説明

容器内に保持された液体を分注する装置

本発明は、容器に保持された液体を分注するための装置(10)に関する。そして、該装置は、液体の装置(10)外への放出を許容する液体開放位置と液体が装置内に戻るのを阻止する逆流防止位置とを有するエラストマ要素(16)を備え、上記装置さらに、凹部領域(31,40)内に配設されたエラストマ要素(16)を押圧支持して、エラストマ要素(16,16′,16″)を、それが逆流防止位置をとることができるように変形させるように機能する支持手段(27,36,38)を備えているものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
容器内に保持された液体を分注する装置に関する。より正確に、しかし排他的でなく言うと、本発明は、予め定められた一定量又は「一回分」の液体を、例えば、眼、鼻、口に分注するための装置、特に、洗眼液又は目薬等の点眼液を分注するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液体(例えば、洗眼液)を保持するとともに該液体を液滴の形で分注するためのスポイト・システムを備えたボトル(瓶)は知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このシステムでは、液体が外部媒体(例えばバクテリア)によって汚染される如何なる危険からも保護する必要がある。液体を無菌に保つための単純な手段は、一定量分だけが保持されたボトルを使用して、ボトルを一回使用した後に廃棄することである。残念なことに、使い捨てのボトルは環境にとって有害である。
【0004】
この種の一回切りのボトルに代わるものとして、複数回の使用を前提に設計されたボトルを使用することもできる。すなわち、このボトルは、一定量が分注された後に、それに続いてさらに一定量の分注が可能に再度閉じられる。複数回分の使用が可能なボトルを使用することの困難性は、貯留された液体を如何にして保存するかという点にある。各回において一定量の液体が分注される度に、外部媒体が容器内に侵入する可能性があり、それによって、貯留された液体が汚染されるという危険性がある。液体が汚染されないために、液体には通常、化学防腐剤が加えられる。残念なことに、この種の防腐剤の使用は特定のユーザに対してアレルギーや好ましくない副作用を引き起こすことが報告されている。
【0005】
本発明の目的は、貯留された液体に化学防腐剤を加えることなく、該液体が汚染されないことを十分に保証する、複数回の使用が可能な液体分注装置を提供しようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のために、本発明は、容器に保持された液体を分注するための装置を対象とする。
【0007】
そして、上記装置は、液体の装置外への放出を許容する液体開放位置と液体が装置内に戻るのを阻止する逆流防止位置とを有するエラストマ要素を備え、上記装置さらに、凹部領域内に配設されたエラストマ要素を押圧支持して、エラストマ要素を、それが逆流防止位置をとることができるように変形させるように機能する支持手段を備えているものとする。
【0008】
このように、エラストマ要素の逆流防止位置においては、エラストマ要素が初期位置(非変形状態)に戻ろうとするように、エラストマ要素に変形を生じさせて、それによって、エラストマ要素に対して応力を付与することが可能となる。そして、これにより、エラストマ要素は、逆流防止位置において装置に対しシール性を付与することが可能となる。
【0009】
この結果、一旦容器に保持された液体が、装置のシール領域から流出するならば、前記液体が装置の他の要素へ漏出しないように上記押圧されたエラストマ要素により閉ざされた前記シール領域に、液体が再び流入することはできない。この構成によれば、容器に保持された液体は、一方向(例えば、容器から流出する方向)にのみ流れることができる。換言すれば、エラストマ要素は、装置に対して動的なシーリングを提供する。
【0010】
エラストマ要素の変形は、曲げ変形が好ましいことに留意する必要がある。すなわち、支持手段は、凹部領域内に配設されて、エラストマ要素に曲げ変形を生じさせるように該要素に対して局所的に力を付与する。この曲げ変形により、エラストマ要素は、初期形状に復帰しようとする。そして、それ故に、エラストマ要素は、支持手段に対して局所的に押圧されたままの状態になり、それによって所望のシーリングを提供する。変形は、凹部領域に配設されたエラストマ要素を押圧支持することにより生じることに留意するべきである。例えば、エラストマ要素における、該要素を変形させるための(より正確に言うと要素に曲げ変形を生じさせるための)支持力が作用する部分の背面には空間が設けられる。したがって、この変形は、固体表面に対するエラストマ要素の単なる圧縮とは異なっている。このように、エラストマ要素の全体が圧縮されることに加えて、支持手段は、エラストマ要素の全体形状を変化させる局所変形を生じさせる。
