説明

実装構造

【課題】半導体素子チップに大きな電力を供給することが可能な実装構造を提供する。高い放熱効果が得られる実装構造を提供する。
【解決手段】実装構造1は、配線基板10に半導体素子チップ20が実装されたものであり、配線基板10は、配線基板10を厚み方向に貫通して開孔されたスルーホールより大きい少なくとも1つの孔部30を有し、孔部30内に外部から半導体素子チップ20の外部接続端子21Bに給電するための給電端子31が挿入され、給電端子31が絶縁材32により孔部30内に固定されたものである。半導体素子チップが放熱端子を有する場合、配線基板は、スルーホールより大きい少なくとも1つの孔部を有し、孔部内に半導体素子チップの放熱端子から外部への放熱を行う外部放熱端子が挿入され、外部放熱端子が絶縁材により孔部内に固定された構造とすれば、高い放熱効果が得られる実装構造を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのグランド配線層と少なくとも1つの信号配線層とを含む複数の配線層を備えた配線基板の一方の基板面に少なくとも1つの半導体素子チップが実装された実装構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5は、多層プリント配線基板にLSIチップ等の半導体素子チップを実装した実装構造の従来例を示す断面図である。図示する実装構造101は、配線基板110の一方の基板面(図示上面)にLSIチップ等の半導体素子チップが収容された半導体パッケージ120が実装されたものである。この図では、半導体パッケージ120はBGA(Ball grid array)パッケージであり、図中、符号121は外部接続端子(この例ではBGA端子)、符号122はアンダーフィル樹脂を示している。
配線基板110内には、複数の配線層が絶縁層(符号略)を介して積層されている。配線基板110内には、複数の配線層として、少なくとも1つのグランド配線層111と少なくとも1つの信号配線層112と少なくとも1つの電源配線層113とが形成されている。
【0003】
半導体プロセス技術の発達により、LSIチップの微細化・多機能化に伴って、半導体パッケージでは信号端子数の増数化や寸法の大型化が発生している。そのため、配線基板では、多数の配線を引き回すために配線間隔の狭小化や配線層数の多層化が必要となっている。
LSIの駆動電圧は低電圧化してきているが、システムLSI化により1チップあたりの消費電力は増加しており、各種配線にかかる抵抗による電力損失が大きくなってきている。大電力を要するLSIチップを実装する場合、配線基板にはグランド配線層及び電源配線層の厚膜化・太線化・短線化などにより、配線抵抗を下げる設計が必要となってきている。
配線設計にはノイズ特性や反射などの電気伝送特性や電力損失などを考慮する必要もある。
以上の理由から、配線基板の設計は益々複雑なものとなってきている。
【0004】
また、消費電力の多いシステムLSIを実装した場合、電力損失が熱へと変換され、LSIチップ及び配線基板からの発熱量も多くなる。発熱によりLSI温度が高くなりすぎると、動作に支障が出る恐れがある。
【0005】
特許文献1の図1には、配線基板(10)内に、導体金属棒(52)と導体金属筒(53)と絶縁材(54)とからなる給電構造体(51)を設けることが提案されている。この給電構造体(51)はICチップ(21)から離れた位置に設けられている。段落0035には、給電構造体(51)の径はスルーホールよりも小さいことが記載されている。
【0006】
特許文献2の第1図には、配線基板が信号配線基板(200)と電源供給基板(300)の2つの基板に分けられた構造が記載されている。この構造では、ICチップ(1)と信号配線基板(200)と電源供給基板(300)との接続はスルーホール(5)でなされている。同文献の第3図には、電源供給基板(300)に外部から給電する構造(8)が記載されている。
【0007】
特許文献3の図1及び図2には、配線基板(7)に給電用の大きな孔部(10)を開ける一方、ICチップ(1)に電源電極(5)を取り付け、孔部(10)内にICチップ(1)の電源電極(5)を挿入した構造が記載されている。
