説明

射出成形装置

【課題】材料の可塑化状態や圧力値に依存することなく、安定した計量制御を行って精密な成形を行うことのできる射出成形装置の提供。
【解決手段】バレル11に対するスクロール12の回転によって材料を可塑化及び圧送する可塑化部10と、該材料を金型のキャビティ内へ射出する射出部20と、該射出部から該可塑化部への材料の逆流を遮断する逆流阻止機構30とを備えており、該スクロールに回転軸と同軸に一体化された弁体31と、該バレルに一体化されており該弁体と係合する弁座32とを備えている。該弁座が少なくとも1つの弁座溝32aを有すると共に該弁体が少なくとも1つの弁体溝31aを有しており、少なくとも1つの弁体溝が、第1の回転位置において少なくとも1つの弁座溝と対向状態となって該可塑化部及び該射出部間を連通する流路を形成し、第2の回転位置において少なくとも1つの弁座溝と非対向状態となってこの流路を遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可塑化部において材料を可塑化し、その材料を金型のキャビティ内へ射出することにより製品の射出成形を行う射出成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2には、本願出願人によって提案されたスクロール式の射出成形装置が開示されている。この射出成形装置は、材料を可塑化及び圧送するスクロール及びバレル部と、このスクロール及びバレル部からの材料をキャビティ内に射出する射出部との間に逆流防止機構としてチェックバルブを備えており、このチェックバルブによって射出部からスクロール及びバレル部への材料の逆流を遮断するように構成されている。
【0003】
特許文献3には、インラインスクリュ式の射出成形装置における逆流防止機構が開示されている。この逆流防止機構は、材料を可塑化して前方に移送するスクリュ及び加熱バレル部と、このスクリュ及び加熱バレル部からの材料をキャビティ内に射出するスクリュ前方空間部との間に逆流防止機構としてチェックリングを備えており、このチェックリングによってスクリュ前方空間部からスクリュ及び加熱バレル部への材料の逆流を遮断するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−306028号公報
【特許文献2】特開2007−083545号公報
【特許文献3】特開2005−169899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜3に記載された従来の射出成形装置のようにチェックバルブ又はチェックリングにより材料の逆流を遮断する射出成形装置では、可塑化された材料(この場合は溶融樹脂)の圧力によってチェックバルブ又はチェックリングを押し戻すことにより流路を閉成している。このため、材料の可塑化状態や圧力値に応じて閉成動作や閉成速度が変わってしまうから、特に動作遅れによる材料の逆流が発生し、結果的に、製品への充填量が不足する等により、安定した材料制御を行うことができない。
【0006】
従って本発明の目的は、材料の可塑化状態や圧力値に依存することなく、安定した計量制御を行って精密な成形を行うことのできる射出成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、射出成形装置は、バレルに対するスクロール又はスクリュの回転によって材料を可塑化及び圧送する可塑化部と、可塑化部から送られる材料を金型のキャビティ内へ射出する射出部と、可塑化部及び射出部間に設けられ射出部から可塑化部への材料の逆流を遮断する逆流阻止機構とを備えており、この逆流阻止機構が、スクロール又はスクリュに回転軸と同軸に一体化されておりスクロール又はスクリュと共に回転する弁体と、バレルに一体化されており弁体と係合する弁座とを備えている。弁体が少なくとも1つの弁体溝を有すると共に弁座が少なくとも1つの弁座溝を有しており、少なくとも1つの弁体溝が、第1の回転位置において少なくとも1つの弁座溝と対向状態となって可塑化部及び射出部間を連通する流路を形成し、第1の回転位置とは異なる第2の回転位置において少なくとも1つの弁座溝と非対向状態となってこの流路を遮断するように構成されている。
【0008】
可塑化及び圧送工程を実行している際は、スクロール又はスクリュと共に弁体が回転しているため、弁体溝は第1の回転位置において流路を連通させること及び第2の回転位置において流路を遮断させることを繰り返す。これにより、流路が連通している間に材料が可塑化部から射出部へ送られる。可塑化及び圧送工程を終了する際には、スクロール又はスクリュの回転停止位置を、通常の射出成形装置に設けられている例えばエンコーダ等の回転角センサを用いて第2の回転位置に正確に制御する。これにより、流路が遮断されて、可塑化部と射出部とは完全に遮断される。その結果、材料を金型のキャビティ内へ計量射出する次の計量射出工程において、材料の逆流が発生することはなくなり、材料の可塑化状態や圧力値に依存しない安定した計量制御を行うことができ、精密な成形を行うことができる。
【0009】
少なくとも1つの弁体溝が、弁体の少なくとも径方向の側面に形成されていることが好ましい。
【0010】
少なくとも1つの弁座溝が、弁体の径方向の側面と対向する位置にのみ形成されていることも好ましい。
【0011】
少なくとも1つの弁体溝が、弁体の回転軸方向の先端面に形成されていることも好ましい。この場合、少なくとも1つの弁座溝が、弁体の回転軸方向の先端面と対向する位置にのみ形成されていることがより好ましい。
【0012】
可塑化部が、バレルと、バレルに対向して回転するスクロールとを備えているスクロール式であることも好ましい。
【0013】
可塑化部が、円筒形バレルと、円筒形バレルの内部において円筒形バレルと同軸に回転するスクリュとを備えているインラインスクリュ式であることも好ましい。
【0014】
少なくとも1つの弁体溝を第2の回転位置において回転停止させる回転制御手段をさらに備えていることも好ましい。この場合、回転制御手段が、スクロール又はスクリュを回転させる駆動モータと、スクロール又はスクリュの回転角を検知する回転角センサとを備えており、回転角センサから得られる回転角に応じて駆動モータの駆動停止位置を精密制御するように構成されていることがより好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、射出工程において、材料の逆流が発生することはなくなり、材料の可塑化状態や圧力値に依存しない安定した計量制御を行うことができ、精密な成形を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の射出成形装置の一実施形態における構成を概略的に示す軸断面図であり、(A)は弁体が第1の回転位置にある場合、(B)は弁体が第2の回転位置にある場合を示している。
【図2】図1の実施形態におけるスクロール及び逆流阻止機構の弁体側の構造を概略的に示す斜視図である。
【図3】図1の実施形態におけるバレル及び逆流阻止機構の弁座側の構造を概略的に示す斜視図である。
【図4】図1の実施形態における逆流阻止機構の弁体及び弁座の組み合わせ構造を概略的に示す一部断面斜視図であり、(A)は弁体が第1の回転位置にある場合、(B)は弁体が第2の回転位置にある場合を示している。
【図5】図1の実施形態における逆流阻止機構の弁体溝及び弁座溝の係合状態を示す平面図であり、(A)は弁体が第1の回転位置にある場合、(B)は弁体が第2の回転位置にある場合を示している。
【図6】図1の実施形態の変更態様における逆流阻止機構の弁体溝及び弁座溝の係合状態を示す平面図であり、(A)は弁体が第1の回転位置にある場合、(B)は弁体が第2の回転位置にある場合を示している。
【図7】本発明の射出成形装置の他の実施形態における構成を概略的に示す軸断面図であり、(A)は弁体が第1の回転位置にある場合、(B)は弁体が第2の回転位置にある場合を示している。
【図8】図7の実施形態におけるスクロール及び逆流阻止機構の弁体側の構造を概略的に示す斜視図である。
【図9】図7の実施形態におけるバレル及び逆流阻止機構の弁座側の構造を概略的に示す斜視図である。
【図10】図7の実施形態における逆流阻止機構の弁体及び弁座の組み合わせ構造を概略的に示す一部断面斜視図であり、(A)は弁体が第1の回転位置にある場合、(B)は弁体が第2の回転位置にある場合を示している。
