説明

変位分布計測方法、装置及びプログラム

【課題】計測物体の変位分布を高速に計測するとともに小型化が可能な変位分布計測方法、装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】本発明による変位分布計測装置(1)は、所定の波長の光を照射するレーザ光源(11)と、照射された光を物体光と参照光とに分離するビームスプリッタ(14)と、参照光の位相を所定量だけシフトさせるミラー付きPZTステージ(20)と、位相シフトされた参照光を複数に分岐するペリクルビームスプリッタ(17,18)と、計測物体(23)により散乱された物体光と、分岐された参照光との干渉縞を撮影するCCDセンサ(15,16)とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変位分布計測方法、装置及びプログラムに関し、特に、位相シフトデジタルホログラフィにより複数台の撮像素子を使用して計測物体の変位分布を計測する変位分布計測方法、装置及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
機械構造物の応力・変位・ひずみ計測を高精度に行うことは、多くの産業分野における重要な課題である。特に、橋梁などのインフラ構造物の欠陥検査を効率よく行うことは重要であり、高速かつ効率のよい変位分布やひずみ分布(以下、総括して「変位分布」と称する)を計測する技法の開発が求められている。
【0003】
位相シフトデジタルホログラフィ(Phase−shifting Digital Holography,PSDH)は、非接触かつ表面処理なしに計測物体の微小な変位分布やひずみ分布の計測ができる新しい方法である。この方法では、計測物体の変形前後の干渉縞をCCDカメラにより撮像してコンピュータにより再生し、フィルムを現像する工程を省略できるため、計測物体表面の変位量等を高速に計測することができる(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
位相シフトデジタルホログラフィによる変位分布計測装置は、小型化により外部からの振動の影響を受けにくくなるため、光学実験台上でなくても屋外にて計測実験が可能になる。そのため、計測装置の小型化に対する研究が行われており、光学系をコンパクトに作成して一体化された可搬型の変位分布計測装置が望まれる。
【0005】
こうした中、計測物体に2方向からレーザを照射し、計測物体の面内方向及び面外方向の変位を高精度に計測することを可能にする技術が既知である(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかし、デジタルホログラフィによる変位分布計測では、3方向の変位を計測するためには、独立した3方向からの受光情報が必要なため、最低3光束の入射光が必要であり、3光束の光学系を小型の装置に組み込むためには、かなり複雑な光学系の設計が必要となる。
【0007】
そこで、物体光として3方向から同時にレーザを照射し、7回の位相シフトによって撮影されたデジタルホログラムから各方向の成分を抽出し、得られた成分から3次元の変位分布と2次元のひずみ分布を計測する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−071584号公報
【特許文献2】特開2007−240465号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】高橋功、他4名、「位相シフトデジタルホログラフィを用いた面外変位計測」、実験力学、2003年6月、Vol.3、No.2、p.98−102
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1の技術は、1つの撮像素子で機械的にシャッターを使って照射方向を順番に切り替えて各画像を順に撮影するため変位分布の計測に多くの時間を要する。
【0011】
一方、特許文献2の技術は、小型化に関して特許文献1の発明による装置より有利であるものの、レーザ光源と物体光を作る光学系が3個必要であるため、更なる改善の余地を有している。また、撮影の際に位相シフトする回数が7回以上必要であるため、撮影に要する時間に関しても更なる改善が望まれる。
【0012】
そこで本発明の目的は、装置の小型化とともに計測物体の変位分布の計測時間を短縮できる位相シフトデジタルホログラフィによる変位分布計測方法、装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願の発明者らは、変位分布計測装置の小型化及び変位分布等を高速に計測する方法について鋭意検討した結果、変位分布計測装置に撮像素子を複数台備えて物体光を1つにする構成とし、通常は物体光と参照光とをCCDセンサに平行に入射するon−axis構成とするところを、あえて物体光と参照光とを平行に入射しないoff−axis構成とすることにより光学系を簡素化することができ、計測装置の小型化とともに位相シフトの回数の低減やシャッター切り換え工程の省略により変位分布等の計測を高速に実行できることを見出した。即ち、デジタルホログラフィにおいては、撮像素子の画素ピッチがホログラム乾板の粒子サイズよりも大きいために、物体光と参照光が同じ方向となるon−axis光学系が用いられてきたが、実際にはon−axis構成は必須ではなく、off−axis光学系であってもホログラムを撮影することができることを実証した。また、本願の本発明者らは、off−axis光学系においては実際には計測物体は撮像素子の正面ではなく斜め前方にあるが、再生時の計算にフーリエ変換を用いることにより再生像は撮像素子の正面に現れることを利用し、1光束に対して複数個の撮像素子を用いることにより、独立な異なる方向からの受光情報を撮像素子と同数だけ得ることができるようになり、光学系を簡素化する。
【0014】