特許文献4の図1には、LSIチップに電源給電パターン(12)を有する配線基板(11)を接続した構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008-177554号公報
【特許文献2】特開昭60-247992号公報
【特許文献3】特開平05-218218号公報
【特許文献4】特開平07-297225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1及び2では、配線基板内に、半導体素子チップの給電用にスルーホール又はそれより小さい径の孔部を設けている。かかる構成では、半導体素子チップへの給電量には限界がある。そのため、半導体素子チップに大きな電力を供給しようとすると、多数の給電用の孔部を開孔するなどの対応が必要である。多数の給電用の孔部を開孔しても、供給できる電力量には限界がある。
【0010】
特許文献3では、配線基板に給電用の大きな孔部を開ける一方、半導体素子チップに電源電極を取り付け、孔部内に半導体素子チップに電源電極を挿入しているので、電源電極を介して半導体素子チップに特許文献1及び2よりも大きな電力を供給できる。しかしながら、特許文献3では、半導体素子チップ側に電源電極を取り付けており、半導体素子チップ側の改造が必要である。そのため、実装する半導体素子チップが変われば、半導体素子チップの改造がその都度行う必要があり、種々のタイプの半導体素子チップに対応ができず、高コスト化に繋がる。
特許文献4では、半導体素子チップに2つの配線基板を接続しているので、部品点数が多く、小面積化に対応できない。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、半導体素子チップの改造を要することなく、半導体素子チップに大きな電力を供給することが可能な実装構造を提供することを目的とするものである。
本発明はまた、半導体素子チップの改造を要することなく、高い放熱効果が得られる実装構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の実装構造は、少なくとも1つのグランド配線層と少なくとも1つの信号配線層とを含む複数の配線層を備えた配線基板の一方の基板面に少なくとも1つの半導体素子チップが実装された実装構造であって、
前記配線基板は、当該配線基板を厚み方向に貫通して開孔されたスルーホールより大きい少なくとも1つの孔部を有し、当該孔部内に外部から前記半導体素子チップの外部接続端子に給電するための給電端子が挿入され、当該給電端子が絶縁材により前記孔部内に固定されたものである。
【0013】
本発明の第2の実装構造は、少なくとも1つのグランド配線層と少なくとも1つの信号配線層とを含む複数の配線層を備えた配線基板の一方の基板面に少なくとも1つの半導体素子チップが実装された実装構造であって、
前記半導体素子チップは放熱端子を有するものであり、
前記配線基板は、当該配線基板を厚み方向に貫通して開孔されたスルーホールより大きい少なくとも1つの孔部を有し、当該孔部内に前記半導体素子チップの放熱端子から外部への放熱を行う外部放熱端子が挿入され、当該外部放熱端子が絶縁材により前記孔部内に固定されたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1の実装構造によれば、半導体素子チップの改造を要することなく、半導体素子チップに大きな電力を供給することが可能な実装構造を提供することができる。
本発明の第2の実装構造によれば、半導体素子チップの改造を要することなく、高い放熱効果が得られる実装構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る第1実施形態の実装構造の断面図である。
【図2】本発明に係る第2実施形態の実装構造の断面図である。
【図3】本発明に係る第3実施形態の実装構造の断面図である。
【図4】本発明に係る第4実施形態の実装構造の断面図である。
【図5】従来の実装構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
「第1実施形態」
