説明

多自由度位置決め装置および多自由度位置決め方法

【課題】簡易な構成で、エンドプレートおよびツールや治具の重量を支えることができ、また、駆動電流による発熱を抑制し、作業を行う際の駆動力を確保する。
【解決手段】ベースプレート2とエンドプレート4との間に接続された複数のリンク3と、各リンク3に取り付けられ、リンク3を駆動させるアクチュエータ6と、ベースプレート2とエンドプレート4との間に接続され、定常位置でのエンドプレート4およびエンドプレート4に取り付けられた物体の重量を支える重力補償装置5とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パラレルメカニズム機構を利用した多自由度位置決め装置および多自由度位置決め方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体部品やMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)部品の供給や精密実装などの作業を行う場合に、マイクロロボットハンドが用いられている。マイクロロボットハンドは、パラレルメカニズム機構を利用した多自由度位置決め装置によって位置・姿勢が制御されている。
この多自由度位置決め装置は、ベースプレートから最終出力であるエンドプレートまでが複数のリンクで並列に連結され、エンドプレートの表面にマイクロロボットハンド用のツールや治具が取り付けられている。各リンクは、回転型モータやリニアモータなどのアクチュエータによって動作し、エンドプレートの位置・姿勢を制御する。
【0003】
このように構成される多自由度位置決め装置は、(1)発生力が大きい、(2)剛性が高い、(3)高速動作が可能、(4)多自由度をコンパクトに実現できる、(5)制御が容易、(6)位置決め精度がよい、などの特徴を持っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−27732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の多自由度位置決め装置では、エンドプレートおよびエンドプレートに取り付けられたツールや治具の重量を常にアクチュエータによって支える必要がある。そのため、治具などの重量が大きくなる場合にはアクチュエータに対する負荷も増大し、駆動電流による発熱や、作業を行う際の駆動力の制限などの課題があった。
【0006】
一方、高負荷での動作が必要なアクチュエータに対して、リニアモータによる駆動力に、エアシリンダによる駆動力を付加するように構成されたものがある(例えば特許文献1参照)。
しかしながら、この特許文献1に開示されるアクチュエータを多自由度位置決め装置に適用する場合、エアシリンダをリンクごとに設ける必要があるため、機械構造や配管が複雑になってしまい、実用的ではないという課題があった。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、パラレルメカニズム機構を利用した多自由度位置決め装置において、簡易な構成で、治具などの重量を支えることができ、また、駆動電流による発熱を抑制し、作業を行う際に十分な駆動力を確保することができる多自由度位置決め装置および多自由度位置決め方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る多自由度位置決め装置は、ベースプレートとエンドプレートとの間に接続された複数のリンクと、各リンクに取り付けられ、リンクを動作させるアクチュエータと、ベースプレートとエンドプレートとの間に接続され、定常位置でのエンドプレートおよびエンドプレートに取り付けられた物体の重量を支える重力補償装置とを備えたものである。
【0009】
