説明

容器用着色ラミネート金属板およびその製造方法

【課題】 缶内容物充填後のレトルト熱殺菌処理時において,フィルムおよび着色接着剤の変色が生じず,外観の意匠性を維持することが可能な容器用着色ラミネート金属板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明に係る容器用着色ラミネート金属板は,金属板10の片面または両面に,着色接着剤層22と,少なくとも下層24および表層26の2層からなるポリエステル樹脂フィルムとを順次積層した複層樹脂フィルム20を被覆してなる容器用着色ラミネート金属板であって,着色接着剤層22は,エポキシ樹脂を主成分とし,さらに,着色剤,高エーテル化アミノ樹脂およびブロックイソシアネート化合物を含み,下層24は,125℃における半結晶化時間が100秒以下であるポリエステル樹脂を主成分とし,表層26は,融点が245℃以上の高融点ポリエステル樹脂を主成分とすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,容器用着色ラミネート金属板およびその製造方法に関し,特に,平滑かつ光輝色の外観を有し,意匠性に優れる容器用着色ラミネート金属板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の容器用金属缶には塗装金属板が用いられていたが,塗装工程は複雑で生産性が低いばかりでなく,多量の溶剤を排出する問題があるため,最近では,熱可塑性樹脂フィルムを加熱した金属板に熱圧着させたラミネート金属板が用いられている。特に,ポリエステル樹脂フィルムラミネート金属板は,優れた経済性,食品衛生性および熱融着特性を有することから広く用いられるようになってきている。
【0003】
ところで,従来の塗装金属板を用いた缶詰などの容器用金属板は,母材である金属板の暗い色調を嫌って,ゴールドや白色等の塗装をし,意匠性を付与することが行われている。しかし,これらをラミネート金属板で代替しようとする場合には,顔料などの着色剤をラミネートフィルムに配合させることが困難である,という問題がある。
【0004】
ラミネートフィルムを着色する方法としては,フィルム樹脂中に顔料などの着色剤を添加して着色フィルムを製造する方法と,クリアーフィルムの後加工として着色剤を塗布して着色層を形成する方法とがある。ただし,前者のフィルム樹脂中に着色剤を添加する方法では,着色した原料樹脂の製造コストアップ,フィルム製造工程での色替えロスによる製造負担により,フィルム製造コストが大幅に上昇する。したがって,後者のクリアーフィルムの後加工として着色層を形成する方法が有利である。
【0005】
ラミネートフィルムの後加工として着色層を形成する方法には2種類の方法が考えられる。第1の方法は,着色層を最表層に設ける方法である。この場合には,顔料の剥離や色落ちなどの問題が発生する。一方,第2の方法は,フィルムと金属板との間に着色層を設ける方法である。第2の方法の場合には,通常,接着剤層中に着色剤を含有させて着色接着剤層を形成する。この方法によれば,フィルムと金属板との間に接着剤層を兼ねた着色層を設けることにより,製造工程を一部省略して製造コストを削減し,生産性を向上させることができる(例えば,特許文献1〜5を参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2002−256247号公報
【特許文献2】特開平4−266984号公報
【特許文献3】特開平8−199147号公報
【特許文献4】特開平10−183095号公報
【特許文献5】特開2002−206079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら,上記特許文献1〜5に記載の接着剤層やフィルムを用いた場合は,缶内容物充填後のレトルト熱殺菌処理時に,接着剤やポリエステル樹脂フィルムが変色するレトルトブラッシングが発生するという問題があった。そのため,加工されたラミネート金属板は,意匠性の優れた外観を得ることができなかった。
【0008】
そこで,本発明は,このような問題に鑑みてなされたもので,その目的は,缶内容物充填後のレトルト熱殺菌処理時において,フィルムおよび着色接着剤のレトルトブラッシングが生じず,外観の意匠性を維持することが可能な,新規かつ改良された容器用着色ラミネート金属板およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ところで,着色接着剤のレトルトブラッシングは,従来の接着剤の硬化反応の速度が遅いため,ラミネート金属板製造において接着剤の熱硬化が不十分となり,缶内容物充填後のレトルト熱殺菌処理時に接着剤硬化反応が起こることによって発生すると考えられている。また,ポリエステル樹脂フィルムのレトルトブラッシングは,その結晶化速度が遅いことに起因することが知られている。さらに,外観の意匠性はラミネートロールの汚れや傷による凹凸が,ラミネート後フィルムに転写することによっても損なわれる。
【0010】
そこで,本発明者らは,上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果,ラミネート工程での着色接着剤の硬化を促進させるとともに,フィルムの下層として結晶化速度の速いポリエステル樹脂を用い,フィルムの表層として高硬度,高融点のポリエステル樹脂を用いた複層構造のフィルムを採用することにより,着色接着剤およびフィルムのレトルトブラッシングを防止できるとともに,フィルム表面のラミネートロールの汚れや傷に対する転写耐性を改善でき,外観の意匠性を著しく向上させることができることを見出した。
【0011】
また,その後の本発明者らの研究により,塗装金属板用途を代替するために,上記複層フィルムの下層面に着色接着剤を塗布し,ラミネート工程で接着剤硬化を促進させると,加工後フィルムの残留歪みにより,密着力の弱い金属板と着色接着剤層との界面が剥離する密着性低下を確認した。
【0012】
かかる密着性の低下に対して,本発明者らは,さらに鋭意研究を重ねた結果,ラミネート後のフィルム下層を複屈折の小さな融解層とし,その厚みを厚くすることにより,金属板と着色接着剤層との界面にかかる残留応力を減少させ,加工後のレトルト密着性を改善できることを見出し,この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち,本発明の要旨とするところは以下の通りである。
(1)金属板の片面または両面に,着色接着剤層と,少なくとも下層および表層の2層からなるポリエステル樹脂フィルムとを順次積層した複層樹脂フィルムを被覆してなる容器用着色ラミネート金属板であって,前記着色接着剤層は,エポキシ樹脂を主成分とし,さらに,着色剤,高エーテル化アミノ樹脂およびブロックイソシアネート化合物を含み,前記下層は,125℃における半結晶化時間が100秒以下であるポリエステル樹脂を主成分とし,前記表層は,融点が245℃以上の高融点ポリエステル樹脂を主成分とすることを特徴とする,容器用着色ラミネート金属板。
(2)前記複層樹脂フィルムの前記下層には,複屈折が0.04以下である領域が前記金属板との接触界面からフィルムの厚み方向に4μm以上存在することを特徴とする,(1)に記載の容器用着色ラミネート金属板。
(3)前記表層の高融点ポリエステル樹脂は,エチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステル樹脂であることを特徴とする,(1)または(2)に記載の容器用着色ラミネート金属板。
(4)前記表層の高融点ポリエステル樹脂は,テレフタル酸及び/又はテレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとの重合で得られるポリエチレンテレフタレート樹脂であることを特徴とする,(3)に記載の容器用着色ラミネート金属板。
