説明

塩素含有量の少ないエポキシカルボキシレート化合物、その誘導体、それを含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物およびその硬化物

【課題】本発明は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に求められる感度、現像性、密着性、半田耐熱、柔軟性、メッキ耐性などの諸性能を低下させること無く、高温高湿下で優れた電気的信頼性を得ることが出来ることを目的とする。
【解決手段】全塩素含有量が300ppm以下の一般式(1)で示されるエポキシ樹脂(a)に、一分子中に重合可能なエチレン性不飽和基とカルボキシル基を併せ持つ化合物(b)及び/又は一分子中に水酸基とカルボキシル基を併せ持つ化合物(c)を反応させて得られるエポキシカルボキシレート化合物(A)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全塩素含有量が300ppm以下の多環式炭化水素基を有するエポキシ樹脂(a)に、分子中に重合可能なエチレン性不飽和基とカルボキシル基を併せ持つ化合物(b)及び/又は分子中に水酸基とカルボキシル基を併せ持つ化合物(c)を反応させて得られるエポキシカルボキシレート化合物(A)、その酸変性物であるポリカルボン酸化合物(B)、それらを含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、並びにその硬化物に関する。これらエポキシカルボキシレート化合物(A)及びポリカルボン酸化合物(B)は全塩素含有量が従来の50%以下の為、高温高湿下での電気特性や金属腐食性を大幅に改善することができる。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板は、携帯機器の小型軽量化や通信速度の向上のために、高精度化や高密度化が求められ、それに伴いその配線板の回路自体を被覆するソルダーレジストへの要求も増々高度となり、従来の要求以上の耐熱性、熱安定性と共に高い信頼性、特に高温高湿下での電気特性に優れたものが要求されている。
【0003】
特許文献1には、多環式炭化水素基を有するエポキシ樹脂を基本骨格とした酸変性エポキシアクリレート化合物とその硬化物が記載されており、その硬化物は比較的高い強靭性を有する。また、これを用いたソルダーレジストとしての用途についても記載されている。
【0004】
このソルダーレジストは比較的高い信頼性を有してはいるものの、近年求められている輸送機器等の電子化に伴うより高い信頼性までには至っていない。
【0005】
一方、特許文献2等には、一般的なエポキシ樹脂、例えばノボラック型エポキシ樹脂にアクリル酸と水酸基を有するカルボン酸化合物を反応させて得られるエポキシカルボキシレート化合物が、低酸価でありながら優れた希アルカリ水溶液での現像性を有し、溶剤の乾燥時間にも現像性が依存しない、すなわち高温に対して比較的高い信頼性をもつことが記載されている。さらに、この化合物がレジストインキ適性を有することも記載されている。
【0006】
特許文献3には硬化物の塩素分が20ppm以下の表面保護膜用樹脂ペーストが記載されている。特許文献3には、硬化物中の不純物である塩素イオンが配線金属のマイグレーションを促進し、絶縁信頼性を維持できないことも記載されている。また、特許文献4には硬化物の塩素分が20ppm以下のLED用エポキシ樹脂組成物が記載されている。特許文献4には、高温高湿環境下の加水分解性塩素によるアルミニウムの酸化によって、LEDの輝度が劣化することが記載されている。しかしながら、これら文献に記載の発明は、塩素を含む樹脂以外の成分の比率を一定以上にすることで、樹脂組成物全体の塩素分を下げるものである。
【0007】
【特許文献1】特開平05−214048号公報
【特許文献2】特開平06−324490号公報
【特許文献3】特開2006−169351号公報
【特許文献4】特開平6−296044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記の多環式炭化水素基を有するエポキシ樹脂を含有する硬化型樹脂組成物は比較的信頼性の高い硬化物を得ることができるが、極めて高い信頼性を求められる輸送機器等への材料に用いるにはまだ不十分である。
【0009】
特に、近年活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には温度、湿度などに対してより高い信頼性を有すること、例えば、電気特性、悪条件下での駆動、耐衝撃性に優れていることが求められているうえ、微細加工性も要求されている。この際、感度、現像性、密着性、半田耐熱、柔軟性、メッキ耐性などは従来品と同等以上の性能を有することが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、全塩素含有量が300ppm以下の一般式(1)で示されるエポキシ樹脂(a)に、一分子中に重合可能なエチレン性不飽和基とカルボキシル基を併せ持つ化合物(b)及び/又は一分子中に水酸基とカルボキシル基を併せ持つ化合物(c)を反応させて得られるエポキシカルボキシレート化合物(A)が、特に優れた信頼性を有し、前記課題を解決することを見出した。
【0011】
即ち、本発明は、全塩素含有量が300ppm以下の下記一般式(1)で示されるエポキシ樹脂(a)に、一分子中に重合可能なエチレン性不飽和基とカルボキシル基を併せ持つ化合物(b)及び/又は一分子中に水酸基とカルボキシル基を併せ持つ化合物(c)を反応させて得られるエポキシカルボキシレート化合物(A)に関する。
【0012】
【化1】

【0013】
[式中、Rは同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素数1〜4の炭化水素基を示し、nは平均値で1〜10の正数を示す。]
【0014】
さらに、前記エポキシカルボキシレート化合物(A)に多塩基酸無水物(d)を反応させて得られるポリカルボン酸化合物(B)に関する。
【0015】
さらに、前記エポキシカルボキシレート化合物(A)及び/又はポリカルボン酸化合物(B)を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
【0016】
さらに、前記エポキシカルボキシレート化合物(A)及びポリカルボン酸化合物(B)以外の反応性化合物(C)を含む前記の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
【0017】
さらに、光重合開始剤を含む前記の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
さらに、着色顔料を含む前記の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
【0018】
さらに、成形用材料である前記の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
さらに、皮膜形成用材料である前記の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
さらに、レジスト材料組成物である前記の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
【0019】
さらに、前記の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物にエネルギー線を照射することを特徴とする硬化物の製造法に関する。
【0020】
