説明

密閉型圧縮機及びこれを用いた冷凍サイクル装置

【課題】吐油量の減少を図ることができ、さらに部品点数が少なく、小形で安価な密閉型圧縮機を提供する。
【解決手段】本密閉型圧縮機は密閉ケース2内上部に圧縮機構部3、この圧縮機構部3の下方に電動機部4、回転軸5を軸支する副軸受6を備え、電動機部4は、ステータ4aと、このステータ4aの外周面と所定の間隙を存するよう設けられたロータ4bとからなるアウターロータ形電動機であり、ステータ4aを副軸受6側に固定するとともに、ロータ4bをステータ4aの上部で回転軸5に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は密閉型圧縮機及びこれを用いた冷凍サイクル装置に係わり、特に電動機部として用いられるアウターロータ形電動機のロータ構造を改良した密閉型圧縮機及びこれを用いた冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の密閉型圧縮機は、ステータが上部のフレーム側に固定され、ロータハウジングの開口端が上部側に開口していた(例えば、特許文献1)。
【0003】
このため、上部圧縮機構部摺動部に給油され、下部に落下する油は、ロータハウジングの中に入って油溜となり、ステータとロータの抵抗になって入力が増大し、あるいは油溜の偏りによるアンバランシング発生に伴う振動が増加していた。
【0004】
また、開口端により油が飛散し、吐油量が増加し、密閉ケース下部の油溜部の油面が低下して信頼性が低下する問題もあった。さらに、クランクシャフトに形成されたバランサが介在するため、サブフレームを介して、ステータを固定するなど、部品点数の増加、軸方向に長く伸びる構成となり、流体機械の高さが増加して、大形化、コストアップになる問題があった。
【特許文献1】特開2004−301038号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述した事情を考慮してなされたもので、吐油量の減少を図ることができ、さらに部品点数が少なく、小形で安価な密閉型圧縮機及びこれを用いた冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するため、本発明に係る密閉型圧縮機は、密閉ケース内上部に圧縮機構部、この圧縮機構部の下方に電動機部、この電動機部の下方に前記圧縮機構部と前記電動機部を連結する回転軸を軸支する副軸受を備えた密閉型圧縮機において、前記電動機部は、ステータと、このステータの外周面と所定の間隙を存するよう設けられたロータとからなるアウターロータ形電動機であり、前記ステータを前記副軸受側に固定するとともに、前記ロータを前記ステータの上部で回転軸に固定したことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る冷凍サイクル装置は、請求項1に記載の密閉型圧縮機と、凝縮器と、膨張装置と、蒸発器を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る密閉型圧縮機によれば、吐油量の減少を図ることができ、さらに部品点数が少なく、小形で安価な密閉型圧縮機及びこれを用いた冷凍サイクル装置を提供することができる。
【0009】
また、本発明に係る冷凍サイクル装置によれば、例えば空気調和機に使用した場合には、省電力で振動が小さな室外機ユニットが実現でき、また、室外機ユニットの背丈を低く小形にでき、さらに安価な空気調和機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る密閉型圧縮機の一実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0011】
図1は本発明の一実施形態に係る密閉型圧縮機の縦断面図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係る密閉型圧縮機1は、冷媒ガスの吸込管2aと吐出管2bを設けた密閉ケース2と、この密閉ケース2の上方に収容され冷媒ガスを圧縮する圧縮機構部3、この圧縮機構部3の下方に設け、この圧縮機構部3を回転駆動する電動機部4と、この電動機部4の下方に設け、圧縮機構部3と電動機部4を連結する回転軸5の一側を軸支する副軸受6と、回転軸5の他側を軸支し圧縮機構部3と電動機部4間に配設するメインフレーム7に設けた主軸受8を備えている。
【0013】
圧縮機構部3は例えばスクロール式圧縮機構を有し、固定スクロール3aの渦巻状の翼部3aと、固定スクロール3a内で偏心回転する旋回スクロール3bの渦巻状の翼部3bとを噛合させて圧縮空間3sを形成し、吸込口3cから吸い込んだガス冷媒を圧縮し吐出口3dから吐出するものである。圧縮機構部3は固定スクロール3aを密閉ケース2に圧入することで密閉ケース2に固定されている。また、固定スクロール3aはメインフレーム7に固定状態で密接し、旋回スクロール3bはメインフレーム7に回転可能な状態で密接している。
【0014】
電動機部4はアウターロータ形電動機からなり、ステータ4aと、このステータ4aの外周面と所定の間隙を存するよう設けられたロータ4bとからなっている。
【0015】
ステータ4aはステータコア4aに巻回された巻線4aを備え、さらに、ステータ4aは密閉ケース2に固定された副軸受6を介して密閉ケース2に固定されている。また、ステータ4aの副軸受6への取り付けは、ステータ4aを副軸受6に形成した平坦面に螺着することで行われている。これにより、簡単にステータを副軸受6固定できる。
