説明

太陽電池およびその製造方法

【課題】 本発明は、低コストで、低抵抗率かつ低接触抵抗率である電極を低温で形成できる太陽電池およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 半導体基板11の少なくとも一方の主面の表面から内部にかけての領域の少なくとも一部に、p型不純物拡散層14およびn型不純物拡散層12のうち少なくとも一つを形成する工程と、導電性ペースト30をp型不純物拡散層14およびn型不純物拡散層12のそれぞれに接触するように塗布し、600℃以下の温度で焼成して電極40を形成する工程とを含み、導電性ペースト30に含まれる導電性粉末の含有率が、80質量%以上であることを特徴とする太陽電池の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽電池およびその製造方法に関し、特に導電性ペーストを600℃以下で焼成することにより電極を形成する太陽電池の製造方法およびその製造方法により製造された太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の太陽電池の製造方法においては、電極形成は、銀粉末などの導電性粉末を含有する導電性ペーストを、600℃を超える温度で焼成することにより行なわれていた。かかる温度で電極形成を行なうことにより、電極の抵抗を低減し、シリコンとの接触抵抗を低減することができる。
【0003】
すなわち、導電性ペーストを焼成することにより電極を形成する際の焼成温度の上昇とともに電極の抵抗率が低下し、焼成温度が600℃を超えると電極の抵抗率は数十μΩ・cmレベルにまで低下し、電極の抵抗が低減することから、高い変換効率の太陽電池を得ることができる。これは、焼成温度の上昇とともに、ペースト中の導電性粉末の焼結が進むためである。
【0004】
また、導電性ペーストを600℃を超える温度で焼成することにより、シリコンの表面において、導電性ペースト中の導電性粉末とシリコンとが反応して、電極とシリコンとの接触抵抗率が10〜20mΩ・cm2程度まで低減し、高い変換効率の太陽電池を得ることができる。
【0005】
上記のように、従来の太陽電池の電極形成においては、導電性ペーストの高温焼成は不可欠であった。しかしながら、導電性ペーストの高温焼成により、太陽電池のライフタイムが短くなり、結果として、太陽電池の変換効率を低下させるという問題点があった。
【0006】
一方、上記高温焼成を避けるために蒸着を用いて電極を形成する方法もあるが、蒸着は真空プロセスであるためコストが高くなってしまうという問題点があった。このため、低抵抗率かつ低接触抵抗率である電極を低温で形成できる太陽電池の製造方法の開発が望まれていた。
【0007】
かかる太陽電池の製造方法として、導電性パターンの表面側の組成を導電性ペーストの平均組成よりも金属リッチにすることが提案されている(たとえば、特許文献1を参照)。しかし、かかる製造方法は、電極ペーストを塗布する前に、予め導電性パターンを印刷しておく工程が必要であり、製造工程が増え、製造コストが増大するという問題点があった。
【特許文献1】特開平08−181344号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記、問題点に鑑みて、本発明は、低コストで、低抵抗率かつ低接触抵抗率である電極を低温で形成できる太陽電池およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、半導体基板内にp型不純物拡散層およびn型不純物拡散層が形成され、p型不純物拡散層およびn型不純物拡散層のそれぞれに接触する電極を有する太陽電池の製造方法であって、半導体基板の少なくとも一方の主面の表面から内部にかけての領域の少なくとも一部に、p型不純物拡散層およびn型不純物拡散層のうち少なくとも一つの不純物拡散層を形成する工程と、導電性粉末、ガラスフリットおよびバインダーを含む導電性ペーストをp型不純物拡散層およびn型不純物拡散層のそれぞれに接触するように塗布し、600℃以下の温度で焼成することにより電極を形成する工程とを含み、導電性ペーストに含まれる導電性粉末の含有率が、80質量%以上であることを特徴とする太陽電池の製造方法である。
【0010】