(5)前記下層のポリエステル樹脂は,エチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステル樹脂と,ブチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステル樹脂とからなることを特徴とする,(1)または(2)に記載の容器用着色ラミネート金属板。
(6)前記エチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステル樹脂と,前記ブチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステル樹脂とは,80:20〜30:70の質量比で混合されていることを特徴とする,(5)に記載の容器用着色ラミネート金属板。
(7)前記ポリエステル樹脂フィルムの厚みは,6〜30μmであることを特徴とする,(1)または(2)に記載の容器用着色ラミネート金属板。
(8)前記表層の厚みと前記下層の厚みとの比は,1:3〜1:30であることを特徴とする,(1)または(2)に記載の容器用着色フィルムラミネート金属板。
(9)前記着色接着剤層の前記エポキシ樹脂の数平均分子量が2000〜6000であることを特徴とする,(1)または(2)に記載の容器用着色ラミネートフィルム金属板。
(10)前記着色接着剤層は,前記エポキシ樹脂100質量部に対して,前記高エーテルアミノ樹脂を1〜10質量部,前記ブロックイソシアネート化合物を1〜10質量部,含有することを特徴とする,(8)に記載の容器用着色ラミネート金属板。
(11)前記着色接着剤層は,リン酸変性化合物とブロックフリーイソシアネート化合物のいずれか一方または双方をさらに含有することを特徴とする,(1)または(2)に記載の容器用着色ラミネート金属板。
(12)金属板の片面または両面に,ラミネートロールを用いて樹脂フィルムを熱圧着させるラミネート工程を含む容器用着色ラミネート金属板の製造方法において:前記樹脂フィルムは,(a)着色剤を含有する着色接着剤層と,(b)エチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステル樹脂と,ブチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステル樹脂との混合物を主成分とする下層と,(c)前記下層よりも高融点のポリエステル樹脂を主成分とする表層とを順次積層した複層樹脂フィルムであり,前記ラミネート工程は,(A)前記ラミネートロール通過中の前記複層樹脂フィルムの前記金属板との接着面の温度を,前記ブチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステル樹脂の融点以上の温度とし,かつ,前記ラミネートロールによる熱圧着時間を10〜80ミリ秒間とする条件で,前記複層樹脂フィルムの前記着色接着剤層側の面を前記金属板に熱圧着させる工程と;(B)前記ラミネートロール通過後の前記金属板の温度150℃以上で0.5〜30秒間熱処理する工程と;を含むことを特徴とする,容器用着色ラミネート金属板の製造方法。
(13)前記ラミネート工程における雰囲気のクリーン度は,10000以下であることを特徴とする,(12)に記載の容器用着色ラミネート金属板の製造方法。
(14)前記熱圧着時の面圧は,1〜30kgf/cmであることを特徴とする,(12)に記載の容器用着色ラミネート金属板の製造方法。
(15)前記ラミネートロールは,ゴムライニングロールであることを特徴とする,(12)に記載の容器用着色ラミネート金属板の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば,缶内容物充填後のレトルト熱殺菌処理時において,着色接着剤およびポリエステル樹脂フィルムのレトルトブラッシングを防止でき,外観の意匠性を維持することが可能な,容器用着色ラミネート金属板およびその製造方法を提供することができる。
【0015】
また,本発明によれば,ラミネートロールの汚染や傷などにより,表面が荒れたラミネートロールの凹凸が,ラミネート後のフィルム表面に転写せず,平滑性を維持することが可能な,容器用着色ラミネート金属板およびその製造方法を提供することができる。
【0016】
なお,本発明に係る容器用着色ラミネート金属板およびその製造方法によれば,製缶材料として,優れたフィルム密着性,耐熱性,耐水性および経時安定性を保持することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0018】
本発明の一実施形態に係る容器用着色ラミネート金属板は,金属板の片面または両面に,着色接着剤層と,少なくとも下層および表層の2層からなるポリエステル樹脂フィルムとを順次積層した複層樹脂フィルムを被覆してなる容器用着色ラミネート金属板であって:着色接着剤層は,エポキシ樹脂を主成分とし,さらに,着色剤,高エーテル化アミノ樹脂およびブロックイソシアネート化合物を含み;下層は,125℃における半結晶化時間が100秒以下であるポリエステル樹脂を主成分とし;表層は,融点が245℃以上の高融点ポリエステル樹脂を主成分とする;ことを特徴とする。
【0019】
基板となる金属板としては,缶用材料として広く使用されているアルミニウム板,軟鋼板,めっき鋼板等を用いることができ,特に,金属クロムとクロム水和酸化物とからなる表面処理鋼板,いわゆるTFS(Tin Free Steel)が最適である。TFSの金属クロム,クロム水和酸化物の付着量については,特に限定するものではないが,加工後の密着性や耐食性の点から,クロム換算で金属クロムを40〜500mg/m,クロム水和酸化物を8〜20mg/mの範囲で含むことが好ましい。
【0020】
(着色接着剤の構成)
一般に,缶用途では,意匠性も重要な要求特性となり,缶外面の色としては金色等の光輝色が好まれる傾向にある。金色等の光輝色は,光沢のある金属板上に,黄色顔料,赤色顔料で着色した透明フィルムをラミネートすることにより得られる。また,金色等の光輝色は,レトルト殺菌処理後にも変色しないことが要求される。
【0021】
しかし,上述したように,着色接着剤はレトルト処理で変色するレトルトブラッシングの問題が発生する場合がある。本発明者らは,この理由は,着色接着剤が,ラミネート工程での短時間熱処理では硬化が不十分であり,レトルト熱処理でも硬化反応が発生するためと考えている。すなわち,金色に着色された接着剤のレトルトブラッシングは,接着剤が残留溶剤および水分を含んだ状態で硬化したため,硬化接着剤層が部分的かつ不均一に膨張し,濁った褐色に変色したものと考えている。
【0022】
そこで,本実施形態に係る容器用着色ラミネート鋼板においては,着色接着剤のレトルトブラッシング対策として,上記着色接着剤層に含まれる接着剤として,ラミネート工程での短時間熱処理で硬化促進が可能な接着剤組成を採用している。
【0023】
以下,着色接着剤層について説明する。本実施形態に係る着色接着剤層の組成は,特定の数平均分子量を有するエポキシ樹脂,高エーテルアミノ樹脂,ブロックイソシアネート化合物を特定の配合比率で調整することにより,ラミネート工程での短時間の熱処理で硬化を促進させ,密着性,耐水性(耐レトルトブラッシング性),耐熱性,経時安定性および耐久性を発現させている。以下に,詳細に説明する。
【0024】
エポキシ樹脂は,例えば,数平均分子量2000〜6000のビスフェノールA型エポキシ樹脂またはビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。特に,ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好適に使用できる。上記条件に当てはまるエポキシ樹脂として,商品名エピコート1007,エピコート1009,エピコート1010,EXA8435等がある。数種のエポキシ樹脂をその数平均分子量が2000〜6000となるように組み合わせて使用することはなんら差し支えない。詳細に説明すると,本発明に用いるエポキシ樹脂はビスフェノールA型ジグリシジルエーテル樹脂であり,リン酸系触媒またはアミノ系触媒など,酸またはアルカリ触媒の存在下で重合して得られる,分岐が少ないエポキシ樹脂が望ましい。また,ビスフェノールA型エポキシ樹脂をダイマー酸等で変性することも可能である。
