説明

射出成形用樹脂成形物の製造法

【課題】耐熱性、機械強度、耐摩耗性に優れ、射出成形に適した、樹脂成形物を製造する方法の提供。
【解決手段】ポリベンゾイミダゾール(A)と、ポリアリーレンケトン、ポリエーテルイミド、および熱可塑性ポリイミドからなる群から選ばれた少なくともひとつの樹脂(B)とを二軸スクリュー押出機の第1混練部分に供給して溶融し、ついで第2混練部分に繊維長が長い炭素繊維(c)を供給して押出成形する、樹脂成形物の製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温で安定して使用することができる機材を製造するのに用いられる、射出成形用樹脂成形物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、300℃以上の温度領域で使用される機材に用いられる材料には、金属が多く使用されてきた。しかし、金属では重量が大きいことや、使用時などに接触する材料に対して傷などの損傷を与えてしまうなどの問題があった。特に摺動材料として用いられる場合、金属のような硬度が高すぎる部材は好ましくなかった。
【0003】
したがって、金属に比べて軽量であり、かつ比較的柔軟である樹脂を適用することも検討されてきた。このような耐熱性材料または摺動材料として検討されてきた樹脂材料は、例えば超高分子ポリエチレン、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、芳香族ポリアミド、およびその他が挙げられる。
【0004】
しかし、これらの従来の樹脂では、耐熱性の点で不十分であり、または強度も不足する傾向があった。
【0005】
このような耐熱性および機械強度を両立できる材料として、ポリエーテルエーテルケトンとポリベンゾイミダゾールとの配合物が提案されている。例えば、特許文献1には、5〜75重量%のポリベンゾイミダゾールと、95〜25重量%のポリエーテルエーテルケトンから成形される射出成形品が開示されている。この射出成形品は耐熱性および強度の改良を目的としたものである。その実施例1では、原料を二軸スクリュー押出機で押出成形し、押出物を長さ1/25インチおよび直径3/16インチのペレットを製造しているが、このペレットは非常に小さいものであり、射出成形用原料として取り扱いにくいという問題点があった。
【0006】
また、特許文献2には、ポリベンゾイミダゾールと、ポリエーテルエーテルケトンと、炭素繊維を含む、射出成形可能な組成物が開示されている。しかし、この組成物は、単に原料粉末を配合しただけのものであり、それをそのまま型に射出し、冷間圧縮した後高温のオーブン中に保持し、更にホットプレスすることにより最終製品を得ることが例示されている。したがって、この組成物は粉末混合物であり、射出成形に用いる場合に成形物として取り扱えないために、取り扱い性の観点から改良の余地があった。
このように従来知られている射出成形用材料は、耐熱性および機械強度を両立し、かつ取り扱い性が容易な形状のものではなかった。
なお、この特許文献2には用いられる炭素繊維の長さについて、ほぼ1/64〜1/2インチ、例えば約1/32インチが好ましい」ことが一般的に記載されているが、具体的な例示はなされていない。ここで特許文献2に記載された発明によれば、炭素繊維が長さ方向に切断されることがないと考えられるため、配合された炭素繊維の長さは、最終製品においても維持されると考えられる。すなわち、特許文献2においては、樹脂の強度を改良するのに適当な100〜数百μmの炭素繊維を配合されるか、もし1/2インチ(12.7mm)の繊維を配合した場合には最終製品にそのような長い炭素繊維がそのまま含まれていると解される。
【0007】
一方、ポリベンゾイミダゾールに対して射出成形に望ましい低い温度と圧力での成形に必要な充分な熱可塑性を付与するためにポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、あるいは熱可塑性ポリイミドなどを混入することが知られている。しかし、ポリベンゾイミダゾール、ポリエーテルエーテルケトン等は高価格なため、より安価であり且つこれらの混合系の有する特性を下げることなく、好ましくはその特性をさらに向上させるような材料を加えることが望まれていた。このような材料として炭素繊維が注目されている。
【0008】
