説明

射出成形用複合材料とその製造方法ならびに射出成形品

【課題】射出成形時の流動性に優れた射出成形用複合材料およびその複合材料を用いてなる射出成形品を提供する。
【解決手段】本発明によると、スルホン酸基を有しないポリブチレンテレフタレート(成分A)と、繊維状無機充填材(成分B)と、有機化層状珪酸塩(成分C)とを溶融混練してなり、上記成分Cが層剥離して分散された状態にある複合材料が提供される。上記複合材料には、該複合材料が再度加熱溶融される場合に上記分散状態にある成分Cが凝集することを防止する凝集防止剤として、炭素数16〜32のモノカルボン酸のアルカリ金属塩(成分D)が配合されている。上記複合材料は、成分A、成分B、成分Cおよび成分Dの合計を100質量%として、成分Aを60〜75質量%、成分Bを15〜35質量%、成分Cを1〜10質量%、成分Dを0.5〜5質量%の割合で含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂に繊維状無機充填材を配合してなる射出成形用複合材料に関し、詳しくは、射出成形時の流動性に優れた射出成形用複合材料およびその製造方法に関する。また本発明は、かかる複合材料を用いてなる射出成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリマー(ベースポリマー)に無機充填材を配合してなる有機/無機複合材料は、機械的特性向上、耐熱性改善、コスト低減等の目的から広く利用されている。しかし、より高い効果を求めて無機充填材の使用量を多くすると、複合材料の流動性が低下しやすくなる。かかる流動性の低下は、射出成形品(例えば、コネクタ等のように薄肉部を有する射出成形品)の製造に用いられる複合材料(すなわち射出成形用複合材料)において成形性を損なう要因となり得る。
【0003】
特許文献1〜6には、無機充填材として層状珪酸塩を用いることが記載されている。このような層状珪酸塩は、上記積層構造が層間で剥離(層剥離)した状態で複合材料中に分散させることにより、少量の添加で高い効果を発揮し得る。なお、特許文献7は、コネクタハウジング等の成形に用いられるポリブチレンテレフタレートおよびその成形品に関する従来技術文献である。
【0004】
【特許文献1】特開2006−328210号公報
【特許文献2】特開2007−126509号公報
【特許文献3】特開2007−234260号公報
【特許文献4】特開2000−212424号公報
【特許文献5】特開2000−053847号公報
【特許文献6】特開2001−261947号公報
【特許文献7】特開2003−026786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記層状珪酸塩の使用による効果は、ポリアミドをベースポリマーとする系ではよく発揮されるものの、ポリブチレンテレフタレート(以下、「ポリブチレンテレフタレート」を「PBT」と略記することがある。)等の熱可塑性ポリエステルでは効果が少ないことが知られている。これは、極性の高いナイロン(ポリアミド)をベースポリマーとする系では層状珪酸塩が高度に層剥離した状態で分散(ナノ分散)した状態を実現しやすいが、より極性の低いポリエステルをベースポリマーとする系では層状珪酸塩のナノ分散が困難なためと考えられている。特許文献1には、ポリエステルの構造中にスルホン酸基(スルホン酸基をもつ芳香族ジカルボン酸成分)を導入して該ポリエステルの極性を高めることで層状珪酸塩の分散性を向上させる技術が記載されているが、この技術はスルホン酸基を有しないPBTには適用できない。層状珪酸塩として、層間の交換性陽イオンが有機オニウムイオンで交換されたもの(有機化層状珪酸塩)を用いる場合においても、上記ナノ分散状態を安定して実現することは依然として困難であった。例えば、一旦は有機化層状珪酸塩がナノ分散した状態の複合材料(ペレット等)が得られたとしても、該複合材料を射出成形に用いる際に再度加熱溶融させると該層状珪酸塩が凝集してしまうため、射出成形時の流動性を十分に向上させることができなかった。
【0006】
本発明の一つの目的は、スルホン酸基を有しないPBTに比較的多くの繊維状無機充填材を配合してなる射出成形用複合材料であって、有機化層状珪酸塩が良好に分散されており、且つその良好な分散状態を安定して(例えば、再度加熱溶融された際にも)維持し得ることにより射出成形時の流動性に優れた射出成形用複合材料を提供することである。本発明の他の目的は、かかる射出成形用複合材料の製造方法を提供することである。さらに他の目的は、上記複合材料を用いてなる射出成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、スルホン酸基を有しないPBT(ベースポリマー)に比較的多くの繊維状無機充填材が配合されており且つ有機化層状珪酸塩が層分離して分散された系において、上記有機化層状珪酸塩の凝集防止剤として高い効果を発揮する成分を見出して、本発明を完成した。
