説明

多層配線基板

【課題】交互に積層されてなる少なくとも1層の導体層及び少なくとも1層の樹脂絶縁層を含むビルドアップ層と、少なくとも1層の樹脂絶縁層の表面上において、表面から突出するようにして形成され導電性パッドと、導電性パッドの上面において形成されたはんだ層とを備える多層配線基板において、導電性パッドの上面において十分な量のはんだペーストを供給して保持することができ、はんだ層の厚み不足による半導体素子との接続不良及びはんだ層の破損を抑制する。
【解決手段】少なくとも1層の樹脂絶縁層の表面上において、この表面から突出するようにして形成された導電性パッドの上面の中央部を凹ませ、この導電性パッドの上面において、上面の外周縁部によって画定される表面レベルよりも、表面全体が上方に位置するようにしてはんだ層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子部品を搭載するパッケージとしては、コア基板の両側に樹脂絶縁層と導体層とを交互に積層してビルドアップ層を形成した多層配線基板が用いられている。多層配線基板において、コア基板は例えばガラス繊維を含んだ樹脂からなり、高い剛性によりビルドアップ層を補強する役割がある。
【0003】
しかしながら、コア基板は厚く形成されるため、多層配線基板の小型化の妨げになるとともに、ビルドアップ層間を電気的に接続するスルーホール導体を設ける必要があるため配線長が必然的に長くなり、高周波信号の伝送性能の劣化を招く恐れがある。
【0004】
このような観点から、近年では、コア基板を設けることなく、小型化に適し、かつ高周波信号の伝送性能の向上が可能な構造を有する、いわゆるコアレス多層配線基板が提案されている(特許文献1、特許文献2)。このようなコアレス多層配線基板は、例えば、剥離可能な2つの金属膜を積層してなる剥離シートを表面に設けた支持体にビルドアップ層を形成した後、上記剥離シートの剥離界面で分離することによりビルドアップ層を支持体から分離して、目的とする多層配線基板を得るものである。
【0005】
一方、多層配線基板の半導体素子搭載領域に位置し、半導体素子とフリップチップ接続するための導電性パッドは、最上層に位置するレジスト層の下方において、レジスト層に形成された開口から露出するようにして形成するのみならず、レジスト層の表面において、このレジスト層の表面から突出するようにして形成する場合がある(特許文献3)。このような場合、導電性パッドに対してはんだペーストを供給してはんだ層を形成し、半導体素子とフリップチップ接合しようとした場合において、はんだペーストが導電性パッドの上面から流れ出してしまい、はんだ層を十分に厚く形成することができない。
【0006】
この結果、半導体素子との接続不良やはんだ層の厚み不足によってクラックが発生してしまい、はんだ層が破損してしまうなどの問題が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−289848号
【特許文献2】特開2007−214427号
【特許文献3】特開2009−212140号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、交互に積層されてなる少なくとも1層の導体層及び少なくとも1層の樹脂絶縁層を含むビルドアップ層と、少なくとも1層の樹脂絶縁層の表面上において、表面から突出するようにして形成された導電性パッドと、導電性パッドの上面において形成されたはんだ層とを備える多層配線基板において、導電性パッドの上面において十分な量のはんだペーストを供給して保持することができ、はんだ層の厚み不足による半導体素子との接続不良及びはんだ層の破損を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく、本発明は、
導体層及び樹脂絶縁層が交互に積層されてなるビルドアップ層と、
前記樹脂絶縁層の表面から突出して形成され、上面の中央部が凹んでなる導電性パッドと、
前記導電性パッドの前記上面において、前記中央部よりも外周側に位置する外周縁部によって画定される表面レベルに対し、上方に位置して形成されたはんだ層と、
を備えることを特徴とする、多層配線基板に関する。
【0010】