また、この発明に係る多自由度位置決め方法は、自機の先端位置を計測する位置計測ステップと、位置計測ステップにおいて計測した自機の先端位置に基づいて、重力補償装置が発生している推力と重量との釣り合いずれを補正する推力補正値を算出する推力補正演算ステップと、推力補正演算ステップにおいて算出した推力補正値に基づいて、アクチュエータの駆動力を算出する駆動力変換演算ステップと、駆動力変換演算ステップにおいて算出したアクチュエータの駆動力を電流指示値に変換する駆動電流演算ステップと、駆動電流演算ステップにおいて変換した電流指示値に応じた駆動電流を生成する駆動電流生成ステップと、駆動電流生成ステップにおいて生成した駆動電流に応じて駆動し、リンクを動作させる駆動ステップとを有するものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、ベースプレートとエンドプレートとの間に接続された複数のリンクと、各リンクに取り付けられ、リンクを動作させるアクチュエータと、ベースプレートとエンドプレートとの間に接続され、定常位置でのエンドプレートおよびエンドプレートに取り付けられた物体の重量を支える重力補償装置とを備えたことで、簡易な構成で、定常位置でのエンドプレートおよびエンドプレートに取り付けられた物体の重量を支えることができる。また、エンドプレートが定常位置の場合には、重量をアクチュエータで支える必要はないため、駆動電流による発熱を抑制することができ、作業を行う際に十分な駆動力を確保することができる。
【0011】
また、自機の先端位置を計測する位置計測ステップと、位置計測ステップにおいて計測した自機の先端位置に基づいて、重力補償装置が発生している推力と重量との釣り合いずれを補正する推力補正値を算出する推力補正演算ステップと、推力補正演算ステップにおいて算出した推力補正値に基づいて、アクチュエータの駆動力を算出する駆動力変換演算ステップと、駆動力変換演算ステップにおいて算出したアクチュエータの駆動力を電流指示値に変換する駆動電流演算ステップと、駆動電流演算ステップにおいて変換した電流指示値に応じた駆動電流を生成する駆動電流生成ステップと、駆動電流生成ステップにおいて生成した駆動電流に応じて駆動し、リンクを動作させる駆動ステップとを有することで、エンドプレートが定常位置から移動して重力補正装置が発生している推力とエンドプレートおよびエンドプレートに取り付けられた物体の重量とに差が生じた場合にも、各アクチュエータに供給する駆動電流を補正することで容易に修正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1に係る多自由度位置決め装置の構成を示す概略図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る多自由度位置決め装置の力学モデルを説明する図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る多自由度位置決め装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る多自由度位置決め装置の制御系の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る多自由度位置決め装置1の構成を示す概略図である。なお以下では、多自由度位置決め装置1に用いるパラレルメカニズム機構として、複数のリンクを直動移動させるStewart Platform型を用いた場合について示す。
多自由度位置決め装置1は、例えばロボットハンドに用いられるものであり、図1に示すように、ベースプレート2、複数のリンク3、エンドプレート4および重力補償装置5から構成されている。
【0014】
ベースプレート2は、多自由度位置決め装置1の土台となるものであり、水平に設置されている。
リンク3は、両端の自在継手3aを介してベースプレート2とエンドプレート4との間の所定位置に接続されたものである。また、各リンク3にはリニアモータ(アクチュエータ)6が取り付けられている。リニアモータ6は、後述する電流制御部15からの駆動電流に応じて駆動し、対応するリンク3を直動移動させる。これによって、エンドプレート4は所定の位置・姿勢に制御される。なお図1では、多自由度位置決め装置1に6個のリンク3を設けた場合について示しているが、リンク3の数は自由度に応じて適宜変更可能である。
エンドプレート4は、その表面に不図示のロボットハンド用のツールや治具が取り付けられるものである。
【0015】
重力補償装置5は、定常位置でのエンドプレート4およびエンドプレート4に取り付けられたツールや治具の重量(以下、治具などの重量と称す)を支持するものであり、エアシリンダやスプリング機構などから構成されている。この重力補償装置5は、両端の自在継手5aを介してベースプレート2中心とエンドプレート4中心との間に接続されている。なお、この重力補償装置5が発生する推力は、エンドプレート4が定常位置の場合における治具などの重量と釣り合うように予め設定されている。