即ち、本発明による変位分布計測方法は、off−axis光学系における位相シフトデジタルホログラフィにより計測物体の変形による変位を計測する変位分布計測方法であって、所定の波長のレーザ光を放射するステップと、放射された前記レーザ光を、前記計測物体に照射するための物体光と、前記物体光との干渉縞を生成するための参照光とに分離するステップと、前記参照光の位相を所定量だけシフトさせるステップと、光軸が互いに平行である所定の数の撮像素子の各々に入射するために前記位相シフトされた参照光を複数に分岐するステップと、前記計測物体により散乱された前記物体光と、分岐された各参照光との干渉縞を各撮像素子により撮像するステップと、各撮像素子により撮像された前記干渉縞の各々から前記計測物体の再生像の複素振幅分布を算出し、前記計測物体の変形前後の当該複素振幅分布の位相差から前記計測物体の変位分布を計測するステップとを含むことを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明による変位分布計測方法は、off−axis光学系における位相シフトデジタルホログラフィにより計測物体の変形による変位を計測する変位分布計測方法であって、所定の波長のレーザ光を放射するステップと、放射された前記レーザ光を、前記計測物体に照射するための物体光と、前記物体光との干渉縞を生成するための参照光とに分離するステップと、前記物体光の位相を所定量だけシフトさせるステップと、光軸が互いに平行である所定の数の撮像素子の各々に入射するために前記参照光を複数に分岐するステップと、位相シフトされ、前記計測物体により散乱された前記物体光と、分岐された各参照光との干渉縞を各撮像素子により撮像するステップと、各撮像素子により撮像された前記干渉縞の各々から前記計測物体の再生像の複素振幅分布を算出し、前記計測物体の変形前後の当該複素振幅分布の位相差から前記計測物体の変位分布を計測するステップと、を含むことを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明による変位分布計測方法において、得られた前記計測物体の変位分布からひずみ分布を求めるステップを更に含むことを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明による変位分布計測方法において、前記撮像素子により撮像された前記干渉縞の各々に対して、当該干渉縞から得られた再生像の位置を調整するステップを更に含むことを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明による変位分布計測装置は、off−axis光学系における位相シフトデジタルホログラフィにより計測物体の変形による変位を計測する変位分布計測装置であって、所定の波長のレーザ光を発生する光照射手段と、発生された前記レーザ光を前記計測物体に照射するための物体光と、前記物体光との干渉縞を生成するための参照光とに分離する分離手段と、前記参照光の位相を所定量だけシフトさせる位相シフト手段と、光軸が互いに平行である所定の数の撮像素子の各々に入射するために前記位相シフトされた参照光を複数に分岐する分岐手段と、前記計測物体により散乱された前記物体光と、分岐された各参照光との干渉縞を各撮像素子により撮像する複数の撮像素子と、各撮像素子により撮像された前記干渉縞の各々から前記計測物体の再生像の複素振幅分布を算出し、前記計測物体の変形前後の当該複素振幅分布の位相差から前記計測物体の変位分布を算出する変位分布算出手段とを備えることを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明による変位分布計測装置は、off−axis光学系における位相シフトデジタルホログラフィにより計測物体の変形による変位を計測する変位分布計測装置であって、所定の波長のレーザ光を発生する光照射手段と、発生された前記レーザ光を前記計測物体に照射するための物体光と、前記物体光との干渉縞を生成するための参照光とに分離する分離手段と、前記物体光の位相を所定量だけシフトさせる位相シフト手段と、光軸が互いに平行である所定の数の撮像素子の各々に入射するために前記位相シフトされた参照光を複数に分岐する分岐手段と、位相シフトされ、前記計測物体により散乱された前記物体光と、分岐された各参照光との干渉縞を各撮像素子により撮像する複数の撮像素子と、
各撮像素子により撮像された前記干渉縞の各々から前記計測物体の再生像の複素振幅分布を算出し、前記計測物体の変形前後の当該複素振幅分布の位相差から前記計測物体の変位分布を算出する変位分布算出手段とを備えることを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明による変位分布計測装置において、得られた前記計測物体の変位分布からひずみ分布を求めるひずみ分布解析手段を更に備えることを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明による変位分布計測装置において、前記撮像素子により撮影された前記干渉縞の各々に対して、当該干渉縞から得られた再生像の位置を調整する再生像位置調整手段を更に備えることを特徴とするものである。
【0022】
また、本発明による変位分布計測プログラムは、請求項5〜8のいずれか一項に記載の変位分布計測装置における前記変位分布算出手段として構成するコンピュータに、各撮像素子により撮像された前記干渉縞の各々から前記計測物体の再生像の複素振幅分布を算出するステップと、前記計測物体の変形前後の当該複素振幅分布の位相差から前記計測物体の変位分布を算出するステップとを実行させるものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、光源を1つにして光学系を簡素化することにより計測装置を小型化できるとともに、位相シフト回数の低減とシャッターの切り換え工程の省略により計測物体の変位分布やひずみ分布を高速に計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による実施例1の変位分布計測装置のブロック図である。
【図2】位相シフトデジタルホログラフィ干渉法における物体光と参照光との回折現象を示す図である。
【図3】ホログラム面と再生面における複素振幅分布の対応関係を示す図である。