【図11】本発明の射出成形装置のさらに他の実施形態におけるバレル及びスクリュ部分の構成を概略的に示す軸断面図であり、(A)は弁体が第1の回転位置にある場合、(B)は弁体が第2の回転位置にある場合を示している。
【図12】図11の実施形態における逆流阻止機構の弁体溝及び弁座溝の係合状態を示すA−A線断面図及びB−B線断面図であり、(A)は弁体が第1の回転位置にある場合、(B)は弁体が第2の回転位置にある場合を示している。
【図13】図11の実施形態の変更態様における逆流阻止機構の弁体溝及び弁座溝の係合状態を示すA−A線断面図及びB−B線断面図であり、(A)は弁体が第1の回転位置にある場合、(B)は弁体が第2の回転位置にある場合を示している。
【図14】本発明の射出成形装置のまたさらに他の実施形態におけるバレル及びスクリュ部分の構成を概略的に示す軸断面図であり、(A)はバレル、スクリュ及び射出プランジャを、(B)はスクリュ及び射出プランジャを、(C)は射出プランジャのみを示している。
【図15】図14の実施形態における逆流阻止機構の弁体溝及び弁座溝の係合状態を示すA−A線断面図であり、(A)は弁体が第1の回転位置にある場合、(B)は弁体が第2の回転位置にある場合を示している。
【図16】図14の実施形態の変更態様における逆流阻止機構の弁体溝及び弁座溝の係合状態を示すA−A線断面図であり、(A)は弁体が第1の回転位置にある場合、(B)は弁体が第2の回転位置にある場合を示している。
【図17】本発明の射出成形装置のさらに他の実施形態におけるバレル及びスクリュ部分の構成を概略的に示す軸断面図である。
【図18】図17の実施形態における逆流阻止機構の弁体溝及び弁座溝の係合状態を示すA−A線断面図であり、(A)は弁体が第1の回転位置にある場合、(B)は弁体が第2の回転位置にある場合を示している。
【図19】図17の実施形態の変更態様における逆流阻止機構の弁体溝及び弁座溝の係合状態を示すA−A線断面図であり、(A)は弁体が第1の回転位置にある場合、(B)は弁体が第2の回転位置にある場合を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明の射出成形装置の一実施形態における構成を概略的に示しており、図2は本実施形態におけるスクロール及び逆流阻止機構の弁体側の構造を概略的に示しており、図3は本実施形態におけるバレル及び逆流阻止機構の弁座側の構造を概略的に示しており、図4は本実施形態における逆流阻止機構の弁体及び弁座の組み合わせ構造を概略的に示しており、図5は本実施形態における逆流阻止機構の弁体溝及び弁座溝の係合状態を示している。ただし、図1、図4及び図5において、(A)は弁体が第1の回転位置にある場合、(B)は弁体が第2の回転位置にある場合である。
【0018】
なお、本実施形態の射出成形装置はホットランナノズルを備えたホットランナ金型式の射出成形装置であるが、コールドランナ金型式の射出成形装置についても本発明を同様に適用できることは明らかである。また、本実施形態においては、材料に熱可塑化性樹脂を用いる場合を例として説明するが、熱硬化性樹脂、ワックス、バインダ処理されたセラミック・鉄粉を射出成形する場合にも同様に適用することができる。
【0019】
図1(A)及び(B)に示すように、本実施形態の射出成形装置は、材料である熱可塑化性樹脂を加熱して可塑化させると共に、混練しながら圧送する可塑化部10と、可塑化部10から圧送されてきた溶融樹脂を計量して送出する計量射出部20と、可塑化部10及び計量射出部20間に設けられ、計量射出部20から可塑化部10への溶融樹脂の逆流を遮断する逆流阻止機構30と、計量射出部20により計量送出された材料をキャビティに射出して成形し製品を形成する金型部40とを備えている。
【0020】
可塑化部10は、図示しない材料投入孔から投入されたペレット状の熱可塑化性樹脂を加熱するバレル11と、熱可塑化性樹脂を搬送する螺旋溝12aが形成されていると共にバレル11に当接しながら回転することにより熱可塑化性樹脂を加熱しながら搬送、撹拌、可塑化及び混練し、可塑化後はワイゼンベルグ効果を伴い、その回転中心部に圧送するスクロール12と、このスクロール12を回転駆動する図示しないスクロール駆動機構とを備えている。
【0021】
図2に示すように、スクロール12は、略短円柱状をなす回転体であり、その回転体側面(スクロール側面)からバレル11に対向する面(スクロール作用面)に螺旋溝12aが形成されている。この螺旋溝12aは、中央の回転軸の近傍までスクロール12の回転方向に従って縮小するように形成され、その裏面にスクロール駆動機構が連結されるように構成されている。スクロール作用面に形成されている螺旋溝12aは送溝(混練溝)12a、スクロール側面に形成されている螺旋溝12aは掻込溝(案内溝)12aと称される。即ち、螺旋溝12aは、送溝12aと掻込溝12aとによって構成されている。
【0022】
スクロール12のスクロール作用面とバレル11とは密接摺動しており、このバレル11からの熱で可塑化した溶融樹脂が送溝12aから漏れないように構成されている。溶融樹脂はこの送溝12aに沿ってスクロール12の中心部に向かって圧送される。
【0023】
バレル11は略円盤状に形成されており、その内部に図示しない電気ヒータが収容されて内部加熱可能に構成されている。また、熱電対等の温度計測器が取付け可能となっている。具体的には、バレル11に埋設されているヒータへの通電を制御することによって、バレル11の温度が樹脂の融点温度以上かつスクロール12の温度がバレル11の温度以下又は樹脂の融点以下となるように調整している。
【0024】
バレル11のスクロール作用面と接する面には、中心に向かって円弧状に収束する3つの凹溝11aが設けられており、これら凹溝11aとスクロール12側の送溝12aとによって溶融樹脂がスクロール12の中心部に向かって圧送されるように構成されている。
【0025】
スクロール12及びバレル11は、本実施形態では鉄系の金属材料で構成されているが、これに限らず、例えば、真鍮、又はポリテトラフロロエチレン若しくはポリピロメリットイミド等の耐熱性の高い高分子樹脂を材料として形成しても良い。
【0026】
スクロール駆動機構は図示されていないが、サーボモータと、このサーボモータによって駆動されるウォームギアと、このウォームギアに噛合したウォームホイールとを備えており、このウォームホイールがスクロール12と同軸に連結されている。これにより、サーボモータの回転がウォームギア及びウォームホイールにより減速されながらスクロール12に伝達され、このスクロール12が回転するように構成されている。サーボモータの回転及び停止、さらにその停止位置は、図示しないロータリエンコーダによって検知されたスクロール12の回転角に応じて制御されるように構成されている。その結果、スクロール12の回転停止位置、即ち後述する逆流阻止機構30の弁体31の回転停止位置、が精密に制御される。
【0027】
逆流阻止機構30は、スクロール12の回転中心部においてその回転軸と同軸となるようにこのスクロール12に一体化されており、このスクロール12と共に回転する弁体31と、バレル11に一体化されており弁体31と摺動状態で係合すると共に非回転で静止している弁座32とを備えている。弁体31には、本実施形態においては、弁体31の径方向の側面に3つの弁体溝31aが形成されており、弁座32にも、本実施形態においては、弁体31の径方向の側面と対向する位置に3つの弁座溝32aが形成されている。これら3つの弁体溝31aは、弁体31の第1の回転位置において3つの弁座溝32aとそれぞれ対向状態となり、可塑化部10と計量射出部20との間を連通する流路を形成する。また、これら3つの弁体溝31aは、弁体31の第1の回転位置とは異なる第2の回転位置において、3つの弁座溝32aと非対向状態となり、可塑化部10と計量射出部20との間を連通する流路を遮断するように構成されている。弁体31の回転位置が第1の回転位置と第2の回転位置との間にある場合は、3つの弁体溝31aは、3つの弁座溝32aと一部対向した状態となり、可塑化部10と計量射出部20との間を連通する流路は一部のみ開成される。
【0028】
