ込むことで液槽Aの液面は一定になる。液槽Bでは流れ込んだ塗布液で液面が盛り上がることになるが、予め投入されていたワークW2を引き上げて排出することでワークW2分の体積が減り、結果的に両液槽内の液面の高さは一定になる。したがって、2つのワークの投入・排出速度を同じにすれば、液槽A、Bの液面は常に一定となる。このときワークの投入・排出のために少なくとも2つ以上のアクチエータ(ワーク投入・排出機構、図示せず)により駆動することが必要である。
【0019】
次いで、図2(c)に示すように液槽B側でワークW2を引き上げ、ワークW2の底面が液面と一致した時点一旦停止させ、表面張力でワークW2に付着した余分な液を塗布液に戻す。
次に、図2(d)に示すように、引き上げたワークW2に代えて、液槽B内に新しいワークW2`を投入する。次に、図2(e)に示すように(a)とは逆に、液槽AからワークW1を引き上げ、液槽Bには液槽AのワークW1と同じ速度でワークW2`を投入する。以降、図2(b)乃至(d)の工程を液槽A、Bを逆にして順次繰り返す。もちろん、塗布液はワークに塗工されるので、液面は少しずつではあるが低下していく。その場合は、塗布液を液槽内に補充するか、または適切な分散媒で塗布液の粘度や濃度を調整しながら液面の高さを元に戻す。また液面高さを検出する超音波センサ(図示せず)で、塗布液の液面高さを検出する。液面高さが規定の高さに無い場合には、ワークを投入・排出して規定の高さになるように制御する。
【0020】
図3(a)(b)は図2のワーク投入・排出手順を別構成で実現した例を示している。図2では2つのワークに夫々対応して少なくとも2つ以上のアクチエータが必要であった。図3(a)ではワークを投入・排出するための図示しないワーク投入・排出機構(アクチエータ)の個数を減らすために、液槽Aと液槽Bに夫々投入・排出されるワークW1、W2、若しくはワークの把持機構(図示せず)をワイヤー16で接続し、ワイヤー16を滑車17に巻き回して吊り下げる構造になっている。この構造によれば、滑車17を回転させるためのワーク投入・排出機構を1つ用いるだけで塗布装置全体を駆動することができる。もちろん、滑車側ではなく、ワイヤー16側に駆動用のアクチエータを用いてもよい。また必ずしもワイヤーである必要はなく、金属または樹脂のベルトやチェーンなどでも構わない。
図3(b)のように、滑車の替わりに天秤状のリンク機構18を用いても同様の効果を発揮する。即ち、支点18aにより天秤棒18bの中心部を支持すると共に、天秤棒18bの両端部にワイヤー(或いは、金属製のアーム等の棒材)18cを取り付けて垂らし、その先端に各ワークW1、W2を取り付けても良い。
このようにワーク投入・排出機構によりワークを液槽内に投入・排出させる動作と、体積要素投入・排出機構により体積要素を液槽内に投入・排出させる動作とを連動させる連動機構を備えることにより、両機構を一つのユニット化することができる。
【0021】
次に、図4(a)乃至(d)は液槽の構成例を示すものである。図4(a)は図2で使用した液槽の構成例である。或いは、液槽2として図4(b)のようにU字管を用いてもよいし、(c)のように8の字形状の液槽2で行ってもよい。また、(d)のようにU字状の液槽2の両開口部に蓋19をつけて更に蒸気層を安定させるように構成してもよい。
なお、図4(a)乃至(d)に示した各構成は、あらゆるサイズ、形状のワークと液槽との間で成立する訳ではない。塗布液を使った実験によって最適な寸法パラメータがあることがわかった。ワークの膜厚が数μm、膜厚公差±1μm以下、ワーク外径がφ10〜30mm、ワーク長さ200〜400mmの場合には、次の要件を備えることが好ましい。
[1]液槽2の外径をD1、ワークWの外径をD2としたときに、D1−D2<20mmの関係を満たすこと。
[2]ワークおよび体積要素の投入・排出速度が0.1〜30mm/Secを満たすこと。
[3]液槽上面と液面の距離(蒸気層の幅)が20mm以下を満たすこと。
【0022】
次に、図5、図6を用いて、本発明の他の実施形態に係る塗布装置について説明する。
まず、図5は液槽2の底部3に設けた気密穴3aからワークWと同じ外径を有した体積要素20が内部に突出している例を示している。液槽2内に事前に濃度や粘度を調整した塗布液10が液面10aまで充填されている。この塗布液としては先に述べたように多様なものがあるが、ここでは揮発性のあるレジストを充填したものとする。液槽2の底部3に設けた気密穴3a(漏れ止めシール3b付き)を介して体積要素20である支持ロッド21が液槽内部に突出されている。漏れ止めシール3bはレジスト10との相性によって決定されるが、一般的にはフッ素系のオイルシールが用いられることが多い。
