説明

多層プリント配線板、及び、多層プリント配線板の製造方法

【課題】 パッドとソルダーレジスト層との密着性を確保しつつ、パッドと半田バンプとの間の電気抵抗が増大することを防止することができる多層プリント配線板を提供する。
【解決手段】 第1層間樹脂絶縁層と、上記第1層間樹脂絶縁層上に形成されて、電子部品を搭載するためのパッドと、上記第1層間樹脂絶縁層と上記パッドとの上に形成され、上記パッドに到達する開口部を有するソルダーレジスト層と、上記開口部の底部に位置し、上記パッド上に形成されている保護膜とを備える多層プリント配線板であって、上記パッドの表面に、Sn、Ni、Zn、Co、Ti、Pd、Ag、Pt及びAuのうちの少なくとも1種の金属を含む金属層が形成され、上記金属層上に、カップリング剤からなる被膜が形成され、上記保護膜の少なくとも一部は、上記開口部によって露出される上記パッドの露出面に直接形成されており、上記ソルダーレジスト層は、エポキシ樹脂からなることを特徴とする多層プリント配線板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層プリント配線板、及び、多層プリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多層プリント配線板としては、銅からなる導体回路と層間樹脂絶縁層とが交互に積層され、最外層の層間樹脂絶縁層上に電子部品を搭載するためのパッドが形成されるとともに、最外層にソルダーレジスト層が形成された多層プリント配線板が提案されている。
ここで、通常、上記パッドは、電気抵抗の小さい銅等を用いて形成されている。しかしながら、銅からなるパッドはソルダーレジスト層との密着性があまり良好ではない。
一方、銅と樹脂との密着性を向上させる方法としては、例えば、銅の表面に凹凸(粗化面)を設け、アンカー効果により銅と樹脂との密着性を向上させる方法が提案されている。
また、銅の表面に銅とスズとの合金からなる金属膜を形成することにより、銅と樹脂との密着性を向上させる方法も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−340948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、パッドの表面に凹凸を設けた場合には、例えば、1GHzを超える高周波信号を伝送すると、表皮効果により伝送損失が大きくなってしまうおそれがあった。
また、上記パッドの表面には、通常、半田の濡れ性向上や、パッド表面の酸化防止を目的として、Ni、Pd、Au等からなる保護膜が形成されている。そのため、パッドの表面に銅とスズとの合金からなる金属膜を形成した後、さらに保護膜を形成すると、パッドと半田バンプ等の外部接続部材との間の電気抵抗が増大してしまい、信号遅延の要因となるおそれがある。また、金属膜上に、Niを用いて保護膜を形成した場合、NiとSnとの合金が形成されることがある。NiとSnとの合金は一般的に脆い。例えば、外部から衝撃を受けた際には、こうした脆い合金層を介して保護膜、ひいては半田バンプがパッドから剥離する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、電子部品を搭載するためのパッドの表面に所定の金属膜を形成するとともに、この金属膜上にカップリング剤からなる被膜を形成し、さらに、パッドを保護する保護膜の少なくとも一部をパッドに直接接続することにより、パッドとソルダーレジスト層との密着性を確保しつつ、パッドと半田バンプとの間の電気抵抗が増大することを防止することができることを見出し、本発明の多層プリント配線板及びその製造方法を完成した。
【0006】
即ち、本発明の多層プリント配線板は、
第1層間樹脂絶縁層と、
上記第1層間樹脂絶縁層上に形成されて、電子部品を搭載するためのパッドと、
上記第1層間樹脂絶縁層と上記パッドとの上に形成され、上記パッドに到達する開口部を有するソルダーレジスト層と、
上記開口部の底部に位置し、上記パッド上に形成されている保護膜と
を備える多層プリント配線板であって、
上記パッドの表面に、Sn、Ni、Zn、Co、Ti、Pd、Ag、Pt及びAuのうちの少なくとも1種の金属を含む金属層が形成され、
上記金属層上に、カップリング剤からなる被膜が形成され、
上記保護膜の少なくとも一部は、上記開口部によって露出される上記パッドの露出面に直接形成されており、
上記ソルダーレジスト層は、エポキシ樹脂からなる
ことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の多層プリント配線板の製造方法は、
層間樹脂絶縁層と、導体回路とが交互に積層され、さらに、最外層の上記層間樹脂絶縁層上に電子部品を搭載するためのパッドを備える多層配線層を形成する工程と、
上記パッドの表面の少なくとも一部に、Sn、Ni、Zn、Co、Ti、Pd、Ag、Pt及びAuのうちの少なくとも1種の金属を含む金属層を形成する工程と、
上記金属層上に、カップリング剤からなる被膜を形成する工程と、
上記最外層の層間樹脂絶縁層と、上記パッドとの上に、エポキシ樹脂からなるソルダーレジスト層を形成するとともに、上記ソルダーレジスト層のうち上記パッド上に位置する箇所に当該ソルダーレジスト層を貫通する開口部を形成する工程と、
上記開口部から露出する上記金属層を除去する工程と、
上記開口部の底部に露出した上記パッド上に保護膜を形成する工程とを備える
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の多層プリント配線板では、電子部品を搭載するためのパッドの表面に、Sn、Ni、Zn、Co、Ti、Pd、Ag、Pt及びAuのうちの少なくとも1種の金属を含む金属層が形成され、さらに、この金属層上に、カップリング剤からなる被膜が形成されているため、上記パッドとソルダーレジスト層との密着性に優れる。
また、保護膜の少なくとも一部が、上記パッドと直接接続されているため、保護膜とパッドとの密着性に優れる。さらに、パッドと保護膜との間の電気抵抗が小さく、電気特性に優れる。
【0009】