【0025】
このエポキシ樹脂の数平均分子量が2000未満の場合は,ラミネート時の熱だけでは熱硬化が不十分であり,密着強度が弱く,熱水との接触に際して容易に密着界面で剥離する。数平均分子量が6000を超える場合は,接着剤としての物性は発現するが,接着剤粘度が高くなるため,フィルムへの塗布性能に問題がある。
【0026】
高エーテル化アミノ樹脂としては,完全アルキル型メラミン樹脂,完全アルキル型ベンゾグアナミン樹脂が好適に使用できる。好ましくは高度にメチル化されたヘキサメトキシメチル化メラミン樹脂が用いられる。入手可能な市販品としては,スーパーベッカミンL−105−60(大日本インキ化学製),サイメル303(三井サイテック製),サイメル300(三井サイテック製)等が挙げられる。
【0027】
数平均分子量2000〜6000のエポキシ樹脂100質量部に対する高エーテル化アミノ樹脂の配合量は1〜10質量部であることが好ましい。高エーテル化アミノ樹脂が1質量部未満の場合は,熱硬化反応が遅くなるため,ラミネート工程の熱処理だけでは十分な硬化反応が進行せず,接着剤のレトルトブラッシングが発生する場合がある。10質量部よりも多い場合は,熱硬化反応は十分に速くなるが,接着剤内部の応力が増大するため加工時の密着性が低下する。
【0028】
ブロックイソシアネート化合物としては,例えば,ヘキサメチレンジイソシアネート,イソプロピレンジイソシアネート,メチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート化合物,イソホロンジイソシアネート,メチルシクロヘキサンジイソシアネート,リジンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート化合物,トリレンジイソシアネート,1,5−ナフチレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート化合物などが挙げられる。
【0029】
本発明に用いるイソシアネート化合物としては,上記の1種または2種以上のイソシアネートより得られる化合物(2量体,3量体,アダクト,ビューレット,プレポリマー等)も含まれる。
【0030】
特に,これらのイソシアネート化合物の中で,本発明に好適に用いられるものとしては,脂肪族及び/又は脂環族イソシアネート化合物が適しており,さらにヘキサメチレンジイソシアネート,イソホロンジイソシアネートを特に好ましく用いることができる。
【0031】
ブロックイソシアネート化合物は,熱硬化反応にも寄与できるが,高エーテル化アミノ樹脂と併用した場合に硬化時の内部応力を低減させる効果がある。
【0032】
また,数平均分子量2000〜6000のエポキシ樹脂100質量部に対するブロックイソシアネート化合物の配合量は1〜10質量部であることが好ましい。ブロックイソシアネート化合物が1質量部よりも少ない場合は熱硬化が遅くなるだけでなく,加工性が低下する傾向にある。10質量部よりも多い場合では硬化過剰になり,やはり加工性が低下する。
【0033】
また,硬化を促進させるために各種公知の触媒を併用することができる。イソシアネート化合物の硬化触媒としては,ジブチルスズジラウレート,ジブチルスズジクロリド等の各種有機スズ化合物類,トリエチレンジアミン,トリエチルアミン等の各種アミン類が挙げられる。高エーテル化アミノ樹脂の硬化触媒としては,ドデシルベンゼンスルホン酸,パラトルエンスルホン酸等の酸触媒を用いることが望ましい。
【0034】
また,本発明に係る着色接着剤層には,リン酸変性化合物をさらに含んでいてもよい。かかるリン酸変性化合物としては,エポキシ樹脂をリン酸変性した化合物,エステル化合物等をリン酸変性した化合物を使用することができる。また,数平均分子量2000〜6000のエポキシ樹脂100質量部に対するリン酸変性化合物の配合量は0.1〜20質量部であることが好ましい。リン酸変性化合物の添加により金属板への接着力が大きく向上し,耐熱性,耐水性,硬化性,顔料分散性も向上させることができる。添加量0.1質量部より少ない場合は,上記性能の発現が小さく,20質量部よりも多い場合には接着剤全体の分子量低下に伴い,ラミネート時に接着剤内部で凝集破壊が起こり,密着強度が得られない場合がある。
【0035】
また,本実施形態に係る着色接着剤層には,上記組成の他にブロックフリーイソシアネート化合物を添加することができる。ブロックフリーイソシアネート化合物としては,ヘキサメチレンジイソシアネート,イソプロピレンジイソシアネート,メチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート化合物,イソホロンジイソシアネート,メチルシクロヘキサンジイソシアネート,リジンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート化合物,トリレンジイソシアネート,1,5−ナフチレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート化合物などが挙げられる。このうち,ヘキサメチレンジイソシアネート,イソホロンジイソシアネートを特に好ましく用いることができる。
【0036】
ブロックフリーイソシアネート化合物は常温にて硬化が起こり,ラミネート前に接着剤を予備硬化させるために,ラミネート時の接着剤硬化を向上させることが可能である。
【0037】
ブロックフリーイソシアネート化合物は,数平均分子量が2000〜6000のエポキシ樹脂,高エーテルアミノ樹脂,ブロックイソシアネート化合物,リン酸変性化合物からなる着色接着剤の100質量部に対して,0.5〜20質量部の範囲で添加することが好ましい。0.5質量部未満では,常温硬化不足で分子量が上がらず,ラミネート時に接着剤内部で凝集破壊が起こり,接着強度が得られない場合があり,20質量部超では,常温硬化が進みすぎて,ラミネート時の接着剤流動が悪くなることによる密着強度低下が懸念されるため,好ましくない。
【0038】
本実施形態に係る着色接着剤層は,ポリエステル樹脂フィルムの着色のために使用するものであり,接着剤中に顔料を添加,分散して用いる。
【0039】
顔料には,無機顔料と有機顔料とがあるが,一般的に,無機顔料は,隠ぺい力および耐候性に優れるが,着色力に劣り,有機顔料は,着色力や鮮明な色味に優れるが,隠ぺい力および耐候性が比較的劣る傾向を有する。
【0040】
無機顔料としては,例えば,二酸化チタン,亜鉛華等の白色顔料,カーボンブラック,黒鉛等の黒色顔料,黄鉛,酸化鉄黄等の黄色顔料,鉛丹,べんがら等の赤色顔料,紺青,群青等の青色顔料,酸化クロム緑等の緑色顔料,アルミニウム・フレーク,マイカ・フレーク等のメタリック顔料などが挙げられる。
【0041】
有機顔料としては,例えば,黄色,赤色のアゾ系有機顔料,キナクリドン系有機顔料,青色,緑色のフタロシアニン系有機顔料等が挙げられる。
【0042】
缶詰用途においては,母材の金属板の暗い色調を嫌って金色や,清潔感を与える白色が好まれる。金色は,黄色,赤色のアゾ系有機顔料を添加した透明性の優れた着色接着剤を,複層ポリエステル樹脂フィルムに塗布し,下地金属板の光沢に重ね合わせることにより得られる。白色は,着色力および隠ぺい力に優れる二酸化チタンを添加した着色接着剤を用いることが好ましい。
【0043】
着色剤の添加は,着色ニーズに応じて任意に処方するが,本発明では,ラミネート工程での接着剤硬化によるレトルトブラッシング耐性を目的とするため,複層ポリエステル樹脂フィルムへの接着剤塗布量を必要最低限とし,硬化時間の削減を図る必要がある。そのため,着色剤の分散性,複層フィルムへの塗布性能を考慮した上で,着色剤添加濃度を最大とするように調整する。
【0044】
着色接着剤の塗布量は,0.5〜20.0g/mの範囲が好ましい。0.5g/m未満の場合は,複層フィルム表面を均一塗布することが困難となり,20.0g/mを超えると塗布工程での溶剤除去に時間を要し,生産性が著しく低下する。
