説明

変速制御装置

【課題】変速制御装置において、アップシフトによる駆動トルクの低下を抑制してドライバビリティの向上を可能とする。
【解決手段】自動変速機32によるアップシフト前のエンジン回転数を検出する回転数検出手段と、記自動変速機32によるアップシフト後のエンジン回転数を推定する回転数推定手段と、アップシフト前の実回転数とアップシフト後の推定回転数とエンジン回転数に応じた機関最大トルクと基づいて自動変速機32によるアップシフトの許可と禁止を判定するアップシフト判定手段とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速制御装置に関し、特に、過給機付きの内燃機関にて、過給圧に応じてアップシフトの許可と禁止を判定する制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関に接続された自動変速機の変速制御装置では、一般的に、ドライバによるアクセルペダルの踏み込み操作に応じたアクセル開度(または、スロットル開度)と現在の車両の速度に応じて車両の目標駆動力が設定され、この目標駆動力に基づいてエンジン回転数と変速段が設定される。この自動変速機の変速制御装置にて、アップシフト変速領域が設定されている。即ち、ドライバがアクセルペダルを踏み込んで車両が加速しているとき、車両の速度の上昇に応じて、アップシフトする制御が実行される。
【0003】
このような自動変速機の変速制御装置としては、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載されたパワートレインの制御装置では、過給機による過給状態に応じてアップシフト禁止条件を変更している。具体的には、スロットル開度とエンジン回転数とに基づいた標準トルクと、吸入空気量とエンジン回転数とに基づいた実トルクとの差が所定値より大きい場合には、過給圧が増大していないものと推定し、アップシフトを禁止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−177488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来のパワートレインの制御装置では、過給機による過給状態が十分でないときには、アップシフトを禁止している。この過給機による過給状態が十分であるかどうかの判定条件として、スロットル開度とエンジン回転数とに基づいた標準トルクと、吸入空気量とエンジン回転数とに基づいた実トルクとの差、つまり、吸入空気量(過給圧)の増減遅れを用いている。
【0006】
ところが、過給機による過給状態が十分であったとしても、変速機がアップシフトされるとエンジン回転数が低下し、エンジンの低回転領域など排気ガス量が少なくて過給が効きにくい領域では、アップシフト後にエンジントルクが低下してドライバビリティが悪化してしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためのものであって、アップシフトによる駆動トルクの低下を抑制してドライバビリティの向上を可能とする変速制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の変速制御装置は、過給機を有する内燃機関の回転数を変速して出力可能な自動変速機を制御する変速制御装置において、前記自動変速機によるアップシフト前の前記内燃機関の回転数を検出する回転数検出手段と、前記自動変速機によるアップシフト後の前記内燃機関の回転数を推定する回転数推定手段と、アップシフト前の実回転数とアップシフト後の推定回転数と前記内燃機関の回転数に応じた機関最大トルクとに基づいて前記自動変速機によるアップシフトの許可と禁止を判定するアップシフト判定手段と、を備えることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の変速制御装置では、前記内燃機関から前記自動変速機に入力する変速機入力軸回転数を検出する変速機入力軸回転数検出手段と、前記内燃機関と前記自動変速機との間に設けられるトルクコンバータのスリップ量を検出するスリップ量検出手段とを設け、 前記回転数推定手段は、アップシフト前の変速機入力軸回転数とアップシフトにより変更されるギア比とに基づいてアップシフト後の変速機入力軸回転数を算出し、アップシフト後の変速機入力軸回転数にスリップ量を加算することで、アップシフト後の推定回転数を推定することを特徴としている。
【0010】