【0011】
装置の効果の中うち、少なくとも一つは、複数回使用可能な容器に有用であり、容器に保存された液体が汚染されないことを保証するものであると理解される。液体は如何なる防腐剤も含まない。なぜなら、エラストマ要素により提供されるシーリングは汚染を防止するのに十分だからである。勿論、液体に防腐剤を含ませることも可能である。
【0012】
装置によるシーリングは、ユーザに対して如何なる制約をも課さない点で有利である。
【0013】
例えば、それは、フィルター膜(フィルタを備えていて、埃が容器に浸透するのを防止するように設計されている)を使用することとは異なる。この種のフィルター膜は、容器が汚染されるのを防止するために有利であるが、該フィルター膜は、一定量の液体の送給を妨げる部材となるため、このことは、ユーザにとって、液体を分注するためにより多くの力を装置に付加しなければならないという点で好ましくない。上述した装置は、一回分の送給に際してこのような妨げを受けないことが好ましい。これにより、開放位置では、液体を如何なる妨げも受けずに流通させることができるからである。
【0014】
エラストマ要素は、ゴム、シリコン、熱可塑性エラストマ(TPE)、又は、シーリングを提供するための他の如何なる適切な材料で構成してもよい。
【0015】
下記の説明において、「下方」は、装置の液体容器に向かう向きを意味し、「上方」は、反対側の向きを意味する。分注装置は、以下の特徴のうち少なくとも一つを有するものであってもよい。
【0016】
エラストマ要素は、液体開放位置において、逆流防止位置において受ける変形を拡大した変形を生じる。このように、エラストマ要素は、それが一旦、大きな変形を生じるために十分な圧力(このような圧力は、液体を流出させるためにユーザによって容器に付与される)を受けたときには、液体開放位置をとる。したがって、エラストマ要素は、ユーザにより付与される圧力なしに液体開放位置をとることはできない。このような、エラストマ要素の構成は、動的なシーリングを保証するとともに、液体が一方向にのみ流通するのを許容する。
【0017】
支持手段は、互いにずらして配置されると共にエラストマ要素における第1表面及び第2表面をそれぞれ押圧支持する第1支持手段及び第2支持手段を備え、上記第2表面は、第1表面とは反対側に位置している。このように、第1及び第2支持手段は、互いにエラストマ要素の反対側を押圧支持する。
【0018】
例えば、第1支持手段は、エラストマ要素の表面の中心部を押圧支持する中心支持手段からなり、第2支持手段は、中心支持手段の周囲で且つ中心支持手段の支持側とは反対側から、エラストマ要素の反対側面を押圧支持する同心状の支持手段とすることができる。第1及び第2支持手段の組合せによって、エラストマ要素が第1支持手段によって第2支持手段に対して押圧されるように、又は、その逆になるように、エラストマ要素に曲げ変形を生じさせることができ、それによって、シーリングを提供することができる。
【0019】
エラストマ要素は、装置のインナーコアの周囲に係合させることが好ましい。このように、前記コアには、エラストマ要素を、支持手段に対して漏れのない形で押圧することで局所的に変形させる突出部のような支持手段を設けるようにしてもよい。
【0020】
支持手段は、エラストマ要素が固定されたインナーコア上に形成された突出部からなるものであってもよい。この突出部は、例えば円形状のリブによって構成することができる。
【0021】
支持手段は、エラストマ要素を覆うケーシング上に形成された突出部からなるものであってもよい。この突出部は、例えば円形状のリブ、より正確にはケーシングの中央に配置された少なくとも一つのスタッドからなるものであってもよい。
【0022】
支持手段は、エラストマ要素に設けられた突出部からなるものであってもよく、エラストマ要素の一部とされることが好ましい。
【0023】
エラストマ要素は、下方に湾曲する皿状の円盤又は下方に湾曲するコーン部からなるものであり、装置のインナーコア内の煙突形状部内に配設されていることが好ましい。
【0024】
エラストマ要素は、上方に湾曲するコーン部からなり、このコーン部は装置のインナーコアに対して係合するように被せられることが好ましい。
【0025】
装置は、エラストマ要素(16)によって装置外に開放される液体を案内する液体案内溝を備えていてもよい。
【0026】