【図4】(a)on−axis構成及び(b)off−axis構成に対する、位相シフト時における撮像素子の各画素上での干渉縞パターンの模式図である。
【図5】2個のCCDセンサ、物体の配置及び再生像の位置関係を示す図である。
【図6】再生面に対して面内方向に隣接する空間における再生の概念図である。
【図7】ホログラム面及び再生面における光軸の移動を示す図である。
【図8】本発明による光軸調整により再生面上での再生像の移動を示す図である。
【図9】本発明の実施例1による面内変位計測実験において使用される計測試料である。
【図10】本発明の実施例1において、(a)CCDセンサ15及び(b)CCDセンサ16により得られた変形前の再生像を示す図である。
【図11】本発明の実施例1において、(a)CCDセンサ15及び(b)CCDセンサ16により得られた変形前後の位相差を示す図である。
【図12】本発明の実施例1により得られた変形後のx方向の変位分布を示す図である。
【図13】本発明の実施例1により得られた変形後のx方向のひずみ分布を示す図である。
【図14】本発明による実施例2の変位分布計測装置のブロック図である。
【図15】(a)〜(d)は、本発明による実施例1及び2の変位分布計測装置における撮像素子(CCDセンサ)の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0025】
まず、本発明による実施例1の計測物体の変位分布及びひずみ分布を計測する装置について説明する。
【0026】
図1は、本発明による実施例1の変位分布計測装置の構成を示すブロック図である。変位分布計測装置1は、レーザ光源11と、スペイシャルフィルタ12と、凸レンズ13と、ビームスプリッタ14と、撮像素子(例えば、2次元撮像素子のCCDセンサ15及び16)と、ペリクルビームスプリッタ17及び18と、ハーフミラー19と、ミラー付きPZTステージ20と、NDフィルタ21と、ミラー22と、変位分布算出装置24とを備える。
【0027】
レーザ光源11は、例えば波長632.8nm、出力5mWのHe−Neレーザ光源とすることができ、所定の波長を有するホログラムの記録及び再生用のレーザ光を放射する。
【0028】
スペイシャルフィルタ12は、レーザ光源11から放射されたレーザ光から空間ノイズを除去して凸レンズ13に出力する。
【0029】
凸レンズ13は、スペイシャルフィルタ12から出力されたレーザ光を平行光にして出力する。
【0030】
ビームスプリッタ14は、凸レンズ13からの平行光を計測物体23に照射するための物体光と、再生面における計測物体23の変形前後の複素振幅分布の位相差を計算するための基準とする参照光とに分離する。
【0031】
ミラー付きPZTステージ20は、ハーフミラー19を通過した参照光の位相を所定量だけシフトさせてハーフミラー19に反射する。
【0032】
NDフィルタ21は、ハーフミラー19により反射された参照光の強度が物体光の強度と同程度となるように所定量だけ調整して出力する。
【0033】
ペリクルビームスプリッタ17は、NDフィルタ21により強度が調整され、ミラー22により反射された光を参照光の一部をCCDセンサ15に反射し、残りをペリクルビームスプリッタ18に透過する。
【0034】
ペリクルビームスプリッタ18は、ペリクルビームスプリッタ17を透過した参照光の一部をCCDセンサ16に反射する。
【0035】
CCDセンサ15及び16は、それぞれペリクルビームスプリッタ17及び18により反射された参照光と、ビームスプリッタ14により分離されて計測物体23により反射された物体光との干渉縞をホログラムとして取得して、変位分布算出装置24に送出する。
【0036】
変位分布算出装置24は、位相差解析機能24aと、変位解析機能24bと、ひずみ解析機能24cとを有し、CCDセンサ15及び16から取得した干渉縞の各々に対して、干渉縞から再生像の複素振幅分布を算出し、計測物体23の変形前後の当該複素振幅分布の位相差から計測物体23の変位分布を算出する。尚、CCDセンサ15,16によりホログラムとして取得した干渉縞をメモリ(図示せず)に記録しておくことができる。
【0037】
位相差解析機能24aは、CCDセンサ15及び16によりホログラムとして記録された計測物体23の変形前後の物体光と参照光との干渉縞から再生面での位相差を計算する機能である。
【0038】
変位解析機能24bは、位相差解析機能24aにより得られた再生面での位相差から、計測物体23の変位を解析する機能である。
【0039】
ひずみ解析機能24cは、変位解析機能24bにより得られた計測物体23の変位からひずみを計算する機能である。
【0040】
このように、本発明による変位分布計測装置1により、光源が1つになるため光学系が簡素化でき、計測装置を小型化できるとともに、位相シフト回数が低減されるため計測物体23の変位分布及びひずみ分布を高速に計測できる。
【0041】
変位分布計測装置1において、レーザ源11により放射されてビームスプリッタ12により物体光と参照光に分離され、参照光は、ミラー付きPZTステージ20により所定量だけ位相シフトされ、ペリクルビームスプリッタ17及び18によりCCDセンサ15及びCCDセンサ16に正面から入射する。
【0042】
一方、物体光は、CCDセンサ15及び16の間と通過して物体18に正面から照射され、物体18の表面で反射された散乱光がCCDセンサ15及び16に入射する。こうして入射した物体光及び参照光の干渉縞が、CCDセンサ15及び16の双方において、ホログラムとして記録されることになる。
【0043】
ここで、CCDセンサ15及び16により撮影された干渉縞から、計測物体23の変位及びひずみを解析する変位分布算出装置24の動作について詳細に説明する。
【0044】
図2は、位相シフトデジタルホログラフィ干渉法における物体光と参照光とが干渉する様子を示している。撮像素子(CCDセンサ15,16)の記録面上の座標を(X,Y)とすると、撮像素子表面における物体光の複素振幅A(X,Y)、参照光の複素振幅A(X,Y)は以下のように表すことができる。
【数1】