なお、弁体溝や弁座溝の大きさ(深さ、幅、径等)は成形材料の粘度等に応じて規定される。弁体溝や弁座溝の数は、本実施形態のごとく3つに限定されるものではなく、1つ以上であればいくつであっても良い。ただし、弁体溝や弁座溝の数が多すぎると、構造が複雑となるのみならず、各弁体溝及び各弁座溝の大きさが小さくなるので、内壁との摩擦によって成形材料がスムーズに流れるようにその粘度に応じて設定する。弁体溝や弁座溝の数が少なすぎると、計量射出部20への材料の供給が間欠的となりスムーズに流れない場合もあり得る。
【0029】
計量射出部20はバレル11内に形成されている。即ち、図1に示すように、計量射出部20は、バレル11内に設けられた射出シリンダ21と、この射出シリンダ21内にピストン運動可能に挿入された射出プランジャ22と、射出シリンダ21から主として構成されるチャンバ23とを備えている。
【0030】
金型部40は、可動ダイプレート41に取り付けられる可動金型ピース42と、固定ダイプレート43に取り付けられる固定金型ピース44とから構成されるカセット金型である。可動金型ピース42及び固定金型ピース44間に成形される製品の形状を有するキャビティが形成される。固定金型ピース44には、ホットランナノズル45が挿嵌されるランナ受穴が形成されている。
【0031】
ホットランナノズル45は、内部に溶融樹脂が流動する樹脂流路が形成された筒体からなるもので、先端部が可動金型ピース42とのパーティングラインに臨んで固定金型ピース44の内部に挿入されている。このホットランナノズル45は、ヒータが内蔵されており、その後端部は、計量射出部20から射出された溶融樹脂が供給される樹脂供給路に接続されている。
【0032】
次に、本実施形態における射出成形装置の動作について説明する。
【0033】
図示しない材料投入孔から投入されたペレット状の熱可塑化性樹脂は、バレル11によって加熱されて溶融すると共に、回転しているスクロール12によってバレル11及びスクロール12間の送溝12a内を流動しつつさらに軟化溶融が進行し、圧力上昇を伴ってその中心部へ圧送される。
【0034】
圧送された溶融樹脂は、逆流阻止機構30の弁体31及び弁座32によって間欠的に開成される流路を通って計量射出部20のチャンバ23内に送り込まれる。即ち、スクロール12が回転している状態においては、図1(A)、図4(A)及び図5(A)に示すように弁体31の回転位置が第1の回転位置にある際は弁体溝31aが弁座32の弁座溝32aに一致して、可塑化部10から計量射出部20への流路が開成され、図1(B)、図4(B)及び図5(B)に示すように弁体31の回転位置がこの第1の回転位置と異なる第2の回転位置にある際は弁体溝31aが弁座32の弁座溝32aに一致せず、可塑化部10から計量射出部20への流路が閉成される。弁体31の回転位置が第1の回転位置と第2の回転位置との間にある場合は、可塑化部10から計量射出部20への流路が一部のみ開成される。従って、流路が開成している間のみ、溶融樹脂が可塑化部10から計量射出部20へ送り込まれることとなる。
【0035】
計量射出部20へ送り込まれた溶融樹脂は、射出シリンダ21を含むチャンバ23内に貯留される。この場合、図1(A)に示すように、溶融樹脂によって、射出プランジャ22が外方向へ押し出される。
【0036】
計量射出部20への圧送が終了した時点で、スクロール12の回転が停止される。この回転停止位置は、逆流阻止機構30の弁体31の回転停止位置が第2の回転位置となるように、精密に制御される。この状態では、上述したように、弁体溝31aが弁座溝32aに一致せず、可塑化部10から計量射出部20への流路が閉成される。
【0037】
このように、逆流阻止機構30により、可塑化部10から計量射出部20への流路が閉成された状態で、射出プランジャ22を押し戻し駆動することにより、チャンバ23内に貯留された溶融樹脂が、ホットランナノズル45を介して金型部40内のキャビティへ計量射出され、これによって成形が行われる。
【0038】
以上詳細に説明したように、本実施形態によれば、可塑化及び圧送工程を実行している際は、スクロール12と共に弁体31が回転しているため、弁体溝31aは第1の回転位置において流路を連通させること及び第2の回転位置において流路を遮断させることを繰り返す。これにより、流路が連通している間に溶融樹脂が可塑化部10から計量射出部20へ送られる。可塑化及び圧送工程を終了する際には、スクロール12の回転停止位置を、ロータリエンコーダ等の回転角センサを用いて第2の回転位置に正確に制御する。これにより、流路が遮断されて、可塑化部10と計量射出部20とは完全に遮断される。その結果、溶融樹脂を金型部40のキャビティ内へ計量射出する次の工程において、その溶融樹脂の逆流が発生することはなくなり、溶融樹脂の溶融状態や圧力値に依存しない安定した計量制御を行うことができ、精密な成形を行うことができる。
【0039】
特に本実施形態では、弁体31の径方向の側面に弁体溝31aが形成されており、この径方向の弁体溝31aと対向する位置に形成された弁座32側の弁座溝32aとが対向状態となるか、非対向状態となるかによって流路の開閉が行われるように構成されているため、高圧の溶融樹脂が流路を通過する場合にも弁体31と弁座32とを密着した状態で動作させることができる。このため、より安定した計量制御を行うことができ、さらに精密な成形を行うことができる。
【0040】
図6は図1の実施形態の変更態様における逆流阻止機構の弁体溝及び弁座溝の係合状態を示しており、(A)は弁体が第1の回転位置にある場合、(B)は弁体が第2の回転位置にある場合を示している。
【0041】
本変更態様は、逆流阻止機構における弁体31′の弁体溝31a′の形状が図1の実施形態の場合と異なっており、かつ、大きさ(深さ、幅、径等)がより大きくなっている。本変更態様のその他の構成及び作用効果は図1の実施形態の場合と同様であり、同一の構成要素については同じ参照符号を用いている。
【0042】
図7は本発明の射出成形装置の他の実施形態における構成を概略的に示しており、図8は本実施形態におけるスクロール及び逆流阻止機構の弁体側の構造を概略的に示しており、図9は本実施形態におけるバレル及び逆流阻止機構の弁座側の構造を概略的に示しており、図10は本実施形態における逆流阻止機構の弁体及び弁座の組み合わせ構造を概略的に示している。ただし、図7及び図10において、(A)は弁体が第1の回転位置にある場合、(B)は弁体が第2の回転位置にある場合である。
【0043】
なお、本実施形態の射出成形装置はホットランナノズルを備えたホットランナ金型式の射出成形装置であるが、コールドランナ金型式の射出成形装置についても本発明を同様に適用できることは明らかである。また、本実施形態においては、材料に熱可塑化性樹脂を用いる場合を例として説明するが、熱硬化性樹脂、ワックス、バインダ処理されたセラミック・鉄粉を射出成形する場合にも同様に適用することができる。
【0044】
図7(A)及び(B)に示すように、本実施形態の射出成形装置は、材料である熱可塑化性樹脂を加熱して可塑化させると共に、混練しながら圧送する可塑化部70と、可塑化部70から圧送されてきた樹脂を計量して送出する計量射出部80と、可塑化部70及び計量射出部80間に設けられ、計量射出部80から可塑化部70への溶融樹脂の逆流を遮断する逆流阻止機構90と、計量射出部80により計量送出された材料をキャビティに射出して成形し製品を形成する金型部100とを備えている。
【0045】
可塑化部70は、図示しない材料投入孔から投入されたペレット状の熱可塑化性樹脂を加熱するバレル71と、熱可塑化性樹脂を搬送する螺旋溝72aが形成されていると共にバレル71に当接しながら回転することにより熱可塑化性樹脂を加熱しながら搬送、撹拌、可塑化及び混練し、可塑化後はワイゼンベルグ効果を伴い、その回転中心部に圧送するスクロール72と、このスクロール72を回転駆動する図示しないスクロール駆動機構とを備えている。
【0046】
図8に示すように、スクロール72は、略短円柱状をなす回転体であり、その回転体側面(スクロール側面)からバレル71に対向する面(スクロール作用面)に螺旋溝72aが形成されている。この螺旋溝72aは、中央の回転軸の近傍までスクロール72の回転方向に従って縮小するように形成され、その裏面にスクロール駆動機構が連結されるように構成されている。スクロール作用面に形成されている螺旋溝72aは送溝(混練溝)72a、スクロール側面に形成されている螺旋溝72aは掻込溝(案内溝)72aと称される。即ち、螺旋溝72aは、送溝72aと掻込溝72aとによって構成されている。
