説明

増幅回路

【課題】広い入力レベル範囲にわたって高い効率を実現することが可能な増幅回路を提供する。
【解決手段】増幅回路101において、入力側高調波整合回路3および出力側高調波整合回路4により、トランジスタTRの制御電極から前段側を見たインピーダンスのうち基本周波数の高調波に対するインピーダンスと、トランジスタTRの導通電極から後段側を見たインピーダンスのうち基本周波数の高調波に対するインピーダンスとが、それぞれ、対象信号のレベルが異なる条件下において整合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増幅回路に関し、特に、トランジスタの入力側および出力側にそれぞれ整合回路を設けた増幅回路に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信システムの高周波化および広帯域化に伴い、基地局および端末の別に関わらず無線送信増幅器の低消費電力化および高効率化のニーズは高まっている。さらに、宇宙太陽発電では無線送信増幅器における直流電力から無線信号電力への変換効率の向上は必須課題である。
【0003】
また、従来、増幅器の効率向上の方策技術として、高調波処理技術がある。一般的には、増幅素子の出力側に設けられた基本波整合回路に他の整合回路を付加することにより、2倍波および3倍波等の高調波の反射条件を最適化して効率を高める方策が採用されている。たとえば、増幅素子の端面に対して、2倍波短絡かつ3倍波開放を採用するものはF級増幅器として知られており、逆条件である2倍波開放かつ3倍波短絡を採用するものは逆F級増幅器として知られている。
【0004】
また、最近では、増幅素子の入力側の高調波反射条件を最適化して増幅器を高効率化する技術も開発されており、さらには、入力側高調波処理および出力側高調波処理の両方を行なう技術も開発されている(たとえば、「5.8GHz高調波整合型内部整合GaN高効率増幅器」山中宏治 他、電子情報通信学会、エレクトロニクス講演論文集1 C-2-19、p.55、2010年(非特許文献1)参照)。
【0005】
一方、高効率アンプ回路方式として、ET(Envelope Tracking)方式およびEER(Envelope Elimination&Restoration)方式等のドレイン変調方式またはコレクタ変調方式が開発されている(たとえば、「Evaluation of High Efficiency PAs for use in Supply- and Load-Modulation Transmitters」、Christian Fager 他、GigaHertz centre、2009 Power Amplifier Symposium(非特許文献2)参照)。
【0006】
また、他の高効率アンプ回路方式として、ロード(負荷)変調方式が提案されている(たとえば、「負荷可変型高効率電力増幅器」、古後健治 他、電子情報通信学会、エレクトロニクス講演論文集1 C-2-14、p.50、2010年(非特許文献3)、「Design of Varactor-Based Tunable Matching Networks for Dynamic Load Modulation of High Power Amplifiers」、H.M.Nemati他、GigaHertz centre、IEEE Trans. Microw. Theory Tech.,vol.57,no.5、pp.1110-1118、May 2009(非特許文献4)、「Evaluation of a GaN HEMT Transistor for Laod- and Supply-Modulation Applications Using Intrinsic Waveform Measurements」、H.M.Nemati他、GigaHertz centre、IEEE MTT-S、May 2010(非特許文献5)参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「5.8GHz高調波整合型内部整合GaN高効率増幅器」山中宏治 他、電子情報通信学会、エレクトロニクス講演論文集1 C-2-19、p.55、2010年
【非特許文献2】「Evaluation of High Efficiency PAs for use in Supply- and Load-Modulation Transmitters」、Christian Fager 他、GigaHertz centre、2009 Power Amplifier Symposium
【非特許文献3】「負荷可変型高効率電力増幅器」、古後健治 他、電子情報通信学会、エレクトロニクス講演論文集1 C-2-14、p.50、2010年
【非特許文献4】「Design of Varactor-Based Tunable Matching Networks for Dynamic Load Modulation of High Power Amplifiers」、H.M.Nemati他、GigaHertz centre、IEEE Trans. Microw. Theory Tech.,vol.57,no.5、pp.1110-1118、May 2009
