説明

射出成形方法および射出成形機

【課題】ホットランナとバルブゲートを備えた金型を使用して成形するとき、バルブゲートから溶融樹脂が漏れず、成形不良が生じない射出成形方法を提供する。
【解決手段】ホットランナとバルブゲートとを備えた金型(3)に、射出圧力を検出する圧力センサ(34)と、コントローラ(35)とを設ける。射出圧力が所定の圧力に達したらコントローラ(35)は、バルブピン(27)を後退させてバルブゲートを開にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒータによって内部の溶融樹脂の温度を制御できるホットランナと、バルブピンによって開閉が可能なバルブゲートとが設けられている金型を使用した射出成形方法と、そのような射出成形方法を実施する射出成形機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金型内には、溶融樹脂の流路であるスプル、ランナが形成されており、型締された金型内に構成されているキャビティには、溶融樹脂を注入するゲートが開口している。従って、射出成形機のノズルから溶融樹脂を射出すると、スプル、ランナを経てゲートからキャビティに充填される。充填後、冷却固化を待って型開するとキャビティで賦形される成形品が得られるが、同時にスプルやランナ内で固化して破棄される不要な樹脂も発生する。このように、スプルやランナ内の溶融樹脂は、射出成形の1ショット毎に固化してしまうので、材料の樹脂が無駄になってしまうが、このような無駄を無くすことができる金型として、バルブゲートが設けられた金型が周知である。
【0003】
【特許文献1】特開2002−337187号公報
【0004】
本願発明の直接的な文献ではないが、特許文献1には、バルブゲートが設けられた金型が記載されている。このバルブゲートは、バルブピンにより開閉されるようになっている。そして、金型には所定の断熱構造を有していると共にヒータを備えた、いわゆるホットランナが設けられ、スプルおよびランナ内の溶融樹脂は冷却固化しないようになっている。従って、射出の直前にバルブゲートを開いて、射出を実施して、射出完了後にバルブゲートを閉じれば、スプル、ランナ内の溶融樹脂は冷却固化することはなく、次回のショットにおいてスプル、ランナ内の溶融樹脂をキャビティに充填することができるので、樹脂材料が無駄にならない。
【0005】
このようなバルブゲートの開閉は、射出成形機に設けられているコントローラによって制御されているが、詳しく説明すると以下のように制御されている。コントローラは型締装置を駆動して型閉・型締する。型締の完了を検出したらコントローラはバルブピンを駆動する。バルブゲートの開を検出したら、コントローラは、射出成形機のスクリュ、またはプランジャを駆動して溶融樹脂を射出する。所定の背圧をかける保圧を実施する。保圧後、コントローラはバルブピンを駆動してバルブゲートを閉じる。冷却固化を待って型開して成形品を取り出す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
バルブゲートが設けられた金型を使用して上記した従来のバルブゲートの開閉方法を実施すれば、溶融樹脂がスプルとランナ内で冷却固化されることはなく、樹脂材料は無駄にならない。また、バルブゲートを開いてから射出するので、射出圧力により金型等が破損するようなことはない。しかしながら、解決すべき問題点も見受けられる。具体的には、バルブゲートの開を検出した後に射出を開始するようになっているので問題がある。すなわち、バルブゲートを開にすると、その直後にランナ内の溶融樹脂がバルブゲートからキャビティ内に漏れ出してしまう、いわゆる洟垂れ現象が生じてしまう。そうすると、漏れ出した溶融樹脂はキャビティ内で冷却してコールドスラグになってしまい、その直後に溶融樹脂を射出すると、コールドスラグによってキャビティ内での溶融樹脂の流れが妨げられてしまい、充填不足等の成形不良が生じてしまう。さらには、コールドスラグと溶融樹脂との融着が不十分になってしまい成形品の強度が十分に得られなくなってしまう。
【0007】
射出成形機に射出の指令を発した後に所定の時間経過後にバルブゲートを開にすれば、溶融樹脂の射出圧力が十分に高くなってからバルブゲートが開になるので、洟垂れ現象を防止することはできる。具体的には、タイマーによってバルブゲートの開閉を制御することになる。すなわち、コントローラが射出成形機に射出の指令を発した後に、タイマーに設定された時間の経過後にバルブゲートの開の指令を発するようにすればよい。このような方式においてタイマーが最適に設定されていると、十分に射出圧力が高くなってからバルブゲートが開かれるので、バルブゲートの開直後の溶融樹脂の漏れを防ぐことができる。しかしながら、このようなタイマーによる制御にも問題点が認められる。すなわち、タイマーの最適な設定時間は射出速度等の成形条件によって左右されるので、成形条件を変更する度にタイマーを調節する必要があり煩雑である。さらには、成形条件を変更する度にタイマーを調節しなければならないので、最適な成形条件を見つける、いわゆる成形条件出しの作業も煩雑になってしまう。さらには、事故の危険もある。すなわち、タイマーによるバルブゲートの開閉は、射出圧力の変動とは無関係に制御されるので、バルブゲートを開にするタイミングが少しでも遅くなると射出圧力が異常に高くなってしまい、ランナや射出成形機のシリンダ等に割れやクラック等の破損が生じてしまう。
