説明

多系統切替弁

【課題】アクチュエータの作動を制御できるとともにアクチュエータの作動状態についてアクティブ制御状態と非アクティブ制御状態とのいずれかに切り替えることができる弁機構を構成でき、構成部品点数の増大を抑制できるとともに、機構の大型化を抑制する。
【解決手段】スプール12がスリーブ11の内部に配置される。複数のスライダ(21、22)がスリーブ11及びスプール12の間に配置され、プランジャ15が複数のスライダ(21、22)間に配置される。アクティブ制御状態と非アクティブ制御状態との切替制御用の制御圧流体が供給及び排出される複数の状態切替ポート17がスリーブ11に設けられる。状態切替ポート17に連通する状態切替用圧力流体室18が、スライダ(21、22)の端部とプランジャ15の端部との間に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧作動式の複数の系統のアクチュエータのそれぞれへ供給及び排出される圧力流体が流動する複数の系統の圧力流体経路を切り替え、複数の系統のアクチュエータの作動を制御する多系統切替弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、流体圧作動式の複数の系統のアクチュエータのそれぞれへ供給及び排出される圧力流体が流動する複数の系統の圧力流体経路を切り替え、複数の系統のアクチュエータの作動を制御する弁機構が用いられている。このような弁機構として、特許文献1においては、航空機の舵面を駆動する流体圧作動式の複数の系統のアクチュエータの作動を制御する機構が開示されている。尚、特許文献1では、複数の系統のアクチュエータとしては、2つの系統のアクチュエータが直列に配列されて構成されたタンデムシリンダ機構(シリンダ41)が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された弁機構は、アクチュエータに対する圧力流体の供給経路及び排出経路を切り替えてアクチュエータの作動を制御する制御弁(16)と、制御弁からは独立した構成で別途設けられた2系統切替弁(56)との複数の切替弁を備えた機構として構成されている。尚、2系統切替弁は、制御弁と複数の系統のアクチュエータとの間に配置されている。また、この2系統切替弁は、ケーシング(60)、ケーシングの内部に配置された一対のスプール(70、71)、ケーシング内で一対のスプールの外側に配置されたスプリング(86、87)、一対のスプールの間に配置された中間プランジャ(89)、等を備えて構成されている。そして、スプールと中間プランジャとの間に高圧の圧力流体が供給されることで、アクチュエータに対する圧力流体の供給及び排出が制御されてアクチュエータの作動が制御されるアクティブ制御状態に切り替えられるように構成されている。一方、スプールと中間プランジャとの間に低圧の圧力流体が供給されることで、アクチュエータに対する圧力流体の供給が停止されてアクチュエータに作用する外力に追従させるようにアクチュエータを作動可能な非アクティブ制御状態に切り替えられるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2942636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された弁機構は、その制御弁により、アクチュエータに対する圧力流体の供給経路及び排出経路を切り替えてアクチュエータの作動を制御でき、その2系統切替弁により、アクチュエータの作動状態についてアクティブ制御状態と非アクティブ制御状態とのいずれかに切り替えることができる。しかしながら、特許文献1の弁機構は、独立した構成で別途設けられた複数の切替弁である制御弁及び2系統切替弁を備えた機構として構成されることになる。このため、構成部品点数の増大を招きやすく、機構の大型化を招き易いという問題があり、これらに伴い、コストの増大も招き易いという問題がある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、アクチュエータに対する圧力流体の供給経路及び排出経路を切り替えてアクチュエータの作動を制御できるとともにアクチュエータの作動状態についてアクティブ制御状態と非アクティブ制御状態とのいずれかに切り替えることができる弁機構を構成でき、構成部品点数の増大を抑制できるとともに、機構の大型化を抑制できる多系統切替弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための第1発明に係る多系統切替弁は、流体圧作動式の複数の系統のアクチュエータのそれぞれへ供給及び排出される圧力流体が流動する複数の系統の圧力流体経路を切り替え、複数の系統のアクチュエータの作動を制御する多系統切替弁に関する。そして、第1発明に係る多系統切替弁は、内部に空間が設けられたスリーブと、軸状に設けられ、前記スリーブの内部に配置されるとともに軸方向において移動自在に設置されるスプールと、前記スプールを軸方向において往復移動させるように駆動する駆動部と、筒状に設けられ、内側に前記スプールが摺動自在に配置されるとともに、前記スリーブの内部において当該スリーブの内周に対して摺動自在に配置され、前記スプールの軸方向に沿って並んで配置される複数のスライダと、筒状に設けられ、内側に前記スプールが摺動自在に配置されるとともに、前記スリーブの内部において当該スリーブの内周に対して摺動自在に配置され、前記スプールの軸方向において隣り合う前記スライダ同士の間に配置されるプランジャと、前記スリーブと前記スライダと前記スプールとに亘って形成され、前記スプールが前記駆動部によって駆動されることで前記アクチュエータに対する圧力流体の供給経路及び排出経路を切り替え、前記アクチュエータの作動を制御するアクチュエータ制御用流路と、前記スリーブに設けられ、前記アクチュエータの作動状態について、前記アクチュエータ制御用流路を介して圧力流体が供給及び排出されて前記アクチュエータの作動が制御されるアクティブ制御状態と、前記アクチュエータ制御用流路を介した圧力流体の供給を停止して前記アクチュエータに作用する外力に追従させるように当該アクチュエータを作動可能な非アクティブ制御状態と、のいずれかに切り替えるための制御用の圧力流体である制御圧流体が供給及び排出される複数の状態切替ポートと、前記状態切替ポートに連通するとともに、前記スリーブの内周と前記スプールの外周と前記プランジャの端部と前記スライダの端部との間で区画された領域としてそれぞれ設けられた複数の状態切替用圧力流体室と、前記スリーブ内において前記スプールの軸方向における両端側にそれぞれ配置され、複数の前記スライダの端部のうち前記スプールの軸方向の両端側にそれぞれ配置された端部を互いに対向する方向に付勢する一対の付勢機構と、を備えていることを特徴とする。更に、第1発明に係る多系統切替弁は、前記状態切替ポートを介して前記状態切替用圧力流体室に前記制御圧流体が供給されることで、前記一対の付勢機構の付勢力に抗して前記プランジャと前記スライダとが離間し、前記アクチュエータの作動状態が前記アクティブ制御状態に切り替えられ、複数の前記状態切替ポートを介して複数の前記状態切替用圧力流体室から前記制御圧流体が排出されることで、前記一対の付勢機構の付勢力によって前記プランジャと前記スライダとが接近し、前記アクチュエータの作動状態が前記非アクティブ制御状態に切り替えられることを特徴とする。
【0008】
この発明によると、スリーブに設けられた状態切替ポートを介してプランジャ及びスライダの間に配置された状態切替用圧力流体室に制御圧流体が供給されることで、アクチュエータの作動状態がアクティブ制御状態に切り替えられる。この状態では、駆動部の駆動によってスプールが駆動されることで、アクチュエータ制御用流路が切り替えられ、複数の系統のアクチュエータのそれぞれの作動が制御されることになる。一方、状態切替ポートを介して状態切替用圧力流体室から制御圧流体が排出されることで、アクチュエータの作動状態が非アクティブ制御状態に切り替えられる。この状態では、アクチュエータ制御流路を介した圧力流体のアクチュエータへの供給が停止され、複数の系統のアクチュエータは、作用する外力に追従するように作動することになる。このため、圧力流体の供給源やアクチュエータへの圧力流体の供給系統などにおいて故障が発生した際に、アクチュエータを外力に追従させ、他の駆動機器の動作を阻害するような動作や過度に動いてしまうような異常な動作が生じてしまうことを防止することができる。よって、本発明の多系統切替弁によると、アクチュエータに対する圧力流体の供給経路及び排出経路を切り替えてアクチュエータの作動を制御できるとともにアクチュエータの作動状態についてアクティブ制御状態と非アクティブ制御状態とのいずれかに切り替えることができる弁機構を構成することができる。
【0009】
そして、本発明の多系統切替弁は、上述した機能を発揮可能な弁機構が、スプール及びその駆動部と、スプールの外周で摺動するスライダ及びプランジャと、スリーブ、スライダ及びスプールに亘って形成されたアクチュエータ制御用流路と、スリーブに設けられた状態切替ポートと、プランジャ及びスライダの間に設けられた状態切替用圧力流体室と、スライダを付勢する一対の付勢機構と、によって構成される。このため、アクチュエータに対する圧力流体の供給経路及び排出経路を切り替えてアクチュエータの作動を制御できるとともにアクチュエータの作動状態についてアクティブ制御状態と非アクティブ制御状態とのいずれかに切り替えることができる弁機構を一体に組み立てられた1つの弁機構として構築することができる。即ち、特許文献1に開示された弁機構のように独立した構成で別途設けられた複数の切替弁を備えた機構としてではなく、一体に組み立てられた1つの多系統切替弁として構成できることになる。更に、スプールの外周とスリーブの内周との間にスライダ及びプランジャが配置される構造のため、コンパクトで小型の多系統切替弁を実現することができる。よって、構成部品点数の増大を招いてしまうことを抑制できるとともに機構の大型化を抑制でき、更に、これらに伴い、コストの増大も抑制することができる。