また、本発明は、半導体基板内にp型不純物拡散層およびn型不純物拡散層が形成され、p型不純物拡散層およびn型不純物拡散層のそれぞれに接触する電極を有する太陽電池の製造方法であって、半導体基板の少なくとも一方の主面の表面から内部にかけての領域の少なくとも一部に、p型不純物拡散層およびn型不純物拡散層のうち少なくとも一つの不純物拡散層を形成する工程と、導電性粉末、ガラスフリットおよびバインダーを含む導電性ペーストをp型不純物拡散層およびn型不純物拡散層のそれぞれに接触するように塗布し、600℃以下の温度で焼成することにより電極を形成する工程とを含み、導電性ペーストに含まれる導電性粉末の平均粒径が、1μm以下であることを特徴とする太陽電池の製造方法である。
【0011】
また、本発明は、半導体基板内にp型不純物拡散層およびn型不純物拡散層が形成され、p型不純物拡散層およびn型不純物拡散層のそれぞれに接触する電極を有する太陽電池の製造方法であって、半導体基板の少なくとも一方の主面の表面から内部にかけての領域の少なくとも一部に、p型不純物拡散層およびn型不純物拡散層のうち少なくとも一つの不純物拡散層を形成する工程と、導電性粉末、ガラスフリットおよびバインダーを含む導電性ペーストをp型不純物拡散層およびn型不純物拡散層のそれぞれに接触するように塗布し、600℃以下の温度で焼成することにより電極を形成する工程とを含み、導電性ペーストに含まれるガラスフリットの軟化点が、400℃以下であることを特徴とする太陽電池の製造方法である。
【0012】
上記太陽電池の製造方法において、半導体基板の少なくとも一方の主面の表面から内部にかけての領域の少なくとも一部に、p型不純物拡散層およびn型不純物拡散層のうち少なくとも一つの不純物拡散層を形成する工程を、半導体基板の一方の主面の表面から内部にかけての領域の少なくとも一部に、p型不純物拡散層およびn型不純物拡散層を形成する工程とすることができる。
【0013】
また、上記太陽電池の製造方法において、導電性ペーストを600℃以下の温度で焼成することにより電極を形成する工程を、導電性ペーストを500℃以下の温度で焼成することにより電極を形成する工程とすることができる。
【0014】
本発明は、上記太陽電池の製造方法によって製造された太陽電池である。上記太陽電池においては、電極の抵抗率を12μΩ・m以下とすること、および/または電極と半導体基板との接触抵抗率を15mΩ・cm2以下とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
上記のように、本発明によれば、低コストで、低抵抗率かつ低接触抵抗率である電極を低温で形成できる太陽電池およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明にかかる太陽電池の製造方法は、図1および図2を参照して、半導体基板11内にp型不純物拡散層14およびn型不純物拡散層12が形成され、p型不純物拡散層14およびn型不純物拡散層12のそれぞれに接触する電極40を有する太陽電池1,2の製造方法であって、半導体基板11の少なくとも一方の主面の表面から内部にかけての領域の少なくとも一部に、p型不純物拡散層14およびn型不純物拡散層12のうち少なくとも一つの不純物拡散層を形成する工程と、導電性粉末、ガラスフリットおよびバインダーを含む導電性ペースト30をp型不純物拡散層14およびn型不純物拡散層12のそれぞれに接触するように塗布し、600℃以下の温度で焼成することにより電極40を形成する工程とを含み、導電性ペースト30に含まれる導電性粉末の含有率が、80質量%以上である。導電性粉末の含有量が多くなるほど、焼結が促進され、緻密な膜となり、電極の導電性が向上する。導電性粉末の含有量が80質量%以上の導電性ペーストを用いることにより、600℃以下の温度においても、電極の抵抗率が小さく、かつ電極と半導体基板との接触抵抗率の小さい太陽電池を製造することができる。また、上記観点から、導電性ペーストに含まれる導電性粉末の含有量は83質量%が好ましく、85質量%がより好ましい。
【0017】
また、本発明にかかる太陽電池の製造方法は、図1および図2を参照して、半導体基板11内にp型不純物拡散層14およびn型不純物拡散層12が形成され、p型不純物拡散層14およびn型不純物拡散層12のそれぞれに接触する電極40を有する太陽電池1,2の製造方法であって、半導体基板11の少なくとも一方の主面の表面から内部にかけての領域の少なくとも一部に、p型不純物拡散層14およびn型不純物拡散層12のうち少なくとも一つの不純物拡散層を形成する工程と、導電性粉末、ガラスフリットおよびバインダーを含む導電性ペースト30をp型不純物拡散層14およびn型不純物拡散層12のそれぞれに接触するように塗布し、600℃以下の温度で焼成することにより電極を形成する工程とを含み、導電性ペーストに含まれる導電性粉末の平均粒径が、1μm以下である。導電性粉末の平均粒径が小さくなるほど、焼結が促進され、電極の導電性が向上する。導電性粉末の平均粒径が1μm以下の導電性ペーストを用いることにより、600℃以下の温度においても、電極の抵抗率が小さく、かつ電極と半導体基板との接触抵抗率の小さい太陽電池を製造することができる。また、上記観点から、導電性ペーストに含まれる導電性粉末の平均粒径は0.5μm以下が好ましく、0.2μm以下がより好ましい。