さらに、前記の硬化物でオーバーコートされた物品に関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明のエポキシカルボキシレート化合物(A)及び/又はポリカルボン酸化合物(B)を用いることで、感度、現像性、密着性、半田耐熱、柔軟性、メッキ耐性などの諸性能に優れ、かつ、高温高湿下で優れた電気的信頼性有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得ることが出来る。
【0022】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、特に高い信頼性を求められるプリント配線板用ソルダーレジスト、多層プリント配線板用層間絶縁材料、フレキシブルプリント配線板用ソルダーレジスト、メッキレジスト、感光性光導波路等の用途に好ましく用いることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明のエポキシカルボキシレート化合物(A)は、全塩素含有量が300ppm以下の前記式(1)で示されるエポキシ樹脂(a)に、分子中に重合可能なエチレン性不飽和基とカルボキシル基を併せ持つ化合物(b)及び/又は一分子中に水酸基とカルボキシル基を併せ持つ化合物(c)を反応させて得られる。
【0024】
本発明において全塩素とは、エポキシ樹脂中に含まれる塩素イオン、塩素原子のすべてであり、単独で存在しているか、エポキシ樹脂の構造中に取り込まれているか、どのような態様で存在しているかを問わない。これら塩素イオン、塩素原子の由来元は特段限定されない。
【0025】
本発明のエポキシカルボキシレート化合物(A)の製造に用いられる全塩素含有量が300ppm以下のエポキシ樹脂(a)は、前記一般式(1)で示される多環式炭化水素基を有するエポキシ樹脂である。本発明において、炭素数1〜4の炭化水素基としては例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基又はt−ブチル基等が挙げられる。本発明において、Rとしては水素原子が好ましい。
【0026】
本発明において用いられるエポキシ樹脂(a)は特開平8−301973に記載の方法で得ることができる。具体的には、フェノール類とジシクロペンタジエンを反応させる方法などの公知の方法で得られるフェノール類とジシクロペンタジエンの縮合物とエピクロルヒドリンを酸触媒の存在下において反応せしめて得ることができる。用いうるフェノール類の具体例としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,4ージメチルフェノール、2,6ージメチルフェノール、2ーtertーブチルー4ーメチルフェノール等が挙げられるが、フェノール、又は前記炭素数1〜4の炭化水素基をベンゼン環上の置換基に有するものであればこれらに限定されない。
【0027】
用いうる前記酸触媒の具体例としては、三フッ化ホウ素やその錯体類、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、硫酸、塩化チタン等のルイス酸、りん酸、硫酸、シュウ酸等の無機あるいは有機酸等を挙げることができる。これらは単独でも二種以上併用してもよい。
【0028】
前記フェノール類とジシクロペンタジエンとを反応させる方法としては、例えば、フェノール類を加熱溶融させ、そこへ触媒を添加し、均一に溶解した後、50〜180℃、好ましくは80〜150℃でジシクロペンタジエンを滴下する。前記方法以外にも、ジシクロペンタジエンと触媒の混合物に対してフェノール類を添加しても良いし、ジシクロペンタジエンとフェノール類の混合物に触媒を徐々に添加してもよい。これら原料の使用量はジシクロペンタジエン1モルに対して、酸触媒0.001〜0.1モル、好ましくは0.005〜0.10モルとフェノール類0.1〜10モル、好ましくは0.3〜4モルである。それぞれの原料の添加時間は、前記したような原料の配合方法及びフェノール類の種類により異なるが、1〜10時間、その後数時間反応させ、次に未反応モノマーを減圧加熱蒸留により留去することにより、フェノール類とジシクロペンタジエンとの縮合物が得られる。
【0029】
次に、前記縮合物に、非プロトン性極性溶媒中アルカリの存在下でエピクロルヒドリンを反応させる。非プロトン性極性溶媒を用いることで、合成されるエポキシ樹脂中の全塩素含有量が低く抑えられる。用いうる非プロトン性極性溶媒の具体例としてはジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられ、特にジメチルスルホキシドが好ましい。
【0030】
この反応は、前記縮合物とエピクロルヒドリン、非プロトン性極性溶媒の混合物に水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の固体を一括して添加し、または分割して添加しながら20〜120℃の間の温度で行われる。この際アルカリ金属水酸化物は水溶液を使用してもよく、その場合は該アルカリ金属水酸化物を連続的に添加すると共に反応混合物内から減圧下、または常圧下において、連続的に水及びエピクロルヒドリンを留出せしめる。更に分液して水は除去し、エピクロルヒドリンを反応混合物内に連続的に戻す方法でもよい。
【0031】
前記の方法においてエピクロルヒドリンの使用量は前記縮合物の水酸基1当量に対して通常0.5〜20モル、好ましくは0.7〜10モルである。アルカリ金属水酸化物の使用量は前記縮合物の水酸基1当量に対し通常0.5〜1.5モル、好ましくは0.7〜1.2モルの範囲である。また、非プロトン性極性溶媒の使用量はエピクロルヒドリンの重量に対し通常5〜200重量%、好ましくは10〜100重量%の範囲である。この反応は通常1〜20時間の範囲で行われる。この反応により、粗エポキシ樹脂が得られる。
【0032】
得られた粗エポキシ樹脂のエピクロルヒドリン溶液を水洗後、または水洗無しに加熱減圧下(好ましくは130℃以下の温度で)過剰のエピクロルヒドリン及び溶媒を除去した後、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン等の溶媒に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えて反応(脱ハロゲン処理)を行う。この場合アルカリ金属水酸化物の使用量は前記縮合物の水酸基1当量に対して0.01〜0.2モル、好ましくは0.03〜0.13モルである。
【0033】
また、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン等の溶媒の使用量は、前記粗エポキシ樹脂100重量部に対して、通常100〜400重量部、好ましくは150〜300重量部である。また、この反応の際、前記溶媒の一部を非プロトン性極性溶媒やアルコール類、ジオキサン等で置き換えてもよく、その場合のこれら溶媒の使用量は前記粗エポキシ樹脂100重量部に対して、通常100重量部以下、好ましくは60重量部以下である。処理温度は通常50〜120℃の間で行われ、処理時間は通常0.5〜4時間である。
【0034】
処理終了後副生した塩をろ過、水洗などにより除去し、さらに加熱減圧下トルエン、メチルイソブチルケトン等の溶媒を留去することにより本発明において用いられるエポキシ樹脂(a)を得ることができる。
【0035】
原料であるエポキシ樹脂(a)中の全塩素量が本発明のエポキシカルボキシレート化合物(A)を使用した活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物の高温高湿下での電気特性に大きな影響を与える。全塩素量はより低い方が好ましいが、本発明において、上限は300ppmである。なお、全塩素量は樹脂(a)を燃焼し、ガスを純水に吸着させた後、イオンクロマトグラフィーによって測定することができる。