また、本発明の多層プリント配線板の製造方法では、電子部品を搭載するためのパッドの表面の少なくとも一部に、Sn、Ni、Zn、Co、Ti、Pd、Ag、Pt及びAuのうちの少なくとも1種の金属を含む金属層を形成し、この金属層上にカップリング剤からなる被膜を形成する。また、保護膜を形成する際には、ソルダーレジスト層に開口部を形成し、この開口部の底部にパッドを露出させた後、保護膜を形成する。
そのため、パッドとソルダーレジスト層との密着性に優れるとともに、電気特性に優れる多層プリント配線板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1Aは、第一実施形態の多層プリント配線板を模式的に示す断面図であり、図1Bは、図1Aに示した多層プリント配線板の領域aを示す部分拡大断面図である。
【図2】図2A〜図2Gは、第一実施形態の多層プリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図である。
【図3】図3A〜図3Dは、第一実施形態の多層プリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図である。
【図4】図4A〜図4Dは、第一実施形態の多層プリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図である。
【図5】図5A〜図5Cは、第一実施形態の多層プリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図である。
【図6】図6A、図6Bは、第一実施形態の多層プリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を説明する。
(第一実施形態)
ここでは、第一実施形態の多層プリント配線板及びその製造方法を説明する。
【0012】
図1Aは、第一実施形態の多層プリント配線板を模式的に示す断面図であり、図1Bは、図1Aに示した多層プリント配線板の領域aを示す部分拡大断面図である。
図1A及び図1Bに示す第一実施形態の多層プリント配線板10では、絶縁性基板11の両面に導体回路14と層間樹脂絶縁層12とが交互に形成され、絶縁性基板11の表面に形成された導体回路14は、スルーホール導体19により電気的に接続されている。
また、層間樹脂絶縁層12を挟んだ導体回路14間は、ビア導体17を介して電気的に接続されている。また、最外層の層間樹脂絶縁層上には、導体回路14とともに、電子部品を搭載するためのパッドとして、半田パッド34が形成されている。なお、半田パッド34と最外層の導体回路14aとは同一の構成である。
また、スルーホール導体19の内部には樹脂充填材層20が形成されている。そして、樹脂充填材層20を覆う導体回路30が形成されている。
多層プリント配線板の最外層には、ソルダーレジスト層24が形成されており、ソルダーレジスト層24に形成された開口部の底部に位置する部分の半田パッド34上には、保護膜33を介して半田バンプ27が形成されている。
ここで、半田パッド34の側面と上面のうちの一部には、Snを含む金属層が形成され、さらに金属層上にはシランカップリング剤からなる被膜が形成されている(以下、このような金属層とこの金属層上の被膜とを併せて導体回路被覆層ともいい、図1A、図1Bでは、導体回路被覆層15と示す)。即ち、半田パッド34とソルダーレジスト層24とは、導体回路被覆層15を介して接着されている。
なお、半田パッド34と同一の構成を備える最外層の導体回路14aの側面及び上面にも導体回路被覆層15は形成されている。
なお、半田パッド34を構成しない最外層の導体回路14a(半田バンプ27が形成されない導体回路)では、層間樹脂絶縁層12と接する面を除く全表面に、導体回路被覆層15が形成されている。
【0013】
また、図1Bに示すように、半田パッド34は、無電解銅めっき膜22と無電解銅めっき膜22上の電解銅めっき膜23とからなり、さらにその表面の一部(半田パッド34の側面、及び、半田パッド34の上面のうち、保護膜33と接する部分以外の部分)に、金属層及びこの金属層上に形成されたカップリング剤からなる被膜(導体回路被覆層15)が形成されている。
なお、本明細書において、半田パッド34の上面、及び、最外層の導体回路14aの上面とは、ソルダーレジスト層を形成する側の面をいう。
また、半田パッド34上には、Ni層31とAu層32とからなる保護膜33が形成されており、この保護膜33は、半田パッド34を構成する電解銅めっき膜23と直接接続されている。即ち、半田パッド34の上面のうち、保護膜33が形成される部分には、金属膜及び被膜が存在していないこととなる。
【0014】
このように、半田パッド34の上面及び側面のうちの所定の部分にSnを含む金属層が形成され、さらに、この金属層上にシランカップリング剤からなる被膜が形成されていると、半田パッド34とソルダーレジスト層24とが、金属層及び被膜(導体回路被覆層15)を介して、強固に密着されることとなる。
これについて、もう少し詳しく説明する。
【0015】
図1A、図1Bに示した多層プリント配線板10において、半田パッド34の表面に形成されたSnを含む金属層は、SnとCuとが混在する金属層である。詳細には、この金属層は、CuSn及びCuSnを含んでいる。そして、金属層を形成した際には、その表面に水酸基が付着していると推測される。このように、金属層の表面に水酸基が付着していると、脱水反応により、シランカップリング剤と容易に反応し、金属層とシランカップリング剤からなる被膜とが強固に結合することとなる。
さらに、上記シランカップリング剤が、ソルダーレジスト層24中の樹脂成分と反応することにより両者が化学的に結合し、被膜とソルダーレジスト層24とが強固に結合することとなる。
その結果、半田パッド34とソルダーレジスト層24とが、金属層及び被膜を介して、強固に密着されることとなる。
【0016】
このように、本願発明の実施形態において、半田パッドの表面に形成される金属層は、Snを含む金属層であることが望ましい。
この理由は以下のように推測される。