図面を参照して、本発明に係る第1実施形態の実装構造について説明する。図1は、本実施形態の実装構造の断面図である。視認しやすくするため、各構成要素の縮尺は実際のものとは適宜異ならせてある。
【0017】
本実施形態の実装構造1は、配線基板10にLSIチップ等の半導体素子チップが収容された半導体パッケージ20が実装されたものである。本実施形態において、半導体パッケージ20はBGA(Ball grid array)パッケージである。
【0018】
配線基板10内には、複数の配線層が絶縁層(符号略)を介して積層されている。配線基板10内には、複数の配線層として、少なくとも1つのグランド配線層11と少なくとも1つの信号配線層12とが形成されている。本実施形態では、配線基板10は内部に配線層として電源配線層を有していない。
配線基板10の一方の基板面(図示上面)に、半導体パッケージ20が実装されている。半導体パッケージ20はその底面に複数の外部接続端子21を有し、これら外部接続端子21が配線基板10に半田等の導電材を介して接合されている。配線基板10と半導体パッケージ20との間隙には、接合強化や異物流入防止等のために、アンダーフィル樹脂22が充填されている。アンダーフィル樹脂22は必須なものではない。
【0019】
配線基板10は、半導体パッケージ20の直下に配線基板10を厚み方向に貫通して開孔されたスルーホールより大きい少なくとも1つの孔部30を有している。この孔部30内に外部から半導体パッケージ20の外部接続端子21に給電するための給電端子31が挿入され、給電端子31が絶縁材32により孔部30内に固定されている。図示する例では、孔部30は1個であるが、複数設けても構わない。
絶縁材32としては樹脂材が好ましい。絶縁材32としては任意の樹脂を使用できるが、アンダーフィル樹脂22と同じ樹脂を用いれば、使用する材料が少なくて済み、簡便である。
【0020】
本実施形態において、給電端子31は断面視コ字状とされ、その一部(図示下端部)が配線基板10の外側に引き出されている。この引出し部分に、外部から給電端子31に給電するための導電材(導電性配線、導電性金属板、及び導電性シート等)からなる給電部材33が取り付けられている。給電端子31及び給電部材33の形状やサイズは適宜設計できる。
本実施形態において、金属製のネジ(固定部材)34により給電端子31と給電部材33とが互いに機械的に固定されている。給電端子31と給電部材33との固定態様については適宜設計できる。
給電端子31、給電部材33、及びネジ34の材質としては特に制限されず、大電流を流した場合の損失の少ない低抵抗材料が好ましい。これらの材質としては、低抵抗で加工が容易で安価なCuあるいはCu合金等の低抵抗材料が好ましい。
本明細書において、「低抵抗材料からなる部材」とは、材料自身の電気抵抗率が小さく、電気伝導率が大きいものを言う。さらに複数の部材を接続する部分で発生する接触抵抗が低く、総じて電気が流れやすいものを言う。
【0021】
本実施形態において、半導体パッケージ20の複数の外部接続端子21は、グランド配線層11に接続される複数のグランド端子と、信号配線層12に接続される複数の信号端子と、給電端子31に接続される複数の電源端子とに分けられている。図中、複数のグランド端子/信号端子の群に符号21Aを付し、複数の電源端子の群に符号21Bを付してある。本実施形態において、複数の電源端子21Bは半導体パッケージ20の底面中央部にかためて配置されており、その周りに複数のグランド端子/信号端子21Aが配置されている。
【0022】
配線基板10に開孔された孔部30は半導体パッケージ20の複数の電源端子21Bの群の直下に開孔されており、複数の電源端子21Bの群と給電端子31とが半田等の導電材を介して接続されている。
本実施形態において、複数の外部接続端子21(複数のグランド端子/信号端子21Aと複数の電源端子21B)は、互いに半田等による接合が可能な離間距離を保ち、かつ異なる種類の端子同士が接合時に接触しないよう、位置が設計されている。ただし、複数の電源端子21Bについては、端子同士が互いに結合されても構わない。
【0023】