【0016】
次に、上記のように構成された多自由度位置決め装置1の動作を制御する制御系について説明する。まず、多自由度位置決め装置1の動作を制御する際に用いる力学モデルについて説明する。
図2はこの発明の実施の形態1に係る多自由度位置決め装置1の力学モデルを説明する図である。
【0017】
図2に示すように、多自由度位置決め装置1の先端位置(エンドプレート4の中心位置)を示す座標r(装置位置)の右方向を正(+)とすると、多自由度位置決め装置1の運動方程式は、次式(1)のように表される。
fa+fd=Mar”+Dar’+Kar (1)
なお、r’,r”はそれぞれ多自由度位置決め装置1の速度(装置速度)、加速度(装置加速度)であり、Ma,Da,Kaはそれぞれ多自由度位置決め装置1の慣性行列(n×n)、粘性行列(n×n)、剛性行列(n×n)であり(nは多自由度位置決め装置1の自由度)、faは多自由度位置決め装置1が発生する駆動力であり、fdは外力(重力や接触力など)である。
ここで、慣性行列Ma、粘性行列Daおよび剛性行列Kaは、リンク3およびリニアモータ6の慣性、粘性および剛性を、多自由度位置決め装置1の先端位置の直交座標で表したものである。
【0018】
また、駆動力faは、次式(2)のように表される。
fa=−Mcr”−Dcr’−Kcr+fc (2)
なお、fcは作業のために必要な力であり、Mc,Dc,Kcはそれぞれ加速度、速度、位置の各フィードバックゲインであり、それぞれ任意に決められるパラメータである。
【0019】
上式(1)および(2)から、外力fdは次式(3)のように表される。
fd=Mvr”+Dvr’+Kvr−fc (3)
なお、Mv,Dv,Kvは、下記の式(4)〜(6)で表される力学モデルのインピーダンスである。
Mv=Ma+Mc (4)
Dv=Da+Dc (5)
Kv=Ka+Kc (6)
【0020】
したがって、パラメータMc,Dc,Kcをそれぞれ適当に設定することにより、外力fdに対する機械系の応答を決めるインピーダンス(Mv,Dv,Kv)を定めることができる。すなわち、機械系のインピーダンスを制御することができ、位置制御やコンプライアンス制御を行うことができる。
【0021】
なお、式(2)において、加速度フィードバック(−Mcr”)や速度フィードバック(−Dcr’)の項を省略して、駆動力faを次式(7)のように表してもよい。
fa=−Kcr+fc (7)
上式(7)の場合は、機械系が本来持っている慣性および粘性での応答となる。
【0022】
また、上式(1),(4)〜(6)で用いられる多自由度位置決め装置1の慣性行列Ma、粘性行列Daおよび剛性行列Kaは、実際上、真の値はわからないため、制御系で設定したコンプライアンスの設定値を推定値として用いる。
この場合、上式(1)から、外力の推定値<fd>は次式(8)のように表される。
<fd>=<Ma>r”+<Da>r’+<Ka>r−fa (8)
なお、<Ma>は慣性行列の推定値であり、<Da>は粘性行列の推定値であり、<Ka>は剛性行列の推定値である。
【0023】
一方、装置位置r、装置速度r’および装置加速度r”は、後述する位置センサ7により検出された各リニアモータ6の位置qに基づいて、下記の式(9)〜(11)のように表される。
r=T(q) (9)
r’=Jq’ (10)
x”=J’q’+Jq” (11)
なお、Tは位置変換式であり、q’,q”は、各リニアモータ6の速度、加速度であり、Jはヤコビ行列であり、J’はJの時間微分である。
【0024】
また、多自由度位置決め装置1の駆動力faとリニアモータ6毎の駆動力τとの関係は、次式(12)のように表される。
τ=Jfa (12)
なお、JはJの転置行列である。
【0025】
次に、多自由度位置決め装置1の制御系の構成について説明する。
図3はこの発明の実施の形態1に係る多自由度位置決め装置1の制御系の構成を示すブロック図である。
多自由度位置決め装置1の制御系は、図3に示すように、位置センサ7、座標変換演算部8、減算器9、インピーダンス制御演算部10、推力補正演算部11、加算器12、駆動力変換演算部13、駆動電流演算部14、電流制御部15および外力推定演算部16から構成される。