即ち、Snを含む金属層は、通常、半田パッドを構成する材料であるCuに比べて表面に水酸基を付着させるのに適しているからであり、水酸基が付着していると、カップリング剤と結合しやすいからである。
そして、Snからなる層がCuからなる層よりも表面に水酸基を付着させやすい理由は、Snの酸化物(SnO)の等電点が4.3で、Cuの酸化物(CuO)の等電点である9.5よりも小さいからであると考えられる。
なお、一般に、等電点の小さい金属酸化物のほうが、その表面に水酸基を付着させやすい傾向にあり、この点から、本発明の実施形態に係る多層プリント配線板では、金属層を構成する金属として、その酸化物の等電点が5以下の金属を含むことが望ましいと考えられる。
【0017】
なお、本実施形態の多層プリント配線板では、後の製造方法でも説明しているが、銅からなる半田パッドに、スズ置換めっきを施すことにより金属層を形成している。
そして、上記金属層には、SnとCuとが混在している。さらには、金属層を形成する際には、不回避的にSn及びCuの一部が酸化され、金属層にSnO及びCuOが含まれると推測される。
【0018】
また、多層プリント配線板10では、半田パッド34の上面と保護膜33全体とが直接接続されている。
このように、半田パッド34と保護膜33との間に金属層や被膜が介在していないと、両者の間にも金属層や被膜が介在している場合に比べて、両者の間の電気抵抗が小さくなり、電気特性が優れることとなる。
さらに、多層プリント配線板10では、半田パッド34の表面が粗化されておらず実質的に平坦であり、そのため、信号遅延が発生しにくくなる。
【0019】
次に、第一実施形態の多層プリント配線板の製造方法を工程順に説明する。
(1)絶縁性基板を出発材料とし、まず、該絶縁性基板上に導体回路を形成する。
上記絶縁性基板としては特に限定されず、例えば、ガラスエポキシ基板、ビスマレイミド−トリアジン(BT)樹脂基板、銅張積層板、RCC基板等の樹脂基板、窒化アルミニウム基板等のセラミック基板、シリコン基板等が挙げられる。
上記導体回路は、例えば、上記絶縁性基板の表面に無電解銅めっき処理を施し、続いて電解銅めっき処理を施す等により銅からなるベタの導体層を形成した後、エッチング処理を施すことにより形成することができる。
この工程では、上記絶縁性基板を挟んだ導体回路間を接続するためのスルーホール導体を形成してもよい。また、導体回路を形成した後には、必要に応じて、導体回路の表面をエッチング処理等により粗化面としてもよい。
【0020】
(2)次に、導体回路を形成した絶縁性基板上に、層間樹脂絶縁層を形成し、この層間樹脂絶縁層に、上記導体回路上に到達する開口部を形成する。
上記層間樹脂絶縁層は、熱硬化性樹脂、感光性樹脂、熱硬化性樹脂の一部に感光性基が付与された樹脂や、これらと熱可塑性樹脂とを含む樹脂複合体等を用いて形成すればよい。
具体的には、まず、未硬化の樹脂をロールコータ、カーテンコータ等により塗布したり、樹脂フィルムを熱圧着したりすることにより樹脂層を形成する。その後、必要に応じて、硬化処理を施すとともに、レーザ処理や露光現像処理により上記開口部を形成する。
また、上記熱可塑性樹脂からなる樹脂層は、フィルム状に成形した樹脂成形体を熱圧着することにより形成すればよい。
【0021】
(3)次に、上記層間樹脂絶縁層の表面(上記開口部の壁面を含む)に無電解銅めっき膜を形成する。
ここで、上記無電解銅めっき膜の厚さは、0.1〜0.3μmが望ましい。
【0022】
(4)次に、上記無電解銅めっき膜上にめっきレジストを形成する。
上記めっきレジストは、導体回路及びビア導体を形成しない部分に形成する。
上記めっきレジストを形成する方法は特に限定されず、例えば、感光性ドライフィルムを張り付けた後、露光現像処理を施すことにより形成することができる。
【0023】
(5)次に、上記無電解銅めっき膜上のめっきレジスト非形成部に電解銅めっき膜を形成する。
ここで、上記電解銅めっき層の厚さは5〜20μmが望ましい。
【0024】
(6)その後、上記層間樹脂絶縁層上のめっきレジストを剥離する。
上記めっきレジストの剥離は、例えば、アルカリ水溶液等を用いて行えばよい。
【0025】
(7)次に、上記めっきレジストを剥離することにより露出した無電解銅めっき膜を除去する。
ここで、上記無電解銅めっき膜の除去は、例えば、エッチング液を用いて行えばよい。不要な無電解銅めっき膜(電解めっき膜間に存在する無電解銅めっき膜)を確実に除去することができる。
【0026】
このような上記(2)〜(7)の工程を行うことにより、層間樹脂絶縁層上に導体回路を形成するとともに、同時にこの導体回路と絶縁性基板上の導体回路とを接続するビア導体を形成することができる。そのため、導体回路とビア導体とを効率よく形成できる。
また、上記導体回路を形成した後、必要に応じて、層間樹脂絶縁層上の触媒を酸や酸化剤を用いて除去してもよい。電気特性の低下を防止することができるからである。
【0027】
(8)さらに、必要に応じて、上記(2)〜(7)の工程を繰り返すことにより、層間樹脂絶縁層と導体回路とをさらに形成するとともに、同時にビア導体を形成してもよい。
【0028】
また、このような工程を経て形成した導体回路のうち、最外層の導体回路の一部又は全部は、半田パッドとなる。従って、最外層の導体回路を形成することにより、同時に半田パッドを形成することとなる。
【0029】
(9)次に、半田パッドの露出している面全体(側面及び上面)に、Snを含む金属層を形成する。
Snを含む金属層を形成する方法としては、例えば、置換スズめっき法、無電解スズめっき法、電解スズめっき法、溶融スズ浸漬法等が挙げられる。それらの中でも、めっき膜の厚さの制御が容易といった観点から、置換スズめっき法が好ましい。この置換スズめっき法に用いられるめっき液としては、例えば、ホウフッ化スズとチオ尿素の混合液等が挙げられる。そして、銅からなる半田パッドに置換スズめっき法を行った場合、半田パッドの表面には、表層側から順に、Snからなる層(以下、Sn層ともいう)、及びSnとCuとが混在する層(以下、SnCu層ともいう)が形成される。