本実施形態において、孔部30はスルーホールより大きい径で開孔されており、複数の電源端子21Bの群の径(電源端子エリア径)とほぼ同じ径で開孔されている。
例えば、BGA構造のLSIパッケージでは、外部接続端子のピンピッチは通常0.8〜1.0mm、最も小さいもので0.5mmピッチである。0.5mmピッチで4ピンの電源端子21Bが四角状に配置されたものでは、電源端子21Bの群の面積は0.5mm×0.5mm=0.25mmとなる。この場合、孔部30の径は0.5mm程度、面積は0.25mm程度となる。これは最も小さく見積もったときの値である。実際には、これよりピン数は多くなるので、孔部30の径は0.5mm以上となる。
【0024】
上記のような大きな径の孔部30内に給電端子31を挿入し、複数の電源端子21Bの群と給電端子31とを半田等により接続するだけでは、これらの接合強度が不充分となる恐れがある。そのため、本実施形態では、樹脂材等の絶縁材32で給電端子31を孔部30に固定し、給電端子31及び給電部材33の取付け強度を確保している。
【0025】
孔部30の径は、複数の電源端子21Bの群の径(電源端子エリア径)より大きくしても構わない。ただし、複数の電源端子21Bへの電力供給と、配線基板10内の配線密度とを考慮すれば、孔部30の径は複数の電源端子21Bの群の径(電源端子エリア径)とほぼ同じとすることが好ましい。
【0026】
本実施形態の実装構造1においては、
配線基板10に厚み方向に貫通して開孔されたスルーホールより大きい孔部30が設けられ、孔部30内に外部から半導体パッケージ20の複数の電源端子21Bに給電するための給電端子31が挿入されているので、電力損失の大きい半導体パッケージ20の複数の電源端子21Bに対して、給電端子31から配線層を介さずに直接大きな電力を供給することができる。
【0027】
本実施形態では、給電端子31を絶縁材32により孔部30に固定しているので、孔部30の径を大きくしても、給電端子31を安定的に保持できる。したがって、孔部30の径をスルーホールより大きく確保することができ、半導体パッケージ20に大きな電力を供給できる。上記したように、少なく見積もっても0.5mm径以上(0.5mm×0.5mm角以上)の孔部30を開孔することができ、半導体パッケージ20に大きな電力を供給できる。
【0028】
本実施形態では、半導体パッケージ20の底面中央部に、大電流が流れ電力損失が大きい複数の電源端子21Bをかためて配置し、その周りにグランド端子/信号端子21Aを配置している。かかる構成は配線の引回しに都合がよく、配線基板10内の配線構造を簡素化し、配線層の少層化を図ることができる。
【0029】
本実施形態では、配線基板10内にグランド配線層11/信号配線層12を狭ピッチで配線することができるので、半導体素子チップの微細化・多機能化に対応できる。一方、給電端子31から半導体パッケージ20に対して外部から直接電力を供給できるので、配線基板10内に電源配線層を設ける必要がなく、配線基板10内の配線層数を少なくできるので、電力損失を低減でき、基板設計(配線層数、配線長、配線ピッチ等)も容易となる。
【0030】
本実施形態では、配線基板10内の電源配線層は必須ではないが、配線基板10内に電源配線層を設け、給電端子31と電源配線層とを併用しても構わない。この場合でも、電源配線層数は従来よりも少なくでき、電力損失の低減及び基板設計の容易化の効果は得られる。
【0031】
本実施形態では、配線基板10内に電源配線層を設ける必要がなく、配線基板10内の配線層数を少なくできることで、配線基板10内の電力損失を少なくできるので、電力損失による発熱が抑えられ、配線基板10や半導体パッケージ20を発熱から守ることができる。
【0032】
本実施形態では、給電端子31に接続する給電部材33の設計自由度が高く、給電部材33の形状や材質を自由に設計できる。そのため、給電部材33から給電端子31に低損失で大きな電力を供給できる。
本実施形態では、給電端子31及び給電部材33として低抵抗材料を使用できるので、配線基板10内に電源配線層を設ける必要がないこと、及び配線基板10内の配線層数を低減できることと合わせて、全体的な電力損失を大幅に少なくできる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態によれば、半導体素子チップ20の改造を要することなく、半導体素子チップ20に大きな電力を供給することが可能な実装構造1を提供することができる。