【数2】

ここで,a(X,Y)、a(X,Y)はそれぞれ物体光と参照光の振幅分布、Φ(X,Y)、Φ(X,Y)はそれぞれ物体光と参照光の位相分布、αは参照光の位相シフト量である。式(1)及び(2)から、CCDセンサ15,16で記録される干渉縞I(X,Y,α)は以下のように表すことができる。
【数3】

こうして得られた干渉縞がホログラムとして記録される。
【0045】
参照光としては平行光を用いるため、CCDセンサ15,16の記録面における振幅は一定で位相の変化はないとみなすことができ、a(X,Y)=1、Φ(X,Y)=0としても差し障りない。これにより、CCDセンサ15,16の記録面での物体光のみの振幅a(X,Y)及び位相Φ(X,Y)を、αを複数の値に変化させる位相シフト法によって求めることができる。この位相と振幅よりCCDセンサ15,16の記録面での複素振幅分布g(X,Y)は、
【数4】

となり、CCDセンサ15,16の記録面における物体光のみの複素振幅分布を求めることができる。
【0046】
次に、再生面における複素振幅分布を求める。図3に示すように、計測物体23の表面における複素振幅分布は、CCDセンサ15,16の記録面における複素振幅分布g(X,Y)を計測物体23までの距離(再生距離)Rを与えて、式(5)に示すフレネル変換を行うことで求めることができる。
【数5】

ここで、u(x,y)は再生面での複素振幅分布、Rは再生距離(記録面と再生面の距離)、kは波数、Fはフーリエ変換を表す演算子である。こうして得られた再生面での複素振幅分布u(x,y)の強度を計算することにより再生像を得ることができる。
【0047】
更に、計測物体23の変形前後における複素振幅分布の位相差を求めることによって光路長の変化を求めることができ、得られた光路長の変化から計測物体23の変位分布やひずみ分布等を求めることが可能となる。
【0048】
続いて、本発明において用いられるoff−axis光学系による面内変位分布計測について説明する。
【0049】
図4に、位相シフト時における撮像素子の各画素上での干渉縞のパターンを模式的に示す。図4(a)及び(b)は、それぞれon−axis構成及びoff−axis構成の場合の干渉縞(点線で示す)を示している。撮像素子は、各画素の受光面が所定の面積を有しているため、当該受光面上での強度の積分値がその画素の輝度値として出力される。図4において、縦線は各画素の境界を表し、横の実線はその画素における輝度の出力値を表す。
【0050】
図4(a)に示すように、on−axisの場合は、干渉縞のピッチが1画素のサイズよりも大きいために、各画素の輝度の出力値は空間的にも干渉縞の強度分布とほぼ同じ変化となり、位相シフトに対しても干渉縞の強度分布とほぼ同じ振幅で同じ変化を示す。
【0051】
一方、図4(b)に示すように、off−axisの場合は、干渉縞のピッチが1画素のサイズより小さくなるために、1画素の中に複数個の干渉縞が現れる。その結果、各画素の輝度の出力値は空間的には元の干渉縞の変化を表していない。ただし、1画素の中で見ると、CCDセンサ出力の振幅は4回の位相シフトに応じて干渉縞の1周期分の強度の変化を示す。即ち、前述の通り、各画素の受光面上での干渉縞の強度の積分値がその画素の輝度値として出力されるため、図4(b)のように各画素に複数周期の振動が現れる場合には計測物体23の変形による変位の検出精度は低下するものの、各画素の境界に注目すると、図4(a)のon−axisの場合と同様に、4回の位相シフトにより干渉縞の振動強度が1周期分だけ変化していることが分かる。従って、off−axisの場合にも位相シフト法によって位相分布を得ることが可能である。
【0052】
また、式(5)で示す離散フーリエ変換による再生計算では、物体光が再生範囲の大きさと同じだけ光軸からずれた位置から来た場合にも、各CCDセンサ15,16の正面にあるかのように再生される。これは、離散フーリエ変換は空間的に繰り返しが起こる演算だからである。そのため、図5に示すように、2個のCCDセンサ15,16を再生範囲の大きさだけ左右にずらして配置し、その間に物体光を通して正面から物体を照射するように構成すれば、物体の再生像はそれぞれのCCDセンサ15,16の正面にあるかのように再生されることになる。
【0053】
ここで、通常の再生面に面内方向に隣接する空間の物体光によるホログラムの複素振幅分布にフレネル回折積分を用いて、再生面上での複素振幅分布(再生像)をCCDセンサ面の正面の再生像として算出する手法について述べる。図6に概念図を示す。CCDセンサ面上での物体光の複素振幅分布をg(X,Y)、再生面上での実際の物体光の複素振幅分布をu(x,y)、CCDセンサ面上のホログラムと中心軸を共有する正面の空間に再生される再生複素振幅分布をu(x’,y)とする。再生面上の両分布の座標系はx=x’+hの関係にある。CCDセンサ面上の点Qから再生面上の点P’までの光の伝播式は、
【数6】

