説明

定電圧バッファ回路

【課題】スタートアップ時などに、演算増幅回路の出力電圧が、駆動能力の高い側とは反対方向に大きくずれた場合においても、出力段の定電流源に制限されることなく、所定電圧へのセットリングを加速することが可能な定電圧バッファ回路を提供すること。
【解決手段】基準電圧(Vref)をバッファし、一定電圧の出力電圧(Vout)を供給する定電圧バッファ回路であって、出力電圧と基準電圧とを取得する差動増幅器(1)と、差動増幅器(1)の出力信号に応じて制御されるP型駆動の出力手段(2)と、出力電圧が基準電圧よりも大きいことを検出する検出手段(M11)と、検出手段(M11)において、出力電圧が基準電圧に対して大きいことが検出された場合には、出力ノードから電流を引き出すように電流を制御する電流制御手段(3)とを有する定電圧バッファ回路。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一定電圧を出力する定電圧バッファ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
一定電圧を出力するバッファ回路は、その用途に応じて、ソース駆動能力のみが高いことが要求されたり、シンク駆動能力のみが高いことが要求される場合がある。例えば、A/Dコンバータでは基準電圧として、高い側の基準電圧と低い側の基準電圧とを必要とする場合が多いが、前者の場合においては、バッファ回路は高いソース駆動能力が必要とされ、後者の場合においては、バッファ回路は高いシンク駆動能力が必要とされる。
【0003】
通常、高いソース駆動能力が必要な場合は、演算増幅回路の出力段はP型駆動で、N側は定電流源のA級の出力段とし、高いシンク駆動能力が必要な場合は、演算増幅回路の出力段はN型駆動で、P側は定電流源のA級の出力段とすることが一般的である。
しかし、スタートアップ時等は、通常時とは逆の駆動能力が求められることが多い。例えば、N型駆動で、P側は定電流源のA級の出力段である演算増幅回路では、上述したように、通常時においてはシンク駆動能力が高いが、スタートアップ時に出力電位がグランドレベルだとすると、出力電位を所望の電圧まで増加させるためには、ソース駆動能力がさほど高くないP側の定電流源で電流を引き込まなければならず、スタートアップに非常に時間が掛かる結果となってしまう。
【0004】
スタートアップ時の動作を加速する従来技術としては、例えば、特許文献1に記載の定電圧回路が存在する。図3は、特許文献1に記載の定電圧回路の構成例を示す図である。
図3に示される定電圧回路は、大きく分けて、差動増幅段11、出力段12、及び検出回路13から構成される。差動増幅段11は、差動対を形成するNチャネルMOSトランジスタ(以下、「N型MOSトランジスタ」という)M51、M52と、電流バイアス用のN型MOSトランジスタM55、M56と、負荷となるPチャネルMOSトランジスタ(以下、「P型MOSトランジスタ」という)M53、M54とからなる。また、出力段12は、定電流源M58と、P型MOSトランジスタM57とからなるA級の出力段である。
【0005】
この差動増幅段11と出力段12とに加えて、位相補償用コンデンサCCが差動増幅段11と出力段12との間に挿入されてなる2段構成の演算増幅回路によってボルテージフォロアが形成されている。そして、このボルテージフォロアに、検出回路13が付加されて定電圧バッファ回路が構成されている。
ボルテージフォロアには一定電圧Vrefが入力され、ボルテージフォロアの出力負荷として、演算増幅回路の出力ノードと接地との間にコンデンサCLが設けられている。
【0006】
検出回路13は、P型MOSトランジスタM60からの電流を受けるN型MOSトランジスタM59と、トランジスタM60の電流をミラーするP型MOSトランジスタM61と、トランジスタM61を流れた電流を受けるトランジスタであってダイオード接続されたN型MOSトランジスタM63と、P型MOSトランジスタM62と、トランジスタM62を流れた電流を受けるトランジスタであってダイオード接続されたN型MOSトランジスタM64とから構成される。