本発明の変速制御装置では、前記過給機の過給圧を検出する過給圧検出手段と、アップシフト前の実回転数と過給圧とに基づいて変速前駆動トルクを算出する変速前駆動トルク算出手段と、アップシフト後の推定回転数と機関最大トルクとに基づいて変速後駆動トルク最大値を算出する変速後駆動トルク算出手段とを設け、前記アップシフト判定手段は、変速前駆動トルクと変速後駆動トルク最大値との偏差が予め設定された所定値以上であるときに前記自動変速機によるアップシフトを禁止することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の変速制御装置によれば、自動変速機によるアップシフト前の内燃機関の実回転数と、自動変速機によるアップシフト後の内燃機関の推定回転数と、内燃機関の回転数に応じた機関最大トルクとに基づいて自動変速機によるアップシフトを禁止している。従って、アップシフトによる駆動トルクの低下を抑制してドライバビリティを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の一実施例に係る変速制御装置を表す概略構成図である。
【図2】図2は、本実施例の変速制御装置におけるアップシフト制御を表すフローチャートである。
【図3】図3は、アップシフト制御によるエンジン回転数に対するエンジントルクを表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る変速制御装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0014】
図1は、本発明の一実施例に係る変速制御装置を表す概略構成図、図2は、本実施例の変速制御装置におけるアップシフト制御を表すフローチャート、図3は、アップシフト制御によるエンジン回転数に対するエンジントルクを表すグラフである。
【0015】
本実施例の変速制御装置において、図1に示すように、内燃機関としてのエンジン11は、図示しないが、シリンダブロック上にシリンダヘッドが締結されて構成され、複数の気筒が配列されて形成され、この各気筒にピストンが昇降自在に嵌合し、各ピストンは、コネクティングロッドを介してクランクシャフトに連結されている。
【0016】
エンジン11の燃焼室(気筒)には、吸気ポートを介して吸気マニホールド12が連結され、この吸気マニホールド12にはサージタンク13を介して吸気管14が連結されている。この吸気管14は、空気取入口にエアクリーナ15が取付けられており、エアクリーナ15の下流側に位置してスロットル弁を有する電子スロットル装置16が設けられている。
【0017】
また、エンジン11の燃焼室(気筒)には、排気ポートを介して排気マニホールド17が連結され、この排気マニホールド17に排気管18が連結されており、この排気管18には、三元触媒19,20が装着されている。
【0018】
吸気管14及び排気管18には、ターボ過給機21が設けられている。このターボ過給機21は、吸気管14に設けられたコンプレッサ21aと排気管18に設けられたタービン21bとが駆動軸21cにより一体に連結されてなる。そして、このターボ過給機21におけるコンプレッサ21aの下流側の吸気管14には、このコンプレッサ21aにより過給されて温度が上昇した吸気を冷却するインタークーラ22が設けられている。
【0019】
なお、エンジン11の内部には、吸気ポートまたは燃焼室に燃料を噴射するインジェクタが装着されると共に、燃焼室の混合気に対して点火する点火プラグが装着されている。
【0020】
車両には、エンジンコントロールユニット(ECU)23が搭載されており、このECU23は、インジェクタによる燃料噴射量や噴射時期、点火プラグによる点火時期などを制御可能となっており、検出した吸入空気量、スロットル開度、エンジン回転数などのエンジン運転状態に基づいて燃料噴射量、噴射時期、点火時期などを決定している。
【0021】
即ち、吸気管14の上流側にはエアフローセンサ24が装着され、計測した吸入空気量をECU23に出力している。電子スロットル装置16にはスロットルポジションセンサ25が設けられ、現在のスロットル開度をECU23に出力している。クランクシャフトにはクランク角センサ26が設けられ、検出したクランク角度をECU23に出力し、ECU23はクランク角度に基づいてエンジン回転数を算出する。サージタンク13には、ターボ過給機21(コンプレッサ21a)により過給された吸気の過給圧を検出する過給圧センサ27が設けられ、検出した過給圧をECU23に出力している。また、アクセルペダルの踏み込み量に応じたアクセル開度を検出するアクセル開度センサ28が設けられており、検出したアクセル開度をECU23に出力している。
【0022】
このように構成されたエンジン11には、トルクコンバータ31を介して有段式の自動変速機32が連結されている。そして、自動変速機32は、出力側にプロペラシャフト33が連結され、このプロペラシャフト33にデファレンシャルギア34を介して左右のドライブシャフト35が連結され、このドライブシャフト35に左右の駆動輪36が連結されている。
【0023】
従って、エンジン11が駆動すると、その駆動力がクランクシャフトから出力され、トルクコンバータ31を介して自動変速機32の入力軸に入力され、ここで所定の変速比に減速される。そして、減速後の駆動力が自動変速機32の出力軸からプロペラシャフト33に出力され、このプロペラシャフト33からデファレンシャルギア34を介して左右のドライブシャフト35に伝達され、左右の駆動輪36を駆動回転することができる。
【0024】