また、このような方法で金属層を形成した後には、必要に応じて、SnCu層が露出するように、Sn層をエッチングにより除去してもよい。これにより得られるSnCu層が金属層を構成する。なお、Sn層を除去する工程は任意である。
【0030】
また、上述した方法で形成した金属層の表面には水酸基が付与される。なお、Snを含む金属層に水酸基が付与されやすい理由は上述したとおりである。また、上記水酸基は、特別な処理を施さなくても、金属層表面に水分子が吸着することで付与されることとなるが、積極的に金属層の表面に水酸基を付与する処理を施してもよい。
金属層の表面に水酸基を付与する方法としては、例えば、第1の方法として、金属アルコキシドで半田パッドの表面を処理する方法が挙げられる。上記金属アルコキシドとしてはナトリウムメトキシド(CHONa)、ナトリウムエトキシド(CONa)、リチウムエトキシド(COLi)等が挙げられる。これら金属アルコキシドの溶液にプリント配線板を浸漬したり、半田パッドの表面にこの溶液をスプレーしたりすることにより水酸基を付与することができる。
また、例えば、第2の方法として、アルカリによって導体回路の表面を処理する方法が挙げられる。
上記アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、ナトリウムメトキサイド等が挙げられる。これらのアルカリの溶液にプリント配線板を浸漬したり、半田パッドの表面にアルカリ溶液をスプレーしたりすることにより水酸基を付与することができる。
さらに、例えば、第3の方法として、半田パッドに対して加湿処理、又は、水蒸気処理する方法等が挙げられる。
なお、この工程では、半田パッドを含む最外層の導体回路の全部に上記金属層を形成すればよい。
【0031】
(10)次に、上記金属層の上にシランカップリング剤からなる被膜を形成する。
ここで、被膜の形成は、例えば、シランカップリング剤を含む溶液をスプレー塗布し、その後、乾燥処理を行えばよい。なお、後述するソルダーレジスト層と、シランカップリング剤との組み合わせは、加熱によりソルダーレジスト層中の官能基とシランカップリング剤の官能基とが化学反応するように選択することが好ましい。 例えば、ソルダーレジスト層中にエポキシ基が含まれる場合には、シランカップリング剤としてアミノ官能性シランを選択すると、双方の密着性がより顕著に得られる。
これは、ソルダーレジスト層を形成する際の加熱により、エポキシ基とアミノ基とが容易に強固な化学結合を形成し、この結合が熱や水分に対して極めて安定であることに起因するものと考えられる。
【0032】
(11)次に、最外層の層間樹脂絶縁層及び半田パッド上に、ソルダーレジスト層を形成するとともに、このソルダーレジスト層に半田バンプを形成するための開口部を形成する。
具体的には、最上層の導体回路を含む層間樹脂絶縁層上に、ロールコータ法等によりソルダーレジスト組成物を塗布し、レーザ処理、露光、現像処理等による開口処理を行い、硬化処理等を行うことにより、所定の位置に開口部を備えたソルダーレジスト層を形成する。
【0033】
(12)次に、上記(11)の工程で形成したソルダーレジスト層の開口部の底部に半田パッドを露出させる。
上記(11)の工程終了時には、通常、開口部の底部に金属層が露出しており、この金属層を、硝酸水溶液と過酸化水素水とからなるエッチング溶液で除去するか、又は、ウェットブラスト法を用いて除去する。
さらに、これらの方法を用いて、ソルダーレジスト層の開口部の底部に半田パッドを露出させる場合、上記被膜及び金属層の除去と同時に、ソルダーレジスト層に形成した開口部に残る樹脂残査を除去するデスミア処理も同時に行うことができる。
【0034】
また、レーザ処理や露光現像処理等によりソルダーレジスト層に開口部を形成する際、及び/又は、エッチング液を用いる方法やウェットブラスト法等により金属層を除去する際に、金属層上の被膜も除去されることとなる。
【0035】
(13)次に、ソルダーレジスト層の開口部の底部に露出した半田パッド上に保護膜を形成する。
具体的には、まず、無電解ニッケルめっきにより、半田パッド上にNi層を形成し、その後、無電解金めっきにより、Ni層上にAu層を形成することにより、Ni層とAu層とからなる保護膜を形成する。
【0036】
(14)最後に、半田バンプの形成を行い、多層プリント配線板を完成する。
具体的には、ソルダーレジスト層の開口部分に半田ペーストを印刷し、リフローすることにより半田バンプを形成する。
【0037】
以下、第一実施形態の多層プリント配線板及び多層プリント配線板の製造方法の作用効果について列挙する。
(1)第一実施形態の多層プリント配線板では、半田パッドの表面に金属層が形成され、さらに、この金属層上にシランカップリング剤からなる被膜が形成されている。そのため、半田パッドとソルダーレジスト層とが金属層及び被膜を介して、強固に接着されることとなる。
これと同時に、半田パッドとこの半田パッド上の保護膜とは直接接続されている。そのため、半田パッドと保護膜との間での電気抵抗を小さくすることができる。
なお、半田パッドと保護膜との間での電気抵抗を小さくするためには、上記保護膜の全部が、その下の半田パッドと直接接続されていることが望ましい。
【0038】
(2)第一実施形態の多層プリント配線板では、上記金属層として、Snを含む金属層が形成されているため、金属層及びカップリング剤を介しての、半田パッドとソルダーレジスト層との密着性が高められることとなる。この理由は、既に説明したとおりである。
【0039】
(3)第一実施形態の多層プリント配線板では、半田パッドの表面は粗化されておらず、実質的に平坦である。
そのため、表皮効果に起因しての信号遅延が生じにくく、電気特性に優れる。
【0040】
(4)第一実施形態の多層プリント配線板では、半田パッドが無電解銅めっき膜と電解銅めっき膜とからなり、保護膜が上記半田パッドを構成する電解銅めっき膜の表面上に直接形成されている。
そのため、保護膜と半田パッドとの密着性が確保されるとともに、半田パッドと半田バンプとの間で電気抵抗が増大するおそれもない。
【0041】
(5)第一実施形態の多層プリント配線板の製造方法では、第一実施形態の多層プリント配線板を好適に製造することができる。
