説明

外燃機関用タービン

【課題】
熱媒体の選択により過熱行程を省略し、潜熱を利用することで低温での運転を可能とした外燃機関において、気相媒体の流動によるエネルギーを効率良く動力に変換することが出来る外燃機関用タービンを提供するものである。
【解決手段】
閉塞暗渠断面の湾曲した流路を格子状に設けたことにより、気相熱媒体の噴射による運動エネルギーを外部気体の影響を受けずに効率良く動力に変換することが出来るものである。 所謂遠心型のタービンと軸流型のタービンの両方に応用することが出来る外燃機関用タービンを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機関内部での燃焼を行なわず、外部から供給される熱エネルギーによって動くと言う意味で、いわゆる外燃機関に類するものに使用するタービンに関するものである。 熱媒体への外部からの熱量の授受により液体と気体とに変化することを利用することで、気相状態における大きな体積から生じる流動エネルギーによってタービンを駆動し、冷却されて液相状態となり体積が小さくなった熱媒体をポンプで循環する方式のいわゆるランキンサイクルを応用した外燃機関においては、従来から加熱によって気化した媒体を更に高温で過熱することでタービンに噴射して動力を得る行程で液化することによる動力の損失を防止している。 しかしこの過熱行程には高温の熱源が必要であり、この種の熱サイクルが低温で作動することを困難にしてきた。 この欠点を改善する為に本出願人が出願中の外燃機関では分子量の大きな熱媒体を使用することで過熱行程を省略できることが可能となり、低温での高効率動作が可能となった。 本発明はこのような方式の外燃機関に適したタービンを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のタービンはガスタービン方式のように比較的大量の気体を円筒状の流路に噴出し、軸流タービン又は遠心タービンと呼ばれる構造で動力を得ていた。 これに対して上記のごとき外燃機関では気相媒体を循環して使用するために比較的噴出量が少なく、円周の数箇所のノズルから噴出する気相媒体によって駆動するものが多い。 この場合、水力機械に使用されるペルトン型に類するものが想定されるが噴出するものが気体である為に水車と同様の形状では周囲の気体から受ける抵抗で気相媒体の噴出時の運動エネルギーがすぐに失われてしまい効率良く動力を取り出すことが出来ない。 また、外周部から吹き込んだ気相流体を中心部から抜き出す方式のものはこのタービンが回転することによるポンプ効果によって流体を逆流させる方向の遠心力が働き、本来のタービン機能を大きく損なう結果をもたらすものとなる。 このような欠点を改善する為には本出願人が別途出願中の外燃機関の動力機構がある。 本発明は更に別の観点からこの課題を解決するものである。
【0003】
上記説明における本出願人の下記出願特許がある。
【特許文献1】特願 2008−080682号
【特許文献1】特願 2008−323516号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記背景の下に成立したものであり、その課題は気相媒体の流動によるエネルギーを効率良く動力に変換することが出来る外燃機関用タービンを提供するものである。 ペルトン型タービンを基に気相媒体への応用に適したものとすることが出来る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の手段は、回転軸に固定して設けた円板状のハブは断熱性の材料で製作され外周部に複数の方形閉塞暗渠断面の湾曲した流路を格子状に設けた外燃機関用タービンを提供するものである。湾曲流路の方向はハブの半径方向を向いたものと、回転軸と平行な方向を向いたものとの両方が可能である。
【0006】
本発明の第2の手段は、流路の断面が六角形である上記構造の外燃機関用タービンを提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の外燃機関用タービンは閉塞暗渠断面の湾曲した流路を格子状に設けたことにより、気相熱媒体の噴射による運動エネルギーを外部気体の影響を受けずに効率良く動力に変換することが出来るものである。 所謂遠心型のタービンと軸流型のタービンの両方に応用することが出来る。
【0008】
また、ハブを断熱性の材料で製作することによって熱エネルギーの放出を防止し、噴出した気相媒体がタービンの羽根との温度差によって接触時に冷却されて液化することを防止することが出来るものである。
【0009】
更に湾曲した流路を外周部に設け、中心部へ流体の移動を制限したことによりのタービンの回転によって生じる回転ポンプ効果を最小限にして回転トルク損失を最小限に押えることが出来る。
【0010】