と表せる。ここでkは波数でk=2π/λ,r’は点(x’,y),(X,Y)間の距離である。Xの積分範囲を−H以上、H以下、Yの積分範囲を−H以上、H以下とする。
【0054】
位相シフトデジタルホログラフィの再生では、フレネル回折を用いるために距離の近似を行う。CCDセンサ面と再生面の距離をRとすると、
【数7】

と表せる。Rは(x’−X)と(y−Y)に比べて十分大きいことから、
【数8】

と近似できる。式(6)に式(8)を代入すると、
【数9】

【0055】
また、再生面上の点PからCCDセンサ面上の点Qまでの光の伝播式は、
【数10】

と表せる。このrも同様に、
【数11】

と近似できる。
【0056】
式(9)に式(10),(11)を代入すると、
【数12】

と表せる。ここで式(12)にx=x’+hを代入し整理すると、
【数13】

となる。
【0057】
更に、積分部分についてCCDセンサ面上のサンプリング間隔、再生面上の画素数、及びCCDセンサ面上の座標Xに対応する離散座標p及びYに対応する離散座標qを用いて離散的に表現すると、再生面上の再生範囲がh=λR/ΔXとなることから、
【数14】

と求められる。従って、(13),(14)より、再生像複素振幅分布u(x’,y)の離散表現をu(p’,q)、実際の複素振幅分布u(x,y)=u(x’+h,y)の離散表現をu(p,q)=u(p’+N,q)として離散的に表現すると、
【数15】

となり、ホログラムの正面の空間に再生される複素振幅分布の位相が、隣接する空間の物体光の複素振幅分布の位相に−k((p’ΔX+NΔX)NΔX/2R+R)を加えたものとして現れることが導かれた。この位相項は再生像のサンプリング点ごとに一定の位相である。
【0058】
図5において、2個のCCDセンサ15,16を厳密に配置決めしないと、それぞれのCCDセンサ15,16で得られたホログラムの再生像の位置が再生像内で同じ位置とならない。実際にはそれを物理的に微調整することは困難である。そこで、本発明においては、後述する光軸調整法によりソフトウェアにより再生像の位置を調整する。本発明のように1つの光源と複数の撮像素子(CCDセンサ15,16)で変位計測を行う場合、物体光の中心をCCDセンサ15,16の中心軸上からずらすため、折り返しの高次の再生像が再生される場合があり、また、それぞれのカメラで再生される再生面上の座標を合わせる必要がある。次に、これらのためにホログラム上での光軸を移動させて再生することにより、再生面をx−y平面上で移動させる光軸調整技法について説明する。
【0059】
上述のように、位相シフトデジタルホログラフィの再生は、式(5)に示すようにフレネル回折積分にフーリエ変換を用いる。実際の再生においては、CCDセンサ面上では複素振幅分布がCCDセンサの画素ごとの離散データであるため、フーリエ変換に高速離散フーリエ変換(FFT)を用いる。そこで、CCDセンサ面におけるサンプリング間隔と再生面におけるサンプリング間隔の関係について調べる。式(5)を離散的に表すと、
【数16】

と表せる。ここでFは高速離散フーリエ変換の演算子である。また、(m,n)と(p,q)は、それぞれCCDセンサ面と再生面の離散的な座標を表している。ΔX,ΔYはCCDセンサでのサンプリング間隔、Δx,Δyは再生面でのサンプリング間隔である。通常、N画素×N画素の画像g(p,q)をu(m,n)に高速離散フーリエ変換したとき、空間周波数のサンプリング間隔Δμ,Δνはそれぞれ、
【数17】

と表せる。フレネル変換ではフーリエ変換するときの空間周波数μ,νを式(17)のように置いているため、離散的な空間周波数は、
【数18】

と表せる。従って、式(17)と式(18)からフレネル変換のサンプリング間隔は、
【数19】

と表せる。式(19)からフレネル回折積分における再生面のサンプリング間隔Δx,Δyは波長λと再生距離Rに比例し、CCDセンサ15,16のサンプリング間隔ΔX,ΔYに反比例することが分かる。
【0060】
CCDセンサ面でz軸を一定量移動させた場合、その移動量は再生面での移動量と等しくなる。従って、光軸の移動により、再生画像を任意の移動量だけ移動させることができる。一方、図7に示すように、光軸をCCDセンサ15,16面上でX軸方向にD画素、Y軸方向にD平行移動した場合の再生面の位置を考える。このとき再生面上でx軸方向にD画素、y軸方向にDy画素移動すると式(20)が成立する。
【数20】