【0036】
なお、エポキシ樹脂(a)は、市場からは日本化薬製 XD−1000−LCL等として入手もできる。
【0037】
本発明のエポキシカルボキシレート化合物(A)の製造に用いられる一分子中に重合可能なエチレン性不飽和基とカルボキシル基を併せ持つ化合物(b)(以下、「化合物(b)」という)は、硬化の際の活性エネルギー線への反応性を付与するために用いる化合物であり、これらにはモノカルボン酸化合物やポリカルボン酸化合物が挙げられる。
【0038】
一分子中にカルボキシル基をひとつ含むモノカルボン酸化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸類やクロトン酸、α−シアノ桂皮酸、桂皮酸、或いは飽和または不飽和二塩基酸と不飽和基含有モノグリシジル化合物との反応物が挙げられる。
【0039】
(メタ)アクリル酸類としては、例えば、(メタ)アクリル酸、β−スチリルアクリル酸、β−フルフリルアクリル酸、(メタ)アクリル酸二量体、(メタ)アクリル酸とε−カプロラクトンとの反応生成物、飽和または不飽和二塩基酸無水物と一分子中に一個の水酸基を有する(メタ)アクリレート誘導体との当モル反応物である半エステル類、飽和または不飽和二塩基酸とモノグリシジル(メタ)アクリレート誘導体類との当モル反応物である半エステル類等が挙げられる。
【0040】
一分子中にカルボキシル基を複数有するポリカルボン酸化合物としては、例えば、一分子中に複数の水酸基を有する(メタ)アクリレート誘導体と二塩基酸無水物との当モル反応物である半エステル類等が挙げられる。これらのうち最も好ましくは、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物としたときの活性エネルギー線に対する感度の点で(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸とε−カプロラクトンとの反応生成物または桂皮酸が挙げられる。
【0041】
本発明のエポキシカルボキシレート化合物(A)の製造に用いられる化合物(b)としては、化合物中に水酸基を有さないものが好ましい。本発明においては前記(メタ)アクリル酸類、中でも(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0042】
本発明のエポキシカルボキシレート化合物(A)の製造において用いられる一分子中に水酸基とカルボキシル基を併せ持つ化合物(c)(以下、「化合物(c)」という)は、エポキシカルボキシレート化合物に水酸基を導入するために用いる化合物であり、これらには一分子中に一個の水酸基と一個のカルボキシル基を併せ持つ化合物、一分子中に二つ以上の水酸基と一個のカルボキシル基を合わせもつ化合物、一分子中に一個以上の水酸基と二個以上のカルボキシル基を併せ持つ化合物等が含まれる。
【0043】
一分子中に一個の水酸基と一個のカルボキシル基を併せ持つ化合物としては、例えば、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシブタン酸、ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。
【0044】
一分子中に二つ以上の水酸基と一個のカルボキシル基を併せ持つ化合物としては、例えば、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等が挙げられる。
【0045】
一分子中に一個以上の水酸基と二個以上のカルボキシル基を併せ持つ化合物としては、例えば、ヒドロキシフタル酸等が挙げられる。
【0046】
本発明のエポキシカルボキシレート化合物(A)の製造において用いられる化合物(c)としては、該化合物中に重合可能なエチレン性不飽和基を有さないものが好ましい。中でも一分子中に二個の水酸基と一個のカルボキシル基を有するものが好ましく、ジメチロールプロピオン酸又はジメチロールブタン酸がさらに好ましい。
【0047】
前記のエポキシ樹脂(a)と化合物(b)と化合物(c)の反応の安定性を考慮すると、化合物(b)および化合物(c)はモノカルボン酸類であることが好ましい。モノカルボン酸とポリカルボン酸を併用する場合には、モノカルボン酸の総計モル量/ポリカルボン酸の総計モル量で表される値が15以上であることが好ましい。
【0048】
本発明のエポキシカルボキシレート化合物(A)の製造におけるエポキシ樹脂(a)と、化合物(b)および化合物(c)のカルボン酸基総計の仕込み割合としては、用途に応じて適宜変更すればよい。即ち、全てのエポキシ基をカルボキシレート化した場合は未反応のエポキシ基が残存しないために、エポキシカルボキシレート化合物としての保存安定性は高い。この場合は、導入した不飽和基による反応性のみを利用することになる。
【0049】
一方、化合物(b)および化合物(c)の仕込み量を減量し未反応のエポキシ基を残すことにより、導入した不飽和基による反応性と残存エポキシ基による反応性を複合的に利用すること、即ち、光カチオン触媒による重合反応や熱重合反応の利用が可能である。しかし、この場合にはエポキシカルボキシレート化合物の保存及びその製造条件には注意を払う必要がある。
【0050】
エポキシ基を残存させないエポキシカルボキシレート化合物(A)を製造する場合、化合物(b)および化合物(c)のカルボキシル基の総計が前記エポキシ樹脂(a)1当量に対し90〜120当量%であることが好ましい。この範囲であれば比較的安定な条件での製造が可能である。これよりも化合物(b)および化合物(c)の仕込み量が多い場合、過剰のカルボン酸化合物(b)が未反応状態で残存してしまうために好ましくない。
【0051】
また、エポキシ基を残す場合には、化合物(b)および化合物(c)のカルボキシル基の総計が、前記エポキシ樹脂(a)1当量に対し20〜90当量%であることが好ましい。もちろんこの場合は、製造中のゲル化やエポキシカルボキシレート化合物(A)の経時安定性に十分な注意が必要である。20当量%未満の場合、導入したエチレン性不飽和基と、残されたエポキシ基による複合硬化による効果が薄くなる。
【0052】
本発明のエポキシカルボキシレート化合物(A)の製造において、化合物(b)と化合物(c)の使用比率は、それぞれのカルボキシル基のモル比において化合物(b):化合物(c)が9:1〜1:9、さらには4:6〜8:2の範囲が好ましい。この範囲であれば活性エネルギー線への感度が良好であり、また、エポキシカルボキシレート化合物(A)に多塩基酸無水物(d)を反応させるために十分な水酸基を導入することができる。
【0053】
本エポキシカルボキシレート化反応は無溶剤若しくは溶剤で希釈して反応させることが出来る。溶剤はエポキシカルボキシレート化反応に影響しない溶剤であれば特に限定はない。
【0054】
溶剤の使用量は得られる樹脂の粘度や使途により適宜調整すればよく、好ましくは固形分((a)、(b)、(c)の総和)に対して90〜30質量%、より好ましくは80〜50質量%となるように用いればよい。
【0055】
該溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等の芳香族系炭化水素溶剤、ヘキサン、オクタン、デカン等の脂肪族系炭化水素溶剤及びそれらの混合物である石油エーテル、ホワイトガソリン、ソルベントナフサ等が挙げられる。
【0056】
