説明

媒体取扱装置

【課題】収納部内の媒体の数量を簡便に取得することが可能な媒体取扱装置を提供する。
【解決手段】媒体取扱装置は、ICチップと、アンテナとを備えた媒体が積層して収納される媒体収納部と、媒体収納部内に格納された媒体を外部へ繰り出す繰り出し部と、媒体収納部に収納された媒体から、ICチップに予め記憶された媒体の識別子を含む情報を読み取る収納媒体情報取得部と、収納媒体情報取得部を、媒体の積層方向に移動させる駆動部と、収納媒体情報取得部により読み取られた情報を出力する通信部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金融機関等での取引に使用される通帳等の媒体を発行可能な媒体取扱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
銀行等の金融機関で使用される媒体取扱装置の代表的な例としては、通帳発行装置がある。通帳発行装置は、例えば、利用者(オペレーター)からの通帳発行指示により、通帳発行装置内の収納部に収納されている未使用の通帳を繰り出し、磁気ストライプへの書き込み処理や表紙への印字処理等を行う装置である。書き込み処理や印字処理を正しく行うために、収納部内の未使用の通帳は、その裏表および向きを揃えた状態で収納される。従来、このような通帳発行装置において、収納部内に収納されている通帳の残冊数を検知するために、収納部に積層された複数の未使用の通帳の積層方向をフォトリフレクタで走査する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−77268号公報
【特許文献2】特開2008−290311号公報
【特許文献3】特開2000−289373号公報
【特許文献4】特開平11−306308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の技術では、通帳の残冊数を得るためには光学センサからの出力を解析する必要があり、通帳の残冊数を精度よく検出するためには複雑な処理を要するという問題があった。
【0005】
本発明は、収納部内の媒体の数量を簡便に取得することが可能な媒体取扱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
媒体取扱装置であって、
ICチップと、アンテナとを備えた媒体が積層して収納される媒体収納部と、
前記媒体収納部内に格納された前記媒体を外部へ繰り出す繰り出し部と、
前記媒体収納部に収納された前記媒体から、前記ICチップに予め記憶された前記媒体の識別子を含む情報を読み取る収納媒体情報取得部と、
前記収納媒体情報取得部を、前記媒体の積層方向に移動させる駆動部と、
前記収納媒体情報取得部により読み取られた情報を出力する通信部と、
を備える、媒体取扱装置。
このような構成にすれば、収納媒体情報取得部は、媒体収納部に収納された媒体から、ICチップに予め記憶された媒体の識別子を含む情報を読み取り、通信部は、収納媒体情報取得部により読み取られた情報を出力するため、媒体収納部内の媒体の数量を簡便に取得することができる。
【0008】
[適用例2]
適用例1記載の媒体取扱装置であって、
前記収納媒体情報取得部は、
前記媒体の第1の端部を含む第1の読み取り範囲を有する第1の収納媒体情報取得部と、
前記第1の端部とは異なる第2の端部を含み、かつ、前記第1の読み取り範囲とは重複しない第2の読み取り範囲を有する第2の収納媒体情報取得部と、
を備える、媒体取扱装置。
このような構成にすれば、収納媒体情報取得部は、媒体の第1の端部を含む第1の読み取り範囲を有する第1の収納媒体情報取得部と、前記第1の端部とは異なる第2の端部を含み、かつ、第1の読み取り範囲とは重複しない第2の読み取り範囲を有する第2の収納媒体情報取得部と、を備えるため、異なる2つの読み取り範囲における媒体の数量を取得することができる。
【0009】
[適用例3]
適用例1または2記載の媒体取扱装置であって、
前記繰り出し部は、
前記媒体収納部内に格納された前記媒体を外部へ搬送するための搬送路と、
前記搬送路に接続され、前記搬送路に前記媒体を繰り出す媒体繰り出し部と、
を含み、
前記媒体取扱装置は、さらに、前記搬送路上に配置され、前記搬送路により搬送される前記媒体から、前記ICチップに予め記憶された前記媒体の識別子を含む情報を読み取る搬送媒体情報取得部を備え、
前記通信部は、さらに、前記搬送媒体情報取得部により読み取られた情報を出力する、媒体取扱装置。