【0034】
「第2実施形態」
図面を参照して、本発明に係る第2実施形態の半導体素子チップの実装構造について説明する。図2は、本実施形態の実装構造の断面図である。視認しやすくするため、各構成要素の縮尺は実際のものとは適宜異ならせてある。第1実施形態と同じ構成要素については同じ参照符号を付して説明を省略する。
【0035】
本実施形態の実装構造2は、配線基板10にLSIチップ等の半導体素子チップ41が収容された半導体パッケージ40が実装されたものである。本実施形態において、半導体パッケージ40はSOP(Small Outline Package)あるいはQFP(Quad Flat Package)等のエクスポーズドパッケージである。
【0036】
本実施形態においても、配線基板10は、半導体パッケージ40の直下に配線基板10を厚み方向に貫通して開孔されたスルーホールより大きい少なくとも1つの孔部30を有している。この孔部30内に外部から半導体パッケージ40の外部接続端子41に給電するための給電端子31が挿入され、給電端子31が絶縁材32により孔部30内に固定されている。図示する例では、孔部30は1個であるが、複数設けても構わない。
本実施形態においても、給電端子31に、外部から給電端子31に給電するための給電部材33が取り付けられている。本実施形態においても、金属製のネジ(固定部材)34により給電端子31と給電部材33とが互いに機械的に固定されている。
【0037】
エクスポーズドパッケージには、パッケージ底面にグランド接続強化や放熱等のために専用端子が設けられていることがある。本実施形態では、この専用端子が電源端子として使用されている。
半導体パッケージ40には複数の外部接続端子42が設けられており、半導体パッケージ40の側方から延びた複数の外部接続端子42Aがグランド配線層11に接続される複数のグランド端子と信号配線層12に接続される複数の信号端子とされ、半導体パッケージ40の底面に取り付けられた上記専用端子からなる外部接続端子42Bが給電端子31に接続される複数の電源端子とされている。本実施形態において、複数の電源端子42Bは、半導体パッケージ40の底面中央部にかためて配置されている。
本実施形態においても、配線基板10に開孔された孔部30は半導体パッケージ40の複数の電源端子42Bの群の直下に開孔されており、複数の電源端子42Bの群と給電端子31とが半田等により接続されている。
【0038】
本実施形態においても、孔部30はスルーホールより大きいものであり、複数の電源端子42Bの郡の径とほぼ同じ径で開孔されている。SOPやQFPのエクスポーズドパッケージの場合は、パッケージ底面に専用端子を有している。そのため、パッケージサイズ(樹脂部分の大きさ)よりは小さくなるがピンピッチに依存しないため、開孔の大きさはピンピッチからパッケージサイズ(樹脂部分と同等程度)までが可能となる。SOPやQFPのピンピッチは0.5mm程度が最小であるので、第1実施形態と同様、孔部30の径は0.5mm以上となる。
本実施形態においても、樹脂材等の絶縁材32で給電端子31を孔部30に固定し、給電端子31及び給電部材33の取付け強度を確保している。
本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0039】
「第3実施形態」
図面を参照して、本発明に係る第3実施形態の半導体素子チップの実装構造について説明する。図3は、本実施形態の実装構造の断面図である。視認しやすくするため、各構成要素の縮尺は実際のものとは適宜異ならせてある。第2実施形態と同じ構成要素については同じ参照符号を付して説明を省略する。
【0040】
本実施形態の実装構造3は、配線基板10にLSIチップ等の半導体素子チップ51が収容された半導体パッケージ50が実装されたものである。本実施形態においては、半導体パッケージ50はSOPあるいはQFP等である。本実施形態の半導体パッケージ50の底面には、第2実施形態にある専用端子がない。