【非特許文献5】「Evaluation of a GaN HEMT Transistor for Laod- and Supply-Modulation Applications Using Intrinsic Waveform Measurements」、H.M.Nemati他、GigaHertz centre、IEEE MTT-S、May 2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非特許文献2に開示されているET方式およびEER方式、ならびに非特許文献4および5に開示されているロード変調方式では、ドレイン電圧、コレクタ電圧または出力負荷に応じて変化する増幅素子の高調波インピーダンス条件を、広い入力レベル範囲にわたって増幅器が高効率となるような1つの最適条件に設定することは困難である。
【0009】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、広い入力レベル範囲にわたって高い効率を実現することが可能な増幅回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる増幅回路は、制御電極および導通電極を有し、上記制御電極において受けた対象信号を増幅して上記導通電極から出力するためのトランジスタと、上記トランジスタの上記制御電極に電気的に接続され、上記対象信号の基本周波数に対してインピーダンス整合をとるための入力側基本波整合回路と、上記トランジスタの上記制御電極に電気的に接続され、上記基本周波数の高調波に対してインピーダンス整合をとるための入力側高調波整合回路と、上記トランジスタの上記導通電極に電気的に接続され、上記基本周波数に対してインピーダンス整合をとるための出力側基本波整合回路と、上記トランジスタの上記導通電極に電気的に接続され、上記基本周波数の高調波に対してインピーダンス整合をとるための出力側高調波整合回路とを備え、上記トランジスタの上記導通電極に供給される駆動電圧のレベルが上記対象信号のレベルに応じて制御されるか、または上記出力側基本波整合回路のインピーダンスが増幅後の上記対象信号のレベルに応じて制御され、上記トランジスタはFET(Field Effect Transistor)であり、上記入力側高調波整合回路および上記出力側高調波整合回路により、上記トランジスタの上記制御電極から前段側を見たインピーダンスのうち上記基本周波数のn次高調波(nは2以上の整数)に対するインピーダンスの位相角と、上記トランジスタの上記導通電極から後段側を見たインピーダンスのうち上記基本周波数のn次高調波に対するインピーダンスの位相角との差が180度以外となるように設定されている。
【0011】
このように、トランジスタに印可される駆動電圧レベルまたは出力信号のレベルに応じて入力側高調波整合回路および出力側高調波整合回路の最適条件を分ける、すなわち、トランジスタの入力側および出力側における整合条件を異なる条件下で最適にする構成により、広い入力レベル範囲にわたって高い効率を実現することができる。
【0012】
(2)またこの発明の別の局面に係わる増幅回路は、制御電極および導通電極を有し、上記制御電極において受けた対象信号を増幅して上記導通電極から出力するためのトランジスタと、上記トランジスタの上記制御電極に電気的に接続され、上記対象信号の基本周波数に対してインピーダンス整合をとるための入力側基本波整合回路と、上記トランジスタの上記制御電極に電気的に接続され、上記基本周波数の高調波に対してインピーダンス整合をとるための入力側高調波整合回路と、上記トランジスタの上記導通電極に電気的に接続され、上記基本周波数に対してインピーダンス整合をとるための出力側基本波整合回路と、上記トランジスタの上記導通電極に電気的に接続され、上記基本周波数の高調波に対してインピーダンス整合をとるための出力側高調波整合回路とを備え、上記トランジスタの上記導通電極に供給される駆動電圧のレベルが上記対象信号のレベルに応じて制御されるか、または上記出力側基本波整合回路のインピーダンスが増幅後の上記対象信号のレベルに応じて制御され、上記トランジスタはバイポーラトランジスタであり、上記入力側高調波整合回路および上記出力側高調波整合回路により、上記トランジスタの上記制御電極から前段側を見たインピーダンスのうち上記基本周波数のn次高調波(nは2以上の整数)に対するインピーダンスの位相角と、上記トランジスタの上記導通電極から後段側を見たインピーダンスのうち上記基本周波数のn次高調波に対するインピーダンスの位相角との差が0度以外となるように設定されている。
【0013】
このように、トランジスタに印可される駆動電圧レベルまたは出力信号のレベルに応じて入力側高調波整合回路および出力側高調波整合回路の最適条件を分ける、すなわち、トランジスタの入力側および出力側における整合条件を異なる条件下で最適にする構成により、広い入力レベル範囲にわたって高い効率を実現することができる。
【0014】
(3)またこの発明の別の局面に係わる増幅回路は、制御電極および導通電極を有し、上記制御電極において受けた対象信号を増幅して上記導通電極から出力するためのトランジスタと、上記トランジスタの上記制御電極に電気的に接続され、上記対象信号の基本周波数に対してインピーダンス整合をとるための入力側基本波整合回路と、上記トランジスタの上記制御電極に電気的に接続され、上記基本周波数の高調波に対してインピーダンス整合をとるための入力側高調波整合回路と、上記トランジスタの上記導通電極に電気的に接続され、上記基本周波数に対してインピーダンス整合をとるための出力側基本波整合回路と、上記トランジスタの上記導通電極に電気的に接続され、上記基本周波数の高調波に対してインピーダンス整合をとるための出力側高調波整合回路とを備え、上記トランジスタの上記導通電極に供給される駆動電圧のレベルが上記対象信号のレベルに応じて制御されるか、または上記出力側基本波整合回路のインピーダンスが増幅後の上記対象信号のレベルに応じて制御され、上記入力側高調波整合回路および上記出力側高調波整合回路により、上記トランジスタの上記制御電極から前段側を見たインピーダンスのうち上記基本周波数のn次高調波(nは2以上の整数)に対するインピーダンスと、上記トランジスタの上記導通電極から後段側を見たインピーダンスのうち上記基本周波数のn次高調波に対するインピーダンスとが、それぞれ、上記対象信号のレベルが異なる条件下において整合されている。
