説明

多元成膜法

【課題】あらかじめ決められた化合物、たとえば蛍光体の薄膜を基板上に成膜する方法。
【解決手段】その化合物は、3元、4元またはより高次の化合物、特に周期表のグループIIAおよびIIBの少なくとも1つの元素のチオアルミン酸塩、チオ没食子酸塩およびチオインデートからなるグループから選ばれた化合物である。実施例において、この方法は、少なくとも1つの硫化物のペレットを第1のソースの上に置き、少なくとも1つの硫化物のペレットを第2のソースの上に置き、1つのペレットに不純物が含まれているものである。基板への蒸着は各々別の電子ビームを使って実施する。硫化物の蒸発率は各々別に遮断された膜率モニタで監視する。基板上に化合物を生成するためにソースの温度を制御する。この方法は、とくにエレクトロルミネセントディスプレイにおいて、ほぼ不透明の基板上に3元または4元の蛍光体を成膜するために使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なるソースから供給された構成成分からなる、3元、4元などの化合物の成膜、特に蛍光体物質の成膜法に関するものである。特に、それらの化合物は、チオアルミン酸塩、チオ没食子酸塩またはグループIIAおよびグループIIBのチオインデートである。そのような化合物を形成する硫化物のソースは異なっている。望ましい成膜法のひとつは電子ビーム蒸着法である。特定の態様としては、本発明は蛍光体物質、特に高誘電率の厚膜誘電体層を利用したフルカラーacエレクトロルミネセントディスプレイに使われるものの輝度と発光スペクトルの改良方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
薄膜エレクトロルミネセント(TFEL)ディスプレイは良く知られており、ガラス基板上に作られることが多い。しかし、特許文献1に例示された、セラミック基板上に作られた厚膜誘電体層を利用した薄膜蛍光体を使ったエレクトロルミネセントディスプレイは、より高い輝度とより優れた信頼性をもたらす。
【0003】
厚膜誘電体の構造は、誘電破壊に対する優れた抵抗力を提供し、また、作動電圧が低い。セラミック基板の上に堆積された厚膜誘電体構造は、ガラス基板上に成膜されたTFELデバイスに比べて高い処理温度に耐える。高温に対する抵抗力が高いことは、輝度の改良のため蛍光体膜を高温で処理するうえで有利である。しかし高い輝度が得られてはいるが、厚膜誘電体層を利用したエレクトロルミネセントディスプレイには、陰極管(CRT)ディスプレイと十分に競合するために必要な蛍光体輝度と色座標がまだ不十分である。さらに、最近のCRTの仕様は輝度を上げ、色温度を上げる傾向にある。エレクトロルミネセントディスプレイの作動電圧を上げることによっていくらかの改良は可能であるが、これはディスプレイの電力消費の増加を招き、信頼性を下げ、ディスプレイの電子部品のコスト増加をもたらす。
【0004】
フルカラーエレクトロルミネセントディスプレイには赤、緑、青色のサブピクセルを必要とする。各サブピクセルの必要な色調節を得るためには、光学フィルタが必要である。したがって、光学フィルタによるピクセルの各色の発光スペクトルの減衰を最小にするためには、各サブピクセルに使われる薄膜蛍光体材料をパターン化しなければならない。分解能が比較的低いディスプレイについては、シャドウマスクを介して蛍光体物質を堆積させることにより、必要なパターン化が可能である。分解能の高いディスプレイの場合は、シャドウマスクでは十分な精度が得られないので、写真平板法を使用しなければならない。写真平板技法には、必要なパターンをつくるためにフォトレジスト膜の堆積と、蛍光体の膜部分をエッチングないしリフトオフすることと、が必要である。
【0005】
フォトレジスト膜の堆積と除去および蛍光体膜のエッチングないしリフトオフには、通常、水を含む溶剤またはプロトン性溶剤などを使用する必要が生じる。硫化ストロンチウムのような蛍光体物質は加水分解による影響を受けやすく、水やプロトン性溶剤は蛍光体物質の性能を劣化することがある。
【0006】
蛍光体物質中の欠陥は青色サブピクセルに使われる蛍光体においてもっとも著しく、赤色と緑色のサブピクセルの領域に関係する青色サブピクセルの領域を増加させることによってある程度補償することができる。しかしそのような設計変更には、赤と緑の蛍光体物質に使われる蛍光体物質の性能向上とディスプレイの作動電圧の上昇が求められる。作動電圧が高いとディスプレイの電力消費の増大、信頼性の低下、ディスプレイの電子部品のコストアップを招く。
【0007】
青色用にセリウムで活性化された硫化ストロンチウム、赤色と緑色用にマンガンで活性化された硫化亜鉛というのが、従来フルカラーディスプレイに用いられている蛍光体物質である。赤、緑および青のサブピクセルのために必要な色座標を得るためには、これらの蛍光体物質からの発光を適切な有色フィルタに通さなければならず、その結果、輝度とエネルギー効率の低下を招く。マンガンで活性化された硫化亜鉛は、10ワットの入力に対して10ルーメンという、比較的高い電気から光学エネルギーへの変換効率を持っており、セリウムで活性化された硫化ストロンチウムは青色発光において1ワットあたり1ルーメンというエネルギー変換効率を持っている。しかし、これらの蛍光体物質の発光スペクトルは非常に広く、硫化亜鉛をベースとする蛍光体物質は緑から赤までの色彩スペクトルをカバーし、一方、硫化ストロンチウムをベースとする物質は青から緑までの範囲をカバーする。したがって、適切な色座標を得るために光学フィルタの使用が必要になる。セリウムで活性化された硫化ストロンチウム蛍光体の発光スペクトルは、堆積条件を少し調節することによって青色側にいくらかは移すことができるが、光学フィルタを不要とするほどではない。
【0008】