本発明によれば、最上層に位置するレジスト層等の、樹脂絶縁層の表面から突出した導電性パッドの上面を、その中央部が凹むようにして形成している。したがって、導電性パッドに供給したはんだペーストは、その上面の凹みにおいて保持されるようになるので、形成されるはんだ層の、導電性パッド上における厚さは十分に保持されるようになる。したがって、半導体素子との接続不良やはんだ層の厚み不足によってクラックが発生し、はんだ層が破損してしまうなどの問題を生じることがない。
【0011】
また、はんだ層(はんだバンプ)は、導電性パッド上に、酸化物を除去するためのフラックスを塗布してからはんだペーストを印刷し、その後リフローすることによって形成されるが、本発明では、導電性パッドの中央部が凹んでいるので、当該中央部に十分な量のフラックスを保持することができる。
【0012】
また、本発明の一例において、導電性パッドの上面は、連続した曲面を構成するように形成することができる。この場合、導電性パッドの中心部における凹みを簡易に形成することができるとともに、はんだ層の形成時及び/又は多層配線基板の、半導体素子とのフリップチップ接合時において、外周縁部に対する応力集中を抑制することができ、当該外周縁部すなわち導電性パッドの破損を防止することができる。
【0013】
さらに、本発明の一例において、はんだ層は、導電性パッドの側面を覆うようにして形成することができる。この場合、形成したはんだ層をリフローした場合において、多層配線基板と半導体素子とのフリップチップ接合に供するはんだの絶対量を増大させることができるので、上述した作用効果をより顕著に奏することができるようになる。
【0014】
なお、特開2010−226075号公報(以下、“参考特許文献”という)には、本発明のように、導電性パッドの上面に凹みを形成し、この凹み部分にはんだペーストを供給して保持し、電子部品等に対する接合層を形成する技術が開示されている(例えば、段落[0088]及び図19A,19B参照)。しかしながら、当該公報は電子部品内蔵配線板に関するものであって、上述の導電性パッドは、配線板に内蔵する電子部品と配線板との電気的接続を図るために設けられているものである。このため、上記導電性パッドは、電子部品が配線板に内蔵された導体パターンと接触しないように、この導体パターンよりも突出させて形成している(例えば、段落[0044]参照)。
【0015】
一方、本発明は、上述のように多層配線基板の外表面において半導体素子を搭載するものであって、接続に要する導電性パッドは、多層配線基板の最上層に位置する少なくとも1層の樹脂絶縁層から突出するようにして形成する。したがって、本発明と参考特許文献とは、技術分野の相違に基づいて、導電性パッドの形態が相異なる。
【0016】
また、参考特許文献においては、導電パッド上でのはんだの保持については何ら問題にしておらず、導電性パッドの上面に凹みを形成する、しないの有無によってはんだの保持に影響を与えるようなことについては何ら言及していない(例えば、段落[0088]及び図19A,19B参照)。
【0017】
したがって、本発明と参考特許文献とは互いに構成を異にするばかりでなく、参考特許文献には、本発明を示唆するような記載も何ら存在しないことが明白である。
【0018】
また、本発明の一例において、導電性パッドとはんだ層との間に、導電性パッドの全面を被覆して形成されたバリアメタル層を備え、はんだ層は、導電性パッドの全面を被覆するバリアメタル層を介して導電性パッドを覆い、導電性パッドの樹脂絶縁層側に位置する側端面上に形成されたバリアメタル層の被覆厚みは、該側端面よりも上部に位置する前記導電性パッドの表面上に形成されたバリアメタル層の被覆厚みよりも大きくすることができる。
【0019】
上述のように、導電性パッドの全面を覆うようにしてはんだ層を形成した場合、はんだ層と樹脂絶縁層、特にレジスト層との密着性は著しく低い場合がある。したがって、多層配線基板と半導体素子とをフリップチップ接合する前後において、はんだ層と樹脂絶縁層との間で剥離が生じ、半導体素子の接続不良等を生じる場合がある。
【0020】
しかしながら、上述のように導電性パッドとはんだ層との間にバリアメタル層を形成した場合、このバリアメタル層の樹脂絶縁層に対する密着性は、はんだ層の樹脂絶縁層に対する密着性に比して十分に高い。さらに、導電性パッドの樹脂絶縁層側に位置する側端面上に形成されたバリアメタル層の被覆厚みは、該側端面よりも上部に位置する前記導電性パッドの表面上に形成されたバリアメタル層の被覆厚みよりも大きくしているので、上述した密着性の向上はより顕著になる。
【0021】