【0015】
このように、対象信号のレベルに応じて入力側高調波整合回路および出力側高調波整合回路の最適条件を分ける、すなわち、トランジスタの入力側および出力側における整合条件を異なる条件下で最適にする構成により、広い入力レベル範囲にわたって高い効率を実現することができる。
【0016】
(4)好ましくは、nは2である。
【0017】
このように、レベルが最大となる2次高調波について、トランジスタの入力側および出力側における整合条件を異なる条件下で最適にする構成により、最も効果的に増幅回路の効率を向上させることができる。また、たとえば増幅回路の後段に、高調波を減衰させるためのフィルタを設ける必要がなくなるか、あるいは高性能のフィルタを設ける必要がなくなり、装置構成の簡易化を図ることができる。
【0018】
(5)好ましくは、nは3以上である。
【0019】
このように、3次以降の高調波について、トランジスタの入力側および出力側における整合条件を異なる条件下で最適にする構成でも、広い入力レベル範囲にわたって高い効率を実現することができる。また、2次高調波について整合条件を最適にする場合と同様に、たとえば増幅回路の後段に、高調波を減衰させるためのフィルタを設ける必要がなくなるか、あるいは高性能のフィルタを設ける必要がなくなり、装置構成の簡易化を図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、広い入力レベル範囲にわたって高い効率を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る増幅回路の構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る増幅回路におけるエンベローブ振幅信号の一例を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る増幅回路におけるドレイン変調電源の電圧制御を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る増幅回路における高調波整合による効果を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る増幅回路における入力側の高調波整合条件および出力側の高調波整合条件の設定方法の一例を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る増幅回路の構成を示す図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係る増幅回路の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の第1の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0023】
<第1の実施の形態>
[構成および基本動作]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る増幅回路の構成を示す図である。
【0024】
図1を参照して、増幅回路101は、トランジスタTRと、入力側基本波整合回路1と、出力側基本波整合回路2と、入力側高調波整合回路3と、出力側高調波整合回路4と、検波回路5と、ドレイン変調電源6とを備える。
【0025】
増幅回路101は、たとえば、無線通信装置に設けられ、対象信号であるRF(Radio Frequency)帯の無線信号を入力信号として受けて、当該無線信号を増幅して出力する。
【0026】
トランジスタTRは、たとえばFET(Field Effect Transistor)である。ここでは、トランジスタTRがNチャネルMOS(Metal Oxide Semiconductor)FETである場合について説明する。
【0027】
トランジスタTRは、ゲートと、ドレインと、接地電圧の供給されるノードに電気的に接続されたソースとを有する。トランジスタTRは、ゲートにおいて受けた対象信号を増幅してドレインから出力する。
【0028】
増幅回路101では、ドレイン変調方式のうち、たとえばET方式が採用される。すなわち、トランジスタTRのドレインに供給される駆動電圧のレベルが対象信号のレベルに応じて制御される。
【0029】
より詳細には、検波回路5は、入力信号を検波することにより、当該入力信号のレベルを示す信号、たとえば後述するエンベローブ振幅信号をドレイン変調電源6へ出力する。
【0030】
ドレイン変調電源6は、ドレイン電圧VdをトランジスタTRのドレインに供給する。また、ドレイン変調電源6は、検波回路5から受けた信号が示す入力信号のレベルに基づいて、ドレイン電圧Vdのレベルを調整する。
【0031】
入力側基本波整合回路1は、トランジスタTRのゲートに電気的に接続され、対象信号の基本周波数f0に対してインピーダンス整合をとる。
【0032】
入力側高調波整合回路3は、トランジスタTRのゲートに電気的に接続され、基本周波数f0の高調波に対してインピーダンス整合をとる。
【0033】
出力側基本波整合回路2は、トランジスタTRのドレインに電気的に接続され、基本周波数f0に対してインピーダンス整合をとる。
【0034】
