説明

定着装置及び画像形成装置

【課題】省スペースかつ高効率な誘導加熱定着装置であり高応答に消磁機能を発揮させる定着装置及び同装置を備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】回転可能な非磁性発熱層301を有する定着回転体3と、磁束を発生させ、発熱層を誘導加熱する励磁コイル2を有し、該発熱層の厚みは励磁コイル2から発生される磁束J1が定着回転体を透過するように浸透深さ以下に設定され、定着回転体の内部で励磁コイルと対向する位置に配され、励磁磁束を打ち消す反発磁束J2を発生させる磁束調整機構5を有し、磁束調整機構5を透過する磁束J1の透過を規制する磁路形成部材6を整磁合金で形成すると共に、該磁路形成部材の発熱層に対し反対側に消磁部材7を配する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は定着装置及び同装置を備えた画像形成装置に関し、詳細には、発熱源が電磁誘導加熱方式を用いる定着装置及び同装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ、印刷機、これらの複合装置などの画像形成装置においては、潜像担持体に担持したトナー像などの可視像を記録シートなどの記録材に静電転写することで画像出力を得る。記録材上のトナー像は、定着装置を通過する際に熱と圧力とによる融解、浸透作用によって記録材上に定着させる。このような、定着装置に採用される加熱方式には、発熱源としてハロゲンランプなどを用いた加熱ローラとこれに対向当接する加圧ローラを備えて定着ニップ部を構成可能な熱ローラ定着方式、ローラ自体よりも熱容量が小さくてすむフィルムを加熱部材として用いたフィルム定着方式があるが、近年、加熱方式に電磁誘導加熱方式を用いた定着方式(例えば、特許文献1参照)が注目されている。
【0003】
特許文献1に開示されている電磁誘導加熱方式を用いた定着方式においては、定着ローラ(加熱ローラ)の内部にボビンに巻いた誘導加熱コイルを設け、誘導加熱コイルに電流を印加することにより定着ローラに渦電流を発生させ、それによって定着ローラを発熱させる構成が備えられている。この構成においては、熱ローラ定着方式のような余熱を必要とせず、瞬時に所定の温度まで立ち上げることができるという利点がある。
【0004】
また電磁誘導加熱方式を用いた定着方式に関しては、高周波電源により高周波電圧が印加される誘導加熱コイルからなる高周波誘導加熱装置と、加熱回転体に設けられた磁性を有する発熱層とを有し、発熱層は、キュリー温度(物質が磁性を失う境界となる温度)が概ね定着温度に設定され、高周波誘導加熱装置に高周波電源により高周波電圧が印加されたとき発熱する定着装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
この装置では、高周波誘導加熱装置により接着剤中に含有された強磁性体がキュリー温度に達する迄瞬時に昇温し、キュリー温度に達すると磁性を失うことにより、昇温せず、一定の温度を保持する。この強磁性体のキュリー温度は概ね定着温度に設定されているので、強磁性体は概ね定着温度に保持される。したがって、定着装置として要求される加熱回転体表面の高離型性、耐熱性等を損なうことなく、また複雑な制御装置を必要とすることなく、加熱回転体の立ち上がり時間の短縮及び高精度の温度制御を行なうことができる。
【0006】
このような、整磁合金を用いて誘導加熱量を自己制御する従来の定着装置としては、例えば図10(a)に示すように、定着スリーブ(加熱ローラ)200の内部に整磁合金層201を接近配備し、これをスリーブ外側のフェライトコア300cに支持された誘導コイル(励磁コイル)202と内側の消磁部材(消磁層)203の間に配備し、整磁合金201がキュリー温度(図12には整磁合金のキュリー温度特性を示す)Tc以上になったとき、図10(b)に示すような消磁部材203による反発磁束j2が誘導磁束j1を打ち消す形で自己温度制御機能を発揮させる方式がとられている。なお、図11には、記録材Pに圧接(圧力付加状態で接する状態)する定着スリーブ(加熱ローラ)200と、これに内接(内面に接する状態)する整磁合金層201、消磁部材(消磁層)203の断面構成説明図を示す。
【0007】
ここで整磁合金層201は、図12に示すように、たとえば、キュリー温度Tc近傍で透磁率が大きく落ち込むため、浸透深さが大きくなることより、消磁部材203にまで磁束が透過し、消磁部材203から生じる反発磁束j2によって自己温度制御機能が発揮され、定着スリーブ200のキュリー温度Tc以上への加熱を抑制できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、整磁合金層201を用いた自己温度制御方式の定着装置においては、整磁合金層201がキュリー温度Tcになるまでの感温遅れの問題があった。特に図10に示すような構成で定着スリーブ200と整磁層201を摺接(互いの当接面が互いに摺動して接する状態、以下同様)させても定着スリーブ200と整磁層201の間には、空気を介した接触熱抵抗が存在するため感温が遅れることがあった。またこれら定着スリーブと整磁層の摺動抵抗を減らすために、2mm以上の空気GAPを形成した場合には遅れがより顕著であった。
【0009】