【0026】
位置センサ7は、各リニアモータ6に取り付けられ、リニアモータ6の先端位置(変位)を計測するものである。位置センサ7としては、例えば、接近センサ、ひずみケージやリニアエンコーダなどが用いられる。
座標変換演算部8は、位置センサ7により計測された各リニアモータ6の先端位置に基づいて、上式(9)〜(11)を用いて、装置位置を算出するものである。
なお、位置センサ7および座標変換演算部8は、本願発明の計測部に対応する。ここで、計測部は、各リニアモータ6の先端位置に基づいて装置位置を計算するように構成したが、エンドプレート4に位置センサを取り付けることが可能な場合には、装置位置を直接計測するようにしてもよい。
【0027】
減算器9は、上位コントローラ(ロボットのコントローラ)から入力された目標値から、座標変換演算部8により算出された装置位置を減算するものである。
インピーダンス制御演算部10は、減算器9により算出された差分値、およびパラメータ情報に基づいて、上式(2)を用いて、多自由度位置決め装置1が発生すべき駆動力を算出するものである。ここで、パラメータ情報とは、上式(2)による演算に必要な情報であり、作業のために必要な力fcと、フィードバックゲインを表すパラメータMc,Dc,Kcである。
【0028】
推力補正演算部11は、エンドプレート4が定常位置から移動した際に生じる、重力補償装置5が発生している推力と治具などの重量との釣り合いずれを補正する推力補正値(駆動力)を算出するものである。ここで、推力補正演算部11は、座標変換演算部8により算出された装置位置に基づいて、次式(13)を用いて、推力補正値を算出する。
推力補正値=重力補償装置推力のxyz成分−治具などの重量 (13)
なお、重力補償装置推力は、重力補償装置5が発生している推力であり、エアシリンダを用いた場合には、シリンダ径と供給空気圧から算出される。また、スプリング機構を用いた場合には、装置位置に基づくスプリングの変位とバネ定数から算出される。また、重力補償装置推力のxyz成分は、重力補償装置推力と装置位置から算出される。
【0029】
加算器12は、インピーダンス制御演算部10により算出された駆動力と、推力補正演算部11により算出された推力補正値とを加算するものである。
駆動力変換演算部13は、加算器12により加算された駆動力に基づいて、上式(12)を用いて、リニアモータ6毎の駆動力を算出するものである。インピーダンス制御演算部10および推力補正演算部11が算出する駆動力は、多自由度位置決め装置1が発生すべき駆動力、すなわち作業座標(装置位置の座標)における駆動力である。したがって、駆動力変換演算部13は、この作業座標の駆動力を、リニアモータ6毎の駆動力に変換する。
【0030】
駆動電流演算部14は、駆動力変換演算部13により算出されたリニアモータ6毎の駆動力を、リニアモータ6を駆動する電流の値を示す電流指示値に変換するものである。
電流制御部15は、駆動電流演算部14により変換されたリニアモータ6毎の電流指示値に応じた駆動電流を生成するものである。これにより、リニアモータ6は、電流制御部15から供給された駆動電流に応じて駆動し、リンク3を動作させる。
【0031】
外力推定演算部16は、座標変換演算部8により算出された装置位置、インピーダンス制御演算部10により算出された駆動力、制御系で設定された慣性行列の推定値<Ma>、粘性行列の推定値<Da>および剛性行列の推定値<Ka>に基づいて、上式(8)を用いて、外力推定値<fd>を算出するものである。
【0032】
次に、多自由度位置決め装置1の制御系の動作について説明する。
図4はこの発明の実施の形態1に係る多自由度位置決め装置1の制御系の動作を示すフローチャートである。
多自由度位置決め装置1の制御系の動作では、図3に示すように、まず、計測部は装置位置を計測する(ステップST41、位置計測ステップ)。このステップST41では、まず、各位置センサ7は、各リニアモータ6の先端位置を計測する。次に、座標変換演算部8は、各位置センサ7により計測された各リニアモータ6の先端位置に基づいて、上式(9)〜(11)を用いて、装置位置を算出する。この座標変換演算部8により算出された装置位置を示す装置位置信号は減算器9、推力補正演算部11および外力推定演算部16に供給される。
【0033】