また、この支持ロッド21は塗布液の液面10aを突き抜けて上方まで伸びており、支持ロッド先端には、ワークを固定するための雄螺子状の接続ねじ21aが突出してある。この塗布液の液面10aと液槽の上端との間は蒸気層22と呼ばれ、レジスト10の溶媒が気化して滞留している。レジスト10の溶媒は空気より重いことが多いので、外部からの送風などで対流が起きなければほぼ一定の濃度を保っている。また液面の変動が無ければ、液面と液槽上端の距離が変わらないので、蒸気層22の厚さは一定である。蒸気層が一定なので、塗膜の乾燥条件も一定になり、長尺のワークを投入しても膜厚変動や、塗膜むらの発生が抑制され、高速に引き上げることができる。この蒸気層をさらに安定させるために液槽上部にふたを設置してもよい。
【0023】
図6(a)乃至(f)は図5の構成を備えた液槽2を用いてディッピングを行った例を示している。最初は図6(a)のように支持ロッド21の上部が液面10a上に出ており、ワークWは液槽の外にある状態である。次に(b)のようにワークWを支持ロッド21と接続ねじ21aで固定し、ワークWと支持ロッド21との間に隙間が無い状態にする。このときワークと支持ロッドの直径は同じなので、外観上、1つの円柱であるように見える。次に(c)のように、所望の速度で、支持ロッド21を引き下げ、塗布液10中にワークWを入れて、ワーク表面に塗布液をディップする。このときワーク投入による液面の乱れを静定させるために、約10秒程度静止する。
次に、図6(d)のように、支持ロッド21を引き上げてゆき、ワーク表面に塗布液の膜を形成する。このときワークと支持ロッドの外径が等しいので、単位時間あたりに塗布液中に投入・排出されるワーク及び支持ロッドの体積が等しくなり、液面は上下することなく一定の高さを維持する。ただし、ワークの表面に塗布液が塗布されてゆくので、その分だけ液面は若干下がってゆくが、ディッピングによる膜形成には影響しない範囲である。また、図1のような構成を備えた塗布装置の場合では、液面高さは一定であっても体積要素3、4、5の出し入れによって塗布液中で乱流が発生し、液面の乱れにつながっていたが、図6の構成では、体積要素としての支持ロッド21とワークWとが接続されているので、ワークと支持ロッドとの間に塗布液が入り込む隙間が無く、また外径も等しいのでワークを引き上げても乱流が発生しにくく、安定した液面を確保できる。
【0024】
次に図6(e)のように支持ロッド21の上側に位置するワークWの下端が液面10aに達したときにしばらく静止し、ワークと支持ロッドの間にある僅かなつなぎ目(段差)に溜まった塗布液を表面張力により液槽に戻し均一な膜を得る。この工程を省略すると、塗膜に塗布液が溜まってだまができる場合がある。
次に図6(f)のように支持ロッド21の上端部を液面10aよりも上方に突出させてワークWを支持ロッド21からはずし、ワークの乾燥工程で乾燥させて、レジストの塗膜を得る。この工程を繰り返していくと、少しずつレジストが減ってゆくため、塗布液の投入・排出口(図示せず)からレジストを追加投入して液面を常に一定にする。またレジストにごみなどが混入した場合には配管(図示せず)を経由して外部のフィルタ(図示せず)でレジストのごみを除去し、投入・排出口からレジストを再投入して常に塗布液の特性を安定にする。
【0025】
次に、図7、図8、図9を用いて他の実施形態について説明する。
この実施形態に係る塗布装置1は、2つの円筒状の液槽2の底部3間をチューブ25により連通接続しており、チューブ25を介して一方の液槽内の塗布液10を他方の液槽へ流入可能に構成されている。そして、一方の液槽を他方の液槽よりも所定の高い位置に配置することにより他方の液槽内の塗布液の液面の位置を所定に設定する一方で、ワークを他方の液槽内に投入した場合には一方の液槽を下降させて他方の液槽内から塗布液を一方の液槽内に移動させるようにしている。この実施形態は、体積要素として固体部材ではなく、塗布液(或いは、補助タンク)を利用している点が特徴的である。
本実施形態では、ワークWを投入する側の液槽2を液槽26、ワークWを投入しない側の液槽2を補助タンク27とする。まず最初に塗布液10を充填した液槽26内にワークWを投入することで液槽26内の液面が上昇する。このとき予め上方の退避位置に配置されていた補助タンク27を退避位置から所定距離だけ下降させることにより、チューブ25を介して液槽26に投入されたワークの体積分の塗布液10が補助タンク27側に流入する。このことによって液槽26内の液面10aの高さ位置は一定に保たれる。