したがって、多層配線基板と半導体素子とをフリップチップ接合する前後において、バリアメタル層と樹脂絶縁層との間で剥離が生じず、その結果、はんだ層と樹脂絶縁層との間でも剥離が生じなくなる。このため、半導体素子の接続不良等を防止することができる。
【0022】
なお、上記はんだ層をバリアメタル層上にのみ形成し、樹脂絶縁層と接触しないようにすれば、例えば、上記はんだ層の、樹脂絶縁層と接触した端部が部分的に剥離したりすることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、交互に積層されてなる少なくとも1層の導体層及び少なくとも1層の樹脂絶縁層を含むビルドアップ層と、少なくとも1層の樹脂絶縁層の表面上において、表面から突出するようにして形成された導電性パッドと、導電性パッドの上面において形成されたはんだ層とを備える多層配線基板において、導電性パッドの上面において十分な量のはんだペーストを供給して保持することができ、はんだ層の厚み不足による半導体素子との接続不良及びはんだ層の破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1の実施形態における多層配線基板の平面図である。
【図2】同じく、第1の実施形態における多層配線基板の平面図である。
【図3】図1及び2に示す多層配線基板をI−I線に沿って切った場合の断面の一部を拡大して示す図である。
【図4】図3に示す導電性パッドの近傍を拡大して示す断面図である。
【図5】導電性パッドの変形例を示す拡大断面図である。
【図6】第1の実施形態における多層配線基板の製造方法における一工程図である。
【図7】第1の実施形態における多層配線基板の製造方法における一工程図である。
【図8】第1の実施形態における多層配線基板の製造方法における一工程図である。
【図9】第1の実施形態における多層配線基板の製造方法における一工程図である。
【図10】第1の実施形態における多層配線基板の製造方法における一工程図である。
【図11】第1の実施形態における多層配線基板の製造方法における一工程図である。
【図12】第1の実施形態における多層配線基板の製造方法における一工程図である。
【図13】第1の実施形態における多層配線基板の製造方法における一工程図である。
【図14】第1の実施形態における多層配線基板の製造方法における一工程図である。
【図15】第1の実施形態における多層配線基板の製造方法における一工程図である。
【図16】第2の実施形態における多層配線基板の断面の一部を拡大して示す図である。
【図17】図16に示す導電性パッドの近傍を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0026】
(第1の実施形態)
(多層配線基板)
図1及び図2は、本実施形態における多層配線基板の平面図であり、図1は、前記多層配線基板を上側から見た場合の状態を示し、図2は、前記多層配線基板を下側から見た場合の状態を示している。また、図3は、図1及び2に示す前記多層配線基板をI−I線に沿って切った場合の断面の一部を拡大して示す図であり、図4は、図3に示す導電性パッドの近傍を拡大して示す断面図である。
【0027】
但し、以下に示す多層配線基板は本発明の特徴を明確にするための例示であって、導体層及び樹脂絶縁層が交互に積層されてなるビルドアップ層と、樹脂絶縁層の表面上において、前記表面から突出するようにして形成され、上面の中央部が凹んでなる導電性パッドと、導電性パッドの上面において、上面の外周縁部によって画定される表面レベルよりも、表面全体が上方に位置するようにして形成されたはんだ層とを備えていれば特に限定されるものではない。
【0028】
図1〜3に示す多層配線基板10は、必要に応じてシリカフィラー等を含む熱硬化性樹脂組成物からなる第1の樹脂絶縁層21及び第2の樹脂絶縁層22と、銅等の電気的良導体からなり、それぞれ所定のパターンを有する第1の導体層31及び第2の導体層32とが交互に積層されている。また、第1の樹脂絶縁層21上には、開口部41Aが形成されてなる、例えばエポキシ系のレジスト材からなる第1のレジスト層41が形成され、第2の樹脂絶縁層22上には、開口部、すなわちビアホール42Aが形成されてなる、例えばエポキシ系のレジスト材からなる第2のレジスト層42が形成されている。
【0029】
なお、順次に積層されてなる第1のレジスト層41、第1の樹脂絶縁層21、第1の導電層31、第2の樹脂絶縁層22、第2の導電層32及び第2のレジスト層42は、ビルドアップ層を構成する。
