説明

多連形切換弁

【課題】バルブ本体31を小型化することを目的にする。
【解決手段】 中央に設けた導入ポート38の両側に供給ポート36,37を形成するとともに、いずれか一方の供給ポート36あるいは37から上記導入ポート38に流入した圧力流体が、コンペンセータバルブ39を経由してブリッジ通路40に供給される構成にしている。そして、上記供給ポート36,37は、スプール32の軸心に対して、上記コンペンセータバルブ39の位置とは反対側に偏心させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数のバルブ本体を連設するとともに、バルブ本体にコンペンセータバルブを組み込んだ多連形切換弁に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の多連形切換弁として特許文献1に記載されたものが従来から知られている。そして、従来の多連形切換弁を示したのが図3である。図3に示した多連形切換弁は、バルブ本体1にスプール2を摺動自在に組み込んでいる。そして、上記バルブ本体1には、一対のアクチュエータポート3,4を形成するとともに、このアクチュエータポート3,4の外側にタンク通路5を設けている。さらに、このバルブ本体1には、ポンプに連通した一対の供給ポート6,7を形成するとともに、これら供給ポート6,7間に導入ポート8を形成している。このようにした供給ポート6,7は、図示していない他の多連形切換弁の供給ポートと、紙面に対して垂直方向に互いに連通するものである。
【0003】
そして、上記導入ポート8は、コンペンセータバルブ9を介してブリッジ通路10に連通可能にしているが、上記コンペンセータバルブ9は、上記導入ポート8とは反対側に、圧力室11を設けるとともに、この圧力室11にはスプリング12を設けている。したがって、このコンペンセータバルブ9は、導入ポート8に圧力が作用しない限り上記スプリング12の作用で図示のノーマル位置を保つ。なお、上記圧力室11には、この多連形切換弁及び図示していない他の多連形切換弁に接続したアクチュエータのうち、当該バルブ本体に設けた図示していないシャトル弁やチェック弁等の最高負荷圧選択手段で選択された最高負荷圧が導かれるようにしている。
【0004】
上記のようにしたコンペンセータバルブ9は、コンペンセータバルブ9に対する導入ポート8側の圧力作用が、圧力室11の最高負荷圧とばね力とを合計した作用力に打ち勝ったとき、ブリッジ通路10に対して連通ポート13を開く。したがって、導入ポート8側の圧力は、上記最高負荷圧よりもスプリング12のばね力に相当する分だけ高くなるように制御されることになり、いわゆるロードセンシング制御がされる。
【0005】
一方、上記スプール2には、その中央に第1環状溝14を形成するとともに、この第1環状溝14の両側に第2環状溝15,16を形成している。さらに、第2環状溝15,16の外側には、第3環状溝17,18を形成している。そして、スプール2がセンタリングスプリングsの作用で、図示の中立位置にあるときには、第1環状溝14が導入ポート8に対応して、供給ポート6,7と導入ポート8との連通は遮断される。なお、図中符号、19,20は、第2環状溝15,16の側面に形成したノッチ、21,22は、第1環状溝14の両側面に形成したノッチである。
【0006】
今、スプール2を、上記中立位置から図面右方向に移動すると、第2環状溝15のノッチ19を介して、供給ポート6と導入ポート8とが連通するとともに、第1環状溝14のノッチ22を介して供給ポート7と導入ポート8とが連通する。したがって、ポンプPの吐出流体が、供給ポート6,7から、ノッチ19,22を経由して導入ポート8に導かれるとともに、この導入ポート8に導かれた圧力によってコンペンセータバルブ9を開弁する。
【0007】
上記のようにコンペンセータバルブ9が開弁すれば、このコンペンセータバルブ9の連通ポート13を経由して圧力流体がブリッジ通路10に供給されるとともに、このブリッジ通路10から第3環状溝17を経由してアクチュエータポート3から図示していないアクチュエータに供給される。また、上記アクチュエータからの戻り流体は、アクチュエータポート4に流れるとともに、このアクチュエータポート4から第3環状溝18を経由してタンク通路5に導かれる。
【特許文献1】特開2004−293614号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のようにした従来の多連形切換弁では、コンペンセータバルブ9を組み込むための穴と、供給ポート6,7との間の肉厚を、強度維持の立場からある程度厚くしなければならない。そのために、バルブ本体1は、スプール2と直交する方向の幅がどうしても大きくなる。このようにバルブ本体1の幅が大きくなれば、その分、装置全体も大型化してしまう。特に、多連形切換弁においては、個々の切換弁が大型化すれば、多連弁としての全体の大きさがさらに大きくなる傾向がある。このように多連弁としての大きさが大きくなればなるほど、取り付けスペースも大きくなる等、いろいろな問題が発生する。