【0026】
次に、図8の実施形態では、補助タンク27の内部形状がワークWの外形状と等しくなるように設定されている。図7の場合と同様にチューブ25によって液槽26と補助タンク27は接続されている。液槽26にワークWを投入することで塗布液の液面10aが上昇する、このとき補助タンク27を上方の退避位置から下降させることにより、チューブ25を介して液槽26に投入されたワークの体積分の塗布液が補助タンク27に流入する。このことによって液槽26側の液面は一定に保たれる。
ところで、重力が作用する方向と直交する面(水平面)内における補助タンク27の断面積とワークWの断面積とが同一である場合に、ワークの投入・排出速度と補助タンクの上昇・下降速度を同じにすることにより、液槽26の液面を一定にできるので制御性がよくなるというメリットがある。補助タンク27の内部形状がワークの外形形状と等しければ、ワークの投入・排出速度と補助タンクの上昇・下降速度を同一にすることができ、制御性が向上する。
【0027】
次に、図9により図8の実施形態を実現するための装置構成を説明する。
垂直に配置された直動ステージ31の移動テーブル32に保持機構(図示せず)を介してワークWが固定されている。この移動テーブル32にはワークWの外形形状と同一の内部形状を有する補助タンク27が固定されている。補助タンク27と液槽26はチューブ25を介して接続され、塗布液10が互いに流入可能である。このとき直動ステージ31を駆動して、移動テーブル32を下降させると、ワークWが塗布液10中に浸漬する。補助タンク27もワークWと同様に移動テーブル32に固定されていて一体に昇降するので、チューブ25を介して液槽26の塗布液10が補助タンク27に流入する。この流入量はワークが塗布液中に浸漬した体積と同じであるので、結果的に液面10aは一定に維持される。移動テーブル32が上昇してワークが塗布液から排出される場合には先のとは逆になり、結果として液面の高さは同じに維持される。
移動テーブル32を備えた直動ステージ31、保持機構は、ワーク投入・排出機構を構成している。
補助タンク27は、ワーク投入・排出機構に固定され、ワークと同時に上下動するため、補助タンク、或いは塗布液を体積要素して利用して液面を安定化させることができる。
また、塗布液の液面高さを検知する図示しない液面センサを設け、該液面センサの出力に応じてワーク投入・排出機構、又は体積要素投入・排出機構の何れか一方、若しくは両方の動作を制御する制御手段(CPU)と、を備えることにより、自動制御による液面の安定化が可能となる。
【0028】
次に、図10は図2に示した本発明に係る塗布装置を量産に適した構成とする場合の構成例を示している。
この塗布装置40は、複数の液槽Aから成るA列と、複数の液槽Bから成るB列と、これらの底部を支えるベース41と、を備えている。前後位置関係で隣接し合う各液槽Aと各液槽Bとは、ベース21内部に設置された配管により底部間をそれぞれ連通接続されている。図2で説明したように、先に手前側にあるB列の各液槽B内にワークW2を入れておき、A組の各液槽A内のワークW1は液槽Aから出しておく。次にB組の各ワークW2を各液槽Bから引き上げると同時に、A組の各ワークW1をB組と同じ速度で液槽Aに投入することで、両液槽A、B内の液面の高さを一定にし、蒸気層の幅も一定にする。このような構成をとることで、空気に触れる面積を最小限にし、酸化しやすいレジストを使い切ることができる。また、液面を安定化することで、塗膜むらやワークの上端と下端で膜厚のばらつきを低減し、蒸気層の幅を一定にすることで、高速に引き上げることができる。
なお、液槽内に新たな塗布液を補充する図示しない補充手段を備えることにより、消耗した塗布液を補充し、液面高さを一定にすることができる。
また、図示しない塗布液のろ過手段を有することにより、長尺なワークであっても、数μmオーダーの均一な薄い塗膜を高速に形成し、レジストを劣化させずに効率良く薄膜を均一に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】(a)(b)及び(c)は本発明の塗布装置の原理を示す図であり、溶液中への体積要素の投入状態を示した図である。