このような構成にすれば、搬送媒体情報取得部は、媒体収納部内に格納された媒体を外部へ搬送するための搬送路により搬送される媒体から、ICチップに予め記憶された媒体の識別子を含む情報を読み取り、通信部は、さらに、搬送媒体情報取得部により読み取られた情報を出力するため、搬送される媒体の数量を簡便に取得することができる。
【0010】
[適用例4]
適用例1または2記載の媒体取扱装置であって、
複数の前記媒体取扱装置と、
複数の前記繰り出し部に接続されている共通搬送路と、
前記共通搬送路上に配置され、前記共通搬送路により搬送される前記媒体から、前記ICチップに予め記憶された前記媒体の識別子を含む情報を読み取る搬送媒体情報取得部と、
を備え、
前記通信部は、さらに、前記搬送媒体情報取得部により読み取られた情報を出力する、媒体取扱装置。
このような構成にすれば、搬送媒体情報取得部は、複数の繰り出し部に接続されている共通搬送路により搬送される媒体から、ICチップに予め記憶された媒体の識別子を含む情報を読み取り、通信部は、さらに、搬送媒体情報取得部により読み取られた情報を出力するため、搬送される媒体の数量を簡便に取得することができる。
【0011】
[適用例5]
適用例1ないし4のいずれか一項記載の媒体取扱装置であって、
前記収納媒体情報取得部もしくは前記搬送媒体情報取得部が読み取る前記媒体の情報には、さらに、前記媒体の種類を識別するための情報が含まれる、媒体取扱装置。
このような構成にすれば、収納媒体情報取得部もしくは搬送媒体情報取得部が読み取る媒体の情報には、さらに、媒体の種類を識別するための情報が含まれるため、媒体の数量に加え、媒体の種類も取得することができる。
【0012】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能である。例えば、本発明は、媒体取扱装置、媒体取扱システム、媒体取扱装置の制御方法、媒体取扱装置を含む通帳発行装置、媒体取扱装置を含む現金自動取引装置のほか、それらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記憶した記憶媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例としての媒体取扱装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】媒体取扱装置のX方向(図1)における断面の概略を示す説明図である。
【図3】通帳PBに内蔵される非接触ICの位置の他の例を示す説明図である。
【図4】非接触ICの読み取り処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】非接触ICの読み取り処理(図4)によって得られた結果の一例を示す説明図である。
【図6】第2実施例における媒体取扱装置のX方向(図1)における断面の概略を示す説明図である。
【図7】第2実施例における非接触ICの読み取り処理(図4)によって得られた結果の一例を示す説明図である。
【図8】第2実施例における非接触ICの読み取り処理(図4)によって得られた結果の他の例を示す説明図である。
【図9】第3実施例における媒体取扱装置の概略構成を示す説明図である。
【図10】第4実施例における媒体取扱装置群の概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
【0015】
A.第1実施例:
図1は、本発明の一実施例としての媒体取扱装置10の概略構成を示す説明図である。図1は、媒体取扱装置10の側面からの内部構造を模式的に示しており、説明上必要としない他の構成部については図示を省略している。このことは、後述する図においても同様である。
【0016】
媒体取扱装置10は、銀行等に設置される通帳発行装置に搭載される装置であり、収納部に収納されている未使用の媒体(通帳)を繰り出す機能を有する。通帳発行装置は、媒体取扱装置10によって繰り出された通帳に対して、磁気ストライプに必要な情報を書き込む処理や、通帳の表紙への印字処理等を行った後、通帳を発行する。なお、通帳発行装置における各種の処理(情報の書き込み処理、印字処理、通帳の残数量の管理処理等)については、説明を省略する。
【0017】
媒体取扱装置10は、通帳カセット100と、繰り出しローラ102と、第1搬送ローラ104と、第2搬送ローラ106と、搬送路110と、収納媒体情報取得部200と、駆動ベルトプーリー212と、駆動モータ214と、駆動ベルト216とを備えている。