【0008】
本発明は、上記したような従来の問題点あるいは課題を解決した、射出成形方法を提供することを目的としており、具体的には、ホットランナとバルブゲートが設けられている金型を使用して射出成形するときに、バルブゲートから樹脂漏れが生じることがなく、十分に射出圧力が高くなってからキャビティ内に溶融樹脂を射出することができ、従ってコールドスラグが生じて成形不良が発生することがなく、金型のランナや射出成形機のシリンダに異常な射出圧力がかかって割れやクラック等の破損が生じることのない、射出成形方法を提供することを目的としている。さらには、そのような射出成形方法を実施でき、成形条件出しも容易な射出成形機を提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、ホットランナとバルブゲートとキャビティティとが設けられている金型を使用する射出成形方法において、射出機のスクリュを軸方向に駆動して射出するとき、射出圧力が所定の圧力に達したときにバルブゲートを開くように構成される。また、射出成形機は、射出機と、ホットランナとバルブゲートとキャビティとが設けられている金型と、溶融樹脂の射出圧力を検出する圧力センサと、コントローラとから構成して、射出圧力が所定の圧力に達したらコントローラからの指令でバルブゲートを開にして射出充填するように構成される。また、他の発明は、射出機と、ホットランナとバルブゲートとキャビティとが設けられている金型とから構成して、バルブゲートを開閉するバルブピンは、ホットランナ内の溶融樹脂の射出圧力が所定値になると、バルブピンを閉方向に付勢している付勢手段に抗して開くように構成される。
【0010】
すなわち、請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、射出機と、ホットランナとバルブゲートとキャビティとが設けられている金型とを使用し、前記射出機から前記ホットランナを介して前記バルブゲートから溶融樹脂を前記キャビティに射出充填するとき、前記射出機内の溶融樹脂の射出圧力が所定の圧力に達したとき、前記バルブゲートを開いて射出充填するように構成される。請求項2に記載の発明は、射出機と、ホットランナとバルブゲートとキャビティとが設けられている金型とを使用し、前記射出機から前記ホットランナを介して前記バルブゲートから溶融樹脂を前記キャビティに射出充填するとき、前記ホットランナ内の溶融樹脂の射出圧力が所定の圧力に達したとき、この圧力により前記バルブゲートが開いて射出充填するように構成される。そして、請求項3に記載の発明は、射出機と、ホットランナとバルブゲートとキャビティとが設けられている金型と、溶融樹脂の射出圧力を検出する検出手段と、コントローラとからなり、前記コントローラは、前記検出手段によって検出される射出圧力を監視して、所定の圧力に達したときに前記バルブゲートを開き、前記ホットランナは前記キャビティに連通するように構成される。さらには、請求項4に記載の発明は、射出機と、ホットランナとバルブゲートとキャビティとが設けられている金型とからなり、前記バルブゲートを開閉するバルブピンは、前記ホットランナ内の溶融樹脂の射出圧力が所定値になると、前記バルブピンを閉方向に付勢している付勢手段に抗して開き、前記ホットランナは前記キャビティに連通するように構成される。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によると、ホットランナとバルブゲートとキャビティティとが設けられている金型を使用する射出成形方法において、射出機のスクリュを軸方向に駆動して射出するとき、射出圧力が所定の圧力に達したときにバルブゲートを開くように構成されているので、射出圧力が十分に高くなってからバルブゲートが開かれる。従って、溶融樹脂がバルブゲートから漏れ出る、いわゆる洟垂れ現象は生じない。すなわちコールドスラグは形成されない。そして、溶融樹脂はバルブゲートからキャビティに勢いよく充填されるので、充填不足等の成形不良は発生しない。また、射出圧力が所定の圧力になったらバルブゲートを開にするので、射出圧力が異常に高くなることはなく、金型のランナや射出成形機のシリンダに射出圧力による割れやクラック等が生じることはない。