以上の説明で明らかなごとく、本発明の外燃機関用タービンは気相熱媒体の噴射による運動エネルギーを効率良く動力に変換することが出来るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の外燃機関用タービンの構造は回転軸に固定して設けた円板状のハブは断熱性の材料で製作され外周部に複数の閉塞暗渠断面の湾曲した流路を格子状に設たものである。
【0012】
流路の断面は方形又は六角形であることが望ましく、湾曲した流路はハブの半径方向に向いているものとハブの回転軸と平行な方向に向いているもののどちらにも適用することが出来る。
【実施例】
【0013】
以下図について本発明の実施例について説明する。
図1は本発明の一実施例の構造を示す側断面図であり、図2はそのA−A矢視平断面図、図3はその部分詳細斜視図である。
図1、図2及び図3において、密閉容器1に回転自在に軸支された回転軸2にはハブ3が固着されている。該ハブ3は薄いステンレス製の板で形成されており、外周部には閉塞暗渠断面を有する半径方向に向けて湾曲した複数のタービン流路4を格子状に設けている。 回転軸2の一方の端部には円周上に複数の極を有するごとく着磁された永久磁石5を固着し、密閉容器1の円筒部6を介して外部の発電機を駆動する磁気クラッチを形成している。 又、回転軸2の他方の端部には円周上に複数の極を有するごとく着磁された永久磁石7を固着し、密閉容器1の円筒部8を介して外部の循環ポンプを駆動する磁気クラッチを形成している。 9は図示しない加熱部で加熱されて気相状態となった熱媒体をタービン流路4の入口10に向けて回転方向に向けて斜めに噴出する噴出口であり、円周上に複数個配置しても良い。11はタービン流路4の出口12から排出された気相熱媒体を図示しない放熱部に送り込む為の排気口である。 タービン流路4の断面は円周方向の壁と軸方向の壁とで形成された方形を成している。 排気口11から排出された気相熱媒体は図示しない放熱部において冷却されて液化し、前述の永久磁石7によって形成される磁気クラッチによって駆動される外部循環ポンプによって加熱部に送られる。
【0014】
格子状に形成されたタービン流路4の断面の大きさは噴出口9の直径と同等かやや小さく形成されていることが望ましい。 また、軸方向に重なる段数は3段以上であることが望ましい。 タービン流路が閉塞暗渠断面を有するごとく形成されている理由は噴出口から噴出した気相媒体が他の部分及び気体に接触することなく、また、流路断面の拡大によって流速が減少して運動エネルギーを失うことなく、入口10から出口12まで高速で通過することが出来るようにするためのものである。 また、一般に温度変化に起因する寸法変化によってタービン流路4と噴出口9の位置はある程度軸方向にずれることが想定されるがタービン流路4を複数段重ねて形成することでこのずれによって生ずる気相媒体の無駄な放出を防止し、すべての気相媒体を有効に利用する為のものである。 流路4の長さはハブ3の半径の1/3以下であることが望ましい。
【0015】
永久磁石5、7と円筒部6、8によって構成された磁気クラッチは本発明に直接関係は無いが、密閉容器1の漏れを完全に遮断する為に必要なものである。 回転軸2が外部に露出している構造では長期間の密閉は困難であり、回転部のシールによる摩擦抵抗は性能悪化の大きな原因になる。 クラッチのON、OFFは外部での公知の操作で行うことが出来る。
【0016】
図4は本発明の他の実施例の構造を示す部分詳細斜視図である。
図4においてタービン流路21の断面は六角形の蜂の巣状に形成されている。このような形状にすることによって流路4のコーナーでの接触角を大きくして気相媒体と接触する壁との部分的な摩擦を最小にすることが出来るので、全体としての摩擦損失を最小にすることが出来る。
【0017】
図5は本発明の他の実施例の構造を示す側断面図である。
図5において湾曲したタービン流路31の入口32及び出口33の方向は回転軸2と直角な面に並行に向いており、流路31は回転軸2に並行な方向を向いている。 噴出口34は入口33に接近して回転軸2に対して捻れた方向を向くごとくに配置されている。 この実施例においては入口32と噴出口34とが所定のクリアランスを維持できるようにハブ3の軸方向の位置のずれを防止する設計的な配慮が必要であるが、前述のごときハブ3の回転による遠心ポンプ効果を受けないので有利な面がある。 流路31の断面形状は方形と六角形の両方に対応することが出来る。
【0018】
上記構造の外燃機関用タービンの実施例においてその作用を説明する。