【0018】
媒体収納部としての通帳カセット100は、媒体としての通帳PBが積層された状態で収納される収納庫である。通帳カセット100の下端側の端部には、搬送路110と接続するための開口部が形成されている。
【0019】
搬送路110は、通帳PBを外部へ排出するために、通帳発行装置の正面(X方向)に設けられる通帳排出口(図示省略)と、通帳カセット100との間において通帳PBを搬送するための搬送路である。搬送路110の一端は通帳排出口に接続されている。また、搬送路110の他端は、通帳カセット100の開口部から、通帳カセット100の内部に挿入されている。
【0020】
繰り出しローラ102は、通帳カセット100の下端側の底部に、繰り出しローラ102の一部が通帳カセット100の最も下端側に位置する通帳PBに接するように設けられている。繰り出しローラ102が回転することによって、通帳カセット100の最も下端側に位置する1冊の通帳PBが搬送路110に向かって繰り出される。第1搬送ローラ104と、第2搬送ローラ106は、搬送路110に対して対向するように配置され、搬送路110へ繰り出された通帳PBを通帳排出口に向かって(すなわち、X方向に向かって)搬送する機能を有する。なお、繰り出しローラ102と、第1搬送ローラ104と、第2搬送ローラ106とを総称して「媒体繰り出し部」とも呼ぶ。また、搬送路と媒体繰り出し部とを総称して、単に「繰り出し部」とも呼ぶ。
【0021】
収納媒体情報取得部200は、非接触ICリーダー202と、通信部204とを備えている。非接触ICリーダー202は、無線式の読取装置であり、媒体PBに備えられている非接触型ICと無線により通信を行い、非接触型IC内に予め記憶されている情報の読み取りを行う。非接触ICリーダー202は、通帳カセット100内部に複数の媒体PBが積層されている場合であっても、その各々に備えられた非接触型ICと通信することが可能である。
【0022】
通信部204は、非接触ICリーダー202により読み取られた情報を、親装置である通帳発行装置の制御部へ送信する(出力する)機能を有する。通信部204における通信の方式は、有線/無線を問わず、任意の方式を採用することができる。
【0023】
駆動ベルト216は、通帳カセット100の上端側に配置された駆動ベルトプーリー212と、下端側に配置された駆動モータ214とに接続されているベルトである。駆動ベルト216の通帳カセット100と対向する側の一部分には、収納媒体情報取得部200が固定されている。駆動モータ214を用いて駆動ベルト216を回転させることにより、収納媒体情報取得部200を通帳カセット100の上端側と下端側との間で(換言すれば、通帳カセット内の通帳PBの積層方向に)移動させることができる。このため、非接触ICリーダー202は、通帳カセット100内の通帳PBに予め記憶された情報を順次読み取ることができる。なお、駆動ベルトプーリー212と、駆動モータ214と、駆動ベルト216とを総称して「駆動部」とも呼ぶ。
【0024】
図2は、媒体取扱装置10のX方向(図1)における断面の概略を示す説明図である。通帳カセット100内に格納された通帳PBの右上端部RUには、予め非接触ICが内蔵されている。非接触ICは、RFID(Radio Frequency IDentification)の一種であり、ICチップとアンテナ(図示省略)から構成されるタグを対象物に付け、無線によりICチップ内の情報にアクセスすることを可能とする技術である。
【0025】
なお、本実施例では、通帳PBに内蔵される非接触ICは、近接型(通信距離が数mm〜数十mm)もしくは近傍型(通信距離が数十mm〜0.7m)である。しかし、他の種類の非接触IC、例えば、遠隔型(通信距離が0.7m以遠)の非接触ICを用いることとしてもよい。また、非接触IC以外のRFIDを使用してもよい。
【0026】
図のように、媒体取扱装置10のX方向(図1)における断面から見た場合、収納媒体情報取得部200は、通帳PBが収納されている通帳カセット100の右側に位置するように配置されている。このようにすれば、非接触ICリーダー202の読み取り範囲RAが、通帳PBの右上端部RUに内蔵された非接触ICを含むことができる。
【0027】
図3は、通帳PBに内蔵される非接触ICの位置の他の例を示す説明図である。図のように、非接触ICは、通帳PBの右上端部RUのほか、右下端部RL、左上端部LU、左下端部LLに内蔵されるものとしてもよい。なお、非接触ICが内蔵される場所は任意に定めることが可能であるが、図のように、通帳PBの端部に配置することが好ましい。