エラストマ要素は、分注される液体を計量して排出する計量手段を備えていてもよい。これらの計量手段は、例えば、液体がいつも同じ体積になるように調整された液滴を形成することを可能にする幾何学的形状を有するキャビティを規定する。これらの計量手段はエラストマ要素に直接形成することが特に好ましい。何故なら、開放位置において、エラストマ要素により開放され、それによってシール領域を通過する液体は、エラストマ要素の内部のみを流れることになるからである。この結果、液体が、装置から開放された後に、装置の他の部分に侵入する危険性は減少する。計量手段がシール部材以外の部品(例えば、エラストマ要素を覆うケーシング)に取り付けられている場合には、液体が、シール部材と計量手段との間を流れる間に装置の他の部品に侵入する。さらに、計量手段をシール部材に組み込むことによって、汚染された液体を含むかもしれないデッドスペースを容易に減らすことができる。この種のデッドスペースは、シール領域と液滴を計量するための計量手段との間のスペースに対応しており、一例ではエラストマ要素ににより規定される。エラストマ要素は、可撓性を有し且つ部品にぴったりと係合する形状を有していて、デッドスペースを可能な限り低減することができる。これによれば、デッドスペースが剛体部品によって規定される倍に比べてデッドスペースを容易に低減することができる。
【0027】
本発明の単なる実施形態である以下の説明を図面を参照しながら読み進めることで、本発明についての理解がより一層深まる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1A】図1Aは、本発明の実施形態1に係る、エラストマ要素を含む分注装置を戻り阻止位置において示した断面図である。
【図1B】図1Bは、図1Aに示されたエラストマ要素を示す断面図であり、図の二点鎖線は該エラストマ要素が非変形の状態を示している。
【図1C】図1Cは、図1Aに示される装置のインナーコア及び非変形のエラストマ要素の分解斜視図と、図1Aに示される装置のケーシングの断面図及び斜視図である。
【図2A】図2Aは、装置の変形例を示す図1相当図である。
【図2B】図2Bは、図2Aのエラストマ要素を示す図1B相当図である。
【図3A】図3Aは、実施形態2を示す図1A相当図である。
【図3B】図3Aの装置のエラストマ要素を示す図1B相当図である。
【図3C】図3Cは、図3Aの装置のコアを示す分解斜視図と、図3Aの装置のエラストマ要素のカット断面斜視図と、図3Aの装置のケーシングの斜視断面図とを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1Aに示すように、実施形態1に係るディスペンサ装置10は、分注用の液体を保持する容器(図示省略)に固定されたインナーコア12を備えている。例えば、液体は、目薬又は洗眼液とされる。装置10はさらに、保護キャップ(図示省略)によって任意に覆われたアウターケーシング14を備えている。コア12及びケーシング14との間には、エラストマ要素16(例えば、シリコン部材、ゴム部材、又は、実際にはTPE)が介設されており、この要素16は、「頂部」の第1表面13と、それとは反対側の「底部」の第2表面15とを備えている。このエラストマ要素16は、装置10において動的なシーリングを付与する。例えば、この要素16は、矢印18で示すように、液体が容器内から装置外へと流出するのを許容するが、例えば、矢印20に示すように、液体が装置外から装置内へとの流入するのを阻止する。
【0030】
アウターケーシング14は、液体を装置10から解放するための「解放」用の開口部が形成された「解放」端部22を有している。前記開口部22のすぐ上流側には、分注される液体を計量するための計量手段24を有するケーシング14が設けられている。前記計量手段24は、キャビティを有しており、このキャビティの容積形状によって、装置が使用される(例えば、ユーザが容器を絞ることで該容器に一定の圧力が付与される)各回毎に、一定量の液体を計量して分注可能になっている。さらに、計量手段24のキャビティは、分注される一定量の液滴を分離可能な特別な形状を有している。計量手段24の上流には、ケーシング22の内壁面25に開口する分注開口部26を有するケーシング14が設けられている。開放開口部26の近傍において、前記内壁面25には、エラストマ要素16の第1表面13を押圧支持する第1支持手段として機能する突出部27が設けられている。より正確に言うと、第1支持手段27は、4つの支持スタッド(studs)を有しており、それぞれが、4つの溝29によって区画され、内壁面25に形成されるとともに、後述するようにエラストマ要素によって開放される液体を案内するように機能する。溝29は、本実施形態では、それらが一対ずつ配置されるように、互いに90°の間隔を空けて配設されている。したがって、図1Aでは、図の断面は、整列配置された2つの溝29の中心を通る。図1Aからわかるように、ケーシング内壁面25に形成された突起27は、ケーシング14とエラストマ要素16との間の空間で構成される第1凹部領域又は凹部31を規定する。ケーシング14は、該ケーシングをインナーコア12に組み付けるための手段28をさらに備えている。より正確に言うと、手段28は、しっかりとした係合固定を提供する形状、例えば、コア12内に配設され且つ相補型手段30(例えば図1Cに示されたカラー30として示される)と協働する突出部28を有している。組立て手段28,30としては、他の形式を採用することもできる。ケーシング14及びコア12は、締付け又は超音波溶接によって一緒に固定することもできる。
