説明

封止用液状エポキシ樹脂組成物及び電子部品装置

【課題】保存安定性に優れ、実装時にボイドの発生がない封止用液状エポキシ樹脂組成物、及びこの封止用液状エポキシ樹脂組成物で封止した素子を備えた電子部品装置を提供しようとするものである。
【解決手段】下記一般式(I)で示される単官能縮合多環オキサジン化合物(A)を含有する封止用液状エポキシ樹脂組成物。
【化1】


(一般式(I)中、[A]は隣接する炭素原子をオキサジン環を共有して縮合環を形成する単環又は縮合多環芳香族炭化水素環を示し、R及びRは水素原子及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、すべてが同一でも異なっていてもよい。nは0又は1〜4の整数を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用液状エポキシ樹脂組成物、及びこの封止用液状エポキシ樹脂組成物で封止した素子を備えた電子部品装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、トランジスタ、IC等の電子部品装置の素子封止の分野では生産性、コスト等の面から樹脂封止が主流となり、エポキシ樹脂成形材料が広く用いられている。この理由としては、エポキシ樹脂が電気特性、耐湿性、耐熱性、機械特性、インサート品との接着性などの諸特性にバランスがとれているためである。
【0003】
近年、素子の高集積化、高密度化とパッケージの薄型化、小型化の要求から、フリップチップ接続方式を採用したパッケージが広く用いられるようになってきている。フリップチップ接続方式は、素子表面と回路基板とをはんだ等の金属バンプを用いて電気的に接続する方法であり、通常素子の固定化と信頼性を確保する目的で、接続後にアンダーフィル材を素子と回路基板の狭部に毛管現象を利用して注入硬化させて実装している(キャピラリーフロー方式)。
しかしながら、前記した方式ではアンダーフィル材注入前の接続時に、はんだバンプ表面の酸化膜を除去するためのフラックス処理、およびその後のフラックス剤洗浄工程が必要であるため、生産工程が長くなるばかりではなく、洗浄廃液が大量に発生するため環境への影響が懸念されている。さらに素子の高密度化にともなうバンプピッチの縮小および素子と回路基板間のギャップの縮小はキャピラリーフローによるアンダーフィル材の注入時間の長時間化を招くため、さらなる生産性低下の問題が顕在化してきている。
【0004】
上記問題を解決するために、アンダーフィル材を予め回路基板上に塗布し、はんだバンプ付き素子を仮実装させた後、リフローによってはんだ接合と樹脂封止を一括に行う方法(アンダーフィル材先付け方式)が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この場合、はんだを回路基板に接合させるために、樹脂組成物にフラックス剤を添加することが特徴であるが、フラックス剤として例示されている物質はいずれも酸性度が大きいカルボン酸であり、アンダーフィル材に添加する場合には電気特性の低下を引き起こす可能性があった。一方、フラックス作用を有する硬化剤として液状ポリフェノール、液状エポキシ樹脂、硬化促進剤からなる液状封止樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この場合、カルボン酸よりも酸性度が小さいフェノール化合物がフラックス剤として添加されているばかりでなく、それらはエポキシ樹脂の硬化剤としても作用する。しかしながら、液状エポキシ樹脂の硬化剤として例示されている液状ポリフェノールを用いた場合に、アンダーフィル材(液状封止樹脂組成物)の保存安定性が低下する問題があった。また同様に、硬化剤とフラックス作用を同時に有する化合物を用いることによりフラックス剤を最終的に硬化物中に取り込み高い信頼性を得る方法として、1分子あたり少なくとも2個以上のフェノール性水酸基と1分子あたり少なくとも1個以上のカルボン酸を有する化合物が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、この場合も硬化反応としてエポキシ基とフェノール性水酸基の反応を用いているため、アンダーフィル材(液状封止樹脂組成物)の保存安定性が低下する問題があった。
【特許文献1】特許第2589239号公報
【特許文献2】特開2001−31740号公報
【特許文献3】特開2001−106770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はかかる状況に鑑みなされたもので、保存安定性に優れ、実装時にボイドの発生がない封止用液状エポキシ樹脂組成物、及びこの封止用液状エポキシ樹脂組成物で封止した素子を備えた電子部品装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、硬化剤として単官能縮合多環オキサジン化合物を含有する封止用エポキシ樹脂組成物により上記の目的を達成し得ることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は以下に関する。
<1> 下記一般式(I)で示される単官能縮合多環オキサジン化合物(A)を含有する封止用液状エポキシ樹脂組成物。
【化1】