【0007】
トランジスタM59は、ゲートには一定電圧Vrefが入力されるようになっており、ソースは演算増幅回路の出力ノードに接続され、ドレインにはダイオード接続されたP型MOSトランジスタM60のドレインが接続されている。また、トランジスタM62は、ゲートには一定電圧Vrefが入力されるようになっており、ソースは演算増幅回路の出力ノードが接続され、ドレインにはダイオード接続されたN型MOSトランジスタM64のドレインが接続されている。
【0008】
また、トランジスタM63のゲート電圧は、差動増幅段11の電流バイアス用N型MOSトランジスタM56のゲートに印加され、トランジスタM64のゲート電圧は、トランジスタM55にそれぞれ印加されるように接続されており、トランジスタM63とM56、トランジスタM64とM55は、それぞれ、カレントミラー回路を構成している。
ところで、ボルテージフォロアが一定電圧Vrefを出力している場合(Vout≒Vref)、トランジスタM59とトランジスタM62のゲート−ソース間電位はともに0Vであるため、両者ともわずかな電流しか流れない。そのため、トランジスタM59とトランジスタM62の先にあるカレントミラー回路にも電流がわずかにしか流れず、その結果、演算増幅回路の帯域は非常に狭くなる(通常時)。
【0009】
スタートアップ時など、ボルテージフォロアが一定電圧Vrefよりも非常に高い電圧を出力している場合(Vout>Vref)、トランジスタM62のゲート−ソース間電位が広がり、トランジスタM62には多くの電流が流れる。その結果、カレントミラー回路(トランジスタM64、M55)にも多くの電流が流れ、その結果、演算増幅回路の帯域が増加する。
【0010】
逆に、ボルテージフォロアが一定電圧Vrefよりも非常に低い電圧を出力している場合(Vref>Vout)、トランジスタM59のゲート−ソース間電位が広がり、トランジスタM59には多くの電流が流れる。その結果、カレントミラー回路(トランジスタM63、M56)にも多くの電流が流れ、その結果、演算増幅回路の帯域が増加する。
このように、スタートアップ時などのように、演算増幅回路の出力電圧Voutが所望の一定電圧Vrefから大きく外れると、差動増幅段11のバイアス電流が増加し、演算増幅回路の帯域が増加する。これにより、バッファ回路のスタートアップ時の動作を加速させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許4341882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述したように、スタートアップ時などにおいて、演算増幅回路の出力電圧が、駆動能力の高い側とは反対方向に大きくずれる場合がある。例えば、シンク駆動能力は高いがソース駆動能力はさほど高くないバッファ回路において、スタートアップ時に出力電位Voutが所定電圧Vrefよりも低いために、出力電位Voutを所定電圧Vrefまで引き上げる場合、もしくは逆に、ソース駆動能力は高いがシンク駆動能力はさほど高くないバッファ回路において、スタートアップ時に出力電位Voutが所定電圧Vrefよりも高いために、出力電位Voutを所定電圧Vrefまで引き下げる場合である。このような場合には、出力電位は演算増幅回路の帯域ではなく、出力段の定電流源(例えば図3の定電流源M58)と負荷容量(例えば図3のコンデンサCC)との時定数で決まるため、いかに演算増幅回路の帯域を高くしてもスタートアップ時の動作はさほど加速されない。
【0013】
本発明は、上記課題に鑑み、スタートアップ時などに、演算増幅回路の出力電圧が、駆動能力の高い側とは反対方向に大きくずれた場合においても、出力段の定電流源に制限されることなく、所定電圧へのセットリングを加速することが可能な定電圧バッファ回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記問題を解決するために、本発明の一態様は、基準電圧をバッファし、一定電圧の出力電圧を供給する定電圧バッファ回路であって、前記出力電圧と前記基準電圧とを取得する差動増幅器と、前記差動増幅器の出力信号に応じて制御されるP型駆動の出力手段と、前記出力電圧が前記基準電圧よりも大きいことを検出する検出手段と、前記検出手段において、前記出力電圧が前記基準電圧に対して大きいことが検出された場合には、出力ノードから電流を引き出すように電流を制御する電流制御手段と、を有する定電圧バッファ回路である。