他の発明によると、射出成形機は、射出機と、ホットランナとバルブゲートとキャビティとが設けられている金型と、溶融樹脂の射出圧力を検出する検出手段と、コントローラとから構成され、コントローラは、検出手段によって検出される射出圧力を監視して、所定の圧力に達したときにバルブゲートを開くように構成されているので、異常な射出圧力が発生する危険はない。従って、射出速度、射出圧力等の成形条件を変更して適切な成形条件を決定する、いわゆる、成形条件出しを安心して実施でき、かつ容易に実施できる。さらに、このような射出成形機は、射出圧力を検出する検出手段と、コントローラとを備えるだけで済み、安価に提供できる効果も得られる。さらに他の発明によると、射出成形機は、射出機と、ホットランナとバルブゲートとキャビティとが設けられている金型とからなり、バルブゲートを開閉するバルブピンは、ホットランナ内の溶融樹脂の射出圧力が所定値になると、バルブピンを閉方向に付勢している付勢手段に抗して開くように構成されているので、すなわち、射出圧力によって直接バルブゲートが開くように構成されているので、構造がシンプルにも拘わらず、容易に洟垂れ現象を防止することができ、成形不良が生じることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本実施の形態に係る射出成形制御装置1は、図1に示されているように、従来周知の射出機2に設けられ、射出工程時に、金型3のバルブゲートの開閉を制御するように構成されている。最初に、バルブゲートとホットランナを備えた従来周知の金型3について説明する。金型3は、固定側金型5と可動側金型6とからなり、固定側金型5と可動側金型6は、それぞれ図に示されていない固定盤と可動盤とに取り付けられて型締装置によって型開および型締されるようになっている。可動側金型6には、パーティングラインPに所定の形状の凹部7が明けられているので、可動側金型6が固定側金型5に対して型締されると、凹部7と固定側金型5のパーティングラインPとによってキャビティCが構成されることになる。固定側金型5は、第1のプレート9と第2のプレート10とからなり、第1、2のプレート9、10はボルト等によって固着されている。そして、第1のプレート9には、この第1のプレート9を図1において縦方向に横切る形の円筒状の第1の孔11が明けられている。この第1の孔11は、パーティングラインPの近傍においてテーパ状に縮径されている。第2のプレート10には、横方向の凹部と、この凹部の端部から固定盤側に貫通している縦方向の孔とからなる第2の孔12が明けられている。従って、固定側金型5の内部に、第1の孔11と第2の孔12とからなる所定形状の穴13が形成されていることになる。この穴13は、固定盤側とパーティングラインP側に開口している。
【0013】
穴13には、内部に第1のスプル15とランナ16とからなる溶融樹脂の流路が明けられているマニホールド18と、内部に第2のスプル21が明けられていると共に先端にゲートチップ19が設けられているゲートノズル22とが格納されている。マニホールド18とゲートノズル22は互いに固定されており、ランナ16、第2のスプル21は連通している。したがって、第1のスプル15内に射出される溶融樹脂はランナ16、第2のスプル21を経由して、キャビティCに開口しているゲート24からキャビティC内に充填されることになる。このようなマニホールド18とゲートノズル22は、穴13の内壁と所定の隙間を介して設けられて第1、2のプレート9、10と断熱されている。ゲートノズル22は可動側金型16に近接し、可動側金型16の方へ熱が逃げるので、このゲートノズル22の外周面にはヒータ25が巻かれて、第2のスプル21を加熱できるようになっている。すなわち、第1のスプル15、ランナ16、第2のスプル21は、所定の温度に維持される、いわゆるホットランナになっている。ゲートノズル22の第2のスプル21内には、軸方向に駆動可能なバルブピン27が設けられている。バルブピン27の先端部の軸径はゲート24の孔径と等しい。従って、バルブピン27の後端部に設けられているピストンシリンダユニット28を駆動してバルブピン27を軸方向に突き出すと、ゲート24は閉じられ第2のスプル21内の溶融樹脂が漏れるのが防止され、バルブピン27を後退させるとゲート24を開することができる。ゲート24とバルブピン27はいわゆるバルブゲートを構成している。なお、第2のプレート10の穴13の開口部には、ロケートリング29が嵌められている。
【0014】
射出機2は、従来周知のように、加熱シリンダ31、この加熱シリンダ31の内部に回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられているスクリュ、加熱シリンダ31を加熱するヒータ等から構成されている。図にはスクリュとヒータは示されていない。このような加熱シリンダ31の先端には射出ノズル32が設けられ、射出ノズル32はロケートリング29に案内されて固定側金型5の第1のスプル15にタッチするようになっている。加熱シリンダ31には、外周面から軸方向に向かう所定の深さの穴が明けられて、圧力センサ34が埋め込まれ、加熱シリンダ31内の溶融樹脂の樹脂圧、すなわち射出圧力を検出できるようになっている。