【0010】
従って、本発明によると、アクチュエータに対する圧力流体の供給経路及び排出経路を切り替えてアクチュエータの作動を制御できるとともにアクチュエータの作動状態についてアクティブ制御状態と非アクティブ制御状態とのいずれかに切り替えることができる弁機構を構成でき、構成部品点数の増大を抑制できるとともに、機構の大型化を抑制できる多系統切替弁を提供することができる。
【0011】
第2発明に係る多系統切替弁は、第1発明の多系統切替弁において、前記アクチュエータは、シリンダ機構として設けられ、前記アクチュエータ制御用流路は、前記スリーブに設けられ、圧力流体が供給される供給ポートと、前記スリーブに設けられ、前記アクチュエータにおける一方の圧力流体室に対して圧力流体を供給及び排出が可能な第1給排ポートと、前記スリーブに設けられ、前記アクチュエータにおいて前記一方の圧力流体室にピストンを介して対向する他方の圧力流体室に対して圧力流体を供給及び排出が可能な第2給排ポートと、前記スリーブに設けられ、前記アクチュエータから戻った圧力流体を排出する排出ポートと、前記スライダに設けられ、当該スライダの外側と内側との間をそれぞれ貫通する複数のスライダ貫通流路と、前記スプールの外周に設けられ、前記スライダ貫通流路を介して、前記第1給排ポート及び前記第2給排ポートの一方と前記供給ポートとを連通させ、前記第1給排ポート及び前記第2給排ポートの他方と前記排出ポートとを連通させることが可能な複数のスプール外周流路と、を備えていることを特徴とする。
【0012】
この発明によると、アクチュエータ制御用流路が、スリーブに設けられた供給ポート、排出ポート、第1給排ポート及び第2給排ポートと、スライダに設けられたスライダ貫通流路と、スプールの外周に設けられたスプール外周流路とによって構成される。このため、スリーブ及びスライダに複数の孔を加工するとともにスプールの外周に複数の溝を加工することで、コンパクトなスペースにおいて簡素な構造で容易にアクチュエータ制御用流路を構築することができる。
【0013】
第3発明に係る多系統切替弁は、第2発明の多系統切替弁において、前記スライダにおいて前記スライダ貫通流路に連通するノッチとして設けられたオリフィスを更に備え、前記非アクティブ制御状態において、前記オリフィスを介して、前記第1給排ポートと前記第2給排ポートとが連通し、又は、前記第1給排ポート及び前記第2給排ポートと前記排出ポートとが連通することを特徴とする。
【0014】
この発明によると、スライダにスライダ貫通流路に連通するオリフィスが設けられる。そして、非アクティブ制御状態において、第1及び第2給排ポートがオリフィスを介して連通し、又は、第1及び第2給排ポートと排出ポートとがオリフィスを介して連通する。このため、圧力流体の供給源等において故障が発生し、非アクティブ制御状態に切り替えてアクチュエータを外力に追従させる際に、一方及び他方の圧力流体室の間において、又は、一方及び他方の圧力流体室と排出系統との間において、圧力流体がオリフィスを通過して流動することになる。これにより、非アクティブ制御状態において、スライダ貫通流路に設けられたオリフィスによってダンピング機能(減衰機能)を発揮させることができる。よって、他の駆動機器の動作を阻害するような動作や過度に動いてしまうような異常な動作が生じてしまうことを効率よく防止することができる。また、オリフィスがスライダに設けられたノッチとして構成されるため、ダンピング機能を発揮させるための構造をスライダにノッチを設けるという簡素な構造で容易に構築することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、アクチュエータに対する圧力流体の供給経路及び排出経路を切り替えてアクチュエータの作動を制御できるとともにアクチュエータの作動状態についてアクティブ制御状態と非アクティブ制御状態とのいずれかに切り替えることができる弁機構を構成でき、構成部品点数の増大を抑制できるとともに、機構の大型化を抑制できる多系統切替弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態に係る多系統切替弁が適用される油圧回路を模式的に示す油圧回路図である。
【図2】図1に示す多系統切替弁の断面について一部切欠き状態で示す図である。
【図3】図2の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【図4】図2の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【図5】アクティブ制御状態に設定された図1に示す多系統切替弁における第1系統油圧経路に対応する部分の油圧回路を模式的に示す油圧回路図である。
【図6】図1に示す多系統切替弁の断面について一部切欠き状態で示す図である。
【図7】非アクティブ制御状態に設定された図1に示す多系統切替弁における第1系統油圧経路に対応する部分の油圧回路を模式的に示す油圧回路図である。
【図8】多系統切替弁が適用される油圧回路の変形例を模式的に示す油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本実施形態においては、航空機の舵面を駆動する流体圧作動式の複数の系統のアクチュエータの作動を制御する多系統切替弁を例にとって説明するが、この例に限らず、本発明を適用することができる。即ち、流体圧作動式の複数の系統のアクチュエータのそれぞれへ供給及び排出される圧力流体が流動する複数の系統の圧力流体経路を切り替えて複数の系統のアクチュエータの作動を制御する多系統切替弁に関して本発明を広く適用することができるものである。
【0018】
図1は、本発明の一実施の形態に係る多系統切替弁1が適用される油圧回路を模試的に示す油圧回路図である。図1に示す油圧回路は、図示しない航空機の舵面100を駆動する油圧作動式(即ち、流体圧作動式)の複数の系統のアクチュエータであるタンデムアクチュエータ103を作動させる油圧回路として構成されている。尚、舵面100は、航空機の動翼(操縦翼面)として設けられており、例えば、主翼に設けられるエルロン(補助翼)や、水平尾翼に設けられる昇降舵(エレベータ)、垂直尾翼に設けられる方向舵(ラダー)、等として構成される。
【0019】
タンデムアクチュエータ103は、上記のように、本実施形態における複数の系統のアクチュエータを構成しており、直列に配置された第1アクチュエータ104及び第2アクチュエータ105の2つの系統のアクチュエータを備えている。第1アクチュエータ104及び第アクチュエータ105には、一体の要素として移動するロッド106が設けられている。
【0020】
また、第1アクチュエータ104は、シリンダ機構として設けられ、ロッド106が軸方向に移動自在な状態で貫通するシリンダ107と、ロッド106に固定されたピストン109とが設けられている。シリンダ107内は、ピストン109により、一方の油室(一方の圧力流体室)107aと、一方の油室107aにピストン109を介して対向する他方の油室(他方の圧力流体室)107bとに区画されている。そして、第2アクチュエータ105は、シリンダ機構として設けられ、ロッド106が軸方向に移動自在な状態で貫通するシリンダ108と、ロッド106に固定されたピストン110とが設けられている。シリンダ108内は、ピストン110により、一方の油室(一方の圧力流体室)108aと、一方の油室108aにピストン110を介して対向する他方の油室(他方の圧力流体室)108bとに区画されている。尚、第1アクチュエータ104のシリンダ107と第2アクチュエータ105のシリンダ108とは、互いに直列に固定されている。
【0021】
本実施形態の多系統切替弁1は、上述した油圧作動式のタンデムアクチュエータ103のそれぞれのアクチュエータ(104、105)へ供給及び排出される圧力流体である圧油が流動する複数の系統の圧力流体経路(101、102)を切り替え、タンデムアクチュエータ103の作動を制御する弁機構として設けられ、後述するように、一体に組み立てられた1つの弁機構として構成されている。そして、複数の系統の圧力流体経路(101、102)は、第1系統油圧経路101及び第2系統油圧経路102として構成されている。
【0022】
第1系統油圧経路101は、多系統切替弁1を介して、第1アクチュエータ104における一方及び他方の油室(107a、107b)と、第1系統油圧源111及びリザーバ回路112とを連通可能に構成されている。一方、第2系統油圧経路102は、多系統切替弁1を介して、第2アクチュエータ105における一方及び他方の油室(108a、108b)と、第2系統油圧源113及びリザーバ回路114とを連通可能に構成されている。
【0023】
第1系統油圧源111及び第2系統油圧源113のそれぞれは、圧力流体である圧油を供給する油圧ポンプを備えて構成され、図示しない航空機の機体側に設置されている。そして、第1系統油圧源111及び第2系統油圧源113は、互いに独立した系統として設けられている。尚、上記油圧源(111、113)が設置される航空機においては、第1系統油圧源111及び第2系統油圧源113のそれぞれからの圧油が供給されることで、舵面100を駆動する第1及び第2アクチュエータ(104、105)と、舵面100以外の舵面(図示せず)を駆動するアクチュエータ(図示せず)とが作動するように構成されている。
