説明

増殖性疾患の相乗的処置のための抗CTLA4抗体と多様な治療レジメンとの組み合わせ

増殖性障害の処置および予防に有用である、組成物および方法を開示する。そのような化合物は、とりわけ、抗CTLA-4剤、例えば、イピリムマブもしくはトレメリムマブを、他の化学療法薬、例えば、ダサチニブ、パクリタキセル、ゲムシタビン、シスプラチン、もしくはエトポシドと組み合わせて含有する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、35 U.S.C. 119(e)の下で、2009年7月30日に出願された米国非仮出願第12/462168号;2009年7月30日に出願されたPCT国際出願番号PCT/US2009/052209;2008年8月1日に出願された米国仮出願第61/085,466号;および2009年7月20日に出願された米国仮出願第61/226,910号の利益を主張する、一部継続出願である。該関連出願の内容は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【技術分野】
【0002】
本発明は、腫瘍学の分野および治療レジメンの改善に関する。
【背景技術】
【0003】
国立癌研究所によると、米国だけでも、3人に1人がその生涯において癌に罹りうると推定されている。さらに、癌に罹患している人の約50%〜60%が、最終的に該疾患で死亡しうる。この疾患が広範で発生していることは、悪性腫瘍の処置のための抗癌レジメンの改善の必要性をはっきりと示している。
【0004】
現在、様々な癌が観察されていることに起因して、体内で癌を破壊するための多数の抗癌剤が開発されている。これらの化合物は、通常の正常細胞は影響を受けないままでありながら、悪性細胞を破壊またはそうでなければその増殖を阻害することを目的として、癌患者に投与される。抗癌剤は、それらの作用メカニズムに基づいて分類されている。
【0005】
あるタイプの化学療法薬は、金属配位錯体と呼ばれる。このタイプの化学療法薬は、細胞の核の中で大部分のDNA鎖間架橋を形成し、それによって細胞複製を妨げると考えられている。その結果、腫瘍増殖がまず抑制され、次いで逆行される(reversed)。別のタイプの化学療法薬は、アルキル化剤と呼ばれる。これらの化合物は、分裂癌細胞のDNA中に外来性の組成物もしくは分子を挿入することによって機能する。これらの外来性成分によって、癌細胞の通常の機能が乱され、増殖が妨げられる。別のタイプの化学療法薬は抗悪性腫瘍薬である。このタイプの薬剤は、癌細胞の増殖および拡散を、妨げるか、死滅させるか、または阻止する。さらに他のタイプの抗癌剤としては、非ステロイド性アロマターゼ阻害剤、二官能性アルキル化剤などが挙げられる。
【0006】
化学療法薬と免疫療法薬の組み合わせである化学免疫療法は、腫瘍細胞を直接攻撃して腫瘍細胞壊死もしくはアポトーシスをもたらす薬剤の効果と、腫瘍に対する宿主免疫応答を調節する薬剤の効果を組み合わせた、癌治療の新規なアプローチである。化学療法薬は、「多価」腫瘍細胞ワクチンを作り出す抗原提示細胞により提示される腫瘍抗原を産生することによる、ならびに腫瘍構造を歪めることで免疫療法薬の浸透および免疫細胞集団(immune population)の拡大を促進することによる、免疫療法の効果を増強することができる。
【0007】
イピリムマブはヒト抗ヒトCTLA-4抗体であり、それは、抗原提示細胞に発現したCD80およびCD86へのCTLA-4の結合を阻止することによって、これらの分子の相互作用によって誘発される免疫応答の負の下方制御を阻止する。イピリムマブはマウスCTLA-4を認識しないので、本明細書に記載の研究では、抗マウスCTLA-4抗体(クローン UC10-4F10)を用いて化学療法薬によるCTLA-4遮断の効果を調べた。
【0008】
ダサチニブ(スプリセル(登録商標))は、多くの種類の癌の治療において一般的に用いられており、CTLA-4遮断と組み合わせるための魅力的な薬剤の類である。
【0009】
微小管安定化剤(例えばイクサベピロン(イグゼンプラ(商標))およびパクリタキセル(タキソール(登録商標)))は、多くの種類の癌の治療のために一般的に用いられており、CTLA-4遮断と組み合わせるための魅力的な薬剤の類である。
【0010】
ヌクレオシドアナログ(例えばゲムシタビン)もまた、多くの種類の癌の治療のために一般的に用いられている。ゲムシタビンは代謝拮抗薬ヌクレオシドアナログ(2',2'-ジフルオロデオキシシチジン)であり、それはデオキシシチジンキナーゼによる細胞内リン酸化後に活性化されるが、そのジ-およびトリ-ホスフェート形態のみが細胞傷害活性を有している。具体的には、該トリホスフェート形態は不活性塩基としてのDNAへの取り込みにおいてデオキシシチジントリホスフェートと競合し、該ジホスフェート形態は正常なDNA合成に必須な酵素であるリボヌクレオチド還元酵素を阻害する。
【0011】
ゲムシタビンは、様々な悪性腫瘍において、単剤としておよび他の細胞傷害性薬物との組み合わせとしての両者で研究されてきている。さらに、膵癌、卵巣癌、非小細胞肺癌、膀胱癌および乳癌を含むヒトにおける様々な新生物の治療に対して、多くの国において認可されている。また、これらの腫瘍におけるその治療用途は、好ましい毒性プロファイルによりサポートされている。
【0012】
癌細胞を阻害する別の通常のメカニズムは、二本鎖DNA切断を引き起こすことである。そのようなDNA切断は、急速に分裂している細胞(例えば癌細胞)を特異的に死滅させる。エトポシドは抗癌剤であり、切断されたDNA分子のトポイソメラーゼII(topoII)再連結を阻害することによって細胞DNAにおける鎖切断を引き起こす。トポイソメラーゼIIによるDNA切断は常にトポイソメラーゼII-結合DNA二本鎖切断(DSB)をもたらすけれども、エトポシドの作用によってもまた、2つの鎖の再連結が独立してエトポシドにより阻害されるので、一本鎖切断(SSB)がもたらされる。
【0013】
本明細書に記載の研究において、ダサチニブ、パクリタキセル、エトポシド、およびゲムシタビンとCTLA-4阻害剤の個々の組み合わせを、核薬剤に対して異なる感受性を有するいくつかの腫瘍モデルにおいて調べた。
【0014】
本発明者らは、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤(例えばダサチニブ)と抗CTLA-4阻害剤を組み合わせることの、増殖性疾患の処置における相乗的な利益を初めて見出した。また、本発明者らは、微小管安定化剤(例えばパクリタキセル)と抗CTLA-4阻害剤を組み合わせることの、増殖性疾患の処置における相乗的な利益を初めて見出した。加えて、本発明者らは、ヌクレオシドアナログ(例えばゲムシタビン)と抗CTLA-4阻害剤を組み合わせることの、増殖性疾患の処置における相乗的な利益を初めて見出した。さらに、本発明者らは、DNA二本鎖(切断)誘発剤(DNA double strand inducing agent)(例えばエトポシド)と抗CTLA-4阻害剤を組み合わせることの、増殖性疾患の処置における相乗的な利益を初めて見出した。本発明の目的は、増殖性疾患の処置のために、以下:タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤、微小管安定化剤、ヌクレオシドアナログ、もしくはDNA二本鎖(切断)誘発剤のうちの1つ以上と1つ以上の抗CTLA4剤が組み合わされている、効果的な化学療法薬治療レジメンの組み合わせを提供することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、癌を含む抗-増殖性疾患の処置のための相乗的な方法を提供し、それは、相乗的に治療上有効な量の(1)タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤(例えばダサチニブ)、微小管安定化剤(例えばパクリタキセル);ヌクレオシドアナログ(例えばゲムシタビン);もしくはDNA二本鎖(切断)誘発剤(例えばエトポシド);からなる群の一員、および(2)共刺激経路調節剤(例えば抗CTLA4アンタゴニスト)を、処置が必要な哺乳動物種に投与することを含む。
【課題を解決するための手段】
【0016】
一態様において、該増殖性疾患は、1以上の癌性固形腫瘍(例えば、肺癌、膵癌、大腸癌、前立腺癌、および/またはCMLもしくは白血病)である。別の態様において、該増殖性疾患は、1以上の難治性腫瘍である。さらに別の態様において、該CTLA-4抗体はイピリムマブまたはトレメリムマブである。別の態様において、該タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤はスプリセル(登録商標)、グリベック(登録商標)、またはニロチニブである。別の態様において、該微小管安定化剤は、パクリタキセル、タキソール(登録商標)、エポチロンA、エポチロンB、エポチロンC、エポチロンD、またはイクサベピロンである。別の態様において、該ヌクレオシドアナログはゲムシタビン(gembitabine)である。別の態様において、該DNA二本鎖(切断)誘発剤は、エトポシド、カリチアマイシン、ブレオマイシン、ネオカルチノスタチン、スルフォラファン、またはイダルビシンである。別の態様において、ヌクレオシドアナログは、ゲムシタビン、BCH-4556、クロファラビン、フルダラビン、クラドリビン、シタラビン、ピューロマイシン、およびフルオロウラシルである。
【0017】
本発明の方法で用いるための適切な抗CTLA4アンタゴニスト剤としては、限定されることなく、抗CTLA4抗体、ヒト抗CTLA4抗体、マウス抗CTLA4抗体、哺乳動物抗CTLA4抗体、ヒト化抗CTLA4抗体、モノクローナル抗CTLA4抗体、ポリクローナル抗CTLA4抗体、キメラ抗CTLA4抗体、MDX-010(イピリムマブ)、トレメリムマブ、抗CD28抗体、抗CTLA4アドネクチン(adnectin)、抗CTLA4ドメイン抗体、一本鎖抗CTLA4フラグメント、重鎖抗CTLA4フラグメント、軽鎖抗CTLA4フラグメント、共刺激経路を刺激するCTLA4の阻害剤、PCT公開番号WO2001/014424に開示されている抗体、PCT公開番号WO2004/035607に開示されている抗体、米国特許公開第2005/0201994号に開示されている抗体、および特許された欧州特許第EP 1212422 B1号に開示されている抗体が挙げられる。さらなるCTLA-4抗体が、米国特許第5,811,097号、第5,855,887号、第6,051,227号、および第6,984,720号;PCT公開番号WO01/14424およびWO00/37504;ならびに、米国特許公開第2002/0039581号および第2002/086014号に記載されている。本発明の方法で用いることができる他の抗CTLA-4抗体としては、例えば: WO98/42752; 米国特許第6,682,736号および第6,207,156号; Hurwitz et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95(17):10067-10071 (1998); Camacho et al., J. Clin. Oncology, 22(145):Abstract No. 2505 (2004) (抗体 CP-675206); Mokyr et al., Cancer Res., 58:5301-5304 (1998)、ならびに米国特許第5,977,318号、第6,682,736号、第7,109,003号および第7,132,281号に開示されているものが挙げられる。
【0018】
さらなる抗CTLA4アンタゴニストとしては、限定はされないが、以下が挙げられる:通常は活性化されることによって、CD28抗原がその同族リガンドに結合する能力を破壊することができるいずれの阻害剤、CTLA4がその同族リガンドと結合する能力を破壊することができるいずれの阻害剤、共刺激経路を介してT細胞応答を増強することができるいずれの阻害剤、B7がCD28および/またはCTLA4と結合する能力を破壊することができるいずれの阻害剤、B7が共刺激経路を活性化する能力を破壊することができるいずれの阻害剤、CD80がCD28および/またはCTLA4と結合する能力を破壊することができるいずれの阻害剤、CD80が共刺激経路を活性化する能力を破壊することができるいずれの阻害剤、CD86がCD28および/またはCTLA4と結合する能力を破壊することができるいずれの阻害剤、CD86が共刺激経路を活性化する能力を破壊することができるいずれの阻害剤、ならびに共刺激経路を破壊することができるいずれの阻害剤。これには必然的に、CD28、CD80、CD86、CTLA4、共刺激経路のその他のメンバーの小分子阻害剤; CD28、CD80、CD86、CTLA4、共刺激経路のその他のメンバーに対する抗体; CD28、CD80、CD86、CTLA4、共刺激経路のその他のメンバーに対するアンチセンス分子; CD28、CD80、CD86、CTLA4、共刺激経路のその他のメンバーに対するアドネクチン、CD28、CD80、CD86、CTLA4、共刺激経路のその他のメンバーのRNAi阻害剤(一本鎖および二本鎖の両方)、その他の抗CTLA4アンタゴニストが含まれる。
【0019】
これら文献の各々は、とりわけ、CTLA-4抗体を説明する目的で、参照により本明細書に援用される。好ましい臨床的なCTLA-4抗体は、ヒトモノクローナル抗体10Dl(MDX-010およびイピリムマブとも称され、Medarex, Inc., Bloomsbury, NJから入手可能)であり、WO01/14424に開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1A-1Bは、CTLA-4 mAbとダサチニブを用いた併用処置が、SA1N線維肉腫腫瘍モデルにおいて相乗的効果をもたらすことを表す結果を図示する。ダサチニブを、11日間毎日(“A”)か、または間欠スケジュール(5日投与/2日投与せず)に従って15日間(“B”)投与した。
【0021】
【図2】図2は、ダサチニブとCTLA-4 mAbを用いた併用処置が、CT-26腫瘍モデルにおいて相乗的効果をもたらすことを表す結果を図示する。
【0022】
【図3】図3A-3Cは、ダサチニブでの処置がCTLA-4 mAbの細胞溶解活性を増大させることを示す結果を図示する。皮下CT26大腸腫瘍を有するマウスを、ダサチニブ(30 mg/kg, q1dx14, 1日2回, 腫瘍細胞移植後、4-18日)、CTLA-4 mAb(20 mg/kg, q4dx3, 腫瘍細胞移植後、4、8、12日)または両剤の組み合わせを用いて処置した。最終処置の後、2(A)、7(B)および14(C)日目に、マウス(n=5/群)に、CT26-特異的ペプチド(AH-1)でパルス処理したCFSE-標識同系脾細胞を注入した。18時間後、脾細胞を単離して、CFSE-標識細胞の比を測定(CFSE 高い = ペプチド-パルス処理、 CFSE 低い = パルス処理せず)することにより、細胞溶解活性を決定した。ダサチニブとCTLA-4の組み合わせは、ペプチド-パルス処理脾細胞の溶解の増大を示し、それは14日目までに統計的有意に達した(p=0.055)。
【0023】
【図4】図4A-4Bは、ダサチニブとCTLA-4 mAbを用いた組み合わせ処置によって、腫瘍-流入領域リンパ節(TDLN)中において、A)T制御細胞(CD4+CD25+FoxP3+, Tサプレッサー細胞)およびB)活性化CD4+T細胞よりも、CD8活性化T細胞(CD8+CD69+, Tエフェクター細胞)の比率が増大されることを示す結果を図示する。皮下CT26大腸腫瘍を有するマウスを、ダサチニブ(30 mg/kg, q1dx14, 1日2回, 腫瘍細胞移植後 4-18日目)、CTLA-4 mAb(20 mg/kg, q4dx3, 腫瘍細胞移植後 4、8、12日目)、または両剤の組み合わせを用いて処置した。TDLNを、最終処置後2日目に採取し、フローサイトメトリーによって免疫表現型キャラクタリゼーションを行った。
【0024】
【図5】図5は、スプリセル(登録商標)とCTLA-4 mAbでの同時処置によってP815腫瘍モデルにおける効果が高められることを図示する。スプリセル(登録商標)を、腫瘍移植後 9-13、16-20、23-27日目に経口投与し、抗CTLA-4 mAbを、10、14、18日目に腹腔内投与した。
【0025】
【図6】図6は、エトポシド、パクリタキセル、もしくはゲムシタビンとの同時処置により、CTLA-4遮断活性が失われないことを示す。
【0026】
【図7】図7は、ゲムシタビンと組み合わせたCTLA-4-遮断mAbが、相乗的効果をもたらすことを示す。完全寛解(「CR」)が達成されたマウスは生存CT-26細胞による二次再発を退け、このことはこの組み合わせ処置がメモリー免疫応答を引き出すことを示唆している。
【0027】
【図8】図8は、エトポシドと組み合わせたCTLA-4-遮断mAbが、相乗的効果をもたらすことを示す。
【0028】
【図9】図9は、微小管安定化剤と組み合わせたCTLA-4-遮断mAbが、相乗的効果をもたらすことを示す。
【0029】
【図10】図10は、CTLA-4-遮断mAbと化学療法薬の組み合わせの投与順序が増殖の阻害と関連性を有することを示す。示すとおり、ゲムシタビンをCTLA-4-遮断mAbと同時に共投与することにより、連続投与に比べて、最大の抗増殖効果が示された。
【0030】
【図11】図11は、CTLA-4 mAbとイクサベピロンを用いた処置による細胞傷害性CD8+ T-細胞の増殖を示す。このモデルにおいて、CTLA-4 mAb + イクサベピロンによって細胞傷害性T-細胞(CD8+CD107+)の増殖がもたらされたが、パクリタキセルとの組み合わせではもたらされなかった。
【0031】
【図12】図12は、ゲムシタビンおよびエトポシドがin vivo 細胞傷害性をもたらすことを示す。
【0032】
【図13】図13は、ゲムシタビンが腫瘍-流入領域リンパ節における免疫細胞の組成を調節することを示す。
【0033】
【図14】図14は、ゲムシタビン + CTLA-4遮断が免疫制御に関与する遺伝子の発現を調節したことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(発明の詳細な説明)
本発明は、癌を含む増殖性疾患に対抗する処置のための相乗的な方法を提供し、それは相乗的に治療上有効な量の:(1)タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤(例えばダサチニブ)、微小管安定化剤(例えばパクリタキセル);ヌクレオシドアナログ(例えばゲムシタビン);またはDNA二本鎖(切断)誘発剤(例えばエトポシド)からなる群のメンバー;ならびに、(2)共刺激経路調節剤(例えば抗CTLA4アンタゴニスト)を、処置が必要な哺乳動物種に投与することを含む。
【0035】
最適なT細胞活性化には、T細胞受容体と特異的抗原の間の相互作用(Bretscher, P. et al., Science, 169:1042-1049 (1970))(第1シグナル)、およびT細胞の表面上の共刺激受容体と抗原提示細胞(APC)により発現された共刺激リガンドの結合(第2シグナル)が必要とされる。T細胞が第2シグナルを受け取るのに失敗すると、クローン性アナジーを引き起こし得る(Schwartz, R.H., Science, 248:1349-1356 (1990))。2つの重要なT細胞共刺激受容体は、CD28および細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4, CD152)であり、それらのAPC上のリガンドはB7-1およびB7-2である(Linsley, P.S. et al., J. Exp. Med., 173:721-730 (1991); Linsley, P.S. et al., J. Exp. Med., 174:561-569 (1991))。CD28およびCTLA-4はIgスーパーファミリーの近縁のメンバーであるけれども(Brunet, J.F. et al., Nature, 328:267-270 (1987))、それらは拮抗的に機能する。CD28は、T細胞の表面上で恒常的に発現しており(Gross, J.A. et al., J. Immunol., 149:380-388 (1992))、B7-1もしくはB7-2と結合することにより、T細胞受容体-ペプチド-MHCシグナルを増強して、T細胞の活性化、増殖、およびIL-2産生を促進する(Linsley, P.S. et al., J. Exp. Med., 173:721-730 (1991); Alegre, M.L. et al., Nat. Rev. Immunol., 1(3):220-228 (Dec. 2001))。CTLA-4は、休止期T細胞では認められないが、T細胞活性化後の2-3日間、上方制御される(Lindsten, T. et al., J. Immunol., 151:3489-3499 (1993); Walunas, T.L. et al., Immunity, 1, 405-413 (1994))。CTLA-4はまた、CD28よりも高い親和性でB7-1およびB7-2と結合し(Linsley, P.S. et al., Immunity, 1:793-801 (1994))、そしてT細胞活性化に拮抗し、IL-2産生およびIL-2受容体発現に干渉し、活性化T細胞の細胞周期進行を妨害する(Walunas, T.L. et al., J. Exp. Med., 183:2541-2550 (1996); Krummel, M.F. et al., J. Exp. Med., 183:2533-2540 (1996); Brunner, M.C. et al., J. Immunol., 162:5813-5820 (1999); Greenwald, R.J. et al., Eur. J. Immunol., 32:366-373 (2002))。全てのT細胞応答は、刺激性および阻害性の全てのシグナルの統合により決定される。
【0036】
CTLA-4はT細胞活性化を弱めるようなので、癌免疫療法のマウスモデルにおいてCTLA-4活性を遮断する試みが行われてきた。抗CTLA-4 Abの投与は、免疫原性の乏しい腫瘍(例えばSM1乳癌またはB16メラノーマ)ではわずかな効果しか見られなかったけれども、免疫原性の腫瘍を移植したマウスにおいては腫瘍拒絶を高めた(Leach, D.R. et al., Science, 271:1734-1736 (1996))。抗腫瘍免疫の増強は、抗CTLA-4 Abが顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)-形質導入B16細胞ワクチンとともに投与された場合に認められ、そして色素脱失を伴ったことから、抗腫瘍応答の少なくとも一部は「自己」メラノサイト分化抗原に対して抗原特異的であることが示唆された(van Elsas, A. et al., J. Exp. Med., 190:355-366 (1999); van Elsas, A. et al., J. Exp. Med., 194:481-489 (2001))。原発性前立腺癌のトランスジェニックマウスモデルにおいてGM-CSF-発現前立腺癌細胞に加えて抗CTLA-4 Abを投与すると前立腺癌の発生率および組織学的重篤度を低下させ、そして正常なマウスにおいては前立腺炎を引き起こしたことから、腫瘍拒絶における自己抗原に対する抗原-特異的免疫応答が、再度示唆される(Hurwitz, A.A. et al., Cancer Res., 60:2444-2448 (2000))。さらに、多くのヒト腫瘍抗原は正常な自己抗原であるので、自己に対する寛容性を破壊することが、癌免疫療法の成功にとって重要なことかもしれない。マウスモデルにおいて、腫瘍ワクチンと併せたCTLA-4遮断からの好ましい腫瘍応答は、ヒト癌免疫療法においてCTLA-4遮断を用いることへの関心につながった。
【0037】
化学療法薬および免疫療法薬の組み合わせである化学免疫療法は、腫瘍細胞を直接攻撃して腫瘍細胞壊死もしくはアポトーシスをもたらす薬剤の効果と、腫瘍に対する宿主免疫応答を調節する薬剤の効果を組み合わせた、癌治療のための新規なアプローチである。化学療法薬は、「多価」腫瘍細胞ワクチンを作り出す抗原提示細胞により提示される腫瘍抗原を産生することによる、ならびに腫瘍構造を歪めることで免疫療法薬の浸透および免疫細胞集団の拡大を促進することによる、免疫療法の効果を増強することができる。
【0038】
従って、本発明は、限定はされないが、以下: 膀胱(進行性および転移性膀胱癌を含む)、乳房、大腸(結腸直腸癌を含む)、腎臓、肝臓、肺(小細胞および非小細胞肺癌ならびに肺腺癌を含む)、卵巣、前立腺、精巣、泌尿生殖器、リンパ系、直腸、喉頭、膵臓(膵外分泌癌を含む)、食道、胃、胆嚢、頸部(cervix)、甲状腺、および皮膚(扁平上皮癌を含む)のカルシノーマを含む、カルシノーマ; 白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ヘアリー細胞リンパ腫、組織球性リンパ腫、およびバーキットリンパ腫を含む、リンパ系の造血器腫瘍; 急性および慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、骨髄性白血病、および前骨髄球性白血病を含む、骨髄系の造血器腫瘍; 星状細胞腫、神経芽腫、神経膠腫、およびシュワン腫を含む、中枢および末梢神経系の腫瘍; 線維肉腫、横紋筋肉腫、および骨肉腫を含む、間葉由来の腫瘍; メラノーマ、色素性乾皮症(xenoderma pigmentosum)、ケラトアカントーマ(keratoactanthoma)、精上皮腫、甲状腺濾胞癌、およびテラトカルシノーマを含む、他の腫瘍; メラノーマ、切除不能なステージIIIもしくはIVの悪性メラノーマ、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、消化器癌、腎癌、卵巣癌、肝臓癌、結腸直腸癌、子宮体癌、腎臓癌、前立腺癌、甲状腺癌、神経芽腫、膵癌、多形神経膠芽腫、子宮頸癌、胃癌(stomach cancer)、膀胱癌、肝細胞癌、乳癌、大腸癌、および頭頚部癌、胃癌(gastric cancer)、胚細胞腫瘍、骨癌、骨腫瘍、成人の骨の悪性線維性組織球腫; 小児の骨の悪性線維性組織球腫、肉腫、小児の肉腫、鼻性ナチュラルキラー(sinonasal natural killer)、新生物(neoplasm)、形質細胞腫瘍; 骨髄異形成症候群; 神経芽腫; 精巣胚細胞腫瘍、眼球内メラノーマ、骨髄異形成症候群; 骨髄異形成/骨髄増殖性症候群、滑膜肉腫、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、フィラデルフィア染色体陽性の急性リンパ芽球性白血病(Ph+ ALL)、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、肥満細胞症および肥満細胞症に関連したいずれの症状、ならびにそれらのいずれの転移を含む、様々な癌の処置のために、少なくとも1つの抗CTLA4剤と相乗的に組み合わせてタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤を投与する方法を提供する。また、障害としては、色素性蕁麻疹、肥満細胞症(例えば、びまん性皮膚肥満細胞症、ヒトにおける単発性肥満細胞腫、ならびにイヌの肥満細胞腫およびいくつかの稀な水疱様サブタイプ)、紅皮症型(erythrodermic)および末梢血管拡張性(teleangiectatic)の肥満細胞症、血液疾患に関連した肥満細胞症(例えば、骨髄増殖症候群もしくは骨髄異形成症候群、または急性白血病)、肥満細胞症に関連した骨髄増殖性障害、マスト細胞白血病、ならびにその他の癌が挙げられる。他の癌もまた障害の範囲内であり、限定はされないが、以下:カルシノーマ(膀胱、尿路上皮癌、乳、大腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、胃、子宮頸、甲状腺、精巣(とりわけ精巣セミノーマ)および皮膚(扁平上皮癌を含む)のものを含む); 消化管間質腫瘍(「GIST」); リンパ系の造血器腫瘍(白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ヘアリー細胞リンパ腫およびバーキットリンパ腫を含む); 骨髄系の造血器腫瘍(急性および慢性の骨髄性白血病および前骨髄球性白血病を含む); 間葉由来の腫瘍(線維肉腫および横紋筋肉腫を含む); 他の腫瘍(メラノーマ、精上皮腫、テラトカルシノーマ、神経芽腫および神経膠腫を含む); 中枢および末梢神経系の腫瘍(星状細胞腫、神経芽腫、神経膠腫、およびシュワン腫を含む); 間葉由来の腫瘍(線維肉腫、横紋筋肉腫、および骨肉腫を含む); および、他の腫瘍(メラノーマ、色素性乾皮症、ケラトアカントーマ、精上皮腫、甲状腺濾胞癌、テラトカルシノーマ、化学療法抵抗性の非セミノーマ性胚細胞腫瘍、およびカポジ肉腫)、ならびに、それらのいずれの転移が含まれる。好ましくは、本発明の治療レジメンを用いた癌の処置方法は、抗CTLA剤誘発性大腸炎の発生率の減少をもたらすであろう。
【0039】
また、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤と少なくとも1つの共刺激経路調節剤(好ましくは抗CTLA4剤)との組み合わせに、抗増殖性細胞傷害性薬物を加えてもよい。抗増殖性細胞傷害性薬物として用いられうる化合物の類としては、以下が挙げられる。
【0040】
アルキル化剤(限定されることなく、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソウレアおよびトリアゼンが含まれる): ウラシルマスタード、クロルメチン、シクロホスファミド(シトキサン(登録商標))、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレンメラミン、トリエチレンチオホスホラミン(Triethylenethiophosphoramine)、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、およびテモゾロミド。
【0041】
代謝拮抗薬(限定されることなく、葉酸アンタゴニスト、ピリミジンアナログ、プリンアナログおよびアデノシンデアミナーゼ阻害剤が含まれる): メトトレキサート、5-フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、リン酸フルダラビン、ペントスタチン、およびゲムシタビン。
【0042】
本発明の目的のために、共刺激経路調節剤は、以下: 抗CTLA4剤、抗CTLA-4抗体、イピリムマブ、およびトレメリムマブのうちの1つ以上を包含する。
【0043】
本発明の他の共刺激経路調節剤(これは、単独でもしくはタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤と組み合わせて、またはさらに本明細書に記載の他の共刺激経路調節剤と組み合わせて、または本明細書に記載の他の化合物と組み合わせて使用することができる)としては、限定はされないが、以下: アガトリモド(agatolimod)、ベラタセプト、ブリナツモマブ(blinatumomab)、CD40リガンド、抗B7-1抗体、抗B7-2抗体、抗B7-H4抗体、AG4263、エリトラン、抗OX40抗体、ISF-154、およびSGN-70; B7-1、B7-2、ICAM-1、ICAM-2、ICAM-3、CD48、LFA-3、CD30リガンド、CD40リガンド、熱安定性抗原、B7h、OX40リガンド、LIGHT、CD70およびCD24が挙げられる。
【0044】
本発明の好ましい実施態様において、癌性腫瘍の相乗的な処置のために方法を提供する。本発明の相乗的方法は、哺乳動物宿主において、有利に、腫瘍の発生を低下させるか、腫瘍量を減少させるか、または腫瘍を縮小させる。
【0045】
タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤(例えばダサチニブ)、微小管安定化剤(例えばパクリタキセル); ヌクレオシドアナログ(例えばゲムシタビン);またはDNA二本鎖(切断)誘発剤(例えばエトポシド)と少なくとも1つの抗CTLA4剤との組み合わせに、単独かもしくは放射線療法と組み合わせて抗増殖性細胞傷害性薬物を加えてもよい。
【0046】
他の抗増殖性細胞傷害性薬物は、ナベルビン、CPT-11、アナストロゾール、レトロゾール、カペシタビン、レロキサフィン、シクロホスファミド、イホスファミド(ifosamide)およびドロロキシフェン(droloxafine)である。
【0047】
天然物およびそれらの誘導体(例えば、ビンカアルカロイド、抗腫瘍抗生物質、酵素、リンホカインおよびエピポドフィロトキシン): ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、Ara-C、パクリタキセル(パクリタキセルはタキソール(登録商標)として市販されている)、ミトラマイシン、デオキシコホルマイシン、マイトマイシン-C、L-アスパラギナーゼ、インターフェロン(とりわけ、IFN-a)、エトポシド、およびテニポシド。
【0048】
少なくとも1つの共刺激経路調節剤(好ましくは、抗CTLA4剤)との他の組み合わせには、共刺激経路アゴニスト(すなわち、免疫賦活薬)、チューブリン安定化剤(例えば、パクリタキセル(pacitaxol)、エポチロン、タキサン、など)、イグゼンプラ(商標)、ダカルバジン、パラプラチン(登録商標)、ドセタキセル、1つ以上のペプチドワクチン、MDX-1379メラノーマペプチドワクチン、1つ以上のgp100ペプチドワクチン、鶏痘-PSA-TRICOM(商標)ワクチン、ワクチニア-PSA-TRICOM(商標)ワクチン、MART-1抗原、サルグラモスチム、トレメリムマブ、アンドロゲン除去併用療法の組み合わせ; イピリムマブおよび別の共刺激経路アゴニストの組み合わせ; イピリムマブおよびチューブリン安定化剤(例えば、パクリタキセル、エポチロン、タキサン、など)の組み合わせ; イピリムマブおよびイグゼンプラ(商標)の組み合わせ、イピリムマブとダカルバジンとの組み合わせ、イピリムマブとパラプラチン(登録商標)との組み合わせ、イピリムマブとドセタキセルとの組み合わせ、イピリムマブと1つ以上のペプチドワクチンとの組み合わせ、イピリムマブとMDX-1379メラノーマペプチドワクチンとの組み合わせ、イピリムマブと1つ以上のgp100ペプチドワクチンとの組み合わせ、イピリムマブと鶏痘-PSA-TRICOM(商標)ワクチンとの組み合わせ、イピリムマブとワクチニア-PSA-TRICOM(商標)ワクチンとの組み合わせ、イピリムマブとMART-1抗原との組み合わせ、イピリムマブとサルグラモスチムとの組み合わせ、イピリムマブとトレメリムマブとの組み合わせ、および/またはイピリムマブとアンドロゲン除去併用療法との組み合わせが含まれうる。本発明の組み合わせはまた、処置される症状に対するそれらの特定の有用性について選択される他の周知の療法と併せて用いてもよい。
【0049】
用語「放射線療法」には、限定はされないが、X線またはガンマ線が含まれ、それは、外部供給源(例えば放射)か、または小さな放射線源の移植によってのいずれかから送達される。
【0050】
本明細書および特許請求の範囲で用いる単数形「a」、「an」、および「the」は、他に明確に指示されない限り、複数の言及を含む。従って、例えば、「ペプチド(a peptide)」への言及は、2つ以上のペプチドの組み合わせなどを含む。
【0051】
本明細書において測定可能な値(例えば、量、時間など)について言及する場合に用いる「約」は、特定の値から、±20%もしくは±10%、より好ましくは±5%、もっと好ましくは±1%、そしてさらに好ましくは±0.1%の変動を包含することを意味し、その変動は記載された方法を実施するのに適当である。
【0052】
当分野で公知のように、ダサチニブはまた、N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[6-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]-2-メチル-4-ピリミジニル]アミノ]-5-チアゾールカルボキサミドと称され、以下の構造(I):
【化1】

