説明

射出成形用金型、射出成形方法、射出成形部品

【課題】 表面に溝マークのない高品質な車両用内装部品を容易且つ確実でしかも安価に得られるようにする。
【解決手段】 固定型6と可動型7との間に、溶融した樹脂材料8を充填することにより射出成形部品本体9を射出成形可能な成形空間10を備えた射出成形用金型5であって、射出成形部品本体9の裏面に溝部4を加工可能な突出コア21と、突出コア21の圧入によって移動された溝部4の樹脂材料8を逃がす空隙22を形成可能な退避コア23とを備えるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、射出成形用金型、射出成形方法、射出成形部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、射出成形によって製造された各種の車両用内装部品が用いられている。このような車両用内装部品には、例えば、車室内の前部に設けられるインストルメントパネルなどがある。そして、このインストルメントパネルには、助手席側の裏面にエアバッグドア開裂用溝部を備えたものがある。
【0003】
このようなエアバッグドア開裂用溝部を備えたインストルメントパネルは、以下のようにして製造される。即ち、固定型と可動型との間に形成される成形空間へ溶融した樹脂材料を充填することによりインストルメントパネルを射出成形する。ここで、樹脂材料の充填前に、ヒータコアを用いてインストルメントパネルの助手席側の表面を加温しておく。そして、樹脂材料の充填後の未固化または半固化状態の時に、シリンダを用いて刃の付いた別のコアを突出させることにより射出成形部品本体の裏面にエアバッグドア開裂用溝部を加工する(流動変形)。同時に、シリンダに取付けられた加振装置を用いてコアを加振することにより樹脂材料を分散化させる。その後、ヒータコアを停止させて樹脂材料を固化させるようにする。このようにすることにより、樹脂材料の局所的な高密度化が防止され、以て、インストルメントパネルの助手席側の表面に溝マークが発生することが防止される(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−1677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された射出成形手段には、以下のような問題があった。
【0005】
即ち、インストルメントパネルの表面に溝マークが発生するのを防止するために、ヒータコアや加振装置を設けて、これらの装置を複雑に制御する(加熱タイミングや冷却タイミングや温度・圧力管理などが非常に難しい)ようにしていたので、その分、型製作コストや成形コストがかかると共に、製品歩留りの低下や、製品コストの上昇を招く原因となっている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明では、固定型と可動型との間に形成される成形空間へ溶融した樹脂材料を充填することにより射出成形部品本体を射出成形可能となるように構成した射出成形用金型において、前記射出成形部品本体の裏面に対して溝部を加工可能な突出コアと、該突出コアの突出によって形成された前記溝部の体積に相当する前記樹脂材料を逃がす空隙を形成可能な退避コアとを備えた射出成形用金型を特徴としている。
【0007】
請求項2に記載された発明では、前記成形空間の前記溝部を形成する位置が溝部の延設方向に複数の区間に区分けされ、各区間ごとに前記突出コアと退避コアとがそれぞれ配設されると共に、隣接する前記区間の前記突出コアと退避コアとが、互いに逆配置とされた請求項1記載の射出成形用金型を特徴としている。
【0008】
請求項3に記載された発明では、前記突出コアが、前記成形空間の前記溝部を形成する位置の裏面に、傾斜して突出可能に配置された請求項1または2記載の射出成形用金型を特徴としている。
【0009】
請求項4に記載された発明では、固定型と可動型との間に形成される成形空間へ溶融した樹脂材料を充填することにより射出成形部品本体を射出成形する射出成形方法において、充填された樹脂材料が半固化または固化した状態で、退避コアを退避させることにより前記成形空間に空隙を形成し、次いで、突出コアを突出させることにより前記射出成形部品本体の裏面に溝部を加工すると共に、前記突出コアの突出によって形成された溝部の体積に相当する前記樹脂材料を前記空隙へ逃がす射出成形方法を特徴としている。
【0010】
請求項5に記載された発明では、前記射出成形部品本体の裏面に、突出コアの突出により局所的な溝部が形成されていると共に、該溝部に繋がって退避コアの退避により樹脂材料のマクレ部が形成されている射出成形部品を特徴としている。
【0011】