【0024】
リザーバ回路112は、第1系統油圧源111からの圧油として供給された後に第1アクチュエータ104から排出される油(作動油)が流入して戻るタンク(図示せず)を備えるとともに、第1系統油圧源111に連通するように構成されている。また、リザーバ回路112から独立した系統として構成されるリザーバ回路114は、第2系統油圧源113からの圧油として供給された後に第2アクチュエータ105から排出される油(作動油)が流入して戻るタンク(図示せず)を備えるとともに、第2系統油圧源113に連通するように構成されている。このように構成されていることで、リザーバ回路112に戻った油は、第1系統油圧源111で昇圧され、第1系統油圧経路101を流動して多系統切替弁1を介して第1アクチュエータ104に供給される。一方、リザーバ回路114に戻った油は、第2系統油圧源113で昇圧され、第2系統油圧経路102を流動して多系統切替弁1を介して第2アクチュエータ105に供給される。
【0025】
また、第1系統油圧経路101には、供給油路115、排出油路116、給排油路(117a、117b)、制御圧油路118、電磁弁123、が更に設けられている。供給油路115は、第1系統油圧原111と多系統切替弁1とを接続して第1系統油圧源111からの圧油を供給する油路として設けられている。排出油路116は、多系統切替弁1とリザーバ回路112とを接続し、多系統切替弁1から排出された油をリザーバ回路112に排出する油路として設けられている。給排油路117aは、多系統切替弁1と第1アクチュエータ104における一方の油室107aとを接続し、一方の油室107aに対して圧油を供給及び排出する油路として設けられている。給排油路117bは、多系統切替弁1と第1アクチュエータ104における他方の油室107bとを接続し、他方の油室107bに対して圧油を供給及び排出する油路として設けられている。制御圧油路118は、供給油路115から分岐して多系統切替弁1に対して接続し、後述するように、アクチュエータ(104、105)の作動状態を切り替えるための制御用の圧油である制御圧油を多系統切替弁1に対して供給及び排出するための油路として設けられている。電磁弁123は、制御圧油路118の連通状態を切り替える弁として設けられている。電磁弁123は、例えば励磁した状態では図1に示すように供給位置123aに切り替えられており、制御圧油路118を連通させ、第1系統油圧源111からの制御圧油を多系統切替弁1に供給可能に構成されている。一方、電磁弁123は、例えば消磁した状態では排出位置123bに切り替えられ、制御圧油路118における第1系統油圧源111側を遮断し、制御圧油路118における多系統切替弁1側をリザーバ回路112に接続する。これにより、制御圧油をリザーバ回路112に排出可能に構成されている。
【0026】
一方、第2系統油圧経路102には、供給油路119、排出油路120、給排油路(122a、122b)、制御圧油路121、電磁弁124、が更に設けられている。供給油路119は、第2系統油圧原113と多系統切替弁1とを接続して第2系統油圧源113からの圧油を供給する油路として設けられている。排出油路120は、多系統切替弁1とリザーバ回路114とを接続し、多系統切替弁1から排出された油をリザーバ回路114に排出する油路として設けられている。給排油路122aは、多系統切替弁1と第2アクチュエータ105における一方の油室108aとを接続し、一方の油室108aに対して圧油を供給及び排出する油路として設けられている。給排油路122bは、多系統切替弁1と第2アクチュエータ105における他方の油室108bとを接続し、他方の油室108bに対して圧油を供給及び排出する油路として設けられている。制御圧油路121は、供給油路119から分岐して多系統切替弁1に対して接続し、後述するように、アクチュエータ(104、105)の作動状態を切り替えるための制御用の圧油である制御圧油を多系統切替弁1に対して供給及び排出するための油路として設けられている。電磁弁124は、制御圧油路121の連通状態を切り替える弁として設けられている。電磁弁124は、例えば励磁した状態では図1に示すように供給位置124aに切り替えられており、制御圧油路121を連通させ、第2系統油圧源113からの制御圧油を多系統切替弁1に供給可能に構成されている。一方、電磁弁124は、例えば消磁した状態では排出位置124bに切り替えられ、制御圧油路121における第2系統油圧源113側を遮断し、制御圧油路118における多系統切替弁1側をリザーバ回路114に接続する。これにより、制御圧油をリザーバ回路114に排出可能に構成されている。
【0027】
次に、本実施形態に係る多系統切替弁1の構成について詳しく説明する。図2は、多系統切替弁1の断面について一部切欠き状態で示す図である。図2に示すように、多系統切替弁1は、スリーブ11、スプール12、駆動部13、一対のスライダ14、プランジャ15、アクチュエータ制御用流路16、状態切替ポート17、状態切替用油圧室(状態切替用圧力流体室)18、一対のバネ(一対の付勢機構)19、ケーシング20、オリフィス(30、31)、等を備えて構成されている。駆動部13の筐体とケーシング20とは、互いに固定されている。そして、スリーブ11、スプール12、駆動部13、一対のスライダ14、プランジャ15、アクチュエータ制御用流路16、状態切替ポート17、状態切替用油圧室18、一対のバネ19、オリフィス(30、31)は、筐体状に形成されたケーシング20の内部に配置されている。これにより、多系統切替弁1は、1つの弁機構として構成されている。
【0028】
尚、図2は、電磁弁123が供給位置123aに電磁弁124が供給位置124aに切り替えられて制御圧油が供給されている状態における多系統切替弁1の断面を示している。そして、この状態では、後述するように、アクチュエータ(104、105)の作動状態は、アクチュエータ制御用流路16を介して圧油が供給及び排出されてアクチュエータ(104、105)の作動が制御されるアクティブ制御状態に設定されている。また、図2においては、供給油路(115、119)、排出油路(116、120)、給排油路(117a、117b、122a、122b)、制御圧油路(118、121)については、それぞれの一部を模式的に示している(図3、図4及び図6も同様)。
【0029】
スリーブ11は、内部に空間が設けられた筒状に形成され、ケーシング20の内側に固定されている。そして、スリーブ11には、後述するアクチュエータ制御用流路16における複数のポートが設けられている。また、スリーブ11が内側に固定されるケーシング20には、スリーブ11に設けられる複数のポートのそれぞれに対応する貫通孔が形成されている。ケーシング20の各貫通孔には、前述した供給油路(115、119)、排出油路(126、120)、給排油路(117a、117b、122a、122b)、制御圧油路(118、121)が接続している。
【0030】
スプール12は、円形断面の軸状に設けられ、スリーブ11の内部に配置されるとともに、長手方向である軸方向においてスリーブ11に対して相対移動自在に設置されている。そして、スプール12における一方の端部は、後述する駆動部13に支持されている。また、スプール12の外周には、後述するアクチュエータ制御用流路16における複数の流路が周方向に溝状に切り欠かれた状態で設けられている。
【0031】
駆動部13は、スプール12をその一方の端部において片持ち状に支持するとともに、スリーブ11内でスプール12を軸方向において往復移動させるように駆動する機構として設けられ、例えば、リニアモータ機構によってスプール12を駆動可能に構成されている。そして、駆動部13は、スリーブ11内におけるスプール12の軸方向位置を検知する位置センサ(図示せず)を有し、この位置センサでの検知結果に基づいてスプール12をスリーブ11内における任意の所定の位置に移動させて停止させるように駆動可能に構成されている。このように、駆動部13によって往復駆動されるスプール12を備えて構成される弁要素は、直動型のサーボ比例弁として構成されている。
【0032】
一対のスライダ14は、それぞれ円筒断面を有する筒状に設けられた複数(本実施形態では、2つ)のスライダ(21、22)として構成されている。スライダ21及びスライダ22は、内側にスプール12が摺動自在に配置されるとともに、スリーブ11の内部においてこのスリーブ11の内周に対して摺動自在に配置されている。そして、スライダ21とスライダ22とが、スプール12の軸方向に沿って並んで配置されている。また、各スライダ(21、22)には、後述するアクチュエータ制御用流路16における複数の流路が形成されている。
【0033】
プランジャ15は、円筒断面を有する筒状に設けられ、内側にスプール12が摺動自在に配置されるとともに、スリーブ11の内部においてこのスリーブ11の内周に対して摺動自在に配置されている。そして、プランジャ15は、スプール12の軸方向において隣り合うスライダ(21、22)の間に配置されている。
【0034】
一対のバネ19は、スリーブ11内においてスプール12の軸方向における両端側にそれぞれ配置されたバネ19a及びバネ19bを備えて構成されている。バネ19a及びバネ19bは、コイルバネとして設けられており、スリーブ11内において、バネ19aがスプール12の軸方向における駆動部13側の端部に配置され、バネ19bがスプール12の軸方向における駆動部13と反対側の端部に配置されている。そして、バネ19aは、スライダ21の駆動部13側の端部と駆動部13の筐体の壁部との間に配置され、スライダ21をプランジャ15側に向かって(即ち、スライダ21を駆動部13と反対側に向かって)付勢している。一方、バネ19bは、プランジャ15側とは反対側の端部とスリーブ11の端部の壁部との間に配置され、スライダ22をプランジャ15側に向かって(即ち、スライダ22を駆動部13側に向かって)付勢している。上記の構成により、一対のバネ19は、本実施形態における一対の付勢機構を構成しており、複数のスライダ(21、22)の端部のうちスプール12の軸方向の両端側にそれぞれ配置された端部を互いに対向する方向に付勢するように構成されている。