そして、第一実施形態の多層プリント配線板では、Snを含む金属層の除去を、硝酸水溶液と過酸化水素水とからなるエッチング溶液を用いる方法や、ウェットブラスト法により行っているため、ソルダーレジスト層に形成した開口部の底部の金属層を確実に除去することができる。
また、上記の方法を用いることにより、金属層の除去と同時にソルダーレジスト層に開口部を形成した際の樹脂残査を除去するデスミア処理も同時に行うことができる。
【0042】
以下に実施例を掲げて、第一実施形態について、さらに詳しく説明するが、本発明の実施形態はこれら実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
(A)樹脂充填材の調製
ビスフェノールF型エポキシモノマー(油化シェル社製、分子量:310、YL983U)100重量部、表面にシランカップリング剤がコーティングされた平均粒子径が1.6μmで、最大粒子の直径が15μm以下のSiO球状粒子(アドテック社製、CRS 1101−CE)170重量部およびレベリング剤(サンノプコ社製 ペレノールS4)1.5重量部を容器にとり、攪拌混合することにより、その粘度が23±1℃で45〜49Pa・sの樹脂充填材を調製した。なお、硬化剤として、イミダゾール硬化剤(四国化成社製、2E4MZ−CN)6.5重量部を用いた。
【0043】
(B)多層プリント配線板の製造
(1)図2Aに示すような、厚さ0.8mmのガラスエポキシ樹脂からなる絶縁性基板11の両面に18μmの銅箔18がラミネートされている銅張積層板を出発材料とした。
次に、図2Bに示すように、この銅張積層板をドリル削孔し、スルーホール導体用の貫通孔29を形成した。
【0044】
次に、図2Cに示すように、銅箔18上と貫通孔29の内壁表面とに無電解銅めっき処理と電解銅めっき処理とを施し、無電解銅めっき膜と無電解銅めっき膜上の電解銅めっき膜とからなるスルーホール導体19を含む導体層を形成した。
【0045】
(2)次に、スルーホール導体19を形成した基板を水洗いし、乾燥した後、NaOH(10g/l)、NaClO(40g/l)、NaPO(6g/l)を含む水溶液を黒化浴(酸化浴)とする黒化処理、および、NaOH(10g/l)、NaBH(6g/l)を含む水溶液を還元浴とする還元処理を行い、スルーホール導体19の表面を粗化面(図示せず)とした。
【0046】
(3)次に、図2Dに示すように、スルーホール導体19の内部に、上記(A)に記載した樹脂充填材を下記の方法で充填した。
すなわち、まず、スキージを用いてスルーホール導体19内に樹脂充填材を押し込んだ後、100℃、20分の条件で乾燥させた。続いて、基板の片面を、♯600のベルト研磨紙(三共理化学社製)を用いたベルトサンダー研磨により、電解銅めっき膜上に樹脂充填材が残らないように研磨し、次いで、上記ベルトサンダー研磨による傷を取り除くためのバフ研磨を行った。このような一連の研磨を基板の他方の面についても同様に行った。
次いで、100℃で1時間、120℃で3時間、150℃で1時間、180℃で7時間の加熱処理を行って樹脂充填材層20を形成した。
【0047】
(4)次に、図2Eに示すように、電解銅めっき膜上と樹脂充填材層20上とに無電解銅めっき膜と電解銅めっき膜とからなる導体層21を形成した。続いて、図2Fに示すように、サブトラクティブ法で絶縁性基板11上に導体回路14を形成した。この時、同時に樹脂充填材層20を覆う導体回路30も形成した。
【0048】
(5)次に、図2Gに示すように、絶縁性基板11と導体回路14との上に、層間樹脂絶縁層形成用フィルム(味の素社製、ABF)を用いて層間樹脂絶縁層12を形成した。
即ち、層間樹脂絶縁層用樹脂フィルムを基板上に、真空度65Pa、圧力0.4MPa、温度80℃、時間60秒の条件で積層し、その後、170℃で30分間熱硬化させた。
【0049】
(6)次に、層間樹脂絶縁層12にCOガスレーザにて、直径60μmの開口部16を形成した(図3A参照)。
【0050】
(7)次に、層間樹脂絶縁層12の表面(開口部16の内壁面を含む)に、パラジウム触媒(図示せず)を付与した。その後、次亜リン酸ナトリウムを還元剤とする無電解銅めっき水溶液(MF−390、日本マクダーミッド社製)中に、上記パラジウム触媒を付着させた基板を浸漬し、層間樹脂絶縁層12の表面(開口部16の内壁面を含む)に厚さ0.1〜0.3μmの無電解銅めっき膜22を形成した(図3B参照)。
なお、無電解銅めっき条件は、75℃の液温度で4分間とした。
【0051】
(8)次に、無電解銅めっき膜22上に市販の感光性ドライフィルムを張り付け、マスクを載置して、露光・現像処理することにより、厚さ25μmのめっきレジスト13を設けた(図3C参照)。
【0052】
(9)次に、めっきレジスト13を形成した基板を50℃の水で洗浄して脱脂し、25℃の水で水洗後、さらに硫酸で洗浄してから、以下の条件で電解めっきを施し、めっきレジスト13非形成部に、厚さ20μmの電解銅めっき膜23を形成した(図3D参照)。
〔電解銅めっき液〕
硫酸 150g/L
硫酸銅 150g/L
塩素イオン 8mg/L
添加剤 4ml/L(奥野製薬工業社製、トップルチナNSV−1)
0.5ml/L(奥野製薬工業社製、トップルチナNSV−2)
1ml/L(奥野製薬工業社製、トップルチナNSV−3)
〔電解めっき条件〕
電流密度 1A/dm
時間 90分
温度 23℃
【0053】
(10)次に、めっきレジスト13を剥離除去した。続いて、隣接する電解銅めっき膜の間の無電解銅めっき膜22を硫酸と過酸化水素との混合液でエッチング処理して溶解除去した。これにより、無電解銅めっき膜22と無電解銅めっき膜上の電解銅めっき膜23とからなる厚さ18μmの導体回路14と、ビア導体17とを形成した(図4A参照)。
【0054】
(11)次に、上記(5)〜(10)の工程と同様の方法を用いて、層間樹脂絶縁層12と導体回路14(ビア導体17を含む)を形成した(図4B〜図5A参照)。なお、ここで形成した導体回路の一部は、後工程において、半田パッド34となる。
【0055】
(12)次に、最外層の導体回路14a(半田パッド34を含む)を形成した基板を10%硫酸水溶液に10秒間浸漬した後、水洗いし、さらに、エアカットで乾燥させた。