【0047】
スクロール72のスクロール作用面とバレル71とは密接摺動しており、このバレル71からの熱で可塑化した溶融樹脂が送溝72aから漏れないように構成されている。溶融樹脂はこの送溝72aに沿ってスクロール72の中心部に向かって圧送される。
【0048】
バレル71は略円盤状に形成されており、その内部に図示しない電気ヒータが収容されて内部加熱可能に構成されている。また、熱電対等の温度計測器が取付け可能となっている。具体的には、バレル71に埋設されているヒータへの通電を制御することによって、バレル71の温度が樹脂の融点温度以上かつスクロール72の温度がバレル71の温度以下又は樹脂の融点以下となるように調整している。
【0049】
バレル71のスクロール作用面と接する面には、中心に向かって円弧状に収束する3つの凹溝71aが設けられており、これら凹溝71aとスクロール12側の送溝72aとによって溶融樹脂がスクロール72の中心部に向かって圧送されるように構成されている。
【0050】
スクロール72及びバレル71は、本実施形態では鉄系の金属材料で構成されているが、これに限らず、例えば、真鍮、又はポリテトラフロロエチレン若しくはポリピロメリットイミド等の耐熱性の高い高分子樹脂を材料として形成しても良い。
【0051】
スクロール駆動機構は図示されていないが、サーボモータと、このサーボモータによって駆動されるウォームギアと、このウォームギアに噛合したウォームホイールとを備えており、このウォームホイールがスクロール72と同軸に連結されている。これにより、サーボモータの回転がウォームギア及びウォームホイールにより減速されながらスクロール72に伝達され、このスクロール72が回転するように構成されている。サーボモータの回転及び停止、さらにその停止位置は、図示しないロータリエンコーダによって検知されたスクロール72の回転角に応じて制御されるように構成されている。その結果、スクロール72の回転停止位置、即ち後述する逆流阻止機構90の弁体91の回転停止位置、が精密に制御される。
【0052】
逆流阻止機構90は、スクロール72の回転中心部においてその回転軸と同軸となるようにこのスクロール72に一体化されており、このスクロール72と共に回転する弁体91と、バレル71に一体化されており弁体91と摺動状態で係合すると共に非回転で静止している弁座92とを備えている。弁体91には、本実施形態においては、弁体91の回転軸方向の先端面と径方向の側面とに3つの弁体溝91aが形成されており、弁座92には、本実施形態においては、弁体91の回転軸方向の先端面と対向する位置に3つの弁座溝92aが形成されている。これら3つの弁体溝91aは、弁体91の第1の回転位置において3つの弁座溝92aとそれぞれ対向状態となり、可塑化部70と計量射出部80との間を連通する流路を形成する。また、これら3つの弁体溝91aは、弁体91の第1の回転位置とは異なる第2の回転位置において、3つの弁座溝92aと非対向状態となり、可塑化部70と計量射出部80との間を連通する流路を遮断するように構成されている。弁体91の回転位置が第1の回転位置と第2の回転位置との間にある場合は、3つの弁体溝91aは、3つの弁座溝92aと一部対向した状態となり、可塑化部70と計量射出部80との間を連通する流路は一部のみ開成される。
【0053】
なお、弁体溝や弁座溝の大きさ(深さ、幅、径等)は成形材料の粘度等に応じて規定される。弁体溝や弁座溝の数は、本実施形態のごとく3つに限定されるものではなく、1つ以上であればいくつであっても良い。ただし、弁体溝や弁座溝の数が多すぎると、構造が複雑となるのみならず、各弁体溝及び各弁座溝の大きさが小さくなるので、内壁との摩擦によって成形材料がスムーズに流れるようにその粘度に応じて設定する。弁体溝や弁座溝の数が少なすぎると、計量射出部80への材料の供給が間欠的となりスムーズに流れない場合もあり得る。
【0054】
計量射出部80はバレル71内に形成されている。即ち、図7に示すように、計量射出部80は、バレル71内に設けられた射出シリンダ81と、この射出シリンダ81内にピストン運動可能に挿入された射出プランジャ82と、射出シリンダ81から主として構成されるチャンバ83とを備えている。
【0055】
金型部100は、可動ダイプレート101に取り付けられる可動金型ピース102と、固定ダイプレート103に取り付けられる固定金型ピース104とから構成されるカセット金型である。可動金型ピース102及び固定金型ピース104間に成形される製品の形状を有するキャビティが形成される。固定金型ピース104には、ホットランナノズル105が挿嵌されるランナ受穴が形成されている。
【0056】
ホットランナノズル105は、内部に溶融樹脂が流動する樹脂流路が形成された筒体からなるもので、先端部が可動金型ピース102とのパーティングラインに臨んで固定金型ピース104の内部に挿入されている。このホットランナノズル105は、ヒータが内蔵されており、その後端部は、計量射出部80から射出された溶融樹脂が供給される樹脂供給路に接続されている。
【0057】
次に、本実施形態における射出成形装置の動作について説明する。
【0058】
図示しない材料投入孔から投入されたペレット状の熱可塑化性樹脂は、バレル71によって加熱されて溶融すると共に、回転しているスクロール72によってバレル71及びスクロール72間の送溝72a内を流動しつつさらに軟化溶融が進行し、圧力上昇を伴ってその中心部へ圧送される。
【0059】
圧送された溶融樹脂は、逆流阻止機構90の弁体91及び弁座92によって間欠的に開成される流路を通って計量射出部80のチャンバ83内に送り込まれる。即ち、スクロール72が回転している状態においては、図7(A)及び図10(A)に示すように弁体91の回転位置が第1の回転位置にある際は弁体溝91aが弁座92の弁座溝92aに一致して、可塑化部70から計量射出部80への流路が開成され、図7(B)及び図10(B)に示すように弁体91の回転位置がこの第1の回転位置と異なる第2の回転位置にある際は弁体溝91aが弁座92の弁座溝92aに一致せず、可塑化部70から計量射出部80への流路が閉成される。弁体91の回転位置が第1の回転位置と第2の回転位置との間にある場合は、可塑化部70から計量射出部80への流路が一部のみ開成される。従って、流路が開成している間のみ、溶融樹脂が可塑化部70から計量射出部80へ送り込まれることとなる。
【0060】
計量射出部80へ送り込まれた溶融樹脂は、射出シリンダ81を含むチャンバ83内に貯留される。この場合、図7(A)に示すように、溶融樹脂によって、射出プランジャ82が外方向へ押し出される。
【0061】
計量射出部80への圧送が終了した時点で、スクロール72の回転が停止される。この回転停止位置は、逆流阻止機構90の弁体91の回転停止位置が第2の回転位置となるように、精密に制御される。この状態では、上述したように、弁体溝91aが弁座溝92aに一致せず、可塑化部70から計量射出部80への流路が閉成される。
【0062】
このように、逆流阻止機構90により、可塑化部70から計量射出部80への流路が閉成された状態で、射出プランジャ82を押し戻し駆動することにより、チャンバ83内に貯留された溶融樹脂が、ホットランナノズル105を介して金型部100内のキャビティへ計量射出され、これによって成形が行われる。
【0063】
以上詳細に説明したように、本実施形態によれば、可塑化及び圧送工程を実行している際は、スクロール72と共に弁体91が回転しているため、弁体溝91aは第1の回転位置において流路を連通させること及び第2の回転位置において流路を遮断させることを繰り返す。これにより、流路が連通している間に溶融樹脂が可塑化部70から計量射出部80へ送られる。可塑化及び圧送工程を終了する際には、スクロール72の回転停止位置を、ロータリエンコーダ等の回転角センサを用いて第2の回転位置に正確に制御する。これにより、流路が遮断されて、可塑化部70と計量射出部80とは完全に遮断される。その結果、溶融樹脂を金型部100のキャビティ内へ計量射出する次の工程において、その溶融樹脂の逆流発生することはなくなり、溶融樹脂の溶融状態や圧力値に依存しない安定した計量制御を行うことができ、精密な成形を行うことができる。