【0035】
アクチュエータ制御用流路16は、第1系統油圧経路101及び第2系統油圧経路102にそれぞれ設けられている。第1系統油圧経路101に設けられるアクチュエータ制御用流路16(以下、説明の便宜上「第1アクチュエータ制御用流路16」とも称する)は、スリーブ11とスライダ21とスプール12とに亘って形成され、スプール12が駆動部13によって駆動されることで第1アクチュエータ104に対する圧油の供給経路及び排出経路を切り替え、第1アクチュエータ104の作動を制御するように構成されている。図3は、図2の一部を拡大して示す拡大断面図であって、多系統切替弁1における第1アクチュエータ制御用流路16の部分を拡大して示す図である。図2及び図3に示すように、第1アクチュエータ制御用流路16は、供給ポート23a、排出ポート(24a、25a)、第1給排ポート26a、第2給排ポート27a、スライダ貫通流路28a、スプール外周流路29a、等を備えて構成されている。
【0036】
供給ポート23aは、スリーブ11に設けられ、ケーシング20に設けられた貫通孔を介して供給油路115に接続し、圧油が供給されるポートとして構成されている。この供給ポート23aは、スリーブ11の外側から内側に貫通する複数の貫通孔とこの複数の貫通孔に連通するとともにスリーブ11の外周に沿って切り欠かれて形成された溝状の部分とで構成されている。そして、供給油路115に連通するケーシング20における上記の貫通孔が供給ポート23aにおける上記の溝状の部分に対して連通している。
【0037】
排出ポート(24a、25a)は、スリーブ11に設けられ、それぞれケーシング20に設けられた貫通孔を介して排出油路116に接続し、第1アクチュエータ104から戻った圧油を排出するポートとして構成されている。また、排出油路116は2つに分岐して多系統切替弁1にそれぞれ接続しており、排出油路116における分岐した一方に対して排出ポート24aが接続し、排出油路116における分岐した他方に対して排出ポート25aが接続している。尚、スリーブ11の軸方向において、排出ポート24aが供給ポート23aに対して駆動部13側に配置され、排出ポート25aが供給ポート23aに対してプランジャ15側に配置されている。そして、排出ポート(24a、25a)のそれぞれは、スリーブ11の外側から内側に貫通する複数の貫通孔とこの複数の貫通孔に連通するとともにスリーブ11の外周に沿って切り欠かれて形成された溝状の部分とで構成されている。そして、分岐した排出油路116のそれぞれに連通するケーシング20における上記の各貫通孔が排出ポート(24a、25a)のそれぞれにおける上記の各溝状の部分に対して連通している。
【0038】
第1給排ポート26aは、スリーブ11に設けられ、ケーシング20に設けられた貫通孔を介して給排油路117aに接続し、第1アクチュエータ104における一方の油室107aに対して圧油を供給及び排出が可能なポートとして構成されている。この第1給排ポート26aは、スリーブ11の軸方向において、供給ポート23aに対して駆動部13側に配置され、供給ポート23aと排出ポート24aとの間に配置されている。また、第1給排ポート26aは、スリーブ11の外側から内側に貫通する複数の貫通孔とこの複数の貫通孔に連通するとともにスリーブ11の外周に沿って切り欠かれて形成された溝状の部分とで構成されている。そして、給排油路117aに連通するケーシング20における上記の貫通孔が第1給排ポート26aにおける上記の溝状の部分に対して連通している。
【0039】
第2給排ポート27aは、スリーブ11に設けられ、ケーシング20に設けられた貫通孔を介して給排油路117bに接続し、第1アクチュエータ104における他方の油室107bに対して圧油を供給及び排出が可能なポートとして構成されている。この第2給排ポート27aは、スリーブ11の軸方向において、供給ポート23aに対してプランジャ15側に配置され、供給ポート23aと排出ポート25aとの間に配置されている。また、第2給排ポート27aは、スリーブ11の外側から内側に貫通する複数の貫通孔とこの複数の貫通孔に連通するとともにスリーブ11の外周に沿って切り欠かれて形成された溝状の部分とで構成されている。そして、給排油路117bに連通するケーシング20における上記の貫通孔が第2給排ポート27aにおける上記の溝状の部分に対して連通している。
【0040】
スライダ貫通流路28aは、スライダ21に複数設けられ、スライダ21の外側と内側との間をそれぞれ貫通する複数の流路(32a、33a、34a、35a、36a)として構成されている。各流路(32a、33a、34a、35a、36a)は、スリーブ11の外側から内側に貫通する複数の貫通孔とこの複数の貫通孔に連通するとともにスリーブ11の外周に沿って切り欠かれて形成された溝状の部分とで構成されている。
【0041】
また、流路32aは、スライダ21及びスリーブ11の軸方向において、排出ポート24aと第1給排ポート26aとの間に配置され、アクティブ制御状態では排出ポート24aに連通している。尚、スライダ21が図3に示す位置から移動した状態である後述の非アクティブ制御状態においては、流路32aは、第1給排ポート26aに連通している。流路33aは、スライダ21及びスリーブ11の軸方向において、第1給排ポート26aと供給ポート23aとの間に配置され、アクティブ制御状態及び非アクティブ制御状態のいずれにおいても第1給排ポート26aに連通している。流路34aは、スライダ21及びスリーブ11の軸方向において、供給ポート23aと第2給排ポート27aとの間に配置され、アクティブ制御状態では供給ポート23aに連通し、非アクティブ制御状態では供給ポート23aに対して遮断されている。流路35aは、スライダ21及びスリーブ11の軸方向において、第2給排ポート27aに対応する位置に配置され、アクティブ制御状態及び非アクティブ制御状態のいずれにおいても第2給排ポート27aに連通している。流路36aは、スライダ21及びスリーブ11の軸方向において、排出ポート25aに対応する位置に配置され、アクティブ制御状態及び非アクティブ制御状態のいずれにおいても排出ポート25aに連通している。
【0042】
スプール外周流路29aは、スプール12の外周に複数設けられている。そして、スプール外周流路29aは、スライダ貫通流路28aを介して、第1給排ポート26a及び第2給排ポート27aの一方と供給ポート23aとを連通させ、第1給排ポート26a及び第2給排ポート27aの他方と排出ポート(24a、25a)とを連通させることが可能な複数の流路(37a、38a、39a)として構成されている。各流路(37a、38a、39a)は、スプール12の外周に沿って切り欠かれて形成された溝状の部分として構成されている。
【0043】
流路37aは、スプール12及びスライダ21の軸方向において、スライダ貫通流路28aの流路32a及び流路33aの間に配置されている。そして、流路37aは、図2及び図3に示す中立状態と、中立状態からスプール12が駆動部13によって駆動されて駆動部13側に(図3において矢印Aで示す方向に)移動した状態とにおいては、流路32aに連通している。一方、流路37aは、上記の中立状態からスプール12が駆動部13によって駆動されて駆動部13と反対側に(図3において矢印Bで示す方向に)移動した状態においては、流路33aに連通している。また、流路38aは、スプール12及びスライダ21の軸方向において、スライダ貫通流路28aの流路33a及び流路35aの間に配置されている。そして、流路38aは、上記の中立状態では流路34aのみに連通し、中立状態からスプール12が駆動部13側に移動した状態では流路33a及び流路34aに連通し、中立状態からスプール12が駆動部13と反対側に移動した状態では流路34a及び流路35aに連通している。また、流路39aは、スプール12及びスライダ21の軸方向において、スライダ貫通流路28aの流路35a及び流路36aの間に配置されている。そして、流路39aは、上記の中立状態と中立状態からスプール12が駆動部13に対して反対側に移動した状態とにおいては流路36aのみに連通し、中立状態からスプール12が駆動部13側に移動した状態では流路35a及び流路36aに連通している。
【0044】
第2系統油圧経路102に設けられるアクチュエータ制御用流路16(以下、説明の便宜上「第2アクチュエータ制御用流路16」とも称する)は、スリーブ11とスライダ22とスプール12とに亘って形成され、スプール12が駆動部13によって駆動されることで第2アクチュエータ105に対する圧油の供給経路及び排出経路を切り替え、第2アクチュエータ105の作動を制御するように構成されている。図4は、図2の一部を拡大して示す拡大断面図であって、多系統切替弁1における第2アクチュエータ制御用流路16の部分を拡大して示す図である。図2及び図4に示すように、第2アクチュエータ制御用流路16は、供給ポート23b、排出ポート(24b、25b)、第1給排ポート26b、第2給排ポート27b、スライダ貫通流路28b、スプール外周流路29b、等を備えて構成されている。
【0045】