該溶剤としてはエステル系溶剤でもよく、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のアルキルアセテート類、γ−ブチロラクトン等の環状エステル類、エチレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルモノアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルモノアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、ブチレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート等のモノ若しくはポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルモノアセテート類、グルタル酸ジアルキル、コハク酸ジアルキル、アジピン酸ジアルキル等のポリカルボン酸アルキルエステル類等が挙げられる。
【0057】
該溶剤としてはエーテル系溶剤でもよく、例えば、ジエチルエーテル、エチルブチルエーテル等のアルキルエーテル類、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類等が挙げられる。
【0058】
該溶剤としてはケトン系溶剤でもよく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等が挙げられる。
【0059】
更に、後記のエポキシカルボキシレート(A)、ポリカルボン酸化合物(B)以外の反応性化合物(C)から選ばれる単独または混合有機溶媒中で行うことができる。この場合、硬化型組成物として使用するに際し、そのまま利用することが出来るので好ましい。
【0060】
エポキシカルボキシレート化反応時には、反応を促進させるために触媒を使用することが好ましく、該触媒を使用する場合、その使用量は反応物の総量に対して0.1〜10質量%程度である。その際の反応温度は60〜150℃であり、反応時間は好ましくは5〜60時間である。
【0061】
該触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムイオジド、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビン、メチルトリフェニルスチビン、オクタン酸クロム、オクタン酸ジルコニウム等の塩基性触媒等が挙げられる。
【0062】
また、熱重合禁止剤の使用が好ましく、該熱重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2−メチルハイドロキノン、ハイドロキノン、ジフェニルピクリルヒドラジン、ジフェニルアミン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン等が挙げられる。
【0063】
本エポキシカルボキシレート化反応は、適宜サンプリングしながら反応物の酸価が5mgKOH/g以下、好ましくは2mgKOH/g以下となった時点を終点とする。酸価はJIS K 0070:1992に準じて測定することができる。
【0064】
こうして得られたエポキシカルボキシレート化合物(A)の好ましい分子量範囲としては、GPC(ゲルろ過クロマトグラフィー)におけるポリスチレン換算重量平均分子量が800から30,000の範囲であり、より好ましくは1,500から20,000である。
【0065】
この分子量よりも小さい場合には硬化物の靭性が充分に発揮されず、また、これよりも大きい場合には、粘度が高くなり塗工等が困難となる。
【0066】
次に、本発明のポリカルボン酸(B)について説明する。ポリカルボン酸(B)は前記エポキシカルボキシレート化合物(A)に多塩基酸無水物(d)を反応させて得られる。
【0067】
この酸付加工程によりカルボキシル基を導入する理由としては、例えば、レジストパターニング等が必要とされる用途において活性エネルギー線非照射部にアルカリ水への可溶性を付与させること、及び金属、無機物等への密着性を付与させること等である。
【0068】
この酸付加工程は、エポキシカルボキシレート化合物の水酸基に多塩基酸無水物(d)を反応させてエステル結合を介してカルボキシル基を導入するものである。
【0069】
該多塩基酸無水物(d)としては、例えば、一分子中に環状酸無水物構造を有する化合物であればすべて用いることができるが、アルカリ水溶液現像性、耐熱性、加水分解耐性等に優れた無水コハク酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水イタコン酸、3−メチル−テトラヒドロ無水フタル酸、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸または無水マレイン酸が好ましい。本発明においてはテトラヒドロ無水フタル酸がさらに好ましい。
【0070】
多塩基酸無水物(d)を付加させる反応は、前記エポキシカルボキシレート化反応液に多塩基酸無水物(d)を加えることにより行うことができる。添加量は用途に応じて適宜変更されるべきものである。
【0071】
しかしながら、本発明のポリカルボン酸化合物(B)をアルカリ現像型のレジストとして用いる場合、多塩基酸無水物(d)を得られるポリカルボン酸化合物(B)の固形分酸価(JIS K5601−2−1:1999に準拠)が30〜120mg・KOH/g、より好ましくは40〜100mg・KOH/g、となる計算値を仕込むことが好ましい。固形分酸価がこの範囲である場合、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物のアルカリ水溶液現像性が良好な性能を示す。即ち、良好なパターニング性と過現像に対する管理幅も広く、且つ過剰の酸無水物が残留することもない。
【0072】
酸付加反応時には、反応を促進させるために触媒を使用することが好ましく、該触媒の使用量は反応物の総量に対して0.1〜10質量%程度である。反応温度は60〜150℃、反応時間は好ましくは5〜60時間である。該触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムイオジド、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビン、メチルトリフェニルスチビン、オクタン酸クロム、オクタン酸ジルコニウム等が挙げられる。
【0073】
本酸付加反応は無溶剤若しくは溶剤で希釈して反応させることが出来る。溶剤としては、酸付加反応に影響しない溶剤であれば特に限定はない。また、前工程であるエポキシカルボキシレート化反応で溶剤を使用した場合には、酸付加反応に影響しないことを条件に溶剤を除くことなく直接酸付加反応に付することもできる。
【0074】
溶剤の使用量は得られる樹脂の粘度や用途により適宜調整すればよく、好ましくは固形分に対して90〜30質量%、より好ましくは80〜50質量%になるように用いればよい。
【0075】
該溶剤としては、前記のエポキシカルボキシレート化工程に使用できる溶剤として記載した溶剤を挙げることができる。
【0076】
また、熱重合禁止剤の使用が好ましく、該熱重合禁止剤としては前記エポキシカルボキシレート化反応における熱重合禁止剤と同様のものが挙げられる。
【0077】
本酸付加反応は、適宜サンプリングしながら反応物の酸価が設定した酸価のプラスマイナス10%の範囲になった点をもって終点とする。
【0078】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物はエポキシカルボキシレート化合物(A)及び/又はポリカルボン酸化合物(B)を含む。エポキシカルボキシレート化合物(A)及び/又はポリカルボン酸化合物(B)はその用途に応じて適宜使い分けられるものである。例えば、ソルダーレジスト用途でも、現像せずに印刷法によりパターンを成形する場合や溶剤等により未反応部位を流去させる、所謂、溶剤現像型の場合にはエポキシカルボキシレート化合物(A)を用いればよく、アルカリ水により現像させる場合にはポリカルボン酸化合物(B)を用いればよい。一般的にアルカリ水現像型の方が微細なパターンを作りやすいという観点から、この用途にはポリカルボン酸化合物(B)を用いる場合が多い。もちろん併用してもなんら問題はない。