図1、図2及び図3において、噴出口9から回転方向に向けて斜めに噴出する気相媒体を入口10に受けてハブ3が回転する。 気相媒体は湾曲したタービン流路4のなかで方向を変えて出口12から排出する間に運動エネルギーをハブ3に伝えた後、排気口11から図示しない放熱部に向けて排出される。この間に通過するタービン流路4は閉塞暗渠断面を有するものである為に、気相媒体は外部の気体と接すること無しに流路断面積も大きく変化することが無い。 一般に開放された空間に噴出された気体は放射状に広がりその噴出面積の増加に反比例して噴出速度を失う。 従って、仮にタービン流路4が閉塞暗渠断面を持つものではないと気相媒体の運動エネルギーはハブ3に充分に伝わる前に失われてしまい、結果的にタービンとしての効率が低下する。 流路4の断面積は理想的には噴出口9と同一であることが望ましいが両者の、回転軸2の方向の位置関係を完全に一致させることは実質的に困難であり、多少のずれを容認せざるを得ない。その場合、流路4の入口10で分割された気相媒体が夫々の流路4のなかでスムーズに流れるためには不用意に断面積が広がることを防がなければならない。従って流路4の断面積は噴出口9の断面積乃至はその1/2程度が望ましいものである。 逆に流路面積があまり小さいと気相媒体が接触する流路の壁面積が相対的に増加し、摩擦損失の増加の原因となる。 また、同様の理由から軸方向に重なる段数は3段以上であることが望ましい。
【0019】
また、本発明における流路4はハブ3の半径の1/3以下であることが望ましい。 流路が大きなカーブを描いてその出口がハブの中心部にあるごとき構造のものでは、ハブが高速で回転したときに発生する遠心力が気相媒体を逆に押し戻す力となって入口から気相媒体が吹き込まれるのを妨げてしまい、スムーズな流れを阻害することになる。
【0020】
尚、噴出口9から噴出される気相媒体は流路4よりも高温である。 熱媒体の選択により単に断熱膨張しただけでは液化しないように配慮されているが、外部から熱を奪われると液化して急激に体積が減少し、同時に運動エネルギーを失ってしまう。 実施例においてハブ3は噴出後の気相媒体の中で高速回転しているので噴出直後の熱媒体より温度が低くなっている。 その温度がタービン流路4からハブ3に伝わりやすいと気相媒体の熱が奪われ上述の不具合が生じる。 従って、ハブ3は流路4からの熱が伝わりにくい断熱性の材料(たとえばステンレス鋼)で製作されていることが望ましい。
【0021】
更に、図4に示す実施例では流路21の断面形状は六角形の蜂の巣状に形成されている。 このような形状にすることによって流路4のコーナーでの接触角を大きくして気相媒体と接触する壁との部分的な摩擦を最小にすることが出来るので、全体としての摩擦損失を最小にすることが出来る。 方形の場合と比べて六角形の方がやや効率が良いが、製造工程での制約を受けることがある。
【0022】
更に又、図5における実施例において流路31は回転軸2に並行な方向を向いているものである。 このような実施例においては噴出口34と流路31の位置ずれはハブ3の回転方向に許容範囲を持つ。 その代わり軸方向には厳密な位置決めが必要である。ハブ3の回転数が極めて速い場合は前述のごときハブ3の回転による遠心ポンプ効果を受けないのでその優位性が大きくなる。
【0023】
以上の説明で明らかなごとく、本発明の外燃機関の動力機構は、いわゆるランキンサイクルを応用した外燃機関において、特に熱媒体の選択によって過熱行程を無くし、潜熱のみで作動する方式により低温での運転を可能にした外燃機関に適したタービンであり、その効率の向上に極めて有効なものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施例の構造を示す側断面図である。
【図2】本発明の一実施例の構造を示すA−A矢視平断面図である。
【図3】本発明の一実施例の構造を示す部分詳細斜視図である。
【図4】本発明の他の実施例の構造を示す部分詳細斜視図である。
【図5】本発明の他の実施例の構造を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1:密閉容器
2:回転軸
3:ハブ
4、21、31:流路
5、7:永久磁石
6、8:円筒部
9、34:噴出口
10、32:入口
11:排気口
12、33:出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に固定して設けた円板状のハブは断熱性の材料で製作され外周部に複数の閉塞暗渠断面の湾曲した流路を格子状に設けたことを特徴とする外燃機関用タービン。
【請求項2】
流路の断面が方形であることを特徴とする請求項1記載の外燃機関用タービン。
【請求項3】
流路の断面が六角形であることを特徴とする請求項1記載の外燃機関用タービン。
【請求項4】
湾曲した流路がハブの半径方向に向いていることを特徴とする請求項1記載の外燃機関用タービン。
【請求項5】
湾曲した流路がハブの回転軸と平行な方向に向いていることを特徴とする請求項1記載の外燃機関用タービン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−64085(P2011−64085A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213273(P2009−213273)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000189589)
【Fターム(参考)】