【0018】
また、本発明にかかる太陽電池の製造方法は、図1および図2を参照して、半導体基板11内にp型不純物拡散層14およびn型不純物拡散層12が形成され、p型不純物拡散層14およびn型不純物拡散層12のそれぞれに接触する電極40を有する太陽電池1,2の製造方法であって、半導体基板11の少なくとも一方の主面の表面から内部にかけての領域の少なくとも一部に、p型不純物拡散層14およびn型不純物拡散層12のうち少なくとも一つの不純物拡散層を形成する工程と、導電性粉末、ガラスフリットおよびバインダーを含む導電性ペーストをp型不純物拡散層14およびn型不純物拡散層12のそれぞれに接触するように塗布し、600℃以下の温度で焼成することにより電極40を形成する工程とを含み、導電性ペースト30に含まれるガラスフリットの軟化点が、400℃以下である。ガラスフリットの軟化点が低下するほど、低温焼成においても焼結が促進され、電極の導電性が向上する。ガラスフリットの軟化点が400℃以下の導電性ペーストを用いることにより、600℃以下の温度においても、電極の抵抗率が小さく、かつ電極と半導体基板との接触抵抗率の小さい太陽電池を製造することができる。また、上記観点から、導電性ペーストに含まれるガラスフリットの軟化点は、380℃以下が好ましく、350℃以下がより好ましい。
【0019】
ここで、本発明にかかる太陽電池の電極の形成に用いられる導電性ペーストは、導電性粉末、ガラスフリットおよびバインダーが含まれる。導電性粉末は、導電性を有する粉末であれば特に制限はないが、金属粉末、特に、銀粉末、アルミニウム粉末などが好ましく用いられる。ガラスフリットは、低融点ガラスフリットであれば特に制限はないが、PbO−B23系ガラスフリット、PbO−B23−SiO2系ガラスフリットなど、PbO、B2O3、SiO2、ZnO、Al2O3、MgOなどの化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つ化合物を含有するガラスフリットが好ましく用いられる。バインダーは、上記導電性粉末およびガラスフリットを相互に連結させてペースト状態とする接着剤であれば特に制限なく、セルロース、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などの有機バインダーが好ましく用いられる。また、これらのバインダーには、作業性の観点からグリコール、エーテル、カルビトールなどの各種溶媒を添加することもできる。
【0020】
また、半導体基板11の少なくとも一方の主面の表面から内部にかけての領域の少なくとも一部に、p型不純物拡散層14およびn型不純物拡散層12のうち少なくとも一つの不純物拡散層を形成するとは、図1の図1(d)に示すように、半導体基板11の2つの主面のうち、一方の主面の表面から内部にかけての領域の少なくとも一部にp型不純物拡散層14を、他方の主面の表面から内部にかけての領域の少なくとも一部にn型不純物拡散層12を形成する場合と、図2の図2(d)に示すように、半導体基板11の2つの主面のうち、一方の主面の表面から内部にかけての領域の少なくとも一部にp型不純物拡散層14およびn型不純物拡散層12を形成する場合とを含む。
【0021】
本発明にかかる太陽電池の製造方法において、図2(d)に示すように、半導体基板11の2つの主面のうち、一方の主面、特に受光面の反対側の面(以下、裏面という)の表面から内部にかけての領域の少なくとも一部にp型不純物拡散層14およびn型不純物拡散層12を形成することが好ましい。裏面側のみに電極を形成することにより、受光面側に電極を形成する必要がなく、受光面における受光を大きし、太陽電池の変換効率を高めることができる。
【0022】
また、本発明にかかる太陽電池の製造方法において、導電性ペースト30を焼成する温度は、600℃以下である。導電性ペーストの焼成温度が600℃を超えると、太陽電池のライフタイムが短くなる。かかる観点から、導電性ペースト30の焼成温度は、500℃以下が好ましく、450℃以下がより好ましく、400℃以下がさらに好ましい。
【0023】
上記の本発明にかかる太陽電池の製造方法を用いることにより、導電性ペーストの焼成温度が600℃以下であっても、電極の抵抗率が12μΩ・m以下、および/または電極と半導体基板との接触抵抗率が15mΩ・cm2以下となり、変換効率の高い太陽電池が得られる。