このような材料は後の射出成形工程での作業性を上げるためにペレット状の樹脂成形物とされることが望ましいが、そのために二軸スクリュー押出機を用いて、一般的に射出成形用樹脂組成物に用いられる長さである130μmの繊維(例えば東レ株式会社製の炭素繊維トレカMLD−300(商品名)長さおよそ130μm、直径およそ6μm)をポリベンゾイミダゾール+ポリエーテルエーテルケトン等の混合物に配合した場合、炭素繊維の投入時点で塊ができてしまって、スクリュー中に混合することができず、また均一分散しない傾向が強いことがわかった。
【0009】
このような繊維長の短い炭素繊維は実験室的には乳鉢のようなものを用いて混合する、あるいはメルトインデックサーを使用するので均一に配合されるのでその後押出成形することは可能であるが、このような方法を工業的に押出成形物を造るためには使用できない。したがって、工業的にそのような樹脂成形物を効率よく製造する方法が望まれていた。
【特許文献1】特開平3−41150号公報
【特許文献2】特表平7−506861号広報
【特許文献3】特開昭62−283154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記のような問題点を解決し、耐熱性が高く、高温などの過酷な環境でも機械強度、耐摩耗性などが劣化しない、射出成形に適した、樹脂成形物を製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による射出成形用樹脂成形物の製造法は、
ポリベンゾイミダゾール(A)と
ポリアリーレンケトン、ポリエーテルイミド、および熱可塑性ポリイミドからなる群から選ばれた少なくともひとつの樹脂(B)と、
を二軸スクリュー押出機の第1混練部分に供給して溶融し、ついで第2混練部分に
繊維長が2〜10mmである炭素繊維(c)
を供給して押出成形することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、耐熱性、耐摩耗性、および機械強度に優れ、かつ射出成形などに付すために溶融させた場合の流動性をも高いレベルで有する射出成形用樹脂成形物を効率よく製造する方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明による樹脂成形物の製造方法において、製造される樹脂成形物は、ポリベンゾイミダゾール(A)、ポリアリーレンケトン、ポリエーテルイミド、および熱可塑性ポリイミドからなる群から選ばれた少なくともひとつの樹脂(B)、および炭素繊維(C)を必須成分として含んでなるものである。これらの各成分について説明すると以下の通りである。
【0014】
<ポリベンゾイミダゾール(A)>
本発明による樹脂成形物の製造方法は、ポリベンゾイミダゾールを用いるものである。ここで、ポリベンゾイミダゾールとは、置換または非置換のベンゾイミダゾールをモノマー単位として含む重合体をいう。ベンゾイミダゾールが置換基を有する場合、その置換基は本発明の効果を損なわない範囲で任意に選択される。
【0015】
好ましいポリベンゾイミダゾールは、下記一般式(I)で表されるものである。
【化1】

ここで、R〜RおよびR’〜R’は、それぞれ独立に選択される置換基であり、
は2価の連結基であり、
は、R〜Rのいずれか一つと、R’〜R’のいずれか一つとを連結する2価の連結基であり、
pおよびqは重合度を表す数である。
【0016】
ここで、R〜RおよびR’〜R’は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、ハロゲン、水酸基、炭素数1〜10のアルコキシル基であることが好ましく、
およびLは、それぞれ独立に、単結合であるか、カルコゲン原子、芳香族化合物、脂肪族化合物、脂環式化合物、または複素環化合物からなる2価の連結基であることが好ましい。
【0017】
またはLが脂肪族化合物からなる連結基である場合は、炭素数が1〜8のアルキレンであることがより好ましく、芳香族化合物である場合は、フェニレン、またはナフチレンであることが好ましく、複素環化合物からなる連結基である場合は、ピリジニレン、ピラジニレン、フラニレン、キノリニレン、チオフェニレン、ピラニレン、インデニレン、またはフリレニレンであることが好ましく、カルコゲンからなる連結基である場合は、−O−、−S−、−SO−であることが好ましい。
【0018】
好ましいポリベンゾイミダゾールの具体的なものとしては、
ポリ−2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ジベンゾイミダゾール、
ポリ−2,2’−(ジフェニレン−2’’,2’’’)−5,5’−ジベンゾイミダゾール、