出力側高調波整合回路4は、トランジスタTRのドレインに電気的に接続され、基本周波数f0の高調波に対してインピーダンス整合をとる。
【0035】
入力側基本波整合回路1、出力側基本波整合回路2、入力側高調波整合回路3、および出力側高調波整合回路4は、オープンスタブ、ショートスタブまたは共振回路等を含む。
【0036】
たとえば、入力側高調波整合回路3はスタブST1を含み、出力側高調波整合回路4は、スタブST2およびST3を含む。
【0037】
ここで、トランジスタTRは非線形動作を行なうことから、高調波がゲートおよびドレインから出力される。
【0038】
スタブST1は、トランジスタTRのゲートから前段回路へ出力される、基本周波数f0の2次高調波をトランジスタTRのゲートへ全反射する。たとえば、スタブST1は、当該2次高調波の1/4波長の電気長を有するオープンスタブである。
【0039】
スタブST2は、トランジスタTRのドレインから後段回路へ出力される、基本周波数f0の3次高調波をトランジスタTRのドレインへ全反射する。たとえば、スタブST1は、当該3次高調波の1/4波長の電気長を有するオープンスタブである。
【0040】
スタブST3は、トランジスタTRのドレインから後段回路へ出力される、基本周波数f0の2次高調波をトランジスタTRのドレインへ全反射する。たとえば、スタブST3は、当該2次高調波の1/4波長の電気長を有するオープンスタブである。
【0041】
このように、トランジスタTRから発生する高調波を当該トランジスタTRへ反射させることにより、トランジスタTRの効率を向上させることができる。
【0042】
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る増幅回路におけるエンベローブ振幅信号の一例を示す図である。
【0043】
図2を参照して、検波回路5は、入力信号を検波することにより、入力信号の振幅の時間的変化を示すエンベローブ振幅信号を出力する。
【0044】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る増幅回路におけるドレイン変調電源の電圧制御を示す図である。
【0045】
図3を参照して、ドレイン変調電源6は、検波回路5から受けたエンベローブ振幅信号のレベルに基づいて、ドレイン電圧VdのレベルをたとえばVd0〜Vd5の間で変更する。
【0046】
ここで、ドレイン変調方式を採用しない増幅回路を考える。このような増幅回路では、入力信号レベルに関わらず増幅回路の動作状態すなわちインピーダンス条件は変わらない。このため、整合回路等を用いた高調波処理のための条件は変わらない。すなわち、増幅素子の入力側および出力側の高調波整合条件は、同じレベルのドレイン電圧に対して設定すればよい。
【0047】
これに対して、ドレイン変調方式を採用する増幅回路101では、入力信号レベルに応じてドレイン電圧Vdのレベルが変わるため、動作状態が変わる、すなわち増幅回路101を高効率化するためのインピーダンス条件が変わる。すなわち、整合回路による増幅回路101の出力信号の基本波の整合条件が一定である一方で、ドレイン電圧Vdのレベルが変わることにより、トランジスタTRのインピーダンスが変わることから、増幅回路101の整合条件が変わってしまうことになる。
【0048】
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る増幅回路における高調波整合による効果を示す図である。図4のグラフ図において、横軸はRF出力電力すなわち増幅回路101の出力信号の大きさを示し、縦軸はドレイン効率である。
【0049】
ここで、ドレイン効率は、トランジスタTRにおける入力電力に対する出力電力の比率である。このドレイン効率が低いと、トランジスタTRの発熱量も大きくなる。
【0050】
図4を参照して、増幅回路101では、図3において説明したように、入力信号が小さい場合にはドレイン電圧Vdが低く設定され、入力信号が大きくなるにつれてドレイン電圧VdがVd5からVd0への方向に高く設定される。
【0051】
グラフAは、増幅回路101において入力側高調波整合回路3および出力側高調波整合回路4を設けないと仮定した場合の特性を示すトレースカーブである。
【0052】
グラフAを参照して、ドレイン電圧VdをVd5から大きい値に設定していくとドレイン効率が上昇してVd2の場合に最大となり、さらにドレイン電圧VdをVd2から大きい値に設定していくとドレイン効率が下降していく。
【0053】
このように、ドレイン変調方式を採用する増幅回路では、ドレイン電圧Vdが入力信号のレベルに応じて変わるため、増幅回路を高効率化するためのインピーダンス条件が変わり、ドレイン効率も入力信号のレベルに応じて変わる。図4に示す例では、入力信号レベルが低い状態および高い状態においてそれぞれドレイン効率が劣化している。
【0054】
これに対して、増幅回路101では、入力側高調波整合回路3および出力側高調波整合回路4を設け、これらの回路により、トランジスタTRのゲートから前段側を見たインピーダンスのうち対象信号の基本周波数f0の高調波に対するインピーダンスと、トランジスタTRのドレインから後段側を見たインピーダンスのうち基本周波数f0の高調波に対するインピーダンスとが、それぞれ、駆動電圧すなわちドレイン電圧Vdのレベルが異なる条件下、すなわち対象信号のレベルが異なる条件下において整合されている。
【0055】
たとえば、増幅回路101では、入力側のインピーダンス整合により低出力側の効率を上げ、出力側のインピーダンス整合により高出力側の効率を上げる。
【0056】