【0028】
また、非接触ICが内蔵される場所を変更した場合、これに併せて収納媒体情報取得部200の位置も適宜変更することが好ましい。具体的には、変更後の非接触ICが、非接触ICリーダー202の読み取り範囲内に位置するように収納媒体情報取得部200の位置を変更する。
【0029】
図4は、非接触ICの読み取り処理の流れを示すフローチャートである。非接触ICの読み取り処理は、通帳発行装置の図示しない制御部により制御される。
【0030】
まず、制御部は、駆動モータ214を駆動させることによって、収納媒体情報取得部200を通帳カセット100の最上端まで移動させる(ステップS10)。次に、制御部は、非接触ICリーダー202に情報の読み取り指示を出すことによって、通帳PBに内蔵された非接触IC内に記憶された情報の読み取りを行う(ステップS12)。読み取りの際、非接触ICリーダー202は、少なくとも、通帳PBの識別子(通帳を一意に識別するために付与された固有のID)と、通帳PBの種類を識別するための情報とを読み出す。読み出された情報は、非接触ICリーダー202内の図示しない一時メモリに格納される。
【0031】
非接触ICリーダー202が、読み取り範囲内に位置する全ての通帳PBの情報の読み取りを行った後、制御部は、収納媒体情報取得部200が通帳カセット100の最下端まで移動されたか否かを判定する(ステップS14)。最下端まで移動されていない場合、制御部は、収納媒体情報取得部200を所定量だけ下端側へ移動させた後(ステップS16)、処理をステップS12へ遷移させる。なお、所定量とは、非接触ICリーダー202の読み取り範囲等を考慮して、任意に定めることが可能である。
【0032】
一方、収納媒体情報取得部200が通帳カセット100の最下端まで移動されている場合、制御部は、通信部204に、非接触ICリーダー202内の一時メモリに格納された情報を送信させる(ステップS18)。その後、処理は終了する。
【0033】
図5は、非接触ICの読み取り処理(図4)によって得られた結果の一例を示す説明図である。番号欄は、非接触ICリーダー202によって読み取りが行われた順序を示している。通帳種類欄は、通帳PBに内蔵された非接触IC内に記憶された情報のうち、通帳PBの種類を識別するための情報を示している。通帳識別子欄は、通帳PBに内蔵された非接触IC内に記憶された情報のうち、通帳PBの識別子(通帳を一意に識別するために付与された固有のID)を示している。
【0034】
図5の例では、非接触ICリーダー202によって取得された結果から、通帳カセット100内に格納されている通帳PBの数量は、15であることを把握することができる。また、通帳カセット100内に格納されている通帳PBの種類は、全て「A」であることを把握することができる。さらに、通帳カセット100内に格納されている個々の通帳PBの識別子も取得される。
【0035】
通帳発行装置の制御部は、これらの情報を用いて、通帳を管理するための種々の処理をすることが可能となる。具体的には、例えば、通帳発行装置の制御部は、取得された通帳の数量を用いて、通帳発行装置に装填された未使用の通帳の残数量を管理し、残数量が少なくなった場合に、利用者に通知を行う等の処理をすることができる。また、通帳発行装置の制御部は、取得された通帳の種類を用いて、通帳発行装置に誤った種類の通帳が装填されていないか等の監視を行うことができる。
【0036】
以上のように、第1実施例によれば、収納媒体情報取得部200の非接触ICリーダー202は、媒体収納部(通帳カセット100)に収納された媒体(通帳PB)から、図5に示すように、通帳PBに予め記憶された通帳PBの識別子を含む情報を順次読み取る。通信部204は、非接触ICリーダー202により読み取られた情報を送信するため、通帳カセット100内の通帳PBの数量を簡便に取得することができる。
【0037】
さらに、非接触ICリーダー202が読み取る通帳PBの情報には、通帳PBの種類を識別するための情報が含まれるため、通帳PBの数量に加え、通帳PBの種類も取得することができる。
【0038】
B.第2実施例:
第2実施例では、媒体取扱装置が、2つの収納媒体情報取得部を備える構成について説明する。なお、以下では、第1実施例と異なる構成および動作を有する部分についてのみを説明する。図中において第1実施例と同様の構成部分については先に説明した第1実施例と同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0039】