【図2】(a)乃至(e)は他の実施形態に係る塗布装置による塗布手順を示す図である。
【図3】(a)及び(b)は体積要素投入・排出機構の構成例を示す図である。
【図4】(a)乃至(d)は液槽の構成例を示す図である。
【図5】(a)及び(b)は本発明の他の実施形態に係る塗布装置の構成、及び動作説明図である。
【図6】(a)乃至(f)は図5の構成を備えた液槽を用いてディッピングを行った例を示した図である。
【図7】他の実施形態に係る塗布装置の構成を示す図である。
【図8】図7の変形例を示す図である。
【図9】(a)及び(b)は図8の実施形態を実現するための装置構成を説明する図である。
【図10】図2に示した本発明に係る塗布装置を量産に適した構成とする場合の構成例を示す図である。
【図11】(a)及び(b)はディッピング法の概念図である。
【符号の説明】
【0030】
1…塗布装置、2…液槽、2a…気密穴、3…底板、3a…気密穴、3b…シール、4…固体部材、5…固体部材、10…塗布液、10a…液面、15…配管、16…ワイヤー、17…滑車、18…リンク機構、18a…支点、18b…天秤棒、19…蓋、20…体積要素、21…ベース、21…支持ロッド、22…蒸気層、25…チューブ、26…液槽、27…補助タンク、31…直動ステージ、32…移動テーブル、40…塗布装置、41…ベース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディッピング法により塗布液をワークに塗布する塗布装置において、
前記塗布液を収容した液槽と、
前記ワークを前記塗布液中に投入・排出させるワーク投入・排出機構と、
前記ワークとは異なる体積要素を前記塗布液中に投入・排出動作させる体積要素投入・排出機構と、を備え、
前記ワーク投入・排出機構による前記ワークの投入・排出動作と同期させながら前記体積要素投入・排出機構を作動させることにより、前記液槽内の塗布液の液面高さを一定に維持するように構成したことを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
請求項1において、前記体積要素は、固体部材であることを特徴とする塗布装置。
【請求項3】
請求項2において、前記固体部材は、前記ワークの引き上げ方向に直交する面内において前記ワークと同一の断面積を有することを特徴とする塗布装置。
【請求項4】
請求項2又は3において、前記固体部材は、前記ワークと同一の外形形状を有することを特徴とする塗布装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項において、前記ワーク投入・排出機構により前記ワークを前記液槽内に投入・排出させる動作と、前記体積要素投入・排出機構により前記体積要素を前記液槽内に投入・排出させる動作とを連動させる連動機構を備えたことを特徴とする塗布装置。
【請求項6】
請求項1において、前記体積要素は、塗布液であることを特徴とする塗布装置。
【請求項7】
請求項1において、前記体積要素は補助タンクであり、該補助タンクを上下に動かすことにより、前記塗布液を液槽内に投入・排出させることを特徴とする塗布装置。
【請求項8】
請求項7において、重力の作用する方向と直交する面内における前記補助タンクの断面積と前記ワークの断面積とが同一であることを特徴とする塗布装置。
【請求項9】
請求項7又は8において、前記補助タンクの内部形状と前記ワークの外形形状とが同一であることを特徴とする塗布装置。
【請求項10】
請求項7乃至9の何れか一項において、前記補助タンクは前記ワーク投入・排出機構に固定され、前記ワークと同時に上下動することを特徴とする塗布装置。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか一項において、前記塗布液の液面高さを検知する液面センサと、該液面センサの出力に応じてワーク投入・排出機構、又は体積要素投入・排出機構の何れか一方、若しくは両方の動作を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする塗布装置。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか一項において、前記液槽内に新たな塗布液を補充する補充手段を備えることを特徴とする塗布装置。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか一項において、前記塗布液のろ過手段を有することを特徴とする塗布装置。