供給ポート23bは、スリーブ11に設けられ、ケーシング20に設けられた貫通孔を介して供給油路119に接続し、圧油が供給されるポートとして構成されている。この供給ポート23bは、スリーブ11の外側から内側に貫通する複数の貫通孔とこの複数の貫通孔に連通するとともにスリーブ11の外周に沿って切り欠かれて形成された溝状の部分とで構成されている。そして、供給油路119に連通するケーシング20における上記の貫通孔が供給ポート23bにおける上記の溝状の部分に対して連通している。
【0046】
排出ポート(24b、25b)は、スリーブ11に設けられ、それぞれケーシング20に設けられた貫通孔を介して排出油路120に接続し、第2アクチュエータ105から戻った圧油を排出するポートとして構成されている。また、排出油路120は2つに分岐して多系統切替弁1にそれぞれ接続しており、排出油路120における分岐した一方に対して排出ポート24bが接続し、排出油路120における分岐した他方に対して排出ポート25bが接続している。尚、スリーブ11の軸方向において、排出ポート24bが供給ポート23bに対して駆動部13側(即ち、プランジャ15側)に配置され、排出ポート25bが供給ポート23bに対して駆動部13と反対側に配置されている。そして、排出ポート(24b、25b)のそれぞれは、スリーブ11の外側から内側に貫通する複数の貫通孔とこの複数の貫通孔に連通するとともにスリーブ11の外周に沿って切り欠かれて形成された溝状の部分とで構成されている。そして、分岐した排出油路120のそれぞれに連通するケーシング20における上記の各貫通孔が排出ポート(24b、25b)のそれぞれにおける上記の各溝状の部分に対して連通している。
【0047】
第1給排ポート26bは、スリーブ11に設けられ、ケーシング20に設けられた貫通孔を介して給排油路122aに接続し、第2アクチュエータ105における一方の油室108aに対して圧油を供給及び排出が可能なポートとして構成されている。この第1給排ポート26bは、スリーブ11の軸方向において、供給ポート23bに対して駆動部13側に配置され、供給ポート23bと排出ポート24bとの間に配置されている。また、第1給排ポート26bは、スリーブ11の外側から内側に貫通する複数の貫通孔とこの複数の貫通孔に連通するとともにスリーブ11の外周に沿って切り欠かれて形成された溝状の部分とで構成されている。そして、給排油路122aに連通するケーシング20における上記の貫通孔が第1給排ポート26bにおける上記の溝状の部分に対して連通している。
【0048】
第2給排ポート27bは、スリーブ11に設けられ、ケーシング20に設けられた貫通孔を介して給排油路122bに接続し、第2アクチュエータ105における他方の油室108bに対して圧油を供給及び排出が可能なポートとして構成されている。この第2給排ポート27bは、スリーブ11の軸方向において、供給ポート23bに対して駆動部13と反対側に配置され、供給ポート23bと排出ポート25bとの間に配置されている。また、第2給排ポート27bは、スリーブ11の外側から内側に貫通する複数の貫通孔とこの複数の貫通孔に連通するとともにスリーブ11の外周に沿って切り欠かれて形成された溝状の部分とで構成されている。そして、給排油路122bに連通するケーシング20における上記の貫通孔が第2給排ポート27bにおける上記の溝状の部分に対して連通している。
【0049】
スライダ貫通流路28bは、スライダ22に複数設けられ、スライダ22の外側と内側との間をそれぞれ貫通する複数の流路(32b、33b、34b、35b、36b)として構成されている。各流路(32b、33b、34b、35b、36b)は、スリーブ11の外側から内側に貫通する複数の貫通孔とこの複数の貫通孔に連通するとともにスリーブ11の外周に沿って切り欠かれて形成された溝状の部分とで構成されている。
【0050】
また、流路32bは、スライダ22及びスリーブ11の軸方向において、排出ポート24bに対応する位置に配置され、アクティブ制御状態及び非アクティブ制御状態のいずれにおいても排出ポート24bに連通している。流路33bは、スライダ22及びスリーブ11の軸方向において、第1給排ポート26bに対応する位置に配置され、アクティブ制御状態及び非アクティブ制御状態のいずれにおいても第1給排ポート26bに連通している。流路34bは、スライダ22及びスリーブ11の軸方向において、供給ポート23bと第1給排ポート26bとの間に配置され、アクティブ制御状態では供給ポート23bに連通し、非アクティブ制御状態では供給ポート23bに対して遮断されている。流路35bは、スライダ22及びスリーブ11の軸方向において、供給ポート23bと第2給排ポート27bとの間に配置され、アクティブ制御状態及び非アクティブ制御状態のいずれにおいても第2給排ポート27bに連通している。流路36bは、スライダ22及びスリーブ11の軸方向において、第2給排ポート27bと排出ポート25bとの間に配置され、アクティブ制御状態では排出ポート25bに連通し、非アクティブ制御状態では第2給排ポート27b及び排出ポート25bに連通している。
【0051】
スプール外周流路29bは、スプール12の外周に複数設けられている。そして、スプール外周流路29bは、スライダ貫通流路28bを介して、第1給排ポート26b及び第2給排ポート27bの一方と供給ポート23bとを連通させ、第1給排ポート26b及び第2給排ポート27bの他方と排出ポート(24b、25b)とを連通させることが可能な複数の流路(37b、38b、39b)として構成されている。各流路(37b、38b、39b)は、スプール12の外周に沿って切り欠かれて形成された溝状の部分として構成されている。
【0052】
流路37bは、スプール12及びスライダ22の軸方向において、スライダ貫通流路28bの流路32b及び流路33bの間に配置されている。そして、流路37bは、図2及び図3に示す中立状態と、中立状態からスプール12が駆動部13によって駆動されて駆動部13側に(図4において矢印Aで示す方向に)移動した状態とにおいては、流路32bのみに連通している。一方、流路37bは、上記の中立状態からスプール12が駆動部13によって駆動されて駆動部13と反対側に(図4において矢印Bで示す方向に)移動した状態においては、流路32b及び流路33bに連通している。また、流路38bは、スプール12及びスライダ22の軸方向において、スライダ貫通流路28bの流路33b及び流路35bの間に配置されている。そして、流路38bは、上記の中立状態では流路34bのみに連通し、中立状態からスプール12が駆動部13側に移動した状態では流路33b及び流路34bに連通し、中立状態からスプール12が駆動部13と反対側に移動した状態では流路34b及び流路35bに連通している。また、流路39bは、スプール12及びスライダ22の軸方向において、スライダ貫通流路28bの流路35b及び流路36bの間に配置されている。そして、流路39bは、上記の中立状態と中立状態からスプール12が駆動部13に対して反対側に移動した状態とにおいては流路36bのみに連通し、中立状態からスプール12が駆動部13側に移動した状態では流路35b及び流路36bに連通している。
【0053】
図2乃至図4に示すように、状態切替ポート17(17a、17b)は、スリーブ11に複数設けられ、第1系統油圧経路101に対応して状態切替ポート17aが設けられ、第2系統油圧経路102に対応して状態切替ポート17bが設けられている。状態切替ポート17aは、ケーシング20に設けられた貫通孔を介して制御圧油路118に接続し、制御圧油が供給及び排出されるポートとして構成されている。この状態切替ポート17aは、スリーブ11の外側から内側に貫通する複数の貫通孔とこの複数の貫通孔に連通するとともにスリーブ11の外周に沿って切り欠かれて形成された溝状の部分とで構成されている。そして、制御圧油路118に連通するケーシング20における上記の貫通孔が状態切替ポート17aにおける上記の溝状の部分に対して連通している。
【0054】
状態切替ポート17bは、ケーシング20に設けられた貫通孔を介して制御圧油路121に接続し、制御圧油が供給及び排出されるポートとして構成されている。この状態切替ポート17bは、スリーブ11の外側から内側に貫通する複数の貫通孔とこの複数の貫通孔に連通するとともにスリーブ11の外周に沿って切り欠かれて形成された溝状の部分とで構成されている。そして、制御圧油路121に連通するケーシング20における上記の貫通孔が状態切替ポート17bにおける上記の溝状の部分に対して連通している。
【0055】
複数の状態切替ポート17(17a、17b)は、アクチュエータ(104、105)の作動状態について、アクティブ制御状態と非アクティブ制御状態とのいずれかに切り替えるための制御用の圧油(圧力流体)である制御圧油(制御圧流体)が供給及び排出されるように構成されている。そして、制御圧油が複数の状態切替ポート17に供給されて多系統切替弁1がアクティブ制御状態に切り替えられると、アクチュエータ制御用流路16を介して圧油が供給及び排出されてアクチュエータ(104、105)の作動が制御される状態となる。一方、制御圧油が複数の状態切替ポート17から排出されて多系統切替弁1が非アクティブ制御状態に切り替えられると、アクチュエータ制御用流路16を介した圧油の供給が停止されてアクチュエータ(104、105)に作用する外力(即ち、飛行中の航空機の舵面100に作用する外力)に追従するようにアクチュエータ(104、105)が作動可能な状態となる。
【0056】