図6は、第2実施例における媒体取扱装置10aのX方向(図1)における断面の概略を示す説明図である。図6(A)は、通帳カセット100内の通帳PBが正しい向きである場合の様子を示している。図2に示した第1実施例との違いは、媒体取扱装置10aが、2つの収納媒体情報取得部(収納媒体情報取得部200、200a)を備える点のみであり、他の構成や動作は第1実施例と同様である。
【0040】
収納媒体情報取得部200については、第1実施例と同じである。収納媒体情報取得部200は、第1実施例と同様に、通帳PBの右上端部RUに内蔵された非接触ICを読み取ることによって、通帳カセット内の通帳の数量や、種類等を取得するために用いられる。なお、収納媒体情報取得部200を「第1の収納媒体情報取得部」とも呼ぶ。また、収納媒体情報取得部200の非接触ICリーダー202の読み取り範囲RAを「第1の読み取り範囲」とも呼ぶ。
【0041】
収納媒体情報取得部200aは、非接触ICリーダー202aと、通信部204aとを備えている。非接触ICリーダー202aおよび通信部204aの機能は、非接触ICリーダー202および通信部204と同様である。図のように、収納媒体情報取得部200aは、媒体取扱装置10aのX方向(図1)における断面から見た場合、通帳PBが収納されている通帳カセット100の左側に位置するように配置されている。このため、非接触ICリーダー202aの読み取り範囲RAaは、通帳PBの長手方向であって、非接触ICが内蔵されている側の端部とは逆側に位置する端部(左上端部RU)を含んでいる。
【0042】
さらに、収納媒体情報取得部200aは、非接触ICリーダー202aの読み取り範囲RAaと、非接触ICリーダー202の読み取り範囲RAとが、重複しない位置に配置されている。なお、収納媒体情報取得部200aを「第2の収納媒体情報取得部」とも呼ぶ。また、非接触ICリーダー202aの読み取り範囲RAaを「第2の読み取り範囲」とも呼ぶ。
【0043】
図6(B)は、通帳カセット100内の通帳PBが誤った向きである場合の様子を示している。図6(B)のように、通帳PBが誤った向きに収納されている場合は、通帳PBの右上端部RUに内蔵されている非接触ICが、非接触ICリーダー202aの読み取り範囲RAaに含まれることとなる。すなわち、収納媒体情報取得部200aは、通帳カセット100内において、他の通帳とは異なる向きに積層された通帳の検出を行うために用いられる。
【0044】
図7は、第2実施例における非接触ICの読み取り処理(図4)によって得られた結果の一例を示す説明図である。図7(A)は、非接触ICリーダー202aによって得られた読み取り結果を示している。図7(B)は、非接触ICリーダー202によって得られた読み取り結果を示している。図7(A)の例からは、通帳カセット100内において、他の通帳PBとは異なる向きに積層された通帳PBの数量は0であることを把握することができる。また、図7(B)の例からは、第1実施例と同様に、通帳カセット100内に正しい向きで格納されている通帳PBの数量と、通帳PBの種類と、個々の通帳PBの識別子とを把握することができる。
【0045】
図8は、第2実施例における非接触ICの読み取り処理(図4)によって得られた結果の他の例を示す説明図である。図8(A)は、非接触ICリーダー202aによって得られた読み取り結果を示している。図8(B)は、非接触ICリーダー202によって得られた読み取り結果を示している。図8(A)の例からは、通帳カセット100内において、他の通帳PBとは異なる向きに積層された通帳PBの数量が2であることを把握することができる。また、他の通帳PBとは異なる向きに積層された通帳PBの識別子は、「000004」と、「000008」であることがわかる。さらに、図8(B)の例からは、第1実施例と同様に、通帳カセット100内に正しい向きで格納されている通帳PBの数量と、通帳PBの種類と、個々の通帳PBの識別子とを把握することができる。
【0046】
通帳発行装置の制御部は、非接触ICリーダー202a(第2の収納媒体情報取得部)によって得られた読み取り結果を用いることによって、第1実施例で述べた処理に加えて、次のような処理をすることができる。例えば、通帳発行装置の制御部は、媒体取扱装置10aから繰り出された通帳の識別子と、非接触ICリーダー202aによって得られた読み取り結果とを照合し、一致する場合は、繰り出された通帳は誤った向きに収納されている通帳であるものと判定し、情報の書き込み処理や印字処理等を行わずに、繰り出された通帳を図示しないリジェクト庫に搬送するといった処理を行うことができる。なお、非接触ICリーダー202aによる非接触ICの読み取りに失敗した場合(例えば、非接触IC内に情報が書き込まれていなかった場合等)であっても同様に、リジェクト庫に搬送するといった処理をしてもよい。