青色サブピクセルのための色座標を提供するように調節された、狭い発光スペクトルの幅を持つ代替青色蛍光体物質が検討されている。これらの中には、良好な青色色座標を持つが、輝度が低く安定性も悪いアルカリアースチオ没食子酸塩化合物を含んでいる。ホスト物質が3元化合物なので、蛍光体膜の化学量論的組成(ストイキオメトリ)を制御することは比較的に困難である。ユーロピウムで活性化されたバリウムチオアルミン酸塩は優れた青色座標と高い輝度を提供するが、これもまた化学量論的組成を制御することが困難な3元化合物である。
【0009】
ユーロピウムで活性化されたバリウムチオアルミン酸塩の、シングルソースペレットからスパッタリングまたは電子ビーム蒸発による蛍光体膜の真空蒸着の結果、高い輝度のものが得られなかった。2つのソースペレットにより、ホッピング電子ビーム蒸着法を使って成膜した結果、バリウムチオアルミン酸塩の輝度を改善することができた。堆積された膜の化学量論的組成は、2つのソース物質をたたく電子ビームの滞留時間を制御することによって制御される。しかし、この方法には広い面積を持つディスプレイの商業生産には簡単に応用できないこと、また、作業中にペレットが消耗するゆえに発生する2つのソースからの蒸発率の変化を補償することができないという問題がある。
【0010】
透明基板の上に硫化亜鉛の薄膜を成膜する方法が、コバヤシシロウらによる特許文献2によって開示された。
【特許文献1】米国特許5,432,015
【特許文献2】JP63−259067
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
化合物、特に蛍光体の化合物を使った成膜法において、圧膜誘電体を利用してエレクトロルミネセントディスプレイにおける蛍光体物質の輝度と発光スペクトルの改善とを図ることは、高い利用度が考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
化合物、特に3元およびその他の化学的に複雑な蛍光体化合物の成膜方法を発見した。
本発明の1つの態様は、1つのあらかじめ定められた化合物、すなわち、3元、4元またはより高次の化合物の薄膜を基板上に成膜する方法であり、下記のステップから成るものである:
(i)少なくとも1種類の硫化物のペレットを第1のソースに置き、少なくとも1種類の硫化物のペレットを第2のソースに置くこと、その場合第1と第2のソース上の硫化物は互いに異なり、少なくとも第1と第2のソース上の一方の硫化物は化合物に対する不純物を含む;
(ii)別々の電子ビームで第1と第2のソース上のペレットを同時に蒸発させることにより、前記基板上の前記化合物の蒸着を実施すること;および
(iii)第1のソース上の硫黄の蒸発率を第1の被膜率モニタでモニタし、第2のソース上の硫黄の蒸発率を第2の被膜率モニタでモニタすること、その場合、第1の被膜率モニタは第2のソースからの硫化物の蒸着から遮蔽され、第2の被膜率モニタは第1のソースからの硫化物の蒸着から遮蔽されているものとする。
【0013】
本発明の1つの望ましい実施例においては、前記第1と第2の被膜率モニタはそれぞれのソースに対して、基板からそれらのソースまでの距離にほぼ等しい距離に置かれている。
【0014】
本発明の別の実施例においては、前記第1と第2のソースの温度が制御されている。第1と第2の被膜率モニタの温度はモニタされ、制御されることが望ましい。
【0015】
本発明のさらに別の実施例においては、化合物は蛍光体薄膜または誘電体薄膜である。
【0016】
本発明のさらに別の望ましい実施例においては、前記の化合物が3元、4元および高次の化合物からなるグループから選択されたものであることが好ましい。これら3元、4元及び高次の化合物は、周期表のグループIIAおよびIIBに属する少なくとも1つの陽イオンの3元、4元および高次の化合物であり、とくに周期表のグループIIAおよびIIBに属する少なくとも1つの陽イオンまたはそれらの混合物のチオアルミン酸塩、チオ没食子酸塩およびチオインデート、およびその混合物であることが望ましい。
【0017】
本発明の別の実施例においては、前記の化合物が、周期表のグループIIAおよびIIBに属する少なくとも1つの陽イオンのチオオキシアルミン酸塩、チオオキシ没食子酸塩およびチオオキシインデート、およびそれらの混合物から成るグループから選ばれた1つの化合物をさらに含んでいてもよい。
【0018】
本発明のさらに別の実施例においては、化合物は、周期表のグループIIAおよびIIBに属する少なくとも1つの陽イオンのチオアルミン酸塩、チオ没食子酸塩およびチオインデートと、周期表のグループIIAおよびIIBに属する少なくとも1つの陽イオンのチオオキシアルミン酸塩、チオオキシ没食子酸塩および/またはチオオキシインデートから選ばれたものとの混合物を含んでいてもよい。
【0019】
別の実施例では、硫化物は第3のソースに置かれており、第3のソースは前記第1と第2のソースから遮蔽された被膜率モニタを有し、第3のソースからの前記の被膜率はモニタされ、制御されている。特に、第3の被膜率モニタは、その第3のソースからの距離が、ほぼ基板とそのソースとの間の距離に等しいように配置されている。
【0020】
さらに望ましい実施例では、前記の基板が電磁波スペクトルの可視領域および赤外領域において不透明である。
【0021】
本発明の別の態様は、1つのあらかじめ定められた化合物、すなわち、3元、4元またはより高次の化合物の薄膜を基板上に成膜する方法であり、下記のステップから成るものである:
(i)第1の堆積物を蒸着装置の第1のソースに置き、第2の堆積物を蒸着装置の第2のソースに置くこと、その場合第1と第2の堆積物は互いに異なり、第1と第2の堆積物の成分が組み合わさって前記のあらかじめ定められた化合物を形成する;
(ii)前記第1と第2のソースからの前記の成分の前記基板への堆積の時間的変化を決定すること;
(iii)前記ソースからの同時蒸着により、基板上に前記の化合物を時間的に均一に蒸着させるために、前記の時間的変化を前記の第1と第2のソースの制御に使用すること。
【0022】