図2乃至図4に示すように、状態切替用油圧室18(18a、18b)は、スリーブ11とスプール12との間に複数設けられ、第1系統油圧経路101に対応して状態切替用油圧室18aが設けられ、第2系統油圧経路102に対応して状態切替用油圧室18bが設けられている。状態切替用油圧室18aは、状態切替ポート17aに連通するとともに、スリーブ11の内周とスプール12の外周とプランジャ15の端部とスライダ21の端部との間で区画された領域として設けられている。状態切替用油圧室18bは、状態切替ポート17bに連通するとともに、スリーブ11の内周とスプール12の外周とプランジャ15の端部とスライダ22の端部との間で区画された領域として設けられている。
【0057】
上述のように構成される状態切替ポート17及び状態切替用油圧室18が設けられているため、多系統切替弁1では、状態切替ポート17aを介して状態切替用油圧室18aに制御圧油が供給されることで、一対のバネ19の付勢力に抗してプランジャ15とスライダ21とが離間し、アクチュエータ(104、105)の作動状態がアクティブ制御状態に切り替えられることになる。そして、状態切替ポート17bを介して状態切替用油圧室18bに制御圧油が供給されることで、一対のバネ19の付勢力に抗してプランジャ15とスライダ22とが離間し、アクチュエータ(104、105)の作動状態がアクティブ制御状態に切り替えられることになる。更に、多系統切替弁1では、複数の状態切替ポート17(17a、17b)を介して複数の状態切替用油圧室18(18a、18b)から制御圧油が排出されることで、一対のバネ19の付勢力によってプランジャ15とスライダ21及びスライダ22とが接近し、アクチュエータ(104、105)の作動状態が非アクティブ制御状態に切り替えられることになる。
【0058】
図2乃至図4に示すように、オリフィス(30、31)は、スライダ21に設けられたオリフィス30と、スライダ22に設けられたオリフィス31とを備えて構成されている。オリフィス30(30a、30b)は、スライダ21において複数設けられ、スライダ貫通流路28aに連通するノッチとして設けられている。そして、オリフィス30aは、スライダ貫通流路28aの流路32aに設けられ、スプール外周流路37aから流路32aを通過して排出ポート24aへと至る経路において通過する油の流量を絞ることが可能なように断面積が減少した流路部分として形成されている。また、オリフィス30bは、スライダ貫通流路28aの流路36aに設けられ、スプール外周流路39aから流路36aを通過して排出ポート25aへと至る経路において通過する油の流量を絞ることが可能なように断面積が減少した流路部分として形成されている。
【0059】
また、オリフィス31(31a、31b)は、スライダ22において複数設けられ、スライダ貫通流路28bに連通するノッチとして設けられている。そして、オリフィス31aは、スライダ貫通流路28bの流路32bに設けられ、スプール外周流路37bから流路32bを通過して排出ポート24bへと至る経路において通過する油の流量を絞ることが可能なように断面積が減少した流路部分として形成されている。また、オリフィス31bは、スライダ貫通流路28bの流路36bに設けられ、スプール外周流路39bから流路36bを通過して排出ポート25bへと至る経路において通過する油の流量を絞ることが可能なように断面積が減少した流路部分として形成されている。
【0060】
上述のように構成されるオリフィス(30、31)が設けられているため、多系統切替弁1では、非アクティブ制御状態において、オリフィス30を介して、第1給排ポート26a及び第2給排ポート27aと排出ポート(24a、25a)とが連通することになる。即ち、非アクティブ制御状態において、流路32aとスプール外周流路37aとオリフィス30aとを介して、第1給排ポート26aと排出ポート24aとが連通し、流路35aとスプール外周流路39aと流路36aとオリフィス30bとを介して、第2給排ポート27aと排出ポート25aとが連通することになる。そして、多系統切替弁1では、非アクティブ制御状態において、オリフィス31を介して、第1給排ポート26b及び第2給排ポート27bと排出ポート(24b、25b)とが連通することになる。即ち、非アクティブ制御状態において、流路33bとスプール外周流路37bと流路32bとオリフィス31aとを介して、第1給排ポート26bと排出ポート24bとが連通し、流路35bとスプール外周流路39bと流路36bとオリフィス30bとを介して、第2給排ポート27bと排出ポート25bとが連通することになる。
【0061】
次に、多系統切替弁1の作動について説明する。多系統切替弁1は、例えば、タンデムアクチュエータ103の動作を制御する図示しないアクチュエータコントローラからの指令信号に基づいて作動する。尚、アクチュエータコントローラは、更に上位のコンピュータとして設けられて舵面100の動作を指令するフライトコントローラ(図示せず)からの指令信号に基づいて多系統切替弁1を作動させるように構成されている。
【0062】
まず、第1及び第2系統油圧源(111、113)や第1及び第2系統油圧源(111、113)から第1及び第2アクチュエータ(104、105)への圧油の供給系統などにおいて故障が発生しておらず、通常の運転状態で運転が行われている場合について説明する。通常の運転状態においては、前述のアクチュエータコントローラを介したフライトコントローラからの指令に基づいて、電磁弁123は供給位置123aに切り替えられた状態が維持されており、電磁弁124は供給位置124aに切り替えられた状態が維持されている。
【0063】
上記により、制御圧油路118及び状態切替ポート17aを介して制御圧油が状態切替用油圧室18aに供給され、制御圧油路121及び状態切替ポート17bを介して制御圧油が状態切替用油圧室18bに供給された状態が維持されている。このため、一対のバネ19の付勢力に抗して、プランジャ15とスライダ21とが離間するとともに、プランジャ15とスライダ22とが離間し、多系統切替弁1は、図2乃至図4に示す状態が維持されている。即ち、多系統切替弁1は、第1及び第2アクチュエータ(104、105)の作動状態をアクティブ制御状態に設定した状態を維持している。
【0064】
図5は、アクティブ制御状態に設定された多系統切替弁1における第1系統油圧経路101に対応する部分の油圧回路を模式的に示す油圧回路図である。図5(a)は、スプール12が中立位置12aに位置している中立状態を示している。一方、図5(b)及び図5(c)は、図5(a)の更に一部の油圧回路に対応する部分を図示している。そして、図5(b)は、中立状態からスプール12が駆動部13によって駆動されて駆動部13側に(図3及び図4の矢印A方向に)移動し、スプール12が第1切替位置12bに位置した状態を示している。また、図5(c)は、中立状態からスプール12が駆動部13によって駆動されて駆動部13と反対側に(図3及び図4の矢印B方向に)移動し、スプール12が第2切替位置12cに位置した状態を示している。尚、多系統切替弁1における第2系統油圧経路102に対応する部分の油圧回路を模式的に示す油圧回路図については、図5と同様となるため、図示を省略する。
【0065】
アクティブ制御状態の中立状態においては、多系統切替弁1は、図2乃至図4、図5(a)に示す状態となっており、供給油路(115、119)及び排出油路(116、120)と、給排油路(117a、117b、122a、122b)とが遮断されている。この中立状態から駆動部13によって駆動されてスプール12が第1切替位置12bに切り替えられると、図5(b)に示すように、供給油路115と給排油路117aとが連通して第1アクチュエータ104の一方の油室107aに圧油が供給され、排出油路116と給排油路117bとが連通して第1アクチュエータ104の他方の油室107bから圧油が排出される。このとき、供給ポート23aと第1給排ポート26aとが、流路34aと流路38aと流路33aとを介して接続されている。そして、第2給排ポート27aと排出ポート25aとが、流路35aと流路39aと流路36aとを介して接続されている。同様に、供給油路119と給排油路122aとが連通して第2アクチュエータ105の一方の油室108aに圧油が供給され、排出油路120と給排油路122bとが連通して第2アクチュエータ105の他方の油室108bから圧油が排出される。このとき、供給ポート23bと第1給排ポート26bとが、流路34bと流路38bと流路33bとを介して接続されている。そして、第2給排ポート27bと排出ポート25bとが、流路35bと流路39bと流路36bとを介して接続されている。
【0066】
また、中立状態から駆動部13によって駆動されてスプール12が第2切替位置12cに切り替えられると、図5(c)に示すように、供給油路115と給排油路117bとが連通して第1アクチュエータ104の他方の油室107bに圧油が供給され、排出油路116と給排油路117aとが連通して第1アクチュエータ104の一方の油室107aから圧油が排出される。このとき、供給ポート23aと第2給排ポート27aとが、流路34aと流路38aと流路35aとを介して接続されている。そして、第1給排ポート26aと排出ポート24aとが、流路33aと流路37aと流路32aとを介して接続されている。同様に、供給油路119と給排油路122bとが連通して第2アクチュエータ105の他方の油室108bに圧油が供給され、排出油路120と給排油路122aとが連通して第2アクチュエータ105の一方の油室108aから圧油が排出される。このとき、供給ポート23bと第2給排ポート27bとが、流路33bと流路38bと流路35bとを介して接続されている。そして、第1給排ポート26bと排出ポート24bとが、流路33bと流路37bと流路32bとを介して接続されている。尚、スプール12が第1切替位置12bに切り替えられた状態と第2切替位置12cに切り替えられた状態では、タンデムアクチュエータ103のロッド106は逆方向に移動し、舵面100も逆方向に動作するように駆動されることになる。