【0024】
(実施形態1)
ここで、本発明にかかる太陽電池の製造方法についてさらに具体的に説明する。本発明かかる太陽電池の製造方法の好ましい一の実施形態として、図1を参照して、半導体基板11の2つの主面のうち、受光面11aの表面から内部にかけての領域の少なくとも一部にn型不純物拡散層12を形成し、裏面11bの表面から内部にかけての領域の少なくとも一部にp型不純物拡散層14を形成する実施形態を説明する。
【0025】
まず、図1(a)に示すように、半導体基板11としてシリコン基板を準備する。基板として、インゴットからスライスしたシリコン基板を用いる場合は、インゴットからスライスする際に表面に生じたダメージ層を、酸性またはアルカリ性の溶液によりエッチングしたものを用いるのが好ましい。ここで、半導体基板11とするシリコン基板に特に制限はないが、たとえば、125mm×125mmで厚さが100μm〜500μm、電気抵抗率が0.5Ω・cm〜50Ω・cmのシリコン基板を用いることができる。なお、シリコン基板の受光面11aにテクスチャ表面を形成する場合は、受光面の面指数が(100)であることが好ましい。
【0026】
次に、図1(b)に示すように、半導体基板11であるシリコン基板を、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムとイソプロピルアルコールを含有する水溶液(液温が75℃〜85℃程度のもの)に浸すことにより、シリコン結晶方位に沿った異方性エッチングが進行し、受光面11aとして、(111)面による微細なピラミッド形状のテクスチャ表面を形成する。
【0027】
次に、図1(c)に示すように、半導体基板11であるシリコン基板の受光面11aにリン(P)などのn型不純物を含むn型不純物ペースト22を塗布し、裏面11bにホウ素(B)などのp型不純物を含むp型不純物ペースト24を塗布する。次いで、上記n型およびp型不純物ペーストを100℃〜200℃で乾燥させる。次いで、n型不純物ペースト22が塗布された受光面11a全体およびp型不純物ペースト24が塗布された裏面11b全体を拡散防止膜13で被覆する。ここで、拡散防止膜13は、n型不純物およびp型不純物を半導体基板11であるシリコン基板中に拡散する際にn型およびp型不純物ペーストから外部へ不純物が拡散するのを防止する目的で覆うものであり、常圧CVD法で形成される酸化シリコン膜、酸化シリコンを含む塗布膜などが用いられる。
【0028】
次に、図1(d)に示すように、上記半導体基板11を900℃〜1000℃の石英炉内で30分間〜60分間加熱することにより、n型不純物ペースト22中のリンが半導体基板11の受光面11aから内部の一部に拡散してn型不純物拡散層12を形成し、p型不純物ペースト24中のホウ素が半導体基板11の裏面11bから内部の一部に拡散してp型不純物拡散層14を形成する。
【0029】
次に、図1(e)に示すように、上記半導体基板11をフッ酸などに浸漬することにより、上記拡散防止膜13、n型不純物ペースト12およびp型不純物ペースト14を除去する。
【0030】
次に、図1(f)に示すように、上記半導体基板11の受光面11aに表面再結合を抑制するための絶縁膜15を形成する。絶縁膜としては、熱酸化や常圧CVD法によるシリコン酸化膜またはプラズマCVD法によるシリコン窒化膜などが用いられる。受光面11aに絶縁膜15としてシリコン窒化膜を形成すれば、その屈折率は2.1程度であり受光面11aでの反射を抑制する反射防止膜も兼ねることができる。次いで、受光面11aのn型不純物拡散層12および裏面11bのp型不純物拡散層14との電気的接続を行うための電極を形成するために、n型不純物拡散層12上に形成された絶縁膜を所定の形状に除去して、絶縁膜15に開口部15aを設ける。この際、絶縁膜の開口部の形成方法としては、フォトリソグラフィー法または米国特許出願公開第2003/0160026号明細書に記載のエッチングペーストを用いる方法などがある。
【0031】
次に、図1(g)に示すように、上記n型不純物拡散層12およびp型不純物拡散層14のそれぞれに接触するように上記導電性ペースト30をスクリーン印刷などにより塗布する。なお、n型不純物拡散層12に接触するように導電性ペースト30を塗布する際には、絶縁膜15の開口部15aを完全に被覆するために、開口部15aよりも大きな範囲に導電性ペースト30の塗布を行なう。
【0032】
次に、図1(h)に示すように、上記半導体基板11を600℃以下の温度で熱処理することにより、上記n型不純物拡散層12およびp型不純物拡散層のそれぞれに接触する電極40を形成して太陽電池1を得る。