【0064】
図11は本発明の射出成形装置のさらに他の実施形態におけるバレル及びスクリュ部分の構成を概略的に示しており、図12は本実施形態における逆流阻止機構の弁体溝及び弁座溝の係合状態をA−A線断面及びB−B線断面で示している。ただし、図11及び図12において、(A)は弁体が第1の回転位置にある場合、(B)は弁体が第2の回転位置にある場合である。
【0065】
なお、本実施形態の射出成形装置はホットランナノズルを備えたホットランナ金型式の射出成形装置であっても、コールドランナ金型式の射出成形装置であっても良い。また、本実施形態においては、材料に熱可塑化性樹脂を用いる場合を例として説明するが、熱硬化性樹脂、ワックス、バインダ処理されたセラミック・鉄粉を射出成形する場合にも同様に適用することができる。
【0066】
図11(A)及び(B)に示すように、本実施形態の射出成形装置は、インラインスクリュ方式の射出成形機であり、材料である熱可塑化性樹脂を加熱して可塑化させると共に、混練しながら圧送する可塑化部110と、可塑化部110から圧送されてきた樹脂を計量して送出する計量射出部120と、可塑化部110及び計量射出部120間に設けられ、計量射出部120から可塑化部110への溶融樹脂の逆流を遮断する逆流阻止機構130と、計量射出部120により計量送出された材料をキャビティに射出して成形し製品を形成する図示しない金型部とを備えている。
【0067】
可塑化部110は、図示しない材料投入孔から投入されたペレット状の熱可塑化性樹脂を加熱する円筒状のバレル(加熱シリンダ)111と、バレル111に当接しながら回転することにより熱可塑化性樹脂を加熱しながら搬送、撹拌、可塑化及び混練し、前方に圧送すると共に後方に退却可能なスクリュ112と、このスクリュ112を回転駆動する図示しないスクリュ駆動機構とを備えている。
【0068】
スクリュ112は、バレル111の内壁に当接して摺動するねじ山112aとこのねじ山112aで区画されており先端部に向けて次第に浅くなるねじ溝112bとを備えている。
【0069】
スクリュ駆動機構は図示されていないが、サーボモータと、このサーボモータを減速する減速機構とを備えており、この減速機構がスクリュ112と同軸に連結されている。これにより、サーボモータの回転が減速されながらスクリュ112に伝達されて回転するように構成されている。サーボモータの回転及び停止、さらにその停止位置は、図示しないロータリエンコーダによって検知されたスクリュ112の回転角に応じて制御されるように構成されている。その結果、スクリュ112の回転停止位置、即ち後述する逆流阻止機構130の弁体であるスクリュ112の回転停止位置、が精密に制御される。
【0070】
逆流阻止機構130は、スクリュ112の先端部に一体的に形成されておりこのスクリュ112と共に回転する弁体と、バレル111の先端部に一体的に形成されており弁体と摺動状態で係合すると共に非回転で静止している弁座とから構成される。弁体であるスクリュ112の先端部の外周面には、本実施形態においては、スクリュ112の軸方向に沿って伸長し途中で中断している1対の弁体溝131a及び131bが周方向に互いに90度離隔させて4組形成されており、弁座であるバレル111の先端部の内周面には、本実施形態においては、4組の弁体溝131a及び131bと部分的に対向する位置に4つの弁座溝132が形成されている。これら4組の弁体溝131a及び131bは、弁体の第1の回転位置において4つの弁座溝132とそれぞれ対向状態となり、可塑化部110と計量射出部120との間を連通する流路を形成する。また、これら4組の弁体溝131a及び131bは、弁体の第1の回転位置とは異なる第2の回転位置において、4つの弁座溝132と非対向状態となり、可塑化部110と計量射出部120との間を連通する流路を遮断するように構成されている。弁体の回転位置が第1の回転位置と第2の回転位置との間にある場合は、4組の弁体溝131a及び131bは、4つの弁座溝132と一部対向した状態となり、可塑化部110と計量射出部120との間を連通する流路は一部のみ開成される。
【0071】
なお、弁体溝や弁座溝の大きさ(深さ、幅、径等)は成形材料の粘度等に応じて規定される。弁体溝や弁座溝の数は、本実施形態のごとく4つに限定されるものではなく、1つ以上であればいくつであっても良い。ただし、弁体溝や弁座溝の数が多すぎると、構造が複雑となるのみならず、各弁体溝及び各弁座溝の大きさが小さくなるので、内壁との摩擦によって成形材料がスムーズに流れるようにその粘度に応じて設定する。弁体溝や弁座溝の数が少なすぎると、計量射出部120への材料の供給が間欠的となりスムーズに流れない場合もあり得る。
【0072】
計量射出部120は、スクリュ112の先端112cとバレル111の先端部の内壁111aとの間に形成される。バレル111の先端には溶融樹脂が射出されるノズル111bが設けられている。
【0073】
図示されていない金型部は、可動金型ピースと、固定金型ピースとから構成されており、これら可動金型ピース及び固定金型ピース間に成形される製品の形状を有するキャビティが形成される。
【0074】
次に、本実施形態における射出成形装置の動作について説明する。
【0075】
図示しない材料投入孔から投入されたペレット状の熱可塑化性樹脂は、バレル111によって加熱されて溶融すると共に、回転しているスクリュ112によってバレル111及びスクリュ112間のねじ溝112b内を流動しつつさらに軟化溶融が進行し、ねじ溝112bの深さが浅くなることによる圧力上昇を伴ってその先端部へ圧送される。
【0076】
圧送された溶融樹脂は、逆流阻止機構130の弁体溝131a及び131b並びに弁座溝132によって間欠的に開成される流路を通って計量射出部120内に送り込まれる。即ち、スクリュ112が回転している状態においては、図11(A)及び図12(A)に示すように弁体であるスクリュ112の回転位置が第1の回転位置にある際は弁体溝131a及び131bが弁座の弁座溝132に一致して、弁体溝131bから弁座溝132を通って弁体溝131aという経路の可塑化部110から計量射出部120への流路が開成され、図11(B)及び図12(B)に示すようにスクリュ112の回転位置がこの第1の回転位置と異なる第2の回転位置にある際は弁体溝131a及び131bが弁座溝132に連通せず、可塑化部110から計量射出部120への流路が閉成される。スクリュ112の回転位置が第1の回転位置と第2の回転位置との間にある場合は、可塑化部110から計量射出部120への流路が一部のみ開成される。従って、流路が開成している間のみ、溶融樹脂が可塑化部110から計量射出部120へ送り込まれることとなる。これによって、図11(B)に示すように、スクリュ112が外方向に押し出され、送り込まれた溶融樹脂は計量射出部120内に貯留される。
【0077】
計量射出部120への圧送が終了した時点で、スクリュ112の回転が停止される。この回転停止位置は、逆流阻止機構130の弁体の回転停止位置が第2の回転位置となるように、精密に制御される。この状態では、上述したように、弁体溝131a及び131bが弁座溝132に連通せず、可塑化部110から計量射出部120への流路が閉成される。
【0078】
このように、逆流阻止機構130により、可塑化部110から計量射出部120への流路が閉成された状態で、スクリュ112を非回転状態で計量射出部120の方向へ押し戻し駆動することにより、計量射出部120内に貯留された溶融樹脂が、ノズル111bを介して金型部内のキャビティへ計量射出され、これによって成形が行われる。
【0079】
以上詳細に説明したように、本実施形態によれば、可塑化及び圧送工程を実行している際は、弁体であるスクリュ112が回転しているため、弁体溝131a及び131bは第1の回転位置において流路を連通させること及び第2の回転位置において流路を遮断させることを繰り返す。これにより、流路が連通している間に溶融樹脂が可塑化部110から計量射出部120へ送られる。可塑化及び圧送工程を終了する際には、スクリュ112の回転停止位置を、ロータリエンコーダ等の回転角センサを用いて第2の回転位置に正確に制御する。これにより、流路が遮断されて、可塑化部110と計量射出部120とは完全に遮断される。その結果、溶融樹脂を金型部のキャビティ内へ計量射出する次の工程において、その溶融樹脂の逆流発生することはなくなり、溶融樹脂の溶融状態や圧力値に依存しない安定した計量制御を行うことができ、精密な成形を行うことができる。