【0015】
本実施の形態に係る射出成形制御装置1は、コントローラ35と、圧力センサ34とから構成されている。具体的には、コントローラ35は、圧力センサ34と信号線S1で接続され、検出された射出圧力がコントローラ35に入力されるようになっている。また、コントローラ35は、ピストンシリンダユニット28と信号線S2で接続され、コントローラ35からの指令でピストンシリンダユニット28を駆動して、ゲート24すなわちバルブゲートを開閉するようになっている。
【0016】
本実施の形態に係る射出成形制御装置1を備えた射出成形機による成形方法を説明する。最初に、バルブピン27によってゲート24が閉されている状態から説明する。第1のスプル15とランナ16、第2のスプル21内には溶融樹脂が充填されており、ヒータ25によって溶融樹脂の温度が維持されているので、溶融樹脂は冷却固化しない。型締装置によって可動側金型6を固定側金型5に対して型締する。計量を開始する。すなわち、加熱シリンダ31を加熱して、スクリュを回転方向に駆動してホッパから成形用樹脂を供給する。そうすると成形用樹脂は加熱シリンダ31による熱と、スクリュの回転による剪断作用によって生じる摩擦熱とによって溶融し、加熱シリンダ31の前方に送られ、スクリュは後退する。所定量の溶融樹脂が加熱シリンダ31の前方に蓄積されたら計量を完了する。射出を開始する。バルブゲートが閉になっている状態でスクリュを軸方向に駆動する。そうすると、図2のグラフに示されているように、射出圧力は短時間に急速に増大する。グラフにおいて符号41はスクリュの駆動開始のタイミングを、符号42はスクリュの駆動直後の射出圧力の変化を示している。圧力センサ34から検出される射出圧力が設定された圧力値に到達したら、コントローラ35はピストンシリンダユニット28を駆動してバルブピン27を後退させてゲート24を開にする。そうすると、図3に示されているように、溶融樹脂49はゲート24からキャビティCに射出され、瞬間的に射出圧力が低下した後に再び射出圧力が急激に増大して、溶融樹脂49のキャビティCへの充填が完了する。グラフにおいて、符号43は設定された圧力値を、符号44はゲート24が開にされたタイミングを、符号46はゲート24が開にされた直後の射出圧力の変化を、符号47はキャビティCへ溶融樹脂が充填されるときの射出圧力の変化を、それぞれ示している。スクリュを軸方向に所定の力で駆動して溶融樹脂に所定の背圧をかける保圧を実施する。その後、コントローラ35はピストンシリンダユニット28を駆動してバルブピン27を前方に駆動してゲート24を閉にする。ヒータ25によってスプル15とランナ16、21内の溶融樹脂の温度は維持される。キャビティCに充填された溶融樹脂が冷却固化するのを待って型開して成形品を取り出す。以下、同様にして成形する。
【0017】
上記した実施の形態においては、圧力センサ34から検出される射出圧力をコントローラ35で監視して、コントローラ35によってバルブゲートの開を制御するように構成されている。すなわち、バルブゲートの開は制御的に実施されるように構成されている。以下に、溶融樹脂の射出圧力によって機械的にバルブゲートを開くことができる、第2の実施の形態について説明する。図4の(ア)には、第2の実施の形態に係るバルブゲートが示されている。前記した実施の形態に係る装置と同様の作用効果を奏する部材については同じ参照番号を付して詳しくは説明しない。第2の実施の形態に係るバルブゲートにおいては、バルブピン27’の径は比較的大きく、バルブピン27’の後端部には、バネ36が設けられている。このバネ36によってバルブピン27はゲート24方向に付勢されてゲート24は閉じられている。このようなバルブピン27’の先端部近傍は、円錐状に縮径されており、円錐の先端部近傍のみがゲート24をシールしている。そして、縮径されたテーパ面の大部分、すなわち溶融樹脂の圧力を受ける受圧面37はランナ21内に位置している。スクリュを軸方向に駆動して射出を開始すると、ランナ21内の溶融樹脂の射出圧力は増加する。そうすると、射出圧力は受圧面37に作用してバルブピン27’を図において上方向に押し上げようとする。射出圧力が所定の圧力に達したら、バネ36の付勢に抗してバルブピン27’が押し上げられてゲート24が開かれる。すなわち、バルブゲートは機械的に開かれる。
【0018】