請求項6に記載された発明では、前記射出成形部品本体が車両用内装部品であり、前記溝部がエアバッグドア開裂用溝部である請求項5記載の射出成形部品を特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、射出成形部品本体の裏面に溝部を加工可能な突出コアと、突出コアの突出によって形成された前記溝部の体積に相当する前記樹脂材料を逃がす空隙を形成可能な退避コアとを備えることにより、射出成形部品本体の表面側に影響を及ぼすことなく裏面に溝部を形成することが可能となるので、表面に溝マークなどの痕跡のない高品質な射出成形部品を、容易且つ確実でしかも安価に製造できる射出成形用金型を得ることが可能となる。
【0013】
請求項2の発明によれば、前記成形空間の前記溝部を形成する位置が溝部の延設方向に複数の区間に区分けされ、各区間ごとに前記突出コアと退避コアとがそれぞれ配設されると共に、隣接する前記区間の前記突出コアと退避コアとが、互いに逆配置とされていることにより、溝部が曲線形状をしている場合であっても、型内に無理なく突出コアと退避コアとを設置してこれらの干渉を防ぐことが可能となる。
【0014】
請求項3の発明によれば、前記突出コアが、前記成形空間の前記溝部を形成する位置の裏面に、傾斜して突出可能に配置されているため、射出成形部品本体に作用する面直力は突出コアの突出力の分力となるので、従来のように突出コアを面直に突出させることにより突出力の全てが面直力となる場合と比べて作用する面直力が小さくて済み、その分、樹脂材料の局所的な高密度化が起こり難くなる。しかも、突出コア21の先端を鋭利な刃部とすることができるので、突出コアの先端をより厚肉なものとして耐摩耗性を向上させつつ、精密な溝部を形成することが可能となる。
【0015】
請求項4の発明によれば、充填された樹脂材料が半固化または固化した状態で、退避コアを退避させることにより前記成形空間に空隙を形成し、次いで、突出コアを突出させることにより前記射出成形部品本体の裏面に溝部を加工すると共に、前記突出コアの突出によって形成された溝部の体積に相当する前記樹脂材料を前記空隙へ逃がすことにより、射出成形部品本体の表面側に影響を及ぼすことなく裏面に溝部を形成することが可能となるので、表面に溝マークなどの痕跡のない高品質な射出成形部品を、容易且つ確実でしかも安価に成形することが可能となる。
【0016】
請求項5の発明によれば、前記射出成形部品本体の裏面に、突出コアの突出により局所的な溝部が形成されていると共に、該溝部に繋がって退避コアの退避により樹脂材料のマクレ部が形成されていることにより、表面に溝マークなどの痕跡のない高品質な射出成形部品が、容易且つ確実でしかも安価に得られる。
【0017】
請求項6の発明によれば、前記射出成形部品本体を車両用内装部品とし、前記溝部をエアバッグドア開裂用溝部とすることにより、精密なエアバッグドア開裂用溝部を有し、且つ、表面に溝マークなどの痕跡のない高品質な車両用内装部品が、容易且つ確実でしかも安価に得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
表面に溝マークのない高品質な車両用内装部品を容易且つ確実でしかも安価に得られるようにするという目的を、射出成形部品本体の裏面に溝部を加工可能な突出コアと、突出コアの圧入によって移動された溝部の樹脂材料を逃がす空隙を形成可能な退避コアとを備える、という手段で実現した。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を具体化した実施例について、図示例と共に説明する。
【0020】
図1〜図7は、この発明の実施例を示すものである。
【0021】
自動車などの車両には、射出成形によって製造された各種の車両用内装部品1が用いられている。このような車両用内装部品1には、例えば、図1に示すような、車室内の前部に設けられるインストルメントパネル2などがある。そして、インストルメントパネル2には、助手席側の裏面にエアバッグドア開裂用溝部3などの溝部4を備えたものがある。エアバッグドア開裂用溝部3は、通常、平面視でH字状やU字状やロ字状などを呈している(図1では、ロ字状となっている)。
【0022】
このようなエアバッグドア開裂用溝部3を備えたインストルメントパネル2は、図2に示すような射出成形用金型5によって製造される。
【0023】
即ち、射出成形用金型5は、固定型6と可動型7との間に、溶融した樹脂材料8を充填することにより射出成形部品本体9(この場合は、インストルメントパネル2)を射出成形可能な成形空間10を備えている。
【0024】
固定型6は固定側取付板15に保持され、可動型7は可動側取付板16に保持される。可動側取付板16は、固定側取付板15に対して近接離反動可能に構成され、これにより、固定型6と可動型7とは開閉(型開き・型締め)され得るようになっている。
【0025】