【0015】
この構成によれば、スタートアップ時などに、演算増幅回路の出力電圧が所定の基準電圧よりも大きい場合でも、出力段の定電流源に制限されることなく、所定の基準電圧へのセットリングを加速することが可能である。
また、本発明の他の態様は、上記の定電圧バッファ回路において、前記検出手段は、ゲートには前記基準電圧が印加され、ソースには前記出力電圧が印加されるPチャネルMOSトランジスタであることを特徴とする定電圧バッファ回路である。
【0016】
この構成によれば、スタートアップ時などに、演算増幅回路の出力電圧が所定の基準電圧よりも大きい場合でも、出力段の定電流源に制限されることなく、所定の基準電圧へのセットリングを加速することが可能である。
また、本発明の他の態様は、基準電圧をバッファし、一定電圧の出力電圧を供給する定電圧バッファ回路であって、前記出力電圧と前記基準電圧とを取得する差動増幅器と、前記差動増幅器の出力信号に応じて制御されるN型駆動の出力手段と、前記出力電圧が前記基準電圧よりも小さいことを検出する検出手段と、前記検出手段において、前記出力電圧が前記基準電圧に対して小さいことが検出された場合には、出力ノードに電流を注入するように電流を制御する電流制御手段と、を有する定電圧バッファ回路である。
【0017】
この構成によれば、スタートアップ時などに、演算増幅回路の出力電圧が所定の基準電圧よりも小さい場合でも、出力段の定電流源に制限されることなく、所定の基準電圧へのセットリングを加速することが可能である。
また、本発明の他の態様は、上記の定電圧バッファ回路において、前記検出手段は、ゲートには前記基準電圧が印加され、ソースには前記出力電圧が印加されるNチャネルMOSトランジスタであることを特徴とする定電圧バッファ回路である。
【0018】
この構成によれば、スタートアップ時などに、演算増幅回路の出力電圧が所定の基準電圧よりも小さい場合でも、出力段の定電流源に制限されることなく、所定の基準電圧へのセットリングを加速することが可能である。
また、本発明の他の態様は、前記電流制御手段は、前記検出手段としてのMOSトランジスタに流れる電流に応じて、前記出力ノードに対する電流を制御することを特徴とする定電圧バッファ回路である。
【0019】
また、本発明の他の態様は、前記電流制御手段は、前記検出手段としてのMOSトランジスタに流れる電流をミラーし、その電流に応じて、前記出力ノードに対する電流を制御するためのミラー回路を含むことを特徴とする定電圧バッファ回路である。
また、本発明の他の態様は、前記検出手段としてのMOSトランジスタは、自回路に含まれる他のトランジスタよりも閾値電圧の低いMOSトランジスタであることを特徴とする定電圧バッファ回路である。
この構成によれば、検出用のMOSトランジスタは基準電圧と出力電圧との差を素早く検知することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様によれば、演算増幅回路の出力電圧が、駆動能力の高い側とは反対方向に大きくずれた場合においても、出力段の定電流源に制限されることなく、所望の電圧へのセットリングを加速することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る定電圧バッファ回路の構成の一例を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る定電圧バッファ回路の別の構成の一例を示すブロック図である。
【図3】特許文献1に記載の定電圧バッファ回路の構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下の説明において参照する各図では、他の図と同等部分は同一符号によって示される。
(構成例1)