を有する化合物を表す。
【0053】
化合物(I)はまた、IUPAC命名法に従って、N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-((6-(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル)-2-メチル-4-ピリミジニル)アミノ)-1,3-チアゾール-5-カルボキサミドとも称され得る。該用語「N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[6-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]-2-メチル-4-ピリミジニル]アミノ]-5-チアゾールカルボキサミド」の使用は、化合物(I)の溶媒和物(水和物を含む)および多形体、またはその塩(例えば、2005年2月4日に出願された米国特許出願第11/051,208号(あらゆる目的のために、参照によりその全般が本明細書に援用される)に記載の(I)の一水和物形態)を、(他に指示のない限り)包含する。N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[6-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]-2-メチル-4-ピリミジニル]アミノ]-5-チアゾールカルボキサミドの医薬組成物は、N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[6-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]-2-メチル-4-ピリミジニル]アミノ]-5-チアゾールカルボキサミド、ならびに1つ以上の希釈剤、ビヒクルおよび/または賦形剤を含有する全ての医薬的に許容される組成物(例えば、2006年4月12日に出願された米国特許出願第11/402,502号(あらゆる目的のために、参照によりその全般が本明細書に援用される)に記載の組成物)を包含する。N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[6-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]-2-メチル-4-ピリミジニル]アミノ]-5-チアゾールカルボキサミドを含有する医薬組成物の1つの例は、スプリセル(登録商標)(Bristol-Myers Squibb Company)である。スプリセル(登録商標)は、ヒプロメロース、二酸化チタン、およびポリエチレングリコールを含有する錠剤中に、活性成分としてN-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[6-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]-2-メチル-4-ピリミジニル]アミノ]-5-チアゾールカルボキサミド(ダサチニブとも称される)、ならびに、不活性成分もしくは賦形剤として、ラクトース一水和物、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、およびステアリン酸マグネシウムを含有する。
【0054】
本発明は特定の方法、試薬、化合物、組成物、または生物システムに限定されず、当然ながらそれを変えることができることが理解されるべきである。本明細書で用いる専門用語(terminology)は、単に特定の態様を説明する目的のためのものであり、制限することを意図するものではないこともまた理解されるべきである。
【0055】
当分野で公知のとおり、イピリムマブは抗CTLA-4抗体を言い、機能性ヒトレパートリーを生成するために重鎖および軽鎖をコードするヒト遺伝子を有するトランスジェニックマウス由来の、完全ヒトIgG抗体である。イピリムマブは、そのCAS登録番号477202-00-9により言及することもでき、そして、PCT公開番号WO 01/14424(あらゆる目的のために、参照によりその全般が本明細書に援用される)中に抗体10DIとして開示されている。具体的に言うと、イピリムマブは、軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含有する(SEQ ID NO:1を含む軽鎖可変領域を有し、そしてSEQ ID NO:2を含む重鎖領域を有する)ヒトモノクローナル抗体またはCTLA4に特異的に結合するその抗原結合部位を表す。イピリムマブの医薬組成物は、イピリムマブおよび1つ以上の希釈剤、ビヒクルおよび/または賦形剤を含有する全ての医薬的に許容される組成物を包含する。イピリムマブを含有する医薬組成物の例がPCT公開番号WO 2007/67959に記載されている。イピリムマブ(Impilimumab)は静脈内(I.V.)投与されうる。