【0030】
また、第1の樹脂絶縁層21及び第2の樹脂絶縁層22には、これらの層を厚さ方向に貫通するようにして開口部、すなわちビアホール21A及び22Aがそれぞれ形成され、これらビアホール21A及び22Aを埋設するようにして、ビア導体51及び52がそれぞれ形成されている。なお、ビア導体52によって第1の導体層31及び第2の導体層32は互いに電気的に接続されるようになる。
【0031】
この場合、第1の導体層31の、ビア導体51と電気的に接触する部分311はビアランドを構成し、ビア導体51と接触していない部分312は配線層を構成する。同じく、第2の導体層32の、ビア導体52と電気的に接触する部分321はビアランドを構成し、ビア導体52と接触していない部分322は配線層を構成する。
【0032】
第1のレジスト層41の開口部41Aからは、第1の樹脂絶縁層21上に形成された第1の導電性パッド61が露出している。なお、ビア導体51によって第1の導体層31及び第1の導電性パッド61は互いに電気的に接続されるようになる。
【0033】
なお、第1の導電性パッド61は、多層配線基板10をマザーボードに接続するための裏面ランド(LGAパッド)として利用されるものであって、多層配線基板10の裏面において矩形状に配列されている。
【0034】
また、第2のレジスト層42のビアホール42A内には、このビアホール42Aを埋設するようにしてビア導体53が形成され、さらに第2のレジスト層42の表面から突出するとともにビア導体53と連続するようにして、凸状の第2の導電性パッド62が形成されている。なお、ビア導体53によって第2の導体層32及び導電性パッド62は互いに電気的に接続されるようになる。
【0035】
なお、第2の導電性パッド62は、図示しない半導体素子をフリップチップ接続するためのパッド(FCパッド)であり、半導体素子搭載領域を構成する。第2の導電性パッド62は、多層配線基板10の表面の略中心部において矩形状に配置されている。
【0036】
また、上述した説明から明らかなように、ビア導体51、52及び53によって、第1の導電性パッド61、第1の導体層31、第2の導体層32及び第2の導電性パッド62は、多層配線基板10の厚さ方向において電気的に接続されている。
【0037】
図3及び図4に示すように、第2の導電性パッド62の上面62Aは、その中央部62A−1が凹むとともに連続した凹曲面を構成し、いわゆる上面62Aの上方に曲率中心を有するように湾曲してなる半円状の断面を有するよう(すり鉢状)に構成されている。そして、その上面62A及び側面62Bを覆うようにして、例えばSn−Bi、Sn−Ag、Sn−Cu、Sn−Ag−Cu、Sn−Sb等の実質的にPbを含有しないはんだペーストからなるはんだ層64が形成されている。
【0038】
なお、多層配線基板10の大きさは、例えば200mm×200mm×0.8mmの大きさに形成することができる。
【0039】
図3及び図4に示すように、第2の導電性パッド62は第2のレジスト層42の表面から突出するようにして形成されているので、例えば第1の導電性パッド61のように板状を呈し、その上面が平坦な場合においては、はんだを供給して図示しない半導体素子とフリップチップ接続するためのはんだ層を形成しようとした場合において、はんだがパッドの上面から流れ出してしまい、はんだ層を十分に厚く形成することができない。この結果、半導体素子との接続不良やはんだ層の厚み不足によってクラックが発生してしまい、はんだ層が破損してしまうなどの問題が生じる。
【0040】
一方、本実施形態では、第2のレジスト層42の表面から突出した第2の導電性パッド62の上面62Aを、その中央部62A−1が凹んでなるような、上面62Aの上方に曲率中心を有するように湾曲してなる半円状の断面を有するように構成している。したがって、第2の導電性パッド62に供給したはんだペーストは、その上面62Aの凹みにおいて保持されるようになるので、形成されるはんだ層64の、特に第2の導電性パッド62上における厚さは十分に保持されるようになる。したがって、半導体素子との接続不良やはんだ層の厚み不足によってクラックが発生し、はんだ層が破損してしまうなどの問題を生じることがない。
【0041】