更に、図13に示すように、スリーブの軸方向(スラスト方向)の温度分布を形成するにあたり、小サイズ(図にはB5幅を両端に●の実線で示した)が通紙された場合には、非通紙部はキュリー温度までは上昇してしまうため、理想的に小サイズ通紙時において軸方向温度を一定にすることは困難であった。したがって、キュリー温度まで上昇した定着表面温度が放熱により通紙設定温度(図中、◆印の連結線が示す温度)まで低下するよう待ち時間を設ける必要があった。例えば通紙目標温度が160℃の状態でB5通紙を行った際には、220℃のキュリー温度材を用いた場合に、図13に示すような温度分布(図中、黒塗り△印の連結線が示す温度)となりキュリー温度から通紙目標温度に非通紙部の温度が低下するまでに定着装置を回転させ、放熱が完了するまでの待ち時間を発生させていた。
【0010】
一方、図14に示すように、定着スリーブ200に対設(対向して設けられた)されたフェライトコア300cに支持された励磁コイル(誘導コイル)202上には同励磁コイルからの誘導磁束をキャンセルする消磁コイル204を設け、更に、スリーブ軸方向に長い励磁コイル(メインコイル)202の両端側に小幅の消磁コイル204を一対配備した発熱抑制機能を有する定着装置が公開される。なお、ここで、図15には、定着スリーブ(加熱ローラ)200とその内部に充填されたスポンジローラ207の断面構成説明図を示す。ここでは図16に示すように、消磁コイル204の開閉スイッチ205をオープン(図示状態)よりショートに切換えることにより、インバータ206の駆動時に誘導加熱している加熱幅を制御して、問題を回避する技術であり、例えば、特許文献3に開示される。
【0011】
更に、図17(a),(b)に示すように、励磁コイル202の上に軸方向幅の異なる消磁コイル204a、204b、204cを軸方向に順次重ねて配置し(図18(a),(b)参照)、通紙幅(ハガキ、B5,A4,B4,A3を実線で示す)Tに応じて選択した消磁コイル204の回路の不図示のスイッチをオープンよりショートに切換え、選択的に軸方向の加熱幅を切換えての温度制御を可能とした技術が公開され、例えば、特許文献4に開示される。
【0012】
しかしながら、この従来技術では、フェライトコア300cに支持された励磁コイル202上に消磁コイル204a〜204cを複数重ねて配するため、コイルユニットの大型化が問題であった。更に、励磁コイル202上に消磁コイル204を配するため、コアの配置制約が多く、磁束の閉じ込めを困難にしていたため発熱効率の悪化をもたらしていた。
また整磁合金を用いた自己温度制御機能がないため安全性にリスクがあった。
【0013】
本発明は上述のような課題を解決し、省スペースかつ高効率な誘導加熱定着装置であり高応答に消磁機能を発揮させる定着装置及び同装置を備えた画像形成装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は前記課題を達成するため以下の構成とした。
第1の発明である定着装置は、回転可能な非磁性発熱層を有する定着回転体と、磁束を発生させ、該磁束によって前記発熱層を誘導加熱する励磁コイルを有し、該発熱層の厚みは励磁コイルから発生される磁束が定着回転体を透過するように浸透深さ以下に設定され、前記定着回転体の内部であって前記励磁コイルと対向する位置に配され、励磁磁束を打ち消す反発磁束を発生させる磁束調整機構を有し、該磁束調整機構を透過する磁束の透過を規制する磁路形成部材を整磁合金で形成すると共に、該磁路形成部材の前記発熱層に対し反対側に消磁部材を配することを特徴とする。
【0015】
第2の発明である定着装置は、請求項1記載の定着装置において、前記磁束調整機構は磁路形成部材の前記定着回転体と対向する側に消磁量を切り替え可能な金属からなる導電材料を配したことを特徴とする。
【0016】
第3の発明である定着装置は、請求項2記載の定着装置において、前記消磁量は前記導電材料が有する消磁回路のスイッチの導通/非導通により切り替えられ、単位時間当たりの導通比率で制御されることを特徴とする。
【0017】
第4の発明である定着装置は、請求項3に記載の定着装置において、前記消磁回路は複数配置され、用紙、画像情報、状態により導通/非道通を切り替えられることを特徴とする。
【0018】
第5の発明である定着装置は、請求項3又は4に記載の定着装置において、前記消磁回路は定着回転体の温度情報により制御されることを特徴とする。
【0019】
第6の発明である定着装置は、請求項3〜5のいずれか1つに記載の定着装置において、前記消磁回路は、発熱層を含む定着回転体形状に倣うように形成され、前記定着回転体に非接触で配されることを特徴とする。
【0020】
第7の発明である定着装置は、請求項2〜6のいずれか1つに記載の定着装置において、前記導電材料は巻きまわされたコイルであることを特徴とする。
【0021】
第8の発明である定着装置は、請求項3〜7のいずれか1つに記載の定着装置において、前記消磁回路は電源を有さず、電磁誘導により反発磁束が発生されることを特徴とする。
【0022】
第9の発明である定着装置は、請求項1〜8のいずれか1つに記載の定着装置において、前記磁路形成部材は少なくとも一部分を定着回転体に接触して配されることを特徴とする。
【0023】
第10の発明である定着装置は、請求項1〜9のいずれか1つに記載の定着装置において、前記消磁部材は、前記磁路形成部材に非接触で配されることを特徴とする。
【0024】
第11の発明である定着装置は、請求項1〜10のいずれか1つに記載の定着装置において、前記定着回転体が、定着スリーブ、定着ローラ、定着発熱ベルトのいずれかである発熱回転体であり、該発熱回転体を押圧して当接する加圧回転体を備え、前記定着回転体と前記加圧回転体の間を通過する記録媒体上に画像を定着させることを特徴とする。