【0031】
この例では、インナーコア12は、中空円筒形状を有していて、その端部には液体を開放するための開口部34が形成されている。インナーコア12の端部32には、エラストマ要素16を押圧支持する支持領域が設けられている。より正確に言うと、前記支持領域は、第2支持手段として機能する円環状の突出部36,38からなっていて、エラストマ要素16の第2表面15を押圧支持するように設計されている。支持手段36,38は、支持手段27に対してずらして配置されている。すなわち、それらは、手段27に完全に一致していない。その中心において、表面部32は、凹部領域又は凹部40を有していて、該凹部40内に開口部34が開口している。
【0032】
図1Cから分かるように、エラストマ要素16は円盤形の皿状に形成されている。
【0033】
エラストマ要素16が初期位置にあるとき、すなわち、それが非変形の状態にあるときには、該エラストマ要素16は、図1B又は図1Cの上方に湾曲した破線で示される形状を有している。さらに、非変形の位置に加えて、エラストマ要素は、他の2つの位置をとることができる。すなわち、図1A及び図1Bの実線で示すように、逆流防止位置又は「阻止」位置をとることができ、その位置において、全体形状は下方に湾曲した皿状をなしていて、液体開放位置では、要素16の形状は下方に向かってより大きな度合いで湾曲し、要素16の表面部42は、液体が上記表面部42における突出部36,38の間を通過できるように、矢印44で示す如く上方に移動する。
【0034】
インナーコア12及びアウターケーシング14は、可撓性材料(例えば、ポリプロピレンやでポリエチレン)で構成されていることが好ましい。
【0035】
図1Cを参照しながら、装置10の組立てについて以下で説明する。第1に、要素12,14,及び16は、別々に製造される。エラストマ要素16は、それが非変形の状態にある初期位置において、芯だし手段46によってコア12の表面部32に配設される。
【0036】
エラストマ要素16がコア12に配置された後は、組み立て手段28,30が協働するように、アウターケーシング14がその上に固定される。エストラマ要素16は、コア12とケーシング14とを組み立てることにより変形し、それによって、図1Aに示す逆流防止位置をとる。この逆流防止位置において、コア12の凹部40に配設された第1支持手段は、エラストマ要素を変形させ、そして、より正確には、エラストマ要素16を凹部40内に向かって下方に曲げるべく、エラストマ要素の中心部を押圧支持する。同時に、凹部31内に配置される手段36,38は、要素16が曲がって、且つ、図1gに示すようにエラストマ要素の凹面が逆転するように、そして、要素16が第1手段27により第2手段36,38に対して押圧されるように、エストラマ要素の周辺部42を押圧支持し、それによってシーリングを提供する。
【0037】
次に、装置10の動作について説明する。装置が休止位置にあるときには、ユーザは、容器に対して如何なる圧力も付与しない。この結果、液体は容器内に保持されたままである。この位置は、図1に示されていて、この位置では、要素16は、上述の通り、逆流防止位置にある。そして、支持手段27,36,38は、液体が容器内、特に、開放開口部40に侵入するのを防止するべく、要素16を突起36,38に対して押圧して変形させる。
【0038】
前記逆流防止位置において、要素16における周辺部42が押し付けられる支持手段36,38は、「シール領域」と呼ばれる領域を閉塞する。この領域に対しては、装置10内の液体の保存制限に関して問題を生じることなく、例えばバクテリアのような不純物が侵入不可能(非常に少ない量だけしか侵入できない)になっている。この例では、シール領域は、容器の内部容積、コア12の内部容積、開口部34、及び凹部40を含んでいる。
【0039】
ユーザが、容器を圧搾(絞るよりも圧搾)することによって容器へ圧力を付与するときに、液体及びそれに先立つ空気が、エラストマ要素16に対して圧力を付与し、エラストマ要素16は、矢印44により示される向きにさらに変形する。この結果、突出部36,38及びエラストマ要素16の底面15間に位置する空間に液体が流入する。このような方法で放出(開放)される液体は、エラストマ要素の周辺部42のエッジ部を通過して、頂面13とケーシング14の表面25との間を流通する。より正確には、溝29に侵入する液体は、スタッド27間を通って、計量手段24を満たすために開放開口部26を介して放出される。計量手段24が一度満たされると、液滴が形成されて装置10から開放される。