【0008】
請求項1の発明は、射出成形用の複合材料に関する。その射出成形用複合材料は、スルホン酸基を有しないPBT(成分A)と、繊維状無機充填材(成分B)と、有機化層状珪酸塩(成分C)とを溶融混練してなる。前記複合材料中において、前記有機化層状珪酸塩は、層剥離して分散された状態にある。前記複合材料には、該複合材料が再度加熱溶融される場合に前記分散状態にある有機化層状珪酸塩が凝集することを防止する凝集防止剤として、炭素数16〜32のモノカルボン酸のアルカリ金属塩(成分D)が配合されている。また、前記複合材料は、成分A、成分B、成分Cおよび成分Dの合計を100質量%として、各成分を:成分A 60〜75質量%;成分B 15〜35質量%;成分C 1〜10質量%;および成分D 0.5〜5質量%;の割合で含む。
【0009】
請求項1の発明によれば、ガラス繊維等のような繊維状無機充填材を比較的多く含み更に有機化層状珪酸塩を配合したPBTベースの複合材料(PBTをベースポリマーとする複合材料をいう。)において、有機化層状珪酸塩の凝集防止剤として炭素数16〜32のモノカルボン酸のアルカリ金属塩が所定量添加されていることにより、引用文献1のようにスルホン酸基を有する特殊なPBTを使用することなく、上記有機化層状珪酸塩の良好な分散状態を安定して維持することができる。例えば、射出成形に使用される際等に上記複合材料を再度加熱溶融した場合にも有機化層状珪酸塩の凝集を高度に防止することができ、したがって高い流動性(ひいては良好な成形性)を発揮することができる。本発明では、上記のようにスルホン酸基を有するPBTを使用する必要がないので、目的および用途に応じて種々のPBTをベースポリマーとして適宜採用し得る。換言すれば、本発明によるとPBTの選択肢が広がるという効果が得られる。例えば、原料の入手容易性および原料コストの観点から、ベースポリマーとして汎用のPBTを好ましく用いることができる。また、繊維状無機充填材を比較的多く(典型的には、PBT100質量部に対して凡そ20〜60質量部)含有し、且つ有機化層状珪酸塩が層剥離して分散された複合材料であるので、機械的特性に優れる。このように機械的特性および射出成形時の流動性に優れることから、本発明の射出成形用複合材料は、例えば、電気・電子部品のコネクタを製造する用途に好適である。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の射出成形用複合材料において、前記複合材料が、実質的に前記成分A、成分B、成分Cおよび成分Dのみから構成されるものである。請求項2の発明によれば、請求項1の発明の奏する効果に加えて、さらに、上記複合材料の組成が単純であるのでコストを低減しやすいという効果が得られる。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または2の射出成形用複合材料において、前記複合材料のX線回折パターンにおいて前記有機化層状珪酸塩の積層構造に由来する回折ピークが観察されないことを特徴とする。請求項3の発明によれば、請求項1または2の発明の奏する効果に加えて、さらに、複合材料中において有機化層状珪酸塩が高度に(典型的には、単層レベルで)層剥離した状態で分散(ナノ分散)していることにより、上記有機化層状珪酸塩の機能(添加効果)がよりよく発揮されるという効果が得られる。また、凝集防止剤として成分Dが添加されていることから、上記ナノ分散状態を安定して維持できるという効果が得られる。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれかの射出成形用複合材料において、前記成分Dが、モンタン酸ナトリウムおよび12−ヒドロキシステアリン酸ナトリウムの一方または両方であることを特徴とする。請求項4の発明によれば、請求項1から3のいずれかの発明の奏する効果に加えて、さらに、有機化層状珪酸塩の良好な分散状態をより安定して維持できるという効果が得られる。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれかの射出成形用複合材料において、前記複合材料が、前記成分Cと前記成分Dとを5:1〜1:1の質量比(成分C:成分D)で含有することを特徴とする。請求項5の発明によれば、請求項1から4のいずれかの発明の奏する効果に加えて、さらに、有機化層状珪酸塩の良好な分散状態を一層安定して維持できるという効果が得られる。
【0014】
請求項6の発明は、スルホン酸基を有しないPBT(成分A)と、繊維状無機充填材(成分B)と、有機化層状珪酸塩(成分C)1〜10質量部と、凝集防止剤としての炭素数16〜32のモノカルボン酸のアルカリ金属塩(成分D)とを、成分A、成分B、成分Cおよび成分Dの合計を100質量%として、成分A 60〜75質量%;成分B 15〜35質量%;成分C 1〜10質量%;および成分D 0.5〜5質量%;の割合で、前記有機化層状珪酸塩が層剥離して分散されることによりX線回折パターンにおいて前記有機化層状珪酸塩の積層構造に由来する回折ピークが観察されなくなるように溶融混練する、射出成形用複合材料製造方法である。