具体的には、トランジスタTRの入力側、すなわち入力側高調波整合回路3では、低電圧側すなわち入力信号レベルの低い範囲でドレイン効率が向上するようにスタブST1の電気長が設定される。
【0057】
また、トランジスタTRの出力側、すなわち出力側高調波整合回路4では、高電圧側すなわち入力信号レベルの高い範囲でドレイン効率が向上するようにスタブST2およびST3の電気長が設定される。
【0058】
このような構成により、ドレイン電圧Vdの広い範囲にわたって高調波処理による効果を得ることが可能となる。
【0059】
より詳細には、入力側高調波整合回路3および出力側高調波整合回路4により、トランジスタTRのゲートから前段側を見たインピーダンスのうち基本周波数f0の2次高調波に対するインピーダンスの位相角と、トランジスタTRのドレインから後段側を見たインピーダンスのうち基本周波数f0の2次高調波に対するインピーダンスの位相角との差が180度以外となるように設定される。
【0060】
一般的に、増幅回路では、入力信号レベルに関わらず増幅回路の動作状態すなわちインピーダンス条件を変更しないことから、FETを増幅素子として用いる場合、同じ次数の高調波において、増幅素子の入力側のインピーダンスの位相角と出力側のインピーダンスの位相角とが逆位相の関係に設定される。
【0061】
これに対して、増幅回路101では、同じ次数の高調波において、トランジスタTRの入力側の位相角と出力側の位相角との差が180度以外に設定される。
【0062】
たとえば、ドレイン電圧Vd=55Vのとき、トランジスタTRの入力側における2次高調波に対するインピーダンスの位相角を−175度、トランジスタTRの出力側における2次高調波に対するインピーダンスの位相角を0度に設定する。また、ドレイン電圧Vd=35Vのとき、トランジスタTRの入力側における2次高調波に対するインピーダンスの位相角を−165度、トランジスタTRの出力側における2次高調波に対するインピーダンスの位相角を5度に設定する。
【0063】
グラフBは、増幅回路101の特性を示すトレースカーブである。グラフBを参照して、ドレイン電圧Vdのレベルに応じてドレイン効率が変化する傾向はグラフAと同じであるが、トレースカーブは全体的に上昇している。すなわち、増幅回路101では、入力信号のレベル変動によるドレイン効率の低下を、入力信号レベルの広い範囲にわたって防ぐことができる。
【0064】
図5は、本発明の第1の実施の形態に係る増幅回路における入力側の高調波整合条件および出力側の高調波整合条件の設定方法の一例を示す図である。
【0065】
図5を参照して、まず、トランジスタTRに供給するドレイン電圧Vdを最小印可電圧Vdminに設定する(ステップS1)。
【0066】
次に、出力側高調波整合条件を特性インピーダンスZoに設定する。具体的には、たとえば出力側高調波整合回路4を一時的に取り除く。これにより、出力側高調波整合の、増幅回路101の効率に対する影響がゼロになり、入力側高調波整合の調整を容易にすることができる(ステップS2)。
【0067】
次に、入力側高調波整合回路3により、増幅回路101の効率が最も高くなる入力側高調波位相θin(fm)に設定する。具体的には、入力側高調波整合回路3がスタブである場合には電気長を調整し、入力側高調波整合回路3が共振回路である場合には当該共振回路に含まれるキャパシタおよびインダクタ等の定数を調整する(ステップS3)。
【0068】
次に、トランジスタTRに供給するドレイン電圧Vdを最大印可電圧Vdmaxに設定する(ステップS4)。
【0069】
次に、入力側高調波整合条件を特性インピーダンスZoに設定する。具体的には、たとえば入力側高調波整合回路3を一時的に取り除く。これにより、入力側高調波整合の、増幅回路101の効率に対する影響がゼロになり、出力側高調波整合の調整を容易にすることができる(ステップS5)。
【0070】
次に、出力側高調波整合回路4により、増幅回路101の効率が最も高くなる出力側高調波位相θout(fm)に設定する。具体的には、出力側高調波整合回路4がスタブである場合には電気長を調整し、出力側高調波整合回路4が共振回路である場合には当該共振回路に含まれるキャパシタおよびインダクタ等の定数を調整する(ステップS6)。
【0071】
最後に、増幅回路101において、入力側高調波位相θin(fm)および出力側高調波位相θout(fm)に設定する。すなわち、調整後の入力側高調波整合回路3および出力側高調波整合回路4を用いて各入力信号レベルにおける増幅回路101の効率等を確認する(ステップS7)。
【0072】
ところで、非特許文献2に開示されているET方式およびEER方式、ならびに非特許文献4および5に開示されているロード変調方式では、ドレイン電圧、コレクタ電圧または出力負荷に応じて変化する増幅素子の高調波インピーダンス条件を、広い入力レベル範囲にわたって増幅器が高効率となるような1つの最適条件に設定することは困難である。
【0073】
これに対して、本発明の第1の実施の形態に係る増幅回路では、入力側高調波整合回路3および出力側高調波整合回路4により、トランジスタTRのゲートから前段側を見たインピーダンスのうち対象信号の基本周波数f0の高調波に対するインピーダンスと、トランジスタTRのドレインから後段側を見たインピーダンスのうち基本周波数f0の高調波に対するインピーダンスとが、それぞれ、駆動電圧のレベルが異なる条件下において整合されている。たとえば、トランジスタTRがFETの場合、入力側高調波整合回路3および出力側高調波整合回路4により、トランジスタTRのゲートから前段側を見たインピーダンスのうち対象信号の基本周波数f0のn次高調波(nは2以上の整数)に対するインピーダンスの位相角と、トランジスタTRのドレインから後段側を見たインピーダンスのうち基本周波数f0のn次高調波に対するインピーダンスの位相角との差が180度以外となるように設定される。