【0040】
ユーザが圧力を付与するのを止めたときには、容器内に保持された液体はもはや、エラストマ要素16に対して圧力を付与しない。この結果、エラストマ要素は、もはや変形を強いられることもなく、そして、液体開放位置を強いられることもない。そして、それによって、装置は再び逆流防止位置をとり、この位置では、周辺部42は突出部36,38を押圧(圧迫)する。
【0041】
図1A〜図1Cの装置では、要素16が、コア12及びケーシング14間に挟み込まれて、そして、エラストマ16とケーシング14の内壁面との間には非常に小さな空間が形成される点に留意すべきである。この結果、装置内において、液体が、開口部26を通過した後、開口部26を介して矢印20とは反対側に戻って来て装置内を汚染することを可能にする空間が殆ど存在しない。
【0042】
図2A、図2Bに示す変形例では、エストラマ要素16′は、下側に湾曲したコーン(円錐)状の全体形状を有している。加えて、端部32において、インナーコア12は、開放開口部34から延設される煙突形状を有している。支持面36′を有するこの煙突形状は、エラストマ要素16′(より正確に言うと、上記要素16′の周辺部42)を支持する第2支持手段として機能する。
【0043】
この変形例において、アウターケーシング14は、開口部26の方へ液体29を導くための案内溝を必ずしも備えている必要はない。そして、エラストマ要素16′の頂面13は、液体を、開口部26の底部へ導くために十分に湾曲している。
【0044】
支持面36′は、付随的に、図1Cに示すリブ36,38のような突出部を備えていてもよい点に留意するべきである。
【0045】
図2Aの装置10の組み立て方法は、図1Cの装置の組み立て方法に類似している。この変形例において、端部32の煙突形状の壁部は、芯だし手段46として機能する。この結果、アウターケーシング14が固定される前に、エラストマ要素16′を、その非変形位置(図2Bの破線で示される位置)でインナーコア12上に容易に配置することができる。アウターケーシング14が、エラストマ要素16′を有するインナーコア12に固定されたときには、第1支持手段27は、図2Aに示す位置(すなわち、逆流防止位置)をとることができるように、エラストマ要素16′を変形させる。この位置において、弾性をもって支持面36′に対して押し付けられるエラストマ要素16′の周辺壁によって、液体は装置10のシール領域に侵入することができない。
【0046】
図2Aの装置10は、図1Aの装置に類似する動作を行うと理解される。
【0047】
図2A,図2Bの装置では、支持手段27は、図1A〜図1Cの当接手段よりも大きく突出しており、開口部34を延長する凹部40は、図1Aに示す凹部40の高さよりも相対的に大きな高さを有する点に留意すべきである。この結果、図2Aのエラストマ要素16′は、開口部34から比較的離れて配置されることとなり、それ故、仮に要素12又は14の寸法が製造誤差に起因して変化したときでも、それが上記開口部34を遮断する危険性はない。
【0048】
図3A〜図3Cに示す実施形態では、エラストマ要素16″は、上側に湾曲して円錐部に連結可能なコーン状に形成されている。加えて、インナーコーン12の端部32は、上側に湾曲するコーン部に連結可能な全体形状、特に、弾丸形状を有しており、その上に、エラストマ要素16″が係合するように設計されている。
【0049】
より正確に言うと、エラストマ要素16″は、底部カラー50と、要素16″が非変形位置にあるときに全体形状が双曲面状をなし、そこから要素16″のX軸の方に湾曲される側壁52(図3Bに破線で示す)と、分注用の液体を計量するための手段24″が形成され、壁52を延長してなる端部54とを有している。エラストマ要素16″をコア12の上に係合させるために、上記要素は、比較的柔らかい材料で構成しなければならず、壁52は比較的薄く形成しなければならない点に留意すべきである。
【0050】
加えて、エラストマ要素によって覆われるように設計されたコア12の端部32は、外方に膨出する側壁58のベースとして機能する周辺底部ベース56を備えており、この側壁58は頂部60に設けられている。側壁58は、図1Cのリブ36,38に類似し且つエラストマ要素の側壁52を押圧支持するように機能する、2つの円形状の突出部36″,38″を備えている。加えて、ベース56の近傍では、側壁58は、直径方向において互いに反対側に位置し且つコア12から液体を開放するための開口部として機能する2つのキャビティ34″を備えている。
【0051】