この自動変速機32は、油圧制御装置37により油圧制御される。上述したECU23は、この油圧制御装置37を制御して自動変速機32を油圧制御することで、変速タイミングなどを制御可能となっている。即ち、自動変速機32には、入力軸回転数を検出する入力軸回転数センサ38が設けられており、検出した入力軸回転数をECU23に出力している。運転者が操作するシフトレバー装置には、操作位置、つまり、パーキング(P)、リバース(R)、ニュートラル(N)、ドライブ(D)を検出するシフトセンサ39が設けられ、検出した操作信号をECU23に出力している。車両には、速度を検出する車速センサ40が設けられており、検出した車速をECU23に出力している。
【0025】
従って、ECU23は、シフトセンサ39により、シフトレバー装置の操作位置がドライブ(D)にあるとき、運転者によるアクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)と車速に応じて、自動変速機32の変速を制御している。
【0026】
この場合、ECU23は、予め設定された変速マップ(変速線)に基づいて自動変速機32による変速制御を実行する。この変速マップは、例えば、縦軸をアクセル開度とし、横軸を車速としたものであり、車両の走行状態としてのアクセル開度及び車速と、自動変速機32の変速段の目標値である目標変速段との対応関係を定めたものである。つまり、ECU23は、アクセル開度と車速に応じて複数の変速段の切り替えタイミングが設定され、アップシフト制御やダウンシフト制御を実行する。
【0027】
そして、本実施例の変速制御装置では、自動変速機32によるアップシフト前のエンジン11の回転数を検出する回転数検出手段と、自動変速機32によるアップシフト後のエンジン11の回転数を推定する回転数推定手段と、アップシフト前の実回転数とアップシフト後の推定回転数とエンジン回転数に応じたエンジン最大トルクとに基づいて自動変速機によるアップシフトの許可と禁止を判定するアップシフト判定手段とを設けている。
【0028】
本実施例にて、回転数検出手段は、ECU23及びクランク角センサ26が機能し、回転数推定手段は、ECU23が機能し、アップシフト判定手段は、ECU23が機能する。また、エンジン回転数に応じたエンジン最大トルクは、エンジン11の設計値であり、予め設定されている。
【0029】
この場合、エンジン11から自動変速機32に入力する変速機入力軸回転数を検出する変速機入力軸回転数検出手段と、エンジン11と自動変速機32との間に設けられるトルクコンバータ31のスリップ量を検出するスリップ量検出手段とを設け、回転数推定手段としてのECU23は、アップシフト前の変速機入力軸回転数とアップシフトにより変更されるギア比とに基づいてアップシフト後の変速機入力軸回転数を算出し、アップシフト後の変速機入力軸回転数にスリップ量を加算することで、アップシフト後の推定回転数を推定している。
【0030】
本実施例にて、変速機入力軸回転数検出手段は、入力軸回転数センサ38が機能する。また、スリップ量検出手段は、トルクコンバータ31の作動状態に応じて異なるスリップ量を設定する。即ち、トルクコンバータ31は、ロックアップ機構を有していることから、ロックアップON時と、フレックスロックアップ時と、ロックアップOFF時でスリップ量が異なる。ロックアップON時は、エンジン11のクランクシャフトと自動変速機32の入力軸が直結状態になることから、スリップ量は0となる。フレックスロックアップ時は、トルクコンバータ31(ロックアップクラッチ)を所定の回転数で定常的に滑らせて使用することから、スリップ量は設定値となる。ロックアップOFF時は、トルクコンバータ31(ロックアップクラッチ)が車両の走行状態に応じて滑らせて使用することから、スリップ量は初期値を0とし、マップにより求める。このマップは、アクセル開度と変速機入力軸回転数とに応じてスリップ量を設定するものであり、データを学習制御により蓄積していく。
【0031】
また、本実施例の変速制御装置では、ターボ過給機21の過給圧を検出する過給圧検出手段と、アップシフト前の実回転数と過給圧とに基づいて変速前駆動トルクを算出する変速前駆動トルク算出手段と、アップシフト後の推定回転数と機関最大トルクとに基づいて変速後駆動トルク最大値を算出する変速後駆動トルク算出手段とを設け、アップシフト判定手段としてのECU23は、変速前駆動トルクと変速後駆動トルク最大値との偏差が予め設定された所定値以上であるときに自動変速機32によるアップシフトを禁止している。
【0032】
この場合、過給圧検出手段は、過給圧センサ27が機能し、変速前駆動トルク算出手段、変速後駆動トルク算出手段は、ECU23が機能する。
【0033】
ここで、本実施例の変速制御装置におけるアップシフト制御について、図2のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0034】