(一般式(I)中、[A]は隣接する炭素原子をオキサジン環を共有して縮合環を形成する単環又は縮合多環芳香族炭化水素環を示し、RおよびRは水素原子及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、すべてが同一でも異なっていてもよい。nは0又は1〜4の整数を示す。)
<2> 単官能縮合多環オキサジン化合物(A)が下記一般式(II)で示される化合物である前記<1>記載の封止用液状エポキシ樹脂組成物。
【化2】

(一般式(II)中、RおよびRは水素原子及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、すべてが同一でも異なっていてもよい。nは0又は1〜4の整数を示す。)
<3> 下記一般式(III)で示される液状フェノール樹脂を含有する前記<1>または<2>記載の封止用液状エポキシ樹脂組成物。
【化3】

(一般式(III)中、Rは水素原子及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、すべてが同一でも異なっていてもよい。iは0又は1〜3の整数を示し、nは0又は1〜10の整数を示す。)
<4> 1分子内に3個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂(B)を含有する前記<1>〜<3>のいずれかに記載の封止用液状エポキシ樹脂組成物。
<5> 液状エポキシ樹脂(B)の含有量が全エポキシ樹脂中の30重量%以上である前記<4>記載の封止用液状エポキシ樹脂組成物。
<6> 液状エポキシ樹脂(B)が下記一般式(IV)で示される化合物である前記<4>または<5>記載の封止用液状エポキシ樹脂組成物。
【化4】

(一般式(IV)中、Rは水素原子及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、すべてが同一でも異なっていてもよい。iは0又は1〜4の整数を示す。)
<7> 前記<1>〜<6>のいずれかに記載の封止用液状エポキシ樹脂組成物で封止された素子を備えた電子部品装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明になる封止用液状エポキシ樹脂組成物は、保存安定性が良好で、特に組立工程を簡略できるアンダーフィル材先付け方式で実装する際に内部ボイドのない優れた電子部品装置が得られるので、その工業的価値は大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において用いられる単官能縮合多環オキサジン化合物(A)は下記一般式(I)で示される化合物である。
【化5】

(一般式(I)中、[A]は隣接する炭素原子をオキサジン環と共有して縮合環を形成する単環又は縮合多環芳香族炭化水素環を示し、RおよびRは水素原子及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、すべてが同一でも異なっていてもよい。nは0又は1〜4の整数を示す。)
【0010】
一般式(I)中の[A]で示される隣接する炭素原子をオキサジン環と共有して縮合環を形成する単環又は縮合多環芳香族炭化水素環としてはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環などが挙げられ、なかでもベンゼン環が好ましい。また、R1及びRとしては、たとえば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等の鎖状アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の環状アルキル基、ベンジル基、フェネチル基等のアリール基置換アルキル基、メトキシ基置換アルキル基、エトキシ基置換アルキル基、ブトキシ基置換アルキル基等のアルコキシ基置換アルキル基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のアミノ基置換アルキル基、水酸基置換アルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基等のアルケニル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等の無置換アリール基、トリル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、t-ブチルフェニル基、ジメチルナフチル基等のアルキル基置換アリール基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、t-ブトキシフェニル基、メトキシナフチル基等のアルコキシ基置換アリール基などが挙げられ、なかでも水素原子、メチル基、フェニル基、トリル基、アリル基が好ましい。nは0又は1〜4の整数を示し、0又は1が好ましい。
【0011】
単官能縮合多環オキサジン化合物(A)の好ましい構造としては下記一般式(II)で示される単官能縮合多環オキサジン化合物が挙げられ、具体的には下記構造式(V)〜(XIII)を例示することができ、なかでも得られる封止用液状エポキシ樹脂組成物の粘度の観点から下記構造式(IX)で示される単官能縮合多環オキサジン化合物が好ましい。そのような縮合多環オキサジン化合物は市販品としてエア・ウォーター・ケミカル株式会社製商品名RLV100として入手可能である。
【化6】

(一般式(II)中、RおよびRは水素原子及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、すべてが同一でも異なっていてもよい。nは0又は1〜4の整数を示す。)
【化7】