【0074】
すなわち、高効率アンプ回路方式において、異なる駆動電圧を増幅素子に印加した場合には、増幅素子の最適インピーダンス条件が変化し、これにより、最大効率が低下する。そこで、本発明の第1の実施の形態に係る増幅回路では、トランジスタTRに印可される駆動電圧レベルに応じて入力側高調波整合回路3および出力側高調波整合回路4の最適条件を分ける。すなわち、トランジスタTRの入力側および出力側における整合条件を異なる条件下で最適にする。これにより、広い入力レベル範囲にわたって高い効率を実現することができる。
【0075】
ここで、トランジスタTRから出力される各次数の高調波のうち、2次高調波のレベルが最大となる。
【0076】
本発明の第1の実施の形態に係る増幅回路では、入力側高調波整合回路3および出力側高調波整合回路4により、トランジスタTRのゲートから前段側を見たインピーダンスのうち基本周波数f0の2次高調波に対するインピーダンスの位相角と、トランジスタTRのドレインから後段側を見たインピーダンスのうち基本周波数f0の2次高調波に対するインピーダンスの位相角との差が180度以外となるように設定される。
【0077】
このように、レベルが最大となる2次高調波について、トランジスタTRの入力側および出力側における整合条件を異なる条件下で最適にする構成により、最も効果的に増幅回路の効率を向上させることができる。また、たとえば増幅回路101の後段に、高調波を減衰させるためのフィルタを設ける必要がなくなるか、あるいは高性能のフィルタを設ける必要がなくなり、装置構成の簡易化を図ることができる。
【0078】
なお、本発明の第1の実施の形態に係る増幅回路では、トランジスタTRとしてFETを用いる構成であるとしたが、これに限定するものではない。トランジスタTRとしてバイポーラトランジスタを用いる構成であってもよい。一般的に、増幅回路では、入力信号レベルに関わらず増幅回路の動作状態すなわちインピーダンス条件を変更しないことから、バイポーラトランジスタを増幅素子として用いる場合、増幅素子の入力側の位相角と出力側の位相角とが同位相に設定される。
【0079】
これに対して、バイポーラトランジスタを増幅素子として用いる増幅回路101では、入力側高調波整合回路3および出力側高調波整合回路4により、トランジスタTRのゲートから前段側を見たインピーダンスのうち対象信号の基本周波数f0のn次高調波(nは2以上の整数)に対するインピーダンスの位相角と、トランジスタTRのドレインから後段側を見たインピーダンスのうち基本周波数f0のn次高調波に対するインピーダンスの位相角との差を0度以外となるように設定する。
【0080】
すなわち、同じ次数の高調波において、トランジスタTRの入力側の位相角と出力側の位相角との差を0度以外に設定する。
【0081】
たとえば、コレクタ電圧Vd=55Vのとき、トランジスタTRの入力側における2次高調波に対するインピーダンスの位相角を−175度、トランジスタTRの出力側における2次高調波に対するインピーダンスの位相角を−170度に設定する。また、コレクタ電圧Vd=35Vのとき、トランジスタTRの入力側における2次高調波に対するインピーダンスの位相角を−165度、トランジスタTRの出力側における2次高調波に対するインピーダンスの位相角を−160度に設定する。
【0082】
バイポーラトランジスタを増幅素子として用いる場合も同様に、トランジスタTRに印可される駆動電圧レベルに応じて入力側高調波整合回路3および出力側高調波整合回路4の最適条件を分ける構成により、広い入力レベル範囲にわたって高い効率を実現することができる。
【0083】
また、本発明の第1の実施の形態に係る増幅回路では、トランジスタTRの入力側において基本周波数f0の2次高調波用の整合回路を設け、トランジスタTRの出力側において基本周波数f0の2次高調波および3次高調波用の整合回路を設ける構成であるとしたが、これに限定するものではない。トランジスタTRの入力側および出力側において、3次以降の共通の次数の高調波用整合回路を設ける構成であってもよい。たとえば、増幅回路101において、さらに、トランジスタTRの入力側において3次高調波用の整合回路を設ける構成であってもよい。
【0084】
このように、3次以降の高調波について、トランジスタTRの入力側および出力側における整合条件を異なる条件下で最適にする構成でも、広い入力レベル範囲にわたって高い効率を実現することができる。また、2次高調波について整合条件を最適にする場合と同様に、たとえば増幅回路101の後段に、高調波を減衰させるためのフィルタを設ける必要がなくなるか、あるいは高性能のフィルタを設ける必要がなくなり、装置構成の簡易化を図ることができる。
【0085】
また、トランジスタTRの入力側および出力側において、共通の次数の高調波用整合回路を設けず、異なる次数の高調波用整合回路を設ける構成であってもよい。
【0086】
次に、本発明の他の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0087】
<第2の実施の形態>
本実施の形態は、第1の実施の形態に係る増幅回路と比べてゲート駆動電圧を制御する機能を追加した増幅回路に関する。以下で説明する内容以外は第1の実施の形態に係る増幅回路と同様である。
【0088】
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る増幅回路の構成を示す図である。