【0033】
なお、上記実施形態は、半導体基板の受光面の表面から内部にかけての領域の少なくとも一部にn型不純物拡散層、裏面の表面から内部にかけての領域の少なくとも一部にp型不純物拡散層を形成し、これらの不純物拡散層に接触する電極を形成した太陽電池の製造方法について説明したが、半導体基板の受光面の表面から内部にかけての領域の少なくとも一部にp型不純物拡散層、裏面の表面から内部にかけての領域の少なくとも一部にn型不純物拡散層を形成し、これらの不純物拡散層に接触する電極を形成した太陽電池を製造することも可能である。
【0034】
(実施形態2)
本発明かかる太陽電池の製造方法の好ましい別の実施形態として、図2を参照して、半導体基板11の2つの主面のうち、裏面11bの表面から内部にかけての領域の少なくとも一部にn型不純物拡散層12およびp型不純物拡散層14を形成する実施形態を説明する。
【0035】
まず、図2(a)に示すように、半導体基板11としてシリコン基板を準備する。基板として、インゴットからスライスしたシリコン基板を用いる場合は、インゴットからスライスする際に表面に生じたダメージ層を、酸性またはアルカリ性の溶液によりエッチングしたものを用いるのが好ましい。ここで、半導体基板11とするシリコン基板に特に制限はないが、たとえば、125mm×125mmで厚さが100μm〜500μm、電気抵抗率が0.5Ω・cm〜50Ω・cmのシリコン基板を用いることができる。なお、シリコン基板の受光面11aにテクスチャ表面を形成する場合は、受光面11aの面指数が(100)であることが好ましい。
【0036】
次に、図2(b)に示すように、半導体基板11であるシリコン基板の裏面11bの一部に、所定の塗布パターンで、リン(P)などのn型不純物を含むn型不純物ペースト22と、ホウ素(B)などのp型不純物を含むp型不純物ペースト24とを塗布する。n型不純物ペースト22およびp型不純物ペースト24の塗布パターンには、特に制限はないが、シリコン基板内に発生する少数キャリアを効率よく収集するために、n型不純物ペースト22とp型不純物ペースト24とが交互に配列されている塗布パターンが好ましい。次いで、上記n型およびp型不純物ペーストを100℃〜200℃で乾燥させる。次いで、n型不純物ペースト22およびp型不純物ペースト24が塗布された裏面11b全体を拡散防止膜13で被覆する。ここで、拡散防止膜13は、n型不純物およびp型不純物を半導体基板11であるシリコン基板中に拡散する際にn型およびp型不純物ペーストから外部へ不純物が拡散するのを防止する目的で覆うものであり、常圧CVD法で形成される酸化シリコン膜、酸化シリコンを含む塗布膜などが用いられる。
【0037】
次に、図2(c)に示すように、上記半導体基板11を900℃〜1000℃の石英炉内で30分間〜60分間加熱することにより、n型不純物ペースト22中のリンが半導体基板11の裏面11bの一部から内部の一部に拡散してn型不純物拡散層12を形成し、p型不純物ペースト24中のホウ素が半導体基板11の裏面11bの他の一部から内部の一部に拡散してp型不純物拡散層14を形成する。
【0038】
次に、図2(d)に示すように、半導体基板11であるシリコン基板を、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムとイソプロピルアルコールを含有する水溶液(液温が75℃〜85℃程度のもの)に浸すことにより、シリコン結晶方位に沿った異方性エッチングが進行し、受光面11aとして、(111)面による微細なピラミッド形状のテクスチャ表面を形成する。このとき、n型不純物拡散層12およびp型不純物拡散層14が形成された裏面11bは、拡散防止膜13が保護膜として作用するため、エッチングされない。
【0039】
次に、図2(e)に示すように、上記半導体基板11をフッ酸などに浸漬することにより、上記拡散防止膜13、n型不純物ペースト12およびp型不純物ペースト14を除去する。
【0040】
次に、図2(f)に示すように、上記半導体基板11の受光面11aにおよび裏面11bに表面再結合を抑制するための絶縁膜15を形成する。絶縁膜としては、熱酸化や常圧CVD法によるシリコン酸化膜またはプラズマCVD法によるシリコン窒化膜などが用いられる。受光面11aについては、絶縁膜15としてシリコン窒化膜を形成すればその屈折率は2.1程度であり、受光面での反射を抑制する反射防止膜も兼ねることができる。
【0041】