次いで、減算器9は、上位コントローラ(ロボットのコントローラ)から入力された目標値から、座標変換演算部8により算出された装置位置を減算する(ステップST42)。この減算器9により算出された差分値を示す差分値信号はインピーダンス制御演算部10に供給される。
次いで、インピーダンス制御演算部10は、減算器9により算出された差分値、およびパラメータ情報に基づいて、上式(2)を用いて、多自由度位置決め装置1が発生すべき駆動力を算出する(ステップST43)。このインピーダンス制御演算部10により算出された駆動力を示す装置駆動力信号は加算器12および外力推定演算部16に供給される。
【0034】
一方、推力補正演算部11は、座標変換演算部8によって算出された装置位置に基づいて、上式(13)を用いて、重力補償装置5が発生している推力と治具などの重量との釣り合いずれを補正する推力補正値を算出する(ステップST44、推力補正演算ステップ)。ここで、エンドプレート4が定常位置の場合には、重力補償装置5が発生している推力と治具などの重量とは釣り合っているため、推力補正値は0となる。一方、エンドプレート4が定常位置から移動した場合には、推力と重量とが釣り合わなくなるため、このずれを補正するための推力補正値が算出される。
この推力補正演算部11により算出された推力補正値を示す推力補正信号は加算器12に供給される。
【0035】
次いで、加算器12は、インピーダンス制御演算部10により算出された駆動力と、推力補正演算部11により算出された推力補正値とを加算する(ステップST45)。この加算器12により加算された駆動力を示す加算駆動力信号は駆動力変換演算部13に供給される。
【0036】
次いで、駆動力変換演算部13は、加算器12により加算された駆動力に基づいて、上式(12)を用いて、リニアモータ6毎の駆動力を算出する(ステップST46、駆動力変換演算ステップ)。この駆動力変換演算部13により算出されたリニアモータ6毎の駆動力を示すアクチュエータ駆動力信号は駆動電流演算部14に供給される。
【0037】
次いで、駆動電流演算部14は、駆動力変換演算部13により算出されたリニアモータ6毎の駆動力を、リニアモータ6を駆動する電流の値を示す電流指示値に変換する(ステップST47、駆動電流演算ステップ)。この駆動電流演算部14により変換された電流指示値を示す電流指示値信号は対応するリニアモータ6に供給される。
なお、駆動力から電流指示値への変換は、予め定められた式に基づいて行ってもよく、或いは、予め駆動力と電流指示値とを対応付けた変換テーブルを作成しておき、この変換テーブルを用いるようにしてもよい。
【0038】
次いで、電流制御部15は、駆動電流演算部14により変換された電流指示値に応じた駆動電流を生成する(ステップST48、駆動電流生成ステップ)。この電流制御部15により生成された駆動電流は対応するリニアモータ6に供給される。
次いで、リニアモータ6は、電流制御部15により生成された駆動電流に応じて駆動し、リンク3を動作させる(ステップST49、駆動ステップ)。これにより、エンドプレート4を所定の位置・姿勢に制御させる。
【0039】
一方、外力推定演算部16は、座標変換演算部8により算出された装置位置、インピーダンス制御演算部10により算出された駆動力、制御系で設定された慣性行列の推定値<Ma>、粘性行列の推定値<Da>および剛性行列の推定値<Ka>に基づいて、上式(8)を用いて、外力推定値<fd>を算出する(ステップST50)。この外力推定演算部16により算出された外力推定値<fd>を示す外力推定値信号は上位コントローラに供給される。
上位コントローラは、外力推定演算部16により算出された外力推定値により作業状態を検出して作業結果を確認するとともに、ロボットの動作を決定する。
【0040】
以上のように、この実施の形態1では、ベースプレート2中心とエンドプレート4中心との間に重力補償装置5を接続し、重力補償装置5によって、定常位置における治具などの重量を支えるように構成したので、簡易な構成でこの重量を支えることができる。また、エンドプレート4が定常位置の場合には、リニアモータ6でこの重量を支える必要がなくなるため、駆動電流による発熱を抑制することができる。また、部品供給や組立などの作業を行う際の駆動力を十分に確保することができる。
【0041】