また、はんだ層64は、第2の導電性パッド62上に、酸化物を除去するためのフラックスを塗布してから供給(印刷)した後にはんだペーストを供給し、その後リフローすることによって形成されるが、本実施形態では、第2の導電性パッド62の中央部62A−1が凹んでいるので、この中央部62A−1に十分な量のフラックスを保持することができる。
【0042】
なお、上述した作用効果を奏することができれば、はんだ層64の、第2の導電性パッド62の上面62A上に保持される部分の厚さdは特に限定されないが、例えば3μm〜50μmとする。これによって、上述した作用効果をより顕著に奏することができるようになる。但し、上面62A上において、その外周縁部62A−2で規定される表面レベルよりも、はんだ層64の表面全体が上方に突出するようにしてはんだペーストが供給され保持されていれば、上述した作用効果を奏することができる。
【0043】
また、図4に示すように、本実施形態では、第2の導電性パッド62の上面62Aは連続した曲面を有し、上方に曲率中心を有するように湾曲してなる半円状の断面を有するように構成されているが、中心部62A−1が凹み、上述した要件を満足するようにしてはんだペーストを保持することができれば、その形状は特に限定されるものではない。例えば、図5に示すように、上面62Aは、その中心部62A−1が矩形状に凹むようにして形成することもできる。
【0044】
なお、第2の導電性パッド62の上面62Aの凹みは、第2の導電性パッド62を形成する際のメッキ時間やメッキ液に含有させる添加剤を調節することによって形成することができる。例えば、メッキ時間については所定の厚みのメッキ膜を形成するために必要なメッキ時間よりも短縮化することによって上記凹みを形成することができる。
【0045】
しかしながら、本実施形態で示すような曲面状とすることにより、中心部62A−1における凹みを簡易に形成することができるとともに、はんだ層64の形成時及び/又は半導体素子とのフリップチップ接合時において、外周縁部62A−2に対する応力集中を抑制することができ、外周縁部62A−2,すなわち第2の導電性パッド62の破損を防止することができる。
【0046】
さらに、本実施形態では、はんだ層64を第2の導電性パッド62の上面62Aのみでなく、側面62Bをも覆うようにして形成している。したがって、はんだ層64をリフローした場合において、半導体素子とのフリップチップ接合に供するはんだの絶対量を増大させることができるので、上述した作用効果をより顕著に奏することができるようになる。
【0047】
(多層配線基板の製造方法)
次に、図1〜図4に示す多層配線基板10の製造方法について説明する。図6〜図15は、本実施形態における多層配線基板10の製造方法における工程図である。
【0048】
最初に、図6に示すように、両面に銅箔12が貼り付けられた支持基板11を準備する。支持基板11は、例えば耐熱性樹脂板(例えばビスマレイミド−トリアジン樹脂板)や、繊維強化樹脂板(例えばガラス繊維強化エポキシ樹脂板)等から構成することができる。次いで、支持基板11の両面に形成された銅箔12上に、接着層としてのプリプレグ層13を介して、例えば真空熱プレスにより剥離シート14を圧着形成する。
【0049】
剥離シート14は、例えば第1の金属膜14a及び第2の金属膜14bからなり、これらの膜間にはCrメッキ等が施されて、外部張力によって互いに剥離可能に構成されている。なお、第1の金属膜14a及び第2の金属膜14bは銅箔から構成することができる。
【0050】
次いで、図7に示すように、支持基板11の両側に形成された剥離シート14上にそれぞれ感光性のドライフィルムを積層し、露光及び現像することによりマスクパターン15を形成する。マスクパターン15には、アライメントマーク形成部Pa及び外周部画定部Poに相当する開口部がそれぞれ形成されている。
【0051】
次いで、図8に示すように、支持基板11の両側において、マスクパターン15を介して剥離シート14に対してエッチング処理を行い、剥離シート14の、上記開口部に相当する位置に、アライメントマーク形成部Pa及び外周部画定部Poを形成する。図9は、図8に示すアセンブリを上側から見た場合の平面図であるが、アライメントマーク形成部Paは、剥離シート14においてプリプレグ13が露出するようにして形成された開口部として構成され、外周部画定部Poは、剥離シート14の端部をプリプレグ13が露出するようにして切除して形成された切り欠きとして構成される。
【0052】
なお、アライメントマーク形成部Pa及び外周部画定部Poを形成した後、マスクパターン15はエッチング除去する。