ここでΔX,ΔYはCCDセンサのサンプリング間隔、Δx,Δyは再生面のサンプリング間隔を表す。式(20)を書き換えると、
【数21】

となる。ここでΔXとΔYはそれぞれX方向とY方向のCCDセンサの画素ピッチ、ΔxとΔyはそれぞれx方向とy方向の再生面の画素間隔を表す。ΔX/Δx及びΔY/Δyは、ホログラム面のサイズと再生面のサイズの比であるため、一般に数分の1から数十分の1の値となる。従って、ホログラム面で1画素の分解能でホログラムのシフトを行えば、再生面では数分の1画素から数十分の1画素の分解能で再生像のシフトが行えることになる。
【0061】
また、式(19)を式(20)に代入すると、式(22)が得られる。
【数22】

このように、式(21)を用いて再生面を(D画素,D画素)移動させたいときのCCDセンサ15,16面の移動量(D画素,D画素)を算出することができる。また、再生面を移動させたときの再生像を考える。再生面上での再生像の空間周波数は有限である。ここでの最大空間周波数はCCDセンサの画素数の2分の1(N/2画素,N/2画素)である。従って、図7の点Oに物体が存在する場合の再生面は図8のようになる。再生面の光軸を移動させない場合、領域Aの範囲の再生像が得られる。図8の点Oから点O’に光軸を移動させると領域Bの範囲の再生像が得られる。
【0062】
このように、ホログラム面において画素単位の光軸調整を行うことによって、再生面では画素の数分の1の単位で光軸調整を行うことができる。これを利用して、本発明では、複数の撮像素子で得られた再生像の画素合わせを精度よく行うことができる。
【0063】
次に、図5に示すように、計測物体23の中央からCCDセンサ15,16の中央までの角度をそれぞれθ及びθとする。それぞれのCCDセンサ15,16の各画素で得られた変形前後の位相差をそれぞれとΔφ及びΔφとすると、x方向とz方向の変位d及びdは、それぞれ式(23)及び式(24)に示すように表せる。
【数23】