【0067】
上記のように、アクティブ制御状態においては、スプール12が、中立位置12a、第1切替位置12b及び第2切替位置12cの間で切り替えられ、第1及び第2アクチュエータ(104、105)の作動が制御される。尚、駆動部13によって駆動されるスプール12を備えて構成される弁要素は比例弁として設けられており、スプール12の位置は、中立位置12a、第1切替位置12b及び第2切替位置12cの間で比例的に調整さされることになる。
【0068】
次に、第1及び第2系統油圧源(111、113)や第1及び第2系統油圧源(111、113)から第1及び第2アクチュエータ(104、105)への圧油の供給系統などにおいて故障が発生した場合について説明する。この場合、前述のアクチュエータコントローラを介したフライトコントローラからの指令に基づいて、電磁弁123は排出位置123bに切り替えられ、電磁弁124は排出位置124bに切り替えられる。
【0069】
図6は、図2と同様に多系統切替弁1の断面について一部切欠き状態で示す図であり、非アクティブ制御状態における多系統切替弁1の断面を示す図である。また、図7は、非アクティブ制御状態に設定された多系統切替弁1における第1系統油圧経路101に対応する部分の油圧回路を模式的に示す油圧回路図である。尚、非アクティブ制御状態の多系統切替弁1における第2系統油圧経路102に対応する部分の油圧回路を模式的に示す油圧回路図については、図7と同様となるため、図示を省略する。
【0070】
前述のように、電磁弁123が排出位置123bに切り替えられ、電磁弁124が排出位置124bに切り替えられることにより、状態切替ポート17a及び制御圧油路118を介して制御圧油が状態切替用油圧室18aから排出される。そして、状態切替ポート17b及び制御圧油路121を介して制御圧油が状態切替用油圧室18bから排出される。このため、図6に示すように、一対のバネ19の付勢力によって、プランジャ15とスライダ21とが接近して当接するとともに、プランジャ15とスライダ22とが接近して当接することになる。これにより、多系統切替弁1は、第1及び第2アクチュエータ(104、105)の作動状態を非アクティブ制御状態に切り替えることになる。
【0071】
非アクティブ制御状態においては、多系統切替弁1は、図6及び図7に示す状態となっており、供給油路115との接続が遮断され、給排油路(117a、117b)と排出油路116とがオリフィス30(30a、30b)を介して接続されている。そして、供給油路119との接続が遮断され、給排油路(122a、122b)と排出油路120とがオリフィス31(31a、31b)を介して接続されている。このとき、多系統切替弁1における第1系統油圧経路101に対応する部分においては、供給ポート23aとスライダ貫通流路28aとの接続が遮断されている。そして、第1給排ポート26aと排出ポート24aとが、流路32aと流路37aとオリフィス30aとを介して接続され、第2給排ポート27aと排出ポート25aとが、流路35aと流路39aと流路36aとオリフィス30bとを介して接続されている。また、多系統切替弁1における第2系統油圧経路102に対応する部分においては、供給ポート23bとスライダ貫通流路28bとの接続が遮断されている。そして、第1給排ポート26bと排出ポート24bとが、流路33bと流路37bと流路32bとオリフィス31aとを介して接続され、第2給排ポート27bと排出ポート25bとが、流路36bと流路39bとオリフィス31bとを介して接続されている。
【0072】
上記のように、非アクティブ制御状態においては、多系統切替弁1が、アクチュエータ制御用流路16を介した圧油の供給を停止し、給排油路(117a、117b、122a、122b)と排出油路(116、120)とをオリフィス(30、31)を介して接続する。このため、オリフィス(30、31)によるダンピング機能(減衰機能)が発揮された状態で、各アクチュエータ(104、105)における一方の油室(107a、108a)と他方の油室(107b、108b)とが排出油路(116、120)に接続される。これにより、アクチュエータ(104、105)の作動状態が、舵面100を介してアクチュエータ(104、105)に作用する外力に追従させるようにアクチュエータ(104、105)を作動可能な非アクティブ制御状態に設定されることになる。
【0073】
尚、例えば、第1及び第2系統油圧源(111、113)のうちの一方に故障が発生し、フライトコントローラからの指令に基づいて、電磁弁(123、124)のうちの一方のみが切替位置から排出位置に切り替えられた場合は、状態切替用油圧室(18a、18b)のうちの一方のみから制御圧油が排出され、状態切替用油圧室(18a、18b)のうちの他方については制御圧油が供給された状態が維持される。この場合、プランジャ15がスライダ(21、22)のうちの一方とのみ当接し、一対のバネ19の付勢力に抗して、プランジャ15とスライダ(21、22)の他方との間の間隔が広がることになる。これにより、スライダ21及びスライダ22が図2に示すアクティブ制御状態と同様に、スリーブ11の両端側に向かって付勢された位置に位置することになる。このため、アクチュエータ(104、105)の作動状態は、アクティブ制御状態に維持されることになる。
【0074】
以上説明したように、多系統切替弁1によると、スリーブ11に設けられた状態切替ポート17(17a、17b)を介してプランジャ15及びスライダ(21、22)の間に配置された状態切替用油圧室18(18a、18b)に制御圧油が供給されることで、アクチュエータ(104、105)の作動状態がアクティブ制御状態に切り替えられる。この状態では、駆動部13の駆動によってスプール12が駆動されることで、アクチュエータ制御用流路16が切り替えられ、タンデムアクチュエータ103として構成された複数の系統のアクチュエータ(104、105)のそれぞれの作動が制御されることになる。一方、状態切替ポート17(17a、17b)を介して状態切替用油圧室18(18a、18b)から制御圧油が排出されることで、アクチュエータ(104、105)の作動状態が非アクティブ制御状態に切り替えられる。この状態では、アクチュエータ制御流路16を介した圧油のアクチュエータ(104、105)への供給が停止され、タンデムアクチュエータ103として設けられた複数の系統のアクチュエータ(104、105)は、作用する外力に追従するように作動することになる。このため、第1及び第2系統油圧源(111、113)やアクチュエータ(104、105)への圧油の供給系統などにおいて故障が発生した際に、アクチュエータ(104、105)を外力に追従させ、他の駆動機器の動作を阻害するような動作や過度に動いてしまうような異常な動作が生じてしまうことを防止することができる。よって、多系統切替弁1によると、アクチュエータ(104、105)に対する圧油の供給経路及び排出経路を切り替えてアクチュエータ(104、105)の作動を制御できるとともにアクチュエータ(104、105)の作動状態についてアクティブ制御状態と非アクティブ制御状態とのいずれかに切り替えることができる弁機構を構成することができる。
【0075】
そして、多系統切替弁1は、上述した機能を発揮可能な弁機構が、スプール12及びその駆動部13と、スプール12の外周で摺動するスライダ(21、22)及びプランジャ15と、スリーブ11、スライダ(21、22)及びスプール12に亘って形成されたアクチュエータ制御用流路16と、スリーブ11に設けられた状態切替ポート17(17a、17b)と、プランジャ15及びスライダ(21、22)の間に設けられた状態切替用油圧室18(18a、18b)と、スライダ(21、22)を付勢する一対のバネ19と、によって構成される。このため、アクチュエータ(104、105)に対する圧油の供給経路及び排出経路を切り替えてアクチュエータ(104、105)の作動を制御できるとともにアクチュエータ(104、105)の作動状態についてアクティブ制御状態と非アクティブ制御状態とのいずれかに切り替えることができる弁機構を一体に組み立てられた1つの弁機構として構築することができる。即ち、従来の弁機構のように独立した構成で別途設けられた複数の切替弁を備えた機構としてではなく、一体に組み立てられた1つの多系統切替弁1として構成できることになる。更に、スプール12の外周とスリーブ11の内周との間にスライダ(21、22)及びプランジャ15が配置される構造のため、コンパクトで小型の多系統切替弁1を実現することができる。よって、構成部品点数の増大を招いてしまうことを抑制できるとともに機構の大型化を抑制でき、更に、これらに伴い、コストの増大も抑制することができる。
【0076】
従って、本実施形態によると、アクチュエータ(104、105)に対する圧油の供給経路及び排出経路を切り替えてアクチュエータ(104、105)の作動を制御できるとともにアクチュエータ(104、105)の作動状態についてアクティブ制御状態と非アクティブ制御状態とのいずれかに切り替えることができる弁機構を構成でき、構成部品点数の増大を抑制できるとともに、機構の大型化を抑制できる多系統切替弁1を提供することができる。
【0077】
また、多系統切替弁1によると、アクチュエータ制御用流路16が、スリー11に設けられた供給ポート(23a、23b)、排出ポート(24a、25a、24b、25b)、第1給排ポート(26a、26b)及び第2給排ポート(27a、27b)と、スライダ(21、22)に設けられたスライダ貫通流路(28a、28b)と、スプール12の外周に設けられたスプール外周流路(29a、29b)とによって構成される。このため、スリーブ11及びスライダ12に複数の孔を加工するとともにスプール12の外周に複数の溝を加工することで、コンパクトなスペースにおいて簡素な構造で容易にアクチュエータ制御用流路16を構築することができる。