【0053】
また、マスクパターン15を除去した後に露出した剥離シート14の表面に対してエッチング処理を施し、その表面を粗化しておくことが好ましい。これにより、剥離シート14と後述する樹脂層との密着性を高めることができる。
【0054】
次いで、図10に示すように、剥離シート14上に樹脂フィルムを積層し、真空下において加圧加熱することにより硬化させて第1の樹脂絶縁層21を形成する。これにより、剥離シート14の表面が第1の樹脂絶縁層21で覆われるとともに、アライメントマーク形成部Paを構成する開口部及び外周部画定部Poを構成する切り欠きは、第1の樹脂絶縁層21が充填された状態となる。これによって、アライメントマーク形成部Paの部分にアライメントマークAMの構造が形成される。
【0055】
また、外周部画定部Poも第1の樹脂絶縁層21で覆われるようになるので、以下に示す剥離シート14を介した剥離工程において、剥離シート14の端面が例えばプリプレグ13から剥がれて浮き上がり、剥離工程を良好に行うことができずに、目的とする多層配線基板10を製造できなくなるというような不利益を排除することができる。
【0056】
次いで、図11に示すように、第1の樹脂絶縁層21に対して、例えばCOガスレーザやYAGレーザから所定強度のレーザ光を照射し、ビアホール21Aを形成した後、ビアホール21Aを含む第1の樹脂絶縁層21に対して粗化処理を実施する。なお、第1の樹脂絶縁層21がフィラーを含む場合は、粗化処理を実施するとフィラーが遊離して第1の樹脂絶縁層21上に残存するようになるので、適宜水洗を行う。
【0057】
次いで、ビアホール21Aに対してデスミア処理及びアウトラインエッチングを施し、ビアホール21A内を洗浄する。なお、上述のように水洗浄を実施した場合は、デスミア工程における水洗浄の際に、上記フィラーが樹脂絶縁層上21に残存することを抑制することができる。
【0058】
また、上記水洗浄とデスミア処理との間に、エアーブローを行うことができる。これによって、上述した水洗浄によって遊離したフィラーが完全に除去されていない場合でも、エアーブローにおいてフィラーの除去を補完することができる。
【0059】
次いで、第1の樹脂絶縁層21に対してパターンメッキを行い、第1の導体層31及びビア導体51を形成する。なお、第1の導体層31及びビア導体51は、セミアディティブ法によって、以下のようにして形成する。最初に、第1の樹脂絶縁層21上に無電解メッキ膜を形成した後、この無電解メッキ膜上にレジストを形成し、このレジストの非形成部分に電解銅メッキを行うことによって形成する。第1の導体層31及びビア導体51を形成した後、レジストはKOH等で剥離除去する。
【0060】
次いで、第1の導体層31に粗化処理を施した後、第1の導体層31を覆うようにして、第1の樹脂絶縁層21上に樹脂フィルムを積層し、真空下において加圧加熱することにより硬化させて第2の樹脂絶縁層22を形成する。
【0061】
次いで、図12に示すように、第2の樹脂絶縁層22に対して、例えばCOガスレーザやYAGレーザから所定強度のレーザ光を照射し、ビアホール22Aを形成した後、ビアホール22Aを含む第2の樹脂絶縁層22に対して粗化処理を実施する。なお、第2の樹脂絶縁層22がフィラーを含む場合は、粗化処理を実施するとフィラーが遊離して第2の樹脂絶縁層22上に残存するようになるので、適宜水洗を行う。
【0062】
次いで、ビアホール22Aに対してデスミア処理及びアウトラインエッチングを施し、ビアホール22A内を洗浄する。なお、上述のように水洗浄を実施した場合は、デスミア工程における水洗浄の際に、上記フィラーが樹脂絶縁層上22に残存することを抑制することができる。
【0063】
また、上記水洗浄とデスミア処理との間に、エアーブローを行うことができる。これによって、上述した水洗浄によって遊離したフィラーが完全に除去されていない場合でも、エアーブローにおいてフィラーの除去を補完することができる。
【0064】
次いで、第2の樹脂絶縁層22に対してパターンメッキを行い、第1の導体層31等の場合と同様に、セミアディティブ法等により第2の導体層32及びビア導体52を形成する。
【0065】
次いで、第2の樹脂絶縁層22上に第2のレジスト層42を形成し、この第2のレジスト層42に対して所定のマスクを介して露光及び現像処理を施して開口部42Aを形成した後、第1の導体層31等の場合と同様に、セミアディティブ法等により第2の導電性パッド62及びビア導体53を形成する。