【数24】

ここで、λは光源の波長である。
【0064】
このように、計測物体23の変形前後の位相差から、計測物体23の面内方向の変位を求めることができる。
【0065】
ここで、本発明の実施例1における変位分布計測装置による面内変位計測実験の結果について説明する。
【0066】
図1における2台のCCDセンサ15,16には、画素ピッチは4.65μm、画素数1280×960画素、階調数256の素子を用いた。撮影された画像から960×960画素を切り出して利用した。
【0067】
光源には波長632.8nm、出力5mWのHe−Neレーザを用い、スペイシャルフィルタと凸レンズによって平行光とした。ビームスプリッタで分離された参照光は、ミラー付きPZTステージ20のミラーにより位相シフトされ、ペリクルビームスプリッタによって各CCDセンサ15,16に正面から入射した。
【0068】
一方、物体光は2台のCCDセンサ15,16の間を通り計測物体23に正面から照射される。計測物体23の表面で反射した散乱光は、それぞれのCCDセンサ15,16に入射し、参照光との干渉縞がホログラムとして記録される。ミラー付きPZTステージ20によって位相シフトをπ/2ごとに4回行いながらそれぞれのCCDセンサ15,16において位相シフトデジタルホログラムを撮影する。
【0069】
図1の配置では、再生距離R=300mmでCCDセンサ15,16の光軸と物体光の光軸との間隔はそれぞれ40.0mmと36.5mmであった。これよりθ=7.6deg,θ=6.9degだけの角度を有するoff−axis光学系となっている。この場合、再生距離R=300mmの位置での再生範囲は40.8mmとなる。
【0070】
計測物体23の試料として、図9に示すように5mm角で長さ25mmのアルミ製片持ち梁を用いた。この片持ち梁に対して、固定端から20mmの位置にてy方向に12μmの変位を加えた。
【0071】
図10に各CCDセンサで撮影された位相シフトデジタルホログラムから得られた変形前の再生像を示す。このように、off−axis構成であっても再生像が得られることが確認できる。
【0072】
前述のようにフーリエ変換による再生計算では、実際の物体が再生範囲の大きさだけずれた位置、即ち各CCDセンサの正面にあるかのように再生される。ただし、実際の各CCDセンサが厳密に配置されていることはないために、CCDセンサ15とCCDセンサ16との間にずれが生じる。そのためCCDセンサ15とCCDセンサ16のそれぞれの再生像が画像内で同じ位置に再生されるように、CCDセンサ15のホログラムに対して、i方向に−280画素、j方向に+170画素の移動を行うことにより、再生像をx方向に+1.30mm、y方向に−0.91mmだけ移動させた。
【0073】
次に、変形前後の位相差を図11に示す。この位相差は、256個の窓関数を用いた位相差平均化手法(例えば、特開2007−071589号公報参照)によりノイズ除去が行われている。
【0074】
図12に計測結果として得られたx方向の変位分布を示す。また、図13に計測結果として得られたx方向のひずみ分布を示す。これは図12の変位分布に対して、x方向に空間的な微分を行うことにより求めている。片持ち梁の上側は圧縮されるため負のひずみが発生し、下側は伸張されるため正のひずみが発生している様子が分布として計測されていることが分かる。
【0075】
このように、複数の撮像素子を備える本実施例による変位分布計測装置1により、off−axis光学系であっても計測物体の再生像が得られ、面内方向の変位及びひずみ分布を計測できることが分かる。
【実施例2】
【0076】
図1に示す変位分布計測装置1においては、ミラー付きPZTステージ20による位相シフトは「参照光」に対して施されるが、参照光の代わりに「物体光」に対して行うこともできる。この場合の変位分布計測装置を実施例2として図14に示す。本発明による実施例2の変位分布計測装置2は、構成要素及び各構成要素の機能については図1の変位分布計測装置1と同一であるが、上述のように参照光の代わりに物体光を位相シフトする点で相違している。即ち、ビームスプリッタ14により分離された物体光は、ハーフミラー19により反射され、ミラー付きPZTステージ20により位相シフトされ、ハーフミラー19を透過して計測物体23に照射される。一方、分離された参照光は、NDフィルタ21を通過した後ミラー22により反射され、ペリクルビームスプリッタ17及び18によりCCDセンサ15及びCCDセンサ16に正面から入射する。これ以外の処理は、変位分布計測装置1と同一である。
【0077】
このように構成することにより、実施例1の変位分布計測装置1と同様に、光源が1つになるため光学系が簡素化でき、計測装置を小型化できるとともに、位相シフト回数が低減されるため計測物体23の変位分布及びひずみ分布を高速に計測できる。
【0078】
尚、実施例1及び2において、変位分布計測装置1及び2は2個の撮像装置15,16を有しているが、撮像装置を更に追加して構成することもできる。計測物体23から眺めた撮像素子(CCDセンサ)の構成例を図15に示す。(a)は4個のCCDセンサ(3a−1〜3a−4)をx,y方向に2個ずつ配置した例であり、このような構成により、計測物体23のx,y方向の変位の検出感度が均一になるとともに検出精度が向上する効果を有している。また、装置の配置都合に応じて、(a)の構成を(b)のように構成してもよい(3b−1〜3b−4)。(c)は3個のCCDセンサ(3c−1〜3c−3)を有する場合であり、装置全体の小型化を図ることが可能になる。(d)はCCDセンサを更に追加して8個(3d−1〜3d−8)とした例であり、計測物体23の変位の検出感度が向上するため低ノイズ化が可能となる。
【0079】
上記の実施例1及び2においては、図1及び14に示す各構成要素全体を一体化して可搬型の変位分布計測装置とし、例えば屋外に搬送して計測することができる。
【0080】
また、CCDセンサ15,16と変位解析装置24を別々に構成しているが、これらを1つの装置として一体化することもできる。
【0081】
更に、本発明の一態様として、変位分布計測装置1を、各装置として機能するコンピュータとしてそれぞれ構成させることができる。コンピュータに、前述した各構成要素を実現させるためのプログラムは、各コンピュータの内部又は外部に備えられる記憶部に記憶される。そのような記憶部は、外付けハードディスクなどの外部記憶装置、或いはROM又はRAMなどの内部記憶装置で実現することができる。各コンピュータに備えられる制御部は、中央演算処理装置(CPU)などの制御で実現することができる。即ち、CPUが、各構成要素の機能を実現するための処理内容が記述されたプログラムを、適宜、記憶部から読み込んで、各構成要素の機能をコンピュータ上で実現させることができる。ここで、各構成要素の機能をハードウェアの全部又は一部で実現しても良い。
【0082】
以上、具体例を挙げて本発明を詳細に説明してきたが、本発明の特許請求の範囲から逸脱しない限りにおいて、あらゆる変形や変更が可能であることは当業者に明らかである。例えば、撮像素子の数を増加して、3方向の変位を測定することも可能である。従って、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明によれば、複数の撮像素子を使用することにより光学系を簡素化して装置を小型化できるとともに、計測物体の変位分布やひずみ分布を高速に計測できるので、1)構造物の変位分布・ひずみ分布計測試験、2)鋼構造物、コンクリート構造物、樹脂・セラミック構造物等の構造物の欠陥検査、3)材料試験、4)マイクロマシンの材料試験・特性評価試験、等に有用である。
【符号の説明】
【0084】
1 変位分布計測装置
2 変位分布計測装置
3a−1〜3a−4,3b−1〜3b−4,3c−1〜3c−3,3d−1〜3d−8 CCDセンサ
11 レーザ光源
12 スペイシャルフィルタ
13 凸レンズ
14 ビームスプリッタ
15,16 CCDセンサ
17,18 ペリクルビームスプリッタ
19 ハーフミラー
20 ミラー付きPZTステージ
21 NDフィルタ
22 ミラー
23 計測物体
24 変位分布算出装置
24a 位相差解析機能
24b 変位解析機能
24c ひずみ解析機能