本実施例の変速制御装置におけるアップシフト制御において、図2に示すように、ステップS11にて、ECU23は、車速とアクセル開度を読込み、ステップS12にて、アップシフトの判断を行う。このアップシフトの判断とは、前述した変速マップ(車速−アクセル開度−変速段)を用い、アップシフトが必要であるかを判定する。ここで、アップシフトが必要でないと判定されたら、何もしないでこのルーチンを抜ける。
【0035】
一方、ステップS12にて、アップシフトが必要であると判定されたら、ステップS13にて、ECU23は、アクセル開度の変化量が0以上かどうかを判定する。ここで、アクセル開度の変化量が0以上でないと判定されたら、何もしないでこのルーチンを抜ける。一方、アクセル開度の変化量が0以上であると判定されたら、ステップS14に移行する。
【0036】
ステップS14にて、ECU23は、アップシフト(変速)前、つまり、現在のエンジン回転数(実回転数)と現在の過給圧を読込み、ステップS15にて、アップシフト(変速)後のエンジン回転数(推定回転数)を算出する。この場合、ECU23は、アップシフト前の変速機入力軸回転数とアップシフトにより変更されるギア比とに基づいてアップシフト後の変速機入力軸回転数を算出し、アップシフト後の変速機入力軸回転数にスリップ量を加算することで、アップシフト(変速)後のエンジン回転数(推定回転数)を算出する。なお、スリップ量、トルクコンバータ31の作動状態に応じて設定する。
【0037】
そして、ステップS16にて、アップシフト(変速)前のエンジントルクと、アップシフト(変速)後のエンジントルク最大値を算出する。この場合、アップシフト前のエンジン回転数と過給圧とに基づいてアップシフト(変速)前駆動トルクを算出する。また、アップシフト後のエンジン回転数と機関最大トルクとに基づいてアップシフト(変速)後駆動トルクを算出する。この場合、エンジン11の設計値に基づいて、回転数に応じた最大トルクが設定されており、ECU23は、これを、例えば、マップとして記憶している。
【0038】
ステップS17にて、ECU23は、アップシフト前駆動トルクとアップシフト後駆動トルク最大値との偏差(差分)が予め設定された所定値aより小さいかどうかを判定する。ここで、アップシフト前駆動トルクとアップシフト後駆動トルク最大値との偏差が所定値aより小さいと判定されたら、アップシフト後駆動トルクの低下が大きくないため、ステップS18にて、自動変速機32によるアップシフトを許可する。一方、アップシフト前駆動トルクとアップシフト後駆動トルク最大値との偏差が所定値a以上であると判定されたら、アップシフト後駆動トルクの低下が大きいため、ステップS19にて、自動変速機32によるアップシフトを禁止する。
【0039】
即ち、アップシフト前駆動トルクに対して、アップシフト後駆動トルク最大値がそれほど低くないときには、自動変速機32によるアップシフトを実行しても車両のトルク変動が少ないため、このアップシフトを許可する。一方、アップシフト前駆動トルクに対して、アップシフト後駆動トルクが低いときには、自動変速機32によるアップシフトを実行すると車両のトルク変動が大きいため、このアップシフトを禁止する。
【0040】
図3のアップシフト制御によるエンジン回転数(rpm)に対するエンジントルク(Nm)を表すグラフで詳細に説明する。図3のグラフにて、横軸はエンジン回転数、縦軸はエンジントルクであり、最大エンジントルク(機関最大トルク)が設定されると共に、エンジン11が発揮できるエンジントルクの領域が過給圧−40〜80kPaに応じて区画されている。
【0041】
このグラフからわかるように、アップシフト前駆動トルクT1(□)に対して、アップシフト後駆動トルク最大値T2(△)を推定すると、アップシフト後は、エンジン回転数が低下すると共に過給圧が低下し、且つ、最大エンジントルクにより規定されることから、アップシフト後駆動トルク最大値T2(△)は低下することとなり、この場合、アップシフトを禁止する。
【0042】
一方、アップシフト前駆動トルクT3(□)に対して、アップシフト後駆動トルク最大値T4(○)を推定すると、アップシフト後は、エンジン回転数が低下するものの、過給圧が低下することはなく、且つ、最大エンジントルクが十分に高いことから、アップシフト後駆動トルク最大値T4(○)は低下することはなく、この場合、アップシフトを許可する。なお、アップシフト後駆動トルク最大値T4(○)は、最大エンジントルクに依存することで、過給圧が80を超えるが、実際に、アップシフト後駆動トルクは、アップシフト後のアクセル開度(スロットル開度)に依存することから、アップシフト後駆動トルクT5(○)となる。
【0043】
このように本実施例の変速制御装置にあっては、ターボ過給機21を有するエンジン11の回転数を変速して出力可能な自動変速機32を制御するように構成し、自動変速機32によるアップシフト前のエンジン回転数を検出する回転数検出手段と、自動変速機32によるアップシフト後のエンジン回転数を推定する回転数推定手段と、アップシフト前の実回転数とアップシフト後の推定回転数とエンジン回転数に応じた機関最大トルクとに基づいて自動変速機32によるアップシフトの許可と禁止を判定するアップシフト判定手段とを設けている。