【0012】
単官能縮合多環オキサジン化合物(A)は、フェノール性水酸基を1分子中に1個有し、水酸基に対してオルト位の少なくとも1つが置換されていない単環又は縮合多環フェノール類、ホルムアルデヒド及びアミノ基を1分子中に1個有する1級アミン類から公知の方法で合成することができる。たとえば、ジオキサン、トルエン、メタノール、エチレングリコールジメチルエーテルなどの溶媒にフェノール類を溶解させ、1級アミン類とホルムアルデヒドをその中に添加する方法が使用できる。通常は無触媒で反応を進行させるが、触媒としてアルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物、3級アミンなどを用いることもできる。原料の仕込み比は通常フェノール類/1級アミン類/ホルムアルデヒド=1/1/2(モル比)とし、反応温度60〜120℃で2〜24時間反応させる。所定時間経過後、反応生成物である有機層と反応で生成した縮合水とを蒸留等で系外へ除去することで目的とする単官能縮合多環オキサジン化合物(A)を得ることができる。本発明の封止用液状エポキシ樹脂組成物は縮合多環オキサジン化合物(A)を含有していればよく、その配合量は特に制限はないが保存安定性の観点から封止用液状エポキシ樹脂組成物中のエポキシ基に対して縮合多環オキサジン化合物(A)が開環して生成するフェノール性水酸基が10〜90モル%であることが好ましく、さらに好ましくは30〜70モル%である。10モル%より少ないと粘度上昇率の抑制効果が不十分となる傾向があり、90モル%より多いとゲルタイムが遅くなる傾向がある。
【0013】
本発明の封止用液状エポキシ樹脂組成物には発明の効果を損なわない範囲で、エポキシ樹脂の硬化剤として一般に使用されているものを併用することができる。併用できる硬化剤としては、フェノール樹脂、芳香族アミン及び酸無水物等が好ましい。
フェノール樹脂としては、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するものであれば特に制限はなく、たとえば、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂、フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂などのアラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、シクロペンタジエン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、多環芳香環変性フェノール樹脂、トリフェノールメタン型フェノール樹脂、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、チオジフェノール、ナフタレンジオールなどが挙げられる。さらに、上記したフェノール樹脂はアリル化物として用いることができる。
芳香族アミンとしては、芳香環を有するアミン化合物であれば特に制限はなく、例えば、市販品として、エピキュアW、エピキュアZ(ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名)、カヤハードAA、カヤハードA−B、カヤハードA−S(日本化薬株式会社製商品名)、トートアミンHM−205(東都化成株式会社製商品名)、アデカハードナーEH−101(旭電化工業株式会社製商品名)、エポミックQ−640、エポミックQ−643(三井化学株式会社製商品名)、DETDA80(Lonza社製商品名)等が入手可能である。
酸無水物としては、特に制限はないが、例えば、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチル無水ナジック酸、無水ハイミック酸、無水コハク酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、YH−306(ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名)等が挙げられる。
【0014】
なかでも、本発明の封止用液状エポキシ樹脂組成物には、硬化性、粘度低減の観点から下記一般式(III)で示される液状フェノール樹脂を含有することが好ましい。
【化8】