前記の方法の望ましい実施例において、第1のソースからの蒸発率を第1の被膜率モニタでモニタし、第2のソースからの蒸発率を第2の被膜率モニタでモニタすることにより前記の時間的変化を取得し、その場合、第1の被膜率モニタは第2のソースからの蒸着から遮蔽され、第2の被膜率モニタは第1のソースからの蒸着から遮蔽されているものとする。
【0023】
別の実施例においては、前記モニタリングはステップ(ii)の時間的な蒸着量の決定に使われる。とくに、ステップ(ii)の前記モニタリングをステップ(iii)に使用してもよい。
【0024】
本発明の別の実施例においては、蒸着された薄膜の化合物は熱処理される。この焼きなましステップは窒素の雰囲気の下で行われることが望ましい。
【発明の効果】
【0025】
化学量論的組成を制御し、基板上に成膜した蛍光体膜の輝度および光座標を最適化する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明は、望ましい化学量論的組成、高いエネルギ効率および高い輝度の蛍光体膜を得るための、化学的に複雑な化合物、特に蛍光体を含む、3元、4元および高次の化合物の成膜法に関連するものである。蛍光体の3元、4元および高次の化合物を使って成膜をすると高いエレクトロルミネセント現象が得られる。しかし、それには3、4、またはそれ以上の構成元素の比率を高精度に制御しなければならない。蛍光体の最高の性能を引き出すためには、化学量論的組成(ストイキオメトリ)の制御が重要である。本発明の一部の実施例においては、もし蛍光体の化学量論的組成が適切に制御されないと、蛍光体物質が複数の結晶構造を持ち、蛍光体の輝度とエネルギ効率を低減し、発光スペクトルの色座標が希望する値からずれてしまう。別の実施例においては、蛍光体は複数の結晶構造からなる化合物膜を生成する。そのような実施例においては、光発生機構が連鎖励起を含んでいることがあり、その場合、注入された電子がいくつかある層の1つにおいて短波長の可視または紫外光線を励起し、それが後になって第2または第3相において有用な可視波長の光を発生する。これらの実施例においては、構成層の相対存在量の比率を制御することが、複合蛍光体物質の輝度および光座標を最適化する上で重要である。
【0027】
本発明においては、成膜中の化学量論的組成の制御は、異なる化学成分の2ないしそれ以上の成膜ソースと、他のソース物質と別に少なくとも2つのソースの堆積率を測定する堆積率測定システムおよび測定された堆積率に基づいて相対堆積率を制御するフィードバックシステムとの組み合わせを使うことにより、作動する。本発明は、電子ビーム蒸発、加熱蒸発、スパッタリングおよび反応スパッタリング法など、いくつかの物理的蒸着技法に適用できると考えられる。
【0028】
ここに例示されるように、ユーロピウムで活性化されたカルシウムチオアルミン酸塩(CaAl2S4:Eu)、バリウムチオアルミン酸塩(BaAl2S4:Eu)、およびバリウム−カルシウムチオアルミン酸塩(BaaCa1-aAl2S4:Eu)から成る蛍光体物質は、ここに説明された方法で堆積することができ、高い輝度とエネルギ効率を示す。この方法は、他の3元、4元またはさらに高次のチオアルミン酸塩、チオ没食子酸塩およびチオインデート蛍光体およびその化合物と、周期表のグループIIAおよびIIBから選ばれたこれらの化合物の1種または複数種の陽イオンとを合成したものにも適用できると信じられている。そのような陽イオンには、バリウム、カルシウム、ストロンチウム、マグネシウム、亜鉛およびカドミウムが含まれる。この方法は、他の3元、4元またはさらに高次の化合物、特に周期表のグループIIAおよびIIBの陽イオンで形成された化合物にも適用されると信じられている。本発明の用途は、さらに、蛍光体の性能を高めるために蛍光体膜と並列に堆積される単一相の3元、4元またはさらに高次の誘電体膜の成膜にも広げられる。
【0029】
本発明により堆積された化合物の薄膜は、さらに周期表のグループIIAおよびIIBに属する少なくとも1つの陽イオンのチオオキシアルミン酸塩、チオオキシ没食子酸塩およびチオキシインデートまたはそれらの混合物から成るグループから選ばれた1つの化合物を含んでいてもよい。1つの態様においては、最初の硫化物、たとえば硫化アルミニウムに含まれる酸素の存在により、硫化物が酸素と反応して酸化アルミニウムないしは硫酸アルミニウムを形成することによる。酸硫化物の存在は、結果的として生じる成膜または高輝度蛍光体膜としての化合物の特性に対しては、致命的なものではない。
【0030】
蛍光体化合物はさまざまな不純物、特にユーロピウムおよびセリウムによって活性化される。
【0031】
本発明の方法は、基板上に堆積される任意の3元、4元または高次の化合物に適用できると信じられている。基板上に蒸気を凝着させるために、さまざまなソース物質が選ばれることが、以下の説明から明らかになる。望ましい基板は、電磁波スペクトルの可視領域および赤外領域において不透明な基板である。具体的には、基板はセラミック基板の上に設けた厚膜誘電体層である。そのような基板にはアルミナ、および金属セラミック化合物を含む。
【0032】
ここに述べたように、蛍光体の組成物は各々のソースの上に置かれている。たとえば、もし蛍光体がCaAIS4:Euならば、Al2S3が1つのソース上に置かれ、ユーロピウムがドープされたCaSが他のソース上に置かれる。もし蛍光体がBaaCa1-aAl2S4:Euならば、Al2S3が1つのソース上に置かれ、ユーロピウムがドープされたBaSとCaSとの混合物が他のソース上に置かれる。BaSとCaSとの混合比率は、"a”と"1−a"とで定義される。
【0033】
望ましい実施例においては、蛍光体は、加水分解に対してセリウムで活性化された硫化ストロンチウムより影響を受け難く、したがって写真平板法でパターニングしやすいと思われているユーロピウムで活性化されたバリウム−カルシウムチオアルミン酸塩である。 本発明は多元素薄膜を成膜する新規性のある方法に関連し、エレクトロルミネセント蛍光体と、それに隣接する誘電体層から電子が蛍光体に打ち込まれることにより、高輝度の色を発光するものである。