【0044】
従って、エンジントルクが機関最大トルクにより規定されることで、アップシフト前後のエンジン回転数と機関最大トルクとに基づいてアップシフト後のトルク変動が推定されることから、この構成により自動変速機32によるアップシフトの許可と禁止を適正に判定することができ、アップシフトによる駆動トルクの低下を抑制してドライバビリティの向上を可能とすることができる。
【0045】
また、本実施例の駆動力制御装置では、アップシフト前の変速機入力軸回転数とアップシフトにより変更されるギア比とに基づいてアップシフト後の変速機入力軸回転数を算出し、アップシフト後の変速機入力軸回転数にスリップ量を加算することで、アップシフト後の推定回転数を推定している。従って、アップシフト後の推定回転数を高精度に検出することができる。
【0046】
また、本実施例の駆動力制御装置では、アップシフト前の実回転数と過給圧とに基づいて変速前駆動トルクを算出し、アップシフト後の推定回転数と機関最大トルクとに基づいて変速後駆動トルク最大値を算出し、変速前駆動トルクと変速後駆動トルク最大値との偏差が予め設定された所定値以上であるときには、自動変速機32によるアップシフトを禁止している。従って、アップシフト後の駆動トルクが低下すると推定されるときには、アップシフトを禁止することで、アップシフトによる駆動トルクの低下を抑制してドライバビリティの向上を可能とすることができる。
【0047】
なお、上述した実施例では、アップシフト前のエンジン回転数と過給圧とに基づいて変速前駆動トルクを算出したが、過給圧に代えて、スロットル開度、吸入空気量などを適用してもよい。また、アップシフト後のエンジン回転数と機関最大トルクとに基づいて変速後駆動トルク最大値を算出したが、アップシフト後のエンジン回転数と機関最大トルクに加えて、スロットル開度を加えて変速後駆動トルク最大値を算出してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上のように、本発明に係る変速制御装置は、アップシフト前の実回転数とアップシフト後の推定回転数と機関最大トルクとに基づいてアップシフトの許可と禁止を判定することで、アップシフトによる駆動トルクの低下を抑制してドライバビリティの向上を可能とするものであり、いずれの車両に適用しても有用である。
【符号の説明】
【0049】
11 エンジン(内燃機関)
21 ターボ過給機
23 電子制御ユニット、ECU(回転数検出手段、回転数推定手段、アップシフト判定手段、スリップ量検出手段、変速前駆動トルク算出手段、変速後駆動トルク算出手段)
26 クランク角センサ(回転数検出手段)
27 過給圧センサ(過給圧検出手段)
31 トルクコンバータ
32 自動変速機
37 油圧制御装置
38 入力軸回転数センサ(変速機入力軸回転数検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過給機を有する内燃機関の回転数を変速して出力可能な自動変速機を制御する変速制御装置において、
前記自動変速機によるアップシフト前の前記内燃機関の回転数を検出する回転数検出手段と、
前記自動変速機によるアップシフト後の前記内燃機関の回転数を推定する回転数推定手段と、
アップシフト前の実回転数とアップシフト後の推定回転数と前記内燃機関の回転数に応じた機関最大トルクとに基づいて前記自動変速機によるアップシフトの許可と禁止を判定するアップシフト判定手段と、
を備えることを特徴とする変速制御装置。
【請求項2】
前記内燃機関から前記自動変速機に入力する変速機入力軸回転数を検出する変速機入力軸回転数検出手段と、前記内燃機関と前記自動変速機との間に設けられるトルクコンバータのスリップ量を検出するスリップ量検出手段とを設け、
前記回転数推定手段は、アップシフト前の変速機入力軸回転数とアップシフトにより変更されるギア比とに基づいてアップシフト後の変速機入力軸回転数を算出し、アップシフト後の変速機入力軸回転数にスリップ量を加算することで、アップシフト後の推定回転数を推定することを特徴とする変速制御装置。
【請求項3】
前記過給機の過給圧を検出する過給圧検出手段と、アップシフト前の実回転数と過給圧とに基づいて変速前駆動トルクを算出する変速前駆動トルク算出手段と、アップシフト後の推定回転数と機関最大トルクとに基づいて変速後駆動トルク最大値を算出する変速後駆動トルク算出手段とを設け、
前記アップシフト判定手段は、変速前駆動トルクと変速後駆動トルク最大値との偏差が予め設定された所定値以上であるときに前記自動変速機によるアップシフトを禁止することを特徴とする請求項1または2に記載の変速制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−210042(P2010−210042A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58138(P2009−58138)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】