(一般式(III)中、Rは水素原子及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、すべてが同一でも異なっていてもよい。iは0又は1〜3の整数を示し、nは0又は1〜10の整数を示す。)
一般式(III)中のR1としては、たとえば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等の鎖状アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の環状アルキル基、ベンジル基、フェネチル基等のアリール基置換アルキル基、メトキシ基置換アルキル基、エトキシ基置換アルキル基、ブトキシ基置換アルキル基等のアルコキシ基置換アルキル基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のアミノ基置換アルキル基、水酸基置換アルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基等のアルケニル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等の無置換アリール基、トリル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、t-ブチルフェニル基、ジメチルナフチル基等のアルキル基置換アリール基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、t-ブトキシフェニル基、メトキシナフチル基等のアルコキシ基置換アリール基などが挙げられ、なかでも水素原子、メチル基、アリル基が好ましく、アリル基がより好ましい。iは0又は1であり平均で0.5〜1.0の範囲であることが好ましい。また、nは0又は1〜3の整数であり平均で0.5〜2の範囲であることが好ましい。上記一般式(III)で示される液状フェノール樹脂は、従来公知の方法により合成することができるが、特に本発明の封止用液状エポキシ樹脂組成物に好適なアリル化フェノールノボラック樹脂は、市販品では明和化成株式会社製商品名MEH−8000Hとして入手可能である。
液状フェノール樹脂を含有する場合の配合量は特に制限ないが、ゲルタイムと粘度上昇率の両立の観点から封止用液状エポキシ樹脂組成物中のエポキシ基に対してフェノール性水酸基が5〜40モル%であることが好ましく、さらに好ましくは10〜30モル%である。5モル%より少ないとゲルタイムが遅くなる傾向があり、40モル%より多いと粘度上昇率が大きくなる傾向がある。
【0015】
本発明の封止用液状エポキシ樹脂組成物に用いられるエポキシ樹脂は1分子中に2個以上のエポキシ基を有する物で特に制限はないが、例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン骨格を有するエポキシ樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール類及び/又はα‐ナフトール、β‐ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したもの、アルキル置換、芳香環置換又は非置換のビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビフェノール、チオジフェノール等のジグリシジルエーテル、スチルベン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンとフェノール類の共縮合樹脂のエポキシ化物、ナフタレン環を有するエポキシ樹脂、フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物、トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂、テルペン変性エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、硫黄原子含有エポキシ樹脂などが挙げられる。さらには上記したエポキシ樹脂のアルキレンオキサイド付加物、ハロゲン化物及び水素添加物なども例示することができ、これらの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記したエポキシ樹脂は従来公知の方法で合成することができるが、市販品を用いてもよい。
【0016】
なかでも低粘度の封止用液状エポキシ樹脂組成物が得られ、硬化物のガラス転位温度(Tg)が高くなることから1分子内に3個以上のエポキシ樹脂を有する液状エポキシ樹脂(B)が好ましく、下記一般式(IV)で表される液状エポキシ樹脂がさらに好ましい。
【化9】