図6を参照して、増幅回路102は、本発明の第1の実施の形態に係る増幅回路101と比べて、さらに、ゲート変調電源7を備える。
【0089】
検波回路5は、入力信号を検波することにより、当該入力信号のレベルを示す信号をドレイン変調電源6およびゲート変調電源7へ出力する。
【0090】
ゲート変調電源7は、ゲート電圧VgをトランジスタTRのゲートに供給する。ゲート変調電源7は、検波回路5から受けた信号が示す入力信号のレベルに基づいて、ゲート電圧Vgのレベルを調整する。
【0091】
このように、ドレイン電圧Vdに加えて、入力信号のレベルに応じてゲート電圧Vgのレベルを制御する構成により、本発明の第1の実施の形態に係る増幅回路と比べて、さらに高い効率を実現することができる。
【0092】
その他の構成および動作は第1の実施の形態に係る増幅回路と同様であるため、ここでは詳細な説明を繰り返さない。
【0093】
次に、本発明の他の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0094】
<第3の実施の形態>
本実施の形態は、ロード変調方式を採用した増幅回路に関する。以下で説明する内容以外は第1の実施の形態に係る増幅回路と同様である。
【0095】
図7は、本発明の第3の実施の形態に係る増幅回路の構成を示す図である。
図7を参照して、増幅回路103は、トランジスタTRと、入力側基本波整合回路1と、出力側基本波整合回路12と、入力側高調波整合回路3と、出力側高調波整合回路4と、検波回路9と、制御回路10とを備える。出力側基本波整合回路12は、インピーダンス可変回路8を含む。
【0096】
増幅回路103では、ロード変調方式が採用される。ロード変調方式では、基本波の整合条件を入力電力レベルまたは出力電力レベルに応じて変更する。すなわち、入力信号または出力信号のレベルに応じて負荷インピーダンス条件を変える。負荷インピーダンス条件が変わることにより、増幅回路103の整合条件が変わるため、高調波整合条件が変わる。具体的には、出力側基本波整合回路12のインピーダンスが、たとえば増幅後の対象信号のレベルに応じて制御される。
【0097】
より詳細には、検波回路9は、出力信号を検波することにより、当該出力信号のレベルを示す信号を制御回路10へ出力する。
【0098】
制御回路10は、検波回路9から受けた信号が示す当該出力信号のレベルに基づいて、インピーダンス可変回路8のインピーダンスを調整する。
【0099】
増幅回路103では、本発明の第1の実施の形態に係る増幅回路と同様に、入力側高調波整合回路3および出力側高調波整合回路4を設ける。そして、これらの回路により、トランジスタTRのゲートから前段側を見たインピーダンスのうち対象信号の基本周波数f0の高調波に対するインピーダンスと、トランジスタTRのドレインから後段側を見たインピーダンスのうち基本周波数f0の高調波に対するインピーダンスとが、それぞれ、出力側基本波整合回路12のインピーダンスが異なる条件下、すなわち対象信号のレベルが異なる条件下において整合されている。
【0100】
たとえば、増幅回路103では、入力側のインピーダンス整合により低出力側の効率を上げ、出力側のインピーダンス整合により高出力側の効率を上げる。
【0101】
具体的には、トランジスタTRの入力側、すなわち入力側高調波整合回路3では、出力信号レベルの低い範囲でドレイン効率が向上するようにスタブST1の電気長が設定される。
【0102】
また、トランジスタTRの出力側、すなわち出力側高調波整合回路4では、高電圧側すなわち出力信号レベルの高い範囲でドレイン効率が向上するようにスタブST2およびST3の電気長が設定される。
【0103】
このような構成により、出力信号の広い範囲にわたって高調波処理による効果を得ることが可能となる。
【0104】
より詳細には、トランジスタTRがFETである場合には、入力側高調波整合回路3および出力側高調波整合回路4により、トランジスタTRのゲートから前段側を見たインピーダンスのうち基本周波数f0の2次高調波に対するインピーダンスの位相角と、トランジスタTRのドレインから後段側を見たインピーダンスのうち基本周波数f0の2次高調波に対するインピーダンスの位相角との差が180度以外となるように設定される。
【0105】
すなわち、増幅回路103では、同じ次数の高調波において、トランジスタTRの入力側の位相角と出力側の位相角との差を180度以外に設定する。
【0106】
このような構成により、出力信号のレベルに応じてドレイン効率が変化する特性を全体的に上昇させることができるため、出力信号のレベル変動によるドレイン効率の低下を、出力信号レベルの広い範囲にわたって防ぐことができる。
【0107】
なお、トランジスタTRがバイポーラトランジスタである場合には、入力側高調波整合回路3および出力側高調波整合回路4により、トランジスタTRのゲートから前段側を見たインピーダンスのうち基本周波数f0の2次高調波に対するインピーダンスの位相角と、トランジスタTRのドレインから後段側を見たインピーダンスのうち基本周波数f0の2次高調波に対するインピーダンスの位相角との差が0度以外となるように設定すればよい。
【0108】
その他の構成および動作は第1の実施の形態に係る増幅回路と同様であるため、ここでは詳細な説明を繰り返さない。
【0109】
したがって、本発明の第3の実施の形態に係る増幅回路では、本発明の第1の実施の形態に係る増幅回路と同様に、広い入力レベル範囲にわたって高い効率を実現することができる。
【0110】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0111】
1 入力側基本波整合回路
2 出力側基本波整合回路