【0045】
着色接着剤には,塗布後の複層フィルムの対ブロッキング性,ハンドリング性を改善するために,シリカ,硫酸バリウム等の無機滑剤を添加することが好ましい。
【0046】
(ポリエステル樹脂フィルムの構成)
次に,缶内容物充填後のレトルト処理によっても優れた表面光沢と,高い透明度を保持する本実施形態に係るポリエステル樹脂フィルムについて説明する。
【0047】
ポリエステル樹脂フィルムが積層された容器用着色フィルムラミネート金属板は,その缶体に内容物を充填した後に行われるレトルト熱処理において缶外面が変色するレトルトブラッシングを発生する場合がある。この現象は,金属板とのラミネートで融解したポリエステル分子が不均一に再結晶化して白濁するものである。
【0048】
本実施形態に係る容器用着色ラミネート金属板は,このレトルトブラッシングと,表面が荒れたラミネートロールの凹凸がラミネートされたフィルム表面に転写して外観不良を引き起こす問題を併せて解決する複層ポリエステル樹脂フィルムを採用する。
【0049】
上記複層ポリエステル樹脂フィルムの樹脂構成は,結晶化速度を速くしてレトルトブラッシングを防止するとともに,残留応力を緩和することによりレトルト密着性(接着性,加工性)を与える基材となる下層と,ロール転写耐性を満足しうる高硬度薄膜で融点245℃以上の耐熱性のある表層と,からなっている。
【0050】
また,複層樹脂フィルムは,コスト低減(生産性向上)の目的からフィルム厚みをできるだけ薄くするため,フィルムの反りやカール(丸まり)が発生し易くなる。本実施形態に係る容器用着色ラミネート金属板は,これらの問題に対しても,表層と下層の膜厚を最適にすることにより,フィルムの反りやカールを防止することもできる。
【0051】
上記下層のポリエステル樹脂としては,125℃における半結晶化時間が100秒以下であるポリエステル樹脂を主成分として用いる。このように,半結晶化時間を100秒以下とすることにより,125℃近傍の温度で行われるレトルト処理中にフィルム下層のポリエステル融解分子が高速で微細結晶化して,色調を均一化するため,部分白濁のレトルトブラッシングを防止することができる。なお,ポリエステル樹脂の半結晶化時間は,融解分子の再結晶に要する時間を示し,半結晶化時間が短くなるほど結晶化速度が速くなることを示している。
【0052】
上記のような結晶化速度の速いポリエステル樹脂としては,例えば,エチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステル樹脂と,ブチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステル樹脂とからなる複合ポリエステル樹脂を主成分として使用することができる。
【0053】
これらのポリエステル樹脂は,化学構造が類似していることにより相溶性が良く,融点差が約30℃のため,酸化劣化が問題とならない温度で融解させ,微細かつ均一に混ざり合ったポリマーアロイとすることができる。
【0054】
また,上記下層のポリエステル樹脂の結晶化時間は,エチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステル樹脂と,ブチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステル樹脂とからなる複合ポリエステル樹脂の配合比を変化させることにより調節可能である。
【0055】
具体的には,ブチレンテレフタレートの比率を多くすると結晶化時間は速くなるが,エチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステル樹脂と,ブチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステル樹脂との配合比は,質量比で80:20〜30:70の範囲にするのが望ましい。
【0056】
その理由は,ブチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステル樹脂の配合比が80:20未満では,結晶化速度が遅くなるためレトルトブラッシングが発生し,ブチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステル樹脂の配合比が30:70を超えると二軸延伸フィルムの製膜が困難となるからである。
【0057】
また,上述したように,本実施形態に係る着色接着剤層は,ラミネート工程での硬化を促進させることで,レトルトブラッシングを防止している。しかし,着色接着剤層の硬化による柔軟性の低下により,着色接着剤層と金属板との間のレトルト密着性の低下が発生し,高加工率の缶用途ではレトルト密着性不良が問題となる。
【0058】
レトルト密着性不良は,接着剤と金属表面との界面剥離により発生する。ラミネート後,製缶後のフィルムには加工歪が残っており,レトルト熱衝撃により密着力の弱い接着剤層と金属表面との界面剥離が発生する。
【0059】
本実施形態では,この問題を,複層ポリエステル樹脂フィルムの下層樹脂の融解を促進させ,ポリエステル二軸配向結晶を崩して無配向化させることにより,フィルム伸び率を上昇させて,加工性を改善することで解決した。具体的には,複層樹脂フィルムの下層の複屈折が0.04以下である領域が金属板との接触界面から4μm以上とすることで,レトルト密着性を確保している。
【0060】
複層フィルム下層樹脂の複屈折が0.04以下である領域が金属板との接触界面から4μm未満の場合には,複層ポリエステル樹脂フィルムの下層樹脂の融解が十分でなく,ポリエステル二軸配向結晶が多く残っているため,フィルム柔軟性が悪く,高加工率の缶用途ではフィルム残留歪が大きくなり,レトルト熱衝撃により接着剤層と金属表面との界面剥離が発生するため,好ましくない。
【0061】
二軸配向ポリエステル樹脂フィルムは,光学的に等方性ではなく,複屈折性を示す。上記ポリエステル樹脂フィルムの厚み方向の複屈折の値は,偏光顕微鏡を用いて,ラミネート金属板の金属板を除去した後のフィルム厚み方向のレタデーションを測定して求めることができる。
【0062】
直線偏光を二軸配向ポリエステル樹脂フィルムに入射すると,2つの主屈折率方向の直線偏光に分解され,高屈折率方向の光の振動が低屈折率方向の光の振動よりも遅くなる位相差:レタデーションを生じる。フィルム通過で発生するレタデーションRと,複屈折Δnとの関係は,フィルムの厚みをdとすると,下記式(1)で表される。
【0063】
Δn=R/d ・・・(1)
【0064】
次に,レタデーションの測定方法について説明する。単色光を偏光板を通過させることにより直線偏光とし,フィルムに入射する。直線偏光は,フィルム内でレタデーションが生じ,フィルム透過後,楕円偏光となる。楕円偏光は,セナルモン型コンペンセーターを通過させることにより,最初の直線偏光の振動方向に対してθの角度をもった直線偏光となる。このθを偏光板を回転させて測定する。レタデーションRとθとの関係は,λを単色光の波長とすると,下記式(2)で表される。
【0065】
R=λ・θ/180 ・・・(2)
【0066】
よって,複屈折Δnは,上記式(1),(2)より,下記式(3)で表されることとなる。
【0067】
Δn=(θ・λ/180)/d ・・・(3)
【0068】
なお,上記レトルト密着性の低下は,上述したような着色接着剤の組成によっても抑制することができる。具体的には,本実施形態においては,上述したように,高エーテル化アミノ樹脂とブロックイソシアネート化合物との併用,およびリン酸変性化合物の添加等により,レトルト密着性を改善している。
【0069】
次に,本実施形態に係る高融点ポリエステル樹脂を主成分とする表層について説明する。この表層は,ラミネート後平滑性による良好な外観を得る役割と,融解層の厚みを増加させる高温ラミネートでのラミネートロールニップ内の耐熱層の役割を果たし,ラミネート操業の安定化をもたらすことができる。
【0070】