(一般式(IV)中、Rは水素原子及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、すべてが同一でも異なっていてもよい。iは0又は1〜4の整数を示す。)
一般式(IV)中のR1としては、たとえば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等の鎖状アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の環状アルキル基、ベンジル基、フェネチル基等のアリール基置換アルキル基、メトキシ基置換アルキル基、エトキシ基置換アルキル基、ブトキシ基置換アルキル基等のアルコキシ基置換アルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基等のアルケニル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等の無置換アリール基、トリル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、t-ブチルフェニル基、ジメチルナフチル基等のアルキル基置換アリール基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、t-ブトキシフェニル基、メトキシナフチル基等のアルコキシ基置換アリール基などが挙げられ、なかでも水素原子、メチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。式中i個のRは、それぞれが全て同一でも異なっていてもよい。式中iは0又は1〜4の整数を示し、なかでも0又は1が好ましく、0がより好ましい。このような化合物としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名エピコート630が市販品として入手可能である。
1分子内に3個以上のエポキシ樹脂を有する液状エポキシ樹脂(B)を用いる場合の配合量は特に制限ないが、全エポキシ樹脂中の30重量%以上用いることが好ましく、50重量%以上用いることがより好ましく、80重量%以上用いることがさらに好ましい。30重量%より少ないと得られる硬化物のTgが低くなる傾向がある。
【0017】
エポキシ樹脂と硬化剤との当量比(硬化剤/エポキシ)は特に制限はないが、Tgの観点から、1.0〜0.1となることが好ましく、0.6〜0.2となることが更に好ましい。当量比が1.0を超えると得られる硬化物のTgが低くなる傾向がある。
【0018】
本発明の封止用液状エポキシ樹脂組成物には、必要に応じて従来公知の硬化促進剤を使用することができる。この硬化促進剤としては、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5、5,6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等のシクロアミジン化合物、その誘導体、及びこれらに無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂などのπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン類及びこれらの誘導体、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−〔2´−メチルイミダゾリル−(1´)〕−エチル−s−トリアジン、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ〔1,2−a〕ベンズイミダゾール等のイミダゾール類及びこれらの誘導体、トリブチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン等のジアルキルアリールホスフィン、メチルジフェニルホスフィン等のアルキルジアリールホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン等のトリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキル・アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、ジフェニルホスフィン、ジフェニル(p−トリル)ホスフィンなどの有機ホスフィン類、その誘導体及びこれらにキノン化合物、無水マレイン酸、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有するリン化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾールテトラフェニルボレート、N−メチルモリホリンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩及びこれらの誘導体、有機ホスフィン類と有機ボロン類との錯体などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なかでも硬化性の観点からイミダゾール類が好ましく、また、硬化性と保存安定性の観点からは、2,4−ジアミノ−6−〔2´−メチルイミダゾリル−(1´)〕−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2´−メチルイミダゾリル−(1´)〕−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾールがさらに好ましい。
【0019】
硬化促進剤の配合量は硬化促進効果が達成される量であれば特に制限はないが、エポキシ樹脂及び硬化剤の総量に対して0.05〜5重量%が好ましい。0.05重量%未満では硬化性が不十分となる傾向があり、5重量%を超えると保存安定性が低下する傾向がある。
【0020】
本発明の封止用液状エポキシ樹脂組成物には、フラックス機能を付与するために従来公知のフラックス剤を使用することができる。このフラックス剤としては従来から用いられてきたハロゲン化水素酸アミン塩等を用いることができるが、好ましいフラックス剤としては、電気特性の観点からたとえば、ヒドロキシ安息香酸等のフェノール性水酸基とカルボキシル基を有する化合物、トリメリット酸等のカルボンキシル基を含む酸無水物、アビチエン酸、アジピン酸、アスコルビン酸、クエン酸、2−フランカルボン酸、リンゴ酸等の有機酸、1分子にアルコール性水酸基を2個以上含有する化合物等が好ましい。フラックス剤の配合量はフラックス機能が発現する量であれば特に制限ないが、封止用液状エポキシ樹脂組成物中に0.5〜10重量%が好ましく、1〜5重量%がさらに好ましい。0.5重量%未満でははんだのぬれ性が不十分になり接続抵抗が高くなる傾向があり、10重量%を超えるとボイドが発生し易くなる傾向がある。
【0021】
本発明の封止用液状エポキシ樹脂組成物には必要に応じて無機充てん剤を使用することができる。この無機充てん剤は、吸湿性、線膨張係数低減、熱伝導性向上及び強度向上のために配合されるものであり、封止用液状エポキシ樹脂組成物に一般に使用されているものであれば特に制限されるものではないが、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、又はこれらを球形化したビーズ、ガラス繊維などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、線膨張係数低減の観点からは溶融シリカが、高熱伝導性の観点からはアルミナが好ましく、充てん剤形状は高充てん化が図れるため球形が好ましい。さらに、封止用液状エポキシ樹脂組成物に揺変性を付与する場合には、所望の揺変性比に合わせて超微粒子状シリカなどを少量添加することができる。
【0022】
本発明の封止用液状エポキシ樹脂組成物に無機充てん剤を使用する場合には、樹脂成分と無機充てん剤との親和性を高めて無機充てん剤の分散性を向上するために、必要に応じてカップリング剤を使用することができる。このカップリング剤としては、たとえば、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等の各種シラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物等の公知のカップリング剤を添加することが好ましい。これらを例示すると、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β‐メトキシエトキシ)シラン、γ‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ‐メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ‐アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β‐(3,4‐エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ‐グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ‐グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ‐メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ‐アミノプロピルトリエトキシシラン、γ‐アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ‐アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ‐[ビス(β‐ヒドロキシエチル)]アミノプロピルトリエトキシシラン、N‐β‐(アミノエチル)‐γ‐アミノプロピルトリメトキシシラン、γ‐(β‐アミノエチル)アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N‐(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N‐(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、N‐β‐(N‐ビニルベンジルアミノエチル)‐γ‐アミノプロピルトリメトキシシラン、γ‐クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ‐メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N‐アミノエチル‐アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2‐ジアリルオキシメチル‐1‐ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等のチタネート系カップリング剤などが挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記カップリング剤の配合量は、無機充てん剤に対して0.05〜5重量%であることが好ましく、0.1〜2.5重量%がより好ましい。0.05重量%未満では充てん剤の分散性向上効果が得られない傾向があり、5重量%を超えると硬化物中にボイドが発生し易い傾向がある。