【請求項14】
液槽内に収容された塗布液内にワークを投入・排出させて前記塗布液を前記ワークに塗布する方法において、
前記塗布液を前記液槽に収容する工程と、前記ワークの投入・排出動作と同期させながら前記ワークとは異なる体積要素を前記塗布液内に投入・排出動作させる工程と、からなり、前記塗布液の液面高さを一定に維持することを特徴とする塗布方法。
【請求項1】
ディッピング法により塗布液をワークに塗布する塗布装置において、
前記塗布液を収容した液槽と、
前記ワークを前記塗布液中に投入・排出させるワーク投入・排出機構と、
前記ワークとは異なる体積要素を前記塗布液中に投入・排出動作させる体積要素投入・排出機構と、を備え、
前記ワーク投入・排出機構による前記ワークの投入・排出動作と同期させながら前記体積要素投入・排出機構を作動させることにより、前記液槽内の塗布液の液面高さを一定に維持するように構成したことを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
請求項1において、前記体積要素は、固体部材であることを特徴とする塗布装置。
【請求項3】
請求項2において、前記固体部材は、前記ワークの引き上げ方向に直交する面内において前記ワークと同一の断面積を有することを特徴とする塗布装置。
【請求項4】
請求項2又は3において、前記固体部材は、前記ワークと同一の外形形状を有することを特徴とする塗布装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項において、前記ワーク投入・排出機構により前記ワークを前記液槽内に投入・排出させる動作と、前記体積要素投入・排出機構により前記体積要素を前記液槽内に投入・排出させる動作とを連動させる連動機構を備えたことを特徴とする塗布装置。
【請求項6】
請求項1において、前記体積要素は、塗布液であることを特徴とする塗布装置。
【請求項7】
請求項1において、前記体積要素は補助タンクであり、該補助タンクを上下に動かすことにより、前記塗布液を液槽内に投入・排出させることを特徴とする塗布装置。
【請求項8】
請求項7において、重力の作用する方向と直交する面内における前記補助タンクの断面積と前記ワークの断面積とが同一であることを特徴とする塗布装置。
【請求項9】
請求項7又は8において、前記補助タンクの内部形状と前記ワークの外形形状とが同一であることを特徴とする塗布装置。
【請求項10】
請求項7乃至9の何れか一項において、前記補助タンクは前記ワーク投入・排出機構に固定され、前記ワークと同時に上下動することを特徴とする塗布装置。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか一項において、前記塗布液の液面高さを検知する液面センサと、該液面センサの出力に応じてワーク投入・排出機構、又は体積要素投入・排出機構の何れか一方、若しくは両方の動作を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする塗布装置。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか一項において、前記液槽内に新たな塗布液を補充する補充手段を備えることを特徴とする塗布装置。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか一項において、前記塗布液のろ過手段を有することを特徴とする塗布装置。
【請求項14】
液槽内に収容された塗布液内にワークを投入・排出させて前記塗布液を前記ワークに塗布する方法において、
前記塗布液を前記液槽に収容する工程と、前記ワークの投入・排出動作と同期させながら前記ワークとは異なる体積要素を前記塗布液内に投入・排出動作させる工程と、からなり、前記塗布液の液面高さを一定に維持することを特徴とする塗布方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−213980(P2009−213980A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58490(P2008−58490)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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