【0009】
また、上記コンペンセータバルブを組み込んだバルブ本体1を、コンペンセータバルブを組み込んでいないバルブ本体と組み付ける場合があるが、コンペンセータバルブを組み込んでいないバルブ本体は、相対的に小さいのが通常である。となると、上記コンペンセータバルブを組み込んだバルブ本体1を、コンペンセータバルブを組み込んでいないバルブ本体と組み付ける場合には、小さい方のバルブ本体に合わせるということになる。
上記のようなニーズに応えるために、例えば、バルブ本体の幅、すなわちスプールに直交する方向の幅を小さくしようとすると、従来の切換弁では、供給ポートやブリッジ通路などが干渉してしまうという問題があった。
さらに、上記したようにシャトル弁やチェック弁等の最高負荷圧選択手段を別途設けなければならないので、この最高負荷圧選択手段を設けるためのスペースをバルブ本体に確保しなければならない。したがって、そのスペースを確保する分だけ、バルブ本体が大型化するという問題もあった。
【0010】
この発明の目的は、通路やポート等が干渉せず、バルブ本体を小型化できる多連形切換弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、バルブ本体には、このバルブ本体に摺動自在に組み込んだスプールと、ポンプに接続した一対の供給ポートと、これら一対の供給ポート間に形成され、上記スプールの移動位置に応じていずれかの供給ポートに連通する導入ポートと、アクチュエータに連通するアクチュエータポートと、上記導入ポートに導かれた流体が供給されるとともに、スプールの移動位置に応じて上記アクチュエータポートに連通するブリッジ通路と、導入ポート及びブリッジ通路との流路過程に組み込まれたコンペンセータバルブとを備え、スプールがノーマル位置にあるとき、上記両供給ポートと導入ポートとの連通が遮断される一方、スプールがいずれかに移動したとき、スプールに形成した第1環状溝を介していずれかの供給ポートと導入ポートとが連通し、供給ポートから供給された圧力流体を、上記コンペンセータバルブ、ブリッジ通路およびスプールに形成した第2環状溝を介してアクチュエータポートに導く構成にした多連形切換弁を前提にする。そして、上記一対の供給ポートを、スプールの軸心に対して、上記コンペンセータバルブの位置とは反対側に偏心させた点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、一対の供給ポートを、スプールの軸心に対して、上記コンペンセータバルブの位置とは反対側に偏心させたので、スプールに直交する方向におけるバルブ本体の幅を小さくしても、上記供給ポートが、コンペンセータバルブ側に位置するブリッジ通路等に干渉することがない。言い換えると、供給ポートが、コンペンセータバルブ側に位置するブリッジ通路等に干渉しないので、バルブ本体を小型化できる。
さらに、上記のように供給ポートをスプールに対して偏心させることによって、スプールの片側において供給ポートの開口面積を大きく確保することができる。このように供給ポートの開口面積を大きく取れるので、この供給ポートが他の多連形切換弁に通じる通路として機能するとき、その圧力損失を最小限に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1,2に示した実施形態は、バルブ本体31にスプール32を摺動自在に組み込んでいる。そして、上記バルブ本体31には、一対のアクチュエータポート33,34を形成するとともに、このアクチュエータポート33,34の外側にタンク通路35を設けている。さらに、このバルブ本体31には、ポンプに連通した一対の供給ポート36,37を形成するとともに、これら供給ポート36,37間に導入ポート38を形成している。このようにした供給ポート36,37は、図示していないポンプに連通するとともに、他の多連形切換弁の供給ポートと、紙面に対して垂直方向に互いに連通するものである。
【0014】
そして、上記導入ポート38は、コンペンセータバルブ39を介してブリッジ通路40に連通可能にしているが、上記供給ポート36,37は、スプール32の軸線に対して、上記コンペンセータバルブ39とは反対側に偏心させている。
【0015】