【0080】
図13は図11の実施形態の変更態様における逆流阻止機構の弁体溝及び弁座溝の係合状態を示しており、(A)は弁体が第1の回転位置にある場合、(B)は弁体が第2の回転位置にある場合を示している。
【0081】
本変更態様は、逆流阻止機構におけるスクリュ112′の弁体溝131b′の数及びバレル111′の弁座溝132′の数が図11の実施形態の場合と異なっており、かつ、大きさ(深さ、幅、径等)が小さくなっている。本変更態様のその他の構成及び作用効果は図11の実施形態の場合と同様であり、同一の構成要素については同じ参照符号を用いている。
【0082】
図14は本発明の射出成形装置のまたさらに他の実施形態におけるバレル及びスクリュ部分の構成を概略的に示しており、図15は本実施形態における逆流阻止機構の弁体溝及び弁座溝の係合状態をA−A線断面で示している。ただし、図14において、(A)はバレル、スクリュ及び射出プランジャを、(B)はスクリュ及び射出プランジャを、(C)は射出プランジャのみを示している。また、図15において、(A)は弁体が第1の回転位置にある場合、(B)は弁体が第2の回転位置にある場合である。
【0083】
なお、本実施形態の射出成形装置はホットランナノズルを備えたホットランナ金型式の射出成形装置であっても、コールドランナ金型式の射出成形装置であっても良い。また、本実施形態においては、材料に熱可塑化性樹脂を用いる場合を例として説明するが、熱硬化性樹脂、ワックス、バインダ処理されたセラミック・鉄粉を射出成形する場合にも同様に適用することができる。
【0084】
図14(A)、(B)及び(C)に示すように、本実施形態の射出成形装置は、インラインスクリュ方式の射出成形機であり、材料である熱可塑化性樹脂を加熱して可塑化させると共に、混練しながら圧送する可塑化部140と、可塑化部140から圧送されてきた樹脂を計量して送出する計量射出部150と、可塑化部140及び計量射出部150間に設けられ、計量射出部150から可塑化部140への溶融樹脂の逆流を遮断する逆流阻止機構160と、計量射出部150により計量送出された材料をキャビティに射出して成形し製品を形成する図示しない金型部とを備えている。
【0085】
可塑化部140は、図示しない材料投入孔から投入されたペレット状の熱可塑化性樹脂を加熱する円筒状のバレル(加熱シリンダ)141と、バレル141に当接しながら回転することにより熱可塑化性樹脂を加熱しながら搬送、撹拌、可塑化及び混練し、前方に圧送するスクリュ142と、このスクリュ142を回転駆動する図示しないスクリュ駆動機構とを備えている。
【0086】
スクリュ142は、バレル141の内壁に当接して摺動するねじ山142aとこのねじ山142aで区画されており先端部に向けて次第に浅くなるねじ溝142bとを備えている。
【0087】
スクリュ駆動機構は図示されていないが、サーボモータと、このサーボモータを減速する減速機構とを備えており、この減速機構がスクリュ142と同軸に連結されている。これにより、サーボモータの回転が減速されながらスクリュ142に伝達されて回転するように構成されている。サーボモータの回転及び停止、さらにその停止位置は、図示しないロータリエンコーダによって検知されたスクリュ142の回転角に応じて制御されるように構成されている。その結果、スクリュ142の回転停止位置、即ち後述する逆流阻止機構160の弁体であるスクリュ142の回転停止位置、が精密に制御される。
【0088】
逆流阻止機構160は、スクリュ142の先端部に一体的に形成されておりこのスクリュ142と共に回転する弁体と、バレル141の先端部に一体的に形成されており弁体と摺動状態で係合すると共に非回転で静止している弁座とから構成される。弁体であるスクリュ112の先端部の外周面には、本実施形態においては、スクリュ112の軸方向に沿って伸長し途中で中断している1対の弁体溝161a及び161bが周方向に互いに90度離隔させて4組形成されており、弁座であるバレル141の先端部の内周面には、本実施形態においては、4組の弁体溝161a及び161bと部分的に対向する位置に4つの弁座溝162が形成されている。これら4組の弁体溝161a及び161bは、弁体の第1の回転位置において4つの弁座溝162とそれぞれ対向状態となり、可塑化部140と計量射出部150との間を連通する流路を形成する。また、これら4組の弁体溝161a及び161bは、弁体の第1の回転位置とは異なる第2の回転位置において、4つの弁座溝162と非対向状態となり、可塑化部140と計量射出部150との間を連通する流路を遮断するように構成されている。弁体の回転位置が第1の回転位置と第2の回転位置との間にある場合は、4組の弁体溝161a及び161bは、4つの弁座溝162と一部対向した状態となり、可塑化部140と計量射出部150との間を連通する流路は一部のみ開成される。
【0089】
なお、弁体溝や弁座溝の大きさ(深さ、幅、径等)は成形材料の粘度等に応じて規定される。弁体溝や弁座溝の数は、本実施形態のごとく4つに限定されるものではなく、1つ以上であればいくつであっても良い。ただし、弁体溝や弁座溝の数が多すぎると、構造が複雑となるのみならず、各弁体溝及び各弁座溝の大きさが小さくなるので、内壁との摩擦によって成形材料がスムーズに流れるようにその粘度に応じて設定する。弁体溝や弁座溝の数が少なすぎると、計量射出部150への材料の供給が間欠的となりスムーズに流れない場合もあり得る。
【0090】
計量射出部150は、スクリュ142の内部における射出プランジャ151の先端部151aとバレル141の先端部の内壁141aとの間に形成される。バレル141の先端には溶融樹脂が射出されるノズル141bが設けられている。本実施形態においては、さらに、スクリュ142の内部には、射出プランジャ151がこのスクリュ142と同軸に設けられている。この射出プランジャ151はその軸に沿ってスクリュ142内を摺動可能に構成されている。
【0091】
図示されていない金型部は、可動金型ピースと、固定金型ピースとから構成されており、これら可動金型ピース及び固定金型ピース間に成形される製品の形状を有するキャビティが形成される。
【0092】
次に、本実施形態における射出成形装置の動作について説明する。
【0093】
図示しない材料投入孔から投入されたペレット状の熱可塑化性樹脂は、バレル141によって加熱されて溶融すると共に、回転しているスクリュ142によってバレル141及びスクリュ142間のねじ溝142b内を流動しつつさらに軟化溶融が進行し、ねじ溝142bの深さが浅くなることによる圧力上昇を伴ってその先端部へ圧送される。
【0094】
圧送された溶融樹脂は、逆流阻止機構160の弁体溝161a及び161b並びに弁座溝162によって間欠的に開成される流路を通って計量射出部150内に送り込まれる。即ち、スクリュ142が回転している状態においては、図14(A)及び図15(A)に示すように弁体であるスクリュ142の回転位置が第1の回転位置にある際は弁体溝161a及び161bが弁座の弁座溝162に一致して、弁体溝161bから弁座溝162を通って弁体溝161aという経路の可塑化部140から計量射出部150への流路が開成され、図14(B)及び図15(B)に示すようにスクリュ142の回転位置がこの第1の回転位置と異なる第2の回転位置にある際は弁体溝161a及び161bが弁座溝162に連通せず、可塑化部140から計量射出部150への流路が閉成される。スクリュ142の回転位置が第1の回転位置と第2の回転位置との間にある場合は、可塑化部140から計量射出部150への流路が一部のみ開成される。従って、流路が開成している間のみ、溶融樹脂が可塑化部140から計量射出部150へ送り込まれることとなる。これによって、射出プランジャ151が外方向に押し出され、送り込まれた溶融樹脂はスクリュ142の内部における計量射出部150内に貯留される。
【0095】
計量射出部150への圧送が終了した時点で、スクリュ142の回転が停止される。この回転停止位置は、逆流阻止機構160の弁体の回転停止位置が第2の回転位置となるように、精密に制御される。この状態では、上述したように、弁体溝161a及び161bが弁座溝162に連通せず、可塑化部140から計量射出部150への流路が閉成される。