【0041】
半導体パッケージ50には複数の外部接続端子52が設けられており、半導体パッケージ50の側方から延びた一部の複数の外部接続端子52Aがグランド配線層11に接続される複数のグランド端子と信号配線層12に接続される複数の信号端子とされ、半導体パッケージ50の側方から延びた他の複数の外部接続端子52Bが給電端子31に接続される複数の電源端子とされている。
【0042】
本実施形態において、配線基板10は、複数の外部接続端子52Bの直下に配線基板10を厚み方向に貫通して開孔されたスルーホールより大きい少なくとも1つの孔部30を有している。この孔部30内に外部から半導体素子チップ50の複数の外部接続端子52Bに給電するための給電端子31が挿入され、給電端子31が絶縁材32により孔部30内に固定されている。図示する例では、孔部30は1個であるが、複数設けても構わない。
本実施形態においても、孔部30はスルーホールより大きいものであり、複数の外部接続端子52Bの郡の径とほぼ同じ径で開孔されている。SOPやQFPの場合、ピンピッチは0.5mm程度が最小であるので、第1実施形態と同様、孔部30の径は0.5mm以上となる。
【0043】
本実施形態においても、給電端子31に、外部から給電端子31に給電するための給電部材33が取り付けられている。本実施形態において、金属製のネジ(固定部材)34により給電端子31と給電部材33とが互いに機械的に固定されている。
給電端子31と外部接続端子52Bとは半田等の導電材53を介して接合されている。
本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0044】
「第4実施形態」
図面を参照して、本発明に係る第4実施形態の半導体素子チップの実装構造について説明する。図4は、本実施形態の実装構造の断面図である。視認しやすくするため、各構成要素の縮尺は実際のものとは適宜異ならせてある。
【0045】
本実施形態の実装構造4は、配線基板60にLSIチップ等の半導体素子チップが収容された半導体パッケージ70が実装されたものである。半導体パッケージ70はBGA(Ball grid array)パッケージである。
【0046】
配線基板60内には、複数の配線層が絶縁層(符号略)を介して積層されている。配線基板60には、複数の配線層として、少なくとも1つのグランド配線層61と少なくとも1つの信号配線層62とが形成されている。
配線基板60の一方の基板面(図示上面)に、半導体パッケージ70が実装されている。半導体パッケージ70はその底面に複数の外部接続端子71を有し、これら外部接続端子71が配線基板60に半田等の導電材を介して接合されている。配線基板60と半導体パッケージ70との間隙には、接合強化や異物流入防止等のために、アンダーフィル樹脂22が充填されている。アンダーフィル樹脂22は必須なものではない。
【0047】
本実施形態において、半導体パッケージ70の複数の外部接続端子71は、グランド配線層61に接続される複数のグランド端子と、信号配線層62に接続される複数の信号端子と、複数の電源端子とに分けられている。本実施形態において、電源端子は放熱端子を兼ねている。
図中、複数のグランド端子/信号端子の群に符号71Aを付し、複数の放熱端子(電源端子)の群に符号71Bを付してある。本実施形態において、複数の放熱端子(電源端子)71Bは半導体パッケージ70の底面中央部にかためて配置されており、その周りに複数のグランド端子/信号端子71Aが配置されている。
【0048】
本実施形態において、配線基板60は、半導体パッケージ70の直下に配線基板60を厚み方向に貫通して開孔されたスルーホールより大きい少なくとも1つの孔部80を有している。この孔部80内に半導体パッケージ70の放熱端子(電源端子)71Bから外部に放熱するための外部放熱端子81が挿入され、外部放熱端子81が絶縁材82により孔部80内に固定されている。孔部80は1個であるが、複数設けても構わない。本実施形態において、外部放熱端子81は放熱端子(電源端子)71Bに給電する給電端子を兼ねている。
絶縁材82としては樹脂材が好ましい。絶縁材82としては任意の樹脂を使用できるが、アンダーフィル樹脂22と同じ樹脂を用いれば、使用する材料が少なくて済み、簡便である。