【0047】
以上のように、第2実施例によれば、収納媒体情報取得部は、媒体(通帳PB)の第1の端部を含む第1の読み取り範囲(読み取り範囲RA)を有する第1の収納媒体情報取得部(収納媒体情報取得部200の非接触ICリーダー202)と、第1の端部とは異なる第2の端部(すなわち、通帳PBの長手方向であって、第1の端部の逆側に位置する第2の端部)を含み、かつ、読み取り範囲RAとは重複しない第2の読み取り範囲(読み取り範囲RAa)を有する第2の収納媒体情報取得部(収納媒体情報取得部200aの非接触ICリーダー202a)と、を備えるため、異なる2つの読み取り範囲における媒体の数量を取得することができる。
【0048】
C.第3実施例:
第3実施例では、搬送路上に媒体情報取得部を備える構成について説明する。なお、以下では、第1実施例と異なる構成および動作を有する部分についてのみを説明する。図中において第1実施例と同様の構成部分については先に説明した第1実施例と同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0049】
図9は、第3実施例における媒体取扱装置10bの概略構成を示す説明図である。図1に示した第1実施例との違いは、さらに、搬送媒体情報取得部300を備える点のみであり、他の構成や動作は第1実施例と同じである。
【0050】
搬送媒体情報取得部300は、搬送路110上に配置されている。搬送媒体情報取得部300は、非接触ICリーダー302と、通信部304とを備えている。非接触ICリーダー302は、非接触ICリーダー202と同様の無線式の読み取り装置であり、搬送路110を搬送される媒体PBに備えられている非接触ICと無線により通信を行い、非接触IC内に予め記憶されている情報の読み取りを行う。非接触ICリーダー302は、少なくとも、通帳PBの識別子を読み出す。読み出された情報は、非接触ICリーダー302内の図示しない一時メモリに格納される。
【0051】
通信部304は、非接触ICリーダー302により読み取られた情報を、親装置である通帳発行装置の制御部へ送信する機能を有する。通信部304における通信の方式は、有線/無線を問わず、任意の方式を採用することができる。なお、非接触ICリーダー302による非接触ICの読み取り制御、および、通信部304による情報の送信制御は、通帳発行装置の図示しない制御部により行われる。
【0052】
通帳発行装置の制御部は、搬送媒体情報取得部300の非接触ICリーダー302によって得られた読み取り結果を用いることによって、第1実施例で述べた処理に加えて、次のような処理をすることができる。例えば、通帳発行装置の制御部は、媒体取扱装置10bから繰り出された通帳が複数ある場合には、誤繰り出しであるものと判定し、情報の書き込み処理や印字処理等を行わずに、繰り出された通帳を図示しないリジェクト庫に搬送するといった処理を行うことができる。
【0053】
以上のように、第3実施例によれば、搬送媒体情報取得部300は、媒体収納部内(通帳カセット100)に格納された媒体(通帳PB)を外部へ搬送するための搬送路110により搬送される通帳PBから、通帳PB内に予め記憶された通帳PBの識別子を含む情報を読み取り、通信部304は、さらに、搬送媒体情報取得部(搬送媒体情報取得部300の非接触ICリーダー302)により読み取られた情報を送信するため、搬送される通帳PBの数量を簡便に取得することができる。
【0054】
D.第4実施例:
第4実施例では、複数の媒体取扱装置が組み合わされる構成について説明する。なお、以下では、第1実施例と異なる構成および動作を有する部分についてのみを説明する。図中において第1実施例と同様の構成部分については先に説明した第1実施例と同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0055】
図10は、第4実施例における媒体取扱装置群20の概略構成を示す説明図である。図1に示した第1実施例との違いは、3つの媒体取扱装置10を備える点と、各媒体取扱装置の搬送路110の一端が、それぞれ共通搬送路16に接続されている点と、複数の第3搬送ローラ12を備える点と、搬送媒体情報取得部400を備える点のみであり、他の構成や動作は第1実施例と同様である。