次いで、裏面11bのn型不純物拡散層12およびp型不純物拡散層14との電気的接続を行うための電極を形成するために、n型不純物拡散層12およびp型不純物拡散層14上に形成された絶縁膜を所定の形状に除去して、絶縁膜15に開口部15a,15bを設ける。開口部15a,15bの形状は、特に制限はなく、n型不純物拡散層12およびp型不純物拡散層14の配置パターンに応じて、ドット形状、ライン形状などを取り得る。この際、絶縁膜の開口部の形成方法としては、フォトリソグラフィー法または米国特許出願公開第2003/0160026号明細書に記載のエッチングペーストを用いる方法などがある。ここで、n型不純物拡散層12およびp型不純物拡散層14以外の部分に導電性ペーストが付着することがないように、上記n型不純物拡散層12およびp型不純物拡散層14よりも小さい開口部15a,15bを設ける。
【0042】
次に、図2(g)に示すように、上記開口部15a,15bに合わせて、上記n型不純物拡散層12およびp型不純物拡散層14のそれぞれに接触するように上記導電性ペースト30をスクリーン印刷などにより塗布する。導電性ペーストを塗布する際には、絶縁膜15の開口部15a,15bを完全に被覆するために、開口部15a,15bよりも大きな範囲に導電性ペーストの塗布を行なう。
【0043】
次に、図2(h)に示すように、上記半導体基板11を600℃以下の温度で熱処理することにより、上記n型不純物拡散層12およびp型不純物拡散層14のそれぞれに接触する電極40を形成して太陽電池2を得る。
【実施例】
【0044】
(比較例1、実施例1〜実施例15)
図1(a)に示すように、半導体基板11として、125mm×125mm×厚さ250μm、電気抵抗率が5Ω・cmの受光面の面指数が(100)のシリコン基板を準備した。
【0045】
次に、図1(b)に示すように、半導体基板11であるシリコン基板を、水酸化ナトリウムとイソプロピルアルコールを含有する水溶液に浸すことにより、シリコン結晶方位に沿った異方性エッチングが進行し、受光面11aとして、(111)面による微細なピラミッド形状のテクスチャ表面を形成した。
【0046】
次に、図1(c)〜(e)に示すように、半導体基板11であるシリコン基板の裏面11bにホウ素(B)を含むp型不純物ペースト24を塗布してオーブン中300℃で20分間乾燥させ、半導体基板11であるシリコン基板の受光面11aにリン(P)を含むn型不純物ペースト22を塗布してオーブン中300℃で20分間乾燥させた後、受光面および裏面に、常圧CVD法により、拡散防止膜13として厚さ0.4μm(4000Å)の酸化膜を形成した。その後、石英チューブ炉中1000℃で80分間熱処理して、シリコン基板の裏面11bの表面から内部にかけて深さ0.5μmの領域にp型不純物拡散層14を形成させて、BSF(Back Surface Field)構造を形成させ、シリコン基板の受光面11aの表面から内部にかけて深さ0.5μmのn型不純物拡散層12を形成させた。
【0047】
次に、図1(f)を参照して、上記シリコン基板の受光面11aにプラズマCVD法により、厚さ75nmのシリコン窒化膜を形成して反射防止膜とした。なお、シリコン基板の裏面11bの表面の全面から内部にかけてp型不純物拡散層14を形成させたため、裏面11bには、絶縁膜を形成させなかった。次いで、受光面11a上に形成された絶縁膜15であるシリコン窒化膜において、n型不純物拡散層12上に形成された絶縁膜に櫛状の開口部15aを設けた。ここで、絶縁膜の開口部の形成方法としては、フォトリソグラフィー法を用いた。
【0048】
次に、図1(g)を参照して、上記シリコン基板の受光面11a側の開口部15aに合わせて、上記n型不純物拡散層12に接触するように、およびシリコン基板の裏面11b側のp型不純物拡散層14に接触するように、導電性ペースト30として表1〜表3に示す配合を有する銀ペーストをスクリーン印刷により塗布、乾燥させた。
【0049】
次に、図1(h)に示すように、上記シリコン基板を、表1〜表3に示す導電性ペーストの焼成温度で熱処理することにより、上記n型不純物拡散層12およびp型不純物拡散層のそれぞれに接触する厚さ20μmの電極40を形成して太陽電池1を得た。
【0050】
上記のようにして得られた太陽電池において、電極の抵抗率および電極とシリコン基板との接触抵抗率を測定するために、受光面側の電極は図3に示すパターンで形成されている。ここで、図3を参照して、電極41の長さL41は10mm、断面積S41は0.004mm2であり、電極42と電極43との距離D23は2mm、電極43と電極44との距離D34は1mmであり、また電極42、43,44とシリコン基板(半導体基板11)との接触面積S42、S43、S44は、いずれも10mm2であった。
【0051】
電極の抵抗率は、電極41の両端間の抵抗R41を測定し、以下の式(1)より算出した。