【0023】
本発明の封止用液状エポキシ樹脂組成物には、IC等の半導体素子の耐湿性及び高温放置特性を向上させる観点から、必要に応じてイオントラップ剤を使用することができる。イオントラップ剤としては特に制限はなく、従来公知のものを用いることができるが、たとえば、ハイドロタルサイト類や、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ビスマスから選ばれる元素の含水酸化物等が挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、下記組成式(XIV)で示されるハイドロタルサイトが好ましい。
(化10)
Mg1-XAlX(OH)2(CO3X/2・mH2O (XIV)
(0<X≦0.5、mは正の数)
イオントラップ剤の配合量は、ハロゲンイオンなどの陰イオンを捕捉できる十分量であれば特に制限はないが、エポキシ樹脂に対して0.1〜10重量%が好ましく、1〜5重量%がより好ましい。
【0024】
本発明の封止用液状エポキシ樹脂組成物には必要に応じて難燃剤を配合することができる。難燃剤としては、従来公知の臭素化エポキシ樹脂や三酸化アンチモンを用いることができるが、従来公知のノンハロゲン、ノンアンチモンの難燃剤を用いることができる。たとえば、赤リン、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂等で被覆された赤リン、リン酸エステル、酸化トリフェニルホスフィン等のリン化合物、メラミン、メラミン誘導体、メラミン変性フェノール樹脂、トリアジン環を有する化合物、シアヌル酸誘導体、イソシアヌル酸誘導体等の窒素含有化合物、シクロホスファゼン等のリン及び窒素含有化合物、ジシクロペンタジエニル鉄等の金属錯体化合物、酸化亜鉛、錫酸亜鉛、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛等の亜鉛化合物、酸化鉄、酸化モリブデン等の金属酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、下記組成式(XV)で示される複合金属水酸化物などが挙げられる。
(化11)
p(M1ab)・q(M2cd)・r(M3cd)・mH2O (XV)
(ここで、M1、M2及びM3は互いに異なる金属元素を示し、a、b、c、d、p、q及びmは正の数、rは0又は正の数を示す。)
【0025】
上記組成式(XV)中のM1、M2及びM3は互いに異なる金属元素であれば特に制限はないが、難燃性の観点からは、M1が第3周期の金属元素、IIA族のアルカリ土類金属元素、IVB族、IIB族、VIII族、IB族、IIIA族及びIVA族に属する金属元素から選ばれ、M2がIIIB〜IIB族の遷移金属元素から選ばれることが好ましく、M1がマグネシウム、カルシウム、アルミニウム、スズ、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛から選ばれ、M2が鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛から選ばれることがより好ましい。流動性の観点からは、M1がマグネシウム、M2が亜鉛又はニッケルで、r=0のものが好ましい。p、q及びrのモル比は特に制限はないが、r=0で、p/qが1/99〜1/1であることが好ましい。市販品としては、例えば、上記組成式(XV)中のM1がマグネシウム、M2が亜鉛で、pが7、qが3、mが10で、a、b、c及びdが1で、rが0である水酸化マグネシウム・亜鉛固溶体複合金属水酸化物(タテホ化学工業株式会社製商品名エコーマグZ−10)を使用できる。なお、金属元素の分類は、典型元素をA亜族、遷移元素をB亜族とする長周期型の周期率表(出典:共立出版株式会社発行「化学大辞典4」1987年2月15日縮刷版第30刷)に基づいて行った。上記した難燃剤は1種を単独で用いても2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0026】
さらに、本発明の封止用液状エポキシ樹脂組成物には、その他の添加剤として染料、顔料、カーボンブラック等の着色剤、希釈剤、レベリング剤、消泡剤、シリコーンオイル、シリコーンレジン、液状ゴム、ゴム粉末、熱可塑性樹脂等の応力緩和剤などを必要に応じて使用することができる。
【0027】
本発明の封止用液状エポキシ樹脂組成物は、上記した各種成分を均一に分散混合できる物であれば、いかなる手法を用いても調整できるが、一般的な方法として、所定の配合量の成分を秤量し、三本ロール、らいかい機等によって分散混練を行う方法を挙げることができる。
【0028】
本発明で得られる封止用液状エポキシ樹脂組成物により素子及び/又はボンディングエリアを封止して得られる電子部品装置としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ等の支持部材に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子等の素子を搭載し、必要な部分を本発明の封止用液状エポキシ樹脂組成物で封止して得られる電子部品装置などが挙げられる。このような電子部品装置としては、たとえば、リードフレーム上に半導体素子を固定し、ボンディングパッド等の素子の端子部とリード部をワイヤボンディングやバンプで接続した後、本発明の封止用液状エポキシ樹脂組成物を用いてディスペンス方式等により封止してなる、PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、SOJ(Small Outline J−lead package)、TSOP(Thin Small Outline Package)、TQFP(Thin Quad Flat Package)等の一般的な樹脂封止型IC、テープキャリアにバンプで接続した半導体チップを、本発明の封止用液状エポキシ樹脂組成物で封止したTCP(Tape Carrier Package)、配線板やガラス上に形成した配線に、ワイヤボンディング、フリップチップボンディング、はんだ等で接続した半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子及び/又はコンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子を、本発明の封止用液状エポキシ樹脂組成物で封止したCOB(Chip On Board)モジュール、ハイブリッドIC、マルチチップモジュール、マザーボード接続用の端子を形成したインターポーザ基板に半導体チップを搭載し、バンプまたはワイヤボンディングにより半導体チップとインターポーザ基板に形成された配線を接続した後、本発明の封止用液状エポキシ樹脂組成物で半導体チップ搭載側または半導体チップと基板の間を封止したBGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)、MCP(Multi Chip Package)、フリップチップなどの片面封止パッケージが挙げられる。
なかでも本発明で得られる封止用液状エポキシ樹脂組成物は、フリップチップ及びCSP等の信頼性を向上させるために使用されるアンダーフィル材を用いる電子部品装置に好適であり、さらにアンダーフィル材先付け方式で製造する電子部品装置にさらに好適である。
【0029】
本発明の封止用液状エポキシ樹脂組成物を用いて素子及び/又はボンディングエリアを封止する方法としては、ディスペンス方式、注型方式、印刷方式等が挙げられる。
【実施例】
【0030】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0031】
(実施例1〜9、比較例1〜3)
以下の成分をそれぞれ表1及び表2に示す重量部で配合し、三本ロールにて混練分散した後、真空脱泡して、実施例1〜9及び比較例1〜3の封止用液状エポキシ樹脂組成物を作製した。
【0032】
エポキシ樹脂として、エポキシ当量160、粘度1.3Pa・s(25℃)のビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂1、東都化成株式会社製商品名YDF−8170C)、エポキシ当量118、粘度13Pa・s(50℃)のテトラグリシジル−4,4´−ジアミノジフェニルメタン(エポキシ樹脂2、住友化学工業株式会社製商品名スミエポキシELM−434)、エポキシ当量94、粘度0.6Pa・s(25℃)のp−アミノフェノール型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂3、ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名エピコート630)を使用した。
【0033】
硬化剤として水酸基当量103、軟化点86℃のフェノール樹脂(硬化剤1、明和化成株式会社製商品名MEH−7500)、水酸基当量220、粘度0.7Pa・s(30℃)のベンゾオキサジン樹脂(硬化剤2、エア・ウォーター・ケミカル株式会社商品名RLV100)、水酸基当量141、粘度1.7Pa・s(25℃)のアリル化フェノールノボラック樹脂(硬化剤3、明和化成株式会社製商品名MEH−8000H)、水酸基当量146、粘度23Pa・s(25℃)のアリル化フェノールノボラック樹脂(硬化剤4、群栄化学工業株式会社製商品名レヂトップXPL−4437E)を使用した。
【0034】
硬化促進剤として、イミダゾール系化合物(硬化促進剤1、四国化成工業株式会社製商品名キュアゾール2P4MHZ、及び硬化促進剤2、四国化成工業株式会社製商品名キュアゾール1B2MZ)を使用した。
【0035】
無機充てん剤として平均粒径1.0μmの球状溶融シリカ(株式会社トクヤマ製商品名エクセリカSE−1)、カップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカー株式会社製商品名A−187)、フラックス剤として2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール・アジピン酸重縮合物(フラックス剤、協和油化株式会社製商品名キョウワポール2000PA)を使用した。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
作製した実施例及び比較例の封止用液状エポキシ樹脂組成物を、次の各試験により評価した。結果を表3及び表4に示す。
(1)ゲルタイム
ゲル化試験機を用い、配合した封止用液状エポキシ樹脂組成物を260℃の熱板上に適量たらした後、ゲル化し始めるまでの時間を測定した。
(2)粘度及び粘度上昇率
EHD型粘度計(株式会社東京計器製)を用いて、25℃、5rpmの条件で求めた。粘度上昇率とは、25℃/50%RHの条件下で24h放置後の粘度上昇率であり、次式(1)により算出した。