【0025】
第12の発明である定着装置は、請求項1〜11のいずれか1つに記載の定着装置において、前記発熱回転体が加熱ローラであり、該発熱回転体に掛け回した定着ベルトと、前記発熱回転体と共に該定着ベルトを張架する定着回転体を備えることを特徴とする。
【0026】
第13の発明である画像形成装置は、請求項1〜12のいずれか1つの定着装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、定着回転体の内部であって前記励磁コイルと対向する位置に、磁束調整機構の磁路形成部材や消磁部材を配置、制御可能とすることで、定着回転体の軸方向の発熱量分布と応答速度を自在に調整可能とし、かつ高速なウォーミングアップや、温度オーバーシュートの抑制を実現できる。
更に、整磁合金を用いた温度制御では感温遅れが生じていた問題に対し、消磁回路による高応答な消磁により解決でき、しかも、消磁回路は整磁機能よりも励磁コイルに近い側に配されるため、その機能が抑制されることがないというメリットがある。
更に、また、消磁回路のみでは抑制できなかった軸方向中央部の加熱暴走過昇温を整磁による自己温度制御で抑制でき、これにより安全性が保たれる。
更に、また、消磁回路と整磁機能を定着スリーブ内に配することができるため省スペースな定着装置を提供できるものである。
また、本発明によれば、請求項1ないし12に記載の定着装置の効果を同様に得られる画像形成装置を提供できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る定着装置及び同装置を備えた画像形成装置としての複写機の全体構成を示す側面図である。
【図2】図1の定着装置で用いる定着スリーブと加圧ローラの拡大断面図である。
【図3】図1の定着装置で用いる定着スリーブの部分拡大断面模式説明図である。
【図4】図1の定着装置で用いる定着スリーブの磁束説明図で、(a)はキュリー温度未満の場合、(b)はキュリー温度以上の場合の磁束説明図である。
【図5】図1の定着装置で用いる定着スリーブのキュリー温度以上で、消磁コイル層(磁束調整機構)の磁束スイッチ短絡の場合の磁束説明図である。
【図6】図1の定着装置で用いる定着スリーブ内の3段重ね消磁部材を示し、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)用紙幅説明図である。
【図7】本発明の他の実施形態での定着スリーブ内の板状消磁部材を概略的に示し、(a)はスイッチオープン時の斜視図、(b)はスイッチショート時の斜視図、(c)は要部断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態での定着スリーブ内の直列配備消磁部材を概略的に示し、(a)平面図、(b)は側面図、(c)用紙幅説明図である。
【図9】本発明の他の実施形態としての定着装置の概略全体側面図である。
【図10】従来の定着装置で用いる定着スリーブの磁束説明図で、(a)はキュリー温度未満の場合、(b)はキュリー温度以上の場合の磁束説明図である。
【図11】従来の定着装置で用いる定着スリーブの部分拡大断面模式説明図である。
【図12】整磁合金のキュリー温度特性説明線図である。
【図13】従来の定着装置で用いる定着スリーブの軸方向の温度分布説明線図である。
【図14】従来の他の定着装置で用いる定着スリーブと加圧ローラの拡大断面図である。
【図15】従来の他の定着装置で用いる定着スリーブの部分拡大断面模式説明図である。
【図16】従来の定着装置で用いる消磁コイル層の拡大模式説明図である。
【図17】従来の他の定着装置で用いる定着スリーブ及び励磁コイルの磁束説明図で、(a)は消磁コイル作動の場合、(b)は消磁コイル非作動の場合である。
【図18】従来の他の定着装置で用いる消磁コイル層を示し、(a)は拡大模式説明図、(b)は記録材幅説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明を適用した定着装置及び同装置を備えた画像形成装置を説明する。
ここで「第1実施形態」としての定着装置が適用される画像形成装置の一実施例を示す図である。なお、本発明は、図1に示したタイプの装置には限定されず、また単一色画像を作成するものだけでなく、カラー画像を形成するものをも対象とする。
図1の画像形成装置Mはその装置本体400の内部中央に画像形成部410が配置され、この画像形成部410の下方に給紙部420が配置されている。画像形成部410の側方には画像形成された記録媒体(以下、記録材と言う)が排紙収納される排紙収納部430が、上方には原稿を読み取る読み取り部440が配設されている。
【0030】
画像形成部410では、装置本体400がその内部中央に回転体である電子写真感光体(以下、単に感光体という)11を回転自在に支持する。感光体11は像担持体の一例であってドラム形状を有し、この感光体11の周りには、図中に矢印で示す回転方向に順次、帯電ローラからなる帯電装置12、露光手段13の一部を構成するミラー131、現像ローラ14aを備えた現像手段14、転写紙、記録紙等のシート状の記録材Pに現像された画像(トナー像)を転写する転写装置18、感光体11の周面に摺接するブレード16aを具備したクリーニング手段16等が配置してある。
【0031】
露光手段13は感光体11の上方に配備され、原稿を読み取る読み取り部440よりの露光光Lbを帯電装置12と現像ローラ14aとの間に位置する照射位置を成す露光部150に照射する。