イピリムマブの軽鎖可変領域:
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVGSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGAFSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSSPWTFGQGTKVEIK (SEQ ID NO:1)

イピリムマブの重鎖可変領域:
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYTMHWVRQAPGKGLEWVTFISYDGNNKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAIYYCARTGWLGPFDYWGQGTLVTVSS (SEQ ID NO:2)
【0056】
本明細書の他の部分に記載される通り、本明細書に記載の抗増殖剤に加えて、1つ以上の抗CTLA4アンタゴニストを、単独かまたはペプチド抗原(例えば、gp100)と組み合わせて投与してもよい。ペプチド抗原の非限定的な例は、IMDQVPFSV(SEQ ID NO:3)およびYLEPGPVTV(SEQ ID NO:4)からなる群から選択される配列を含むかあるいはそれから成る、gp100ペプチドでありうる。そのようなペプチドは、経口的に投与してもよいか、または好ましくは皮下注射により、1 mgをフロイント不完全アジュバント(IFA)中に乳化させて四肢の一つに皮下注射することにより投与してもよく、そして1 mgの同一かもしくは異なるペプチドをIFA中に乳化させて別の四肢に注射してもよい。
【0057】
当分野で公知のとおり、パクリタキセルは、以下の構造(II):
【化2】

を有する化合物を言う。化合物(II)は、IUPAC命名法に従って、(2R,3S)-N-ベンゾイル-3-フェニルイソセリンとの5β,20-エポキシ-1,2α,4,7β,10β,13α-ヘキサヒドロキシタキサ-11-エン-9-オン 4,10-ジアセテート 2-ベンゾエート 13-エステルとも称され得る。用語「(2R,3S)-N-ベンゾイル-3-フェニルイソセリンとの5β,20-エポキシ-1,2α,4,7β,10β,13α-ヘキサヒドロキシタキサ-11-エン-9-オン 4,10-ジアセテート 2-ベンゾエート 13-エステル」の使用は、化合物(II)の溶媒和物(水和物を含む)および多形体、またはその塩、例えば、1996年4月2日に発行された米国特許第5,504,102号(あらゆる目的のために、参照によりその全般が本明細書に援用される)に記載の(II)の形態を包含する(他に指示のない限り)。(2R,3S)-N-ベンゾイル-3-フェニルイソセリンとの5β,20-エポキシ-1,2α,4,7β,10β,13α-ヘキサヒドロキシタキサ-11-エン-9-オン 4,10-ジアセテート 2-ベンゾエート 13-エステルの医薬組成物には、(2R,3S)-N-ベンゾイル-3-フェニルイソセリンとの5β,20-エポキシ-1,2α,4,7β,10β,13α-ヘキサヒドロキシタキサ-11-エン-9-オン 4,10-ジアセテート 2-ベンゾエート 13-エステルならびに1つ以上の希釈剤、ビヒクルおよび/または賦形剤を含有する全ての医薬的に許容される組成物が含まれる。(2R,3S)-N-ベンゾイル-3-フェニルイソセリンとの5β,20-エポキシ-1,2α,4,7β,10β,13α-ヘキサヒドロキシタキサ-11-エン-9-オン 4,10-ジアセテート 2-ベンゾエート 13-エステルを含有する医薬組成物の1つの例はタキソール(登録商標)(Bristol-Myers Squibb Company)である。タキソール(登録商標)は、活性成分として(2R,3S)-N-ベンゾイル-3-フェニルイソセリンとの5β,20-エポキシ-1,2α,4,7β,10β,13α-ヘキサヒドロキシタキサ-11-エン-9-オン 4,10-ジアセテート 2-ベンゾエート 13-エステル(パクリタキセルとも称される)を含有し、静脈内注入のために、0.3〜1.2 mg/mlの最終濃度になるように、無菌の0.9%塩化ナトリウム注射剤(米国薬局方)、5%ブドウ糖注射剤(米国薬局方)、0.9%塩化ナトリウムおよび5%ブドウ糖注射剤(米国薬局方)、または5%ブドウ糖/リンガー液注射剤で構成される希釈液の形態の不活性成分を含む。
【0058】
当分野で公知のように、ゲムシタビンは以下の構造(III):
【化3】

を有する化合物を言う。化合物(III)は、IUPAC命名法に従って、2'-デオキシ-2',2'-ジフルオロシチジン一塩酸塩(β-異性体)とも称され得る。用語「2'-デオキシ-2',2'-ジフルオロシチジン一塩酸塩(β-異性体)」の使用は、化合物(III)の溶媒和物(水和物を含む)および多形体、またはその塩を包含する(他に指示のない限り)。2'-デオキシ-2',2'-ジフルオロシチジン一塩酸塩(β-異性体)および1つ以上の希釈剤、ビヒクルおよび/または賦形剤の医薬組成物。2'-デオキシ-2',2'-ジフルオロシチジン一塩酸塩(β-異性体)を含有する医薬組成物の1つの例は、ジェムザール(登録商標)(ゲムシタビンHCl)である。ジェムザール(登録商標)は、活性成分として2'-デオキシ-2',2'-ジフルオロシチジン一塩酸塩(β-異性体)を含有し、静脈内注入のために静脈内使用専用の無菌の形態の不活性成分を含む。ジェムザール(登録商標)のバイアルは、無菌の凍結乾燥粉末のマンニトール(200 mgまたは1 g、各々)および酢酸ナトリウム(12.5 mgまたは62.5 mg、各々)とともに製剤化された、200 mgまたは1 gのゲムシタビン HCl(遊離塩基として表される)を含む。塩酸および/または水酸化ナトリウムをpH調整のために加えてもよい。
【0059】
当分野で公知のとおり、エトポシドは、以下の構造(IV):
【化4】