【0078】
また、多系統切替弁1によると、スライダ(21、22)にスライダ貫通流路(28a、28b)に連通するオリフィス(30、31)が設けられる。そして、非アクティブ制御状態において、第1及び第2給排ポート(26a、26b、27a、27b)と排出ポート(24a、25a、24b、25b)とがオリフィス(30、31)を介して連通する。このため、第1及び第2系統油圧源(111、113)等において故障が発生し、非アクティブ制御状態に切り替えてアクチュエータ(104、105)を外力に追従させる際に、一方及び他方の油圧室(107a、107b、108a、108b)と排出系統との間において、圧油がオリフィス(30、31)を通過して流動することになる。これにより、非アクティブ制御状態において、スライダ貫通流路(28a、28b)に設けられたオリフィス(30、31)によってダンピング機能(減衰機能)を発揮させることができる。よって、他の駆動機器の動作を阻害するような動作や過度に動いてしまうような異常な動作が生じてしまうことを効率よく防止することができる。また、オリフィス(30、31)がスライ(21、22)に設けられたノッチとして構成されるため、ダンピング機能を発揮させるための構造をスライダ(21、22)にノッチを設けるという簡素な構造で容易に構築することができる。
【0079】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができる。例えば、航空機の脚装置を駆動する流体圧作動式の複数の系統のアクチュエータの作動を制御する多系統切替弁として構成されてもよい。また、航空機以外の用途において用いられる流体圧作動式の複数の系統のアクチュエータの作動を制御する多系統切替弁として構成されてもよい。
【0080】
また、上記の実施形態においては、非アクティブ制御状態において、オリフィスを介して、第1給排ポート及び第2給排ポートと排出ポートとが連通する多系統切替弁を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。例えば、非アクティブ制御状態において、オリフィスを介して、第1給排ポートと第2給排ポートとが連通する多系統切替弁を構成してもよい。この形態においても、非アクティブ制御状態において、スライダ貫通流路に設けられたオリフィスによってダンピング機能を発揮させることができる。よって、他の駆動機器の動作を阻害するような動作や過度に動いてしまうような異常な動作が生じてしまうことを効率よく防止することができる。
【0081】
また、上記の実施形態においては、複数の系統のアクチュエータとして直列に配置された2つのアクチュエータを備えたタンデムアクチュエータを例にとって説明したが、この例に限らず、本発明の多系統切替弁を適用することができる。例えば、本発明の多系統切替弁が適用される複数の系統のアクチュエータは、3つ以上のアクチュエータを備えて構成される形態であってもよく、また、並列に配置された複数のアクチュエータを備えた形態であってもよい。
【0082】
尚、図8は、多系統切替弁が適用される油圧回路の変形例を模式的に示す油圧回路図である。図8において、上記の実施形態と同様の構成要素については、図面において同一の符号を付して説明を省略する。図8に示す変形例に係る油圧回路においては、アクチュエータ104及びアクチュエータ105が並列に配置されている。そして、アクチュエータ104は舵面100に連結されるロッド106aを備え、アクチュエータ105は舵面100に連結されるロッド106bを備え、各アクチュエータ(104、105)はそれぞれ独立して作動可能に構成されている。このような油圧回路に対して多系統切替弁1を適用してもよい。
【0083】
また、上記の実施形態においては、一対の付勢機構として一対のバネを例にとって説明したが、この通りでなくてもよく、一対の付勢機構は、圧力流体によって作動する付勢機構や電力によって作動する付勢機構等、バネ以外の付勢機構として構成されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、流体圧作動式の複数の系統のアクチュエータのそれぞれへ供給及び排出される圧力流体が流動する複数の系統の圧力流体経路を切り替えて複数の系統のアクチュエータの作動を制御する多系統切替弁として、広く適用することができるものである。
【符号の説明】
【0085】
1 多系統切替弁
11 スリーブ
12 スプール
13 駆動部
15 プランジャ
16 アクチュエータ制御用流路
17、17a、17b 状態切替ポート
18、18a、18b 状態切替用油圧室(状態切替用圧力流体室)
19 一対のバネ(一対の付勢機構)
21、22 スライダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体圧作動式の複数の系統のアクチュエータのそれぞれへ供給及び排出される圧力流体が流動する複数の系統の圧力流体経路を切り替え、複数の系統のアクチュエータの作動を制御する多系統切替弁であって、
内部に空間が設けられたスリーブと、
軸状に設けられ、前記スリーブの内部に配置されるとともに軸方向において移動自在に設置されるスプールと、
前記スプールを軸方向において往復移動させるように駆動する駆動部と、
筒状に設けられ、内側に前記スプールが摺動自在に配置されるとともに、前記スリーブの内部において当該スリーブの内周に対して摺動自在に配置され、前記スプールの軸方向に沿って並んで配置される複数のスライダと、
筒状に設けられ、内側に前記スプールが摺動自在に配置されるとともに、前記スリーブの内部において当該スリーブの内周に対して摺動自在に配置され、前記スプールの軸方向において隣り合う前記スライダ同士の間に配置されるプランジャと、
前記スリーブと前記スライダと前記スプールとに亘って形成され、前記スプールが前記駆動部によって駆動されることで前記アクチュエータに対する圧力流体の供給経路及び排出経路を切り替え、前記アクチュエータの作動を制御するアクチュエータ制御用流路と、
前記スリーブに設けられ、前記アクチュエータの作動状態について、前記アクチュエータ制御用流路を介して圧力流体が供給及び排出されて前記アクチュエータの作動が制御されるアクティブ制御状態と、前記アクチュエータ制御用流路を介した圧力流体の供給を停止して前記アクチュエータに作用する外力に追従させるように当該アクチュエータを作動可能な非アクティブ制御状態と、のいずれかに切り替えるための制御用の圧力流体である制御圧流体が供給及び排出される複数の状態切替ポートと、
前記状態切替ポートに連通するとともに、前記スリーブの内周と前記スプールの外周と前記プランジャの端部と前記スライダの端部との間で区画された領域としてそれぞれ設けられた複数の状態切替用圧力流体室と、
前記スリーブ内において前記スプールの軸方向における両端側にそれぞれ配置され、複数の前記スライダの端部のうち前記スプールの軸方向の両端側にそれぞれ配置された端部を互いに対向する方向に付勢する一対の付勢機構と、
を備え、
前記状態切替ポートを介して前記状態切替用圧力流体室に前記制御圧流体が供給されることで、前記一対の付勢機構の付勢力に抗して前記プランジャと前記スライダとが離間し、前記アクチュエータの作動状態が前記アクティブ制御状態に切り替えられ、
複数の前記状態切替ポートを介して複数の前記状態切替用圧力流体室から前記制御圧流体が排出されることで、前記一対の付勢機構の付勢力によって前記プランジャと前記スライダとが接近し、前記アクチュエータの作動状態が前記非アクティブ制御状態に切り替えられることを特徴とする、多系統切替弁。
【請求項2】
請求項1に記載の多系統切替弁であって、
前記アクチュエータは、シリンダ機構として設けられ、
前記アクチュエータ制御用流路は、
前記スリーブに設けられ、圧力流体が供給される供給ポートと、
前記スリーブに設けられ、前記アクチュエータにおける一方の圧力流体室に対して圧力流体を供給及び排出が可能な第1給排ポートと、
前記スリーブに設けられ、前記アクチュエータにおいて前記一方の圧力流体室にピストンを介して対向する他方の圧力流体室に対して圧力流体を供給及び排出が可能な第2給排ポートと、
前記スリーブに設けられ、前記アクチュエータから戻った圧力流体を排出する排出ポートと、
前記スライダに設けられ、当該スライダの外側と内側との間をそれぞれ貫通する複数のスライダ貫通流路と、
前記スプールの外周に設けられ、前記スライダ貫通流路を介して、前記第1給排ポート及び前記第2給排ポートの一方と前記供給ポートとを連通させ、前記第1給排ポート及び前記第2給排ポートの他方と前記排出ポートとを連通させることが可能な複数のスプール外周流路と、
を備えていることを特徴とする、多系統切替弁。
【請求項3】
請求項2に記載の多系統切替弁であって、
前記スライダにおいて前記スライダ貫通流路に連通するノッチとして設けられたオリフィスを更に備え、
前記非アクティブ制御状態において、前記オリフィスを介して、前記第1給排ポートと前記第2給排ポートとが連通し、又は、前記第1給排ポート及び前記第2給排ポートと前記排出ポートとが連通することを特徴とする、多系統切替弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−21630(P2012−21630A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161761(P2010−161761)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【Fターム(参考)】