図1は、本実施形態に係る定電圧バッファ回路の構成の一例を示す図である。本実施形態に係る定電圧バッファ回路は、大きく分けて、差動増幅段1、出力段2、及び検出回路(加速回路)3から構成される。また、図1に示される定電圧バッファ回路は、出力段2がP型駆動であり、N側は定電流源のA級の出力段である。
[差動増幅段、出力段]
差動増幅段1は、差動対を形成するN型MOSトランジスタM1、M2と、定電流源M5と、負荷となるトランジスタであってミラー回路を構成するP型MOSトランジスタM3、M4とからなる。また、出力段は、定電流源M7と、P型MOSトランジスタM6とからなるA級の出力段である。
【0023】
また、この差動増幅段1と出力段2とに加えて、位相補償用コンデンサCCが出力段の入力ノードと出力ノードとの間に設けられている。すなわち、2段構成の演算増幅回路によってボルテージフォロアが形成されている。そして、本実施形態の定電圧バッファ回路は、このボルテージフォロアに、検出回路(加速回路)3が付加されていることによって構成されている。なお、ボルテージフォロアの出力負荷として、演算増幅回路の出力ノードと接地との間にコンデンサCLが設けられている。また、ボルテージフォロアには一定電圧Vrefが入力される。
【0024】
[検出回路(加速回路)]
検出回路(加速回路)3は、N型MOSトランジスタM8と、P型MOSトランジスタM9の電流をミラーするとともに電流を演算増幅回路の出力ノードに注入するP型MOSトランジスタM10と、P型MOSトランジスタM11と、ドレインとゲートがダイオード接続されたN型トランジスタM12と、このトランジスタM13を流れる電流をミラーするN型MOSトランジスタM13とから構成される。
【0025】
トランジスタM10とともにミラー回路を構成するP型MOSトランジスタM9は、ドレインとゲートがダイオード接続されている。そして、このトランジスタM9のドレインは、N型MOSトランジスタM8のドレインに接続されており、トランジスタM8のゲートには一定電圧Vrefが印加される。
また、トランジスタM8のソースは、演算増幅回路の出力ノードに接続されるとともに、トランジスタM11のソースに接続されている。トランジスタM11のゲートには一定電圧Vrefが印加され、トランジスタM11のドレインはトランジスタM12のドレインと接続されている。すなわち、検出回路(加速回路)3は、トランジスタM2のゲート端子から演算増幅回路の出力ノードまでの接続ラインを挟んで対称的な構成となっている。
【0026】
なお、トランジスタM8とトランジスタM11は、他のトランジスタよりも閾値電圧の低いタイプのMOSトランジスタであることが望ましい。なぜならば、これらのトランジスタは一定電圧Vrefと出力電圧Voutとの差を検出するための検出用トランジスタであるため、反応の良いトランジスタであるほうが好適だからである。
トランジスタM12とトランジスタM13はミラー回路を構成し、トランジスタM12は、ドレインとゲートがダイオード接続されている。N型MOSトランジスタであるトランジスタM13は、トランジスタM12の電流をミラーするとともに、電流を演算増幅回路の出力ノードから引き込む。
【0027】
ここで、ボルテージフォロアが一定電圧Vrefを出力している場合、トランジスタM8とトランジスタM11のゲート−ソース間電位はともに0Vであるため、両者ともOFFとなり、電流は流れない。そのため、トランジスタM8とトランジスタM11の先に構成されているトランジスタM12とM13とからなるカレントミラー回路にも電流が流れない。その結果、検出回路(加速回路)3は出力ノードに電流を注入しないため、通常動作時には全く影響を与えない。
【0028】
一方、スタートアップ時など、ボルテージフォロアが一定電圧Vrefよりも非常に高い電圧を出力している場合(Vout>Vref)、トランジスタM11のゲート−ソース間電位が広がり多くの電流が流れる。その結果、トランジスタM12とM13とからなるカレントミラー回路にも電流が多く流れるため、検出回路(加速回路)3は、トランジスタM13を介して出力ノードから電流を多く引き込み、出力電位Voutについて、一定電圧Vrefへの収束を加速させる。