【0079】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、更にエポキシカルボキシレート化合物(A)及びポリカルボン酸化合物(B)以外の反応性化合物(C)を含んでいてもよい。
【0080】
該反応性化合物(C)としては、カチオン反応型のエポキシ樹脂(a)以外のエポキシ化合物類、ビニル化合物類等が挙げられる。
【0081】
カチオン反応型のエポキシ樹脂(a)以外のエポキシ化合物類としては特に限定されないが、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリジジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ビスフェノールA ジグリジジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ユニオン・カーバイド(株)製「サイラキュアUVR−6110」等)、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキシド(ユニオン・カーバイド(株)製「ELR−4206」等)、リモネンジオキシド(ダイセル化学工業(株)製「セロキサイド3000」等)、アリルシクロヘキセンジオキシド、3,4−エポキシ−4−メチルシクロヘキシル−2−プロピレンオキシド、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート(ユニオン・カーバイド(株)製「サイラキュアUVR−6128」等)、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)エーテル、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)ジエチルシロキサン等が挙げられる。
【0082】
ラジカル反応型のアクリレート類としては、単官能(メタ)アクリレート類;多官能(メタ)アクリレート類;ウレタンアクリレート類、ポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂(a)以外のエポキシ化合物類のエポキシアクリレート類等の反応性オリゴマー等が挙げられる。
【0083】
単官能(メタ)アクリレート類としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートモノメチルエーテル、フェニルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0084】
多官能(メタ)アクリレート類としては、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレンジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、アジピン酸エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールエチレンオキシドジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールエチレンオキシドジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールとε−カプロラクトンの反応物のポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリエチロールプロパントリ(メタ)アクリレート若しくはそのエチレンオキサイド付加物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート若しくはそのエチレンオキサイド付加物、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート若しくはそのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0085】
さらに、活性エネルギー線に反応性を有する官能基とウレタン結合を同一分子内に併せ持つウレタンアクリレート類、活性エネルギー線に反応性を有する官能基とエステル結合を同一分子内に併せ持つポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂(a)以外のエポキシ化合物類から誘導され且つ活性エネルギー線に反応性を有する官能基を同一分子内に併せ持つエポキシアクリレート類、これらを複合的に同一分子内に併せ持つ反応性オリゴマー等が挙げられる。
【0086】
ビニル化合物類としては、ビニルエーテル類、スチレン類、その他のビニル化合物が挙げられる。
【0087】
ビニルエーテル類としては、例えば、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。
【0088】
スチレン類としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられる。
【0089】
その他のビニル化合物としては、例えば、トリアリルイソシアヌレート、トリメタアリルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0090】
これらのうち、反応性化合物(C)としてはラジカル反応型のアクリレート類が好ましい。なお、カチオン反応型化合物の場合、エポキシ基とカルボキシル基とが反応してしまうのを避けるため2液混合型にする必要が生じる。
【0091】
本発明の(A)及び/又はポリカルボン酸化合物(B)と、必要に応じてエポキシカルボキシレート化合物(A)及びポリカルボン酸化合物(B)以外の反応性化合物(C)とを混合して本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得ることができる。この際には該組成物の用途に応じて適宜その他の成分を加えてもよい。
【0092】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、組成物中にエポキシカルボキシレート化合物(A)及び/又はポリカルボン酸化合物(B)を97〜5質量%、好ましくは87〜10質量%、エポキシカルボキシレート化合物(A)及びポリカルボン酸化合物(B)以外の反応性化合物(C)を3〜95質量%、好ましくは3〜90質量%含む。エポキシカルボキシレート化合物(A)とポリカルボン酸化合物(B)を併用する場合のエポキシカルボキシレート化合物(A)とポリカルボン酸化合物(B)の使用比率は、使用目的に応じて適宜調整されるものである。たとえば、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を溶剤で現像する場合はエポキシカルボキシレート化合物(A)の使用比率が高くなり、アルカリ水現像する場合はポリカルボン酸化合物(B)の使用比率が高くなる。必要に応じてその他の成分を、70質量%程度を上限に含んでもよい。
【0093】