読み取り部440はコンタクトガラス20上に手差しや自動原稿送り部(ADF)21により載置された不図示の原稿からの反射光像を露光光学系13を介して、感光体11の部位である露光部150に導くよう構成されている。
なお、露光光学系13は露光光学系13の一部のミラー131を介し露光光Lbを感光体11の主走査方向(紙面垂直方向)に走査し、露光部150を露光照射するようになっている。
【0032】
転写装置18が感光体11の下面と対向する部位に配備され、この部位は記録材Pにトナー像が転写される公知の転写部17となっており、この転写部17より給紙方向上流側(紙面右側)には一対のレジストローラ19が設けてある。レジストローラ19の下方に給紙部420が設けられる。給紙部420には複数の給紙トレイ10が設けられ、各給紙トレイ10にはサイズや紙質の異なる転写紙等のシート状の記録材Pがそれぞれ選択給紙可能に収納される。
給紙部420の記録材Pは給紙コロ群110のコロによって送り出され、搬送ガイドおよび搬送ローラ群120に案内されながら一対のレジストローラ19に搬送されてくるようになっている。
【0033】
図1の画像形成部410における転写部17より給紙方向下流の位置には、定着装置20が配置してあり、定着装置20より給紙方向下流側には両面記録実行時に転写材Pの表裏を反転させ記録済みの記録面を下向きにして転写部17に再給紙する自動両面装置39が配置してある。
本実施形態における画像形成は、概ね次のようにして行なう。まず、装置中央の画像形成部410側で感光体11が回転を始め、回転中に感光体11が暗中において帯電装置12により均一に帯電され、読み取り部440より作成すべき画像に対応する露光光Lbが露光部150に照射および走査されることで、作成すべき画像に対応した静電潜像(以後潜像と記す)が感光体11上に形成される。この潜像は感光体11の回転により現像装置14に近接したとき、ここでトナーにより可視像(顕像)化されて、感光体11に担持されたトナー像となる。一方、装置下部の給紙部420では、何れかの給紙トレイ10の給紙コロ群110により、複数の給紙トレイ10のうちいずれか一つから記録材Pを呼び出す。例えば、図1中に破線で示すような所定の搬送経路を経て一対のレジストローラ19の位置まで搬送し、ここで一旦停止させ、感光体11上のトナー像が転写部17で記録材Pの所定位置に対向するようなタイミングで送り出される。すなわち、好適なタイミングが到来すると、レジストローラ19の位置で停止していた記録材Pをレジストローラ19で送り出し、転写部17に向けて搬送する。
【0034】
感光体11上のトナー像とこのトナー像が転写されるべき記録材Pの所定位置とは、その位置が転写部17で合致し、転写部材18による電界により、トナー像は記録材P上に吸引され転写される。こうして感光体11及びその周りの画像形成部410でトナー像を転写され担持した記録材Pは、後述する定着装置20に向けて送り出される。そして、記録材P上のトナー像が定着装置20を通過する間に加熱、加圧されて記録材Pに定着された後、記録材Pは排紙収納部430に排紙される。
また、記録材Pの両面に画像形成をする場合、切換え可能な分岐爪38により自動両面装置39に排紙された記録材Pが、自動両面装置39でスイッチバック反転され、レジストローラ19の手前の搬送経路に搬送される。
【0035】
なお、転写部17で転写されずに感光体11上に残った残留トナーは、感光体11の回転と共にクリーニング装置16に至り、このクリーニング装置16を通過する間に感光体11上から清掃・除去され、次の画像形成に移行可能となる。
定着装置20は、詳細は後述するが、一対の回転体である定着スリーブ3と加圧ローラ4とを採用した定着方式とされている。この定着装置20には定着スリーブ3を加熱するための加熱装置(熱源)Hを備え、定着スリーブ3に加圧ローラ4が当接、押圧している。
図2は、図1に示した画像形成装置Mで用い得るローラ方式の定着装置20の概念的構成を示す断面図である。図2において、符号2は磁束発生部、符号3は定着回転体(発熱回転体)である定着スリーブ、4は加圧回転体である加圧ローラ、Pは記録材、Tは記録材P上に載ったトナーである。
【0036】
ここで、磁束発生部2は磁束を発生させ、該磁束によって定着スリーブ3の発熱層301を誘導加熱する扁平したループ束状の励磁コイルとして形成され、このコイルの長手方向の長さは定着スリーブ3の中心線の方向(以後、単に軸方向と記す)の長さに近い長さ(図6参照)となるよう形成される。ここでの磁束発生部2はコイルを誘導加熱回路であるインバータ(図示せず)により高周波駆動することによって高周波磁界を発生させる構成を採る。この磁界により、主に金属性の定着スリーブ3に渦電流tiが流れるようにしてローラ温度(定着スリーブ温度)を上昇させるという加熱装置(熱源)Hを備えるものである。
【0037】
図2中の励磁コイル2は足コア103、センターコア102、アーチコア101からなるフェライトコア1で覆われ、この励磁コイル2はアーチコア101、定着スリーブ3の間に位置している。
図3は、筒状の定着スリーブ3、および定着スリーブ3の内部の空域に配備された部材の一部を拡大して取り出して示す断面模式図である。ここで、定着スリーブ3は、非磁性の発熱層301を含み直径が例えば30mmである。
この定着スリーブ3の内部であって励磁コイル2と対向する位置には、励磁コイル2からの励磁磁束J1を打ち消す反発磁束J2を発生させる消磁部材が複数配備される。さらに、図2に示すように、定着スリーブ3の内部であって、下方の加圧ローラ4と対向する下部側には肉厚長板状のニップ部材9と、そのニップ部材9を支持し装置本体400側に結合される剛性バー状の支持部材8が配備される。