【特許請求の範囲】
【請求項1】
off−axis光学系における位相シフトデジタルホログラフィにより計測物体の変形による変位を計測する変位分布計測方法であって、
所定の波長のレーザ光を放射するステップと、
放射された前記レーザ光を、前記計測物体に照射するための物体光と、前記物体光との干渉縞を生成するための参照光とに分離するステップと、
前記参照光の位相を所定量だけシフトさせるステップと、
光軸が互いに平行である所定の数の撮像素子の各々に入射するために前記位相シフトされた参照光を複数に分岐するステップと、
前記計測物体により散乱された前記物体光と、分岐された各参照光との干渉縞を各撮像素子により撮像するステップと、
各撮像素子により撮像された前記干渉縞の各々から前記計測物体の再生像の複素振幅分布を算出し、前記計測物体の変形前後の当該複素振幅分布の位相差から前記計測物体の変位分布を計測するステップと、
を含むことを特徴とする変位分布計測方法。
【請求項2】
off−axis光学系における位相シフトデジタルホログラフィにより計測物体の変形による変位を計測する変位分布計測方法であって、
所定の波長のレーザ光を放射するステップと、
放射された前記レーザ光を、前記計測物体に照射するための物体光と、前記物体光との干渉縞を生成するための参照光とに分離するステップと、
前記物体光の位相を所定量だけシフトさせるステップと、
光軸が互いに平行である所定の数の撮像素子の各々に入射するために前記参照光を複数に分岐するステップと、
位相シフトされ、前記計測物体により散乱された前記物体光と、分岐された各参照光との干渉縞を各撮像素子により撮像するステップと、
各撮像素子により撮像された前記干渉縞の各々から前記計測物体の再生像の複素振幅分布を算出し、前記計測物体の変形前後の当該複素振幅分布の位相差から前記計測物体の変位分布を計測するステップと、
を含むことを特徴とする変位分布計測方法。
【請求項3】
得られた前記計測物体の変位分布からひずみ分布を求めるステップを更に含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の変位分布計測方法。
【請求項4】
前記撮像素子により撮像された前記干渉縞の各々に対して、当該干渉縞から得られた再生像の位置を調整するステップを更に含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の変位分布計測方法。
【請求項5】
off−axis光学系における位相シフトデジタルホログラフィにより計測物体の変形による変位を計測する変位分布計測装置であって、
所定の波長のレーザ光を発生する光照射手段と、
発生された前記レーザ光を前記計測物体に照射するための物体光と、前記物体光との干渉縞を生成するための参照光とに分離する分離手段と、
前記参照光の位相を所定量だけシフトさせる位相シフト手段と、
光軸が互いに平行である所定の数の撮像素子の各々に入射するために前記位相シフトされた参照光を複数に分岐する分岐手段と、
前記計測物体により散乱された前記物体光と、分岐された各参照光との干渉縞を各撮像素子により撮像する複数の撮像素子と、
各撮像素子により撮像された前記干渉縞の各々から前記計測物体の再生像の複素振幅分布を算出し、前記計測物体の変形前後の当該複素振幅分布の位相差から前記計測物体の変位分布を算出する変位分布算出手段と、
を備えることを特徴とする変位分布計測装置。
【請求項6】
off−axis光学系における位相シフトデジタルホログラフィにより計測物体の変形による変位を計測する変位分布計測装置であって、
所定の波長のレーザ光を発生する光照射手段と、
発生された前記レーザ光を前記計測物体に照射するための物体光と、前記物体光との干渉縞を生成するための参照光とに分離する分離手段と、
前記物体光の位相を所定量だけシフトさせる位相シフト手段と、
光軸が互いに平行である所定の数の撮像素子の各々に入射するために前記位相シフトされた参照光を複数に分岐する分岐手段と、
位相シフトされ、前記計測物体により散乱された前記物体光と、分岐された各参照光との干渉縞を各撮像素子により撮像する複数の撮像素子と、
各撮像素子により撮像された前記干渉縞の各々から前記計測物体の再生像の複素振幅分布を算出し、前記計測物体の変形前後の当該複素振幅分布の位相差から前記計測物体の変位分布を算出する変位分布算出手段と、
を備えることを特徴とする変位分布計測装置。
【請求項7】
得られた前記計測物体の変位分布からひずみ分布を求めるひずみ分布解析手段を更に備えることを特徴とする、請求項5又は6に記載の変位分布計測装置。
【請求項8】
前記撮像素子により撮影された前記干渉縞の各々に対して、当該干渉縞から得られた再生像の位置を調整する再生像位置調整手段を更に備えることを特徴とする、請求項5〜7のいずれか一項に記載の変位分布計測装置。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれか一項に記載の変位分布計測装置における前記変位分布算出手段として構成するコンピュータに、
各撮像素子により撮像された前記干渉縞の各々から前記計測物体の再生像の複素振幅分布を算出するステップと、
前記計測物体の変形前後の当該複素振幅分布の位相差から前記計測物体の変位分布を算出するステップと、
を実行させるための変位分布計測プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2011−59017(P2011−59017A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210972(P2009−210972)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り (1)平成21年8月5日公開 発行者:日本実験力学会 日本実験力学会2009年度年次講演会 講演論文集 第237ページ〜第240ページ (2)平成21年8月5日公開 主催者:日本実験力学会 日本実験力学会2009年度年次講演会で使用したスライドの写し
【出願人】(504145283)国立大学法人 和歌山大学 (62)
【Fターム(参考)】