【0015】
請求項6の発明によれば、繊維状無機充填材を比較的多く含有するPBTベースの複合材料であって、有機化層状珪酸塩が高度に層剥離した状態で分散(ナノ分散)しており、しかも凝集防止剤として炭素数16〜32のモノカルボン酸のアルカリ金属塩が所定量添加されていることにより上記複合材料を再度加熱溶融した場合にも上記ナノ分散状態が安定して維持されるので、射出成形時の流動性に優れ且つ機械的特性に優れた成形品を形成可能な射出成形用複合材料が得られる。
【0016】
請求項7の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の複合材料を射出成形してなる射出成形品である。請求項7に係る射出成形品は、上述のように流動性(ひいては成形性)に優れ且つ繊維状無機充填材を比較的多く含む複合材料を射出成形してなるので、機械的特性および形状精度に優れた高品質な射出成形品であり得る。
【0017】
請求項8の発明は、請求項7の射出成形品において、透過型電子顕微鏡(TEM)観察において、前記有機化層状珪酸塩が積層構造を有しないかあるいは3層以下の積層構造で分散した状態にあり且つ前記有機化層状珪酸塩の凝集塊が実質的に観察されないものである。請求項8の発明によれば、請求項7の発明の奏する効果に加えて、さらに、より高品質の射出成形品であり得るという効果が得られる。
【0018】
請求項9の発明は、請求項7または8の射出成形品において、該射出成形品が車載用電気部品または電子部品のコネクタであることを特徴とする。請求項7または8の射出成形品は上述のように機械的特性および形状精度に優れることから、請求項9の車載用電気部品または電子部品のコネクタとして好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、溶融混練機の操作方法や、射出成形型の具体的な構造、射出成形条件のコントロール方法等のような射出成形法に関する一般的な事項)は、いずれも従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書及び図面によって開示されている事項と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0020】
本発明では、成分Aとして、スルホン酸基を有しないPBTを使用する。ここで「スルホン酸基を有しない」とは、ポリエステル骨格中に意図的にスルホン酸基を導入するような原料を使用していないことをいう。また、ここでPBTとは、ジカルボン酸単位とジオール単位とがエステル結合した骨格構造を有するポリエステルであって、ジカルボン酸単位の50モル%以上がテレフタル酸単位(テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体に由来するユニット)であり、ジオール単位の50モル%以上が1,4−ブタンジオール単位(1,4−ブタンジオールまたはそのエステル形成性誘導体に由来するユニット)であるものをいう。全ジカルボン酸単位の凡そ70モル%以上(例えば95モル%以上)がテレフタル酸単位であることが好ましく、ジカルボン酸単位の実質的に全部がテレフタル酸単位であってもよい。また、全ジオール単位中の凡そ70モル%以上(より好ましくは凡そ80モル%以上、さらに好ましくは凡そ95モル%以上)が1,4−ブタンジオール単位であることが好ましく、ジオール単位の実質的に全部が1,4−ブタンジオール単位であってもよい。
【0021】
PBTを構成するテレフタル酸単位以外のジカルボン酸単位は、スルホン酸基(金属塩の形態であり得る。)を有しない限り特に制限されない。例えば、フタル酸、イソフタル酸、4,4'−ジフェニルジカルボン酸、4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4'−ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4'−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4'−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸;等のジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体(ジカルボン酸エステル、ジカルボン酸ハライド等)に由来するジカルボン酸単位であり得る。
【0022】