本発明は成形用材料、皮膜形成用材料又はレジスト材料に用いられる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物も含む。本発明において成形用材料とは、未硬化の組成物を型にいれ、もしくは型を押し付けて物体を成形したのち、活性エネルギー線により硬化反応を起こさせ成形させるもの、あるいは未硬化の組成物にレーザー等の焦点光などを照射し、硬化反応を起こさせ成形させる用途に用いられる材料を指す。即ち、平面状に成形したシート、素子を保護するための封止材、未硬化の組成物に微細加工された「型」を押し当て微細な成形を行う、所謂、ナノインプリント材料、さらには特に熱的な要求の厳しい発光ダイオード、光電変換素子等の周辺封止材料等が好適な用途として挙げられる。
【0094】
本発明において皮膜形成用材料とは、基材表面を被覆することを目的として利用されるものである。即ち、グラビアインキ、フレキソインキ、シルクスクリーンインキ、オフセットインキ等のインキ材料;ハードコート、トップコート、オーバープリントニス、クリヤコート等の塗工材料;ラミネート用、光ディスク用他各種接着剤、粘着剤等の接着材料;ソルダーレジスト、エッチングレジスト、マイクロマシン用レジスト等のレジスト材料等が挙げられる。さらには、皮膜形成用材料を一時的に剥離性基材に塗工しフィルム化した後、本来目的とする基材に貼合し皮膜を形成させる、いわゆる、ドライフィルムも本発明における皮膜形成用材料に該当する。
【0095】
これらのうち、ポリカルボン酸化合物(B)のカルボキシル基によって基材への密着性が高まるため、プラスチック基材若しくは金属基材を被覆するための用途に適している。
【0096】
本発明においてレジスト材料組成物とは、基材上に該組成物の皮膜層を形成させ、その後、紫外線等の活性エネルギー線を部分的に照射し、照射部、未照射部の物性的な差異を利用して描画しようとする活性エネルギー線感応型の組成物を指す。即ち、照射部または未照射部を何らかの方法、例えば、溶剤やアルカリ溶液等で溶解させるなどして除去し、描画を行う組成物である。
【0097】
特に、本発明のポリカルボン酸化合物(B)を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、アルカリ水溶液に可溶性となる特徴を生かしてアルカリ水現像型レジスト材料組成物として優れている。
【0098】
本発明のレジスト用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、パターニングが可能な種々の材料に適応でき、例えば、ソルダーレジスト材料、ビルドアップ工法用の層間絶縁材に有用であり、さらには光導波路としてプリント配線板、光電子基板や光基板のような電気・電子・光基材等にも利用される。
【0099】
又、活性エネルギー線による硬化反応前の機械的強度が求められ、現像性も求められるようなドライフィルムにも好適に用いられる。即ち、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に含まれるエポキシカルボキシレート化合物(A)の製造に使用される前記エポキシ樹脂(a)により、エポキシカルボキシレート化合物(A)が比較的高い分子量であるにも関わらず、良好な現像性を発揮させることが出来る。
【0100】
皮膜形成させる方法としては特に制限はないが、グラビア等の凹版印刷方式、フレキソ等の凸版印刷方式、シルクスクリーン等の孔版印刷方式、オフセット等の平版印刷方式、ロールコーター、ナイフコーター、ダイコーター、カーテンコーター、スピンコーター等の各種塗工方式が任意に採用できる。
【0101】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は活性エネルギー線を照射することによって容易に硬化させることができ、得られる硬化物も本発明に含まれる。ここで活性エネルギー線としては、紫外線、可視光線、赤外線、X線、ガンマー線、レーザー光線等の電磁波、アルファー線、ベータ線、電子線等の粒子線等が挙げられる。用途により適宜選択すればよいが、これらのうち、紫外線、レーザー光線、可視光線、または電子線が好ましい。
【0102】
前記のように、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に70質量%を上限に含有させてもよいその他の成分としては前記の着色材料の他に、光重合開始剤、その他の添加剤、塗工適性付与等を目的に粘度調整のため添加される揮発性溶剤等が挙げられる。
【0103】
ラジカル型光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルフェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン等のアセトフェノン類;2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフエノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、4,4’−ビスメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド類等の一般のラジカル型光反応開始剤が挙げられる。
【0104】
また、カチオン系光重合開始剤としては、ルイス酸のジアゾニウム塩、ルイス酸のヨードニウム塩、ルイス酸のスルホニウム塩、ルイス酸のホスホニウム塩、その他のハロゲン化物、トリアジン系開始剤、ボーレート系開始剤及びその他の光酸発生剤等が挙げられる。
【0105】
ルイス酸のジアゾニウム塩としては、例えば、p−メトキシフェニルジアゾニウムフロロホスホネート、N,N−ジエチルアミノフェニルジアゾニウムヘキサフロロホスホネート(三新化学工業社製サンエイド SI−60L、SI−80L、SI−100Lなど)等が挙げられる。
【0106】
ルイス酸のヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウムヘキサフロロホスホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフロロアンチモネート等が挙げられる。
【0107】
ルイス酸のスルホニウム塩としては、例えば、トリフェニルスルホニウムヘキサフロロホスホネート(Union Carbide社製 Cyracure UVI−6990など)、トリフェニルスルホニウムヘキサフロロアンチモネート(Union Carbide社製 Cyracure UVI−6974など)等が挙げられる。
【0108】
ルイス酸のホスホニウム塩としては、例えば、トリフェニルホスホニウムヘキサフロロアンチモネート等が挙げられる。
【0109】
ハロゲン化物としては、例えば、2,2,2−トリクロロ−1−[4’−(ジメチルエチル)フェニル]エタノン(AKZO社製 Trigonal PIなど)、2.2−ジクロロ−1−[4−(フェノキシフェニル)]エタノン(Sandoz社製 Sandray 1000 など)、α,α,α−トリブロモメチルフェニルスルホン(製鉄化学社製 BMPSなど)等が挙げられる。
【0110】
トリアジン系開始剤としては、例えば、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(4’−メトキシフェニル)−6−トリアジン(Panchim社製 Triazine Aなど)、2,4−トリクロロメチル−(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジン(Panchim社製 Triazine PMSなど)、2,4−トリクロロメチル(ピプロニル)−6−トリアジン(Panchim社製 Triazine PPなど)、2,4−トリクロロメチル−(4’−メトキシナフチル)−6−トリアジン(Panchim社製 Triazine Bなど)、2[2’(5”−メチルフリル)エチリデン]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン(三和ケミカル社製など)、2(2’−フリルエチリデン)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン(三和ケミカル社製)等が挙げられる。