ポリ−2,2’−(ジフェニレン−4’’,4’’’)−5,5’−ジベンゾイミダゾール、
ポリ−2,2’−(1’’、1’’、3’’−トリメチルインダニレン)−3’’、5’’−p−フェニレン−5,5’−ジベンゾイミダゾール、
2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ジベンゾイミダゾール/2,2’−(1’’、1’’、3’’−トリメチルインダニレン)−3’’、5’’−p−フェニレン−5,5’−ジベンゾイミダゾール共重合体、
2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ジベンゾイミダゾール/2,2’−(ジフェニレン−2’’,2’’’)−5,5’−ジベンゾイミダゾール共重合体、
ポリ−2,2’−(フリレン−2’’,5’’)−5,5’−ジベンゾイミダゾール、
ポリ−2,2’−(ナフタレン−1’’、6’’)−5,5’−ジベンゾイミダゾール、
ポリ−2,2’−(ナフタレン−2’’、6’’)−5,5’−ジベンゾイミダゾール、
ポリ−2,2’−アミレン−5,5’−ジベンゾイミダゾール、
ポリ−2,2’−オクタメチレン−5,5’−ジベンゾイミダゾール、
ポリ−2,2’−シクロヘキセニル−5,5’−ジベンゾイミダゾール、
ポリ−2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ジ(ベンゾイミダゾール)エーテル、
ポリ−2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ジ(ベンゾイミダゾール)サルファイド、
ポリ−2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ジ(ベンゾイミダゾール)スルフォン、
ポリ−2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ジ(ベンゾイミダゾール)メタン、
ポリ−2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ジ(ベンゾイミダゾール)プロパン2,2、
ポリ−エチレン−1,2,2,2’’−(m−フェニレン)−5,5’−ジ(ベンゾイミダゾール)エチレン−1,2、
およびその他が挙げられる。
【0019】
これらのうち、本発明による製造方法に用いるのにより好ましいものは、下記式(Ia)で表される、ポリ−2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ジベンゾイミダゾールである。
【化2】

ここで、nは重合度を表す数である。
【0020】
これらのポリベンゾイミダゾールは、本発明の効果を損なわない範囲で任意に選択して、また必要に応じて2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
これらのポリベンゾイミダゾールは、構造や分子量に応じて広範な範囲の固有粘度を有するが、固有粘度が0.2以上であることが好ましい。さらに、熱的性質も構造に依存するが、耐熱性が求められるという観点から、形成される材料が曝され得る温度よりも高い熱変形温度を有するべきである。一般的には、熱変形温度が180℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがより好ましい。前記のポリ−2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ジベンゾイミダゾールは通常、熱変形温度が約435℃であり、特に好ましい化合物である。
【0022】
本発明による樹脂成形物の製造方法において、樹脂成形物中のポリベンゾイミダゾールの含有量は、樹脂成形物の総重量を基準として10〜50重量%である必要があり、20〜40重量%であることが好ましい。ポリベンゾイミダゾールの含有量は、後述するように製造する場合に押出機で混練されるときや、射出成形材料として溶融されて使用される場合の流動性を高く保つために、50%以下である必要があり、一方で、射出成形により得られた機材または部材の耐摩耗性を向上させるために、10%以上である必要がある。
【0023】
<樹脂(B)>
本発明による樹脂成形物の製造方法は、ポリアリーレンケトン、ポリエーテルイミド、および熱可塑性ポリイミドからなる群から選ばれた少なくともひとつの樹脂(B)を用いるものである。
【0024】