粘度上昇率(%)=(24h放置後の粘度−初期粘度)×100/初期粘度 (式1)
(3)Tg
封止用液状エポキシ樹脂組成物を165℃のオーブン中で2時間加熱して得た硬化物を、DSC(PERKIN ELMER社製示差走査熱量測定装置Pyris1)で続けて2回測定したときの2回目の値である。なお、DSC測定条件は次の通りである。サンプル量:約10mg、昇温速度:10℃/min、測定温度:25℃〜300℃。
(4)ボイド評価
評価基板上に封止用液状エポキシ樹脂組成物0.1gをディスペンサーで塗布し、次いでTEGチップをフリップチップボンダー(ミスズFA株式会社製FCボンダーCB−1050)を用いて加熱条件180℃/10s+260℃/10s、荷重5kgで接続した後、165℃/2hの後硬化を行って評価用サンプルを作製した。得られた評価用サンプルをSAT(Scanning Acoustic Tomography、日立建機株式会社製超音波探査映像装置HYE−FOCUS)によりサンプル内部のボイド発生の有無を観察し、試験パッケージ数(10)に対するボイド発生パッケージ数で評価した。なお、評価基板及びTEGチップは以下に示す物を使用した。
評価基板:株式会社日立超LSIシステムズ製標準評価基板TypeI仕様(Phase2E20対応、Sn−Ag−Cu鉛フリーはんだプリコート品)
TEGチップ:株式会社日立超LSIシステムズ製Phase2CC TEGチップ(10.04mm×10.04mm×0.7mmt、高融点はんだバンプΦ120μm、1936ピン)
【0039】
【表3】