【0052】
(電極の抵抗率)=R41×S41/L41 (1)
また、電極とシリコン基板との接触抵抗は、電極42と電極43との間の抵抗R42-43と、電極43と電極44との間の抵抗R43-44を測定して、以下のようにして算出した。すなわち、以下の式(2)および(3)に示すように、抵抗R42-43およびR43-44には、電極42、43、44とシリコン基板との接触抵抗R42、R43、R44の他に、電極42と電極43との間、および電極43と電極44との間のシリコン基板の抵抗R23、R34が含まれる。
【0053】
42-43=R42+R23+R43 (2)
43-44=R43+R34+R44 (3)
また、R23:R34=D23:D24であり接触面積がS42=S43=S44なので、接触抵抗はR42=R43=R44であるから、式(2)および(3)からシリコン基板の抵抗値R23、R34を消去し、以下の式(4)により、電極とシリコン基板との接触抵抗率を算出した。
【0054】
(電極とシリコン基板との接触抵抗率)
=R42×S42=R43×S43=R44×S44 (4)
また、比較例1、実施例1〜実施例15の太陽電池における変換効率を、ソーラシュミレータと出力測定装置により測定し、比較例1の変換効率を1.00としたときの相対値により表わした。結果を表1〜表3に示した。
【0055】
【表1】

【0056】
表1から明らかなように、導電性ペーストである銀ペーストの焼成温度を600℃低下にしても、銀粉末の含有量を80質量%以上に増加させることにより、電極の抵抗率および電極とシリコン基板との接触抵抗率を従来に比べて低くすることができ、太陽電池の変換効率を向上させることができた。ここで、銀粉末の含有量は、83質量%以上が好ましく、85質量%以上がより好ましい。
【0057】
【表2】

【0058】
表2から明らかなように、導電性ペーストである銀ペーストの焼成温度を600℃低下にしても、銀粉末の平均粒径を1μm以下とすることにより、電極の抵抗率および電極とシリコン基板との接触抵抗率を従来に比べて低くすることができ、太陽電池の変換効率を向上させることができた。ここで、銀粉末の平均粒径は、0.5μm以下が好ましく、0.2μm以下がより好ましい。
【0059】
【表3】

【0060】
表3から明らかなように、導電性ペーストである銀ペーストの焼成温度を600℃低下にしても、ガラスフリットの軟化点を400℃以下にすることにより、電極の抵抗率および電極とシリコン基板との接触抵抗率を従来に比べて低くすることができ、太陽電池の変換効率を向上させることができた。ここで、ガラスフリットの軟化点は、380℃が好ましく、350℃がより好ましい。
【0061】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明でなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内のすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0062】
上記のように、本発明は、低コストで、低抵抗率かつ低接触抵抗率である電極を低温で形成できる太陽電池およびその製造方法に広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明かかる太陽電池の製造方法の好ましい一の実施形態を示す図である。ここで、(a)は半導体基板を準備する工程、(b)はテクスチャ面を形成する工程、(c)はn型不純物ペーストおよびp型不純物ペーストを塗布し、拡散防止膜を形成する工程、(d)はn型不純物拡散層およびp型不純物拡散層を形成する工程、(e)はn型不純物ペースト、p型不純物ペーストおよび拡散防止膜を除去する工程、(f)は開口部を有する絶縁膜を形成する工程、(g)は導電性ペーストを塗布する工程、(h)は導電性ペーストを焼成して電極を形成する工程を示す。
【図2】本発明かかる太陽電池の製造方法の好ましい別の実施形態を示す図である。ここで、(a)は半導体基板を準備する工程、(b)はn型不純物ペーストおよびp型不純物ペーストを塗布し、拡散防止膜を形成する工程、(c)はn型不純物拡散層およびp型不純物拡散層を形成する工程、(d)はテクスチャ面を形成する工程、(e)はn型不純物ペースト、p型不純物ペーストおよび拡散防止膜を除去する工程、(f)は開口部を有する絶縁膜を形成する工程、(g)は導電性ペーストを塗布する工程、(h)は導電性ペーストを焼成して電極を形成する工程を示す。
【図3】本発明にかかる太陽電池における一つの受光面側の電極パターンを示す模式図である。ここで、(a)は平面模式図を、(b)はIIIb−IIIb方向から見た断面模式図を示す。
