説明

定着装置および画像形成装置

【課題】コスト高を招く複雑なメカ構成を必要とせず、ジャム処理時にのみ定着ノブの使用を可能とし、ジャム処理動作後の復帰動作でウェブ巻取り動作を行うことによってウェブ弛みを防止し、ウェブの搬送性不良やクリーニング不良を防止できる定着装置および画像形成装置を提供すること。
【解決手段】定着装置1内に備えた定着回転体5もしくは加圧回転体を手動により回転させる定着ノブ2を接続用のジョイント部材4に着脱可能であり、前記定着ノブを前記ジョイント部材に装着した状態のもとで前記定着ノブを手動で回転することにより定着回転体5および前記加圧回転体の一方又は両方を回転させることができる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着回転体および加圧回転体を有する定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明にも適用される画像形成装置(図12参照)および定着装置(図7参照)を例示した図7を参照しつつ背景技術を説明する。可視像形成のためにトナーを用いる画像形成装置14においては、トナー画像を転写紙等の記録媒体に永久画像として定着するために定着装置1が備えられている。定着装置1は定着ベルト6と、該定着ベルト6に圧接・回転している加圧ローラ8との圧接部(ニップ部)に未定着トナー像を保持した面が定着ベルト6に接触する向きで記録媒体が接しつつ搬送される過程で、記録媒体上に担持されたトナーが溶融され記録媒体上にトナー画像が定着される。記録媒体の搬送経路を破線矢印で示す。
【0003】
この例では、定着ローラ5は、該定着ローラ5と加熱ローラ7との間に掛けまわされている定着ベルト6を介して加熱される。通常、高速で画像形成・画像定着を行うことが可能な画像形成装置14で使用される定着装置1にはシリコーンオイルが含浸された不織布であるウェブ13を、送出ローラ12と巻取りローラ10間で微小量ずつ移動させる。これら送出ローラ12、巻取りローラ10の両ローラの中間部位に設けられている発泡体等を用いた軟性の圧接ローラ11によって、ウェブ13を、加圧ローラ8の外周面に当接させながら送ることによって、定着処理後における加圧ローラ8等、の外周面の未定着トナー等の残留物除去を行うようになっている。
【0004】
ウェブ13の送り機構については、送出ローラ12は本例において、また他の例でも通常駆動を持っておらず、巻取りローラ10側の回転駆動によって、ウェブ13が送出ローラ12から引っ張り出される構成をとっている。したがって、送出ローラ12はウェブ13の送り方向の回転に対しては少なくともフリーに構成されているため、通常の稼動時は、加圧ローラ8はウェブ13の送り方向(反時計回りの向き)に対してカウンタ方向(反時計回りの向き)に回転している。そのため、ウェブ13は加圧ローラ8と圧接ローラ11の接点と巻取りローラ10の間で適度な張りを維持できるため、安定したウェブ13の搬送が実現できるようになっている。
【0005】
本例を含め、どのような定着装置でも記録媒体である用紙がニップ部に詰まるいわゆる紙詰まりの発生の可能性はあり、紙処理性向上の理由から、ユーザーが行う定着ローラ5に対する回転ノブによる回転方向を、画像形成時の方向(時計回りの向き)に対して反対方向(反時計回りの向き)にして上流側へジャム紙を引き出すようにしている。
【0006】
しかし、そのようにした場合、定着ローラ5と圧接している加圧ローラ8も画像形成時の方向(反時計回りの向き)に対して反対方向(時計回りの向き)に回転することによって、圧接ローラ11と加圧ローラ8との接点と巻取りローラ10との間で形成したウェブ13に対する適度な張りが無くなり、逆に、加圧ローラ8の回転によって送出ローラ12から余分なウェブ13を引っ張り出してしまい、ウェブ13の絡まりや、ウェブ13がはみ出し、ウェブ13の搬送不良等を引き起こす可能性がある。
【0007】
(1)このような問題に対して、帯状の清掃部材の位置を固定する固定手段を有し、予め設定した時期に固定手段を動作させるとする先行技術がある(例えば、特許文献1参照)。この先行技術では、クリーニングウェブを搭載した定着装置に関して、ジャム処理時にウェブ固定手段を設けたものである。ただし、ウェブ固定手段はメカ的なウェブ当接上流部のブレーキ機構であり、カム機構により固定/解除が制御される構成である。かかる構成は機構が複雑で定着装置の大型化やコストが高くなる等のことが懸念される。