を有する化合物を言う。化合物(IV)は、IUPAC命名法に従って、4'-デメチルエピポドフィロトキシン 9-[4,6-O-(R)-エチリデン-β-D-グルコピラノシド], 4'-(ジヒドロゲンホスフェート)とも称され得る。用語「4'-デメチルエピポドフィロトキシン 9-[4,6-O-(R)-エチリデン-β-D-グルコピラノシド], 4'-(ジヒドロゲン ホスフェート)」の使用は、化合物(IV)の溶媒和物(水和物を含む)および多形体、またはその塩を包含する(他に指示のない限り)。4'-デメチルエピポドフィロトキシン 9-[4,6-O-(R)-エチリデン-β-D-グルコピラノシド], 4'-(ジヒドロゲン ホスフェート)、および1つ以上の希釈剤、ビヒクルおよび/または賦形剤の医薬組成物。4'-デメチルエピポドフィロトキシン 9-[4,6-O-(R)-エチリデン-β-D-グルコピラノシド], 4'-(ジヒドロゲン ホスフェート)を含有する医薬組成物の1つの例は、エトポフォス(エトポシド ホスフェート)である。エトポフォスは、活性成分として4'-デメチルエピポドフィロトキシン 9-[4,6-O-(R)-エチリデン-β-D-グルコピラノシド], 4'-(ジヒドロゲン ホスフェート)を含有し、静脈内注入のために、100 mgのエトポシドと同等のエトポシド ホスフェート、32.7 mgのクエン酸ナトリウム(米国薬局方)、および300 mgのデキストラン40を含む単回投与バイアル中に、静脈内使用専用の無菌の形態の不活性成分を含む。
【0060】
本発明の方法で用いるのに適切な抗増殖剤としては、限定されることなく、タキサン、パクリタキセル(パクリタキセルは、タキソール(登録商標)として市販されている)、ドセタキセル、ディスコデルモリド(DDM)、ジクチオスタチン(DCT)、ペロルシドA、エポチロン、エポチロンA、エポチロンB、エポチロンC、エポチロンD、エポチロンE、エポチロンF、フラノエポチロンD、デスオキシエポチロンBl、[17]-デヒドロデスオキシエポチロンB、[18]デヒドロデスオキシエポチロンB、C12,13-シクロプロピル-エポチロンA、C6-C8架橋エポチロンA、トランス-9,10-デヒドロエポチロンD、シス-9,10-デヒドロエポチロンD、16-デスメチルエポチロンB、エポチロンB10、ディスコデルモリド(discoderomolide)、パツピロン(EPO-906)、KOS-862、KOS-1584、ZK-EPO、BMS-310705、ABJ-789、XAA296A(ディスコデルモリド)、TZT-1027(ソブリドチン)、ILX-651(タシドチン塩酸塩)、ハリコンドリンB、エリブリンメシレート(E-7389)、ヘミアステリン(HTI-286)、E-7974、クリプトフィシン、LY-355703、マイタンシノイド免疫複合体(DM-1)、MKC-1、ABT-751、T1-38067、T-900607、SB-715992(イスピネシブ)、SB-743921、MK-0731、STA-5312、エリュテロビン、17β-アセトキシ-2-エトキシ-6-オキソ-B-ホモ-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、シクロストレプチン、イソラウリマリド、ラウリマリド、4-エピ-7-デヒドロキシ-14,16-ジデメチル-(+)-ディスコデルモリド、およびクリプトチロン1、ならびに当分野で公知の他の微小管安定化剤が挙げられる。
【0061】
用語「タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤」は、タンパク質チロシンキナーゼファミリーの1つ以上のメンバーを阻害する剤を称すること意図している。タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤の非限定的な例としては、限定はされないが、ダサチニブ、イマチニブ、ニロチニブ、PD180970、GGP76030、AP23464、SKI606、NS-187、および/またはAZD0530が挙げられる。そのようなタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤は、単独かまたは他の分子(例えばT315I阻害剤)と組み合わせて投与されうる。
【0062】
用語「微小管調節剤」は、微小管を安定化するか、あるいは微小管の合成および/または重合を不安定化する剤を称することを意図している。
【0063】
本明細書において言及されるとおり、少なくとも1つの抗増殖剤は微小管作用剤でありうる。微小管作用剤は、細胞の有糸分裂を妨害し、それらの抗増殖性細胞傷害活性で当分野においてよく知られている。本発明において有用な微小管作用剤としては、限定はされないが、アロコルヒチン(NSC 406042)、ハリコンドリンB(NSC 609395)、コルヒチン(NSC 757)、コルヒチン誘導体(例えば、NSC 33410))ドラスタチン10(NSC 376128)、マイタンシン(NSC 153858)、リゾキシン(NSC 332598)、パクリタキセル(タキソール(登録商標)、NSC 125973)、タキソール(登録商標)誘導体(例えば、誘導体(例えば、NSC 608832)、チオコルヒチン NSC 361792)、トリチルシステイン(NSC 83265)、硫酸ビンブラスチン(NSC 49842)、硫酸ビンクリスチン(NSC 67574)、天然および合成エポチロン(限定はされないが、エポチロンA、エポチロンB、エポチロンC、エポチロンD、デスオキシエポチロンA、デスオキシエポチロンB、[1S-[1R*,3R*(E),7R*,10S*,11R*,12R*,16S*]]-7-11-ジヒドロキシ-8,8,10,12,16-ペンタメチル-3-[1-メチル-2-(2-メチル-4-チアゾリル)エテニル]-4-アザ-17 オキサビシクロ [14.1.0]ヘプタデカン-5,9-ジオン(2001年7月17日に発行された米国特許第6,262,094号に開示)、[1S-[1R*,3R*(E),7R*,10S*,11R*,12R*,16S*]]-3-[2-[2-(アミノメチル)-4-チアゾリル]-1-メチルエテニル]-7,11-ジヒドロキシ-8,8,10,12,16-ペンタメチル-4-17-ジオキサビシクロ[14.1.0]-ヘプタデカン-5,9-ジオン(2000年2月17日に出願された米国特許出願第09/506,481号、およびその中の実施例7および8に開示)、およびそれらの誘導体を含む);ならびに他の微小管崩壊剤(disruptor agent)が挙げられる。さらなる抗悪性腫瘍薬としては、ディスコデルモリド(Service, Science, 274:2009 (1996)を参照)エストラムスチン、ノコダゾール、MAP4、などが挙げられる。そのような剤の例はまた、科学文献および特許文献(例えば、Bulinski, J. Cell Sci., 110:3055-3064 (1997); Panda, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94:10560-10564 (1997); Muhlradt, Cancer Res., 57:3344-3346 (1997); Nicolaou, Nature, 387:268-272 (1997); Vasquez, Mol. Biol. Cell., 8:973-985 (1997); Panda, J. Biol. Chem., 271:29807-29812 (1996)を参照)に記載されている。
【0064】
本発明の化学療法的方法による処置と併せてかまたはその前に、異常な増殖細胞を休止状態にすることが望ましい場合は、ホルモンおよびステロイド(合成アナログを含む): 17a-エチニルエストラジオール、ジエチルスチルベストロール、テストステロン、プレドニゾン、フルオキシメステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、テストラクトン、酢酸メゲストロール、メチルプレドニゾロン、メチル-テストステロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、クロロトリアニセン、ヒドロキシプロゲステロン、アミノグルテチミド、エストラムスチン、酢酸メドロキシプロゲステロン、ロイプロリド、フルタミド、トレミフェン、ゾラデックス(登録商標)を、患者に投与することもできる。
【0065】
また、本発明の化学療法的方法と組み合わせて用いるのに適切であるのは、抗血管新生薬(例えば、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤)、および他のVEGF阻害剤(例えば、抗VEGF抗体)であり、小分子(例えば、ZD6474およびSU6668)もまた含まれる。また、ジェネンテックからの抗Her2抗体を用いてもよい。適切なEGFR阻害剤はEKB-569(不可逆的阻害剤)である。EGFRに対して免疫特異的なImcloneの抗体C225、およびsrc阻害剤もまた含まれる。
【0066】
また、抗増殖性細胞分裂阻害剤として用いるのに適切であるのはカソデックス(登録商標)であり、それはアンドロゲン依存性の癌を非増殖性にする。細胞分裂阻害剤のさらに別の例は抗エストロゲン剤タモキシフェンであり、それはエストロゲン依存性乳癌の増殖もしくは成長を阻害する。細胞増殖シグナルの伝達の阻害剤は、細胞分裂阻害剤である。例は、上皮増殖因子阻害剤、Her-2阻害剤、MEK-1キナーゼ阻害剤、MAPKキナーゼ阻害剤、PI3阻害剤、Srcキナーゼ阻害剤、およびPDGF阻害剤である。
【0067】
上述の通り、特定の抗増殖剤は抗血管新生薬および抗血管形成薬であり、固形腫瘍への血流を妨げることにより栄養を欠乏させることによって、癌細胞を静止状態にする。また、性腺摘除(それもまたアンドロゲン依存性の癌を非増殖性にする)を用いてもよい。血流の外科的破壊以外の手段では飢餓が、細胞分裂阻害剤の別の例である。特に好ましい類の抗血管性の細胞分裂阻害剤はコンブレタスタチンである。細胞分裂阻害剤の他の例としては、METキナーゼ阻害剤、MAPキナーゼ阻害剤、非受容体型および受容体型チロシンキナーゼの阻害剤、インテグリンシグナル伝達の阻害剤、ならびにインスリン様増殖因子受容体の阻害剤が挙げられる。本発明はまた、増殖性障害だけでなく、BCR-ABL関連障害、変異BCR-ABL関連障害、および/またはタンパク質チロシンキナーゼ-関連障害、イマチニブ抵抗性BCR-ABL変異、ダサチニブ抵抗性BCR-ABL変異、CML、イマチニブ抵抗性CML、および/またはイマチニブ不耐性CMLの存在に関連した障害の、処置および予防のために、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤、微小管安定化剤(例えばパクリタキセル); ヌクレオシドアナログ(例えばゲムシタビン); またはDNA二本鎖(切断)誘発剤(例えばエトポシド)を、少なくとも1つの共刺激経路調節剤(とりわけ、抗CTLA4剤)との相乗的な組み合わせで投与する方法も提供する。
【0068】
本明細書で用いる用語「BCR-ABL」は、野生型および変異BCR-ABLの両方を包含する。
【0069】
「BCR-ABL関連障害」は、BCR-ABL活性(変異BCR-ABL活性を含む)に起因する障害、ならびに/あるいはBCR-ABL(変異BCR-ABLを含む)の発現および/または活性の阻害により軽減される障害である。染色体9と22の間の相互転座により、発癌性BCR-ABL融合タンパク質をもたらされる。用語「BCR-ABL関連障害」は「変異BCR-ABL関連障害」を包含する。
【0070】
本発明の範囲に含まれる障害としては、例えば、白血病(例えば、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、およびフィラデルフィア染色体陽性の急性リンパ芽球性白血病(Ph+ ALL)を含む)、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、消化器癌、腎臓癌、卵巣癌、肝臓癌、結腸直腸癌、子宮体癌、腎癌、前立腺癌、甲状腺癌、神経芽腫、膵癌、多形神経膠芽腫、子宮頸癌、胃癌、膀胱癌、肝細胞癌、乳癌、大腸癌、および頭頚部癌、胃癌、胚細胞腫瘍、小児の肉腫、鼻性ナチュラルキラー、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、肥満細胞症および肥満細胞症に関連したいずれの症状が挙げられる。障害として、さらに、色素性蕁麻疹、肥満細胞症(例えば、びまん性皮膚肥満細胞症、ヒトにおける単発性肥満細胞腫、ならびにイヌの肥満細胞腫およびいくつかの稀な水疱様のサブタイプ)、紅皮症型および末梢血管拡張性の肥満細胞症、血液疾患に関連した肥満細胞症(例えば、骨髄増殖症候群もしくは骨髄異形成症候群、または急性白血病)、肥満細胞症に関連した骨髄増殖性障害、ならびにマスト細胞白血病が挙げられる。様々なさらなる癌もまた、タンパク質チロシンキナーゼ-関連障害の範囲内に含まれ、例えば、以下: 膀胱、乳、大腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、胃、頸部、甲状腺、精巣(とりわけ精巣セミノーマ)および皮膚(扁平上皮癌を含む)のものを含むカルシノーマ; 消化管間質腫瘍(「GIST」); リンパ系の造血器腫瘍(白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ヘアリー細胞リンパ腫およびバーキットリンパ腫を含む); 骨髄系の造血器腫瘍(急性および慢性の骨髄性白血病ならびに前骨髄球性白血病を含む); 間葉由来の腫瘍(線維肉腫および横紋筋肉腫を含む); 他の腫瘍(メラノーマ、精上皮腫、テラトカルシノーマ、神経芽腫および神経膠腫を含む); 中枢および末梢神経系の腫瘍(星状細胞腫、神経芽腫、神経膠腫、およびシュワン腫を含む); 間葉由来の腫瘍(線維肉腫、横紋筋肉腫、および骨肉腫を含む); ならびに、他の腫瘍(メラノーマ、色素性乾皮症、ケラトアカントーマ、精上皮腫、甲状腺濾胞癌、テラトカルシノーマ、化学療法抵抗性の非セミノーマ性胚細胞腫瘍、およびカポジ肉腫を含む)が挙げられる。特定の好ましい実施態様において、該障害は、白血病、乳癌、前立腺癌、肺癌、大腸癌、メラノーマ、または固形腫瘍である。特定の好ましい実施態様において、該白血病は、慢性骨髄性白血病(CML)、Ph+ ALL、AML、イマチニブ抵抗性CML、イマチニブ不耐性CML、移行期(accelerated)CML、リンパ性急性転化期CMLである。
【0071】
「固形腫瘍」には、例えば、肉腫、メラノーマ、カルシノーマ、前立腺癌、肺癌、大腸癌、または他の固形腫瘍癌が含まれる。
【0072】
用語「癌」、「癌性の」、または「悪性の」は、一般的に無秩序の細胞増殖により特徴づけられる哺乳動物における生理的状態を言うかもしくは表す。癌の例としては、例えば、白血病、リンパ腫、芽細胞腫、カルシノーマおよび肉腫が挙げられる。そのような癌のさらに具体的な例としては、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、フィラデルフィア染色体陽性の急性リンパ芽球性白血病(Ph+ ALL)、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、消化器癌、腎臓癌、卵巣癌、肝臓癌、結腸直腸癌、子宮体癌、腎癌、前立腺癌、甲状腺癌、神経芽腫、膵癌、多形神経膠芽腫、子宮頸癌、胃癌、膀胱癌、肝細胞癌、乳癌、大腸癌、および頭頚部癌、胃癌、胚細胞腫瘍、小児の肉腫、鼻性ナチュラルキラー、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、および慢性リンパ性白血病(CML)が挙げられる。
【0073】
「白血病」は、進行性で悪性の造血器疾患を言い、一般的に、血液および骨髄中における白血球およびそれらの前駆体の異常な(distorted)増殖および発生により特徴づけられる。白血病は、一般的に、(1)疾患の持続期間および性質--急性か慢性か;(2)関与する細胞のタイプ; 骨髄(骨髄性)か、リンパ(リンパ性)か、または単球か;および(3)血液中の異常細胞の数が増加するか増加しないか--白血性か非白血性(亜白血性)かに基づいて、臨床的に分類される。白血病には、例えば、急性非リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性顆粒球性白血病、慢性顆粒球性白血病、急性前骨髄球性白血病、成人T細胞白血病、非白血性白血病、白血性(leukocythemic)白血病、好塩基球性白血病、芽球性白血病、ウシ白血病、慢性骨髄性白血病、皮膚白血病、胎生期(embryonal)白血病、好酸球性白血病、グロス白血病、ヘアリーセル白血病、血芽球性(hemoblastic)白血病、血球芽細胞性(hemocytoblastic)白血病、組織球性白血病、幹細胞性白血病、急性単球性白血病、白血球減少性白血病、リンパ性(lymphatic)白血病、リンパ芽球性白血病、リンパ球性白血病、リンパ行性(lymphogenous)白血病、リンパ性白血病、リンパ肉腫細胞性白血病、マスト細胞白血病、巨核球性白血病、小骨髄芽球性(micromyeloblastic)白血病、単球性白血病、骨髄芽球性白血病、骨髄球性白血病、骨髄顆粒球性(myeloid granulocytic)白血病、骨髄単球性白血病、ネーゲリ型(Naegeli)白血病、形質細胞白血病、形質細胞性白血病、前骨髄球性白血病、リーダー細胞性(Rieder cell)白血病、シリング型白血病、幹細胞性白血病、亜白血性白血病、および未分化細胞(undifferentiated cell)白血病が含まれる。特定の態様において、本発明は、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、および/またはフィラデルフィア染色体陽性の急性リンパ芽球性白血病(Ph+ ALL)のための処置を提供する。
【0074】
「変異BCR-ABL」は、1つ以上のアミノ酸置換、付加、もしくは欠失により野生型BCR-ABLチロシンキナーゼと異なるアミノ酸配列を有するBCR-ABLチロシンキナーゼを包含する。例えば、SEQ ID NO:2のポジション507での別のアミノ酸とのアミノ酸の置換によって、変異BCR-ABLチロシンキナーゼがもたらされうる。
【0075】
「変異BCR-ABL関連障害」は、BCR-ABL関連障害を説明するために用いられ、ここで、該障害に関与する細胞は、BCR-ABLにおける変異の結果としての該障害を処置するのに用いられるキナーゼ阻害剤での処置に抵抗性を有しているかまたは抵抗性を有するようになる。例えば、野生型BCR-ABLの活性を阻害し、癌性細胞の増殖を阻害および/またはアポトーシスを誘導しうる、キナーゼ阻害剤化合物を用いて癌性の症状を処置することができる。時間とともに、変異はBCR-ABLキナーゼをコードする遺伝子に導入され得て、それによってBCR-ABLキナーゼのアミノ酸配列が変えられ、癌細胞が該化合物を用いた処置に対する抵抗性(もしくは少なくとも部分的に抵抗性)を有するようになる。あるいは、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤を用いた処置とは無関係に、遺伝的にまたは発癌イベントの結果として、これらの細胞に癌性もしくは増殖性状態に分化する性質をもたらす一因となり、またこれらの細胞をタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤での処置に対して感受性を低くさせ得る変異が、BCR-ABLキナーゼをコードする遺伝子内に既に存在し得る。そのような状況が、直接的もしくは間接的に、「変異BCR-ABLキナーゼ関連障害」が引き起こすと考えられ、そのような症状の処置は少なくとも部分的に変異BCR-ABL(好ましくは野生型BCR-ABLおよび変異BCR-ABLの両方)に対して有効である化合物を必要としうる。個体がキナーゼ阻害剤イマチニブに対して少なくとも部分的に抵抗性を発現する場合、該変異BCR-ABL関連障害は、イマチニブ抵抗性BCR-ABL変異かまたはタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤抵抗性BCR-ABL変異によってもたらされるものである。同様に、キナーゼ阻害剤 N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[6-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]-2-メチル-4-ピリミジニル]アミノ]-5-チアゾールカルボキサミドに対して少なくとも部分的に抵抗性を発現する場合、該変異BCR-ABL関連障害は、N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[6-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]-2-メチル-4-ピリミジニル]アミノ]-5-チアゾールカルボキサミド抵抗性BCR-ABL変異かまたはタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤抵抗性BCR-ABL変異によってもたらされるものである。本発明者らは、N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[6-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]-2-メチル-4-ピリミジニル]アミノ]-5-チアゾールカルボキサミドを用いた処置の後、特定の個体がE507G変異を発現したことを発見した。本発明は、とりわけ、変異BCR-ABL関連障害の処置方法、および個体が変異BCR-ABL関連障害を有するかどうかの同定方法を提供する。
【0076】
本明細書において特に関心のもたれる「タンパク質チロシンキナーゼ-関連障害」は、少なくとも部分的に異常なSRCもしくはBCR-ABL(WTもしくは変異体)活性によってもたらされる障害、および/またはSRCもしくはBCR-ABL(WTもしくは変異体)の阻害により軽減される障害であり、本明細書において「SRC関連障害」、「SRC関連癌」、または「BCR-ABL関連障害」、「BCR-ABL関連癌」と称される。
【0077】
「イマチニブ抵抗性BCR-ABL変異」は、BCR-ABLのアミノ酸配列における特異的な変異を言い、それは該変異を発現する細胞にイマチニブでの処置に対する抵抗性を与える。本明細書に記載のとおり、そのような変異には、BCR-ABLのT315Iポジションでの変異が含まれ得る。BCR-ABLタンパク質に少なくとも部分的にイマチニブ抵抗性をもたらしうるさらなる変異には、例えば、E279K、F359C、F359I、L364I、L387M、F486S、D233H、T243S、M244V、G249D、G250E、G251S、Q252H、Y253F、Y253H、E255K、E255V、V256L、Y257F、Y257R、F259S、K262E、D263G、K264R、S265R、V268A、V270A、T272A、Y274C、Y274R、D276N、T277P、M278K、E279K、E282G、F283S、A288T、A288V、M290T、K291R、E292G、I293T、P296S、L298M、L298P、V299L、Q300R、G303E、V304A、V304D、C305S、C305Y、T306A、F311L、I314V、T315I、T315A、E316G、F317L、F317I、M318T、Y320C、Y320H、G321E、D325H、Y326C、L327P、R328K、E329V、Q333L、A337V、V339G、L342E、M343V、M343T、A344T、A344V、I347V、A350T、M351T、E352A、E352K、E355G、K357E、N358D、N358S、F359V、F359C、F359I、I360K、I360T、L364H、L364I、E373K、N374D、K378R、V379I、A380T、A380V、D381G、F382L、L387M、M388L、T389S、T392A、T394A、A395G、H396K、H396R、A399G、P402T、T406A、S417Y、F486S、およびE507Gが含まれ得る。また、さらなるイマチニブ抵抗性BCR-ABL変異として、本明細書の他の部分に記載された他のBCR-ABL変異を含んでもよい。
【0078】
「ダサチニブ抵抗性BCR-ABL変異」は、BCR-ABLのアミノ酸配列における特異的な変異を言い、それは該変異を発現する細胞にダサチニブでの処置に対して少なくとも部分的に抵抗性を与える。本明細書に記載のとおり、そのような変異には、BCR-ABLのT315I、T315A、F317A、F317I、およびE507Gポジションでの変異が含まれ得る。また、さらなるダサチニブ抵抗性BCR-ABL変異は、本明細書の他の部分に記載された他のBCR-ABL変異を含んでもよい。
【0079】
「イマチニブ抵抗性CML」は、CMLに関与する細胞がイマチニブでの処置に対して抵抗性を有するCMLを言う。一般的に、それはBCR-ABLにおける変異によってもたらされる。
【0080】
「イマチニブ不耐性CML」は、CMLである個体がイマチニブでの処置に対して不耐性であるCMLを言い、すなわち、イマチニブの有毒および/または有害な副作用がいずれの治療上の有益な効果を上回っていることを言う。
【0081】
タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤、微小管安定化剤(例えばパクリタキセル); ヌクレオシドアナログ(例えばゲムシタビン); もしくはDNA二本鎖(切断)誘発剤(例えばエトポシド)と共刺激経路調節剤との相乗的な組み合わせに、1つ以上のさらなる化合物を含ませてもよく、それには、限定はされないが、以下: チューブリン安定化剤(例えば、パクリタキセル、エポチロン、タキサン、など); ファルネシル(farnysyl)トランスフェラーゼ阻害剤(例えば、(R)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1-(1H-イミダゾール-4-イルメチル)-3-(フェニルメチル)-4-(2-チエニルスルホニル)-1H-1,4-ベンゾジアゼピン-7-カルボニトリル, 塩酸塩); 別のタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤; N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[6-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]-2-メチル-4-ピリミジニル]アミノ]-5-チアゾールカルボキサミドの投与頻度を増加させたレジメン; ATP非競合阻害剤 ONO12380; オーロラキナーゼ阻害剤 VX-680; p38 MAP キナーゼ阻害剤 BIRB-796; および本明細書に記載のN-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[6-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]-2-メチル-4-ピリミジニル]アミノ]-5-チアゾールカルボキサミドを含むいずれの他の組み合わせもしくは投与レジメン、あるいは本明細書に記載のいずれの他の組み合わせが挙げられる。
【0082】
「ファルネシル(farnysyl)トランスフェラーゼ阻害剤」は、ファルネシルトランスフェラーゼを阻害するいずれの化合物もしくは分子であり得る。該ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤は、式(II), (R)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1-(1H-イミダゾール-4-イルメチル)-3-(フェニルメチル)-4-(2-チエニルスルホニル)-1H-1,4-ベンゾジアゼピン-7-カルボニトリル, 塩酸塩を有し得る。式(V)の化合物は細胞傷害性FT阻害剤であり、それは非増殖性の癌細胞を優先的に死滅させることで知られている。式(V)の化合物はさらに、幹細胞を死滅させることにおいても有用であり得る。
【化5】