【0016】
また、ロータ4bはリング形状のロータコア4bの内周面に設けられた溝に複数条挿入、固定したロータマグネット4bを備え、ロータコア4bの外周面を覆うように設けられたほぼ碗形状のロータハウジング4bを介して、ステータ4aの上方で回転軸5に固定されている。これにより、ロータコア4bの外周を支持するロータハウジング4bが、開口端4bを下方に向け、回転軸5にボス部4bを介して連結する閉塞端側4bを上方に向けた構造とすることが可能となる。
【0017】
回転軸5は偏心部5aとバランスウエート部5bを備えたクランクシャフトであり、上記のようにその一側を副軸受6で軸支し、他側を主軸受8で軸支し、さらに、回転軸5を偏心傾斜した状態で縦貫するように給油路5cを設け、下端給油開口5c1から吸い上げた油を上端及び上端近傍に設けた上部給油開口を介して主軸受8及び圧縮機構部3に給油し、メインフレーム7に設けた給油戻り路7aを介して落下し密閉ケース2の底部に戻すようにしてある。
【0018】
上記のような構造を有する本実施形態に係る密閉型圧縮機は、電動機部4に通電して圧縮機構部3を作動して、吸込管2aを介して圧縮機構部3に吸い込んだ冷媒ガスを圧縮し吐出管2bを介して密閉ケース2に吐出する。
【0019】
この圧縮過程において、回転軸5の回転に伴い、下端給油開口5c1から給油路5cに吸い上げられた油は主軸受8及び圧縮機構部3の摺動部を潤滑及び冷却した後、給油戻り路7aから落下して密閉ケース2の底部に戻す。
【0020】
落下する油は、ロータハウジング4bが邪魔板の働きをし、油を外周に遠心分離させ、ケース底部に戻すことが可能となり、吐油量を低減できる。
【0021】
この吐油量の低減は、従来のロータハウジングの開口端が上方に向けて開口しているものとは異なり、ロータハウジング内の底部に油が溜まることがなく、また、ステータとロータ間に溜まって抵抗になって入力を増大させることもなく、さらに、油溜の偏りによるアンバランシング発生に伴う振動を増大させることもない。
【0022】
また、従来のように、軸受を設けるために背丈を高くしたメインフレーム、あるいはメインフレームにステータを取り付け用のサブフレームをメインフレームの下方に設けたものとは異なり、本実施形態は部品点数の増加によるコストアップ、軸方向に長く伸びることがなく小形になる。
【0023】
本実施形態の圧縮機によれば、吐油量の減少を図かることができ、さらに部品点数が少なく、小形で安価な密閉型圧縮機を実現することができる。
【0024】
次に本発明に係る密閉型圧縮機を備えた冷凍サイクル装置について説明する。
【0025】
図1に示すように、本発明に係る冷凍サイクル装置11は、上記のような構造を有する密閉型圧縮機1と、吐出管2bを介して密閉型圧縮機1に接続され冷媒を凝縮する凝縮器12と、冷媒を絞り減圧する膨張装置13と、冷媒を蒸発させ、吸込管2aを介して密閉型圧縮機1に接続された蒸発器14を具備している。
【0026】
従って、本発明に係る冷凍サイクル装置を例えば空気調和機に使用した場合には、省電力で振動が小さな室外機ユニットが実現でき、また、室外機ユニットの背丈を低く小形にでき、さらに、安価な圧縮機を用いることで冷凍サイクル装置も安価にある。
【0027】
なお、上記圧縮機の実施形態において、圧縮機構部3にスクロール式を用いた例で説明したが、本発明に係る圧縮機は、ロータ方式あるいはレシプロ方式のものでもよく、また、電動機部のステータはステータ鉄心の磁極歯に絶縁部材を介して巻線を集中巻したものであってもよい。また、ステータは副軸受側(電動機部の下方)であれば、副軸受とは別体に形成された固定部材に固定するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る圧縮機及び冷凍サイクル装置の概念図。
【符号の説明】
【0029】
1…密閉型圧縮機、2…密閉ケース、3…圧縮機構部、4…電動機部、4a…ステータ、4b…ロータ、4b…ロータハウジング、4b…開口端、5…回転軸、5a…偏心部、5c…給油路、5c…下端給油開口、6…副軸受、7…メインフレーム、8…主軸受。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉ケース内上部に圧縮機構部、この圧縮機構部の下方に電動機部、この電動機部の下方に前記圧縮機構部と前記電動機部を連結する回転軸を軸支する副軸受を備えた密閉型圧縮機において、前記電動機部は、ステータと、このステータの外周面と所定の間隙を存するよう設けられたロータとからなるアウターロータ形電動機であり、前記ステータを前記副軸受側に固定するとともに、前記ロータを前記ステータの上部で回転軸に固定したことを特徴とする密閉型圧縮機。
【請求項2】
請求項1に記載の密閉型圧縮機と、凝縮器と、膨張装置と、蒸発器を具備したことを特徴とする冷凍サイクル装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−170005(P2006−170005A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−361297(P2004−361297)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(399023877)東芝キヤリア株式会社 (320)
【Fターム(参考)】