【0034】
図1は2重電子ビーム蒸着機の側面図で、その機器の全体を10で指す。機器10はソース物質12と14を持つ。結晶率モニタ16は基板18の近くに位置し、シールド20の背後にある。シールド20は、ソース物質14からでなく、ソース物質12からの蒸発物の堆積を受け止められるような位置に設けられている。同様に、結晶率モニタ22は、基板18に隣接し、結晶率モニタ16に対面するように、シールド24の背後に設けられている。シールド24は、ソース物質12からでなく、ソース物質14からの蒸発物の堆積を受け止められるような位置に離れて設けられている。
【0035】
結晶率モニタ16、22は、基板18に並列で、しかもできるだけ接近した位置に設けられている。距離の差はこの方法の制御に関しては許される。結晶率モニタ16、22の位置は、ソース物質12、14からは離れているが、基板18には近く、基板18上のソース物質の成膜状況をより正確にモニタすることができる。
【0036】
図示のように、基板18は旋回可能である。
【0037】
薄膜が基板上に成膜されると、熱処理が望ましくは窒素雰囲気の下で行われる。熱処理は約700℃から約1000℃の温度で行われる。この熱処理期間中に微量の酸素が導入されて、堆積された化合物中に少量の酸硫化物を形成することがあるが、そのような量では本来の成膜または高輝度蛍光体膜としての化合物の特性に決定的な影響を及ぼすことはないということは、当業者にとって自明である。
【0038】
作業中、ソース物質のそれぞれの試料は、ここに述べるようにソース物質12、14として置かれる。各ソース物質12、14には、各々別の電子ビームが当てられ、継続的に運転される。ソース物質12からの蒸発物のフラックス密度は結晶率モニタ16によってモニタされ、ソース物質14からの蒸発物のフラックス密度は結晶率モニタ22によってモニタされる。ソース物質12、14の蒸発の制御には、結晶率モニタ16、22を組み合わせたコンピュータ制御のフィードバックシステムが使われている。したがって、各ソース物質は個別に独立制御されている。さらに、基板18上の蛍光体の成膜制御は、独立制御装置のゆえに3元、4元またはそれ以上の高次の元素組成に対して最適の性能を引き出す。基板18は運転中、旋回している。
【0039】
蛍光体化合物にとって適切であれば、2つ以上のソース物質が使用可能である。
【0040】
化合物の成膜は、もし堆積された化合物に硫黄分の不足を示す傾向が見られる場合は、堆積されたときに蛍光体膜を汚染することのないような、H2S、硫黄またはその他の揮発性硫黄含有化合物の雰囲気下で実施してもよい。しかし、場合によっては、H2Sの雰囲気なしで作業することも可能である。この作業はできればかなり濃いH2Sの雰囲気の下で行うことが望ましいが、この作業を少量ないし微量の酸素が存在する雰囲気の下でも実施することが可能なことは、当業者にとって自明である。したがって、雰囲気は大部分がH2Sでそれに少量または微量の酸素が混入したものである。熱処理の結果、少量の酸硫化物が化合物に存在することになるが、そのような量の存在は、結果的として生じる成膜または高輝度蛍光体膜としての化合物の特性に対しては、致命的なものではない。個々のモニタ上での個別の蒸発物の粘着係数、または凝縮率と呼ばれるものは、基板上に蒸発物を共堆積させたときの粘着係数とは、一般的には異なる値を示す。したがって、基板上における共同成膜を最適化するためには、そのような粘着係数の差異を理解しなければならない。
【0041】
図2は機器10の平面図である。図2には、4つのプラットフォーム26A、26B、26Cおよび26Dが示されており、いずれも旋回可能である。基板18はプラットフォーム26C上に示されている。ソース物質12と14は広い間隔をおいて設置され、一方、各ソースは、対応する結晶モニタ16、22、ならびにシールド20、24には近接して置かれている。
【0042】
1つの実施例では、成膜機器には、4個の40ccソース物質ポケットを持つ、Temescal(登録商標)電子ビーム蒸発システムが組み込まれている。この機器は2基のSTIH−270−3CK電子ビーム銃と2つの独立した成膜率制御システムとを有する。この成膜率制御システムは、それぞれMDCe−Vapプログラマブルスイープコントローラ、MDCe−Vapソースコントロール、SyconSTC−200成膜率コントローラおよびMDCe−Vap CVS−15KW電子ビーム電源装置を内蔵している。他の機器を使用することもできる。
【0043】
本発明は、図3、図4に示された実施例によってさらに明らかにされる。図3は蛍光体を使用するエレクトロルミネセント装置の断面図である。図4はエレクトロルミネセント装置の平面図である。その全体を40で示すエレクトロルミネセント装置は、電極44を列状に並べた基板42を有している。厚膜誘電体46はその上に薄膜誘電体48を有している。薄膜誘電体48は、その上に3本のピクセルコラム50、52、54を有している。ピクセルコラムは、赤、緑および青の3基本原色を提供する蛍光体を含んでいる。ピクセルコラム50は、薄膜誘電体48と接触する赤の蛍光体56を有している。別の薄膜誘電体58は赤色蛍光体56の上に置かれ、コラム電極60は薄膜誘電体58上に置かれている。同様に、ピクセルコラム52は、薄膜誘電体48上に緑色蛍光体62を有し、さらにその上に薄膜誘電体64とコラム電極66とを有している。同様に、ピクセルコラム54は、薄膜誘電体48上に青色蛍光体68を有し、さらにその上に薄膜誘電体70とコラム電極72を有している。
【0044】