【0008】
(2)また、別の先行技術として、用紙が加熱ローラに巻き付いてジャムとなった時には、ジャム処理後の復帰動作または、次の印刷開始前に、加熱ローラと加圧ローラの回転動作を所定時間行う間に、ウェブシートの巻き取り動作を複数回行い、且つウェブシートの巻き取り時間と加熱ローラと加圧ローラの回転動作時間との比を35〜50%と規定することにより加圧ローラの清掃を行うとする発明がある(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
この先行技術では、ジャム処理後の復帰動作で定着ローラと加圧ローラの回転動作およびクリーニングウェブの巻き取り動作を複数回行うことを特徴としている。この先行技術はジャム時に発生したローラ上の汚れを清掃することを目的とし、ジャム処理作業で生じたウェブの弛みを巻き取ることによって加圧ローラの清掃を行う。
【0010】
(2)の先行技術では、(1)の先行技術のように複雑なメカ構成もいらず、制御だけでウェブの弛みを防止できるが、仮にジャム処理を行う定着ノブを常時回すことが可能な状態である場合には、ジャム処理以外でも、オペレータが、定着ノブを回してしまう可能性がある。その場合、ジャム処理後の復帰動作は行われないので、定着ノブを回したことで生じたウェブの弛みによるウェブの搬送性不良やクリーニング不良を起こす等の不具合を防止できない問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記課題に鑑み、コスト高を招く複雑なメカ構成を必要とせず、ジャム処理時にのみ定着ノブの使用を可能とし、ジャム処理動作後の復帰動作でウェブ巻取り動作を行うことによってウェブ弛みを防止し、ウェブの搬送性不良やクリーニング不良を防止できる定着装置および画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記目的を達成するため、以下の構成とした。
(1): 本発明の第1の手段の定着装置では、加熱される定着回転体と、前記定着回転体に圧接する加圧回転体とを有し、前記定着回転体と前記加圧回転体との圧接部に未定着トナー像を保持した面が前記定着回転体に接触する向きで記録媒体が接しつつ搬送される過程で、該記録媒体上に担持された未定着トナー像を記録媒体上に定着させる定着装置において、
前記定着装置内に備えた定着回転体もしくは加圧回転体を手動により回転させる定着ノブを接続用のジョイント部材に着脱可能であり、前記定着ノブを前記ジョイント部材に装着した状態のもとで前記定着ノブを手動で回転することにより前記定着回転体および前記加圧回転体の一方又は両方を回転させることができることとした。定着回転体には、定着ローラ、定着ベルトが含まれる。加圧回転体には、加圧ローラ、加圧ベルトが含まれる。定着ノブはジョイント部材に対して着脱可能であるので、通常状態では定着装置から外すものとすることができる。ジャム発生時で必要に迫られた場合にのみ定着ノブをジョイント部に装着して定着ローラおよび加圧回転体を回す。それ以外の場合に定着ノブは非装着とし、不用意に定着ローラおよび加圧回転体を回すことがない。
従って、想定外の場合において定着ローラおよび加圧回転体を回すことによって生じる不具合発生を防止することができる。
(2): 本発明の第2の手段の定着装置では、第1の手段に係る定着装置において、
前記ジョイント部材は前記定着回転体又は前記加圧回転体と連結されていて、前記定着ノブとの連結部は凹形状であり、前記定着ノブにおける前記ジョイント部との連結部は前記定着ノブにおける前記凹形状とのみ嵌合できる凸形状であることとした。ジョイント部材の連結形状は凹形状なので、定着ノブ無しでは手掛かりがなく、手動で定着ローラ等定着回転体を回すことができない。よって、想定外の場合において定着ローラおよび加圧回転体を回すことによって生じる不具合発生を確実に防止することができる。
(3): 本発明の第3の手段の定着装置では、第2の手段に係る定着装置において、