図3Aのケーシング14は、図1Aのケーシングとは僅かに異なっている。このケーシングは計量手段24を備えていない。何故なら、計量手段24″は、エラストマ要素16に直接設けられているからである。このように、ケーシング14の端部22は、エラストマ要素の端部54のための空間を形成する筒状の空洞62を規定する。
【0052】
図3Aの装置の組立ては、前図の装置の組立てと類似している。第1に、エラストマ要素16″は、矢印64で示される方向において、該要素16″を端部32に被せて係合させることでコア12上に固定されている。要素16″をインナーコア12上に固定することによって、その側壁52が変形を強いられる。何故なら、その非変形位置において、エラストマ要素16″は、端部32の外径よりも小さい直径を有しており、上記エラストマ要素16″は、上記端部32により変形させられるからである。このように、靴下の如く、要素16″は変形し、そして、最終的に、図3Aに示される逆流防止位置に対応する最終位置をとる。特に、支持手段36″,38″は、エラストマ要素16″を変形させるべくその側壁52に圧力を付与する。要素16″がコア12上に一旦配設されると、図1A又は図2Aと同じ組み立て方法で、アウターケーシング14をコア12上に固定することができる。
【0053】
本実施形態では、アウターケーシング14内に設けられた肩部66によって、エラストマ要素16″″の底部カラー50をコア12のベース56に対して固定することが可能になる点に留意すべきである。この固定により、エラストマ要素16″を端部32の周囲に固定することが可能になり、それによって、コア12とケーシング14との間に静的なシーリングが付与される。この静的シーリングによって、エラストマ要素16″は、キャビティ34″から流出する液体と、端部32の外側表面及びエラストマ要素16″の内側表面間を流れる液体とが、コア12及びケーシング14間に侵入するのを防止することができる。この静的シーリングを達成するために、エラストマ要素16″の部分50は、装置10の使用全般において一定のシーリング位置をとる。静的シーリングは、エラストマ要素16″の側壁52によって付与され、液体が一方向に開放されるのを許容する動的シーリングとは異なる。
【0054】
次に、図3Aの装置の動作について説明する。この作動モードは、前図に示された作動モードと類似している。装置10が停止しているとき、すなわちユーザが容器を絞らないときには、液体がシール領域に侵入しないように、エラストマ要素16″は、図3Aに示す如く逆流防止位置にある。この位置においては、液体が戻るのを阻止するために、側壁52は、特に支持手段36″,38″により変形を強いられて、前記支持手段に対して押圧される。ユーザが容器を絞るときには、液体が開放開口部34を介してコア12から流出する。液体により付与される圧力は、図3Aの矢印44によって示される方向においてエラストマ要素16″の側壁52をさらに変形させる。この結果、支持手段36″,38″及び側壁52間に空間が形成され、液体が通過可能になる。このような方法で放出される液体は、それから、開口部26″を通過して、計量手段24を通過することができる。一旦、十分な量の液体が計量手段24を満たすと、液体は装置10から分注される。一旦、ユーザが容器への圧力を付与を停止すると、液体はエラストマ要素の側壁52への圧力の付与を停止し、この結果、前記要素は、支持手段36″,38″に対して再度押圧されて、逆流防止位置に戻る。
【0055】
本発明は、上述した実施形態には限定されない点に留意する必要がある。特に、支持手段には、多くの形態を採用することができる。例えば、それらは、支持スタッド(例えばスタッド27)の形式や、円形の支持リブ(例えばリブ36,38,36″,38″)の形式、又は、比較的大きな支持面(例えば支持面36′)の形式を採用することができる。これらの支持手段は、上述した装置の支持手段と置換又は組み合わせることができる。加えて、支持リブをエラストマ要素16,16′,又は16″に直接設けることも可能である。例えば、図1Aのリブ36,38を平坦面に置換し、そして、エラストマ要素16の底面上に、リブ36,38と類似の円形状のリブを設けることも可能である。他の図の装置において、類似の構成を備えることも可能である。
【0056】
装置10の組立てに関しては、エラストマ要素16,16′,16″がコア12に固定される第一ステップを、エラストマ要素の位置を保つためにエラストマ要素16,16′,16″を逆さまに配置可能なケーシング14の内部に固定するステップに置換することも可能である。
【0057】
装置の部品点数を減少させて且つ組み立て工数を減少させる、エラストマ要素16,16′,16″を、オーバーモールド成形又は射出成形により、ケーシング14又はコア12上に直接成形することによって、装置の部品点数及び組み立て工数を減少させることも考えられる。
【0058】