【0056】
媒体取扱装置10のそれぞれは、第1実施例で説明した媒体取扱装置10と同じである。図9においては、図示の便宜上、媒体取扱装置10内の各構成部についての符号を省略している。共通搬送路16は、通帳PBを外部へ排出するために、通帳発行装置の正面(X方向)に設けられる通帳排出口(図示省略)と、各媒体取扱装置の搬送路110の一端との間において通帳PBを搬送するための搬送路である。
【0057】
複数の第3搬送ローラ12は、共通搬送路16に対して対向するように配置され、共通搬送路16へ繰り出された通帳PBを通帳排出口に向かって(すなわち、X方向に向かって)搬送する機能を有する。なお、本実施例においては、繰り出しローラ102(図1)と、第1搬送ローラ104(図1)と、第2搬送ローラ106(図1)と、複数の第3搬送ローラ12とを総称して「媒体繰り出し部」とも呼ぶ。
【0058】
搬送媒体情報取得部400は、共通搬送路16上に配置されている。搬送媒体情報取得部400は、非接触ICリーダー402と、通信部404とを備えている。非接触ICリーダー402は、非接触ICリーダー202と同様の無線式の読み取り装置であり、共通搬送路16を搬送される媒体PBに備えられている非接触ICと無線により通信を行い、非接触IC内に予め記憶されている情報の読み取りを行う。非接触ICリーダー402は、少なくとも、通帳PBの識別子を読み出す。読み出された情報は、非接触ICリーダー402内の図示しない一時メモリに格納される。
【0059】
通信部404は、非接触ICリーダー402により読み取られた情報を、親装置である通帳発行装置の制御部へ送信する機能を有する。通信部404における通信の方式は、有線/無線を問わず、任意の方式を採用することができる。なお、非接触ICリーダー402による非接触ICの読み取り制御、および、通信部404による情報の送信制御は、通帳発行装置の図示しない制御部により行われる。
【0060】
通帳発行装置の制御部は、搬送媒体情報取得部400の非接触ICリーダー402によって得られた読み取り結果を用いることによって、第1実施例で述べた処理に加えて、次のような処理をすることができる。例えば、通帳発行装置の制御部は、媒体取扱装置10から繰り出された通帳が複数ある場合には、誤繰り出しであるものと判定し、情報の書き込み処理や印字処理等を行わずに、繰り出された通帳を図示しないリジェクト庫に搬送するといった処理を行うことができる。
【0061】
以上のように、第4実施例によれば、搬送媒体情報取得部400は、複数の媒体収納部内(通帳カセット100)に格納された媒体(通帳PB)を、それぞれ外部へ搬送するための複数の搬送路110と接続されている共通搬送路16により搬送される通帳PBから、通帳PBに予め記憶された通帳PBの識別子を含む情報を読み取り、通信部404は、さらに、搬送媒体情報取得部(搬送媒体情報取得部400の非接触ICリーダー402)により読み取られた情報を送信するため、搬送される通帳PBの数量を簡便に取得することができる。
【0062】
E.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0063】
E1.変形例1:
上記実施例では、媒体取扱装置は、通帳発行装置に搭載される装置であるものとして説明した。しかし、上記実施例で示した態様は、あくまで媒体取扱装置の利用形態の一例に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形をすることが可能である。例えば、媒体取扱装置は、銀行等に設置される現金自動取引装置(Automated teller machine)に搭載されるものとしてもよいし、媒体取扱装置は、駅等に設置される自動券売機に搭載されるものとしてもよい。
【0064】
E2.変形例2:
上記実施例では、媒体取扱装置の構成や機能を説明した。しかし、上記実施例で示した態様は、あくまで媒体取扱装置の構成の一例に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形をすることが可能である。具体的には、媒体取扱装置の各部を構成する部材の形状等を変更しても良いし、上述しない機能を備えるものとしても良い。
【0065】
例えば、媒体取扱装置において取り扱われる媒体として、通帳以外の媒体(例えば、キャッシュカードや、クレジットカード、定期券等)を採用することもできる。
【0066】