固定側取付板15には、溶融した樹脂材料8を固定型6を介して成形空間10へ充填するためのホットランナーブロック14が設置されている。また、可動側取付板16には、成形品押出装置19が設けられている。この成形品押出装置19は、成形された射出成形部品本体9を型抜きするための油圧式の押出板17、および、この押出板17から成形空間10へ向けて延び、可動型7に貫通配置される押出ピン18などで構成されている。
【0026】
この実施例の射出成形用金型5では、図5に示すように、射出成形部品本体9の裏面に溝部4(この場合には、エアバッグドア開裂用溝部3)を加工可能な突出コア21と、突出コア21の突出によって形成された溝部4の体積に相当する樹脂材料8を逃がす空隙22(図6参照)を形成可能な退避コア23とを備えている。突出コア21と退避コア23とは、図5(b)に示すようなスライド機構24を介して射出成形用金型5(この場合には可動型7)にスライド可能に保持する。
【0027】
上記突出コア21は、先端に溝部4を形成するための鋭利な刃部25を有している。この突出コア21は、可動型7に取付けられた油圧式などの突出用シリンダ26に、中子カム27,28を介して接続されている。突出用シリンダ26は、機能上およびスペース上の関係から、可動型7の側面に取付けられており、突出用シリンダ26の伸縮動の方向と、突出コア21の突出収納方向とを、2つの中子カム27,28によって変更させ得るようにしている。ここで、中子カム27は、突出用シリンダ26に直接接続され、中子カム28は、突出コア21に直接接続されている。そして、突出用シリンダ26側の中子カム27の先端には、楔状のカム面29が形成され、突出コア21側の中子カム28の後端にはカム面29に案内されて突出コア21を突出収納動させるガイド面30が形成されている。なお、カム面29とガイド面30とは、例えば、アリとアリ溝とをスライド自在に嵌合した構造などを備えて分離されないようになっている。一方、退避コア23は、可動型7に取付けられた退避用シリンダ32に、カップリング33を介して連結されている。退避用シリンダ32は、可動型7と可動側取付板16との間に取付けられている。
【0028】
また、必要に応じ、図3に示すように、成形空間10の溝部4を形成する位置が溝部4の延設方向に複数の区間Xに区分けされ、各区間Xごとに突出コア21と退避コア23とがそれぞれ配置されると共に、隣接する区間Xの突出コア21と退避コア23とが、互いに逆配置とされるように構成する。例えば、溝部4が曲線形状をしている場合には、例えば、直線部と曲線部の境界や、曲率が異なる曲線間の変曲点、或いはこれらの近傍などで適宜区分けするのが好ましい。また、溝部4が分岐・合流する場合には、分岐点や合流点、或いはこれらの近傍などで区分けするのが好ましい。より具体的には、U字状やロ字状のエアバッグドア開裂用溝部3の場合には、直線部分と、コーナー部分とに区分けするのが、構造上好ましい。
【0029】
更に、突出コア21を、成形空間10の溝部3を形成する位置の裏面に、面直に突出可能に配置されるようにしても良いが、この実施例では、図4に示すように、突出コア21が、成形空間10の溝部3を形成する位置の裏面に、傾斜して突出可能に配置されるようにしている。なお、2種類の中子カム27,28を介して、突出用シリンダ26の伸縮動の方向と、突出コア21の突出収納方向とを変更させるようにしたことにより、問題なく突出コア21を傾斜配置させることが可能となる。
【0030】
そして、上記した射出成形用金型5に対し、固定型6と可動型7との間に形成される成形空間10へ溶融した樹脂材料8を充填することにより、射出成形部品本体9を射出成形する。
【0031】
この際、図5に示すように、突出コア21と退避コア23とは、それぞれ突出および退避する前の状態としておく。そして、充填された樹脂材料8が半固化または固化した状態で、図6に示すように、退避コア23を退避させることにより成形空間10に空隙22を形成する。なお、空隙22の大きさは、溝部4の体積と同じか又はそれ以上とすれば良い。次いで、突出コア21を突出させて半固化または固化した樹脂材料8に圧入することにより射出成形部品本体9の裏面に溝部4を加工すると共に、突出コア21の圧入によって移動された溝部4の体積に相当する樹脂材料8を空隙22へ逃がすようにする。なお、突出コア21と退避コア23との操作タイミングは、樹脂材料8の充填終了信号によって作動するタイマーにより自動的に行わせる。
【0032】
その後は、図7に示すように、射出成形部品本体9を所定温度まで冷却して完全に固化させてから、成形品押出装置19を用いて型抜きすると共に、突出コア21と退避コア23とを、それぞれ突出および退避する前の状態に戻すようにする。
【0033】