本発明の別の態様は、1つのあらかじめ定められた化合物、すなわち、3元、4元またはより高次の化合物の薄膜を基板上に成膜する方法を提供する。この実施例においては、第1の堆積物は蒸着装置の第1のソースに置かれ、第2の堆積物は蒸着装置の第2のソースに置かれる。第1と第2の堆積物は異なり、硫化物であるかも知れないし、ないかも知れない。第1と第2の堆積物の成分が組み合わせられて、予め定められた化合物を形成する。第1と第2のソースからの同時蒸着により、前記基板上に予め定められた化合物が形成される。同時蒸着はスパッタリング、電子ビーム、または加熱蒸発、またはその他の種類の同時蒸着により行われる。この実施例では、第1と第2のソースからの基板上への各種成分の堆積の時間的変化が決定される。この時間的変化は、第1と第2のソースの制御、たとえば各ソースの温度制御に使われ、各ソースからの同時蒸着によって基板上に時間的に均一な組成が行われることを図る。
【0045】
この方法の望ましい実施例においては、時間的変化は第1のソースからの蒸発率を第1の被膜率モニタによってモニタすることにより、また、第2のソースからの蒸発率を第2の被膜率モニタによってモニタすることにより得られる。第1の被膜率モニタは第2のソースからの蒸着から遮蔽され、第2の被膜率モニタは第1のソースからの蒸着から遮蔽されている。前記モニタリングはステップ(ii)の時間的な蒸着量の決定に使われる。特に、ステップ(ii)の前記モニタリングをステップ(iii)に使用しても良い。
【0046】
本発明は、膜組成を調節可能な、エレクトロルミネセント蛍光体として使用される制御された化合物の多元素薄膜の成膜方法を提供する。高輝度の色発光の蛍光体が得られる。このプロセスは、たとえば低圧の物理的蒸着方法で堆積可能な少なくとも2種類のソース物質と、各ソース物質の成膜率を独立に測定可能な、成膜室内に置かれた成膜率モニタを使用することに依存する。成膜率モニタに適切なフィードバックコントロールを組み合わせて使用することにより、ソース物質の元素を組み合わせた化合物を構成する組成物の成分制御が可能になる。そのような膜は、3元または4元化合物で構成されるが、多数の元素を含む膜も多数のソースを使用することにより可能である。エレクトロルミネセント蛍光体膜の輝度と発光スペクトルは、それらの膜の元素組成を制御し、調節することにより、最適化することができる。
【0047】
こうして、本発明は、3元、4元または高次の蛍光体化合物を成膜する方法、特に不透明の基板上に成膜する方法を提供する。この方法は、改良されたエレクトロルミネセント蛍光体、特に、より安定した組成の蛍光体を実現するために、1つ以上のソースからの相対成膜率を制御する手段を提供する。こうして得られた蛍光体は、より高い輝度と改良された発光色を示すと信じられている。
【0048】
上記の開示は一般的に本発明を説明したものである。さらに完全な理解は、以下の具体例を参照することによって得られるであろう。これらの例は例示の目的でのみ説明されるのであり、本発明の範囲を制限するものではない。形態の変更や同等品による差し替えを、そうすることが有利な場合に行うことは、すでに考慮済みである。以下に具体的な条件を示すが、それらの条件は説明の都合上であり、制限を設けることを意図していない。
【0049】
例I
【0050】
硫化バリウム、硫化カルシウム、硫化アルミニウムおよび硫化ユーロピウムをさまざまな割合で混ぜ合わせて、一連のユーロピウムをドープしたチオアルミン酸塩粉末を準備した。その混合粉末を圧縮して直径1.3cm、高さ0.75cmのペレットに成形した。その一連のサンプルにおいて、化学式BaaCa1-aAl2S4:Euのなかの"a"を0、0.1、0.3、0.5、0.7、0.9および1.0と変化させた。すべての蛍光体物質は、バリウムとカルシウム濃度の合計値の3原子パーセントに相当するユーロピウムの公称濃度を持っていた。ペレットは900℃で20分間、窒素雰囲気中で焼きなまされた。
【0051】
その粉末の光ルミネセンスは、紫外線光源の下で粉末の輝度を測定して検討された。CaAl2S4:EuからBaAl2S4:Euまで、"a"の濃度を0.1から1まで増加すると共に、蛍光体ペレットを365ナノメータの紫外光線で光学的に刺激したところ、CIE色座標"x"は0.17から0.15に減少し、CIE色座標"y"は0.67から0.15に減少した。その光ルミネセンスは98cd/m2から45cd/m2に減少した。ペレットの色は次第に緑から青に変化した。ペレットは目視でもその色が変化した。ペレットの色はa=0.7以下では裸視の場合、緑に見えた。
【0052】
ペレットの“a"を変えた場合の光ルミネセンス発光と色座標の変化を図5に示す。
【0053】
例II
【0054】
例Iで述べた種類のユーロピウムをドープしたチオアルミン酸塩蛍光体膜でa=0のものを、二重ソース法と上述の機器を使用して、厚膜不透明基板上に形成した。
【0055】
蛍光体を成膜するために使用した2つのソース物質の1つは、ペレット状の硫化アルミニウム(Al2S3)であった。このペレットは焼きなまししてなかった。他のソース物質はユーロピウムをドープした硫化カルシウム(CaS:Eu)ペレットであった。このペレットは800℃で20分間、窒素雰囲気中で焼きなまされた。Al2S3およびCaS:Euペレットの直径と高さは夫々2.5cmと1.8cmであった。これらのペレットはゆっくりガス抜きを行い、夫々の電子銃からの低電子ビーム電流で準備を整えた。
【0056】
基板は、Wuらによる国際出願PCT/CA00/00561で開示されたアルミナの上に金の電極パターンを堆積し、その上にPMN−PTとジルコン酸チタン酸鉛膜かぶせたものからなる厚膜誘電体層をのせ、さらに、アルミナの薄膜を乗せたものである。PMN−PTは鉛とニオブ酸マグネシウムおよびチタン酸マグネシウムを含む物質である。
【0057】
蛍光体の成膜中、Al2S3およびCaS:Euは硫化水素分圧が2×10-4Torr(2.66×10-2Pa)ある雰囲気中で同時に蒸発させた。成膜基板温度は約500℃であった。Al2S3とCaS:Euの成膜率は、2つの堆積率モニタリングシステムで独立に測定した結果、各々毎秒2.8オングストロームと毎秒1.8オングストロームであった。2つのソース物質の粘着係数と作業物基盤上の化合物質の粘着係数間の差を埋めるためには相対的な成膜率を調節する必要があることがわかっている。