式(V)の化合物、その製造、およびその使用が、米国特許第6,011,029号(あらゆる目的のためにその全般が引用により本明細書に援用される)に記載されている。式(II)の化合物の使用もまた、2004年2月19日に公開されたWO 2004/015130(あらゆる目的のためにその全般が引用により本明細書に援用される)に記載されている。
【0083】
本明細書において用いる用語「タンパク質チロシンキナーゼ」としては、タンパク質基質においてアデノシン三リン酸(ATP)の末端リン酸塩のチロシン残基への移行を触媒する酵素が挙げられる。チロシンキナーゼの非限定的な例としては、受容体チロシンキナーゼ、例えば、EGFR(例えば、EGFR/HER1/ErbB1、HER2/Neu/ErbB2、HER3/ErbB3、HER4/ErbB4)、INSR(インスリン受容体)、IGF-IR、IGF-II1R、IRR(インスリン受容体-関連受容体)、PDGFR(例えば、PDGFRA、PDGFRB)、c-KIT/SCFR、VEGFR-1/FLT-1、VEGFR-2/FLK-1/KDR、VEGFR-3/FLT-4、FLT-3/FLK-2、CSF-1R、FGFR 1-4、CCK4、TRK A-C、MET、RON、EPHA 1-8、EPHB 1-6、AXL、MER、TYRO3、TIE、TEK、RYK、DDR 1-2、RET、c-ROS、LTK(白血球チロシンキナーゼ)、ALK(未分化リンパ腫キナーゼ)、ROR 1-2、MUSK、AATYK 1-3、およびRTK 106;ならびに、非受容体型チロシンキナーゼ、例えばBCR-ABL、Src、Frk、Btk、Csk、Abl、Zap70、Fes/Fps、Fak、Jak、Ack、およびLIMKが挙げられる。当業者であれば、本明細書に記載の阻害剤を用いて標的化することができる他の受容体および/または非受容体型チロシンキナーゼを知るであろう。
【0084】
用語「チロシンキナーゼ阻害剤」には、受容体および/または非受容体型チロシンキナーゼの選択的もしくは非選択的阻害剤として作用する、いずれの様々な治療薬もしくは治療薬剤が含まれる。いずれの特定の理論に縛られることなく、チロシンキナーゼ阻害剤は、通常、酵素のATP-結合部位に結合することにより、標的のチロシンキナーゼを阻害する。本発明の方法での使用に適切なチロシンキナーゼ阻害剤の例としては、限定はされないが、ゲフィチニブ(イレッサ(登録商標))、スニチニブ(スーテント(登録商標); SU11248)、エルロチニブ(タルセバ(登録商標); OSI-1774)、ラパチニブ(GW572016; GW2016)、カネルチニブ(CI 1033)、セマキシニブ(semaxinib)(SU5416)、バタラニブ(PTK787/ZK222584)、ソラフェニブ(BAY 43-9006)、イマチニブ(グリベック(登録商標); STI571)、ダサチニブ(BMS-354825)、レフルノミド(SU101)、バンデタニブ(ザクティマ(登録商標); ZD6474)、ニロチニブ、それらの誘導体、それらのアナログ、およびそれらの組み合わせが挙げられる。本発明における使用に適切なさらなるチロシンキナーゼ阻害剤が、例えば、米国特許第5,618,829号、第5,639,757号、第5,728,868号、第5,804,396号、第6,100,254号、第6,127,374号、第6,245,759号、第6,306,874号、第6,313,138号、第6,316,444号、第6,329,380号、第6,344,459号、第6,420,382号、第6,479,512号、第6,498,165号、第6,544,988号、第6,562,818号、第6,586,423号、第6,586,424号、第6,740,665号、第6,794,393号、第6,875,767号、第6,927,293号、および第6,958,340号に記載されている。当業者であれば、本発明における使用に適切な他のチロシンキナーゼ阻害剤を知るであろう。
【0085】
大部分のこれら化学療法薬の安全で効果的な投与方法が当業者には公知である。加えて、それらの投与は標準的な文献に記載されている。
【0086】
例えば、多くの化学療法薬の投与が医師用卓上参考書(PDR)、例えば、1996 edition (Medical Economics Company, Montvale, NJ 07645-1742, USA)に記載されており;該記載は引用により本明細書に援用される。
【0087】
本発明の組成物は、1つ以上の医薬的に許容されるさらなる成分、例えば、ミョウバン、安定剤、抗菌剤、緩衝剤、着色剤、着香剤、アジュバントなどを、さらに含んでもよい。本発明の医薬組成物は、経口的もしくは非経口的(静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、直腸および局所的な経路の投与を含む)に投与されうる。
【0088】
経口用として、本発明の医薬組成物は、例えば、錠剤もしくはカプセル剤、散剤、分散性顆粒剤、またはカシェ剤の形態か、あるいは水性液剤もしくは水性懸濁剤として投与してもよい。経口用の錠剤の場合、通常用いられる担体としては、ラクトース、トウモロコシデンプン、炭酸マグネシウム、タルク、および糖が挙げられ、そして通常、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)が添加される。カプセル剤形態での経口投与において、有用な担体としては、ラクトース、トウモロコシデンプン、炭酸マグネシウム、タルク、および糖が挙げられる。水性懸濁剤を経口投与に用いる場合、通常、乳化剤および/または懸濁化剤が添加される。
【0089】
加えて、経口組成物に甘味剤および/または着香剤を加えてもよい。筋肉内、腹腔内、皮下および静脈内使用のために、活性成分の無菌の溶液が通常用いられ、該溶液のpHは適切に調整され、緩衝されるべきである。静脈内使用のために、溶質の総濃度は製剤を等張にするように調節されるべきである。
【0090】
本発明に記載の坐剤を製造するためには、低融点ワックス(例えば、脂肪酸グリセリドの混合物またはココアバター)を最初に融解させ、そして活性成分を、例えば撹拌により、該ワックス中で均一に分散させる。次いで、融解した均一な混合液を都合の良い大きさの鋳型に注ぎ入れ、冷却することによって凝固させる。
【0091】
液体製剤には、液剤、懸濁剤およびエマルション剤が含まれる。そのような製剤の例は、非経口注射用の水または水/プロピレングリコール溶液である。液体製剤にはまた、鼻腔内投与用の液剤が含まれうる。
【0092】
吸入に適したエアロゾル製剤は、液体および粉末の形態の固体を含んでよく、それは医薬的に許容される担体(例えば圧縮不活性ガス)と組み合わせてもよい。
【0093】
経口もしくは非経口投与のいずれかのために使用の直前に液体製剤に変換することが意図されている固形製剤もまた、含まれる。そのような液体形態には、溶液、懸濁液、およびエマルションが含まれる。
【0094】
本明細書に記載の共刺激経路調節剤(好ましくは抗CTLA4剤)は、経皮的に送達されてもよい。経皮用組成物は、クリーム剤、ローション剤、エアロゾル剤および/またはエマルション剤の形態をとることができ、そして、この目的において当分野では通常のことであるが、マトリックスもしくはリザーバー(reservoir)タイプの経皮パッチ中に含むことができる。
【0095】
固定用量として製剤化する場合、本発明の医薬の組み合わせ組成物の活性成分は、以下に記載の用量範囲内で用いられる。別法として、共刺激経路調節剤およびタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤を、以下に記載の用量範囲において別個に投与してもよい。本発明の好ましい実施態様において、以下に記載の用量範囲のタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤の投与の後もしくは同時に、該共刺激経路調節剤を以下に記載の用量範囲で投与する。
【0096】
以下に、本発明の方法で用いるための好ましい治療的な組み合わせおよび典型的な用量を記載する。