【0056】
(13)次に、ホウフッ化スズ0.1mol/L及びチオ尿素1mol/Lを含有し、ホウフッ酸でpHが約1.2になるように調整した置換スズめっき液に、基板を30℃、30秒の条件で浸漬した後、30秒間水洗いした。ついで、エアカットで乾燥させた。
このめっき処理により、最外層の導体回路14a(半田パッド34を含む)の表面にSnCu層とSn層とが順次形成された。
そして、SnCu層の厚さが約5〜10nmであり、Sn層の厚さが約50nmであった。
【0057】
(14)次に、基板を1%硝酸水溶液に10秒間浸漬した後、20秒間水洗いした。
この処理により、Sn層が除去され、SnCu層が露出した。
【0058】
(15)次に、濃度が1重量%となるように調整したγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製、KBE−903)の水溶液を最外層の導体回路14a上(SnCu層上)にスプレー塗布した。
続いて、基板を90〜120℃で30〜150秒間乾燥させた後、水洗して余分なシランカップリング剤を除去した。
このような、上記(12)〜(15)の工程を行うことにより、最外層の導体回路14a(半田パッド34を含む)上にSnを含む金属層とシランカップリング剤とからなる導体回路被覆層15が形成された(図5B参照)。
【0059】
(16)次に、図5Cに示すように、最外層に、市販のソルダーレジスト組成物(日立化成社製、7200G)を30μmの厚さで塗布し、70℃で20分間、70℃で30分間の条件で乾燥処理を行い、市販のソルダーレジスト組成物の層24′を形成した。
【0060】
(17)次に、図6Aに示すように、半田バンプ形成用開口のパターンが描画された厚さ5mmのフォトマスクをソルダーレジスト組成物の層24′に密着させて1000mJ/cmの紫外線で露光し、DMTG溶液で現像処理し、半田バンプ形成用開口28を形成した。
さらに、80℃で1時間、100℃で1時間、120℃で1時間、150℃で3時間の条件でそれぞれ加熱処理を行ってソルダーレジスト組成物の層24′を硬化させ、半田バンプ形成用開口28を有するソルダーレジスト層24(20μm厚)を形成した。
【0061】
(18)次に、半田バンプ形成用開口28内に、15〜20重量%の硝酸水溶液と、1〜2重量%の過酸化水素水とを含むエッチング溶液をスプレー塗布した。
これにより、半田バンプ形成用開口28内の樹脂残査とともに、シランカップリング剤からなる被膜及びSnCu層が除去された。その結果、半田バンプ形成用開口28内の底部には、半田パッド34の一部(露出面34a)が露出した。
【0062】
また、上記工程(18)が終了した後、開口部の底面をSEMで観察し、露出面の構成元素を分析したところ、Snのピークは検出されなかった。従って、上記エッチング溶液を用いた処理により、SnCu層が完全に除去されていると考えられる。
【0063】
(19)次に、ソルダーレジスト層24を形成した基板を、塩化ニッケル(2.3×10−1mol/l)、次亜リン酸ナトリウム(2.8×10−1mol/l)、クエン酸ナトリウム(1.6×10−1mol/l)を含むpH=4.5の無電解ニッケルめっき液に20分間浸漬して、半田バンプ形成用開口28に厚さ5μmのニッケルめっき層31を形成した。さらに、その基板をシアン化金カリウム(7.6×10−3mol/l)、塩化アンモニウム(1.9×10−1mol/l)、クエン酸ナトリウム(1.2×10−1mol/l)、次亜リン酸ナトリウム(1.7×10−1mol/l)を含む無電解金めっき液に80℃の条件で7.5分間浸漬して、ニッケルめっき層31上に、厚さ0.03μmの金めっき層32を形成し、両者を併せて保護膜33とした。
【0064】
(20)次に、ソルダーレジスト層24に形成した半田バンプ形成用開口28に半田ペーストを印刷し、200℃でリフローすることにより、半田バンプ27を形成し、多層プリント配線板10を完成した(図6B参照)。
【0065】
(実施例2)
実施例1の(18)の工程で、半田バンプ形成用開口28内の樹脂残査とともに、シランカップリング剤からなる被膜及びSnCu層を除去するために、エッチング溶液を用いる方法に代えて、下記の条件のウェットブラスト法を用いた以外は、実施例1と同様にして多層プリント配線板を製造した。
ウェットブラスト法は、粒子径7μm(♯2000番)、c/s=1.5m/min、圧力0.2MPaの条件で行った。
【0066】
以下に、Snを含む金属層に代えて他の金属からなる金属層を用いる実施例について列挙する。
(実施例3)
実施例3においては、実施例1における置換Snめっきに代えて、無電解Niめっきを行い、最外層の導体回路14a(半田パッド34を含む)の表面にNi層を形成する。その後、上記(15)〜(20)の工程を行う。
(実施例4)
実施例4においては、実施例1における置換Snめっきに代えて、置換Pdめっきを行う。すなわち、最外層の導体回路14a(半田パッド34を含む)を形成した基板を置換Pdめっき浴に所定時間浸漬することによりPd層を形成する。その後、上記(15)〜(20)の工程を行う。
(実施例5)
実施例5においては、実施例1における置換Snめっきに代えて、置換Auめっきを行う。すなわち、最外層の導体回路14a(半田パッド34を含む)を形成した基板を置換Auめっき浴に所定時間浸漬することによりAu層を形成する。その後、上記(15)〜(20)の工程を行う。
(実施例6)
実施例6においては、実施例1における置換Snめっきに代えて、無電解Agめっきを行い、最外層の導体回路14a(半田パッド34を含む)の表面にAg層を形成する。その後、上記(15)〜(20)の工程を行う。
(実施例7)
実施例7においては、実施例1における置換Snめっきに代えて、無電解Ptめっきを行い、最外層の導体回路14a(半田パッド34を含む)の表面にPt層を形成する。その後、上記(15)〜(20)の工程を行う。
(実施例8)
実施例8においては、実施例1における置換Snめっきに代えて、Znめっきを行い、最外層の導体回路14a(半田パッド34を含む)の表面にZn層を形成する。その後、上記(15)〜(20)の工程を行う。