【0111】
ボーレート系開始剤としては、例えば、日本感光色素製NK−3876及びNK−3881等が挙げられる。
【0112】
その他の光酸発生剤等としては、例えば、9−フェニルアクリジン、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2−ビイミダゾール(黒金化成社製ビイミダゾールなど)、2,2−アゾビス(2−アミノ−プロパン)ジヒドロクロリド(和光純薬社製 V50など)、2,2−アゾビス[2−(イミダゾリン−2イル)プロパン]ジヒドロクロリド(和光純薬社製 VA044など)、[η−5−2−4−(シクロペンタデシル)(1,2,3,4,5,6,η)−(メチルエチル)−ベンゼン]鉄(II)ヘキサフロロホスホネート(Ciba Geigy社製 Irgacure 261など)、ビス(y5−シクロペンタジエニル)ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピリ−1−イル)フェニル]チタニウム(Ciba Geigy社製 CGI−784など)等が挙げられる。
【0113】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤、過酸化ベンゾイル等の熱に感応する過酸化物系ラジカル型開始剤等を併せて用いてもよい。
【0114】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には、ラジカル系とカチオン系の双方の光重合開始剤を併せて用いてもよい。光重合開始剤は1種類を単独で用いることもできるし、2種類以上を併せて用いることもできる。
【0115】
その他の添加剤としては、例えば、メラミン等の熱硬化触媒、アエロジル等のチキソトロピー付与剤、シリコーン系、フッ素系のレベリング剤や消泡剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等の重合禁止剤、安定剤、酸化防止剤等を使用することが出来る。
【0116】
また、その他の顔料材料として、例えば、着色を目的としないものである体質顔料を用いることも出来る。体質顔料としては、例えば、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸バリウム、水酸化アルミニウム、シリカ、クレー等が挙げられる。
【0117】
この他に活性エネルギー線に反応性を示さない樹脂類(いわゆる、イナートポリマー)、たとえば、前記以外のエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ケトンホルムアルデヒド樹脂、クレゾール樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、スチレン樹脂、グアナミン樹脂、天然及び合成ゴム、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びこれらの変性物を用いることもできる。これらを本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に含む場合、その該組成物中の含有割合は40質量%までの範囲が好ましい。
【0118】
特に、ソルダーレジスト用用途としてポリカルボン酸化合物(B)を用いる場合には、硬化、現像後に残留するカルボキシル基をなくし、かつより強固な硬化皮膜を得ることを目的としてエポキシ樹脂の使用が好ましい。これは活性エネルギー線によって反応、硬化させた後もポリカルボン酸化合物(B)に由来するカルボキシル基が残留し、その硬化物は耐水性や加水分解性に劣る場合がある。そのような際にエポキシ樹脂を用いることで、残留するカルボキシル基とエポキシカルボキシレート化反応を起こすことで、さらに強固な架橋構造を形成させることができる。
【0119】
また、使用目的に応じた粘度を調整する目的で、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中に50質量%、さらに好ましくは35質量%までの範囲において揮発性溶剤を添加することも出来る。
【実施例】
【0120】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、実施例中特に断りがない限り、部は質量部を示す。
【0121】
全塩素量、エポキシ当量、軟化点、酸価は以下の条件で測定した。
1)全塩素量:樹脂(a)を燃焼し、ガスを純水に吸着後イオンクロマト(機器、測定条件)にて測定した。
2)エポキシ当量:JIS K 7236:2001に準じた方法で測定した。
3)軟化点:JIS K 7234:1986に準じた方法で測定した。
4)酸価:JIS K 0070:1992に準じた方法で測定した。
【0122】
温度、湿度に対する信頼性評価として120℃、85%R.H.の高温高湿槽にて、櫛形電極を用いて評価基板を作成し、DC100Vのバイアス電圧を印加し100時間、150時間後のマイグレーションの有無を確認した。
【0123】
実施例1:エポキシカルボキシレート化合物(A)の製造
【0124】
エポキシ樹脂(a)として全塩素含有量が280ppmのXD−1000−LCL (日本化薬(株)製、軟化点70℃、エポキシ当量249g/eq、一般式(1)で示されるRは全て水素原子、nは平均値で3)を260g、化合物(b)としてアクリル酸(略称AA、Mw=72)、化合物(c)としてジメチロールプロピオン酸(略称DMPA、Mw=134)をそれぞれ表1中記載量混合した。
【0125】
触媒としてトリフェニルホスフィン3gを使用し、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテートを固形分に対して80%となるように加え、100℃24時間反応させ、エポキシカルボキシレート化合物(A)溶液を得た。
【0126】
反応終点は固形分酸価(AV)にて決定し、測定値を表1中に記載した。酸価測定は、反応溶液にて測定し固形分としての酸価に換算した。
【0127】
比較例1:比較するエポキシカルボキシレート化合物の調製
【0128】
全塩素含有量が650ppmのXD−1000(日本化薬(株)製、軟化点70℃、エポキシ当量249g/eq;エポキシ化反応における反応溶媒としてメタノールを使用したほかは、XD−1000−LCLと同様に合成したもの)を260g、分子中に重合可能なエチレン性不飽和基とカルボキシル基を併せ持つアクリル酸(略称AA、Mw=72)を表1中記載量、分子中に水酸基とカルボキシル基を併せ持つ化合物(c)としてジメチロールプロピオン酸(略称DMPA、Mw=134)を表1中記載量、混合した。
【0129】
触媒としてトリフェニルホスフィン3gに、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテートを固形分の80%となるように加え、100℃24時間反応させ、エポキシカルボキシレート化合物溶液を得た。
【0130】
反応終点は固形分酸価(AV)にて決定し、測定値を表1中に記載した。酸価測定は、反応溶液にて測定し固形分としての酸価に換算した。
【0131】
表1:実施例1及び比較例1のエポキシカルボキシレート化合物
実施例 AA量(モル) DMPA量(モル) 固形分酸価
実施例1 53(0.74) 42(0.31) 2.4mgKOH/g
比較例1 53(0.74) 42(0.31) 2.5mgKOH/g
【0132】
実施例2:ポリカルボン酸化合物(B)の製造