フィルム融解層の厚みを増加させるためには,金属板の加熱温度を上昇させ,フィルム融解を促進させることになるが,ラミネートロールニップ内でラミネートロールとフィルムの接触表面付近までフィルム融解が進むと,フィルム厚みムラの薄い部分,フィルム端面での部分的な過融解が生じ,融解フィルムがラミネートロールに融着してラミネートの継続ができなくなるという操業トラブルとなる。そこで,上記のような高融点ポリエステル樹脂を主成分とする表層により,融解フィルムがラミネートロールに融着することを防止している。
【0071】
このように,本実施形態に係る容器用着色ラミネート金属板は,低融点のポリエステルを主成分とする下層と,高融点のポリエステルを主成分とする表層の,融点差がある2層のポリエステル樹脂フィルムを用いることにより,下層の融解層と表層の非融解のラミネート耐熱層とを両立させている。
【0072】
上記ポリエステル樹脂フィルムの表層は,熱ラミネート時に融解せず,二軸配向結晶を保持するため硬質であり,ラミネートロールの汚染や傷によるラミネートロール表面の凹凸が転写されない硬いスキン層の役割を果たす。
【0073】
なお,この表層のポリエステル二軸配向結晶は,レトルト処理時に再結晶化しないので,レトルトブラッシングの問題も発生しない。
【0074】
表層のポリエステル樹脂は,下層樹脂との層間強度確保のため,化学構造が類似したポリエステル樹脂を選択する必要があり,目的のレトルトブラッシング対策と表面平滑性のためには,融点245℃以上のポリエステル樹脂を選択する必要がある。245℃以上の高融点ポリエステル樹脂としては,エチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステル樹脂であって,ホモポリマー,コポリマーまたはこれらの混合物であってもよい。ただし,テレフタル酸及び/又はテレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとの重合で得られるポリエチレンテレフタレートのホモポリマーは,結晶化度および融点が高い性能を示し,包装材料等の汎用原料として安価に入手できるため好ましい。
【0075】
(複層ポリエステル樹脂の膜厚の説明)
また,下層と表層とを含む複層ポリエステル樹脂フィルムの全厚みは,容器外面の適用環境に応じて適宜設定するが,6〜30μmであることが好ましい。複層ポリエステル樹脂フィルムの全厚みが6μm未満ではフィルムの生産性が著しく低下し,30μmを超えると,原料コストが上昇して経済的でないばかりか,曲率の小さな曲げ加工性が悪化するため,好ましくない。
【0076】
次に,本発明に係る表層ポリエステル樹脂と下層ポリエステル樹脂との膜厚比について説明する。一般に,複層ラミネートフィルムは,表層と下層とのガラス転移点,線膨張係数の差によりフィルム反り,カール(丸まり)が発生する。表層の厚みが厚くなると,カール量が大きくなるため,上記複層ポリエステル樹脂フィルムの表層の厚みと下層の厚みとの比(膜厚比)は,1:3〜1:30とする必要がある。
【0077】
具体的には,カールを防止するためには,下層の厚みを表層の厚みの3倍以上にすることが好ましい。また,表層の厚みを薄くすると,工業的にフィルム生産工程において,共押出し二軸延伸製膜が不安定となるため,下層の厚みは表層の厚みの30倍以内とすることが好ましい。ただし,ラミネート前にフィルムの予熱を行い,フィルムを引き伸ばしてカール矯正を行えば,上記膜厚比の範囲外であってもラミネートは可能である。
【0078】
上述した本実施形態に係る複層ポリエステル樹脂フィルムは,表層と下層の2層フィルムから構成されているが,本発明に係る複層ポリエステル樹脂フィルムは,上記表層と下層との間に1層または2層以上の中間層を含んでいてもよい。例えば,このような中間層として,表層と下層とのガラス転移点,線膨張係数の差による複層フィルムのカールを抑制するための中間的な物性を示す緩衝層を設けることが有効である。
【0079】
また,上記表層および下層のポリエステル樹脂には,必要に応じて,滑剤,酸化防止剤,熱安定化剤,紫外線吸収剤,可塑剤,帯電防止剤,結晶角剤等を配合してもよい。
【0080】
(複層ポリエステル樹脂フィルムの製造方法)
次に,本実施形態に係る複層ポリエステル樹脂フィルムの製造方法について説明する。複層ポリエステル樹脂フィルムは,共押出し二軸延伸フィルムとして製造する。例えば,樹脂融点256℃のホモPETを表層に,樹脂融点226〜256℃のPETと220℃のPBT(ポリブチレンテレフタレート)とを混合したポリエステル樹脂を下層に使用する場合は,これら樹脂を共押出し,二軸延伸後,熱固定温度150〜210℃で熱処理して分子結晶化させ,原反フィルムを製造する。
【0081】
本実施形態に係る原反フィルムは,熱固定温度が樹脂融点より低いことが必須となる。下層の融点以上の熱固定温度で熱処理すると,基材である下層樹脂がアモルファス化して脆化するため,表層が薄い場合にはフィルム製造できなくなる場合がある。
【0082】
上記複層ポリエステル樹脂フィルムは,缶内容物充填後のレトルト処理においても,表面平滑性,優れた表面光沢,及び高い透明性を保持する。本実施形態の金色等の光輝色を有するラミネート金属板は,この複層ポリエステル樹脂フィルムに着色接着剤を塗布して,高い透明性の着色フィルムとし,下地金属板の光沢に重ね合わせる事により得られる。すなわち,意匠性に優れた容器用着色ラミネート金属板を製造するためには,上層に透明度の高いフィルムを用いることが好ましい。
【0083】
(複層樹脂フィルムの製造方法)
上述したような構成を有する着色接着剤層は,着色剤を含有する接着剤を希釈溶剤で希釈調合して,ロールコータ方式,ダイコータ方式,グラビア方式,グラビアオフセット方式,スプレー塗装方式等の塗装手段により複層ポリエステル樹脂フィルムの下層側の面に塗布することにより形成することができる。その後,希釈溶剤を揮発,除去するために50〜180℃の温度で乾燥され,コイル状に巻き取られる。このようにして,本実施形態に係る複層樹脂フィルムが形成される。
【0084】
希釈溶剤としては,例えば,酢酸メチル,酢酸ブチル等のエステル系溶剤,アセトン,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤,トルエン,キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤などを用いることができる。
【0085】
なお,プラスチックフィルムコータに比較して,鋼板用コータは設備費が嵩むので,接着層は鋼板に塗布するよりも,フィルムに塗布する方が有利である。本発明の着色接着剤を塗布した原反フィルムは,エポキシ樹脂の分子量,ブロックフリーイソシアネート化合物の処方と,上記塗工/乾燥条件によりタックフリーとなる様に製造されている。
【0086】
(缶内面側のフィルムの構成)
上述したように製造された複層樹脂フィルムは缶外面側に用いられるが,缶内面側に用いるフィルムの構成については任意に選択できる。例えば,ポリエステルやポリオレフィンフィルムを用い,これらのフィルムに必要に応じて滑剤,酸化防止剤,熱安定化剤,紫外線吸収剤,顔料,可塑剤,帯電防止剤,結晶角剤等を配合しても良い。
【0087】
内面フィルムを2層以上の複層フィルムとすることも可能であり,さらにフィルムの金属に接触する面に接着剤を塗布することもできる。内面フィルムの厚みは,6〜100μmが望ましく,その厚みの下限は缶内容物に対する耐食性により制約され,上限は経済性的制約を受ける。また,本発明の複層樹脂フィルムを片面にラミネートした金属板の非ラミネート面を塗装して,缶などの容器に適用することも可能である。
【0088】
(容器用着色ラミネート金属板の製造方法)
次に,図1に基づいて,本実施形態に係る容器用着色ラミネート金属板の製造方法について詳細に説明する。なお,図1は,本実施形態に係る容器用着色ラミネート金属板の製造装置の概略的な構成を示す説明図である。
【0089】
本実施形態に係る容器用着色ラミネート金属板の製造方法は,複層樹脂フィルム(下層のポリエステル樹脂)の融点を超える温度に加熱された金属板の片面または両面に,ラミネートロールを用いて樹脂フィルムを熱圧着させるラミネート工程を含む。