PBTを構成する1,4−ブタンジオール単位以外のジオール単位は、スルホン酸基(金属塩の形態であり得る。)を有しない限り特に制限されない。例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ジブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール等の脂肪族ジオール;1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロール等の脂環式ジオール;キシリレングリコール、4,4'−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等の芳香族ジオール;等のジオールまたはそのエステル形成性誘導体に由来するジオール単位であり得る。
PBTには、必要に応じて、上記ジカルボン酸およびジオール以外の成分であってスルホン酸基を有しない他の成分が共重合されていてもよい。かかる共重合成分の例として、トリメリット酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸が挙げられる。
【0023】
成分Aとして使用されるPBTは、従来公知の方法で製造することができる。例えば、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体とを、エステル化反応またはエステル交換反応し、次いで重縮合反応することにより製造することができる。エステル化反応またはエステル交換反応および重縮合反応の進行を促進するために、公知の触媒(チタン系、スズ系等)を常法により使用することができる。また、スルホン酸基を有しない各種の市販PBTを用いてもよい。
【0024】
ここに開示される技術における成分Bとしては、ガラス繊維、炭素繊維(PAN系、ピッチ系等)、金属繊維(ステンレス繊維、アルミニウム繊維、黄銅繊維等)、セラミックファイバー(ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維等)、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー等の繊維状無機材料から選択される一種または二種以上を使用し得る。なかでも好ましい繊維状無機充填材としてガラス繊維が挙げられる。ガラス繊維としては、一般に熱可塑性樹脂の強化に使用されているものを適宜採用することができ、チョップドストランド、ミルドファイバーのいずれも使用可能である。ガラス繊維の直径やカット長さ(チョップ長)に特に制限はなく、例えば、直径が5μm〜25μmのガラス繊維を好ましく使用し得る。チョップドストランドとしては、例えば、カット長さが0.1mm〜10mm程度のものを好ましく用いることができる。表面が公知のカップリング剤(シラン系カップリング剤等)で処理されたガラス繊維や、公知の集束剤(エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、無水マレイン酸変性ブタジエン樹脂等)で処理されたガラス繊維を用いてもよい。
【0025】
ここに開示される技術における成分Cは、層状珪酸塩(典型的には、ナノサイズの厚みの結晶が多数積層した構造を有する。)の層間に存在する交換性陽イオンまたは陰イオンが有機オニウムイオンまたは有機アニオンで交換されたもの(すなわち有機化層状珪酸塩)であって、層間の交換性陽イオンが有機オニウムイオンで交換された有機化層状珪酸塩が特に好ましい。
層状珪酸塩の具体例としては、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト等のスメクタイト系粘土鉱物;バーミキュライト、ハロイサイト、カネマイト、ケニヤイト、燐酸ジルコニウム、燐酸チタニウム等の粘土鉱物;Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母、Li型四珪素フッ素雲母等の膨潤性雲母;ハイドロタルサイト;等が挙げられる。なかでもモンモリロナイト、ヘクトライトなどのスメクタイト系粘土鉱物が好ましい。
【0026】
有機オニウムイオンとしては、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、スルホニウムイオン等が挙げられる。これらのうちアンモニウムイオンとホスホニウムイオンが好ましく、特にアンモニウムイオンが好ましい。アンモニウムイオンは、1級アンモニウムイオン、例えば、デシルアンモニウム、ドデシルアンモニウム、オクタデシルアンモニウム、オレイルアンモニウム、ベンジルアンモニウム;2級アンモニウムイオン、例えば、メチルドデシルアンモニウム、メチルオクタデシルアンモニウム;3級アンモニウムイオン、例えば、ジメチルドデシルアンモニウム、ジメチルオクタデシルアンモニウム;4級アンモニウムイオン、例えば、ベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウム、ベンザルコニウム等のベンジルトリアルキルアンモニウムイオン、トリメチルオクチルアンモニウム、トリメチルドデシルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウム等のトリメチルアルキルアンモニウムイオン、ジメチルジオクチルアンモニウム、ジメチルジドデシルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウム等のジメチルジアルキルアンモニウムイオン、トリオクチルメチルアンモニウム、トリドデシルメチルアンモニウム等のトリアルキルメチルアンモニウムイオン、ベンゼトニウムイオン;のいずれでもよい。