ポリアリーレンケトンは、耐熱性および耐薬品性に優れる材料として知られている。一般的には、アリーレン基にカルボニル基が結合した単位を繰り返し単位として含む重合体であるが、本発明においては、特にポリエーテルエーテルケトンおよびポリエーテルケトンからなる群から選択されるものが好ましい。具体的には、一般式(II)で示されるポリアリーレンケトンが挙げられ、特に一般式(IIa)で示されるポリエーテルエーテルケトンまたは(IIb)で示されるポリエーテルケトンが好ましい。
【化3】

ここで、x、y、z、z1、およびz2はそれぞれ重合度を表す数である。
【0025】
このようなポリエーテルエーテルケトンまたはポリエーテルケトンは特許文献1にも記載されており、また英国ビクトレックス社より商品名PEEKとして市販されており、これを用いることができる。より具体的には、ポリエーテルエーテルケトンとしては、PEEK 450PF、PEEK 151PF、PEEK 90P、ポリエーテルケトンとしてはPEEK HTなどが挙げられる。これらのポリアリーレンケトンは単独で、または二種以上を混合して用いることができる。
【0026】
芳香族ポリエーテルイミドは、耐熱性、および耐薬品性に優れたスーパーエンジニアリングプラスチックであることが知られており、各種のものが検討されている。本発明による製造方法に用いられる芳香族ポリエーテルイミドは、これらのうち、芳香族部分にイミド環が縮合環構造を形成しているものが好ましい。このような構造をとることにより、前記したポリベンゾイミダゾールとの相溶性が改良される傾向にあるためである。
【0027】
より具体的には、本発明による樹脂成形物の製造方法に用いられるのに好ましい芳香族ポリエーテルイミドは、下記一般式(III)で示されるものである。
【化4】

ここで、ArおよびArは、それぞれ独立に3価芳香族基であり、LおよびLはそれぞれ独立に2価芳香族基、または炭素数6以下の2価脂肪族基であり、rは重合度を表す、0以上の数であり、sおよびtは重合度を表す数である。
【0028】
このような芳香族ポリエーテルイミドの例は、特許文献3にも示されているほか、市販もされている(例えば、Ultem(登録商標名)、GEプラスチックス社製)。特に好ましい芳香族ポリエーテルイミドの例は、下記一般式(IIIa)で示されるもの(Ultem 1000(商品名)、重量平均分子量30,000±10,000)の他、コポリマーであるUltem 6000またはUltem D5000などが挙げられる。このような芳香族ポリエーテルイミドは2種類以上を混合して用いることもできる。
【化5】

mは重合度を表す数である。
【0029】
熱可塑性ポリイミドは、高い耐熱性、機械強度、および優れた電気特性を持ち、射出成形用材料に適し、かつ押出成形加工時に有利な熱可塑性を付与することができるものである。本発明による樹脂成形物の製造方法に用いられる熱可塑性ポリイミドは、これらのうち、芳香族部分にイミド環が縮合環構造を形成しているものが好ましい。このような構造をとることにより、前記したポリベンゾイミダゾールとの相溶性が改良される傾向にあるためである。
【0030】
より具体的には、本発明による樹脂成形物の製造方法に用いられるのに好ましい熱可塑性ポリイミドは、下記一般式(IV)で示されるものである。
【化6】

ここで、Arは、4価芳香族基であり、Lは2価芳香族基であり、uおよびvは重合度を表す数である。
【0031】
このような熱可塑性ポリイミドの例は、特許文献3にも示されている。また、例えば商品名AURUMとして三井化学株式会社より市販されているものが好ましく用いられる。より具体的にはAURUM PL450C(商品名)などが挙げられる。このような熱可塑性ポリイミドは単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0032】
本発明による樹脂成形物の製造方法において、樹脂成形物中の樹脂(B)の含有量は、樹脂成形物の総重量を基準として30〜80重量%であり、好ましくは、35〜60重量%である。本発明による樹脂成形物において、溶融時の流動性を確保するためには、樹脂(B)の含有量は30重量%以上である必要がある。一方で耐熱性や機械的強度を十分なレベルに維持するために樹脂(B)の含有量は80重量%以下である必要がある。
【0033】
<炭素繊維>
炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系、ピッチ系、レーヨン系などに分類されるが、それらのいずれを用いてもよい。しかしながら、補強効果、耐摩耗性の改良効果が大きいという点からPAN系の炭素繊維が好ましく用いられる。炭素繊維の長さおよび直径などは特に限定されないが、例えば繊維長は2〜10mm、好ましくは5〜8mmであり、直径は5〜15μmであることが好ましい。また、またアスペクト比もは0.001〜0.0025であることが望ましい。
【0034】
本発明において用いられる炭素繊維は、従来知られている樹脂成形物に含まれている炭素繊維よりも著しく長いものである。すなわち、最終的な射出成形用樹脂成形物において、強度改良のために用いられる繊維長は、流動性を良好に保つという観点から一般に500μ以下である。しかしながら、本発明者らの検討によれば、そのような短い炭素繊維を直接原料配合物に投入して押出成形に付すと、炭素繊維の投入時点で塊ができてしまって、押出成形ができず、また均一分散させることが困難である。これに対して、本発明においては、一般的に用いられる炭素繊維よりも著しく長いものを用いている。この炭素繊維は、押出成形の過程において、折られ、または切断され、最終製品である樹脂成形物においては、従来の樹脂成形物と同程度の繊維長になっているものと考えられる。なお、特許文献2においては、本発明において特定されている長さと同程度の長さを有する炭素繊維を配合することが記載されているが、特許文献2においては、押出成形されていないため、配合時の炭素繊維の長さが最終製品中においても維持されるものである点で本発明とは異なっている。
【0035】
本発明による樹脂成形物の製造方法において、樹脂成形物中の炭素繊維の含有量は、樹脂成形物の総重量を基準として10〜50重量%であり、好ましくは、15〜40重量%である。本発明による樹脂成形物において、溶融時の流動性を確保するためには、炭素繊維の含有量は50重量%以下である必要がある。一方で炭素繊維による補強効果および耐熱性向上効果を十分に発揮させるために炭素繊維の含有量は10重量%以上である必要がある。
【0036】
<樹脂成形物の製造方法およびその用途>
本発明による樹脂成形物の製造方法は、前記の各成分を配合し、二軸スクリュー押出機を用いて押出成形することにより樹脂成形物を製造するものである。二軸スクリュー押出機には、同方向回転または異方向回転のものが知られているが、良好な混練状態を達成するためには同方向回転のものが好ましい。また、そのほか低速型または高速型、噛み合い型または非噛み合い型など種々のものが知られているが任意のものを用いることができる。また、本発明においては、第1混練部分にポリベンゾイミダゾール(A)と樹脂(B)とを供給して溶融させ、第2混練部分で炭素繊維(C)を供給することが必要である。このため、本発明においては、二軸スクリュー押出機の中でもサイドフィード方式を採用することが好ましい。
【0037】
また、良好な混練状態を達成するために、前記第2の混練部分の二軸スクリューにニーディングディスクが少なくとも1つ以上備えられていることが好ましい。さらに好ましいのは第1混練部分および第2混練部分のいずれにもニーディングディスクが少なくとも1つ以上備えられていることである。
【0038】
このような二軸スクリューを備え、同方向回転型であり、かつニーディングディスクを備えた押出機としては、例えば株式会社池貝製の二軸スクリュー押出機PCMシリーズ(PCM43、46、54、60、63、または70(いずれも商品名))などが挙げられる。
【0039】
本発明の射出成形用の耐熱性樹脂成形物は、任意の用途に用いることができるが、特に高熱などの過酷な環境において用いられる機材やその部材を形成するのに用いられることが好ましい。具体的には、シリコンウェーハ搬送用カセット、ハンダ付け用搬送部品、高温で用いられるネジおよび、滅菌用トレイ等を製造するための射出成形用材料として用いられることが好ましい。
【0040】
本発明を諸例を用いて説明すると以下の通りである。
【0041】
実施例1
20重量%のポリベンゾイミダゾール(ポリベンゾイミダゾール 100mesh Polymer、 PBI Performance Products社製)、60重量%のポリエーテルエーテルケトン(Victrex PEEK 150PF(商品名)、 Victrex社製)を二軸スクリュー押出機の第1混練部分から供給し、20重量%の炭素繊維(HTAC6UH(商品名)、東邦テナックス株式会社製、繊維長6mm)を第2混練部分から供給して押出成形を行い、3mm×4mmのペレットの作製を試みた。二軸スクリュー押出機の第1混練部分および第2混練部分に、それぞれニーディングディスク(反回転)を配置した場合と配置しなかった場合について評価した。