3 入力側高調波整合回路
4 出力側高調波整合回路
5 検波回路
6 ドレイン変調電源
7 ゲート変調電源
8 インピーダンス可変回路
9 検波回路
10 制御回路
12 出力側基本波整合回路
101,102,103 増幅回路
TR トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御電極および導通電極を有し、前記制御電極において受けた対象信号を増幅して前記導通電極から出力するためのトランジスタと、
前記トランジスタの前記制御電極に電気的に接続され、前記対象信号の基本周波数に対してインピーダンス整合をとるための入力側基本波整合回路と、
前記トランジスタの前記制御電極に電気的に接続され、前記基本周波数の高調波に対してインピーダンス整合をとるための入力側高調波整合回路と、
前記トランジスタの前記導通電極に電気的に接続され、前記基本周波数に対してインピーダンス整合をとるための出力側基本波整合回路と、
前記トランジスタの前記導通電極に電気的に接続され、前記基本周波数の高調波に対してインピーダンス整合をとるための出力側高調波整合回路とを備え、
前記トランジスタの前記導通電極に供給される駆動電圧のレベルが前記対象信号のレベルに応じて制御されるか、または前記出力側基本波整合回路のインピーダンスが増幅後の前記対象信号のレベルに応じて制御され、
前記トランジスタはFET(Field Effect Transistor)であり、
前記入力側高調波整合回路および前記出力側高調波整合回路により、前記トランジスタの前記制御電極から前段側を見たインピーダンスのうち前記基本周波数のn次高調波(nは2以上の整数)に対するインピーダンスの位相角と、前記トランジスタの前記導通電極から後段側を見たインピーダンスのうち前記基本周波数のn次高調波に対するインピーダンスの位相角との差が180度以外となるように設定されている、増幅回路。
【請求項2】
制御電極および導通電極を有し、前記制御電極において受けた対象信号を増幅して前記導通電極から出力するためのトランジスタと、
前記トランジスタの前記制御電極に電気的に接続され、前記対象信号の基本周波数に対してインピーダンス整合をとるための入力側基本波整合回路と、
前記トランジスタの前記制御電極に電気的に接続され、前記基本周波数の高調波に対してインピーダンス整合をとるための入力側高調波整合回路と、
前記トランジスタの前記導通電極に電気的に接続され、前記基本周波数に対してインピーダンス整合をとるための出力側基本波整合回路と、
前記トランジスタの前記導通電極に電気的に接続され、前記基本周波数の高調波に対してインピーダンス整合をとるための出力側高調波整合回路とを備え、
前記トランジスタの前記導通電極に供給される駆動電圧のレベルが前記対象信号のレベルに応じて制御されるか、または前記出力側基本波整合回路のインピーダンスが増幅後の前記対象信号のレベルに応じて制御され、
前記トランジスタはバイポーラトランジスタであり、
前記入力側高調波整合回路および前記出力側高調波整合回路により、前記トランジスタの前記制御電極から前段側を見たインピーダンスのうち前記基本周波数のn次高調波(nは2以上の整数)に対するインピーダンスの位相角と、前記トランジスタの前記導通電極から後段側を見たインピーダンスのうち前記基本周波数のn次高調波に対するインピーダンスの位相角との差が0度以外となるように設定されている、増幅回路。
【請求項3】
制御電極および導通電極を有し、前記制御電極において受けた対象信号を増幅して前記導通電極から出力するためのトランジスタと、
前記トランジスタの前記制御電極に電気的に接続され、前記対象信号の基本周波数に対してインピーダンス整合をとるための入力側基本波整合回路と、
前記トランジスタの前記制御電極に電気的に接続され、前記基本周波数の高調波に対してインピーダンス整合をとるための入力側高調波整合回路と、
前記トランジスタの前記導通電極に電気的に接続され、前記基本周波数に対してインピーダンス整合をとるための出力側基本波整合回路と、
前記トランジスタの前記導通電極に電気的に接続され、前記基本周波数の高調波に対してインピーダンス整合をとるための出力側高調波整合回路とを備え、
前記トランジスタの前記導通電極に供給される駆動電圧のレベルが前記対象信号のレベルに応じて制御されるか、または前記出力側基本波整合回路のインピーダンスが増幅後の前記対象信号のレベルに応じて制御され、
前記入力側高調波整合回路および前記出力側高調波整合回路により、前記トランジスタの前記制御電極から前段側を見たインピーダンスのうち前記基本周波数のn次高調波(nは2以上の整数)に対するインピーダンスと、前記トランジスタの前記導通電極から後段側を見たインピーダンスのうち前記基本周波数のn次高調波に対するインピーダンスとが、それぞれ、前記対象信号のレベルが異なる条件下において整合されている、増幅回路。
【請求項4】
nは2である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の増幅回路。
【請求項5】
nは3以上である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の増幅回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−134914(P2012−134914A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287264(P2010−287264)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】