1 本明細書に記載の各組み合わせは、適宜、約0.001〜100mgの抗癌ワクチンの投与を含む。
【0097】
この表は、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤(好ましくはスプリセル(登録商標))、共刺激経路調節剤(好ましくは抗CTLA4抗体)、および/または抗癌ワクチン剤の用量範囲の例を提供するけれども、本発明の医薬組成物を製剤化する場合、臨床医は処置される患者の症状により是認される好ましい用量を用いてもよい。抗CTLA4抗体は、好ましくは、約0.3〜10 mg/kgか、または最大耐量で投与されうる。本発明の実施態様において、CTLA-4抗体の投与量を、約3週間毎に投与してもよい。あるいは、CTLA-4抗体は、CTLA-4抗体の第一投与量が約3 mg/kg、CTLA-4抗体の第二投与量が約5 mg/kg、そしてCTLA-4抗体の第三投与量が約9 mg/kgで投与することを含む、漸増用量レジメンにより投与されうる。
【0098】
同様に、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤(好ましくはスプリセル(登録商標))は、好ましくは、70 mgで1日あたり約2回、投与されうる。あるいは、例えば、約50、約70、約90、約100、110、もしくは120を1日2回か、または100、140、もしくは180を1日1回か、あるいは最大耐量で投与することができる。タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤の投与量は、多くの因子(疾患の段階、標的タンパク質チロシンキナーゼにおける1つ以上の変異の存在、BCR-ABL変異、などを含む)に依存しうる。そのような因子の1つ以上の存在に基づいて投与されるべき具体的な投与量は、当業者の技量の範囲内である。
【0099】
同様に、エトポシドは、好ましくは、1日あたり約50 mg〜約900 mgで投与されうる。エトポシドは、単回投与バイアル(100 mg エトポシドと同等のエトポシドホスフェート、32.7 mg クエン酸ナトリウム(米国薬局方)、および300 mg デキストラン40を含有する)中の無菌の親液性剤(lyophile)として、静脈内注入に使用可能である。あるいは、例えば、約50、約70、約90、約100、約200、約300、約400、約500、約600、約700、約800もしくは約900/日か、または最大耐量で投与することができる。
【0100】
同様に、ゲムシタビンは、好ましくは、静脈注射により30〜90分にわたる注入で、約200 mg/m〜約1250 mg/m/日で、投与されうる。ゲムシタビンは、無菌の凍結乾燥粉末としてマンニトール(200 mgもしくは1 g、各々)および酢酸ナトリウム(12.5 mgもしくは62.5 mg、各々)とともに製剤化され、約200 mg〜約1250 mgのゲムシタビンHCl(遊離塩基として表される)を含み、静脈内注入に使用可能である。あるいは、例えば、約50、約100、約200、約300、約400、約500、約600、約700、約800、約900、約1000、約1100、約1200もしくは約1250/日か、または最大耐量で投与することができる。
【0101】
また、本発明の組み合わせは、処置される症状に対するそれらの特定の有用性について選択される他の周知の療法と併せて用いられうる。
【0102】
該抗CTLA4抗体は、好ましくは、約0.3〜10 mg/kgか、または最大耐量で投与されうる。本発明の実施態様において、CTLA-4抗体の投与は、約3週間毎に投与される。あるいは、CTLA-4抗体は、CTLA-4抗体の第一投与量が約3 mg/kg、CTLA-4抗体の第二投与量が約5 mg/kg、そしてCTLA-4抗体の第三投与量が約9 mg/kgで投与することを含む、漸増用量レジメンにより投与されうる。
【0103】
別の特定の実施態様において、該漸増用量レジメンは、CTLA-4抗体の第一投与量が約5 mg/kgでCTLA-4抗体の第二投与量が約9 mg/kgで投与することを含む。
【0104】
さらに、本発明は、約6週間毎にCTLA-4抗体の投与量を増加させて投与することを含む、漸増用量レジメンを提供する。
【0105】
本発明の態様において、第一CTLA-4抗体投与量が約3 mg/kg、第二CTLA-4抗体投与量が約3 mg/kg、第三CTLA-4抗体投与量が約5 mg/kg、第四CTLA-4抗体投与量が約5 mg/kg、そして第五CTLA-4抗体投与量が約9 mg/kgで投与することを含む、段階的な漸増用量レジメンを提供する。本発明の別の態様において、第一投与量が5 mg/kg、第二投与量が5 mg/kg、そして第三投与量が9 mg/kgで投与することを含む、段階的な漸増用量レジメンを提供する。
【0106】
用いられる実際の用量は、患者の要求および処置される症状の重篤度に応じて変化させてもよい。特定の状況に対する適正な用量の決定は、当分野の技術の範囲内である。通常、処置は、化合物の至適用量未満である少用量で開始される。その後、該用量を、該条件下での至適効果に達するまで、少しずつ増加させる。便宜のため、必要な場合、1日の総投与量を分割して、1日の間で何回かに分けて投与してもよい。また、間欠療法(例えば、3週間のうち1週間、または4週間のうち3週間)を用いてもよい。
【0107】
本発明の方法もしくは組成物を用いる場合、臨床背景において腫瘍の増殖もしくは転移の調節に用いる他の剤(例えば制吐薬)も、必要に応じて投与することができる。
【0108】
また、本発明の組み合わせを、処置される症状に対するそれらの特定の有用性について選択される他の周知の治療薬と、共投与してもよい。あるいは、複数配合製剤が不適当である場合、本発明の組み合わせは、公知の医薬的に許容される剤と連続的に用いられうる。
【0109】
化学療法薬および/または放射線療法は、当分野で周知の治療プロトコールに従って、投与することができる。化学療法薬および/または放射線療法の投与は、処置される疾患および該疾患に対する化学療法薬および/または放射線療法の公知の効果に応じて、変化され得ることが当業者には明らかであろう。また、熟練した臨床医の知識に従って、治療プロトコール(例えば、投与量および投与回数)を、患者に投与した治療薬(すなわち、抗CTLA4剤およびタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤)の観察される効果を考慮して、ならびに投与した治療薬に対する観察される疾患の応答を考慮して、変化させることができる。
【0110】
本発明の方法において、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤(例えばダサチニブ)、微小管安定化剤(例えばパクリタキセル);ヌクレオシドアナログ(例えばゲムシタビン);またはDNA二本鎖(切断)誘発剤(例えばエトポシド)は、抗CTLA4剤と同時か、または連続して(前もしくは後)投与される。従って、抗CTLA4治療薬と、微小管安定化剤(例えばパクリタキセル);ヌクレオシドアナログ(例えばゲムシタビン);またはDNA二本鎖(切断)誘発剤(例えばエトポシド)は、同時または本質的に同時に投与される必要はない。同時もしくは本質的に同時または連続した(前もしくは後)投与の利点は、熟練した臨床医により決定される範囲内に十分にある。
【0111】
本発明によりまた包含されるさらなる組み合わせとしては、限定はされないが、以下: ゲムシタビン+シスプラチン+イピリムマブ; イピリムマブ+カルボプラチン+パクリタキセル; イピリムマブ+エトポシド+シスプラチンもしくはカルボプラチン; イピリムマブ+pem(シスプラチン、エトポシドおよびマイトマイシン)+シスプラチンが挙げられる。これらの組み合わせは、連続的(お互いの前もしくは後)か、同時か、または熟練した臨床医により推奨されるいずれの順序か、のいずれかで投与されうる。
【0112】
また、通常、微小管安定化剤(例えばパクリタキセル); ヌクレオシドアナログ(例えばゲムシタビン); もしくはDNA二本鎖(切断)誘発剤(例えばエトポシド)と、抗CTLA4剤は、同一の医薬組成物として投与される必要はなく、むしろ、異なる物理的および化学的特徴のために、異なる経路によって投与されなければいけない可能性がある。
【0113】
微小管安定化剤(例えばパクリタキセル); ヌクレオシドアナログ(例えばゲムシタビン); もしくはDNA二本鎖(切断)誘発剤(例えばエトポシド)と、抗CTLA4剤が、同時もしくは本質的に同時に投与されない場合、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤(例えばダサチニブ)、微小管安定化剤(例えばパクリタキセル); ヌクレオシドアナログ(例えばゲムシタビン); もしくはDNA二本鎖(切断)誘発剤(例えばエトポシド)および抗CTLA4剤の投与の初期順序は変更されうる。従って、例えば、微小管安定化剤(例えばパクリタキセル); ヌクレオシドアナログ(例えばゲムシタビン); もしくはDNA二本鎖(切断)誘発剤(例えばエトポシド)を最初に投与した後、抗CTLA4剤を投与するか; あるいは、抗CTLA4剤を最初に投与した後、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤、微小管安定化剤(例えばパクリタキセル); ヌクレオシドアナログ(例えばゲムシタビン); もしくはDNA二本鎖(切断)誘発剤(例えばエトポシド)を投与してもよい。この交互投与を、単一の治療プロトコールの間に繰り返してもよい。治療プロトコールの間における各治療薬の投与順序および投与の繰り返し回数の決定は、処置される疾患および患者の症状を評価した後で、熟練した医師の知識の範囲内に十分に行える。
【0114】
従って、経験と知識に従って、臨床医は、処置の進行に伴って、個々の患者の必要に応じて、処置の構成成分(治療薬-すなわち、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤(例えばダサチニブ)、微小管安定化剤(例えばパクリタキセル); ヌクレオシドアナログ(例えばゲムシタビン); またはDNA二本鎖(切断)誘発剤(例えばエトポシド)、抗CTLA4剤)の投与に関して、各プロトコールを改変することができる。
【0115】
主治医は、投与される用量で処置が有効であるかどうかの判断において、患者の全般的な健康状態ならびにより明確な徴候(例えば、疾患関連症状の軽減、腫瘍増殖の阻害、実際の腫瘍の縮小、または転移の阻害)を考慮する。腫瘍のサイズは、標準的な方法(例えば、放射線学的研究(例えば、CATもしくはMRIスキャン))によって測定することができ、そして、経時的測定を用いて、腫瘍の増殖が遅延もしくは逆行されているかそうでないかを判断することができる。疾患関連症状(例えば、疼痛)の軽減および全体的な症状の改善も、処置の有効性を判断するために用いることができる。
【0116】
本明細書の他の部分に記載のとおり、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤の至適用量は、多くの因子(限定はされないが、標的タンパク質チロシンキナーゼ(targeted protein tyrosine kinase inhibitor)および/またはBCR-ABLにおける1つ以上の変異の存在を含む)に依存しうる。
【0117】
変異BCR-ABLキナーゼの阻害剤の「治療上有効な量」は、存在する変異に依存し得る。例えば、Shahらは、BCR-ABLキナーゼに特定の変異を有する細胞株が、N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[6-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]-2-メチル-4-ピリミジニル]アミノ]-5-チアゾールカルボキサミドに対して、異なるBCR-ABLキナーゼ変異を有する細胞株よりも高い感受性を有することを記載している。例えば、BCR-ABLキナーゼにF317L変異を有する細胞は、F317I変異を発現している細胞株よりも3〜5倍高い濃度のN-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[6-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]-2-メチル-4-ピリミジニル]アミノ]-5-チアゾールカルボキサミドを必要としうる。当業者であれば、変異BCR-ABLキナーゼ細胞の感受性の違いを理解し、それに応じて治療上有効な用量を決定するであろう。
【0118】
野生型BCR-ABLキナーゼと比較したBCR-ABLキナーゼ変異体のN-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[6-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]-2-メチル-4-ピリミジニル]アミノ]-5-チアゾールカルボキサミドに対する相対的感受性に基づいて保証されうる、N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[6-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]-2-メチル-4-ピリミジニル]アミノ]-5-チアゾールカルボキサミドの治療上有効な用量の例は、様々なin vitro生化学的アッセイ(細胞増殖、BCR-ABLチロシンリン酸化、ペプチド基質リン酸化、および/または自己リン酸化アッセイを含む)を用いて決定され得る。例えば、N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[6-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]-2-メチル-4-ピリミジニル]アミノ]-5-チアゾールカルボキサミドのおおよその治療上有効な用量は、各BCR-ABLキナーゼ変異体に対するこれらアッセイのうちのいずれか1つ以上における感受性の倍率変化(fold change)で通常用量を増加させることに基づいて算出され得る。O'Hareら(Cancer Res., 65(11):4500-4505 (2005), あらゆる目的のためにその全般が引用により本明細書に援用される)は、いくつかの臨床的に意義のあるBCR-ABLキナーゼ変異体を用いてN-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[6-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]-2-メチル-4-ピリミジニル]アミノ]-5-チアゾールカルボキサミドの相対的感受性の解析を行った。例えば、E255V変異体はGST-Ablキナーゼアッセイにおいて“1”の倍率変化であったが、一方、この同一の変異体は細胞増殖アッセイにおいて“14”の倍率変化であった。従って、この変異を有する患者にとって治療上意義のある、N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[6-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]-2-メチル-4-ピリミジニル]アミノ]-5-チアゾールカルボキサミドの用量は、例えば、通常用量より1〜14倍高い範囲である。それ故に、BCR-ABLキナーゼ変異体のいずれかに対して治療上意義のあるN-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[6-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]-2-メチル-4-ピリミジニル]アミノ]-5-チアゾールカルボキサミドの用量は、例えば、規定の用量よりも、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、125、150、175、200、225、250、もしくは300倍高いものであることができる。あるいは、治療上意義のあるN-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[6-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]-2-メチル-4-ピリミジニル]アミノ]-5-チアゾールカルボキサミドの用量は、例えば、規定の用量の、0.9x、0.8x、0.7x、0.6x、0.5x、0.4x、0.3x、0.2x、0.1x、0.09x、0.08x、0.07x、0.06x、0.05x、0.04x、0.03x、0.02x、または0.01xであることができる。
【0119】
O'Hareらによると、M244V変異体は、GST-Ablキナーゼアッセイにおいて“1.3”の倍率変化、自己リン酸化アッセイにおいて“1.1”の倍率変化、そして細胞増殖アッセイにおいて“2”の倍率変化であって; G250E変異体は、GST-Ablキナーゼアッセイにおいて“0.5”の倍率変化、自己リン酸化アッセイにおいて“3”の倍率変化、そして細胞増殖アッセイにおいて“2”の倍率変化であって; Q252H変異体は、細胞増殖アッセイにおいて“4”の倍率変化であって; Y253F変異体は、GST-Ablキナーゼアッセイにおいて“0.6”の倍率変化、自己リン酸化アッセイにおいて“4”の倍率変化、細胞増殖アッセイにおいて“4”の倍率変化であって; Y253H変異体は、GST-Ablキナーゼアッセイにおいて“3”の倍率変化自己リン酸化アッセイにおいて“2”の倍率変化、そして、細胞増殖アッセイにおいて“2”の倍率変化であって; E255K変異体は、GST-Ablキナーゼアッセイにおいて“0.3”の倍率変化、自己リン酸化アッセイにおいて“2”の倍率変化、そして、細胞増殖アッセイにおいて“7”の倍率変化であって; F317L変異体は、GST-Ablキナーゼアッセイにおいて“1.5”の倍率変化、自己リン酸化アッセイにおいて“1.4”の倍率変化、そして細胞増殖アッセイにおいて“9”の倍率変化であって; M351T変異体は、GST-Ablキナーゼアッセイにおいて“0.2”の倍率変化、自己リン酸化アッセイにおいて“2”の倍率変化、そして細胞増殖アッセイにおいて“1.4”の倍率変化でって; F359V変異体は、GST-Ablキナーゼアッセイにおいて“0.8”の倍率変化、自己リン酸化アッセイにおいて“2”の倍率変化、そして、細胞増殖アッセイにおいて“3”の倍率変化であって; H396R変異体は、GST-Ablキナーゼアッセイにおいて“1.3”の倍率変化、自己リン酸化アッセイにおいて“3”の倍率変化、そして、細胞増殖アッセイにおいて“2”の倍率変化であった。
【0120】
単独かまたは本明細書に記載の別のBCR-ABL変異と組み合わせてのいずれかでT315I変異を有する患者に対して、高い用量のN-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[6-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]-2-メチル-4-ピリミジニル]アミノ]-5-チアゾールカルボキサミド、または、N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[6-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]-2-メチル-4-ピリミジニル]アミノ]-5-チアゾールカルボキサミドとイマチニブの組み合わせ; N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[6-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]-2-メチル-4-ピリミジニル]アミノ]-5-チアゾールカルボキサミドとチューブリン安定化剤(例えば、パクリタキセル、エポチロン、タキサン、など)の組み合わせ; N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[6-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]-2-メチル-4-ピリミジニル]アミノ]-5-チアゾールカルボキサミドとファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤の組み合わせ; N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[6-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]-2-メチル-4-ピリミジニル]アミノ]-5-チアゾールカルボキサミドと別のタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤の組み合わせ; 本明細書に記載のいずれの他の組み合わせ; N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[6-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]-2-メチル-4-ピリミジニル]アミノ]-5-チアゾールカルボキサミドの投与頻度を増加させたレジメン; ならびに、本明細書に記載のN-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[6-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]-2-メチル-4-ピリミジニル]アミノ]-5-チアゾールカルボキサミドを含有するいずれの他の組み合わせもしくは投与レジメンの投与が是認されうる。あるいは、N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[6-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]-2-メチル-4-ピリミジニル]アミノ]-5-チアゾールカルボキサミドとT315I阻害剤との組み合わせもまた、是認されうる。
【0121】
N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[6-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]-2-メチル-4-ピリミジニル]アミノ]-5-チアゾールカルボキサミドに関する本発明の実践において有用な投与レジメンが、2003年3月24日に出願された米国特許出願第10/395,503号; および、Moshe Talpazらによる、Blood(ASH Annual Meeting Abstracts) 2004, Volume 104: Abstract 20, “Hematologic and Cytogenetic Responses in imatinib-Resistant Accelerated and Blast Phase Chronic Myeloid Leukemia (CML) Patients Treated with the Dual SRC/ABL Kinase Inhibitor N-(2-chloro-6-methylphenyl)-2-[[6-[4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazinyl]-2-methyl-4-pyrimidinyl]amino]-5-thiazolecarboxamide: Results from a Phase I Dose Escalation Study”に記載されており;それらはあらゆる目的のためにその全般が引用により本明細書に援用される。
【0122】
さらなる抗CTLA4組成物
本発明はまた、さらなる抗CTLA-4剤(限定はされないが、抗CTLA-4抗体、抗CTLA-4アドネクチン、抗CTLA-4RNAi、一本鎖抗CTLA-4抗体フラグメント、ドメイン抗CTLA-4抗体フラグメント、および抗CTLA-4アンチセンス分子を含む)も包含する。
【0123】
本発明の好ましい抗CTLA4剤は、抗CTLA4抗体イピリムマブである。CTLA4のポリペプチド、ポリペプチドフラグメント、もしくはバリアント、および/またはCTLA4のエピトープを免疫特異的に結合する他の抗CTLA4抗体およびフラグメント(特異的な抗体-抗原結合をアッセイするための当分野で周知のイムノアッセイにより決定される)が、本発明により包含される。抗体としては、限定はされないが、ポリクローナル、モノクローナル、一価、二重特異性、ヘテロ複合体、多特異性、ヒト、ヒト化、もしくはキメラ抗体、一本鎖抗体、Fabフラグメント、F(ab')フラグメント、Fab発現ライブラリーにより産生されるフラグメント、抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本発明の抗体に対する抗Id抗体を含む)、および上記のいずれかのエピトープ-結合フラグメントが挙げられる。本明細書で用いる用語「抗体」は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、免疫特異的に抗原を結合する抗原結合部位を有する分子を言う。本発明の免疫グロブリン分子は、いずれのタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)もしくはサブクラスの免疫グロブリン分子であることができる。さらに、用語「抗体」(Ab)または「モノクローナル抗体」(Mab)は、タンパク質に特異的に結合する能力を有する、インタクト分子、ならびに、抗体フラグメント(例えば、FabおよびF(ab')2フラグメントなど)を含むことを意味する。FabおよびF(ab')2フラグメントは、インタクト抗体のFcフラグメントを欠き、動物もしくは植物の循環からより迅速に消失し、そして、インタクト抗体よりも低い非特異的な組織結合を有しうる(Wahl et al., J. Nucl. Med., 24:316-325 (1983))。従って、FABもしくは他の免疫グロブリン発現ライブラリーの産生物だけでなく、これらのフラグメントも好ましい。さらに、抗CTLA4抗体としては、キメラ、一本鎖、およびヒト化抗体が挙げられる。
【0124】
抗CTLA4抗体は、抗体の合成について当分野で公知のいずれの方法によって(とりわけ、化学合成によってか、または好ましくは、組換え発現技術によって)合成することができる。
【0125】
本発明のアドネクチンは、共同所有の米国特許出願公開第2007/0082365号および第2008/0139791号に概説されている方法に従って製造されうる。
【0126】
一本鎖抗体の製造について記載された技法(米国特許第4,946,778号; Bird, Science, 242:423-442 (1988); Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:5879-5883 (1988); および、Ward et al., Nature, 334:544-554 (1989))を適応させて、一本鎖抗体を製造することができる。一本鎖抗体は、アミノ酸架橋を介してFv領域の重鎖および軽鎖フラグメントを結合させ、一本鎖ポリペプチドを得ることによって、形成される。また、大腸菌における機能性Fvフラグメントのアセンブリーのための技法を用いてもよい(Skerra et al., Science, 242:1038-1041 (1988))。
【0127】
抗CTLA4抗体、またはそのフラグメント、誘導体もしくはアナログ(例えば、本発明の抗体の重鎖もしくは軽鎖、または本発明の一本鎖抗体)の組換え発現は、該抗体をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターの構築を必要とする。抗CTLA4抗体分子または抗体の重鎖もしくは軽鎖、あるいはその一部(好ましくは重鎖もしくは軽鎖可変ドメインを含有する)をコードするポリヌクレオチドを得た後、当分野で周知の技法を用いた組換えDNA技術によって抗CTLA4抗体分子の製造のためのベクターが製造されうる。従って、ヌクレオチド配列をコードする抗体を含有するポリヌクレオチドを発現させることによりタンパク質を製造する方法を、本明細書に記載する。当業者に周知の方法を用いて、配列ならびに適切な転写及び翻訳制御シグナルをコードする抗体を有する発現ベクターを構築することができる。これらの方法としては、例えば、in vitro組換えDNA技術、合成的技法、およびin vivo遺伝的組換えが挙げられる。従って、本発明は、プロモーターに操作可能に結合された、抗CTLA4抗体、またはその重鎖もしくは軽鎖、あるいは重鎖もしくは軽鎖可変ドメインをコードするヌクレオチド配列を含有する、複製可能なベクターを提供する。そのようなベクターは、抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列を含んでもよく(例えば、PCT公開番号WO 86/05807およびWO 89/01036; および米国特許第5,122,464号参照)、重鎖もしくは軽鎖全体の発現のために抗体の可変ドメインをそのようなベクター中にクローニングしてもよい。
【0128】
該発現ベクターを従来の技法によって宿主細胞に移行させ、次いで、該トランスフェクト細胞を従来の技法によって培養し、抗CTLA4抗体を産生させる。従って、本発明には、異種プロモーターに操作可能に結合された、抗CTLA4抗体またはその重鎖もしくは軽鎖あるいは本発明の一本鎖抗体をコードする、ポリヌクレオチドを有する宿主細胞が含まれる。二本鎖抗体の発現に関する好ましい実施態様において、以下に詳述のとおり、重鎖および軽鎖の両方をコードするベクターを宿主細胞において共発現させてもよい。
【0129】
様々な宿主-発現ベクター系を用いて、抗CTLA4抗体分子を発現させてもよい。そのような宿主-発現系は、ビヒクル(それにより目的のコード配列を得た後、精製されうる)を意味するが、適切なヌクレオチドコード配列で形質転換もしくはトランスフェクトされた場合に本発明の抗体分子を発現しうる細胞も意味する。これらには、限定はされないが、微生物(例えば、抗体コード配列を有する組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNAもしくはコスミドDNA発現ベクターで形質転換されたバクテリア(例えば、大腸菌、枯草菌)); 抗体コード配列を有する組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えば、サッカロミセス、ピキア); 抗体コード配列を有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)を感染させた昆虫細胞系; 組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス, CaMV; タバコモザイクウイルス, TMV)を感染させたかもしくは抗体コード配列を有する組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換された植物細胞系; または、哺乳動物細胞のゲノム由来のプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)もしくは哺乳動物ウイルス由来のプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター; ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を有する組換え発現コンストラクトを内部に持つ哺乳動物細胞系(例えば、COS、CHO、BHK、293、3T3細胞)が挙げられる。好ましくは、バクテリア細胞、例えば、大腸菌、およびさらに好ましくは真核細胞(とりわけ組換え抗体分子全体の発現のため)が、組換え抗体分子の発現のために用いられる。例えば、哺乳動物細胞(例えば、ベクター(例えば、ヒトサイトメガロウイルスからの主要な前初期遺伝子(intermediate early gene)プロモーター領域)と結合された、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO))は、有効な抗体の発現系である(Foecking et al., Gene, 45:101 (1986); Cockett et al., Bio/Technology, 8:2 (1990))。
【0130】
バクテリア系において、発現される抗体分子を目的とした使用に応じて、多くの発現ベクターが有利に選択されうる。例えば、抗体分子の医薬組成物の産生のために、大量のそのようなタンパク質を製造すべき場合、容易に精製される融合タンパク質生成物を高い濃度で発現させるベクターが望ましいことがある。そのようなベクターには、限定はされないが、大腸菌発現ベクター pUR278(Ruther et al., EMBO J., 2:1791 (1983)); pIN ベクター(Inouye et al., Nucleic Acids Res., 13:3101-3109 (1985); Van Heeke et al., J. Biol. Chem., 24:5503-5509 (1989)); などが挙げられ、その中で該抗体コード配列は、融合タンパク質が産生されるように、lac Z コード領域とともにインフレームでベクター中に個々に結合されていてよい。また、pGEX ベクターを用いて、グルタチオン S-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質としての外来ポリペプチドを発現させてもよい。一般に、そのような融合タンパク質は、可溶性であって、マトリックス グルタチオン-アガロースビーズに吸着および結合させた後、遊離グルタチオンの存在下で溶出することにより、溶解細胞から容易に精製することができる。トロンビンもしくは第Xa因子プロテアーゼ切断部位を含むようにpGEX ベクターを設計することによって、GST部分からクローン化標的遺伝子産物が放出され得る。
【0131】
昆虫系においては、オートグラファカリフォルニカ(Autographa californica)核多角体病ウイルス(AcNPV)をベクターとして用いて、外来遺伝子を発現させる。該ウイルスはスポドプテラ・フルギペルダ細胞中で増殖する。抗体コード配列は、ウイルスの非必須領域(例えばポリヘドリン遺伝子)中に個々にクローニングされ、AcNPV プロモーター(例えば、ポリヘドリンプロモーター)の制御下に置かれうる。
【0132】
哺乳動物の宿主細胞において、多くのウイルスベースの発現系が用いられうる。アデノウイルスが発現ベクターとして用いられる場合、該抗CTLA4抗体コード配列は、アデノウイルス転写/翻訳制御複合体(例えば、後期プロモーターおよび三分節(tripartite)リーダー配列)に結合していてよい。次いで、このキメラ遺伝子を、in vitroもしくはin vivo組換えによってアデノウイルスゲノム中に挿入してもよい。ウイルスゲノムの非必須領域(例えば、領域E1もしくはE3)への挿入は、感染宿主において生存可能であって抗体分子を発現する能力のある組換えウイルスをもたらしうる。(例えば、Logan et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:355-359 (1984)参照)。特異的な開始シグナルもまた、挿入された抗体コード配列の効率的な翻訳のために必要とされうる。これらのシグナルには、ATG開始コドンおよび隣接配列が含まれる。さらに、開始コドンは、インサート全体の翻訳を確実なものとするために、目的のコード配列のリーディング・フレームと一致しなくてなならない。これら外因性の翻訳制御シグナルおよび開始コドンは、様々なオリジン(天然および合成の両方)であることができる。発現の効率は、適切な転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーターなどを含ませることによって、高められうる(Bitter et al., Meth. Enzymol., 153:516-544 (1987)参照)。