【0029】
逆に、ボルテージフォロアが一定電圧Vrefよりも非常に低い電圧を出力している場合(Vout<Vref)、出力段2のトランジスタM6を介して電流が出力ノードに流入し、出力電位Voutを上昇させる。また、この時、検出回路(加速回路)3では、トランジスタM8のゲート−ソース間電位が広がり多くの電流が流れる。その結果、トランジスタM9を流れる電流をミラーするトランジスタM10を介して、出力ノードに多くの電流が流入し、出力電位Voutについて、一定電圧Vrefへの収束を加速させることになる。
【0030】
すなわち、上記の構成によれば、検出回路(加速回路)3は、トランジスタM8〜M10で構成される回路によりソース駆動能力を発揮し、トランジスタM11〜M13で構成される回路によりシンク駆動能力を発揮する。図1に示される定電圧バッファ回路の出力段2はP型駆動であるため、本来は、ソース駆動能力(出力電位Voutを増加させる能力)に優れるものの、シンク駆動能力(出力電位Voutを減少させる能力)はさほど高くない。しかし、本実施形態の定電圧バッファ回路は、スタートアップ時などに、Vout>Vrefであっても、トランジスタM11〜M13によりシンク駆動能力が発揮されるため、素早く出力電位Voutを一定電圧Vrefと同等の電圧にさせることができる。
【0031】
なお、上述したように、図1の構成例では、演算増幅回路の出力段2はP型駆動のタイプであり、ソース駆動能力は元々、優れているため、ソース駆動を加速するためのMOSトランジスタM8、M9、M10は必須の構成ではない。ただし、これらのトランジスタを備えることにより、Vref>Voutである場合にソース駆動を加速することができる。
【0032】
(構成例2)
図2は、出力段にN型駆動の演算増幅回路を用いた定電圧バッファ回路の構成例である。すなわち、図2の定電圧バッファ回路は、差動増幅段1及び出力段2の構成部分が図1の定電圧バッファ回路と異なっており、検出回路3の構成については図1の定電圧バッファ回路と同様である。
図2の定電圧バッファ回路において、差動増幅段1では、P型MOSトランジスタM1´とP型MOSトランジスタM2´とが差動対を形成し、定電流源M5からの電流を受ける。トランジスタM1´のドレインからの電流はN型MOSトランジスタM3´のドレインに流入するように接続されている。また、N型MOSトランジスタM4´はドレインとゲートがダイオード接続されており、トランジスタM3´の電流をミラーする。なお、トランジスタM1´のゲートには、一定電圧Vrefが印加される。
【0033】
また、出力段では、定電流源M7からの電流は、N型MOSトランジスタM6´のドレインに流入するように接続されている。また、図2に示される検出回路(加速回路)3の動作については、図1に示される定電圧バッファ回路の検出回路(加速回路)3と同様である。
すなわち、図2の定電圧バッファ回路においても、図1の定電圧バッファ回路と同様に、検出回路(加速回路)3は、トランジスタM8〜M10で構成される回路によりソース駆動能力を発揮し、トランジスタM11〜M13で構成される回路によりシンク駆動能力を発揮する。図2に示される定電圧バッファ回路の出力段2はN型駆動であるため、本来は、シンク駆動能力(出力電位Voutを減少させる能力)に優れるものの、ソース駆動能力(出力電位Voutを増加させる能力)はさほど高くない。しかし、本実施形態の定電圧バッファ回路は、スタートアップ時などに、Vout<Vrefであっても、トランジスタM8〜M10によりソース駆動能力が発揮されるため、素早く出力電位Voutを一定電圧Vrefと同等の電圧にさせることができる。
【0034】
なお、上述したように、図2の構成例では、演算増幅回路の出力段2はN型駆動であることによりシンク駆動能力は優れているため、シンク駆動を加速するためのMOSトランジスタM11、M12、M13は必須の構成ではない。ただし、これらのトランジスタを備えることにより、Vout>Vrefである場合には、出力段2のトランジスタM6´により出力ノードから電流を引き込むとともに、検出回路(加速回路)3では、トランジスタM11〜M13のシンク駆動能力によって、出力電位Voutについて、一定電圧Vrefへの収束を加速させることができる。