(実施例9)
実施例9においては、実施例1における置換Snめっきに代えて、最外層の導体回路14a(半田パッド34を含む)の表面にスパッタリングでCo層を形成する。その後、上記(15)〜(20)の工程を行う。
(実施例10)
実施例10においては、実施例1における置換Snめっきに代えて、最外層の導体回路14a(半田パッド34を含む)の表面にスパッタリングでTi層を形成する。その後、上記(15)〜(20)の工程を行う。
【0067】
(比較例1)
半田パッド表面にSnを含む金属層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして多層プリント配線板を製造した。
従って、比較例1の多層プリント配線板では、半田パッド34とソルダーレジスト層24とが、金属層を介さずにカップリング剤からなる被膜のみを介して接触していることとなる。
【0068】
(比較例2)
半田パッド表面にシランカップリング剤からなる被膜を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして多層プリント配線板を製造した。
従って、比較例2の多層プリント配線板では、半田パッド34の表面に金属層が形成されて、半田パッド34とソルダーレジスト層24とがシランカップリング剤を介さずに接していることとなる。
【0069】
(比較例3)
ソルダーレジスト層に開口部を形成した後、開口部の底面に露出した金属層を除去する工程を行わなかった以外は、実施例1と同様にして多層プリント配線板を製造した。
従って、比較例3の多層プリント配線板では、半田パッド34と保護膜33とがSnを含む金属層を介して接続されていることとなる。
【0070】
実施例1、2及び比較例1、2の多層プリント配線板の評価。
(1)半田パッドとソルダーレジスト層との密着性の評価
実施例1、2及び比較例1、2の多層プリント配線板について、下記の方法で初期段階及び加湿試験後におけるピール強度を測定した。その結果を表1に示す。
<初期段階(加湿試験前)>
実施例1、2及び比較例1、2の多層プリント配線板について、それぞれ加湿試験を行う前のピール強度を測定した。このピール強度の測定には、オートグラフAGS50A(島津製作所(株)社製)を用い、層間樹脂絶縁層を約10mm/minの速度で導体回路から引き剥がした。
<加湿試験後>
実施例1、2及び比較例1、2の多層プリント配線板について、それぞれ120〜130℃、湿度85%の条件下で100時間保持した後、上記と同様にピール強度を測定した。
【0071】
【表1】

【0072】
表1から分かるように、半田パッドを形成するCuの表面に直接カップリング剤を付与した比較例1においては、良好なピール強度は得られなかった。また、カップリング剤を付与せずにSnCu合金がソルダーレジスト層に接している比較例2においても、同様に良好なピール強度は得られなかった。また、両者は、加湿試験後においては、全く密着性が得られていないことが判明した。これに対し、半田パッドの表面にSnCu合金を形成してカップリング剤を介してソルダーレジスト層を形成している実施例1、2においては、SnCu合金及びカップリング剤の協働作用により良好なピール強度が得られた。
【0073】
(2)半田パッドと半田バンプとの密着性の評価
実施例1、2及び比較例3の多層プリント配線板について、半田パッドに対する半田バンプの密着性を下記の方法で評価した。すなわち、実施例1、2及び比較例3の多層プリント配線板について、それぞれ55℃、湿度85%の条件下で19時間保持した後、260℃まで昇温する操作を200回繰り返した。その後、多層プリント配線板をクロスカットして半田パッドと半田バンプとの接続部分を顕微鏡観察した。
その結果、実施例1、2においては、半田バンプは半田パッドの表面にしっかりと接続され、半田パッドに対する半田バンプの剥離は全く観察されなかった。一方、比較例3においては、半田パッドに対する半田バンプの剥離が観察された。
【0074】
(その他の実施形態)
上述した実施形態では、半田パッドの側面及び上面のうちの一部に形成される金属層として、Snを含む金属層が採用されている。
しかしながら、本発明の実施形態の多層プリント配線板において、金属層の材質は、Snを含む金属層に限定されず、Sn、Ni、Zn、Co、Ti、Pd、Ag、Pt及びAuのうちの少なくとも1種の金属を含む金属層であればよい。
これらの金属は、Cuよりも、カップリング剤との密着性に優れるからである。
ただし、これらのなかでは、Snを含む金属層が望ましい。
この理由は、既に説明したように、表面に水酸基を付着させやすく、カップリング剤との密着性に特に優れるからである。
【0075】
また、上述した実施形態では、被膜を構成するカップリング剤として、シランカップリング剤が採用されている。
しかしながら、本発明の実施形態の多層プリント配線板において、カップリング剤は、シランカップリング剤に限定されず、例えば、アルミネート系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤等であってもよい。
【0076】
さらに、上記シランカップリング剤は、ソルダーレジスト層の材質を考慮して選択すればよいが、例えば、上記ソルダーレジスト組成物として、エポキシ樹脂を含む樹脂組成物を用いる場合には、有機官能基として、アミノ基を有するシランカップリング剤を選択することが望ましい。この組合せでは、ソルダーレジスト層とシランカップリング剤とが強固に結合しやすいからである。
【0077】
ソルダーレジスト組成物としては、例えば、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等からなるソルダーレジスト組成物が挙げられる。
また、上記以外のソルダーレジスト組成物としては、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂の(メタ)アクリレート、イミダゾール硬化剤、2官能性(メタ)アクリル酸エステルモノマー、分子量500〜5000程度の(メタ)アクリル酸エステルの重合体、ビスフェノール型エポキシ樹脂等からなる熱硬化性樹脂、多価アクリル系モノマー等の感光性モノマー、グリコールエーテル系溶剤などを含むペースト状の流動体が挙げられる。