【0133】
加えて、望ましい特定の方法で、挿入された配列の発現を調節するか、あるいは遺伝子産物を修飾およびプロセシングする、宿主細胞株を選んでもよい。タンパク質生成物のそのような修飾(例えば、グリコシル化)およびプロセシング(例えば、切断)は、該タンパク質の機能にとって重要でありうる。異なる宿主細胞は、タンパク質および遺伝子産物の翻訳後プロセシングおよび修飾について、特徴的で特異的なメカニズムを有する。適切な細胞株もしくは宿主系を選択して、発現された異種タンパク質の正確な修飾およびプロセシングを確実なものとすることができる。この目的のために、遺伝子産物の、一次トランスクリプト、グリコシル化、およびリン酸化の適切なプロセシングのための細胞機構を有する真核生物宿主細胞を用いてもよい。そのような哺乳動物宿主細胞には、限定はされないが、CHO、VERY、BHK、Hela、COS、MDCK、293、3T3、WI38、そしてとりわけ、乳癌細胞株(例えば、BT483、Hs578T、HTB2、BT20およびT47Dなど)、および正常乳腺細胞株(例えば、CRL7030およびHs578Bstなど)が含まれる。
【0134】
組換えタンパク質を、長期にわたって高収量で産生するためには、安定な発現が好ましい。例えば、抗CTLA4抗体分子を安定に発現する細胞株を遺伝子操作してもよい。ウイルス(viral)複製開始点を有する発現ベクターを用いるよりもむしろ、宿主細胞を、適切な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位、など)、および選択可能なマーカーにより制御されたDNAで形質転換することができる。外来DNAの導入の後、遺伝子操作された細胞を、強化培地中で1〜2日間増殖させて、その後、選択培地に換えてもよい。組換えプラスミド中の選択可能なマーカーによって選択に対する抵抗性がもたらされ、そして、細胞がそれらの染色体にプラスミドを安定に組み込み、増殖して増殖巣(foci)を形成することを可能にする(それを、同様に、クローニングして細胞株中に拡張することができる)。この方法は、抗体分子を発現する細胞株を遺伝子操作するために、有利に用いられうる。そのような遺伝子操作された細胞株は、抗CTLA4抗体分子と直接的もしくは間接的に相互作用する化合物のスクリーニングおよび評価において、特に有用でありうる。
【0135】
多くの選択系が用いられ、それには、限定はされないが、ヘルペス単純ウイルスチミジンキナーゼ(Wigler et al., Cell, 11:223 (1977))、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 48:202 (1992))、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy et al., Cell, 22:817 (1980))遺伝子(各々、tk-、hgprt-もしくはaprt-細胞において用いることができる)が含まれる。また、代謝拮抗薬抵抗性を以下の遺伝子の選択の基準として用いることができる: メトトレキサートに対する抵抗性をもたらすdhfr(Wigler et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:357 (1980); O'Hare et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78:1527 (1981)); ミコフェノール酸に対する抵抗性をもたらすgpt(Mulligan et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78:2072 (1981)); アミノグリコシドG-418に対する抵抗性をもたらすneo(Clinical Pharmacy, 12(7):488-505 (1993); Wu et al., Biotherapy, 3:87-95 (1991); Tolstoshev, Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol., 32:573-596 (1993); Mulligan, Science, 260:926-932 (1993); および、Morgan et al., Ann. Rev. Biochem., 62:191-217 (1993); TIB TECH, 11(5):155-215 (May 1993)); ならびに、ハイグロマイシンに対する抵抗性をもたらすhygro(Santerre et al., Gene, 30:147 (1984))。組換えDNA技術の分野で通常知られている方法をルーチン的に適用して目的の組換えクローンを選択してもよく、そのような方法は、例えば、Ausubel et al., eds., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NY (1993); Kriegler, Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual, Stockton Press, NY (1990); および、Chapters 12 and 13, Dracopoli et al., eds., Current Protocols in Human Genetics, John Wiley & Sons, NY (1994); Colberre-Garapin et al., J. Mol. Biol., 150:1 (1981)(引用によりその全体が本明細書に援用される)中に記載されている。
【0136】
抗CTLA4抗体分子の発現レベルを、ベクター増幅によって増強させることができる(レビューのため、DNA Cloning, Vol. 3, Academic Press, NY (1987)の中のBebbington et al., “The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells”を参照)。抗体を発現しているベクター系中のマーカーが増幅可能な場合、宿主細胞の培養物中に存在するインヒビターレベルの増大によって、マーカー遺伝子のコピー数が増大されうる。増幅領域は抗体遺伝子と関連しているので、抗体の産生も増大されうる(Crouse et al., Mol. Cell. Biol., 3:257 (1983))。
【0137】
宿主細胞を、2つの発現ベクター(重鎖由来ポリペプチドをコードする第1ベクター、および軽鎖由来ポリペプチドをコードする第2ベクター)を用いて共トランスフェクトしてもよい。該2つのベクターは、同一の選択可能なマーカーを有していてよく、それが重鎖および軽鎖ポリペプチドの同等の発現を可能にする。あるいは、重鎖および軽鎖ポリペプチドの両方をコードし、発現することができる、単一のベクターを用いてもよい。そのような場合、過剰な有毒の遊離重鎖を回避するために、軽鎖を重鎖の前に設置するべきである(Proudfoot, Nature, 322:52 (1986); Kohler, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:2197 (1980))。該重鎖および軽鎖のコード配列はcDNAもしくはゲノムDNAを含んでいてよい。
【0138】
本発明の抗体分子が、動物により産生されるか、化学的に合成されるか、または組換えで発現された後、免疫グロブリン分子の精製について当分野で公知のいずれの方法によって、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティー、とりわけプロテインAの後の特異的抗原に対するアフィニティーおよびサイズ排除(sizing)カラムクロマトグラフィーによって)、遠心分離、差次的溶解度(differential solubility)によってか、またはタンパク質の精製に関するいずれの他の標準的な技法によって、精製してもよい。また、精製を容易にするために、抗CTLA4抗体もしくはそのフラグメントを、本明細書に記載されているかもしくは当分野で公知の異種ポリペプチド配列に融合させることができる。
【0139】
本発明は、ポリペプチド(または可変領域以外の抗CTLA4抗体ドメインに結合したポリペプチド)を含有する組成物をさらに包含する。例えば、該ポリペプチドは、抗体Fc領域またはその一部に、融合または結合していてもよい。ポリペプチドに融合した抗CTLA4抗体部分は、定常領域、ヒンジ領域、CH1ドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメイン、あるいは全ドメインもしくはそれらの一部のいずれの組み合わせを含んでいてよい。ポリペプチドはまた、上記の抗体部分に融合もしくは結合して、多量体を形成してもよい。例えば、本発明のポリペプチドに融合したFc部分は、Fc部分間のジスルフィド結合を介して二量体を形成することができる。より大きな多量体を、ポリペプチドをIgAおよびIgMの一部に融合させることによって形成することができる。本発明のポリペプチドを抗体部分に融合もしくは結合させる方法は、当分野において公知である。例えば、米国特許第5,336,603号、第5,622,929号、第5,359,046号、第5,349,053号、第5,447,851号、および第5,112,946号; EP 307,434; EP 367,166; PCT国際公開番号WO 96/04388およびWO 91/06570; Ashkenazi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:10535-10539 (1991); Zheng et al., J. Immunol., 154:5590-5600 (1995); およびVil et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:11337-11341(1992)(該文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)を参照。
【0140】
さらに、抗CTLA4抗体もしくはそのフラグメントは、細胞毒(例えば、細胞分裂阻害剤もしくは殺細胞剤)、治療薬または放射性金属イオン(例えば、α-放射体(例えば213Biなど))といった治療成分(治療成分)に結合していてよい。細胞毒または細胞傷害性薬物には、細胞に対して有害であるいずれの薬剤も含まれる。例としては、パクリタキセル(paclitaxol)、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テニポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラセン(anthracin)ジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシンならびにそれらのアナログもしくはホモログが挙げられる。治療薬としては、限定はされないが、代謝拮抗薬(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシル、ダカルバジン(decarbazine))、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオテパ(thioepa)、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびシス-ジクロロジアンミン(dichlorodiamine)白金(II) (DDP) シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前はダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン(AMC))、ならびに有糸分裂阻害剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)が挙げられる。
【0141】
本発明の複合体は、所定の生物学的応答を調節するために用いることができ、該治療薬もしくは薬物成分は古典的な化学的治療薬に限定されるとは解釈されない。例えば、該薬物成分は、目的の生物学的活性を有するタンパク質もしくはポリペプチドであってもよい。そのようなタンパク質には、例えば、毒素(例えば、アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素、もしくはジフテリア毒素); タンパク質(例えば、腫瘍壊死因子、α-インターフェロン、β-インターフェロン、神経成長因子、血小板由来増殖因子、組織プラスミノーゲン活性化因子、アポトーシス剤(例えば、TNF-α、TNF-β、AIM I(PCT公開番号WO 97/33899参照)、AIM II(PCT公開番号WO 97/34911参照)、Fasリガンド(Takahashi et al., Int. Immunol., 6:1567-1574 (1994))、VEGI(PCT公開番号WO 99/23105参照))、血栓症治療薬(thrombotic agent)もしくは抗血管新生薬(例えば、アンジオスタチンもしくはエンドスタチン)); または、生物学的応答調節物質(例えば、リンホカイン、インターロイキン-1(「IL-1」)、インターロイキン-2(「IL-2」)、インターロイキン-6(「IL-6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM-CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G-CSF」)、もしくは他の増殖因子など)が含まれうる。
【0142】
そのような治療成分を抗体に結合させるための技法は周知である(例えば、Arnon et al., “Monoclonal Antibodies for Immunotargeting of Drugs in Cancer Therapy”, in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Reisfeld et al., eds., pp. 243-256, Alan R. Liss, Inc. (1985); Hellstrom et al., “Antibodies for Drug Delivery”, in Controlled Drug Delivery, 2nd Ed., Robinson et al., eds., pp. 623-653, Marcel Dekker, Inc. (1987); Thorpe, “Antibody Carriers of Cytotoxic Agents in Cancer Therapy: A Review”, in Monoclonal Antibodies ‘84: Biological and Clinical Applications, Pinchera et al., eds., pp. 475-506 (1985); “Analysis, Results, and Future Prospective of the Therapeutic Use of Radiolabeled Antibody in Cancer Therapy”, in Monoclonal Antibodies for Cancer Detection and Therapy, Baldwin et al., eds., pp. 303-316, Academic Press (1985), および、Thorpe et al., “The Preparation and Cytotoxic Properties of Antibody-Toxin Conjugates”, Immunol. Rev., 62:119-158 (1982)を参照)。
【0143】
あるいは、米国特許第4,676,980号(引用によりその全般が本明細書に援用される)においてSegalにより記載されるとおり、抗CTLA4抗体を第2抗体に結合させて抗体ヘテロ複合体を形成することができる。
【0144】
抗CTLA4抗体は、それに結合した治療成分の有無にかかわらず、単独でかもしくは細胞傷害性因子および/またはサイトカインと組み合わせて投与され、療法として用いることができる。
【0145】
本発明はまた、本発明のポリペプチドに対する合成抗体の製造も包含する。合成抗体の1つの例がRadrizzani, M., et al., Medicina (Aires), 59(6):753-758, (1999))に記載されている。最近、新しいクラスの合成抗体が記載されており、分子インプリントポリマー(MIP)(Semorex, Inc.)と称されている。抗体、ペプチド、および酵素が、化学および生物センサーにおいて分子認識エレメントとしてよく用いられている。しかしながら、それらの安定性の欠如およびシグナル伝達メカニズムが、センシングデバイスとしてのそれらの使用を制限している。分子インプリントポリマー(MIP)は、生物学的受容体の機能を模倣する能力を有し、安定性制約が少ない。そのようなポリマーは、優れた熱および力学的安定性を維持しながら、高い感受性および選択性を提供する。MIPは、小分子に結合する能力、ならびに自然抗体のものと同等以上の強さで標的分子(例えば、有機物およびタンパク質)に結合する能力を有する。これら「スーパー」MIPは、それらの標的に対してより高い親和性を有するため、有効な結合のために必要とされる濃度は、より低い。
【0146】
合成の間に、MIPは、その「プリント」もしくは「鋳型」として、標的分子それ自体(例えば、ポリペプチド、抗体、など)もしくは非常に類似した構造を有する物質を用いることによって、選択された標的の相補的なサイズ、形状、電荷および官能基を有するようにインプリントされる。MIPは、抗体に用いられるのと同じ試薬を用いて、誘導体化され得る。例えば、蛍光「スーパー」MIPを、高感度分離もしくはアッセイでの使用のためか、またはタンパク質のハイスループットスクリーニングでの使用のために、ビーズまたはウェル上にコーティングすることができる。
【0147】
特定の受容体、リガンド、ポリペプチド、ペプチド、有機分子に対するMIPを製造するために、多くの方法が用いられうる。いくつかの好ましい方法が、Estebanらにより、J. Analytical Chem., 370(7):795-802 (2001)(引用により、その全般ならびにその中に記載のいずれの参考文献が、本明細書に援用される)中に記載されている。さらなる方法が当分野において公知であり、本発明により包含される(例えば、Hart, B.R. et al., J. Am. Chem. Soc., 123(9):2072-2073 (2001); および、Quaglia, M. et al., J. Am. Chem. Soc., 123(10):2146-2154 (2001);(引用によりそれらの全般が本明細書に援用される)など)。
【0148】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、一本鎖もしくは二本鎖であってよい。二本鎖RNAは、Paddison et al., Proc. Nat. Acad. Sci., 99:1443-1448 (2002); ならびに、PCT国際公開番号WO 01/29058およびWO 99/32619;(引用により本明細書に援用される)の教示に基づいて、設計されうる。
【0149】
二本鎖RNAはまた、RNA干渉の能力を有するように、RNAインヒビター(「RNAi」)の形態であってもよい。例えば、抗CTLA4 RNAi分子は、MelloおよびFireによってPCT国際公開番号WO 1999/032619およびWO 2001/029058; 米国特許出願公開第2003/0051263号、第2003/0055020号、第2003/0056235号、第2004/265839号、第2005/0100913号、第2006/0024798号、第2008/0050342号、第2008/0081373号、第2008/0248576号および第2008/055443号; ならびに/あるいは米国特許第6,506,559号、第7,282,564号、第7,538,095号および第7,560,438号中に記載されている分子の形態であってもよい。これらの特許および特許出願の教示は、引用によりその全般が本明細書に援用される。
【0150】
例えば、抗CTLA4 RNAi分子は、二本鎖RNAであってよく、約25〜400ヌクレオチド長であってよく、そして、コードしているCTLA4のヌクレオチド配列に対して相補的であってよい。そのようなRNAi分子は、約20、約25、約30、約35、約45、および約50ヌクレオチド長であってよい。この文脈において、用語「約」は、5'もしくは3'方向のいずれかまたは両方において、約1、2、3、4、5、もしくは6ヌクレオチド長いと解釈される。
【0151】
あるいは、本発明の抗CTLA4 RNAi分子は、Kreutzerによって欧州特許EP 1144639およびEP 1214945中に記載されている二本鎖RNAi分子の形態であってもよい。これらの特許および特許出願の教示は引用によりそれらの全般が本明細書に援用される。とりわけ、本発明の抗CTLA4 RNAi分子は、CTLA4のコード領域に相補的であって、約15〜約49ヌクレオチド長、好ましくは約15〜約21ヌクレオチド長である、二本鎖RNAであってもよい。この文脈において、用語「約」は、5'もしくは3'方向のいずれかまたは両方において、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10ヌクレオチド長いと解釈される。そのような抗CTLA-4分子は、一本鎖RNAの化学的結合によって安定化され得る。
【0152】
あるいは、本発明の抗CTLA4 RNAi分子は、Tuschlによって欧州特許EP 1309726中に記載されている二本鎖RNAi分子の形態であってもよい。これらの特許および特許出願の教示は引用によりそれらの全般が本明細書に援用される。とりわけ、本発明の抗CTLA4 RNAi分子は、CTLA4のコード領域に対して相補的であり、約21〜約23ヌクレオチド長であり、そして、平滑末端であるか、または1つもしくは両方の鎖の5'末端もしくは3'末端のいずれか1つ上に1つ以上の突出(各突出は約1、2、3、4、5、6、もしくはそれ以上のヌクレオチド長である)を含むかのいずれかである、二本鎖RNAであってよい。各鎖の末端は、リン酸化か、ヒドロキシル化か、または他の修飾により修飾されていてよい。加えて、1つ以上のヌクレオチドのヌクレオチド間結合は修飾されてもよく、そして、2'-OHを含んでもよい。この文脈において、用語「約」は、5'もしくは3'方向のいずれかまたは両方において、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10ヌクレオチド長いと解釈される。そのような抗CTLA-4分子は、一本鎖RNAの化学的結合によって安定化され得る。
【0153】
あるいは、本発明の抗CTLA4 RNAi分子は、Tuschlによって米国特許第7,056,704号および第7,078,196号中に記載されている二本鎖RNAi分子の形態であってもよい。これらの特許および特許出願の教示は引用によりそれらの全般が本明細書に援用される。とりわけ、本発明の抗CTLA4 RNAi分子は、CTLA4のコード領域に対して相補的であり、約19〜約25ヌクレオチド長であり、そして、平滑末端であるか、または鎖の1つもしくは両方の5'末端もしくは3'末端上に1つ以上の突出(各突出は約1、2、3、4、もしくは5またはそれ以上のヌクレオチド長である)を含むかのいずれかである、二本鎖RNAであってよい。各鎖の末端は、リン酸化か、ヒドロキシル化か、または他の修飾によって修飾されていてよい。加えて、1つ以上のヌクレオチドのヌクレオチド間結合は修飾されてもよく、そして、2'-OHを含んでもよい。この文脈において、用語「約」は、5'もしくは3'方向のいずれかまたは両方において、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10ヌクレオチド長いと解釈される。そのような抗CTLA-4分子は、一本鎖RNAの化学的結合によって安定化され得る。
【0154】
さらに、本発明の抗CTLA4 RNAi分子は、Crookeによって米国特許第5,898,031号、第6,107,094号、第7,432,249号、および第7,432,250号、ならびに欧州特許出願番号EP 0928290中に記載されているRNA分子の形態であってもよい。これらの特許および特許出願の教示は引用によりそれらの全般が本明細書に援用される。とりわけ、抗CTLA4分子は、あらかじめ選択されたRNA標的に対する該化合物の結合親和性が、該RNA標的に対する未修飾のオリゴリボヌクレオチドの結合親和性と比較して向上されるように修飾されている、少なくとも1つのリボフラノシルヌクレオシドサブユニットを有する第1セグメント; ならびに、少なくとも4つの連続したリボフラノシルヌクレオシドサブユニット(その上に2'-ヒドロキシル部分を有する)を含有する第2セグメント;(ここで、該オリゴマー化合物の該ヌクレオシドサブユニットはヌクレオシド間結合(リン酸ジエステル結合と比べて、分解から安定に保つように修飾されている)により結合されている)を含む一本鎖RNAであってよい。好ましくは、そのようなRNA分子は、約15〜25ヌクレオチド長か、または約17〜約20ヌクレオチド長である。好ましくは、そのような分子は、CTLA4 RNAの切断をもたらす二本鎖RNAse酵素(double-stranded RNAse enzyme)を活性化する能力がある。この文脈において、用語「約」は、5'もしくは3'方向のいずれかまたは両方において、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10ヌクレオチド長いと解釈される。そのような抗CTLA-4分子は、一本鎖RNAの化学的結合によって安定化され得る。
【0155】
SiRNA試薬が、本発明によって具体的に検討されている。そのような試薬は、本発明のポリヌクレオチドの発現を阻害するために有用であり、治療効果を有しうる。siRNA試薬の投与による障害の治療的処置のためのいくつかの方法が当分野において公知である。一つのそのような方法が、Tiscorniaらにより記載されている(Proc. Natl. Acad. Sci., 100(4):1844-1848 (2003)); 2003年7月18日に出願されたWO 04/09769; およびReich, S.J. et al., Mol. Vis., 9:210-216 (May 30, 2003)(引用によりその全般が本明細書に援用される)。
【0156】
本発明のさらなる理解を促すために、以下の実施例を、主にそのより具体的な詳細を説明することを目的として、示す。該実施例は、本発明の範囲を制限するものと見なされるべきでなく、むしろ特許請求の範囲によって定義される対象を全て包含するためのものである。
【実施例】
【0157】
実施例1 - 3つのマウス腫瘍モデルにおける腫瘍増殖に対するタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤と共刺激経路調節剤との組み合わせの効果を評価する方法
免疫機能におけるダサチニブの効果は、近年の研究の対象となっている。いくつかの報告によると、in vitroにおいて、サイトカイン分泌および脱顆粒の阻害による測定(Weischel et al., 2008)で、ダサチニブ(濃度 10-50 nM)はT-細胞の機能を阻害することが示され、それはLck阻害の結果であると推定された。他の報告によると、ダサチニブはT-細胞活性化の遮断をもたらすことが示された(Schade et al., 2007)。しかしながら、ダサチニブを用いた処置は、そのSTAT3阻害能力に基づいた免疫調節性の効果を有する可能性もあり、それは樹状細胞の成熟およびT-細胞応答の調節をもたらし(Yu, H. et al., 2007)、そしてT-細胞シグナル伝達の阻害に対するTエフェクターおよびT制御細胞の差次的感受性をもたらしうる(Siggs et al., 2007)。さらに、大型顆粒リンパ球が、ダサチニブを用いて処置された患者からの胸水中で検出されており、興味深いことに、これらの患者の全ては少なくとも1つのHLA-A2アレルを有していた(Mustojski et al., 2008)。LGL浸潤は免疫賦活によりもたらされる可能性があることが仮定される。従って、ダサチニブの効果が最小であるモデルにおいて、CTLA-4 遮断mAbとダサチニブの組み合わせにより、抗腫瘍免疫応答の増強が達成されうるかどうかの決定に関心が持たれた。
【0158】
有効性の研究を、SA1N線維肉腫、CT26大腸癌、およびM109肺癌の3つのモデルにおいて実施した。CTLA-4遮断の効果に対しては最初の2つのモデルが感受性を有していたのに対して、ダサチニブは、SA1Nモデルにおいて中程度の抗腫瘍活性を示したが、CT26およびM109モデルに対しては最小の活性を示した。図1A-1Bおよび図2に示すとおり、CTLA-4 mAb + ダサチニブでの併用処置は、相乗的効果をもたらした。ダサチニブを、30 mg/kgで、連日投与レジメンかまたは以下の間欠スケジュール(5日投与/2日投与せず)のいずれかにおいて投与した場合に、シナジーが認められた。M109腫瘍モデルではシナジーは見られなかった。
【0159】
該組み合わせの効果が細胞傷害性T細胞の増殖に起因するものかどうかを決定するため、ならびに処置が腫瘍-流入領域リンパ節における免疫細胞の組成を変化させているかどうかを決定するために、CT26腫瘍モデルでさらなる研究を実施した。単独処置を用いて処置した動物に比べ、該組み合わせ処置を用いて処置した動物において、細胞溶解活性の増大が見られた(図3A-3C)。さらに、Tエフェクター細胞/T制御細胞(サプレッサー集団)の比率を測定した場合、該組み合わせ処置およびダサチニブ-処置群において比率が高められ、Tエフェクター細胞がT制御細胞よりも高い数を示した。CT-26モデルにおいて得られた結果に基づくと、ダサチニブをCTLA-4療法に加えることにより、Tエフェクター細胞の割合が増大される一方でT制御細胞の数が減少され、抗CTLA-4単独療法により誘発される抗腫瘍免疫応答の亢進をもたらすと思われる。
【0160】
実施例2 - P815肥満細胞腫マウス腫瘍モデルにおける腫瘍増殖に対するタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤と共刺激経路調節剤の組み合わせの効果を評価する方法
スプリセル(登録商標)とCTLA-4抗体での併用処置を、P815肥満細胞腫マウス腫瘍モデルにおいて評価した。用いた方法は、基本的に、本明細書の実施例1に概説される通りである。
【0161】
スプリセル(登録商標)は、P815モデルにおいて中程度の抗腫瘍活性を示した。図5に示される通り、CTLA-4 mAb + スプリセル(登録商標)での併用処置は相乗的効果をもたらした。スプリセル(登録商標)を、30 mg/kgで、連日投与レジメンかまたは以下の間欠スケジュール(5日投与/2日投与せず)のいずれかにおいて投与した場合に、シナジーが認められた。
【0162】
これらの結果は、SAINおよびCT26腫瘍モデルで認められた結果と一致しており(図1A-Bおよび2を参照)、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤をCTLA-4抗体と組み合わせて投与することにより、腫瘍増殖の相乗的減少がもたらされることが確認される。
【0163】
実施例3 - マウスモデルにおける、単独かまたはパクリタキセル(PAC)、エトポシド(ETO)、もしくはゲムシタビン(GEM)と組み合わせた細胞傷害性T-リンパ球抗原-4(CTLA-4)遮断の抗腫瘍活性を評価する方法
化学療法薬を加えることにより、抗CTLA-4モノクローナル抗体(CTLA-4 mAb)の抗腫瘍活性がシナジーを与えられるかもしくは阻害されるかどうかを決定するため、CTLA-4 mAbを、単独で、およびPac、Eto、もしくはGemと組み合わせて、マウス腫瘍モデルにおいて評価した。M109肺癌、SA1N線維肉腫、およびCT26大腸癌モデルを、化学療法薬およびCTLA-4遮断に対する異なる感受性に基づいて選択した。
【0164】
全ての化合物を、それらの至適用量およびスケジュールで試験した。組み合わせて用いる場合には、化学療法薬の初回投与の一日後にCTLA-4 mAbを開始した。腫瘍増殖阻害の割合および目標の腫瘍サイズに達するまでの日数を用いて、効果を評価した。抗腫瘍活性を以下のとおりスコア化した: 完全退縮(CR; ≧2の評価において、触知できない腫瘍)または部分的退縮(PR; ≧2の評価において、腫瘍容積が50%縮小)。シナジーは、各剤での単独療法の活性に比べて優位に優れた(p<0.05)抗腫瘍活性として定義された。
【0165】
CTLA-4遮断に対して非感受性であって、Pac、Eto、およびGemに対しては中程度の感受性であるM109皮下腫瘍モデルにおいて、CTLA-4 mAbおよびPacの組み合わせではボーダーラインのシナジーが見られたが、Etoでは効果が見られなかった。Gem単独療法では顕著なM109抗腫瘍活性はもたらされなかったが;しかしながら、GemとCTLA-4 mAbを組み合わせるとシナジーがもたらされた。M109肺転移モデルにおいて、Etoと組み合わせたCTLA-4 mAbにおいてシナジーが見られ、Gemでボーダーラインのシナジーが認められ、Pacは活性を増大させなかった。
【0166】
SA1N線維肉腫はCTLA-4遮断および3つの化学療法薬全てに対して感受性を有する。Pac、Eto、およびGemはこのモデルにおいてCTLA-4 mAbの活性を増大させたが、シナジーはEtoで認められたのみであった。CTLA-4 mAbおよびPacは定着したCT26大腸癌腫瘍に対しては効果がなかったが、腫瘍量がごく小さい場合においては相乗的であった。EtoおよびGemの両者はこのモデルにおいて単剤で有効であり、両者の活性はCTLA-4 mAbによって顕著にシナジーがもたらされた。
【0167】
要するに、CTLA-4 mAbをEto、Gem、もしくはPacに加えることによって、モデル-依存性の相乗的活性がもたらされた。腫瘍の免疫原性にもかかわらず、療法の少なくとも1つが活性である場合でのみ、シナジーが認められた。全ての組み合わせレジメンが良好な耐溶性を示し、化学療法薬はSA1N腫瘍モデルにおいてCTLA-4 mAb活性を阻害しないようであった。とりわけ重要なことに、単独のCTLA-4 mAbに対して無応答性の腫瘍においてシナジーが認められ、このことは化学療法薬が免疫原性細胞死を引き起こす可能性があることを示唆している。これらの知見は、化学免疫療法の組み合わせの臨床試験における評価をサポートする。各マウスモデルにおける組み合わせのデータを、以下の実施例において個々に概説する。
【0168】
実施例4 - 皮下M109マウス腫瘍モデルにおける、単独かまたはパクリタキセル(PAC)、エトポシド(ETO)、もしくはゲムシタビン(GEM)と組み合わせた細胞傷害性T-リンパ球抗原-4(CTLA-4)遮断の抗腫瘍活性を評価する方法
CTLA-4遮断と組み合わせたパクリタキセル、エトポシドおよびゲムシタビンの効果を、皮下M109肺癌腫瘍モデルにおいて評価して、各処置の組み合わせの効果を確証した。
【0169】
M109腫瘍は、CTLA-4遮断に対して非感受性であり、パクリタキセル、エトポシドおよびゲムシタビンに対しては中程度の感受性である。CTLA-4 + パクリタキセルの組み合わせは、各剤単独に比べて抗腫瘍活性を増大させたが、エトポシドでは増大されなかった。一方、単剤としてのゲムシタビンは顕著な抗腫瘍活性はもたらさなかったにもかかわらず、ゲムシタビン + CTLA-4 mAbは相乗的効果をもたらした(表1)。
表1
M109肺癌皮下腫瘍モデルにおける、パクリタキセル、エトポシドおよびゲムシタビンと組み合わせたCTLA-4 mAbの抗腫瘍活性
【表1】

