説明

射出成形金型、導光板ピースの成形方法、および導光板

【課題】導光板を構成するための導光板ピースを変形などゲート仕上げ処理の不要な導光板ピースを成形することができ容易に互いに接合して導光板を構成することができる射出成形金型、導光板ピースの成形方法、および導光板を提供する。
【解決手段】射出成形金型1は、接合面が長手方向に形成され、互いに接合されることにより導光板PPを構成するための導光板ピースPを成形するためのもので、キャビティ2に成形材料を射出充填するためのゲート3が、導光板ピースPの長手方向端部近傍であって導光板ピースPの互いに接合する面Psを除いた面Pr,Pb,Pe1,Pe2と対応する位置に配置されている。さらに、本発明の射出成形金型1は、ゲート3が、導光板ピースPの長手方向の両端部近傍と対応する位置に配置されており、また、キャビティ2がクサビ状の導光板ピースPを成形し得るよう漸次厚さを異ならせた形状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形金型、導光板ピースの成形方法、および導光板に関し、特に、接合面が長手方向に形成されており、前記接合面が互いに接合されることにより導光板を構成するための導光板ピースを成形する射出成形金型、金型のキャビティに成形材料を射出充填することにより、接合面が長手方向に形成され、前記接合面が互いに接合されることにより導光板を構成するための導光板ピースの成形方法、および、射出成形金型のキャビティによって接合面が長手方向に形成された導光板ピースの前記接合面を互いに接合してなる導光板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば液晶テレビなど、液晶表示装置においては、その裏面に光源からの光を導くために、バックライトを構成する導光板が配設されている。導光板は、輝度ムラがなく均一な面状に発光することが要求される。導光板は一般に、射出成形金型内に形成されたキャビティに合成樹脂を射出充填することにより成形されている。
【0003】
ところで、近年においては、液晶テレビの画面が大型化する傾向にあり、たとえば有効可視領域Vが50インチ以上のものも一般に製造されるようになっている。このような大型の液晶表示装置では、導光板を所謂1枚もので射出成形しようとすると、金型も射出装置も大型化し、また、成形後の歪が大きくなるなどの問題が発生する。そのため、図6および図7に示すように、接合面が長手方向に形成されており断面矩形の柱状または棒状の導光板ピースPを複数成形し、この導光板ピースPの接合面を互いに接合することにより導光板PPを構成することが知られている。このようにして構成された導光板は一般にタンデム型と呼ばれている。図6に示した例では、各導光板ピースPの長手方向の一方の端面に隣接してLEDなどの発光手段が設けられている。そして、各導光板ピースPは、図5に参照されるように、長手方向の一方端から他方端に向かって漸次厚さが厚くなるかまたは薄くなるよう異ならせたクサビ状に成形されている。たとえば有効可視領域V(図6)が52インチ程度の液晶表示装置の場合には、導光板ピースPは、図7に参照されるように、長さLが1223mm、幅Wが70mm、薄肉側の端部Pe1’の厚さT1が2.5mm、厚肉側の端部Pe2’の厚さT2が5.0mmで成形される。図7に参照されるように、導光板ピースPの傾斜した下面(裏面Pb’)が反射面となり、図7における水平方向に延びた上面(表面Pr’)が出光面となる。反射面には、必要に応じて反射層が設けられる。そして、反射面と出光面とに隣接する台形形状の側面Ps’は、複数の導光板ピースPを並べて互いに接合する接合面となる。また、厚肉側の端面Pe2’が発光手段からの光を導入する入光面となる。なお、図6では、導光板ピースPの端面Pe2から発光手段による光を導入するよう構成された場合(端面側ライトタイプと称する)を示したが、均一な厚さで成形してなる導光板ピースによって構成された導光板PPの裏面に発光手段を配設し、導光板PPの表面と裏面の少なくと一方が光を拡散させるように構成された所謂裏面側ライトと呼ばれるタイプのものもある。
【0004】
タンデム型の導光板に関する従来の技術としては、たとえば特許文献1〜3が知られている。特許文献1には、複数の導光棒から構成される積層体と、前記積層体の端面から光を入射する光源と、前記積層体の端面から入射された光を前記積層体の発行面から出光させるための光偏向手段とを有する面発光装置が開示されている。特許文献2には線光源から出た光を面光源に変換させるための導光板であって、一側面が光入射面である中実な透明板であり、前記透明板の内部は、前記入射面に対して傾斜した複数の傾斜面で区画されており、前記各傾斜面は、部分反射コーティングされていることなどを特徴とするバックライトユニット用の導光板が開示されている。特許文献3には、導光板の接合面には接着剤を埋め込み、2枚の導光板の境目が光学的に不均一性が生じないように接合することなどが開示されている(0025)。
【0005】
従来の一般的な導光板ピースP’を成形するための技術は、図7に示すように、射出成形金型のキャビティ2’は、成形する導光板ピースP’の形状に応じた形状に形成される。そして、射出成形金型1’のキャビティ2’は、成形効率を向上させるなどの目的で、一度の成形サイクルで複数個取りできるように構成されている。すなわち、従来の技術では一般に、図7に示したように、射出成形金型1’の内部に複数のキャビティ2’を形成している。そして、従来の技術では一般に、成形材料をランナ38’からキャビティ2’内に導入するゲート3’が、導光板ピースP’の互いに接合されることとなる側面Ps’と対応する位置であって、導光板ピースP’の端部Pe’から比較的離れた位置にそれぞれ配設されていた。さらに、従来の技術では一般に、成形材料を射出充填したときに、射出装置のノズルタッチにより可塑化された成形材料が射出充填されるスプール36’から各キャビティ2’のゲート3’へと成形材料を流通させるランナ38’をキャビティ2’と共に冷却して、これらの内部の成形材料を固化させるコールドランナが採用されていた。
【0006】
【特許文献1】特開2007−227074号公報
【特許文献2】特開2006−011445号公報