【0066】
なお、第2の導電性パッド62は、その上面62Aの中心部62A−1を凹ませる必要があるので、第2の導電性パッド62を形成する際のメッキ時間やメッキ液に含有させる添加剤を調節して形成する。例えば、メッキ時間については所定の厚みのメッキ膜を形成するために必要なメッキ時間よりも短縮化することによって上記凹みを形成することができる。
【0067】
次いで、図13に示すように、上記工程を経て得られた積層体10aを外周部画定部Poより僅かに内側に設定された切断線に沿って切断し、積層体10aから不要な外周部を除去して、多層配線基板としての有効領域を画定する。
【0068】
次いで、図14に示すように、外周部画定部Poを基準にして不要な外周部を除去した後、積層体10aの剥離シート14を構成する第1の金属膜14a及び第2の金属膜14bの剥離界面で剥離し、積層体10aから支持基板11を除去する。これによって、図14に示すような、同一構造の積層体10bを得る。
【0069】
その後、図15に示すように、積層体10bの下方に残存する剥離シート14の第1の金属膜14aに対してエッチングを施し、第1の樹脂絶縁層21上に第1の導電性パッド61を形成する。また、第1の導電性パッド61が露出するような開口部41を有する第1のレジスト層41を形成し、さらに、第2の導電性パッド62の全体を覆うようにしてはんだ層64を形成することにより、図1〜4に示すような多層配線基板10を得る。
【0070】
なお、上述したアライメントマークAMは、例えば第1のレジスト層41を形成する際の位置基準として用いることができる。
【0071】
また、本実施形態では、多層配線基板10の製造工程において、アライメントマークAMを形成するようにしているが、アライメントマークAMは必ずしも必要とされるものではない。また、本実施形態のように、剥離シート14に対してエッチング処理を実施してアライメントマークAMを形成する代わりに、ドリル加工などの機械加工によってアライメントマークAMを形成することもできる。
【0072】
(第2の実施形態)
(多層配線基板)
図16は、本実施形態における多層配線基板の断面の一部を拡大して示す図であり、図17は、図16に示す導電性パッドの近傍を拡大して示す断面図である。なお、図16及び図17は、それぞれ第1の実施形態の多層配線基板の図3及び図4に相当する。また、本実施形態の多層配線基板10’は平面視した場合の形態は、第1の実施形態の多層配線基板10の図1及び図2に示すような形態となる。
【0073】
本実施形態の多層配線基板において、第1の実施形態の多層配線基板10と同一あるいは類似の構成要素については同じ符号を用いている。
【0074】
本実施形態の多層配線基板10’は、第2の導電性パッド62とはんだ層64との間に、第2の導電性パッド62の全面を覆うようにしてNi/Auメッキ膜等からなるバリアメタル層63を形成した以外は、第1の実施形態の多層配線基板10と同様の構成を呈している。
【0075】
第1の実施形態の多層配線基板10に示すように、第2の導電性パッド62の全面を覆うようにしてはんだ層64を形成した場合、はんだ層64と第2のレジスト層42との密着性が低くなってしまい、多層配線基板10と半導体素子とをフリップチップ接合する前後において、はんだ層64と第2のレジスト層42との間で剥離が生じ、半導体素子の接続不良等を生じる場合がある。
【0076】
しかしながら、上述のように第2の導電性パッド62とはんだ層64との間にバリアメタル層63を形成した場合、このバリアメタル層63の第2のレジスト層42に対する密着性は、はんだ層64の第2のレジスト層42に対する密着性に比して十分に高い。また、第2の導電性パッド62の第2のレジスト層42側に位置する側端面62B上に形成されたバリアメタル層63の被覆厚みt1を、側端面62Aよりも上部に位置する第2の導電性パッド62の表面62A上に形成されたバリアメタル層63の被覆厚みt2よりも大きくしているので、上述した密着性の向上はより顕著になる。
【0077】
したがって、多層配線基板10’と半導体素子とをフリップチップ接合する前後において、バリアメタル層63と第2のレジスト層42との間で剥離が生じず、その結果、はんだ層64と第2のレジスト層42との間でも剥離が生じなくなる。このため、半導体素子の接続不良等を防止することができる。
【0078】