【0035】
(まとめ)
上記説明したように、本実施形態に係る定電圧バッファ回路によれば、演算増幅回路の出力電圧が、駆動能力の高い側とは反対方向に大きくずれた場合においても、出力段の定電流源に制限されることなく、あらかじめ定められた所望の一定電圧へのセットリングを加速することが可能である。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【符号の説明】
【0036】
1 差動増幅段
2 出力段
3 検出回路(加速回路)
11 差動増幅段
12 出力段
13 検出回路
CC 位相補償用コンデンサ
CL コンデンサ
M1、M2、M8、M12、M13 N型MOSトランジスタ
M3、M4、M6、M9、M10、M11 P型MOSトランジスタ
M1´、M2´、 P型MOSトランジスタ
M3´、M4´、M6´ N型MOSトランジスタ
M5 定電流源
M7 定電流源
M51、M52、M55、M56、M59、M63、M64 N型MOSトランジスタ
M53、M54、M57、M60、M61、M62 P型MOSトランジスタ
M58 定電流源
Vref 一定電圧(基準電圧)
Vout 出力電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準電圧をバッファし、一定電圧の出力電圧を供給する定電圧バッファ回路であって、
前記出力電圧と前記基準電圧とを取得する差動増幅器と、
前記差動増幅器の出力信号に応じて制御されるP型駆動の出力手段と、
前記出力電圧が前記基準電圧よりも大きいことを検出する検出手段と、
前記検出手段において、前記出力電圧が前記基準電圧に対して大きいことが検出された場合には、出力ノードから電流を引き出すように電流を制御する電流制御手段と、
を有する定電圧バッファ回路。
【請求項2】
前記検出手段は、ゲートには前記基準電圧が印加され、ソースには前記出力電圧が印加されるPチャネルMOSトランジスタであることを特徴とする請求項1に記載の定電圧バッファ回路。
【請求項3】
基準電圧をバッファし、一定電圧の出力電圧を供給する定電圧バッファ回路であって、
前記出力電圧と前記基準電圧とを取得する差動増幅器と、
前記差動増幅器の出力信号に応じて制御されるN型駆動の出力手段と、
前記出力電圧が前記基準電圧よりも小さいことを検出する検出手段と、
前記検出手段において、前記出力電圧が前記基準電圧に対して小さいことが検出された場合には、出力ノードに電流を注入するように電流を制御する電流制御手段と、
を有する定電圧バッファ回路。
【請求項4】
前記検出手段は、ゲートには前記基準電圧が印加され、ソースには前記出力電圧が印加されるNチャネルMOSトランジスタであることを特徴とする請求項3に記載の定電圧バッファ回路。
【請求項5】
前記電流制御手段は、前記検出手段としてのMOSトランジスタに流れる電流に応じて、前記出力ノードに対する電流を制御することを特徴とする請求項2又は4に記載の定電圧バッファ回路。
【請求項6】
前記電流制御手段は、前記検出手段としてのMOSトランジスタに流れる電流をミラーし、その電流に応じて、前記出力ノードに対する電流を制御するためのミラー回路を含むことを特徴とする請求項2、4、及び5のいずれか一項に記載の定電圧バッファ回路。
【請求項7】
前記検出手段としてのMOSトランジスタは、自回路に含まれる他のトランジスタよりも閾値電圧の低いMOSトランジスタであることを特徴とする請求項2、4、5、及び6のいずれか一項に記載の定電圧バッファ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−61749(P2013−61749A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198956(P2011−198956)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】