【0090】
ここで,上記樹脂フィルムは,図1に示すような,着色剤を含有する着色接着剤層22と,エチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステル樹脂と,ブチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステル樹脂との混合物を主成分とする下層24と,下層24よりも高融点のポリエステル樹脂を主成分とする表層26とを順次積層した複層樹脂フィルム20である。
【0091】
上記ラミネート工程は,図1に示すように,金属板10を下層24のポリエステル樹脂の融点を超える温度に加熱し,金属板10の一方の面(缶外面となる側)からラミネートロール42を用いて複層樹脂フィルム20を,金属板10の他方の面(缶内面となる側)からラミネートロール44を用いて缶内面用フィルム30を熱圧着することによりラミネートする。また,熱圧着時のニップ幅dは,例えば70mmであり,金属板10は,これを例えば,0.03秒で通過する。さらに,ラミネートロール42,44を通過したラミネート後の金属板は,ウォータークエンチ50内で冷却される。
【0092】
また,複層樹脂フィルム20の着色接着剤層22側の面を金属板10に熱圧着してラミネートするラミネート工程は,(A)ラミネートロール42,44通過中の複層樹脂フィルム20の金属板10との接着面の温度を,ブチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステル樹脂の融点以上の温度とし,かつ,ラミネートロール42,44による熱圧着時間を10〜80ミリ秒間とする条件で,複層樹脂フィルム20の着色接着剤層22側の面を金属板10に熱圧着させる工程と,(B)ラミネートロール42,44通過後の金属板10の温度150℃以上で0.5〜30秒間熱処理する工程と,を含む。以下,条件(A),(B)について,さらに詳細に説明する。
【0093】
まず,条件(A)中,金属板10の加熱温度に関する条件は,本実施形態に係る複層樹脂フィルム20を金属板10に熱圧着させるために必要な条件である。金属板10をブチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステル樹脂の融点以上に加熱することにより,ラミネート時にフィルムが融解し流動性が増すので,フィルムを介して軟化した着色接着剤層22を金属板10の表面に濡らして,金属板10との接触面積を増大させることにより,十分な密着力を得ることができる。
【0094】
エチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステル樹脂と,ブチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステル樹脂とを混合した複合ポリエステル樹脂は,微細かつ均一に混ざり合ったポリマーアロイを形成しており,低融点組成のブチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステル樹脂が融解することにより,樹脂が流動性を持つようになるため,良好な密着力を得ることができる。
【0095】
一方,ラミネートロール42,44通過中の金属板10の温度が,ブチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステル樹脂の融点未満である場合には,フィルムの融解が不十分となるため,金属板10の表面にフィルムを十分に濡らすことができず,密着力が不十分となる。
【0096】
なお,金属板10の加熱方法は,特に限定されず,例えば,熱風循環伝熱方式,抵抗加熱方式,ヒートロール伝熱方式,誘導加熱方式など,公知の方法を用いることができる。
【0097】
また,ラミネートロール42,44は冷却されており,その表面に複層樹脂フィルム20の表層26側の表面(外表面)が接触することにより,複層樹脂フィルム20の外表面までの過融解を防止している。
【0098】
次に,条件(A)中,熱圧着時間に関する条件は,本実施形態に係る複層ポリエステル樹脂フィルム20の金属板10への十分な密着力を得るための必要条件である。圧着時間を10〜80msecとしたのは,圧着時間が10msec未満であると,接着面の温度が下層24のポリエステル樹脂の融点以上であっても時間が短すぎるため十分な密着力を得難く,一方,圧着時間が80msecを超えると,ラミネート通板速度の低下によって生産性の低下につながるため,好ましくないからである。
【0099】
また,上記熱圧着の際の面圧は,1〜30kgf/cmであることが好ましい。面圧が1kgf/cmであると,圧着時間が上述したように短時間であり十分な密着力を得難いため,好ましくない。一方,面圧が30kgf/cmを超えると,容器用着色ラミネート金属板の性能上の不都合はないものの,ラミネートロール42,44にかかる力が大きく,設備的な強度が必要となり製造装置の大型化を招き不経済であるため,好ましくない。
【0100】
このように,熱圧着の条件(圧着時間,面圧)は,容器用着色ラミネート金属板の品質と経済性を両立する目的で総合的に決定される。
【0101】
また,上記ラミネート工程においては,雰囲気のクリーン度をクラス10000以下とすることが好ましい。ラミネート時に雰囲気中の異物が多いと,複層樹脂フィルム20または缶内面用フィルム30と金属板10との界面に異物が混入し,製缶加工時にフィルム欠陥を生じる原因となるためである。
【0102】
また,ラミネートロール42,44としては,例えば,クロムメッキロール,セラミックコーティングロール,ゴムライニングロールなど,様々なロールを選択することができ,特に限定はされないが,ロールニップ内のヒートクラウンや,温度のばらつきにより発生する金属板の形状不良を回避するという観点から,ゴムライニングロールを使用することが好ましい。
【0103】
また,ラミネートロール42,44通過後の容器用着色ラミネート金属板は,約200℃の高温であり,そのままコイルとして巻き取ると,コイルラップ間のフィルム融着やブロッキングが発生するため,例えばウォータークエンチ50等を用いて水冷等により冷却する必要がある。
【0104】
また,条件(B)で,ラミネートロール通過後のラミネート金属板温度150℃以上で0.5〜30秒間熱処理することは,着色接着剤の硬化のため必要となる。具体的には,この熱処理は,ラミネートニップ通過後ウォータークエンチによる冷却までの間に行われる。このように,ラミネートニップ通過後ウォータークエンチによる冷却までの間に,着色接着剤の硬化反応を進めておくことにより,レトルト熱処理時に着色接着剤の硬化反応が起こらないようにして,着色接着剤のレトルトブラッシングをより効果的に防止することができる。
【0105】
以上説明したような本実施形態に係る容器用着色ラミネート金属板の製造方法によれば,レトルトブラッシングを防止し,かつ,平滑性の優れた金色/光輝色等の着色外観と,厳しい加工用途でのフィルム密着性を有するラミネート金属板を提供することができる。
【実施例】
【0106】
以下,実施例により本発明をより具体的に説明するが,本発明は,下記実施例にのみ限定されるものではない。
【0107】
(容器用着色ラミネート鋼板の製造)
厚さ0.21mmのローモ板を,脱脂酸洗後,無水クロム酸とフッ化物を含むクロムめっき浴でクロムめっきし,中間リンス後,無水クロム酸とフッ化物を含む化成処理液で電解化成処理した金属板を基材とした。基材のクロムめっき量を,金属クロム付着量が100mg/m,クロム水和酸化物量が12mg/mとなるように調整した。
【0108】