TVDT = 5.4 日
【0170】
実施例5 - 実験的肺転移M109マウス腫瘍モデルにおける、単独かまたはパクリタキセル(PAC)、エトポシド(ETO)、もしくはゲムシタビン(GEM)と組み合わせた細胞傷害性T-リンパ球抗原-4(CTLA-4)遮断の抗腫瘍活性を評価する方法
CTLA-4遮断と組み合わせたパクリタキセル、エトポシドおよびゲムシタビンの効果を実験的M109肺転移腫瘍モデルにおいて評価して、各処置の組み合わせの効果を確証した。
【0171】
M019肺転移モデルにおいて、エトポシドおよびCTLA-4 mAbは相乗的活性を示したが、ゲムシタビンとの組み合わせはボーダーラインのシナジーであった(表2)。

表2
実験的肺転移のM019肺癌モデルにおける化学療法薬と組み合わせたCTLA-4 mAbの効果
【表2】

【0172】
実施例6 - SA1N線維肉腫皮下マウス腫瘍モデルにおける、単独か、またはパクリタキセル(PAC)、エトポシド(ETO)、もしくはゲムシタビン(GEM)と組み合わせた細胞傷害性T-リンパ球抗原-4(CTLA-4)遮断の抗腫瘍活性を評価する方法
CTLA-4遮断と組み合わせたパクリタキセル、エトポシドおよびゲムシタビンの作用を、SA1N線維肉腫皮下マウス腫瘍モデルにおいて評価して、各処置の組み合わせの効果を確証した。
【0173】
SA1Nは、CTLA-4 mAbおよび化学療法に対して感受性のある免疫原性腫瘍株である。試験した3つの化学療法薬ともCTLA-4 mAbの活性を高めたが、シナジーはエトポシドで認められたのみであった(表3)。

表3
SA1N線維肉腫皮下腫瘍モデルにおけるパクリタキセル、エトポシドおよびゲムシタビンと組み合わせたCTLA-4 mAbの抗腫瘍活性
【表3】

TVDT = 8.2 (1000 mm3)
【0174】
実施例7 - CT26大腸癌マウス腫瘍モデルにおける、単独かまたはパクリタキセル(PAC)、エトポシド(ETO)、もしくはゲムシタビン(GEM)と組み合わせた細胞傷害性T-リンパ球抗原-4(CTLA-4)遮断の抗腫瘍活性を評価する方法
CTLA-4遮断と組み合わせたパクリタキセル、エトポシドおよびゲムシタビンの作用を、CT26大腸癌マウス腫瘍モデルにおいて評価して、各処置の組み合わせの効果を確証した。
【0175】
CTLA-4およびパクリタキセルは、CT26大腸癌腫瘍に対して効果のない療法であり;それらの組み合わせは、定着した腫瘍に対しては効果がなかったが、極少ない腫瘍量に対しては相乗的であった。表4に示すとおり、エトポシドおよびゲムシタビンの両者は単剤として有効であったが、それらの活性はCTL-4 mAbを加えることによって顕著に増強された。

表4
CT26大腸癌皮下腫瘍モデルにおける、パクリタキセル、エトポシドおよびゲムシタビンと組み合わせたCTLA-4 mAbの抗腫瘍活性
【表4】

【0176】
要するに、CTLA-4 mAbを化学療法薬(例えば、エトポシド、ゲムシタビン、パクリタキセル、およびイクサベピロン)に加えることにより、複数の腫瘍モデルにおいて相乗的な活性がもたらされた。全ての組み合わせレジメンは耐容性良好であった。注目すべきことに、CTLA-4単独に応答しない腫瘍でシナジーが認められ、これにより化学療法薬は免疫原性細胞死を引き起こす可能性があることを示唆される。単独療法としてのゲムシタビン、エトポシド、パクリタキセル、およびイクサベピロンは、免疫原性の特徴(immunogenic signature)および免疫応答の調節をもたらすと思われる。重要なことに、これらの剤はそれらの短い半減期に起因してエフェクターT-細胞の機能に影響しないであろうことが、該結果により示唆される。加えて、化学療法薬が退縮をもたらさない場合において、CTLA-4遮断と組み合わせたゲムシタビン、エトポシド、パクリタキセル、およびイクサベピロンのシナジーが認められ得る。少なくともゲムシタビンについては、投与のタイミングが、有効なゲムシタビンとの併用処置のみでの相乗的効果に対して重要であった。これらの結果により、化学療法薬とCTLA-4阻害との共投与は相乗的効果に最適でありうることが示唆される。最後に、完全寛解(「CR」)のマウスは腫瘍の再発(rechallenge)を退けることができ、このことはメモリー免疫応答の発生が化学療法薬によって損なわれないことを示唆している。
【0177】
結論として、これらの知見は、化学療法薬およびイピリムマブ ホモログCTLA-4-遮断mAbの組み合わせが効果的で持続的な抗腫瘍効果をもたらすこと、および化学療法薬と組み合わせたイピリムマブの臨床試験での検討が是認されることの証拠を提供する。
【0178】
本発明は具体的に上記した実施態様に限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱することなく変更および改変することができる。
【0179】
前述の発明の説明および実施例における具体的な記載とは異なるやり方で本発明を実施してもよいことは明らかであろう。本発明の数々の改変および変更が、上記の教示の観点から可能であり、それは従って特許請求の範囲内である。
【0180】
発明の背景、詳細な説明、図面の簡単な説明、および実施例で引用された各文献(特許、特許出願、学術論文、アブストラクト、実験マニュアル、書籍、GENBANK(登録商標)受託番号、SWISS-PROT(登録商標)受託番号、または他の開示を含む)の開示は全て、引用によりその全般が本明細書に援用される。さらに、本明細書とともに提出する配列表のハードコピー、ならびにコンピューターに読み込み可能な形式のその対応物が、引用によりその全般が本明細書に援用される。
【図1−A】

【図1−B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌を含む増殖性疾患の処置方法であって、それを必要としている哺乳動物に、相乗的に治療上有効な量の抗CTLA-4剤を、N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[6-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]-2-メチル-4-ピリミジニル]アミノ]-5-チアゾールカルボキサミドまたはその医薬的に許容される塩、溶媒和物、もしくは水和物とともに投与することを含む、該方法。
【請求項2】
癌を含む増殖性疾患の処置方法であって、それを必要としている哺乳動物に、相乗的に治療上有効な量の少なくとも1つの共刺激経路阻害剤を、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤;微小管安定化剤;ヌクレオシドアナログ;およびDNA二本鎖(切断)誘発剤からなる群から選択される少なくとも1つの化学療法薬とともに投与することを含む、該方法。
【請求項3】
該少なくとも1つの共刺激経路阻害剤が抗CTLA-4剤である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
該抗CTLA-4剤がイピリムマブおよびトレメリムマブからなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
該抗CTLA-4剤がイピリムマブである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
該少なくとも1つの化学療法薬がダサチニブ;イマチニブ、ニロチニブ、パクリタキセル;ゲムシタビン;カルボプラチン、PEM、シスプラチン、およびエトポシドからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
該タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤がダサチニブである、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
該微小管安定化剤が、イクサベピロン、タキソール、パクリタキセル、またはエポチロンアナログである、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
該ヌクレオシドアナログがゲムシタビンである、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
該DNA二本鎖(切断)誘発剤がエトポシドである、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
該増殖性疾患が、肺癌、膵癌、前立腺癌、大腸癌、およびCMLからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
該方法が癌性固形腫瘍の処置のためのものである、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
該方法が難治性腫瘍の処置のためのものである、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
該抗CTLA-4剤が、抗CTLA-4抗体、抗CTLA-4アドネクチン、抗CTLA-4 RNAi、一本鎖抗CTLA-4抗体フラグメント、ドメイン抗CTLA-4抗体フラグメント、および抗CTLA-4アンチセンス分子からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。

【図2】
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【図3−A】
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【図3−B】
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【図3−C】
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【図4−A】
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【図4−B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2012−533619(P2012−533619A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521608(P2012−521608)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/062519
【国際公開番号】WO2011/011027
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(391015708)ブリストル−マイヤーズ スクイブ カンパニー (494)
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL−MYERS SQUIBB COMPANY
【Fターム(参考)】