こうして得られた、射出成形部品本体9は、射出成形部品本体9の裏面に、突出コア21の突出により局所的な溝部4が形成されると共に、溝部4に繋がって退避コア23の退避により樹脂材料8のマクレ部35が形成されているものとなる。なお、突出コア21が圧入された際に、射出成形部品本体9を構成する樹脂材料8が半固化状態である場合には、溝部4の体積に相当する樹脂材料8は流動変形を起こして盛り上がることとなる。また、上記樹脂材料8が固化状態である場合には、溝部4周辺の樹脂材料8は、塑性変形を起こしてマクレ上がることとなる。実際には、この中間の状態が生じているものと思われる。なお、射出成形部品本体9裏面にできたマクレ部35は、後加工で除去してしまうことも可能であるが、その分コストが上昇することとなる。
【0034】
以上述べたように、この実施例にかかる射出成形用金型5では、射出成形部品本体9の裏面に溝部4を加工可能な突出コア21と、突出コア21の突出によって形成された溝部4の体積に相当する樹脂材料8を逃がす空隙22を形成可能な退避コア23とを備えることにより、射出成形部品本体9の表面側に影響を及ぼすことなく裏面に溝部4を形成することが可能となるので、表面に溝マークやヒケ(成形収縮時に発生する樹脂表面の陥没)などの痕跡のない高品質な射出成形部品を、容易且つ確実でしかも安価に製造できる射出成形用金型5を得ることが可能となる。即ち、ヒータコアや加振装置や、これらの装置を複雑に制御する制御装置や、その他、突出コア加熱用熱源および金型断熱構造や、樹脂温度・圧力制御装置などの高価な追加設備を不要とすることができる。ここで、溝マークとは、溝部4近傍の高圧縮による密度分布の変化による収縮差から生じ、外部からは光の反射の乱れによって視認されてしまうものである。
【0035】
また、成形空間10の溝部4を形成する位置が溝部4の延設方向に複数の区間Xに区分けされ、各区間Xごとに突出コア21と退避コア23とがそれぞれ配設されると共に、隣接する区間Xの突出コア21と退避コア23とが、互いに逆配置とされていることにより、溝部4が曲線形状をしている場合であっても、射出成形用金型5内に無理なく突出コア21と退避コア23とを設置してこれらの干渉を防ぐことが可能となる。
【0036】
更に、突出コア21が、成形空間10の溝部4を形成する位置の裏面に、傾斜して突出可能に配置されているため、射出成形部品本体9に作用する面直力は突出コア21の突出力の分力となるので、従来のように突出コアを面直に突出させることにより突出力の全てが面直力となる場合と比べて作用する面直力が小さくて済み、その分、樹脂材料8の局所的な高密度化などが起こり難くなる。しかも、突出コア21を傾斜して突出可能としたことにより、突出コア21の先端を鋭利な刃部25とすることができるので、より精密な溝部4を形成することが可能となる。なお、突出コア21先端の刃部25は、射出成形部品本体9の表面と溝部4の底部とはほぼ平行に肉が残るようなものにすることが好ましい。これに対し、従来のように突出コアを面直に突出させた場合には、突出コアの先端に刃部を設けることができず、直角のエッジを持つ押面となってしまうので、精度の劣る溝部4しか形成することができない。更に、傾斜して突出可能な突出コア21は先端に鋭利な刃部25を有しているので、突出コア21の先端をより厚肉なものとしても支障なく溝部4を形成することが可能であり、これにより、突出コア21の耐摩耗性を向上させることができる。これに対し、従来のように突出コアを面直に突出させた場合には、溝部4形成上の問題により突出コア21の先端は余り厚肉とすることができない。
【0037】
また、上記により、区間Xごとに逆傾斜の溝部4を有する射出成形部品本体9を得ることができるが、この場合には、射出成形部品本体9の表面側へ荷重が加わった時、例えば、インストルメントパネル2に上方から手を付いたような時に、よりベコ付き感の少ない良好な射出成形部品本体9となる。しかも、エアバッグ膨出時の開裂性を損わないものとすることができる。
【0038】
この実施例にかかる射出成形方法によれば、充填された樹脂材料8が半固化または固化した状態で、退避コア23を退避させることにより成形空間10に空隙22を形成し、次いで、突出コア21を突出させることにより射出成形部品本体9の裏面に溝部4を加工すると共に、突出コア21の突出によって形成された溝部4の体積に相当する樹脂材料8を空隙22へ逃がすことにより、射出成形部品本体9の表面側に影響を及ぼすことなく裏面に溝部4を形成することが可能となるので、表面に溝マークなどの痕跡のない高品質な射出成形部品を、容易且つ確実でしかも安価に成形することが可能となる。
【0039】
この実施例にかかる射出成形部品本体9では、射出成形部品本体9の裏面に、突出コア21により局所的な溝部4が形成されていると共に、溝部4に繋がって退避コア23の退避により樹脂材料8のマクレ部35が形成されていることにより、表面に溝マークなどの痕跡のない高品質な射出成形部品が、容易且つ確実でしかも安価に得られる。