前記ジョイント部材は伝熱性の低い材料からなり、定着カバーの開口に中心を合わせてその先端部が該開口内に位置していて、前記開口の内径部と前記ジョイント部の外径部との隙間が4mm以下とした。ジョイント部材は定着ローラまたは加圧回転体と締結もしくは駆動連結された構成なので、定着装置が稼動する時にはジョイント部材は回転する。従って、定着カバーとの間には必ず隙間が存在する。その隙間を4mm以下とすることによって、中の駆動部や熱い箇所に指などが触れることを防止できる。また、ジョイント部材の材質は伝熱性の低い、例えば、樹脂製であり、画像形成装置の前カバーを開いた時点で安全のため定着駆動は遮断されるので、ジョイント部材に触れても熱さや駆動により怪我をする心配がなく安全性に優れている。
(4): 本発明の第4の手段の定着装置では、第1乃至第3の何れか1つの手段に記載の定着装置において、
前記定着回転体上、または加圧回転体上に接触するクリーニングウェブを備えていることとした。ジャム処理以外の想定外な場合で定着ローラおよび加圧回転体が回される心配がないので、定着ローラおよび加圧回転体が回されることによって発生するウェブ弛みや更にはウェブ弛みによって生じるウェブ搬送性不良やクリーニング不良を防止することができる。ジャム処理後は復帰動作にウェブ巻取り動作を行うことによって、ウェブ固定手段等の複雑でコストのかかる機構無しで、ウェブ弛みを防止することができる。
(5): 本発明の第5の手段の定着装置では、第1乃至4の何れか1つの手段に記載の定着装置を備えた画像形成装置において、
画像形成装置内部に、前記定着ノブの保持部を有することとした。定着ノブは画像形成装置本体内部に備えられているので紛失する可能性も低く、ジャム処理時等必要なときに直ぐに取り出して使用することができる。
(6): 本発明の第6の手段の定着装置では、第5の手段に記載の画像形成装置において、
前記定着ノブの保持部は、当該画像形成装置の前カバーの内側に設けられていることとした。定着装置内でジャムが発生し、ジャム処理を行う時最初にする動作である、画像形成装置の前カバーを開きその前カバー内側に定着ノブが設置された構成なので、定着ジャム処理時に直ぐに定着ノブを取り出し、対処することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、コスト高を招く複雑なメカ構成を必要とせず、ジャム処理時にのみ定着ノブの使用を可能とし、ジャム処理動作後の復帰動作でウェブ巻取り動作を行うことによってウェブ弛みを防止し、ウェブの搬送性不良やクリーニング不良を防止できる定着装置および画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】定着ノブを装着した状態での定着装置の斜視図である。
【図2】抜脱した状態での定着ノブを定着装置と共に示した斜視図である。
【図3】(a)は定着装置から定着カバーを外した状態を示す斜視図、(b)は(a)におけるジョイント部を拡大して示した斜視図である。
【図4】(a)はジョイント部材を軸線に対して略横方向から見たときの斜視図、(b)、(c)はジョイント部材を略軸線方向からそれぞれ少し角度を異ならせて見たときの斜視図、(d)は定着ノブの斜視図である。
【図5】定着装置の長手方向(定着ローラの軸方向)での一端側であって定着カバー3のある側を示した斜視図である。
【図6】(a)は図5に示した定着装置の長手方向での一端側から該定着装置を見たA視の図であり、(b)は(a)における鎖線で示す円内の拡大図、(c)は定着前カバーにおいてジョイント部材の嵌入状態を示す断面図である。
【図7】定着装置の内部構造を説明した図である。
【図8】前カバーを開いた状態を示す画像形成装置の斜視図である。
【図9】図8における前カバーの裏側を拡大して示した図である。
【図10】前カバーを開き、定着装置を引き出した状態を示す画像形成装置の斜視図である。
【図11】図10における定着装置の定着前カバー部を拡大して示した斜視図である。
【図12】本発明が適用される画像形成装置の構造を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0016】
図1は定着ノブ2を装着した状態での定着装置1の斜視図であり、図2は定着装置1から抜脱した状態での定着ノブ2を定着装置1と共に示した斜視図である。図1、図2に示すように定着ノブ2は定着装置1に対して着脱可能な構成である。
【0017】
図12に示した定着装置1の定着ローラ5の軸部5aの軸方向(図12の紙面を貫く方向)上に、図1、2に示す定着前カバー3が設けられ、該定着前カバー3の内側に定着ローラ5が位置している。定着ローラ3と加圧ローラ8の各軸には1:1のギヤ比で噛み合う一対の連結歯車が噛み合わされていて定着時には、定着ローラ3と加圧ローラ8とは駆動源からの動力を得て連結ギヤを介して圧接部において所定の記録媒体搬送方向に合わせた同一の向きで同一の周速度で回転駆動される。