【0058】
CaAl2S4:Eu蛍光膜の厚さは、走査型電子顕微鏡で計測した結果、2300オングストロームであった。蛍光体膜を構成している構造の例は、図3、図4に断面図と平面図で示されたとおりである。堆積された蛍光体は、成膜後、約700℃で2分間、窒素雰囲気の下で焼きなましされた。試験装置を完成するために、蛍光体層の上に第2のアルミナ薄層を堆積し、アルミナ層の上にインジウム錫酸化物からなる第2の電極構造を堆積した。
【0059】
こうして得られた蛍光体は、比較的高いエネルギ変換効率を提供し、励起周波数120Hz、しきい値電圧190ボルトを70ボルト上回る電圧、パルス幅30マイクロ秒で稼動させたとき、無ろ過CIE色座標値がx=0.19、y=0.62であり、平方メートル当り90カンデラの輝度を得ることができた。光ルミネセンスと電子ルミネセンスの両方のピーク発光波長は515mnであった。
【0060】
1つの比較例として、三井鉱山株式会社とシャープ株式会社による1996年5月28日公示のJP8−134440では、CaAl2S:Eu蛍光体のスパッタ成膜による薄膜のエレクトロルミネセント輝度は1kH励起周波数で1cd/m2であり、CIE座標はx=0.13、y=0.377であった。本発明の方法により、同じ蛍光体がはるかに高い輝度と改善された色座標を提供し、輝度は約2桁高かった。
【0061】
例III
【0062】
例Iで述べた物質でa=1とした材料を使って蛍光体膜が準備された。手法は例Iで述べたとおりである。この蛍光体の場合、1つの種類のペレットはAl2S3から生成され、他のペレットは硫化バリウムと硫化ユーロピウムの必要な混合物から生成された。BaAl2S4:Eu蛍光膜の厚さは、走査型電子顕微鏡で計測した結果、2700オングストロームであった。
【0063】
例Iで述べたとおり、a=0に対応する組成、すなわちCaAl2S4:Euに対して、励起周波数120Hz、パルス幅30マイクロ秒を使用した場合、エレクトロルミネセントピクセルはしきい値電圧180ボルトを70ボルト上回る電圧で輝度が90cd/m2で、CIE座標はx=0.19、y=0.62であった。これは同じ公称組成を持つペレットで観察された光ルミネセンス値と同等である。
【0064】
a=1に対応する組成、すなわちBaAl2S4:Euに対して、しきい値電圧190ボルトを70ボルト上回る電圧で輝度は約40cd/m2であった。CIE座標はx=0.15、y=0.14であり、これも同じ公称組成を持つペレットで観察された光ルミネセンス値と同等である。
【0065】
その堆積膜のエレクトロルミネセント色座標値について圧縮粉末の光ルミネセンスと同等の結果が得られたことは、薄膜の組成が対応する粉末のものに近いことを示しており、したがって、二重ソース成膜法が堆積膜の化学量論的組成を十分制御できることを示している。
【0066】
以上、本発明の望ましい実施例を詳述したが、当業者が発明の趣旨と特許請求の範囲内でこれに対する変化をつけ得ることは自明である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】複列電子ビーム蒸発器の側面模式図。
【図2】図1の複列電子ビーム蒸発器の平面模式図。
【図3】厚膜誘電体層と蛍光体化合物からなるエレクトロルミネセント素子の断面の模式図。
【図4】フルカラーエレクトロルミネセントピクセルとそれを構成するサブピクセルの平面模式図。
【図5】光ルミネセンスであり、CIEカラー対厚膜エレクトロルミネセントディスプレイに組み込まれたBaaCa1-aAl2S4:Euなる化学式を持つ物質を含む蛍光体物質の”a”の図式表現。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つのあらかじめ定められた化合物、すなわち、3元、4元、またはより高次の化合物の薄膜を基板上に成膜する方法であり、下記のステップから成るものである:
(i)少なくとも1種類の硫化物のペレットを第1のソースに置き、少なくとも1種類の硫化物のペレットを第2のソースに置くステップ。その場合、前記第1のソース上の硫化物と前記第2のソース上の硫化物とは互いに異なり、前記第1のソース上と前記第2のソース上との少なくとも一方の硫化物は前記化合物に対する不純物を含む;
(ii)別々の電子ビームで前記第1の上のペレットと前記第2のソースの上のペレットとを同時に蒸発させることにより、前記基板上の前記化合物の蒸着を実施するステップ;および、
(iii)前記第1のソース上の硫化物の蒸発率を第1の膜率モニタでモニタし、前記第2のソース上の硫化物の蒸発率を第2の膜率モニタでモニタするステップ。その場合、前記第1の膜率モニタは前記第2のソースからの硫化物の蒸着から遮蔽され、前記第2の膜率モニタは前記第1のソースからの硫化物の蒸着から遮蔽されている;
前記化合物は蛍光体又は誘電体であり、
前記化合物は、周期表のグループIIAまたはIIBの陽イオンのチオアルミン酸塩、チオ没食子酸塩、またはチオインデートから成る。
【請求項2】
請求項1の方法において、前記化合物は、周期表のグループIIAまたはIIBの陽イオンのチオアルミン酸塩、チオ没食子酸塩、またはチオインデートから成る化合物をさらに含む。
【請求項3】
請求項1の方法において、前記基板は電磁波スペクトルの可視光線および赤外光線域において不透明である。
【請求項4】
請求項1の方法において、化合物は3元化合物である。
【請求項5】
請求項1の方法において、化合物は4元化合物である。
【請求項6】
請求項1の方法において、前記化合物は化学式BaaCa1-aAl2S4:Euにおいて"a"が0から1の範囲にあるものである。
【請求項7】
請求項6の方法において、化合物はCaAl2S4:Euである。
【請求項8】
請求項1の方法において、前記陽イオンは、バリウム、カルシウム、ストロンチウム、マグネシウム、亜鉛、カドミウム、またはそれらの混合物から成る。