実施例1で得られたエポキシカルボキシレート化合物(A)溶液299gに、多塩基酸無水物(d)としてテトラヒドロ無水フタル酸(略称THPA)を表2中記載量及び溶剤として固形分の65質量%となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテートを添加し、100℃に加熱し酸付加反応させポリカルボン酸化合物(B)溶液を得た。
【0133】
比較例2:ポリカルボン酸化合物の調製
比較例1において得られたエポキシカルボキシレート化合物溶液299gに、多塩基酸無水物であるテトラヒドロ無水フタル酸(略称THPA)表2中記載量及び溶剤として固形分の65質量%となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテートを添加し、100℃に加熱し酸付加反応させポリカルボン酸化合物溶液を得た。
【0134】
表2:実施例2及び比較例2の反応性ポリカルボン酸化合物
実施例 化合物(A) THPA量 固形分酸価
実施例2−1 実施例1 89g 101mgKOH/g
実施例2−2 実施例1 46g 62mgKOH/g
比較例2−1 比較例1 89g 102mgKOH/g
比較例2−2 比較例1 46g 62mgKOH/g
【0135】
ドライフィルム型レジスト組成物での評価
実施例2−1、2−2又は比較例2−1、2−2で得られたポリカルボン酸化合物をそれぞれ54.44g、反応性化合物(C)としてHX−220(商品名:日本化薬(株)製 ジアクリレート単量体)3.54g、光重合開始剤としてイルガキュアー907(チバスペシャリチィーケミカルズ(株)製)を4.72g及びカヤキュアーDETX−S(日本化薬(株)製)を0.47g、硬化成分としてGTR−1800(日本化薬(株)製)を14.83g、熱硬化触媒としてメラミンを1.05g並びに濃度調整溶媒としてメチルエチルケトンを20.95g加え、ビーズミルにて混練し均一に分散させレジスト樹脂組成物を得た。
【0136】
得られた組成物をワイヤーバーコータ#20を用い、支持フィルムとなるポリエチレンテレフタレートフィルムに均一に塗布し、温度70℃の熱風乾燥炉を通過させ、厚さ20μmの樹脂層を形成した後、この樹脂層上に保護フィルムとなるポリエチレンフィルムを貼り付けドライフィルムを得た。得られたドライフィルムをクシ型電極基板に、温度80℃の加熱ロールを用いて保護フィルムを剥離しながら樹脂層を基板全面に貼り付けた。
【0137】
次いで、所望のネガフィルム(パターン描画のされたマスク)を密着させ、紫外線露光装置((株)オーク製作所、型式HMW−680GW)を用い300mJ/cm2の紫外線を照射した。その後、ドライフィルム上のフィルムを剥離し剥離状態を確認した。その後、1%炭酸ナトリウム水溶液でスプレー現像を行って紫外線未照射部の樹脂を除去した。水洗乾燥した後、プリント基板を150℃の熱風乾燥器で60分加熱硬化反応させ硬化膜を得た。
【0138】
レジスト樹脂組成物を前記の条件で感度、現像性、密着性、半田耐熱を評価したところ実施例2−1、2−2又は比較例2−1、2−2の間に差は見られなかった。
【0139】
温度、湿度に対する信頼性評価として高温高湿下での電気特性を評価した。前記条件で作成した評価基板を、120℃、85%R.H.の高温高湿槽にて、DC100Vのバイアス電圧を印加し100時間、150時間後のマイグレーションの有無を確認した。
○:全く変化無し
△:僅かな変化が観察される
×:マイグレーションが発生する
【0140】
表3 高温高湿下での電気特性評価結果
100時間後 150時間後
実施例2−1 ○ △
実施例2−2 ○ ○
比較例2−1 △ ×
比較例2−2 △ △
【0141】
前記の結果から明らかなように、比較例のエポキシ樹脂に比較して、全塩素量が50%以下であるエポキシ樹脂から製造したポリカルボン酸化合物を使用したものは高温高湿下での電気特性評価において優れた結果が得られた。
【0142】
高温高湿下での電気的信頼性評価では、120℃、85%R.H.の環境下、DC100Vのバイアス電圧を150時間かけても極わずかの変化に留まることが求められる。これらのことから、全塩素量が300ppm以下であるエポキシ樹脂を含む本発明のエポキシカルボキシレート化合物は、全塩素量が300ppmより多いエポキシ樹脂から得られるカルボキシレート化合物と比較して、同等の感度、現像性、密着性、半田耐熱を有しつつ、さらに優れた信頼性を有することが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明のエポキシカルボキシレート化合物及び/又はポリカルボン酸化合物は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に求められる感度、現像性、密着性、半田耐熱、柔軟性、メッキ耐性などの諸性能を低下させること無く、高温高湿下で優れた電気的信頼性を得ることが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全塩素含有量が300ppm以下の下記一般式(1)で示されるエポキシ樹脂(a)に、一分子中に重合可能なエチレン性不飽和基とカルボキシル基を併せ持つ化合物(b)及び/又は一分子中に水酸基とカルボキシル基を併せ持つ化合物(c)を反応させて得られるエポキシカルボキシレート化合物(A)。
【化1】

[式中、Rは同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素数1〜4の炭化水素基を示し、nは平均値で1〜10の正数を示す。]
【請求項2】
請求項1記載のエポキシカルボキシレート化合物(A)に多塩基酸無水物(d)を反応させて得られるポリカルボン酸化合物(B)。
【請求項3】
請求項1記載のエポキシカルボキシレート化合物(A)及び/又は請求項2記載のポリカルボン酸化合物(B)を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
更に、エポキシカルボキシレート化合物(A)及びポリカルボン酸化合物(B)以外の反応性化合物(C)を含む請求項3記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
更に、光重合開始剤を含む請求項3又は4に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
更に、着色顔料を含む請求項3乃至5のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項7】
成形用材料である請求項3乃至6のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項8】
皮膜形成用材料である請求項3乃至6のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項9】
レジスト材料組成物である請求項3乃至6のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項10】
請求項3乃至9のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物にエネルギー線を照射することを特徴とする硬化物の製造法。
【請求項11】
請求項10に記載の硬化物でオーバーコートされた物品。

【公開番号】特開2009−227848(P2009−227848A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−75886(P2008−75886)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】