【0018】
定着ローラ5の軸部5aには図3に示すように、定着ノブ2と着脱可能に嵌合されるジョイント部材4が結合されている。ジョイント部材4の軸線と交差するように位置する定着前カバー3にはジョイント部材4の外径に合わせて開口3aが形成されている。
【0019】
ジャム発生時には動力系の電源をオフにした上で、図2に示すように、この開口3aに定着ノブ2を合わせ、図1に示すように定着ノブ2を開口3aに差し込み、開口3aの奥に位置するジョイント部材4に定着ノブ2を嵌合装着した上で、該定着ノブを回転することにより、前記連結ギヤを介して、定着ローラ5および加圧ローラ8を手動で回転することができる。
【0020】
定着ノブ2は手動により正逆何れの方向にも回転可能であり、前記連結ギヤを介して記録媒体を搬送方向とは逆方向に手動で定着ローラ5および加圧ローラ8を回転させることができるので、用紙除去性に優れている。定着ノブ2はジョイント部材4に対して抜き差し動作により着脱可能であり、定着ノブ2は通常状態では定着装置1には装着されておらず、ジャム発生時など必要に迫られた場合にのみ定着ノブ2を装着して定着ローラ5および加圧ローラ8を回してジャム紙を除去するなどをすることができる。
【0021】
ジャム以外の場合、つまり、通常の定着動作が行われる状態のもとでは、定着ノブ2はジョイント部材4から外されていて装着されておらず、手動回転手段である定着ノブ2がない状態では、不用意に定着ローラ5および加圧ローラ8を回すことができない。従って、想定外の場合において定着ローラ5および加圧ローラ8を回すことによって生じる不具合の発生を防止することができる。
【0022】
定着ローラ2、加圧ローラ8の軸に直接、或いは、これらローラの駆動系の任意の軸部にジョイント部材4を連結し、このジョイント部材4に着脱可能な定着ノブを装備するという簡単な構成でコスト高を招く複雑なメカ構成を必要とせず、着脱構成によりジャム処理時にのみ定着ノブ2の使用を可能とし、ジャム処理動作後の復帰動作でウェブ巻取り動作を行うことによってウェブ弛みを防止し、ウェブの搬送性不良やクリーニング不良を防止することができる。
【0023】
図では定着ローラ5を例示しているが、定着ローラに代えて定着ベルトを使用する場合においても、その定着ベルトの駆動系にかかる軸にジョイント部材4を連結した構成とし、そのジョイント部材4に対して定着ノブ2を着脱可能な構成とすることにより同様の効果を得る。この明細書では、これら定着ローラ、定着ベルトを含めて定着回転体と称する。
【0024】
ジャム時に、加圧ローラと定着回転体とが離間される構成の定着装置においては、ジョイント部材を定着回転体側の軸に設けた場合には、定着ノブにより定着回転体だけが回転するし、ジョイント部材を加圧ローラ側の軸に設けた場合には定着ノブにより加圧ローラだけが回転することになるが本発明の効果は変わらない。
【0025】
図3は定着装置1から定着カバー3を外した状態を示した図である。この例では、ジョイント部材4が定着ローラ5の軸に取り付けたフランジ部にネジ締結された構成である。そのジョイント部材4に対して定着ノブ2が着脱可能に構成されている。ジョイント部材4および定着ノブ2の詳細な形状を図4に示している。
【0026】
図4(a)はジョイント部材4を軸線に対して略横方向から見たときの斜視図、(b)、(c)はジョイント部材4を略軸線方向からそれぞれ少し角度を異ならせて見たときの斜視図、(d)は定着ノブ2の斜視図である。
【0027】
図4(a)において、ジョイント部材4は定着ノブ2との嵌合部を有する本体部4aと、定着ローラ5の軸部5aとの締結部4bの2つの部位からなる。締結部4bは筒状をしていてその内部にDカットされた軸部5aを挿入した状態でねじ孔4b1よりねじ20を螺入して固定している。
【0028】