例えば、非接触ICの読み取り処理(図4)を制御する制御部を、媒体取扱装置内部に設けるものとしても良い。
【0067】
例えば、収納媒体情報取得部や、搬送媒体情報取得部は、個々に通信部を含む構成ではなく、共通する1つの通信部を備える構成としてもよい。
【0068】
例えば、通帳カセット100の近傍に、収納媒体情報取得部を複数設けることによって、駆動部(駆動ベルトプーリー、駆動モータ、駆動ベルト)を省略してもよい。
【0069】
例えば、収納媒体情報取得部を2つ以上設ける構成としてもよい。また、媒体に内蔵される非接触ICの数も、複数個にすることができる。
【0070】
例えば、第2実施例で説明した媒体取扱装置や、第3実施例で説明した媒体取扱装置を複数用いることによって、第4実施例で説明した媒体取扱装置群を構成するものとしてもよい。
【符号の説明】
【0071】
10…媒体取扱装置
10a…媒体取扱装置
10b…媒体取扱装置
12…第3搬送ローラ
16…共通搬送路
20…媒体取扱装置群
100…通帳カセット
102…繰り出しローラ
104…第1搬送ローラ
106…第2搬送ローラ
110…搬送路
200…収納媒体情報取得部
200a…収納媒体情報取得部
202…非接触ICリーダー
202a…非接触ICリーダー
204…通信部
204a…通信部
212…駆動ベルトプーリー
214…駆動モータ
216…駆動ベルト
300…搬送媒体情報取得部
302…非接触ICリーダー
304…通信部
400…搬送媒体情報取得部
402…非接触ICリーダー
404…通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体取扱装置であって、
ICチップと、アンテナとを備えた媒体が積層して収納される媒体収納部と、
前記媒体収納部内に格納された前記媒体を外部へ繰り出す繰り出し部と、
前記媒体収納部に収納された前記媒体から、前記ICチップに予め記憶された前記媒体の識別子を含む情報を読み取る収納媒体情報取得部と、
前記収納媒体情報取得部を、前記媒体の積層方向に移動させる駆動部と、
前記収納媒体情報取得部により読み取られた情報を出力する通信部と、
を備える、媒体取扱装置。
【請求項2】
請求項1記載の媒体取扱装置であって、
前記収納媒体情報取得部は、
前記媒体の第1の端部を含む第1の読み取り範囲を有する第1の収納媒体情報取得部と、
前記第1の端部とは異なる第2の端部を含み、かつ、前記第1の読み取り範囲とは重複しない第2の読み取り範囲を有する第2の収納媒体情報取得部と、
を備える、媒体取扱装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の媒体取扱装置であって、
前記繰り出し部は、
前記媒体収納部内に格納された前記媒体を外部へ搬送するための搬送路と、
前記搬送路に接続され、前記搬送路に前記媒体を繰り出す媒体繰り出し部と、
を含み、
前記媒体取扱装置は、さらに、前記搬送路上に配置され、前記搬送路により搬送される前記媒体から、前記ICチップに予め記憶された前記媒体の識別子を含む情報を読み取る搬送媒体情報取得部を備え、
前記通信部は、さらに、前記搬送媒体情報取得部により読み取られた情報を出力する、媒体取扱装置。
【請求項4】
請求項1または2記載の媒体取扱装置であって、
複数の前記媒体取扱装置と、
複数の前記繰り出し部に接続されている共通搬送路と、
前記共通搬送路上に配置され、前記共通搬送路により搬送される前記媒体から、前記ICチップに予め記憶された前記媒体の識別子を含む情報を読み取る搬送媒体情報取得部と、
を備え、
前記通信部は、さらに、前記搬送媒体情報取得部により読み取られた情報を出力する、媒体取扱装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項記載の媒体取扱装置であって、
前記収納媒体情報取得部もしくは前記搬送媒体情報取得部が読み取る前記媒体の情報には、さらに、前記媒体の種類を識別するための情報が含まれる、媒体取扱装置。
【請求項6】
通帳発行装置であって、
請求項1ないし5のいずれか一項記載の媒体取扱装置を備える、通帳発行装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−22483(P2012−22483A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159310(P2010−159310)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】