受圧面37が設けられる位置は、バルブピン27’の先端部ではなく他の部分であってもよく、そのような例として、図4の(イ)に第3の実施の形態に係るバルブゲートが示されている。前記した実施の形態に係る装置と同様の作用効果を奏する部材については同じ参照番号を付して詳しくは説明しない。第3の実施の形態においては、マニホールド18’の一部に所定のシリンダ孔38が明けられている。そして、バルブピン27’の所定の部分に固定されているピストン部39が、シリンダ孔38に摺動可能に設けられ、ピストン部39の下方の面はランナ16、第2のスプル21に露出して、溶融樹脂の射出圧力を受ける受圧面37になっている。バルブピン27’の後端にはバネ36が設けられ、バルブピン27’をゲート24の方向に付勢している。スクリュを軸方向に駆動して射出を開始すると、ランナ16、第2のスプル21内の溶融樹脂の射出圧力は増加する。射出圧力が所定の圧力に達したら、バネ36の付勢に抗して受圧面37が受ける射出圧力によってバルブピン27’が押し上げられてゲート24が開かれる。
【0019】
本発明の実施の形態に係る射出成形制御装置1は、上記実施の形態に限定されることなく色々な形で実施できる。例えば、溶融樹脂の射出圧力は、加熱シリンダに設けられている圧力センサによって検出されるように説明されているが、スクリュの後端の所定の部材にロードセルを設けて、スクリュを軸方向に駆動する力を検出して、射出圧力を計算するように実施することもできる。さらには、金型内に圧力センサを設けて金型内において射出圧力を検出するようにしてもよい。また、コントローラは、射出成形機に設けられている従来周知のコントローラから構成することもできる。この場合は、射出圧力を監視してバルブゲートの開閉を制御するソフトウエアを従来周知のコントローラに追加するだけでよく、射出成形制御装置を安価に構成できる。第2、3の実施の形態に係るバルブゲートについても変形が可能であり、例えば、バルブピン27’を付勢する付勢手段はバネに限定される必要はなく、流体圧、ゴム素材等の弾性体によっても実施が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る金型と射出成形制御装置を模式的に示す正面図である。
【図2】本実施の形態に係る射出制御装置を使用して射出するときの溶融樹脂の射出圧力の変化を示すグラフである。
【図3】本実施の形態に係る金型を使用して成形している状態を示す金型の断面図である。
【図4】本実施の形態に係るバルブゲートを模式的に示す図で、その(ア)は第2の実施の形態に係るバルブゲートを、その(イ)は第3の実施の形態に係るバルブゲートを、それぞれ示す断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 射出成形制御装置 2 射出機
3 金型 5 固定側金型
6 可動側金型 9 第1のプレート
10 第2のプレート 15 第1のスプル
16 ランナ 18 マニホールド
19 ゲートチップ 21 第2のスプル
22 ゲートノズル 24 ゲート
25 ヒータ 27 バルブピン
34 圧力センサ 35 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出機と、ホットランナとバルブゲートとキャビティとが設けられている金型とを使用し、前記射出機から前記ホットランナを介して前記バルブゲートから溶融樹脂を前記キャビティに射出充填するとき、
前記射出機内の溶融樹脂の射出圧力が所定の圧力に達したとき、前記バルブゲートを開いて射出充填することを特徴とする射出成形方法。
【請求項2】
射出機と、ホットランナとバルブゲートとキャビティとが設けられている金型とを使用し、前記射出機から前記ホットランナを介して前記バルブゲートから溶融樹脂を前記キャビティに射出充填するとき、
前記ホットランナ内の溶融樹脂の射出圧力が所定の圧力に達したとき、この圧力により前記バルブゲートが開いて射出充填することを特徴とする射出成形方法。
【請求項3】
射出機と、ホットランナとバルブゲートとキャビティとが設けられている金型と、溶融樹脂の射出圧力を検出する検出手段と、コントローラとからなり、
前記コントローラは、前記検出手段によって検出される射出圧力を監視して、所定の圧力に達したときに前記バルブゲートを開き、前記ホットランナは前記キャビティに連通することを特徴とする射出成形機。
【請求項4】
射出機と、ホットランナとバルブゲートとキャビティとが設けられている金型とからなり、
前記バルブゲートを開閉するバルブピンは、前記ホットランナ内の溶融樹脂の射出圧力が所定値になると、前記バルブピンを閉方向に付勢している付勢手段に抗して開き、前記ホットランナは前記キャビティに連通することを特徴とする射出成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−131812(P2010−131812A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308418(P2008−308418)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】