ジョイント部材4の定着ノブ2との連結部は図4(b)、(c)に示すように凹形状4a1をしていて、奥に進むほど径が小さくなるテーパ状をしている。一方、定着ノブ2の連結部は図4(d)に示すように先へ進むほど径が小さくなる凸形状2aをしている。これら凹形状4a1と凸形状2aとは嵌合可能に形成されている。定着ノブ2をジョイント部材4に装着した状態でジョイント部材4の凹形状部4a1に定着ノブ2の凸形状部2aを嵌合させて、手動で定着ノブ2を回すことにより、その回転モーメントはジョイント部材4に伝わり、ジョイント部材4は定着ローラ5にねじ締結されているので、該回転モーメントは定着ローラ5に伝わり、ジャム紙を排除する方向に回転させることができる。
【0029】
図示していないが定着ローラ5と加圧ローラ8とはギヤ連結されているため、定着ノブ2を手動で回すと、定着ローラ5および加圧ローラ8も回転する。定着ノブ2の回転方向は手動であるから任意に切り換えることができるので、状況に応じて用紙の搬送方向および反対方向にも回転可能である。従って、ジャム紙の状況によって送り方向にもまた反送り方向にも回転できるのでジャム処理性能がよい。また、上記構成において、ジョイント部材4の連結部形状は凹形状4a1をしているので、定着ノブ2を使用せずに手動で定着ローラ5および加圧ローラ8を回すことができない。従って、ジャム処理時以外の想定外の場合において定着ローラ5および加圧ローラ8を回すことによって生じる不具合発生を確実に防止することができる。
【0030】
図5は定着装置1の長手方向(定着ローラの軸方向)での一端側であって定着カバー3のある側を示した斜視図であり、図6(a)は図5に示した定着装置の長手方向での一端側から該定着装置を見たA視の図(A視)であり、(b)は(a)における鎖線で示す円内の拡大図である。
【0031】
図5、図6(a)、(b)、(c)に示すように、ジョイント部材4はその先端部を定着カバー3に設けられた円形の孔からなる開口3a内に位置するように配置されている。ジョイント部材4の外径dはφ18mm、定着カバー3に設けられた穴の内径Dはφ24mmであり、その隙間Δは3mmに設定されている。部品バラつきを考慮しても隙間Δは4mmを超えない構成である。
【0032】
ジョイント部材4は定着ローラ5または加圧ローラ8と締結もしくは駆動連結される構成なので、定着装置1の駆動時にジョイント部材4は回転する。従って、定着カバー3との間には必ず隙間が必要になる。その隙間を4mm以下とすることによって、定着装置1の中の駆動部や熱い箇所に指などが触れることを防止できる。また、ジョイント部材4の材質は伝熱性の低い樹脂製であり、後述する図8、図10、図12における画像形成装置14の前カバー15を開いた時点で定着駆動は遮断されるので、ジョイント部材4に触れても熱さや駆動により怪我する心配がなく安全である。
【0033】
図7は定着装置の要部を示した図である。定着装置1は定着ベルト6内に定着ローラ5と加熱ローラ7を備え、定着ベルト6を介して定着ローラ5に対して加圧ローラ8を押し付けて加圧することによりニップ部NPを形成している。加熱ローラ7と加圧ローラ8の内部には熱源であるハロゲンヒータが内蔵されていて、図の右側から破線矢印で示される経路をたどり、未定着トナー像を担持した記録媒体が搬送され、ニップ部NPで挟持・加熱し、定着する構成である。
【0034】
定着ベルト6の構成は内径80mmで厚み90μmのポリイミド樹脂で形成された基体表層に厚み200μmのシリコンゴム、更に最外層には厚さ20μmのPFA(テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)コートを施している。
エンドレスの定着ベルト6は、その輪の内側を外径54mmの定着ローラ5と外径40mmで厚み1mm以下のアルミ製中空円筒からなる加熱ローラ7によって巻き掛けられている。定着ローラ5は、外径54mmで厚み15mmのシリコンゴムまたはフッ素ゴムからなる耐熱・弾性層を有した構成である。
【0035】
加圧ローラ8は、鋼製で厚み1mmの中空芯金に厚み1.5mmのシリコンゴムが覆っており、最外層にはPFA(テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)チューブを備えた外径65mmのローラである。
【0036】
上記構成で加圧ローラ8は定着ベルト6を介して定着ローラ5に対して4mm食い込み、およそ16mmのニップ幅を形成している。加圧ローラ8の表面を清掃する清掃部材として、帯状の不織布にシリコーンオイルを含浸させたウェブ13を送り手段としての送出ローラ12から巻き取り手段としての巻取りローラ10へ微送させながら、ウェブ13を加圧ローラ8に圧接させる圧接体としての圧接ローラ11によって、一定の力で加圧ローラ8に圧接することで、加圧ローラ8上にオフセットした微量トナーのクリーニングを行っている。