表層および下層のポリエステル樹脂を,共押出し,二軸延伸後,熱固定温度170℃で熱処理することにより二軸配向結晶化して,試料用ポリエステル樹脂フィルムを製造した。試料用ポリエステル樹脂フィルムの組成は,下記表1に示した通りである。なお,表1中の「PET」は,テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとの重合で得られるポリエチレンテレフタレートのホモポリマーを示し,「PET/IA3」とは,ポリエチレンテレフタレート97モル%/ポリエチレンイソフタレート3モル%の共重合ポリエステルを示している。また,フィルム表層,下層の厚みは,押出し量により算定した。さらに,下層樹脂のブレンド比率は,質量比を示している。
【0109】
製造した試料用ポリエステルフィルムについては,融点および半結晶化時間を測定した。測定結果を下記表1に示した。ここで,ポリエステル樹脂の融点は,Dupont Instrum 910 DSCを用いて,20℃/minの速度で昇温し,融解ピークを求めることにより測定した。また,ポリエステル樹脂の半結晶化時間は,(株)コタキ製作所のポリマー結晶化速度測定装置MK−701を用い,脱偏光法により測定した。
【0110】
次に,上記試料用ポリエステルフィルムの下層側の面に,下記表1に示した組成を有する着色接着剤をロールコータで塗布厚み1.6μmに塗布した試料用複層樹脂フィルムを製造した。
【0111】
ここで,着色接着剤としては,エポキシ樹脂エピコート1004(数平均分子量1650,ジャパンエポキシレジン製),エピコート1007(数平均分子量2900,ジャパンエポキシレジン製),エピコート1009(数平均分子量3800,ジャパンエポキシレジン製),エピコート1010(数平均分子量5500,ジャパンエポキシレジン製)を使用した。
【0112】
また,高エーテル化アミノ樹脂としては,サイメル300(三井サイテック製),ブロックイソシアネート化合物はデスモジュールBL3475(住友バイエルウレタン製)を使用した。錫触媒はネオスタンU−200(日東化成製),酸触媒はネイキュア5225(KING INDUSTRIES製)を使用した。また,リン酸変性化合物としては,エピコート1007をリン酸を用いて酸価が3〜6(mgKOH/g)となる様に変性したものを使用した。また,ブロックフリーイソシアネート化合物としては,バーノックDN980(大日本インキ化学工業製)を使用した。また,顔料は,黄色,赤色のアゾ系有機顔料を使用した。また,主剤比較として,ポリエステル樹脂アロンメルトPES−360(数平均分子量20000,東亜合成製)を使用した。
【0113】
さらに,図1に示したような装置を用いて,基材となるクロムめっき鋼板を表1の温度に加熱し,その一方の面(缶外面側となる面)には,上記試料用複層樹脂フィルムを,他方の面(缶内面側となる面)には,缶内面用フィルムとしてPET/IA12:ポリエチレンテレフタレート88モル%/ポリエチレンイソフタレート12モル%の共重合ポリエステルフィルムをラミネートすることにより,容器用着色ラミネート鋼板を製造した。
【0114】
(容器用着色ラミネート鋼板の評価)
上述したように製造した容器用着色ラミネート鋼板について,フィルム融着層の厚み,ラミネート後の表面粗度,レトルト熱処理後の外観,およびDRD缶レトルト密着性を評価した結果について説明する。
【0115】
容器用着色ラミネート鋼板の評価は以下のようにして行った。
(1)フィルム融着層の厚み
ここでいうフィルム融着層の厚みとは,金属板と複層樹脂フィルムの界面領域に形成される融解層厚みのことであり,具体的には,複屈折0.04以下の領域でフィルム融着が生じているものとして,複屈折0.04以下の領域の金属板との界面からの厚みを測定した。ここで,「複屈折0.04以下の厚み」は,フィルムを厚み方向に薄膜スライスしたサンプルとし,偏光顕微鏡で位相角θ,複屈折分布を求めることにより測定した。
(2)ラミネート後の表面粗度
ラミネート後のフィルムの平滑性をRaで評価することにより,ラミネート後の表面粗度で評価した。具体的には,接触式3次元粗さ計を用い,1mm角エリアを2μmピッチで測定し,中心線平均粗さRaを求めた。Raが50nm以下で平滑性が良好なものを○,Raが50nm超で平滑性が劣るものを×とした。
(3)レトルト熱処理後の外観
ラミネート金属板からΦ160mmの円板を打ち抜き,2段階の絞り加工で内径87mmのDRD缶(絞り缶)を得た。このDRD缶のフランジ部を幅2.5mmになる様にトリミングし,水を充填し,蓋を巻き締めた後,125℃で90分間のレトルト熱処理を行い,レトルト熱処理後の缶外観の変化を目視で判定した。具体的には,外観に変化が無かったものを○,僅かにレトルトブラッシングが発生したものを△,著しくレトルトブラッシングが発生したものを×とした。なお,レトルトブラッシングは,フィルム下層および着色接着剤の双方については,以下の外観評価で行った。
フィルム下層のレトルトブラッシングは,レトルト処理釜内で缶表面に蒸気が不均一に吹付けられ,ポリエステル融解分子の不均一再結晶化して,フィルム白濁として現われる。この場合は,金属板の金色表面を白濁フィルムで覆った外観不良となる。
着色接着剤のレトルトブラッシングは,レトルト処理時に接着剤が残留溶剤および水分を含んだ状態で硬化するため,硬化接着剤層が部分的かつ不均一に膨張し,金色が部分的に濁った褐色に変色する。この場合は,変色した金属板の上を透明フィルムが覆った外観不良となる。
(4)DRD缶レトルト密着性
(4)と同様に,製缶,フランジトリミングしたDRD缶を,125℃で90分間のレトルト熱処理し,レトルト熱処理後の缶のフランジ部のフィルム剥離を目視観察した。具体的には,フィルムの剥離が無かったものを○,フィルムの剥離があったものを×とした。
【0116】
上述したようにして行った容器用着色ラミネート鋼板の評価の結果を下記表1に示した。
【0117】
【表1】

【0118】
【表2】

【0119】
実施例1〜3および比較例1は,複層樹脂フィルムの下層のPETとPBTとの混合比を変化させたものである。PBTの比率が15%であり,下層樹脂の半結晶化時間が200秒と,本発明の範囲を外れる比較例1は,表1に示したように,フィルムのレトルトブラッシング発生が著しいということがわかった。すなわち,下層樹脂の125℃における半結晶化時間を100秒以下とすることにより,下層樹脂のレトルトブラッシングを防止できる,ということが示唆された。
【0120】
実施例4,5および比較例2は,着色接着剤のエポキシ樹脂の数平均分子量を変化させたものである。エポキシ樹脂の分子量が1650と,本発明の範囲を外れる比較例2は,DRD缶レトルト密着性が劣ることが認められた。すなわち,着色接着剤層の主剤であるエポキシ樹脂の分子量を2000〜6000とすることにより,金属板と着色接着剤層との界面のレトルト密着性を向上させることができる,ということが示唆された。
【0121】
実施例6,比較例3,4は,高エーテル化アミノ樹脂の組成量を変化させたものである。高エーテル化アミノ樹脂を含まない比較例3は,着色接着剤の熱硬化反応速度が遅くなるため,ラミネート熱処理で十分硬化反応が進行せず,着色接着剤のレトルトブラッシングが発生した。高エーテル化アミノ樹脂の添加量が20質量部の比較例4は,ラミネートでの熱硬化は十分であるが,DRD缶レトルト密着性が劣ることが認められた。
【0122】
実施例7,比較例5,6は,ブロックフリーイソシアネート化合物の組成量を変化させたものである。ブロックフリーイソシアネート化合物を含まない比較例5は,着色接着剤のレトルトブラッシングは発生しないが,DRD缶レトルト密着性に劣ることがわかった。また,ブロックフリーイソシアネート化合物の添加量が20質量部の比較例6においても,DRD缶レトルト密着性の低下が認められた。
【0123】
これら実施例6,7,比較例3〜6の結果より,高エーテル化アミノ樹脂は,ラミネート工程時の接着剤の硬化促進に大きく寄与していることが示唆された。また,ブロックイソシアネート化合物は,高エーテル化アミノ樹脂と併用することにより,着色接着剤硬化時の内部応力を低減させる効果があることが示唆された。
【0124】
実施例8および比較例7は,フィルム表層の融点を変化させたものである。表層樹脂の融点が240℃の比較例7は,ラミネート時の表層耐熱性,硬度が不足するため,ラミネートロールの凹凸が転写されることにより,ラミネート後の平滑性の低下が生じることがわかった。