【0027】
このような有機化層状珪酸塩は、例えば、交換性陽イオンを層間に有する層状珪酸塩と有機オニウムイオンとを公知の方法で反応させることにより製造することができ、あるいは市販品を容易に入手することができる。
【0028】
ここに開示される技術における成分Dは、成分Cが層剥離して分散(好ましくはナノ分散)した状態を安定して維持する効果を発揮する成分であって、特に、成分Cが上記分散状態となるように溶融混練してなる複合材料が再度加熱溶融された場合に成分Cの凝集(再凝集)を防止する凝集防止剤として使用される成分である。この成分Dとしては、炭素数16〜32のモノカルボン酸のアルカリ金属塩から選択される一種または二種以上を使用することができる。炭素数16〜32のモノカルボン酸としては、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等の長鎖脂肪酸(飽和でも不飽和でもよい。)、それらのアルキル基が水酸基を有する化合物(ヒドロキシル脂肪酸)、等が例示される。なかでも好ましいモノカルボン酸として、モンタン酸および12−ヒドロキシステアリン酸が挙げられる。アルカリ金属としてはナトリウム(Na)またはカリウム(K)が好ましく、ナトリウムがより好ましい。本発明において特に好ましく使用される成分Dとして、モンタン酸ナトリウムおよび12−ヒドロキシステアリン酸ナトリウムが挙げられる。これらのうちいずれか一方を用いてもよく、両者を任意の割合で併用してもよい。例えば、12−ヒドロキシステアリン酸ナトリウムとモンタン酸ナトリウムとを10:1〜1:10(好ましくは5:1〜1:5、例えば3:1〜1:1)の質量比で併用することにより良好な結果が実現され得る。
【0029】
ここに開示される技術において、成分Aの含有量は、成分A〜Dの合計量を100質量%として(以下、成分B〜Dの含有量の説明において同じ。)、凡そ60〜75質量%(好ましくは凡そ65〜70質量%)である。成分Aの量が少なすぎると成形性が低下しやすくなり、多すぎると機械的特性が低下しやすくなることがある。また、成分Bの含有量は、凡そ15〜35質量%であり、好ましくは凡そ25〜30質量%である。成分Bの量が少なすぎると機械的特性が低下しやすくなり、多すぎると成形性が低下しやすくなることがある。成分Cの含有量は、凡そ1〜10質量%であり、好ましくは凡そ1〜5質量%(例えば凡そ1〜3質量%)である。成分Cの量が少なすぎると機械的特性および流動性の一方または両方が不足しやすくなり、多すぎると成分Cの良好な分散状態を安定して維持することが困難となる場合がある。成分Dの含有量は、凡そ0.5〜5質量%であり、好ましくは凡そ0.5〜2質量%である。成分Dの量が少なすぎると十分な添加効果が発揮され難くなる場合があり、多すぎると機械的特性が低下しやすくなることがある。成分Cと成分Dとの質量比(成分C:成分D)は凡そ5:1〜1:1(例えば凡そ3:1〜1:1)とすることが好ましい。かかる質量比で成分Cおよび成分Dを含む複合材料は、成分Cの良好な分散状態を特に安定して維持し得ることから、特に良好な射出成形性(射出成形時における流動性)を示すものとなり得る。
【0030】
ここに開示される複合材料は、該複合材料全体を100質量%として、上記成分A〜Dを、成分A 60〜75質量%;成分B 15〜35質量%;成分C 1〜10質量%;および成分D 0.5〜5質量%の割合で含む組成であり得る。好ましい一態様では、上記複合材料が成分A、成分B、成分Cおよび成分Dのみから実質的に構成される。ここで「実質的に構成される」とは、成分A〜D以外に一般的な添加剤(酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤等)を通常の割合で含有し得るが、複合材料の流動性に顕著な影響を及ぼし得る成分(例えば、特許文献2の「ポリカルボジイミド化合物」、特許文献3の「流動性改良剤」等)については少なくとも意図的には添加されていないことをいう。このように単純な組成の複合材料は、原料および製造にかかるコストを低減しやすいので好ましい。
【0031】
上記複合材料は、典型的には、成分A〜Dを溶融状態で(成分Aが溶融状態となる温度、すなわちPBTの融点と同程度またはそれ以上の温度で)混練することにより製造され得る。通常は、凡そ220〜280℃(例えば凡そ230〜260℃)程度の混練温度を好ましく採用し得る。この溶融混練は、公知の各種溶融混練機を使用して行うことができ、一般的な一軸押出機、二軸押出機等を好適に用いることができる。例えば、成分A、成分Cおよび成分Dを予め混合(ドライブレンド)したものを押出機のホッパーに供給し、該押出機のサイドフィーダーから成分Bを供給して成分A,C,Dとともに溶融混練するとよい。