【0037】
ウェブ13の送り機構については、送出ローラ12は通常駆動力を持っておらず、巻取りローラ10側の回転駆動によって、ウェブ13が送出ローラ12から引っ張り出される構成をとっている。従って、送出ローラ12はウェブ13の送り方向の回転に対しては少なくともフリーに構成されているため、通常の稼動時は、加圧ローラ8はウェブ13の送り方向に対してカウンタ方向に回転している。
【0038】
そのため、ウェブ13は加圧ローラ8と圧接ローラ11の接点と巻取りローラ10の間で適度な張りを維持できるため、安定したウェブ13の搬送が実現できるようになっている。しかし、どのような定着装置1にも用紙詰まりの発生の可能性はあり、紙処理性向上の理由から、ユーザーの定着ノブ2による定着ローラ5の回転方向を画像形成方向に対して反対方向にすることによって加圧ローラ8も反対方向に回転し、圧接ローラ11と加圧ローラ8との接点と巻取りローラ10の間で形成した適度な張りが無くなり、逆に、加圧ローラ8の回転によって送出ローラ12から余分なウェブ13を引っ張り出してしまい、ウェブ13の弛みを発生してしまう可能性がある。
【0039】
本例の構成では、ジャム処理後の復帰動作でウェブ巻取り動作を行い上記ウェブ弛みの発生を防止している。しかしながら、ジャム処理以外で加圧ローラ8を反対方向に回されてしまう場合、上記復帰動作は行われないので上記ウェブ弛みをなくすことができない。
しかし本例の構成では、ジャム処理以外の想定外な場合では定着ノブ2ジョイント部材4に装着されていないので、定着ローラ5および加圧ローラ8が回される心配がない。従って、定着ローラ5および加圧ローラ8が回されることによって発生するウェブ13の弛みや、更にはウェブ13の弛みによって生じるウェブ搬送性不良やクリーニング不良を防止することができる。ジャム処理後は復帰動作でウェブ巻取りを行うことによって、背景技術で述べたようなウェブ13を固定手段等で固定するなどの複雑でコストのかかる機構無しで、ウェブ弛みを防止することができる。
【0040】
図8は画像形成装置14の外観斜視図であり、画像形成装置14の前カバー15を開いた状態を図示し、図9は前カバー15の内側を拡大して示している。前カバー15はヒンジ17により画像形成装置本体部14aに対して両開きで開閉される構造となっている。図8、図9に示すように、画像形成装置14の前カバー15の扉の内側には、上部が開口している筒状の定着ノブ保持部16が設置され、定着ノブ2が装着されている。
【0041】
画像形成装置14の稼動中に定着装置1で用紙ジャムが発生した場合は、稼動を停止し、図10に示したように両開きの前カバー15を開き、定着装置1を載せた引き出しユニット17を引き出す。引き出しユニット17を引き出すことにより定着装置1も一緒に引き出されるので、詰まっている用紙の引き出しが比較的容易となる。
【0042】
引き出しユニット17と共に引き出された定着装置1においても、どうしても用紙除去が困難な場合は、前カバー15を開くことにより露出している扉内側にある定着ノブ保持部16から定着ノブ2を取り出し、該定着ノブ2を定着装置1のジョイント部4へ装着して定着ローラ5および加圧ローラ8を回してジャム処理を行う。
【0043】
かかる構成において、定着ノブ2は画像形成装置14の本体内部の定着ノブ保持部16に備えられているので紛失する可能性も低く、ジャム処理時の必要なときに直ぐに取り出すことができる。定着装置1内でジャムが発生し、ジャム処理を行う場合に最初に行う動作である、画像形成装置14の前カバー15を開けば、この前カバー15の内側に定着ノブ2が保持された構成なので、定着ジャム処理時に直ぐに定着ノブ2を取り出し、ジャム処理を行うことができる。
【0044】
図12は本実施例で示した定着装置1を設けた画像形成装置14の概略構成を示している。図12において、給紙ユニット31によって、用紙が転写ユニット34へ搬送される。