また、上記コンペンセータバルブ39は、次のように構成している。すなわち、コンペンセータバルブ39の弁本体41を円筒形状にするとともに、この円筒形にした弁本体41内に仕切り壁42を形成し、この仕切り壁42を境にして、導入ポート38側に開口する第1円筒部43と、圧力室44側に開口する第2円筒部45とに区画している。そして、上記第1円筒部43には、ポートからなる連通部46を形成し、弁本体41が、導入ポート38側の圧力作用で移動したとき、この連通部46がブリッジ通路40に開口する関係にしている。
【0016】
上記第2円筒部45は、図2に示すように内周を断面円形にし、この円形にした第2円筒部45内に、チェックポペット47を摺動自在に組み込んでいる。そして、このチェックポペット47のポペット本体48は多角柱状にするとともに、この多角柱状にしたポペット本体48を、内周を円形にした第2円筒部45内に組み込むことによって、ポペット本体48と第2円筒部45の内周との間にすき間49が形成される。このようにして形成されたすき間49が上記圧力室44に通じる通路となる。なお、上記圧力室44は、他の多連形切換弁の圧力室と連通するものである。
【0017】
また、上記ポペット本体48の両端には、円錐形にしたポペット部50,51を形成しているが、その一方のポペット部50は、上記仕切り壁42に形成したシート部52を開閉する構成にしている。そして、このシート部52が開かれると、上記ブリッジ通路40が、すき間49を介して圧力室44に連通し、シート部52が閉じられると、ブリッジ通路40と圧力室44との連通が遮断される。
なお、上記のようにポペット本体48の両端にポペット部50,51を設けたのは、当該チェックポペット47の組み付けの方向性を無くすためである。また、図中符号53,53はロードチェック弁で、アクチュエータポート33,34側の圧力が逆流するのを防止するためのものである。
【0018】
上記のようにしたバルブ本体31には、前記スプール32を摺動自在に組み込んでいるが、このスプール32は、その両端をパイロット室54,54に臨ませるとともに、このパイロット室54,54に設けたセンタリングスプリング55,55の作用で、通常は、スプール32が図示の中立位置を保つようにしている。
スプール32が図示の中立位置にあるとき、このスプール32のほぼ中央に設けた第1環状溝56が導入ポート38に対応し、導入ポート38と供給ポート36,37との連通が遮断される関係にしている。
【0019】
また、上記第1環状溝56の両側にはノッチ57,58を形成しているが、このノッチ57,58は、供給ポート36あるいは37から導入ポート38へ流体が流出する方向に開放されている。このようにノッチ57,58は、流体が流入するノッチとして機能しているので、流体が流出する側に形成されているノッチに比べて、その流体力の発生を極力抑えることができる。
【0020】
さらに、上記スプール32の両側には第2環状溝59,60を形成しているが、スプール32が図面右方向に移動すると、一方の第2環状溝59を介してブリッジ通路40とアクチュエータポート33とが連通し、他方の第2環状溝60を介してアクチュエータポート34とタンク通路35とが連通する。また、スプール32が図面左方向に移動すると、他方の第2環状溝60を介してブリッジ通路40とアクチュエータポート34とが連通し、一方の第2環状溝59を介してアクチュエータポート33とタンク通路35とが連通する。
【0021】
今、一方のパイロット室54にパイロット圧を作用させてスプール32を図面右方向に移動すると、供給ポート37が第1環状溝56のノッチ58を介して導入ポート38に連通する。したがって、供給ポート37に流入した圧力流体は、導入ポート38に導かれるとともに、その導入ポート38内の圧力の作用で、コンペンセータバルブ39が圧力室44の圧力作用に抗して移動する。このようにコンペンセータバルブ39が移動すると、その連通部46がブリッジ通路40に対して開口するので、導入ポート38に導かれた圧力流体は、ロードチェック弁53を経由するとともに、一方の第2環状溝59を介してアクチュエータポート33から流出する。そして、他方のアクチュエータポート34から流入したアクチュエータの戻り流体は、他方の第2環状溝60を介してタンク通路35に排出される。
【0022】
上記のようにブリッジ通路40がアクチュエータに連通すると、そのときの当該アクチュエータの負荷圧がチェックポペット47のポペット部50に作用する。このとき、圧力室44に導かれている圧力よりも、上記アクチュエータポート33側の負荷圧の方が高ければ、チェックポペット47が上昇してシート部52を開く。このようにしてシート部52が開けば、アクチュエータポート33側の負荷圧が圧力室44に導かれるとともに、この圧力室44から図示していないレギュレータに導かれる。このレギュレータは、図示していないポンプの吐出圧が、上記圧力室44の負荷圧よりも設定圧以上高い圧力になるように制御する。
【0023】