【0032】
上記溶融混練は、成分Cが高度に層剥離して分散した状態の複合材料が得られるように行うことが好ましい。例えば、(1)X線回折パターンにおいて前記有機化層状珪酸塩の積層構造に由来する回折ピークが観察されない、および、(2)TEM観察において、前記有機化層状珪酸塩が積層構造を有しない(換言すれば、有機化層状珪酸塩が1層毎に層剥離した状態で分散している)か或いは3層以下(すなわち2層〜3層)の積層構造で分散した状態にあり、且つ前記有機化層状珪酸塩の凝集塊が実質的に観察されない、の少なくとも一方(好ましくは両方)を満たすように混練することが好ましい。かかる分散状態が実現されるように混練条件(温度、時間、回転数等)を設定するとよい。
【0033】
ここに開示される複合材料は、射出成形に使用する際あるいは該複合材料の保存時や運搬時等における取扱性に優れることから、上記溶融混練物がペレット状等の形態に調製(典型的には押出成形)された複合材料であり得る。あるいは、粉状、粒状、フレーク状その他の小片状に調製された複合材料であってもよい。
【0034】
ここに開示される射出成形用複合材料(ここに開示される方法で製造された射出成形用複合材料であり得る。)は、一般的な射出成形用材料と同様にして射出成形品の製造に用いることができる。例えば、上記複合材料(ペレット状、フレーク状等の形態であり得る。)を再度加熱して溶融状態とし、この加熱溶融状態にある複合材料を射出成形型のキャビティに所定の射出圧力で充填(射出)する。このときの射出成形温度は、通常は凡そ220〜280℃(例えば凡そ230〜260℃)程度に設定することが好ましい。冷却後、射出成形型を開いて射出成形品を型から取り出す。このようにして射出成形品を製造することができる。
【0035】
このようにして得られた射出成形品の好適な一態様では、該射出成形品が、(1)X線回折パターンにおいて前記有機化層状珪酸塩の積層構造に由来する回折ピークが観察されない、および、(2)TEM観察において、前記有機化層状珪酸塩が積層構造を有しない(換言すれば、有機化層状珪酸塩が1層毎に層剥離した状態で分散している)か或いは3層以下(すなわち2層〜3層)の積層構造で分散した状態にあり、且つ前記有機化層状珪酸塩の凝集塊が実質的に観察されない、の少なくとも一方(好ましくは両方)を満たす。上記条件を満たす射出成形品は、良好な流動性をもって射出成形されたものであるので形状精度がよく、また有機化層状珪酸塩が均一にナノ分散しているので機械的特性のムラが少なく、したがって高品質な射出成形品であり得る。
【0036】
ここに開示される複合材料は、PBTをベースポリマーとし、該PBT100質量部に対してガラス繊維等の繊維状無機充填材を凡そ20〜60質量部(典型的には凡そ30〜50質量部、例えば凡そ35〜45質量部)と比較的多く含む組成であるので、機械的特性に優れた射出成形品の製造に適する。また、所定の凝集防止剤(成分D)が添加されていることにより、高度に層剥離した有機化層状珪酸塩が安定して分散した状態(好ましくは、上記(1)および(2)の少なくとも一方を満たすナノ分散状態)にあるので、上記のように繊維状無機充填材を多く含む複合材料であるにも拘らず、射出成形時における流動性が良好である。したがって、ここに開示される複合材料は、薄肉部を有する射出成形品を製造する用途に好適である。例えば、電気・電子部品のコネクタ(自動車等の車両に搭載される電気・電子部品のコネクタ等)の射出成形に好ましく使用され得る。また、上記複合材料は、上記以外の各種射出成形品の製造にも広く利用することができる。
【0037】
以下、本発明に関する実施例を説明するが、本発明をかかる具体的実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0038】
<実施例1>
成分AとしてのPBT(ポリプラスチックス株式会社製品、商品名「ジュラネックス2000」)68質量部と、成分Bとしてのガラス繊維(旭ファイバーグラス株式会社製品、商品名「CS03MAFT665」)29質量部と、成分Cとしての有機化層状珪酸塩(株式会社ホージュン製品、商品名「エスベンNZ70」、カチオン交換能をもつモンモリロナイトの層間をアルキルアンモニウムにより有機化処理した有機化層状珪酸塩)2質量部と、成分D(12−ヒドロキシステアリン酸ナトリウムおよびモンタン酸ナトリウムを2:1の質量比で使用した。)1質量部とを用意した。上記成分A,C,Dをドライブレンドしたものを二軸溶融押出機のホッパーに投入し、該押出機のサイドフィーダーから成分Bを投入して、設定温度240℃、回転数300rpmの条件で溶融混練した後、上記押出機から吐出速度6kg/hで押し出して、ペレット状の複合材料を作製した。
【0039】
<比較例1>
本例では、成分A 70質量部および成分B 30質量部を使用し、成分Cおよび成分Dについては使用しなかった。その他の点については実施例1と同様にして、ペレット状の複合材料を作製した。