一方、書き込みユニット32におけるスキャナによる信号もしくはプリンタからの信号に対応した光によって、作像ユニット33内の感光体が露光される。感光体上に露光されることにより担持された潜像は作像ユニット33により可視像化されてから転写ベルトに転写され、転写ユニット34において、搬送されてきた用紙に未定着のトナー像として転写される。この未定着トナー像は定着装置1で定着される。また、両面画像形成モードでは、片面に画像が形成された用紙が両面ユニット36で反転され、再び転写ユニット34へ搬送されて、他の片面(裏面)に未定着のトナー像として画像が転写され、定着装置1で定着されたのち、排紙トレイ37に排出される。
【0045】
上記構成によって、コスト高を招く複雑なメカ構成を必要とせず、ジャム処理時にのみ定着ノブの使用を可能とし、ジャム処理動作後の復帰動作でウェブ巻取り動作を行うことによってウェブ弛みを防止し、ウェブの搬送性不良やクリーニング不良を防止できる定着装置および画像形成装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 定着装置
2 定着ノブ
2a 凸形状
3 定着前カバー
3a 開口
4 ジョイント部材
4a 本体部
4a1 凹形状
4b 締結部
4b1 ねじ孔
5 定着ローラ
5a 軸部
6 定着ベルト
7 加熱ローラ
8 加圧ローラ
10 巻取りローラ
11 圧接ローラ
12 送出ローラ
13 ウェブ
14 画像形成装置
14a 画像形成装置本体部
15 前カバー
16 定着ノブ保持部
17 引き出しユニット
20 ねじ
31 給紙ユニット
32 書き込みユニット
33 作像ユニット
34 転写ユニット
36 両面ユニット
37 排紙トレイ
d、D 外径
Δ 隙間
NP ニップ部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0047】
【特許文献1】特開2004−333683号公報
【特許文献2】特開2008−40053号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱される定着回転体と、前記定着回転体に圧接する加圧回転体とを有し、前記定着回転体と前記加圧回転体との圧接部に未定着トナー像を保持した面が前記定着回転体に接触する向きで記録媒体が接しつつ搬送される過程で、該記録媒体上に担持された未定着トナー像を記録媒体上に定着させる定着装置において、
前記定着装置内に備えた定着回転体もしくは加圧回転体を手動により回転させる定着ノブを接続用のジョイント部材に着脱可能であり、前記定着ノブを前記ジョイント部材に装着した状態のもとで前記定着ノブを手動で回転することにより前記定着回転体および前記加圧回転体の一方又は両方を回転させることができることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
請求項1記載の定着装置において、
前記ジョイント部材は前記定着回転体又は前記加圧回転体と連結されていて、前記定着ノブとの連結部は凹形状であり、前記定着ノブにおける前記ジョイント部との連結部は前記定着ノブにおける前記凹形状とのみ嵌合できる凸形状であることを特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項2に記載の定着装置において、
前記ジョイント部材は伝熱性の低い材料からなり、定着カバーの開口に中心を合わせてその先端部が該開口内に位置していて、前記開口の内径部と前記ジョイント部の外径部との隙間が4mm以下であることを特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の定着装置において、
前記定着回転体上、または加圧回転体上に接触する清掃部材を備えていることを特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の定着装置を備えた画像形成装置において、
画像形成装置内部に、前記定着ノブの保持部を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像形成装置において、
前記定着ノブの保持部は、当該画像形成装置の前カバーの内側に設けられていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−185282(P2012−185282A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47590(P2011−47590)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】