ただし、上記圧力室44は、他の多連形切換弁の圧力室と連通しているので、圧力室44内の圧力は、多連形切換弁に接続した各アクチュエータのうちの最高負荷圧が導かれることになる。したがって、上記レギュレータに導かれる圧力も、各アクチュエータのうちの最高負荷圧が導かれるとともに、当該レギュレータは、ポンプの吐出圧が、上記最高負荷圧よりも設定圧だけ高い圧力に保たれるように制御されることになる。言い換えると、上記圧力室に導かれる最高負荷圧によって、いわゆるロードセンシング制御がされることになる。
【0024】
上記のようにした実施形態では、上記供給ポート36,37を、スプール32の軸線に対して、上記コンペンセータバルブ39とは反対側に偏心させているので、例えば、図示のように、ブリッジ通路40を、ロードチェック弁53を基点にして上流側通路40aと下流側通路40bとに分けて、ロードチェック弁53とともにその下流側通路40bをスプール32に接近させることができる。言い換えると、ロードチェック弁53と下流側通路40bとをスプール32に接近させたとしても、それらロードチェック弁53及び下流側通路40bが、供給ポート36,37と干渉することがなくなる。
【0025】
したがって、ロードチェック弁53と下流側通路40bとをスプール32に接近させた分だけ、スプール32に直交する方向のバルブ本体31の幅を小さくできる。また、コンペンセータバルブ39には、最高負荷圧選択手段としてのチェックポペット47を組み込んだので、最高負荷圧選択手段を別の箇所に組み込んだ従来のものと比べて、バルブ本体31の大きさを小さくできる。
【0026】
さらに、この実施形態のコンペンセータバルブ39に組み込んだチェックポペット47は、そのポペット本体48を多角柱状にし、第2円筒部45の内周と相まって、通路となるすき間49が形成されるようにしたので、例えば、ブリッジ通路40と圧力室44とを連通させる特別な通路が必要なくなる。このように特別な通路が必要ないので、その分、バルブ本体31の小型化に役立つことになる。
また、上記のように供給ポート36,37をスプール32に対して偏心させることによって、スプール32の片側における供給ポート36,37の開口面積を大きく確保することができる。このように供給ポート36,37の開口面積を大きく取れるので、この供給ポート36,37が、他の多連形切換弁に通じる紙面に対して垂直方向の通路として機能するとき、その圧力損失を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この実施形態の断面図である。
【図2】コンペンセータバルブの断面図である。
【図3】従来の多連形切換弁の断面図である。
【符号の説明】
【0028】
31 バルブ本体
32 スプール
33,34 アクチュエータポート
36,37 供給ポート
38 導入ポート
39 コンペンセータバルブ
40 ブリッジ通路
41 コンペンセータバルブの弁本体
42 仕切り壁
43 第1円筒部
44 圧力室
45 第2円筒部
46 連通部
47 チェックポペット
48 ポペット本体
49 すき間
50,51 ポペット部
52 シート部
56 第1環状溝
59,60 第2環状溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブ本体には、このバルブ本体に摺動自在に組み込んだスプールと、ポンプに接続した一対の供給ポートと、これら一対の供給ポート間に形成され、上記スプールの移動位置に応じていずれかの供給ポートに連通する導入ポートと、アクチュエータに連通するアクチュエータポートと、上記導入ポートに導かれた流体が供給されるとともに、スプールの移動位置に応じて上記アクチュエータポートに連通するブリッジ通路と、導入ポート及びブリッジ通路との流路過程に組み込まれたコンペンセータバルブとを備え、スプールがノーマル位置にあるとき、上記両供給ポートと導入ポートとの連通が遮断される一方、スプールがいずれかに移動したとき、スプールに形成した第1環状溝を介していずれかの供給ポートと導入ポートとが連通し、供給ポートから供給された圧力流体を、上記コンペンセータバルブ、ブリッジ通路およびスプールに形成した第2環状溝を介してアクチュエータポートに導く構成にした多連形切換弁において、上記一対の供給ポートを、スプールの軸心に対して、上記コンペンセータバルブの位置とは反対側に偏心させた多連形切換弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−8386(P2008−8386A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−178696(P2006−178696)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】