【0049】
本実施形態において、外部放熱端子(給電端子)81に、導電材(導電性配線、導電性金属板、及び導電性シート等)からなる第1の放熱部材83が取り付けられている。本実施形態において、金属製のネジ(固定部材)84により外部放熱端子81と第1の放熱部材83とが互いに機械的に固定されている。本実施形態において、第1の放熱部材83は外部放熱端子(給電端子)81に給電する給電部材を兼ねている。
外部放熱端子(給電端子)81、第1の放熱部材(給電部材)83、及びネジ84の材質としては特に制限されず、大電流を流した場合の損失の少なく、熱伝導率が高く放熱効果の高い低抵抗材料が好ましい。これらの材質としては、低抵抗で熱伝導率が高く加工が容易で安価なCuあるいはCu合金等の低抵抗材料が好ましい。
【0050】
配線基板60に開孔された孔部80は半導体パッケージ70の複数の放熱端子(電源端子)71Bの群の直下に開孔されており、複数の放熱端子(電源端子)71Bの群と外部放熱端子(給電端子)81とが半田等により接続されている。孔部80はスルーホールより大きいものであり、複数の放熱端子(電源端子)71Bの群の径(放熱端子エリア径(電源端子エリア径))とほぼ同じ径で開孔されている。
例えば、BGA構造のLSIパッケージでは、端子のピンピッチは通常0.8〜1.0mm、最も小さいもので0.5mmピッチである。0.5mmピッチで4ピンの放熱端子(電源端子)71Bが四角状に配置されたものでは、放熱端子(電源端子)71Bの群の面積は0.5mm×0.5mm=0.25mmとなる。この場合、孔部80の径は0.5mm程度、面積は0.25mm程度となる。これは最も小さく見積もったときの値である。実際には、これよりピン数は多くなるので、孔部80の径は0.5mm以上となる。
【0051】
上記のような大きな径の孔部80内に外部放熱端子(給電端子)81を挿入し、複数の放熱端子(電源端子)71Bの群と外部放熱端子(給電端子)81とを半田等により接続するだけでは、これらの接合強度が不充分となる恐れがある。そのため、本実施形態では、樹脂材等の絶縁材82で外部放熱端子(給電端子)81を孔部80に固定し、外部放熱端子(給電端子)81及び第1の放熱部材(給電部材)83の取付け強度を確保している。
【0052】
孔部80の径は、複数の放熱端子(電源端子)71Bの群の径(放熱端子エリア径(電源端子エリア径))より大きくしても構わない。ただし、複数の放熱端子(電源端子)71Bへの給電と、複数の放熱端子(電源端子)71Bからの放熱と、配線基板60内の配線密度とを考慮すれば、孔部80の径は複数の放熱端子(電源端子)71Bの群の径(放熱端子エリア径(電源端子エリア径))とほぼ同じとすることが好ましい。
【0053】
本実施形態では、第1の放熱部材83の底面に放熱板等の第2の放熱部材90が取り付けられている。第2の放熱部材90はネジ84によって第1の放熱部材83に固定されている。第2の放熱部材90の固定態様については適宜設計できる。
【0054】
放熱端子を有する半導体パッケージを実装する場合、従来であれば放熱端子に配線基板を接続するので、放熱端子から配線基板に熱が伝わる。本実施形態では、配線基板60を介さずに外部放熱端子81から外部に直接放熱できるので、配線基板60に熱が伝わらず配線基板60の温度上昇が抑えられ、かつ、高い放熱効果が得られる。
【0055】
本実施形態では、外部放熱端子81に第1の放熱部材83と第2の放熱部材90とを接続しているので、外部放熱端子81からの放熱が促進され、好ましい。本実施形態では、第1の放熱部材83によって配線基板60から離れた箇所に熱を逃がすことができ、放熱板等からなる第2の放熱部材90によって、空気中に効果的に熱を逃がすことができ、これら複数の放熱部材によって高い放熱効果が得られる。外部放熱端子81に取り付ける放熱部材の種類及び数については適宜設計できる。
【0056】
本実施形態では、放熱端子71Bが電源端子であり、外部放熱端子81が給電端子であり、第1の放熱部材83が給電部材である場合について説明した。かかる構成は第1実施形態と同様であるので、第1実施形態と同様の効果も得られる。