【0038】
ニップ部材9はその下面のうち左右側端縁がアール状部901(所定曲率半径でエッジを削り加工した状態)を成し、中央部902がほぼ平坦部に形成される。このため、ニップ部材9には定着スリーブ3が加圧ローラ4と圧接(加圧力を受けた状態で接して状態とする)しつつ、周方向に摺動(摺れた状態で移動する動作とする)する。このように定着スリーブ3は加圧ローラ4により押圧力と周方向の回転力を受けることで、ニップ部材9の下面に対し、該下面に沿った形状に曲率を変化させつつ摺接(摺れた状態で互いに当接する状態とする)し、その際に加圧ローラ4と協働(互いの機能が重なり得られる働きとする)して挟持(挟んで保持した状態とする)する記録材P上のトナーT(図2参照)を溶融、加圧して定着処理する。
【0039】
定着スリーブ3は、図3中に矢印で示すように、記録材Pの画像面側に向かい、基材層300、発熱層301、酸化防止層302、弾性層303、そして表層である離型層304が順次重ねて配置されるよう構成してある。ここで、発熱層301の厚みは励磁コイル2から発生される磁束J1(図2参照)が定着スリーブ3を透過するように浸透深さ以下となる値に設定される。
ここで、基材層300にはステンレス薄板鋼板(例えばSUS304、t=50μm)、酸化防止層302にはニッケルストライクメッキ(例えば、厚さ1μm以下)、発熱層301にはCuメッキ(例えば、厚さ15μm)、弾性層303にはシリコーンゴム(例えば、厚さ150μm)、そして離型層304にはPFA(厚さ30μm)が用いられる。すなわち定着スリーブ3の厚みはたとえば200〜250μmであるが、ただし、これらの数値はすべて一例である。
【0040】
また、定着スリーブ3側がニップ部材9との対向位置で凹形状となり、ここでニップを形成しやすくするようニップ部材9は形成されるため、記録材Pの分離性が優れたものとし得る。なお、加圧ローラ4の押圧により変形するのは、図示の第1実施例では、定着スリーブ3である。
このような定着スリーブ3の内部には励磁コイル2と対向する位置に配置され、励磁磁束J1を打ち消す反発磁束J2を発生させる磁束調整機構としての消磁コイル層(第一消磁層)5と、磁路形成部材6及び消磁部材(第二消磁層)7が配備される。
ここで、図2に示すように、消磁コイル層5は該消磁コイル層5を透過する磁束J1の透過を規制する磁路形成部材6に組み込まれ、同磁路形成部材6が整磁合金で形成される。しかも、磁路形成部材6には、定着スリーブ3の発熱層301とは反対側、すなわち、定着スリーブ3の内部中央側に消磁部材(第二消磁層)7が接近して配備される。
【0041】
消磁コイル層5は、例えばアルミニウムまたはその合金、ないしはリッツ線を巻きまわしたコイル消磁回路として形成され、回路を機能させる際にショートされるスイッチ61に接続される。消磁コイル層5は定着スリーブ3の内壁面側から、例えば、0.5mm以上の間隙を有するように配されることが望ましい。空隙を介して配されることにより、定着スリーブ3としての熱容量を低減させることができるためである。なお、スイッチ61はリレースイッチ、半導体スイッチを採用できる。
【0042】
磁路形成部材(整磁層)6には公知かつ適宜の整磁合金(例えば厚さ300μm)を用いる。例えば体積抵抗8×10^(−7)Ω・m、透磁率=1000の整磁合金を用いた際には、励磁コイル2の交流電流が20kHz時、励磁磁束J1の浸透深さは100μmとなるため300μmは、磁路形成部材6がキュリー温度Tc以下で磁束を透過させない厚みとして十分である。磁路形成部材6が感温してキュリー温度以上となった場合にはμ=1となり浸透深さは3mmとなるため、磁路形成部材6の背面(スリーブの中心側)にある消磁部材(第二消磁層)7に磁束が透過する。消磁部材(第二消磁層)7としては反発磁束J3を発生させるため低抵抗な材料が好ましく例えばアルミや銅、銀で形成されることが望ましい。
【0043】
磁路形成部材(整磁層)6は、キュリー温度Tcが例えば100〜300℃になるように形成された磁性体(例えば鉄、ニッケルを含む整磁合金材料)からなり、図6に示すように、軸方向に長く、湾曲主部601とその中央より凸部602を突出する断面形状をなし、この凸部602が定着スリーブ3の温度を感温するように配される。即ち、図2に示すように、磁路形成部材6の凸部602は消磁コイル層(第一消磁層)5がそれに巻きまわされるような形状をなすので、凸部602を定着スリーブ3の内周面に接近して配することで感温速度が上昇するメリットがある。凸部602にはスリーブとの摺動抵抗を減らすために、低摩擦係数な材質例えはフッ素樹脂などを用いることが望ましい。一方、凸部602を0.3mm程度の空気GAPを介して配することで、低熱容量に保ちつつ、空気を介して感温させることも可能となる。
【0044】
ここで、図6(a)〜(c)参照)に示すように、磁路形成部材6はその長手方向において湾曲主部601が一様に形成され、それより突き出す凸部602のうち、消磁コイル層5(第一消磁層)が存在しない中央部と、消磁コイル層5がループ状に配された左右側部を有し、両者の境にコイル収容溝uが形成される。更に、図6(b)に示すように、左右側部には3層に軸方向の長さが異なる消磁コイル層501、502、503が装着される。