さらに、装置10は、容器上に直接、又は、液体を分注するためのポンプを備えた容器上に固定することができる。容器をコア12を有する一部品で構成構成することも可能である。
【0059】
装置10の効果は上述した通りである。特に、支持手段が配設される凹部領域31,40の存在は、エラストマ要素16,16′,16″が、逆流防止位置又は開放位置をとることができるように変形するの抑制することに留意すべきである。このように、エラストマ要素の変形は、それを撓ませるものであって、表面に対する単なる圧縮と異なっている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に保持された液体を分注するための装置(10)であって、
上記装置は、液体の装置(10)外への放出を許容する液体開放位置と液体が装置内に戻るのを阻止する逆流防止位置とを有するエラストマ要素(16,16′,16″)を備え、
上記装置はさらに、凹部領域(31,40)内に配設されたエラストマ要素(16,16′,16″)を押圧支持して、エラストマ要素(16,16′,16″)を、それが逆流防止位置をとることができるように変形させるように機能する支持手段(27,36,38,36,36″,38″)を備えていることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
上記エラストマ要素(16,16′,16″)は、上記液体開放位置では、上記逆流防止位置において受ける変形をさらに拡大した変形を生じることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の装置において、
上記支持手段は、互いにずらして配置されると共に上記エラストマ要素における第1表面及び第2表面をそれぞれ押圧支持する第1支持手段(27)及び第2支持手段(36,36,36′)を備え、
上記第2表面は、第1表面とは反対側に位置し、
上記第1支持手段は、上記エラストマ要素(16,16′)の表面の中心部を押圧支持する中心支持手段(27)からなり、
上記第2支持手段は、上記中心支持手段の周囲で且つ該中心支持手段が支持する側とは反対側から、上記エラストマ要素(16,16″)の反対側面を押圧支持するように同心状に配置された支持手段(36,38,36′)であることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1又は2記載の装置において、
上記エラストマ要素(16″)は、上記装置のインナーコア(12)の周囲に係合されていることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の装置において、
上記支持手段は、上記エラストマ要素(16,16″)が固定されたインナーコア(12)上に形成された突出部(36,38,36″,38″)、又は上記エラストマ要素(16,16″)を覆うケーシング(15)上に設けられた突出部(27)、又は上記エラストマ要素に設けられた突出部を有していることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の装置において、
上記エラストマ要素は、下方に湾曲する皿状の円盤(16)、又は下方に湾曲するコーン部(16′)からなることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の装置において、
上記エラストマ要素(16″)は、上方に湾曲するコーン部からなることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の装置において、
上記エラストマ要素(16)によって装置外に開放される液体を案内する液体案内溝(29)を備えていることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の装置において、
上記エラストマ要素(16″)は、分注用の液体を計量して排出する計量手段(24″)を備えていることを特徴とする装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【公表番号】特表2011−515290(P2011−515290A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501269(P2011−501269)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【国際出願番号】PCT/FR2009/000357
【国際公開番号】WO2009/130412
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(508375642)ルグザム ヘルスケア ラ ヴェルピリエール (5)
【Fターム(参考)】