【0096】
このように、逆流阻止機構160により、可塑化部140から計量射出部150への流路が閉成された状態で、図示しないプランジャ駆動機構の作動によって射出プランジャ151を計量射出部150の方向へ押し戻し駆動することにより、計量射出部150内に貯留された溶融樹脂が、ノズル141bを介して金型部内のキャビティへ計量射出され、これによって成形が行われる。
【0097】
以上詳細に説明したように、本実施形態によれば、可塑化及び圧送工程を実行している際は、弁体であるスクリュ142が回転しているため、弁体溝161a及び161bは第1の回転位置において流路を連通させること及び第2の回転位置において流路を遮断させることを繰り返す。これにより、流路が連通している間に溶融樹脂が可塑化部140から計量射出部150へ送られる。可塑化及び圧送工程を終了する際には、スクリュ142の回転停止位置を、ロータリエンコーダ等の回転角センサを用いて第2の回転位置に正確に制御する。これにより、流路が遮断されて、可塑化部140と計量射出部150とは完全に遮断される。その結果、溶融樹脂を金型部のキャビティ内へ計量射出する次の工程において、その溶融樹脂の逆流発生することはなくなり、溶融樹脂の溶融状態や圧力値に依存しない安定した計量制御を行うことができ、精密な成形を行うことができる。
【0098】
図16は図14の実施形態の変更態様における逆流阻止機構の弁体溝及び弁座溝の係合状態を示しており、(A)は弁体が第1の回転位置にある場合、(B)は弁体が第2の回転位置にある場合を示している。
【0099】
本変更態様は、逆流阻止機構におけるスクリュ142′の弁体溝161b′の数及びバレル141′の弁座溝162′の数が図14の実施形態の場合と異なっており、かつ、大きさ(深さ、幅、径等)が小さくなっている。本変更態様のその他の構成及び作用効果は図14の実施形態の場合と同様であり、同一の構成要素については同じ参照符号を用いている。
【0100】
図17は本発明の射出成形装置のさらに他の実施形態におけるバレル及びスクリュ部分の構成を概略的に示しており、図18は本実施形態における逆流阻止機構の弁体溝及び弁座溝の係合状態をA−A線断面で示している。ただし、図18において、(A)は弁体が第1の回転位置にある場合、(B)は弁体が第2の回転位置にある場合である。
【0101】
なお、本実施形態の射出成形装置はホットランナノズルを備えたホットランナ金型式の射出成形装置であっても、コールドランナ金型式の射出成形装置であっても良い。また、本実施形態においては、材料に熱可塑化性樹脂を用いる場合を例として説明するが、熱硬化性樹脂、ワックス、バインダ処理されたセラミック・鉄粉を射出成形する場合にも同様に適用することができる。
【0102】
図17に示すように、本実施形態の射出成形装置は、インラインスクリュ方式の射出成形機であり、材料である熱可塑化性樹脂を加熱して可塑化させると共に、混練しながら圧送する可塑化部170と、可塑化部170から圧送されてきた樹脂を計量して送出する計量射出部180と、可塑化部170及び計量射出部180間に設けられ、計量射出部180から可塑化部170への溶融樹脂の逆流を遮断する逆流阻止機構190と、計量射出部180により計量送出された材料をキャビティに射出して成形し製品を形成する図示しない金型部とを備えている。
【0103】
可塑化部170は、図示しない材料投入孔から投入されたペレット状の熱可塑化性樹脂を加熱する円筒状のバレル(加熱シリンダ)171と、バレル171に当接しながら回転することにより熱可塑化性樹脂を加熱しながら搬送、撹拌、可塑化及び混練し、前方に圧送するスクリュ172と、このスクリュ172を回転駆動する図示しないスクリュ駆動機構とを備えている。
【0104】
スクリュ172は、バレル171の内壁に当接して摺動するねじ山172aとこのねじ山172aで区画されており先端部に向けて次第に浅くなるねじ溝172bとを備えている。
【0105】
スクリュ駆動機構は図示されていないが、サーボモータと、このサーボモータを減速する減速機構とを備えており、この減速機構がスクリュ172と同軸に連結されている。これにより、サーボモータの回転が減速されながらスクリュ172に伝達されて回転するように構成されている。サーボモータの回転及び停止、さらにその停止位置は、図示しないロータリエンコーダによって検知されたスクリュ172の回転角に応じて制御されるように構成されている。その結果、スクリュ172の回転停止位置、即ち後述する逆流阻止機構190の弁体であるスクリュ172の回転停止位置、が精密に制御される。
【0106】
逆流阻止機構190は、スクリュ172の先端部に一体的に形成されておりこのスクリュ172と共に回転する弁体と、バレル171の先端部に一体的に形成されており弁体と摺動状態で係合すると共に非回転で静止している弁座とから構成される。弁体であるスクリュ172の先端部の外周面には、本実施形態においては、スクリュ172の軸方向に沿って伸長し途中で中断している1対の弁体溝191a及び191bが周方向に互いに90度離隔させて4組形成されており、弁座であるバレル171の先端部の内周面には、本実施形態においては、4組の弁体溝191a及び191bと部分的に対向する位置に4つの弁座溝192が形成されている。これら4組の弁体溝191a及び191bは、弁体の第1の回転位置において4つの弁座溝192とそれぞれ対向状態となり、可塑化部170と計量射出部180との間を連通する流路を形成する。また、これら4組の弁体溝191a及び191bは、弁体の第1の回転位置とは異なる第2の回転位置において、4つの弁座溝192と非対向状態となり、可塑化部170と計量射出部180との間を連通する流路を遮断するように構成されている。弁体の回転位置が第1の回転位置と第2の回転位置との間にある場合は、4組の弁体溝191a及び191bは、4つの弁座溝192と一部対向した状態となり、可塑化部170と計量射出部180との間を連通する流路は一部のみ開成される。
【0107】
なお、弁体溝や弁座溝の大きさ(深さ、幅、径等)は成形材料の粘度等に応じて規定される。弁体溝や弁座溝の数は、本実施形態のごとく4つに限定されるものではなく、1つ以上であればいくつであっても良い。ただし、弁体溝や弁座溝の数が多すぎると、構造が複雑となるのみならず、各弁体溝及び各弁座溝の大きさが小さくなるので、内壁との摩擦によって成形材料がスムーズに流れるようにその粘度に応じて設定する。弁体溝や弁座溝の数が少なすぎると、計量射出部180への材料の供給が間欠的となりスムーズに流れない場合もあり得る。
【0108】
計量射出部180は、バレル171とは先端部が流路182cを介して連通する射出シリンダ182の先端部の内壁182aと射出プランジャ181の先端部181aとの間に形成される。射出シリンダ182の先端には溶融樹脂が射出されるノズル182bが設けられている。射出プランジャ181は射出シリンダ182と同軸に設けられており、その軸に沿ってこの射出シリンダ182内を摺動可能に構成されている。
【0109】
図示されていない金型部は、可動金型ピースと、固定金型ピースとから構成されており、これら可動金型ピース及び固定金型ピース間に成形される製品の形状を有するキャビティが形成される。
【0110】
次に、本実施形態における射出成形装置の動作について説明する。
【0111】
図示しない材料投入孔から投入されたペレット状の熱可塑化性樹脂は、バレル171によって加熱されて溶融すると共に、回転しているスクリュ172によってバレル171及びスクリュ172間のねじ溝172b内を流動しつつさらに軟化溶融が進行し、ねじ溝172bの深さが浅くなることによる圧力上昇を伴ってその先端部へ圧送される。
【0112】
圧送された溶融樹脂は、逆流阻止機構190の弁体溝191a及び191b並びに弁座溝192によって間欠的に開成される流路を通りさらに流路182cを通って計量射出部180内に送り込まれる。即ち、スクリュ172が回転している状態においては、図17及び図18(A)に示すように弁体であるスクリュ172の回転位置が第1の回転位置にある際は弁体溝191a及び191bが弁座の弁座溝192に一致して、弁体溝191bから弁座溝192を通って弁体溝191aという経路の可塑化部170から計量射出部180への流路が開成され、図17及び図18(B)に示すようにスクリュ172の回転位置がこの第1の回転位置と異なる第2の回転位置にある際は弁体溝191a及び191bが弁座溝192に連通せず、可塑化部170から計量射出部180への流路が閉成される。スクリュ172の回転位置が第1の回転位置と第2の回転位置との間にある場合は、可塑化部170から計量射出部180への流路が一部のみ開成される。従って、流路が開成している間のみ、溶融樹脂が可塑化部170から計量射出部180へ送り込まれることとなる。これによって、射出プランジャ181が外方向に押し出され、送り込まれた溶融樹脂はスクリュ172の内部における計量射出部180内に貯留される。