更に、3層の消磁コイル501〜503は左右対称に配される。それぞれにおいて、軸方向両端側が同位置に配され、中央側が相互に離れた状態で配され、相互に部分的に重なり合っている。なお、凸部602には消磁コイル501〜503の軸方向中央側端が収容されるコイル収容溝uが形成される。
【0045】
ここで消磁コイル501〜503はそれぞれが磁路形成部材6に重ねて装着され、コイル消磁回路として形成され、同回路を機能させる際にショートされるスイッチ611、612、613に接続される。
これにより、スイッチ611〜613が選択的にショートされることで、その消磁コイルが軸方向でカバーする非通紙部e2に相当する左右の部位に消磁磁束J2を発することができ、それぞれが対応する用紙サイズ(図6(c)の通紙部e1参照)に応じて、定着スリーブ3のスラスト方向に対する、より精度の高い発熱幅制御が可能となる。
更に、消磁部材(第二消磁層)7は、図6に示すように、軸方向に長く形成され、低熱容量化のため磁路形成部材6と離れて配されることが望ましい。これにより消磁部材7の温度を低く保つことが出来る。
【0046】
更に、定着スリーブ3での熱損失を最小化するためには、磁路形成部材6は高抵抗かつ高透磁率であって100〜300℃の所望の温度でキュリー温度Tcを持つものであり、非誘導発熱性であることが望ましい。これにより発熱量を定着スリーブに集中できる。例えは、キュリー温度100〜300℃のFe−Ni合金を樹脂、接着剤中に分散させることで達成される。
本実施例では、磁路形成部材(整磁層)6と定着スリーブ3内部の消磁部材(第二消磁層)7の存在において、消磁コイル層5(第一消磁層)が存在しないとすると、誘導磁束J1により定着スリーブ3が発熱し、その熱を磁路形成部材6を介して受けた消磁部材7が加熱され、キュリー温度100〜300以上になると、消磁部材7が反発磁束J3を発生させ、励磁コイル2からの磁束J1を抑え、発熱層等の過熱が防止される(図4(b)参照)。しかし、この基本構成では感温遅れが発生し、しかも、記録材Pを連続通紙した際の非通紙部過昇温はキュリー温度Tcまでは上昇してしまう。
【0047】
そこで、図4(a)に示す定着スリーブ3の断面図において、太目の実線の矢印は励磁コイル2からの誘導磁束J1、細い実線の矢印は渦電流tiを示し、消磁コイル層5(オープン状態)に囲まれた磁路形成部材6を構成する整磁合金層の温度Tがキュリー温度Tc未満の状態とする。この場合、磁路形成部材6を構成する整磁合金が磁性体のままであり、励磁コイル2からの誘導磁束J1が磁路形成部材6を非透過となっている状態であるとする。すなわち、定着スリーブ3の温度Tがキュリー温度Tc未満で磁路形成部材(整磁層)6が磁束J1を透過させず、誘導磁束J1が消磁部材(第二消磁層)7に届いていない状態を示している。このような、「消磁コイル層5オープン、キュリー温度未満」、の場合には、このとき誘導磁束J1による発熱は抑制させず90%程度の効率で発熱が進む。
【0048】
一方、図4(b)に示す定着スリーブ3の断面図において、定着スリーブ3や磁路形成部材(整磁層)6がキュリー温度Tc以上となり誘導磁束J1が磁路形成部材6を透過して消磁部材(第二消磁層)7に届く状態に達するとする。ここで、図中点線の矢印は消磁部材7が励磁磁束J1を打ち消すよう発する反発磁束J3である。すなわち、ここでは「消磁コイル層5オープン、キュリー温度以上」の場合であり、小サイズ通紙等で非通紙部e2が過昇温し、磁路形成部材6を構成する整磁合金層の温度Tがキュリー温度Tcより高くなると、整磁合金の磁性が失われて非磁性体となり、誘導磁束J1が消磁部材7に届き、消磁部材7が励磁磁束J1を打ち消す反発磁束J3を発する。
【0049】
このように、磁路形成部材6はキュリー温度Tcに達するまでは昇温し、同温度に達すると磁性を失い、したがって消磁部材7の反発磁束J3の機能で昇温しなくなり、一定の温度を保持する。したがって、スイッチ611〜613を制御しない場合にも、磁路形成部材(整磁層)6をなす素材のキュリー温度Tcがこの種の定着装置において現れる温度である100〜300℃になるように形成した磁性体で構成しておけば、定着スリーブ3の発熱層が異常に過熱することが無くなり、概ね、キュリー温度に保持できるようになり、安全性が保たれる。
【0050】
一方、図5に示す定着スリーブ3の断面図において、定着スリーブ3や磁路形成部材(整磁層)6がキュリー温度Tc以上となり、スイッチ61が短絡(ショート)している場合、即ち、「消磁コイル層5ショート、キュリー温度以上」の場合には、消磁コイル層5(第一消磁層)の消磁機能が発現し、誘導磁束J1に対する逆磁束J2が発生し、発熱層を透過する実効磁束が低下する。なお、消磁コイル層5(第一消磁層)を機能させる場合には磁路形成部材6がキュリー温度Tc以上になっていなくても、即ち、消磁部材7が機能できない温度域でも、消磁機能を発現でき、軸方向の温度偏差の発生を解消できる。
【0051】
また定着スリーブ3内の消磁コイル層5(第一消磁層)は、リッツ線や磁路形成部材(整磁層)6よりも体積抵抗が低い率の材料から構成することが好ましい。これにより、消磁コイル層5による消磁性能が向上する。
このような図1の画像形成装置Mの定着装置20では、定着スリーブ3の軸方向に複数の消磁コイル501〜503(図6(a)参照)を配し、定着装置に達する記録材Pの幅情報に応じて、スイッチ611〜613の選択的な開閉制御をする。これにより、定着装置に達する記録材Pの非通紙部e2の過度の昇温を抑制し、精度の高い発熱幅制御が可能である。
【0052】