【0040】
<比較例2>
本例では、成分A 70質量部、成分B 29質量部および成分D 1質量部を使用し、成分Cについては使用しなかった。その他の点については実施例1と同様にして、ペレット状の複合材料を作製した。
【0041】
<比較例3>
本例では、成分A 69質量部、成分B 29質量部および成分C 2質量部を使用し、成分Dについては使用しなかった。その他の点については実施例1と同様にして、ペレット状の複合材料を作製した。
【0042】
上記で得られた実施例1および比較例1〜3に係る複合材料につき、120℃で8時間の予備乾燥後、シリンダー温度230〜260℃(ここでは240℃)、射出圧力100MPa、射出速度10mm/s、金型温度60℃の条件で、幅6mm、厚さ3mmの簡易スパイラルフロー成形品を作製して流動長を測定した。その結果を、各複合材料の組成および常法により測定した密度とともに表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
表1に示されるように、成分Aおよび成分Bのみを含む比較例1の流動長に対し、成分Cおよび成分Dを2:1の質量比で添加した実施例1では流動長が大幅に(3割以上も)上昇した。一方、比較例1の組成に対し、成分Cを単独で添加した比較例2、および成分Dを単独で添加した比較例3では、いずれも流動長の顕著な上昇(流動性の向上)効果は認められなかった。これは、成分Dを含まない複合材料(比較例3)では成分Cの分散安定性が低く射出成形時において良好な分散状態を維持できないため、本来の効果(成分Cが層剥離して分散することによる効果)が十分に発揮されないためと考えられる。また、比較例2の流動長は比較例1と大差ないことは、成分Cと成分Dとの併用によって初めて流動性の顕著な向上が実現されること(相乗効果)を示している。
【0045】
ここで、成分Dの添加が有機化層状珪酸塩の分散状態に及ぼす影響を、X線回折(XRD)および透過型電子顕微鏡(TEM)観察により確認した。
<参考例1>
成分AとしてのPBT(ポリプラスチックス株式会社製品、商品名「ジュラネックス800FP」) 95質量部、成分Cとしての有機化層状珪酸塩(株式会社ホージュン製品、商品名「エスベンNZ70」)5質量部および成分D(12−ヒドロキシステアリン酸ナトリウムおよびモンタン酸ナトリウムを2:1の質量比で使用した。)3質量部を使用し、実施例1と同様にしてペレット状の複合材料を作製した。
<参考例2>
成分Dを使用しない点以外は参考例1と同様にしてペレット状の複合材料を作製した。
なお、これら参考例1,2において成分B(ガラス繊維)を除外した組成としたのは、TEM観察用サンプルの作製を容易とするとともに、ガラス繊維以外の樹脂部分の検出を容易として成分Cの分散状態を観察しやすくするためである。
【0046】
参考例1,2に係る複合材料を120℃で8時間予備乾燥した後、シリンダー温度230〜260℃、金型温度60℃の条件で、長さ120mm、幅60mm、厚さ2mmの平板形状に射出成型した。この射出成型品につき、株式会社リガク製のX線回折(XRD)装置(型番「RAD−IIA」)を用いてXRD分析を行った。得られた回折パターンを、参考例1については図2に、参考例2については図3に示す。
【0047】
これらの図からわかるように、成分Dが添加された参考例1に係る複合材料の射出成型品はブロードなXRD曲線を示し、このXRD曲線において成分Cの層構造に由来する回折ピークは認められなかった(図2)。この結果は、射出成型のために再度加熱溶融された際にも1層レベルの層剥離に近い分散状態が安定して維持されていることを支持している。これに対して、成分Dを含まない参考例2に係る複合材料の射出成型品では、XRD曲線において成分Cの層構造に由来する回折ピークが明確に認められた(図3)。これは、参考例2では複合材料中において有機化層状珪酸塩の剥離が不完全で分散状態が不安定であることから、射出成型のために再度加熱溶融された際に有機化層状珪酸塩が凝集してしまったことによるものと考えられる。かかる結果は、上記流動長による流動性評価結果と整合するものである。
【0048】
また、上記参考例1,2に係る複合材料の射出成型品を、日本電子株式会社製のTEM(型番「JEM−3200FS」)により加速電圧300Vで観察した。すなわち、各射出成型品をミクロトームで切り出して厚み50〜70nmの薄膜片を作製し、マイクログリッド上に載せたものを試料としてTEM観察を行った。得られたTEM像を、参考例1については図4に、参考例2については図5に示す。
【0049】
これらの図からわかるように、参考例1に係る複合材料の射出成型品はでは、TEM像において有機化層状珪酸塩が1〜3層レベルで高度に層剥離した状態で分散しており、凝集塊も認められなかった(図4)。これに対して参考例2では、参考例1に比べて有機化層状珪酸塩の分散状態が明らかに不良であり、いくつもの大きな凝集塊が形成されていることが認められた(図5)。これらの結果は、上記XRD測定の結果および上記流動長による流動性評価結果と整合するものである。