【符号の説明】
【0064】
1,2 太陽電池、11 半導体基板、11a 受光面、11b 裏面、12 n型不純物拡散層、13 拡散防止膜、14 p型不純物拡散層、15 絶縁膜、15a,15b 開口部、22 n型不純物ペースト、24 p型不純物ペースト、30 導電性ペースト、40,41,42,43,44 電極、50 はんだ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板内にp型不純物拡散層およびn型不純物拡散層が形成され、前記p型不純物拡散層および前記n型不純物拡散層のそれぞれに接触する電極を有する太陽電池の製造方法であって、
前記半導体基板の少なくとも一方の主面の表面から内部にかけての領域の少なくとも一部に、前記p型不純物拡散層および前記n型不純物拡散層のうち少なくとも一つの不純物拡散層を形成する工程と、導電性粉末、ガラスフリットおよびバインダーを含む導電性ペーストを前記p型不純物拡散層および前記n型不純物拡散層のそれぞれに接触するように塗布し、600℃以下の温度で焼成することにより電極を形成する工程とを含み、
前記導電性ペーストに含まれる導電性粉末の含有率が、80質量%以上であることを特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項2】
半導体基板内にp型不純物拡散層およびn型不純物拡散層が形成され、前記p型不純物拡散層および前記n型不純物拡散層のそれぞれに接触する電極を有する太陽電池の製造方法であって、
前記半導体基板の少なくとも一方の主面の表面から内部にかけての領域の少なくとも一部に、前記p型不純物拡散層および前記n型不純物拡散層のうち少なくとも一つの不純物拡散層を形成する工程と、導電性粉末、ガラスフリットおよびバインダーを含む導電性ペーストを前記p型不純物拡散層および前記n型不純物拡散層のそれぞれに接触するように塗布し、600℃以下の温度で焼成することにより電極を形成する工程とを含み、
前記導電性ペーストに含まれる導電性粉末の平均粒径が、1μm以下であることを特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項3】
半導体基板内にp型不純物拡散層およびn型不純物拡散層が形成され、前記p型不純物拡散層および前記n型不純物拡散層のそれぞれに接触する電極を有する太陽電池の製造方法であって、
前記半導体基板の少なくとも一方の主面の表面から内部にかけての領域の少なくとも一部に、前記p型不純物拡散層および前記n型不純物拡散層のうち少なくとも一つの不純物拡散層を形成する工程と、導電性粉末、ガラスフリットおよびバインダーを含む導電性ペーストを前記p型不純物拡散層および前記n型不純物拡散層のそれぞれに接触するように塗布し、600℃以下の温度で焼成することにより電極を形成する工程とを含み、
前記導電性ペーストに含まれるガラスフリットの軟化点が、400℃以下であることを特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項4】
前記半導体基板の少なくとも一方の主面の表面から内部にかけての領域の少なくとも一部に、前記p型不純物拡散層および前記n型不純物拡散層のうち少なくとも一つの不純物拡散層を形成する工程が、前記半導体基板の一方の主面の表面から内部にかけての領域の少なくとも一部に、p型不純物拡散層およびn型不純物拡散層を形成する工程である請求項1から請求項3のいずれかに記載の太陽電池の製造方法。
【請求項5】
前記導電性ペーストを600℃以下の温度で焼成することにより電極を形成する工程が、前記導電性ペーストを500℃以下の温度で焼成することにより電極を形成する工程である請求項1から請求項4のいずれかに記載の太陽電池の製造方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の太陽電池の製造方法により製造された太陽電池。
【請求項7】
電極の抵抗率が12μΩ・m以下である請求項6に記載の太陽電池。
【請求項8】
電極と半導体基板との接触抵抗率が15mΩ・cm2以下である請求項6に記載の太陽電池。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−41105(P2006−41105A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−217331(P2004−217331)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】