【0042】
第1混練部分および第2混練部分の両方にニーディングディスクを一つずつ配置した場合(実施例1A)には、得られたペレットは、その形状を保ち、射出成形用としての使用に好適な成形物が得られた。また、第2混練部分のみに一つのニーディングディスクを配置した場合(実施例1B)には、得られたペレットは、その形状が壊れやすい傾向があったが、射出成形用として使用可能なものが得られた。また、また、第1混練部分のみに一つのニーディングディスクを配置した場合(実施例1C)、およびニーディングディスクを配置しなかった場合(実施例1D)には、押出機中で流動性が劣る傾向にあった。
【0043】
実施例2
実施例1において、ポリエーテルエーテルケトンを熱可塑ポリイミド(AURUM PL450(商品名)、三井化学株式会社製)に変更した他は実施例1と同様に押し出し成形を行い、評価を行った。得られた結果は、実施例1と同様であった。
【0044】
比較例1
実施例1において、繊維長6mmの炭素繊維を、繊維長130μmの炭素繊維(トレカMLD−300(商品名)、東レ株式会社製、に変更した他は実施例1と同様に押し出し成形を行い、評価を行った。第1混練部分および第2混練部分の両方に一つずつニーディングディスクを配置した場合(比較例1A)、第1混練部分または第2混練部分の一方に一つのニーディングディスクを配置した場合(比較例1Bおよび1C)、いずれにもニーディングディスクを配置しなかった場合(比較例1D)のいずれの場合にも、押出機中で流動性が悪く、詰まりが発生し、押出成形ができなかった。
【0045】
比較例2
実施例1において、繊維長6mmの炭素繊維を、繊維長1mmの炭素繊維(GRANOC N−100(商品名)、日本グラファイトファイバー株式会社製)に変更した他は実施例1と同様に押し出し成形を行い、評価を行った。第1混練部分および第2混練部分の両方に一つずつニーディングディスクを配置した場合(比較例2A)、第1混練部分または第2混練部分の一方に一つのニーディングディスクを配置した場合(比較例2Bおよび2C)、いずれにもニーディングディスクを配置しなかった場合(比較例2D)のいずれの場合にも、押出機中で流動性が悪く、詰まりが発生し、押出成形ができなかった。
【0046】
比較例3
実施例1において、繊維長6mmの炭素繊維を、繊維長12mmの炭素繊維(トレカT010−12(商品名)、東レ株式会社製)に変更した他は実施例1と同様に押し出し成形を行い、評価を行った。第1混練部分および第2混練部分の両方に一つずつニーディングディスクを配置した場合(比較例3A)、第1混練部分または第2混練部分の一方に一つのニーディングディスクを配置した場合(比較例3Bおよび3C)、いずれにもニーディングディスクを配置しなかった場合(比較例3D)のいずれの場合にも、押出機中で流動性が悪く、詰まりが発生し、押出成形ができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリベンゾイミダゾール(A)と
ポリアリーレンケトン、ポリエーテルイミド、および熱可塑性ポリイミドからなる群から選ばれた少なくともひとつの樹脂(B)と、
を二軸スクリュー押出機の第1混練部分に供給して溶融し、ついで第2混練部分に
繊維長が2〜10mmである炭素繊維(c)
を供給して押出成形することを特徴とする、射出成形用樹脂成形物の製造法。
【請求項2】
射出成形用樹脂成形物の総重量に対して、10〜50重量%のポリベンゾイミダゾール(A)、30〜80重量%の樹脂(B)、および10〜50重量%の炭素繊維(C)を配合する、請求項1に記載の射出成形用樹脂成形物の製造法。
【請求項3】
前記第2混練部分の二軸スクリューにニーディングディスクが少なくとも1つ以上備えられている、請求項1または2に記載の射出成形用樹脂成形物の製造法。
【請求項4】
前記射出用樹脂成形物の形状がペレット状である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の射出成形用樹脂成形物の製造法。

【公開番号】特開2009−155392(P2009−155392A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−332696(P2007−332696)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(308028197)株式会社PBIアドバンストマテリアルズ (2)
【Fターム(参考)】