例えば、ハガキ定着時(図6(c)参照)にはスイッチ611のみショートして消磁コイル501を駆動し、B5転写材定着時にはスイッチ612のみショートして消磁コイル502を駆動し、A4転写材定着時にはスイッチ613のみショートして消磁コイル消磁コイル503を駆動し、B4転写材定着時にはスイッチ611〜613をオープンして、後述のような消磁部材(第二消磁層)7によるキュリー温度Tcでの温度制御がなされ、これら給紙情報に応じたスイッチ611〜613の選択的切換え制御により、非通紙部e2の過昇温を抑えて耐久性の良い、精度の高い発熱幅制御が成される。
【0053】
次に、本発明の「第2の実施形態」を説明する。
上述のように第1の実施形態で、定着装置20は定着スリーブ3の内部に励磁コイル2からの励磁磁束J1を打ち消す反発磁束J2を発生させる磁束調整機構としての消磁コイル層(第一消磁層)5と、磁路形成部材6及び消磁部材(第二消磁層)7が配備されていた。ここでは磁束調整機構として,図7に示されるような、板状の低抵抗体を結線して作成した板状消磁回路を成す板状低抵抗体(第一消磁層)5aを用いてもよい。ここで板状低抵抗体5aには回路を機能させる際にショートされるスイッチ61aに接続される。
【0054】
板状低抵抗体5aは定着スリーブ3を加熱するための励磁コイル2(例えば、図2参照)と対向して配備された一対の板状低抵抗体5aであり、それらの間に空隙tdが形成され、その空隙td内に突部602aを空間下部に主部601aを有した磁路形成部材6a(整磁部材)を配する。これにより、磁路形成部材6aの温度がキュリー温度Tc以下では、磁路形成部材6aと励磁コイル2の磁気結合が向上し、消磁性能が向上する。これは磁路形成部材6aを透過した誘導磁束J1が、確実に磁路形成部材6aを通過するためである。
図7(a)に示される板状低抵抗体5aを用いる際も、その空隙tdの内部に高透磁率、高抵抗材料から成る磁路形成部材6aを配して、磁気結合を向上させることが望ましい。図7(b)では矢印J2aで概念的に板状部材から誘起される反発磁束を示しているが、あくまで概念上のものである。図7(c)中には板状低抵抗体5a、磁路形成部材6aの断面を示している。
【0055】
次に、本発明の「第3の実施形態」を説明する。
上述のように第1の実施形態での定着装置20は定着スリーブ3の内部に励磁磁束J1を打ち消す反発磁束J2を発生させる消磁コイル層(第一消磁層)5として、磁路形成部材(整磁層)6の長手方向において、消磁コイル層5が存在しない中央部と、左右側部に3段重ねで軸方向の長さが異なる消磁コイル層501、502、503を重ねて装着した構成を採っていた。これに代えて、図8(a),(b)に示すように形成しても良い。ここで磁路形成部材(整磁層)6bはその長手方向において湾曲主部601bが一様に形成され、それより突き出す凸部602bのうち、消磁コイル層(第一消磁層)が存在しない中央部(通紙部e1)と、軸方向に所定間隔を介して中央側より左右端に向かい左右対称に3つのループ状の消磁コイル層501b、502b、503bが互いに端部を重ねた状態で直列的に配設される。なお。ループ状の各消磁コイル層の重なり部は凸部602bに形成されたコイル収容溝ubに嵌着される。
【0056】
このような構成を採った場合、定着装置20bに達する記録材Pの幅情報に応じて、消磁コイル層501b、502b、503bのスイッチ611b〜613bの選択的な開閉制御をする。これにより、ハガキ定着時には消磁コイル501b〜503bを駆動し、B5転写材定着時には消磁コイル502b、503bを駆動し、A4転写材定着時には消磁コイル503bを駆動し、B4転写材定着時にはスイッチ611b〜613bをオープンして、消磁部材(第二消磁層)7によるキュリー温度Tcでの温度制御のみがなされる。これにより、定着装置20bに達する記録材Pの非通紙部e2の過度の昇温を抑制し、精度の高い発熱幅制御が可能である。
【0057】
上述の第1の実施形態等においては、消磁コイル層(第一消磁層)5と消磁部材(第二消磁層)7の発熱の制御はマシン状態情報(ウォームアップ、通紙、省エネ時など)や定着装置20の内部温度センサ情報に基づいて、消磁コイル501のスイッチ611の短絡(ショート)を行えばよく、立上げ復帰時等では消磁コイル層(第一消磁層)5と消磁部材(第二消磁層)7を非機能とさせることや、磁路形成部材(整磁層)6の感温遅れが発生しやすい低温環境下では積極的に消磁コイル層(第一消磁層)5を機能させることも可能となる。つまり、キュリー温度250℃に設定して用いる際にも消磁コイル層5の機能を発揮させることで170℃の以下の非通紙部の温度を制御可能となる。
【0058】
また、定着に用いる発熱回転体として定着スリーブ3を第1実施形態で説明したが、発熱回転体の内部に励磁磁束J1を打ち消す反発磁束J2を発生させる磁束調整機構(第一消磁層)5と、磁路形成部材6及び消磁部材(第二消磁層)7が配備されるものであれば、ローラ、スリーブ、ベルトの何れの形状を取るもので良い。磁路形成部材6側が発熱回転体側と別体の場合、磁路形成部材6は消磁部材(第二消磁層)7に対して固定されてもよく、固定されていなくてもよい。
【0059】
次に、本発明の「第4の実施形態」を図9を用いて説明する。
第4の実施形態での定着装置20cは加熱ローラ3cと定着ローラ41とにベルト42が巻き掛けられ、定着ローラ41にベルト42を介して加圧ローラ4cが圧接し、両者間に記録材Pが通過して、定着するニップ部npが形成されている。ここで加熱ローラ3cにベルト42を介して加熱手段Hを成す励磁コイル2cが対向配備される。加熱ローラ3c内には反発磁束J2(図4(c)参照)を発生させる磁束調整機構(第一消磁層)5cと、磁路形成部材6c及び消磁部材(第二消磁層)7cが配備される。