【0113】
計量射出部180への圧送が終了した時点で、スクリュ172の回転が停止される。この回転停止位置は、逆流阻止機構190の弁体の回転停止位置が第2の回転位置となるように、精密に制御される。この状態では、上述したように、弁体溝191a及び191bが弁座溝192に連通せず、可塑化部170から計量射出部180への流路が閉成される。
【0114】
このように、逆流阻止機構190により、可塑化部170から計量射出部180への流路が閉成された状態で、図示しないプランジャ駆動機構の作動によって射出プランジャ181を計量射出部180の方向へ押し戻し駆動することにより、計量射出部180内に貯留された溶融樹脂が、ノズル182bを介して金型部内のキャビティへ計量射出され、これによって成形が行われる。
【0115】
以上詳細に説明したように、本実施形態によれば、可塑化及び圧送工程を実行している際は、弁体であるスクリュ172が回転しているため、弁体溝191a及び191bは第1の回転位置において流路を連通させること及び第2の回転位置において流路を遮断させることを繰り返す。これにより、流路が連通している間に溶融樹脂が可塑化部170から計量射出部180へ送られる。可塑化及び圧送工程を終了する際には、スクリュ172の回転停止位置を、ロータリエンコーダ等の回転角センサを用いて第2の回転位置に正確に制御する。これにより、流路が遮断されて、可塑化部170と計量射出部180とは完全に遮断される。その結果、溶融樹脂を金型部のキャビティ内へ計量射出する次の工程において、その溶融樹脂の逆流発生することはなくなり、溶融樹脂の溶融状態や圧力値に依存しない安定した計量制御を行うことができ、精密な成形を行うことができる。
【0116】
図19は図17の実施形態の変更態様における逆流阻止機構の弁体溝及び弁座溝の係合状態を示しており、(A)は弁体が第1の回転位置にある場合、(B)は弁体が第2の回転位置にある場合を示している。
【0117】
本変更態様は、逆流阻止機構におけるスクリュ172′の弁体溝191b′の数及びバレル171′の弁座溝192′の数が図17の実施形態の場合と異なっており、かつ、大きさ(深さ、幅、径等)が小さくなっている。本変更態様のその他の構成及び作用効果は図17の実施形態の場合と同様であり、同一の構成要素については同じ参照符号を用いている。
【0118】
以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【符号の説明】
【0119】
10、70、110、140、170 可塑化部
11、71、111、111′、141、141′、171、171′ バレル
11a、71a 凹溝
12、72 スクロール
12a 螺旋溝
12a、72a 送溝(混練溝)
12a、72a 掻込溝(案内溝)
20、80、120、150、180 計量射出部
21、81、182 射出シリンダ
22、82、151、181 射出プランジャ
23、83 チャンバ
30、90、130、160、190 逆流阻止機構
31、31′、91 弁体
31a、31a′、91a、131a、131b、131b′、161a、161b、161b′、191a、191b、191b′ 弁体溝
32、92 弁座
32a、92a、132、132′、162、162′、192、192′ 弁座溝
40、100 金型部
41、101 可動ダイプレート
42、102 可動金型ピース
43、103 固定ダイプレート
44、104 固定金型ピース
45、105 ホットランナノズル
111a、141a、182a 内壁
111b、141b、182b ノズル
112、112′、142、142′ スクリュ
112a、142a ねじ山
112b、142b ねじ溝
112c、181a 先端
151a 先端部
182c 流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バレルに対するスクロール又はスクリュの回転によって材料を可塑化及び圧送する可塑化部と、該可塑化部から送られる材料を金型のキャビティ内へ射出する射出部と、前記可塑化部及び前記射出部間に設けられ該射出部から該可塑化部への材料の逆流を遮断する逆流阻止機構とを備えており、
前記逆流阻止機構が、前記スクロール又はスクリュに回転軸と同軸に一体化されており該スクロール又はスクリュと共に回転する弁体と、前記バレルに一体化されており前記弁体と係合する弁座とを備えており、
前記弁体が少なくとも1つの弁体溝を有すると共に前記弁座が少なくとも1つの弁座溝を有しており、
前記少なくとも1つの弁体溝が、第1の回転位置において前記少なくとも1つの弁座溝と対向状態となって前記可塑化部及び前記射出部間を連通する流路を形成し、前記第1の回転位置とは異なる第2の回転位置において前記少なくとも1つの弁座溝と非対向状態となって前記流路を遮断するように構成されていることを特徴とする射出成形装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの弁体溝が、前記弁体の少なくとも径方向の側面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の射出成形装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの弁座溝が、前記弁体の径方向の側面と対向する位置にのみ形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の射出成形装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの弁体溝が、前記弁体の回転軸方向の先端面に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の射出成形装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの弁座溝が、前記弁体の回転軸方向の先端面と対向する位置にのみ形成されていることを特徴とする請求項4に記載の射出成形装置。
【請求項6】
前記可塑化部が、バレルと、該バレルに対向して回転するスクロールとを備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の射出成形装置。
【請求項7】
前記可塑化部が、円筒形バレルと、該円筒形バレルの内部において該円筒形バレルと同軸に回転するスクリュとを備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の射出成形装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの弁体溝を前記第2の回転位置において回転停止させる回転制御手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の射出成形装置。
【請求項9】
前記回転制御手段が、前記スクロール又はスクリュを回転させる駆動モータと、該スクロール又はスクリュの回転角を検知する回転角センサとを備えており、該回転角センサから得られる回転角に応じて前記駆動モータの駆動停止位置を精密制御するように構成されていることを特徴とする請求項8に記載の射出成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−131115(P2012−131115A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285069(P2010−285069)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000146630)株式会社新興セルビック (11)
【Fターム(参考)】