【請求項9】
1つのあらかじめ定められた化合物、すなわち、3元、4元、またはより高次の化合物の薄膜を基板上に成膜する方法であり、下記のステップから成るものである:
(i)少なくとも1種類の硫化物のペレットを第1のソースに置き、少なくとも1種類の硫化物のペレットを第2のソースに置くステップ。その場合、前記第1のソース上の硫化物と前記第2のソース上の硫化物とは互いに異なり、前記第1のソース上と前記第2のソース上との少なくとも一方の硫化物は前記化合物に対する不純物を含む;
(ii)別々の電子ビームで前記第1の上のペレットと前記第2のソースの上のペレットとを同時に蒸発させることにより、前記基板上の前記化合物の蒸着を実施するステップ;および、
(iii)前記第1のソース上の硫化物の蒸発率を第1の膜率モニタでモニタし、前記第2のソース上の硫化物の蒸発率を第2の膜率モニタでモニタするステップ。その場合、前記第1の膜率モニタは前記第2のソースからの硫化物の蒸着から遮蔽され、前記第2の膜率モニタは前記第1のソースからの硫化物の蒸着から遮蔽されている;
前記化合物は、周期表のグループIIA若しくはIIBの陽イオンのチオアルミン酸塩、チオ没食子酸塩、若しくはチオインデート、または、周期表のグループIIA若しくはIIBの陽イオンのチオオキシアルミン酸塩、チオオキシ没食子酸塩、若しくはチオオキシインデートから成る化合物を含む。
【請求項10】
請求項9の方法において、前記化合物は、化学式BaaCa1-aAl2S4:Euで表されるチオアルミン酸塩であって"a"が0から1の範囲にあるものであり、または前記チオオキシアルミン酸塩を含む。
【請求項11】
請求項10の方法において、前記チオアルミン酸塩はCaAl2S4:Euである。
【請求項12】
請求項9の方法において、前記チオオキシアルミン酸塩は、バリウムとカルシウムを含むアルカリアースチオオキシアルミン酸塩である。
【請求項13】
請求項9の方法において、前記陽イオンは、バリウム、カルシウム、ストロンチウム、マグネシウム、亜鉛、カドミウム、またはそれらの混合物から成る。
【請求項14】
1つのあらかじめ定められた化合物、すなわち、3元、4元、またはより高次の化合物の薄膜を基板上に成膜する方法であり、下記のステップから成るものである:
(i)第1の堆積物を第1のソースに置き、第2の堆積物を第2のソースに置くステップ。その場合、前記第1の堆積物と前記第2の堆積物とは成分が互いに異なり、前記第1の堆積物の成分と前記第2の堆積物の成分とが組み合わさって前記化合物を形成する;
(ii)前記第1のソースからの蒸発率を第1の被膜率モニタでモニタし、前記第2のソースからの蒸発率を第2の被膜率モニタでモニタするステップ。その場合、前記第1の被膜率モニタは前記第2のソースからの蒸着から遮蔽され、前記第2の被膜率モニタは前記第1のソースからの蒸着から遮蔽されているようにして、前記第1のソースからの前記第1の堆積物の成分と前記第2のソースからの前記第2の堆積物の成分との前記基板への堆積の時間的変化を決定する;
(iii)前記時間的変化を前記第1のソースと前記第2のソースとの制御に使用して、前記第1のソースと前記第2のソースとからの同時蒸着により、前記基板上に前記化合物を時間的に均一に蒸着させるステップ;
前記化合物は蛍光体又は誘電体であり、
前記化合物は、周期表のグループIIAまたはIIBの陽イオンのチオアルミン酸塩、チオ没食子酸塩、またはチオインデートから成る。
【請求項15】
請求項14の方法において、前記化合物は、周期表のグループIIAまたはIIBの陽イオンのチオオキシアルミン酸塩、チオオキシ没食子酸塩、またはチオオキシインデートから成る化合物をさらに含む。
【請求項16】
請求項14の方法において、誘電体薄膜に並置して蛍光体を堆積するステップが追加されている。
【請求項17】
請求項14の方法において、前記陽イオンは、バリウム、カルシウム、ストロンチウム、マグネシウム、亜鉛、カドミウム、またはそれらの混合物から成る。
【請求項18】
請求項17の方法において、化合物はCaAl2S4:Euである。
【請求項19】
請求項18の方法において、前記化合物は、周期表のグループIIAまたはIIBの陽イオンのチオオキシアルミン酸塩、チオオキシ没食子酸塩、またはチオオキシインデートから成る化合物をさらに含む。
【請求項20】
請求項14の方法において、ステップ(iii)の蒸着は大半がH2Sから成る雰囲気の中で実施される。
【請求項21】
請求項20の方法において、前記雰囲気はさらに酸素を含む。
【請求項22】
1つのあらかじめ定められた化合物、すなわち、3元、4元、またはより高次の化合物の薄膜を基板上に成膜する方法であり、下記のステップから成るものである:
(i)第1の堆積物を第1のソースに置き、第2の堆積物を第2のソースに置くステップ。その場合、前記第1の堆積物と前記第2の堆積物とは成分が互いに異なり、前記第1の堆積物の成分と前記第2の堆積物の成分とが組み合わさって前記化合物を形成する;
(ii)前記第1のソースからの蒸発率を第1の被膜率モニタでモニタし、前記第2のソースからの蒸発率を第2の被膜率モニタでモニタするステップ。その場合、前記第1の被膜率モニタは前記第2のソースからの蒸着から遮蔽され、前記第2の被膜率モニタは前記第1のソースからの蒸着から遮蔽されているようにして、前記第1のソースからの前記第1の堆積物の成分と前記第2のソースからの前記第2の堆積物の成分との前記基板への堆積の時間的変化を決定する;
(iii)前記時間的変化を前記第1のソースと前記第2のソースとの制御に使用して、前記第1のソースと前記第2のソースとからの同時蒸着により、前記基板上に前記化合物を時間的に均一に蒸着させるステップ;
前記化合物は化学式BaaCa1-aAl2S4:Euにおいて"a"が0から1の範囲にあるものである。
【請求項23】
基板上に堆積した化合物であり、前記化合物は、周期表のグループIIAまたはIIBの陽イオンのチオオキシアルミン酸塩、チオオキシ没食子酸塩、またはチオオキシインデートから成る化合物を含み、前記化合物は、下記のステップを含む方法により形成されたものである:
(i)少なくとも1種類の硫化物のペレットを第1のソースに置き、少なくとも1種類の硫化物のペレットを第2のソースに置くステップ。その場合、前記第1のソース上の硫化物と前記第2のソース上の硫化物とは互いに異なり、前記第1のソース上と前記第2のソース上との少なくとも一方の硫化物は前記化合物に対する不純物を含む;
(ii)別々の電子ビームで前記第1の上のペレットと前記第2のソースの上のペレットとを同時に蒸発させることにより、前記基板上の前記化合物の蒸着を実施するステップ;および、
(iii)前記第1のソース上の硫化物の蒸発率を第1の膜率モニタでモニタし、前記第2のソース上の硫化物の蒸発率を第2の膜率モニタでモニタするステップ。その場合、前記第1の膜率モニタは前記第2のソースからの硫化物の蒸着から遮蔽され、前記第2の膜率モニタは前記第1のソースからの硫化物の蒸着から遮蔽されている。
【請求項24】
1つのあらかじめ定められた化合物、すなわち、3元、4元、またはより高次の化合物の薄膜を基板上に成膜する方法であり、下記のステップから成るものである:
(i)少なくとも1種類の硫化物のペレットを第1のソースに置き、少なくとも1種類の硫化物のペレットを第2のソースに置くステップ。その場合、前記第1のソース上の硫化物と前記第2のソース上の硫化物とは互いに異なり、前記第1のソース上と前記第2のソース上との少なくとも一方の硫化物は前記化合物に対する不純物を含む;
(ii)別々の電子ビームで前記第1の上のペレットと前記第2のソースの上のペレットとを同時に蒸発させることにより、前記基板上の前記化合物の蒸着を実施するステップ。その場合、前記第1のソースと前記第2のソースとの各温度は制御されている;および、
(iii)前記第1のソース上の硫化物の蒸発率を第1の膜率モニタでモニタし、前記第2のソース上の硫化物の蒸発率を第2の膜率モニタでモニタするステップ。その場合、前記第1の膜率モニタは前記第2のソースからの硫化物の蒸着から遮蔽され、前記第2の膜率モニタは前記第1のソースからの硫化物の蒸着から遮蔽され、前記第1の膜率モニタと前記第2の膜率モニタとの各温度はモニタされて制御されている;
ステップ(i)の硫化物は第3のソースに置かれており、前記第3のソースは前記第1のソースと前記第2のソースとから遮蔽された膜率モニタを有し、前記第3のソースからの膜率はモニタされて制御されている。
【請求項25】
1つのあらかじめ定められた化合物、すなわち、3元、4元、またはより高次の化合物の薄膜を基板上に成膜する方法であり、下記のステップから成るものである:
(i)少なくとも1種類の硫化物のペレットを第1のソースに置き、少なくとも1種類の硫化物のペレットを第2のソースに置くステップ。その場合、前記第1のソース上の硫化物と前記第2のソース上の硫化物とは互いに異なり、前記第1のソース上と前記第2のソース上との少なくとも一方の硫化物は前記化合物に対する不純物を含む;
(ii)別々の電子ビームで前記第1の上のペレットと前記第2のソースの上のペレットとを同時に蒸発させることにより、前記基板上の前記化合物の蒸着を実施するステップ。その場合、前記第1のソースと前記第2のソースとの各温度は制御されている;および、
(iii)前記第1のソース上の硫化物の蒸発率を第1の膜率モニタでモニタし、前記第2のソース上の硫化物の蒸発率を第2の膜率モニタでモニタするステップ。その場合、前記第1の膜率モニタは前記第2のソースからの硫化物の蒸着から遮蔽され、前記第2の膜率モニタは前記第1のソースからの硫化物の蒸着から遮蔽され、前記第1の膜率モニタと前記第2の膜率モニタとの各温度はモニタされて制御されている;
ステップ(i)の不純物は第3のソースに置かれており、前記第3のソースは前記第1のソースと前記第2のソースとから遮蔽された膜率モニタを有し、前記第3のソースからの膜率はモニタされて制御されている。
【請求項26】
1つのあらかじめ定められた化合物、すなわち、3元、4元、またはより高次の化合物の薄膜を基板上に成膜する方法であり、下記のステップから成るものである:
(i)第1の堆積物を第1のソースに置き、第2の堆積物を第2のソースに置くステップ。その場合、前記第1の堆積物と前記第2の堆積物とは成分が互いに異なり、前記第1の堆積物の成分と前記第2の堆積物の成分とが組み合わさって前記化合物を形成する;
(ii)前記第1のソースからの蒸発率を第1の被膜率モニタでモニタし、前記第2のソースからの蒸発率を第2の被膜率モニタでモニタするステップ。その場合、前記第1の被膜率モニタは前記第2のソースからの蒸着から遮蔽され、前記第2の被膜率モニタは前記第1のソースからの蒸着から遮蔽されているようにして、前記第1のソースからの前記第1の堆積物の成分と前記第2のソースからの前記第2の堆積物の成分との前記基板への堆積の時間的変化を決定する;
(iii)前記時間的変化を前記第1のソースと前記第2のソースとの制御に使用して、前記第1のソースと前記第2のソースとからの同時蒸着により、前記基板上に前記化合物を時間的に均一に蒸着させるステップ;
第3の堆積物が第3のソースに置かれ、前記第3の堆積物が前記化合物の一部である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−62619(P2009−62619A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278657(P2008−278657)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【分割の表示】特願2002−553441(P2002−553441)の分割
【原出願日】平成13年12月17日(2001.12.17)
【出願人】(508120846)アイファイアー・アイピー・コーポレーション (7)
【Fターム(参考)】