また、ソルダーレジスト組成物の層を形成する際には、上記ソルダーレジスト組成物からなるフィルムを圧着してソルダーレジスト組成物の層を形成してもよい。
【0078】
上述した実施形態では、金属層や被膜を除去して、ソルダーレジスト層に形成した開口部の底部に半田パッドを露出させるためのエッチング溶液として、硝酸水溶液と過酸化水素水とからなるエッチング溶液を使用しているが、これ以外のエッチング溶液として、例えば、過マンガン酸水溶液等を用いてもよい。
【0079】
上述した実施形態では、保護膜として、Ni層とAu層の2層からなる保護膜が形成されているが、上記保護膜の総数は、2層に限定されず、1層であってもよいし、3層以上であってもよい。
また、上記保護膜の材質としては、例えば、Ni、Au、Pd、これらの複合体等が挙げられる。
【0080】
また、上記ソルダーレジスト層の開口部をレーザ処理により形成する場合、上記レーザ処理に使用するレーザとしては、例えば、炭酸ガスレーザ、紫外線レーザ、エキシマレーザ等が挙げられる。
【0081】
第一実施形態の多層プリント配線板では、絶縁性基板の両面に形成される層間樹脂絶縁層の総数が同数であるが、絶縁性基板の両側で総数が異なっていてもよい。
【0082】
また、上記金属層の形成方法としては、スパッタリングを用いても良い。
【符号の説明】
【0083】
10 多層プリント配線板
11 絶縁性基板
12 層間樹脂絶縁層
13 めっきレジスト
14、14a 導体回路
15 導体回路被覆層
17 ビア導体
19 スルーホール導体
20 樹脂充填材層
22 無電解銅めっき膜
23 電解銅めっき膜
24 ソルダーレジスト層
27 半田バンプ
33 保護膜
34 半田パッド


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1層間樹脂絶縁層と、
前記第1層間樹脂絶縁層上に形成されて、電子部品を搭載するためのパッドと、
前記第1層間樹脂絶縁層と前記パッドとの上に形成され、前記パッドに到達する開口部を有するソルダーレジスト層と、
前記開口部の底部に位置し、前記パッド上に形成されている保護膜と
を備える多層プリント配線板であって、
前記パッドの表面に、Sn、Ni、Zn、Co、Ti、Pd、Ag、Pt及びAuのうちの少なくとも1種の金属を含む金属層が形成され、
前記金属層上に、カップリング剤からなる被膜が形成され、
前記保護膜の少なくとも一部は、前記開口部によって露出される前記パッドの露出面に直接形成されており、
前記ソルダーレジスト層は、エポキシ樹脂からなる
ことを特徴とする多層プリント配線板。
【請求項2】
前記保護膜の全体が、前記開口部によって露出される前記パッドの露出面に直接形成されている請求項1に記載の多層プリント配線板。
【請求項3】
前記パッドは、前記層間樹脂絶縁層上に形成されている無電解めっき膜と、当該無電解めっき膜上に形成されている電解めっき膜とからなり、前記保護膜は前記パッドを構成する電解めっき膜の表面上に形成されている請求項1又は2に記載の多層プリント配線板。
【請求項4】
前記保護膜は、前記パッド上に形成されているNi層と前記Ni層上に形成されているAu層とを有し、前記Ni層は前記開口部によって露出される前記パッドの露出面上に直接形成されている請求項1〜3のいずれかに記載の多層プリント配線板。
【請求項5】
前記金属層を形成する金属の酸化物の等電点は5以下である請求項1〜4のいずれかに記載の多層プリント配線板。
【請求項6】
前記金属層は、Snを含有してなる請求項1〜5のいずれかに記載の多層プリント配線板。
【請求項7】
前記パッドの表面は、実質的に平坦である請求項1〜6のいずれかに記載の多層プリント配線板。
【請求項8】
前記保護膜上には半田部材が形成されている請求項1〜7のいずれかに記載の多層プリント配線板。
【請求項9】
層間樹脂絶縁層と、導体回路とが交互に積層され、さらに、最外層の前記層間樹脂絶縁層上に電子部品を搭載するためのパッドを備える多層配線層を形成する工程と、
前記パッドの表面の少なくとも一部に、Sn、Ni、Zn、Co、Ti、Pd、Ag、Pt及びAuのうちの少なくとも1種の金属を含む金属層を形成する工程と、
前記金属層上に、カップリング剤からなる被膜を形成する工程と、
前記最外層の層間樹脂絶縁層と、前記パッドとの上に、エポキシ樹脂からなるソルダーレジスト層を形成するとともに、前記ソルダーレジスト層のうち前記パッド上に位置する箇所に当該ソルダーレジスト層を貫通する開口部を形成する工程と、
前記開口部から露出する前記金属層を除去する工程と、
前記開口部の底部に露出した前記パッド上に保護膜を形成する工程とを備える
ことを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
【請求項10】
前記金属層を除去する工程は、エッチング溶液を用いて行う請求項9に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項11】
前記金属層を除去する工程は、ウェットブラスト法を用いて行う請求項9に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項12】
前記パッドの表面にSnめっきを行うことで前記金属層を形成する請求項9〜11のいずれかに記載の多層プリント配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−109631(P2012−109631A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−54991(P2012−54991)
【出願日】平成24年3月12日(2012.3.12)
【分割の表示】特願2009−533603(P2009−533603)の分割
【原出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】