なお、バリアメタル層63の上述した厚みの制御は、例えば、メッキ法によって第2の導電性パッド62上にバリアメタル層63を形成する場合、特に第2の導電性パッド62の第2のレジスト層42側に位置する側端面62B上にメッキ液を滞留させることによって、側端面62Bに位置するバリアメタル層63の被覆厚みt1を、側端面62Bよりも上部に位置する第2の導電性パッド62の表面62A上に形成されたバリアメタル層63の被覆厚みt2よりも大きくすることができる。
【0079】
また、本実施形態では、はんだ層64をバリアメタル層63上にのみ形成し、第2のレジスト層42と接触しないようにしているので、例えば、はんだ層64の、第2のレジスト層42と接触した端部が部分的に剥離したりすることを抑制することができる。
【0080】
その他の特徴及び利点については、第1の実施形態の多層配線基板10’と同じであるので説明を省略する。
【0081】
(多層配線基板の製造方法)
本実施形態の多層配線基板10’の製造方法は、第1の実施形態の場合と同様に、図1〜図15に示すような工程を経て積層体10bを形成した後、この積層体10bの第1の導電性パッド61が露出するような開口部41を有する第1のレジスト層41を形成し、さらに、第2の導電性パッド62の全体を覆うようにしてバリアメタル層63をメッキ法によって形成し、次いで、はんだ層64を形成することにより、図16及び図17に示すような多層配線基板10’を得る。
【0082】
なお、側端面62Bに位置するバリアメタル層63の被覆厚みt1を、側端面62Bよりも上部に位置する第2の導電性パッド62の表面62A上に形成されたバリアメタル層63の被覆厚みt2よりも大きくする場合は、上述したように、特に第2の導電性パッド62の第2のレジスト層42側に位置する側端面62B上にメッキ液を滞留させる。
【0083】
以上、本発明を具体例を挙げながら詳細に説明してきたが、本発明は上記内容に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0084】
10、10’ 多層配線基板
11 支持基板
13 プリプレグ
14 剥離シート
15 マスクパターン
21 第1の樹脂絶縁層
22 第2の樹脂絶縁層
31 第1の導体層
32 第2の導体層
41 第1のレジスト層
42 第2のレジスト層
51,52,53 ビア導体
61 第1の導電性パッド
62 第2の導電性パッド
62A 第1の導電性パッドの上面
62A−1 第1の導電性パッドの上面における中心部
62A−2 第1の導電性パッドの上面における外周縁部
62B 第1の導電性パッドの側面
63 バリアメタル層
64 はんだ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体層及び樹脂絶縁層が交互に積層されてなるビルドアップ層と、
前記樹脂絶縁層の表面から突出して形成され、上面の中央部が凹んでなる導電性パッドと、
前記導電性パッドの前記上面において、前記中央部よりも外周側に位置する外周縁部によって画定される表面レベルに対して、上方に位置して形成されたはんだ層と、
を備えることを特徴とする、多層配線基板。
【請求項2】
前記導電性パッドの前記上面は、連続した曲面を構成していることを特徴とする、請求項1に記載の多層配線基板。
【請求項3】
前記はんだ層は、前記導電性パッドの側面を被覆して形成されたことを特徴とする、請求項1又は2に記載の多層配線基板。
【請求項4】
前記導電性パッドと前記はんだ層との間に、前記導電性パッドの全面を被覆して形成されたバリアメタル層を備え、
前記はんだ層は、前記導電性パッドの全面を被覆するバリアメタル層を介して前記導電性パッドを覆い、
前記導電性パッドの前記樹脂絶縁層側に位置する側端面上に形成された前記バリアメタル層の被覆厚みは、該側端面よりも上部に位置する前記導電性パッドの表面上に形成された前記バリアメタル層の被覆厚みよりも大きいことを特徴とする、請求項3に記載の多層配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−169591(P2012−169591A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262096(P2011−262096)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】