【0060】
この場合、励磁コイル2cと、反発磁束J2を発生させる磁束調整機構(第一消磁層)5cと、磁路形成部材6cと、消磁部材(第二消磁層)7cとは、第1実施形態の図4(a)〜(c)に示した励磁コイル2と、磁束調整機構(第一消磁層)5と、磁路形成部材6と、消磁部材(第二消磁層)7と同様の構成を採り、同様の機能を発揮でき、加熱ローラ3cに代えてベルト42の内部に設けた発熱層301cを発熱させて、その発熱ベルト42を巻き掛けた定着ローラ41と加圧ローラ4cとで両者間に達した記録材Pを定着するよう構成されても良い。
【0061】
この場合も図1の定着装置20と同様の作用効果が得られ、特に、レイアウトの自由度が増す利点がある。
【符号の説明】
【0062】
1 フェライトコア
2 励磁コイル(磁束発生部)
3 定着スリーブ(定着回転体)
301 発熱層
4 加圧ローラ(加圧回転体)
410 画像形成部
5 消磁コイル層(磁束調整機構)
6 磁路形成部材
7 消磁部材(第二消磁層)
J1 励磁磁束
J2 反発磁束
M 画像形成装置
P 記録材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0063】
【特許文献1】特開2001−13805号公報
【特許文献2】特許2975435号公報
【特許文献3】特開2001−60490号公報
【特許文献4】特開2009−145421号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な非磁性発熱層を有する定着回転体と、磁束を発生させ、該磁束によって前記発熱層を誘導加熱する励磁コイルを有し、該発熱層の厚みは励磁コイルから発生される磁束が定着回転体を透過するように浸透深さ以下に設定され、前記定着回転体の内部であって前記励磁コイルと対向する位置に配され、励磁磁束を打ち消す反発磁束を発生させる磁束調整機構を有し、該磁束調整機構を透過する磁束の透過を規制する磁路形成部材を整磁合金で形成すると共に、該磁路形成部材の前記発熱層に対し反対側に消磁部材を配することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記磁束調整機構は磁路形成部材の前記定着回転体と対向する側に消磁量を切り替え可能な金属からなる導電材料を配したことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項3】
前記消磁量は前記導電材料が有する消磁回路のスイッチの導通/非導通により切り替えられ、単位時間当たりの導通比率で制御されることを特徴とする請求項2記載の定着装置。
【請求項4】
前記消磁回路は複数配置され、用紙、画像情報、状態により導通/非道通を切り替えられることを特徴とする請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記消磁回路は定着回転体の温度情報により制御されることを特徴とする請求項3又は4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記消磁回路は、発熱層を含む定着回転体形状に倣うように形成され、前記定着回転体に非接触で配されることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1つに記載の定着装置。
【請求項7】
前記導電材料は巻きまわされたコイルであることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1つに記載の定着装置。
【請求項8】
前記消磁回路は電源を有さず、電磁誘導により反発磁束が発生されることを特徴とする請求項3〜7のいずれか1つに記載の定着装置。
【請求項9】
前記磁路形成部材は少なくとも一部分を定着回転体に接触して配されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の定着装置。
【請求項10】
前記消磁部材は、前記磁路形成部材に非接触で配されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の定着装置。
【請求項11】
前記定着回転体が、定着スリーブ、定着ローラ、定着発熱ベルトのいずれかである発熱回転体であり、該発熱回転体を押圧して当接する加圧回転体を備え、前記定着回転体と前記加圧回転体の間を通過する記録媒体上に画像を定着させることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の定着装置。
【請求項12】
前記発熱回転体が加熱ローラであり、該発熱回転体に掛け回した定着ベルトと、前記発熱回転体と共に該定着ベルトを張架する定着回転体を備えることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載の定着装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1つの定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−247505(P2012−247505A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117452(P2011−117452)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】