また、作業を行う際にエンドプレート4が定常位置から移動して、重力補償装置5が発生している推力と治具などの重量とに釣り合いずれが生じた場合にも、各リニアモータ6に供給する駆動電流を補正するように構成したので、容易にずれを修正することができる。
【0042】
なお、実施の形態1では、ベースプレート2は水平に設置されているものとして説明を行ったが、ベースプレート2が傾いている場合にも、傾きの角度を考慮して計算を行うことで、同様に適用することが可能である。
また、実施の形態1では、自在継手5aによる誤差については特に言及せずに説明を行ったが、この自在継手5aによる誤差を考慮して推力補正値の計算を行うことで、より正確な制御を行うことができる。
【0043】
また、実施の形態1では、パラレルメカニズム機構としてStewart Platform型を用いた場合について示したが、これに限るものではなく、アクチュエータとして回転型モータを用いたHexa型や、直動固定型などに対しても同様に適用可能である。
【0044】
1 多自由度位置決め装置
2 ベースプレート
3 リンク
3a,5a 自在継手
4 エンドプレート
5 重力補償装置
6 リニアモータ
7 位置センサ(計測部)
8 座標変換演算部(計測部)
9 減算器
10 インピーダンス制御演算部
11 推力補正演算部
12 加算器
13 駆動力変換演算部
14 駆動電流演算部
15 電流制御部
16 外力推定演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレートとエンドプレートとの間に接続された複数のリンクと、
前記各リンクに取り付けられ、前記リンクを動作させるアクチュエータと、
前記ベースプレートと前記エンドプレートとの間に接続され、定常位置での前記エンドプレートおよび前記エンドプレートに取り付けられた物体の重量を支える重力補償装置と
を備えた多自由度位置決め装置。
【請求項2】
自機の先端位置を計測する計測部と、
前記計測部により計測された自機の先端位置に基づいて、前記重力補償装置が発生している推力と前記重量との釣り合いずれを補正する推力補正値を算出する推力補正演算部と、
前記推力補正演算部により算出された推力補正値に基づいて、前記アクチュエータの駆動力を算出する駆動力変換演算部と、
前記駆動力変換演算部により算出されたアクチュエータの駆動力を電流指示値に変換する駆動電流演算部と、
前記駆動電流演算部により変換された電流指示値に応じた駆動電流を生成する電流制御部とを備え、
前記アクチュエータは、前記電流制御部により生成された駆動電流に応じて駆動し、前記リンクを動作させる
ことを特徴とする請求項1記載の多自由度位置決め装置。
【請求項3】
ベースプレートとエンドプレートとの間に接続された複数のリンクと、前記各リンクに取り付けられ、前記リンクを動作させるアクチュエータと、前記ベースプレートと前記エンドプレートとの間に接続され、定常位置での前記エンドプレートおよび前記エンドプレートに取り付けられた物体の重量を支える重力補償装置とを備えた多自由度位置決め装置の多自由度位置決め方法であって、
自機の先端位置を計測する位置計測ステップと、
前記位置計測ステップにおいて計測した自機の先端位置に基づいて、前記重力補償装置が発生している推力と前記重量との釣り合いずれを補正する推力補正値を算出する推力補正演算ステップと、
前記推力補正演算ステップにおいて算出した推力補正値に基づいて、前記アクチュエータの駆動力を算出する駆動力変換演算ステップと、
前記駆動力変換演算ステップにおいて算出したアクチュエータの駆動力を電流指示値に変換する駆動電流演算ステップと、
前記駆動電流演算ステップにおいて変換した電流指示値に応じた駆動電流を生成する駆動電流生成ステップと、
前記駆動電流生成ステップにおいて生成した駆動電流に応じて駆動し、前記リンクを動作させる駆動ステップと
を有することを特徴とする多自由度位置決め方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−61564(P2012−61564A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208017(P2010−208017)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】