【0050】
以上のXRD分析およびTEM観察の結果を、各参考例に係る複合材料の組成とともに表2に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
そして、実施例1に係る複合材料を参考例1,2と同様にして平板形状に射出成型し、その射出成型品につき同様にXRD分析を行った。その結果を図1に示す。図示されるように、実施例1に係る複合材料の射出成型品は参考例1(図2参照)と同様のブロードなXRD曲線を示し、成分Cの層構造に由来する回折ピークも認められなかった。この結果は、上記射出成型品中において有機化層状珪酸塩が参考例1(図4参照)と同様の良好な分散状態にあることを示唆するとともに、上記流動長による流動性評価結果と整合するものである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施例1に係る複合材料の射出成型品のX線回折パターン。
【図2】参考例1に係る複合材料の射出成型品のX線回折パターン。
【図3】参考例2に係る複合材料の射出成型品のX線回折パターン。
【図4】参考例1に係る複合材料の射出成型品のTEM像。
【図5】参考例2に係る複合材料の射出成型品のTEM像。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形用の複合材料であって、
スルホン酸基を有しないポリブチレンテレフタレート(成分A)と、繊維状無機充填材(成分B)と、有機化層状珪酸塩(成分C)とを溶融混練してなり、
前記複合材料中において、前記有機化層状珪酸塩は層剥離して分散された状態にあり、
ここで、前記複合材料には、該複合材料が再度加熱溶融される場合に前記分散状態にある有機化層状珪酸塩が凝集することを防止する凝集防止剤として、炭素数16〜32のモノカルボン酸のアルカリ金属塩(成分D)が配合されており、成分A、成分B、成分Cおよび成分Dの合計を100質量%として、各成分を:
成分A 60〜75質量%;
成分B 15〜35質量%;
成分C 1〜10質量%;および
成分D 0.5〜5質量%;
の割合で含む、射出成形用複合材料。
【請求項2】
前記成分A、成分B、成分Cおよび成分Dのみから実質的に構成される、請求項1に記載の射出成形用複合材料。
【請求項3】
X線回折パターンにおいて、前記有機化層状珪酸塩の積層構造に由来する回折ピークが観察されないことを特徴とする、請求項1または2に記載の射出成形用複合材料。
【請求項4】
前記成分Dは、モンタン酸ナトリウムおよび12−ヒドロキシステアリン酸ナトリウムの一方または両方である、請求項1から3のいずれか一項に記載の射出成形用複合材料。
【請求項5】
前記複合材料は、前記成分Cと前記成分Dとを5:1〜1:1の質量比(成分C:成分D)で含有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の射出成形用複合材料。
【請求項6】
射出成形用の複合材料を製造する方法であって、
スルホン酸基を有しないポリブチレンテレフタレート(成分A)と、繊維状無機充填材(成分B)と、有機化層状珪酸塩(成分C)1〜10質量部と、凝集防止剤としての炭素数16〜32のモノカルボン酸のアルカリ金属塩(成分D)とを、成分A、成分B、成分Cおよび成分Dの合計を100質量%として、成分A 60〜75質量%;成分B 15〜35質量%;成分C 1〜10質量%;および成分D 0.5〜5質量%;の割合で、前記有機化層状珪酸塩が層剥離して分散されることによりX線回折パターンにおいて前記有機化層状珪酸塩の積層構造に由来する回折ピークが観察されなくなるように溶融混練することを特徴とする、射出成形用複合材料製造方法。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載の複合材料を射出成形してなる射出成形品。
【請求項8】
透過型電子顕微鏡観察において、前記有機化層状珪酸塩が積層構造を有しないかあるいは3層以下の積層構造で分散した状態にあり且つ前記有機化層状珪酸塩の凝集塊が実質的に観察されない、請求項7に記載の射出成形品。
【請求項9】
車載用電気部品または電子部品のコネクタである、請求項6または7に記載の射出成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−37482(P2010−37482A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−204192(P2008−204192)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000219705)東海興業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】