【0040】
また、射出成形部品本体9を車両用内装部品1とし、溝部4をエアバッグドア開裂用溝部3とすることにより、精密なエアバッグドア開裂用溝部3を有し、且つ、表面に溝マークなどの痕跡のない高品質な車両用内装部品1が、容易且つ確実でしかも安価に得られる。
【0041】
なお、インストルメントパネル2のような大型の射出成形部品本体9に対して、局所的にエアバッグドア開裂用溝部3などの微細な溝部4を精密に形成するのは、小型の部品に対して同様のことを行う場合に比べて技術的に非常な困難を伴うが、この実施例の技術を用いることにより、容易に実現することが可能となる。
【0042】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。
【0043】
例えば、車両用内装部品は、上記したインストルメントパネルに限らず、エアバッグドア開裂用溝部を備えたパネル状の部品、例えば、インストルメントパネルとは別体に設けられるエアバッグドア部材や、サイドエアバッグを収容するサイドパネルや、リアエアバッグを収容するリアパネルなどであっても良い。また、溝部は、上記した助手席用のエアバッグドア開裂用溝部に限らず、例えば、ステアリングハンドル中央部のクラクションスイッチカバーに運転席用として設けられるエアバッグカバー開裂用の溝部などであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施例の射出成形用金型によって成形された射出成形部品本体を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施例にかかる射出成形用金型の側方断面図である。
【図3】区間Xに分割された溝部に対する突出コアおよび退避コアの配置を示す部分拡大平面図である。
【図4】斜めの溝部とマクレ部とを示す部分拡大図である。
【図5】(a)は突出コアおよび退避コアの状態を示す作動図、(b)はスライド機構の断面図である。
【図6】図5に続く作動図である。
【図7】図6に続く作動図である。
【符号の説明】
【0045】
1 車両用内装部品
3 エアバッグドア開裂用溝部
4 溝部
5 射出成形用金型
6 固定型
7 可動型
8 樹脂材料
9 射出成形部品本体
10 成形空間
21 突出コア
22 空隙
23 退避コア
35 マクレ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定型と可動型との間に形成される成形空間へ溶融した樹脂材料を充填することにより射出成形部品本体を射出成形可能となるように構成した射出成形用金型において、
前記射出成形部品本体の裏面に対して溝部を加工可能な突出コアと、
該突出コアの突出によって形成された前記溝部の体積に相当する前記樹脂材料を逃がす空隙を形成可能な退避コアとを備えたことを特徴とする射出成形用金型。
【請求項2】
前記成形空間の前記溝部を形成する位置が溝部の延設方向に複数の区間に区分けされ、
各区間ごとに前記突出コアと退避コアとがそれぞれ配設されると共に、
隣接する前記区間の前記突出コアと退避コアとが、互いに逆配置とされたことを特徴とする請求項1記載の射出成形用金型。
【請求項3】
前記突出コアが、前記成形空間の前記溝部を形成する位置の裏面に、傾斜して突出可能に配置されたことを特徴とする請求項1または2記載の射出成形用金型。
【請求項4】
固定型と可動型との間に形成される成形空間へ溶融した樹脂材料を充填することにより射出成形部品本体を射出成形する射出成形方法において、
充填された樹脂材料が半固化または固化した状態で、退避コアを退避させることにより前記成形空間に空隙を形成し、次いで、突出コアを突出させることにより前記射出成形部品本体の裏面に溝部を加工すると共に、前記突出コアの突出によって形成された溝部の体積に相当する前記樹脂材料を前記空隙へ逃がすことを特徴とする射出成形方法。
【請求項5】
前記射出成形部品本体の裏面に、突出コアの突出により局所的な溝部が形成されていると共に、該溝部に繋がって退避コアの退避により樹脂材料のマクレ部が形成されていることを特徴とする射出成形部品。
【請求項6】
前記射出成形部品本体が車両用内装部品であり、前記溝部がエアバッグドア開裂用溝部であることを特徴とする請求項5記載の射出成形部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−51745(P2006−51745A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−236264(P2004−236264)
【出願日】平成16年8月16日(2004.8.16)
【出願人】(596135205)ケーエスエンジニアリング株式会社 (3)
【Fターム(参考)】