本実施形態では、配線基板60内の電源配線層は必須ではないが、配線基板60内に電源配線層を設け、給電端子である外部放熱端子81と電源配線層とを併用しても構わない。この場合でも、電源配線層数は従来よりも少なくでき、電力損失の低減及び基板設計の容易化の効果は得られる。
本発明は、放熱端子71Bがグランド端子であり、外部放熱端子81が放熱機能を有するグランド接続端子であり、第1の放熱部材83が放熱機能を有するグランド接続部材である場合にも適用できる。この場合は、配線基板内に電源配線層は必要である。
【0057】
(設計変更)
本発明は上記態様に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において適宜設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1〜4 実装構造
10 配線基板
11 グランド配線層
12 信号配線層
20 半導体パッケージ
21 外部接続端子
21A グランド端子/信号端子
21B 電源端子
30 孔部
31 給電端子
32 絶縁材
33 給電部材
40 半導体パッケージ
41 半導体素子チップ
42 外部接続端子
42A グランド端子/信号端子
42B 電源端子
50 半導体パッケージ
51 半導体素子チップ
52 外部接続端子
52A グランド端子/信号端子
52B 電源端子
60 配線基板
61 グランド配線層
62 信号配線層
70 半導体パッケージ
71A 外部接続端子(グランド端子/信号端子/電源端子)
71B 放熱端子
80 孔部
81 外部放熱端子
82 絶縁材
83 第1の放熱部材
90 第2の放熱部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのグランド配線層と少なくとも1つの信号配線層とを含む複数の配線層を備えた配線基板の一方の基板面に少なくとも1つの半導体素子チップが実装された実装構造であって、
前記配線基板は、当該配線基板を厚み方向に貫通して開孔されたスルーホールより大きい少なくとも1つの孔部を有し、当該孔部内に外部から前記半導体素子チップの外部接続端子に給電するための給電端子が挿入され、当該給電端子が絶縁材により前記孔部内に固定された実装構造。
【請求項2】
前記配線基板は内部に電源配線層を有していない請求項1に記載の実装構造。
【請求項3】
前記孔部は前記半導体素子チップの前記外部接続端子の直下に開孔された請求項1又は2に記載の実装構造。
【請求項4】
前記絶縁材が樹脂材である請求項1〜3のいずれかに記載の実装構造。
【請求項5】
前記給電端子に、外部から当該給電端子に給電するための給電部材が取り付けられた請求項1〜4のいずれかに記載の実装構造。
【請求項6】
前記給電端子及び前記給電部材が低抵抗材料からなる請求項5に記載の実装構造。
【請求項7】
少なくとも1つのグランド配線層と少なくとも1つの信号配線層とを含む複数の配線層を備えた配線基板の一方の基板面に少なくとも1つの半導体素子チップが実装された実装構造であって、
前記半導体素子チップは放熱端子を有するものであり、
前記配線基板は、当該配線基板を厚み方向に貫通して開孔されたスルーホールより大きい少なくとも1つの孔部を有し、当該孔部内に前記半導体素子チップの放熱端子から外部への放熱を行う外部放熱端子が挿入され、当該外部放熱端子が絶縁材により前記孔部内に固定された実装構造。
【請求項8】
前記放熱端子が電源端子又はグランド端子である請求項7に記載の実装構造。
【請求項9】
前記孔部は前記半導体素子チップの前記放熱端子の直下に開孔された請求項7又は8に記載の実装構造。
【請求項10】
前記外部放熱端子に放熱部材が取り付けられた請求項7〜9のいずれかに記載の実装構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−187605(P2011−187605A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50170(P2010−50170)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】