【0040】
【表4】

【0041】
本発明における(A)単官能縮合多環オキサジン化合物を含有していない比較例1〜3はいずれも粘度上昇率、Tg及びボイド性に劣っている。これに対して実施例1〜9は粘度上昇率、Tg及びボイド性に優れる。ボイド性に関しては単官能縮合多環オキサジン化合物と特定構造の液状フェノール樹脂を含有する実施例4〜9が優れている。粘度上昇率に関しては硬化剤として(A)単官能縮合多環オキサジン化合物のみを用いた実施例2、3が優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で示される単官能縮合多環オキサジン化合物(A)を含有する封止用液状エポキシ樹脂組成物。
【化1】

(一般式(I)中、[A]は隣接する炭素原子をオキサジン環を共有して縮合環を形成する単環又は縮合多環芳香族炭化水素環を示し、R及びRは水素原子及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、すべてが同一でも異なっていてもよい。nは0又は1〜4の整数を示す。)
【請求項2】
単官能縮合多環オキサジン化合物(A)が下記一般式(II)で示される化合物である請求項1記載の封止用液状エポキシ樹脂組成物。
【化2】

(一般式(II)中、RおよびRは水素原子及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、すべてが同一でも異なっていてもよい。nは0又は1〜4の整数を示す。)
【請求項3】
下記一般式(III)で示される液状フェノール樹脂を含有する請求項1または2記載の封止用液状エポキシ樹脂組成物。
【化3】

(一般式(III)中、Rは水素原子及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、すべてが同一でも異なっていてもよい。iは0又は1〜3の整数を示し、nは0又は1〜10の整数を示す。)
【請求項4】
1分子内に3個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂(B)を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の封止用液状エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
液状エポキシ樹脂(B)の含有量が全エポキシ樹脂中の30重量%以上である請求項4記載の封止用液状エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
液状エポキシ樹脂(B)が下記一般式(IV)で示される化合物である請求項4または5記載の封止用液状エポキシ樹脂組成物。
【化4】

(一般式(IV)中、Rは水素原子及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、すべてが同一でも異なっていてもよい。iは0又は1〜4の整数を示す。)
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の封止用液状エポキシ樹脂組成物で封止された素子を備えた電子部品装置。

【公開番号】特開2006−16576(P2006−16576A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−198427(P2004−198427)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】