【0125】
実施例9および比較例8は,フィルム融解層(下層)の厚み,すなわち,複屈折が0.04以下の領域の厚みを変化させたものである。複屈折0.04以下の領域厚みが4μm未満(2μm)である比較例8は,DRD缶レトルト密着性に劣ることがわかった。すなわち,フィルム下層の融解を促進することにより,ポリエステル二軸配向結晶を崩して無配向化し,フィルム伸び率を上昇させることができる。これにより加工後残留歪を減少させることでき,その結果として着色接着剤の硬化により低下した着色接着剤と金属板(TFS)との界面の密着力を補強することができることを確認した。
【0126】
実施例10および比較例9,10はフィルム表層と下層の厚み比を変化させたものである。表層厚み5μm,下層厚み9μmの2層フィルムである比較例9は,フィルムカールが大きく,ハンドリング性不良のため(フィルムの両エッジが小さく丸まる),着色接着剤を塗布することができず,ラミネート評価を中止した。
【0127】
比較例10は,高融点表層の無い,下層樹脂のみの単層ポリエステル樹脂フィルムをラミネートした場合の例である。高融点の表層が無いと,ラミネートロールの凹凸が転写されることにより,ラミネート後の平滑性の低下が生じることがわかった。
【0128】
実施例11および比較例11は,ラミネートロール通過後からウォータークエンチで冷却されるまでの熱処理時間を変化させたものである。熱処理時間0.3秒の比較例11は,着色接着剤の硬化不足によりレトルトブラッシングが発生した。
【0129】
着色接着剤の主剤としてポリエステル樹脂を使用した比較例12は,ラミネート工程での着色接着剤の硬化不足によりレトルトブラッシングが発生した。このことから,エポキシ樹脂がラミネート工程時の接着剤硬化促進に大きく寄与していることが示唆された。
【0130】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明は,容器用着色ラミネート金属板およびその製造方法に適用可能であり,特に,平滑かつ光輝色の外観を有し,意匠性に優れる容器用着色ラミネート金属板およびその製造方法に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】本発明の一実施形態に係る容器用着色ラミネート金属板の製造装置の概略的な構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0133】
10 金属板
20 複層樹脂フィルム(缶外面用フィルム)
22 着色接着剤層
24 下層(PET+PBT)
26 表層(PET)
30 缶内面用フィルム
42,44 ラミネートロール
50 ウォータークエンチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板の片面または両面に,着色接着剤層と,少なくとも下層および表層の2層からなるポリエステル樹脂フィルムとを順次積層した複層樹脂フィルムを被覆してなる容器用着色ラミネート金属板であって:
前記着色接着剤層は,エポキシ樹脂を主成分とし,さらに,着色剤,高エーテル化アミノ樹脂およびブロックイソシアネート化合物を含み;
前記下層は,125℃における半結晶化時間が100秒以下であるポリエステル樹脂を主成分とし;
前記表層は,融点が245℃以上の高融点ポリエステル樹脂を主成分とする;
ことを特徴とする,容器用着色ラミネート金属板。
【請求項2】
前記複層樹脂フィルムの前記下層には,複屈折が0.04以下である領域が前記金属板との接触界面からフィルムの厚み方向に4μm以上存在することを特徴とする,請求項1に記載の容器用着色ラミネート金属板。
【請求項3】
前記表層の高融点ポリエステル樹脂は,エチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステル樹脂であることを特徴とする,請求項1または2に記載の容器用着色ラミネート金属板。
【請求項4】
前記表層の高融点ポリエステル樹脂は,テレフタル酸及び/又はテレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとの重合で得られるポリエチレンテレフタレート樹脂であることを特徴とする,請求項3に記載の容器用着色ラミネート金属板。
【請求項5】
前記下層のポリエステル樹脂は,エチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステル樹脂と,ブチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステル樹脂とからなることを特徴とする,請求項1または2に記載の容器用着色ラミネート金属板。
【請求項6】
前記エチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステル樹脂と,前記ブチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステル樹脂とは,80:20〜30:70の質量比で混合されていることを特徴とする,請求項5に記載の容器用着色ラミネート金属板。
【請求項7】
前記ポリエステル樹脂フィルムの厚みは,6〜30μmであることを特徴とする,請求項1または2に記載の容器用着色ラミネート金属板。
【請求項8】
前記表層の厚みと前記下層の厚みとの比は,1:3〜1:30であることを特徴とする,請求項1または2に記載の容器用着色フィルムラミネート金属板。
【請求項9】
前記着色接着剤層の前記エポキシ樹脂の数平均分子量が2000〜6000であることを特徴とする,請求項1または2に記載の容器用着色ラミネートフィルム金属板。
【請求項10】
前記着色接着剤層は,前記エポキシ樹脂100質量部に対して,前記高エーテルアミノ樹脂を1〜10質量部,前記ブロックイソシアネート化合物を1〜10質量部,含有することを特徴とする,請求項8に記載の容器用着色ラミネート金属板。
【請求項11】
前記着色接着剤層は,リン酸変性化合物とブロックフリーイソシアネート化合物のいずれか一方または双方をさらに含有することを特徴とする,請求項1または2に記載の容器用着色ラミネート金属板。
【請求項12】
金属板の片面または両面に,ラミネートロールを用いて樹脂フィルムを熱圧着させるラミネート工程を含む容器用着色ラミネート金属板の製造方法において:
前記樹脂フィルムは,(a)着色剤を含有する着色接着剤層と,(b)エチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステル樹脂と,ブチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステル樹脂との混合物を主成分とする下層と,(c)前記下層よりも高融点のポリエステル樹脂を主成分とする表層とを順次積層した複層樹脂フィルムであり,
前記ラミネート工程は,
(A)前記ラミネートロール通過中の前記複層樹脂フィルムの前記金属板との接着面の温度を,前記ブチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステル樹脂の融点以上の温度とし,かつ,前記ラミネートロールによる熱圧着時間を10〜80ミリ秒間とする条件で,前記複層樹脂フィルムの前記着色接着剤層側の面を前記金属板に熱圧着させる工程と;
(B)前記ラミネートロール通過後の前記金属板の温度150℃以上で0.5〜30秒間熱処理する工程と;
を含むことを特徴とする,容器用着色ラミネート金属板の製造方法。


【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−83525(P2007−83525A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−274685(P2005−274685)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】