【特許文献3】特開2000−171641号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図7に示したように、上記従来の技術にあっては、導光板ピースP’の接合面となる側面Ps’と対応する位置にゲート3’が設けられており、しかも、導光板ピースP’の端部Pe’から比較的離して配置されていたため、成形材料が冷却されて収縮する際に、ゲート3’とキャビティ2’内とで冷却収縮のタイミングがずれて、導光板ピースP’の互いに接合される側面Ps’のゲート部P3’が引っ張られることとなることから、図8に示すように、各導光板ピースP’の側面Ps’が平面とならず、弓状に湾曲するよう変形する傾向があった。このように湾曲するよう変形した導光板ピースP’では、平行に配列させて互いの側面Ps’を接合する際に、互いに隣接する導光板ピースP’の接合面となる側面Ps’の間に隙間が生じ、密着しないという問題があった。また、ゲート部P3’が引っ張られた状態で導光板ピースP’が成形されるため、図7に示すように、特にゲート3’の近傍で内部応力が発生することにより、複屈折率が部分的に大きくなることから、均一な輝度を得ることができないという問題や、特に収縮率が大きい厚肉側の端部Pe2’あたりでヒケが生じるという問題があった。さらに、上記従来の技術にあっては、導光板ピースP’の互いに接合される側面Ps’と対応する位置にゲート3’が配設されていたことから、成形された導光板ピースP’の接合面となる側面Ps’のゲート部P3’にゲート痕が形成されるため、導光板ピースP’を互いに接合するに先立って、かかる接合面となる側面Ps’を平坦に仕上げ加工処理をする必要があり、工程数が多く生産効率を向上させることが困難であるという問題があった。
【0008】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたもので、変形させることなくゲート痕などの仕上げ処理の不要な導光板ピースを成形することができ、容易に互いに接合して導光板を構成させることができる射出成形金型を提供することを目的とする。
また、本発明は、上述した問題に鑑みてなされたもので、互いに接合することにより導光板を構成するための導光板ピースを容易に成形することができる方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、上述した問題に鑑みてなされたもので、変形することなくゲート痕などの仕上げ処理の不要な導光板ピースを互いに接合することにより容易に製造することができる構造の導光板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の射出成形金型に係る発明は、上記目的を達成するため、接合面が長手方向に形成されており、前記接合面が互いに接合されることにより導光板を構成するための導光板ピースを成形する射出成形金型であって、キャビティに成形材料を射出充填するためのゲートが、前記導光板ピースの接合面を除いた面における長手方向端部近傍と対応する位置に配置されていることを特徴とするものである。
請求項2の射出成形金型に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明において、前記ゲートが、前記導光板ピースの長手方向の両端部近傍と対応する位置にそれぞれ配置されていることを特徴とするものである。
請求項3の射出成形金型に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項1または2に記載の発明において、前記キャビティが、一方端から他方端に向かって漸次厚さが異なるクサビ状に形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4の導光板ピースの成形方法に係る発明は、上記目的を達成するため、金型のキャビティに成形材料を射出充填することにより、接合面が長手方向に形成され、前記接合面が互いに接合されることにより導光板を構成するための導光板ピースの成形方法であって、前記金型のキャビティに成形材料を導入するためのゲートを、前記導光板ピースの接合面を除いた面における長手方向端部近傍と対応する位置に配置して、該ゲートを介して前記キャビティ内に成形材料を射出充填することを特徴とするものである。
請求項5の導光板ピースの成形方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項4に記載の発明において、キャビティ内に成形材料を射出充填した後に型締する射出圧縮成形または射出プレス成形を行うことを特徴とするものである。
【0011】
請求項6の導光板に係る発明は、上記目的を達成するため、射出成形金型のキャビティによって接合面が長手方向に形成された導光板ピースの前記接合面を互いに接合してなる導光板であって、キャビティに成形材料を射出充填するためのゲートが前記導光板ピースの接合面を除いた面における長手方向端部近傍と対応する位置に配置された射出成形金型により成形された導光板ピースを互いに接合したことを特徴とするものである。
請求項7の導光板に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項6に記載の発明において、各導光板ピースがその一方端から他方端に向かって漸次厚さの異なるクサビ状に成形されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、キャビティに成形材料を射出充填するためのゲートが、前記導光板ピースの接合面を除いた面における長手方向端部近傍と対応する位置に配置されていることにより、成形材料が冷却されたときの収縮により各導光板ピースの接合面が確実に平面に成形されることから、互いの接合面を密着させて確実に接合することができる。
請求項2の発明によれば、請求項1に記載の発明において、前記ゲートが、前記導光板ピースの接合面を除いた面であって、キャビティの長手方向の両端部近傍と対応する位置にそれぞれ配置されていることにより、成形材料が各ゲートを通ってキャビティの長手方向の両端部近傍から内部に適切に射出充填され、しかも、成形材料が固化する際に収縮しても、各導光板ピースの互いに接合される側面が確実に平面に成形されることから、互いの接合面を密着させて確実に接合することができる。
請求項3の発明によれば、請求項1または2に記載の発明において、前記キャビティが、一方端から他方端に向かって漸次厚さが異なるクサビ状に形成されていることにより、導光板ピースが反射面と出光面を有するクサビ状に成形されるため、かかる導光板ピースにより構成された導光板が発光手段から導入された光を確実に反射して出光させることができる導光板ピースの成形が具現化される。
【0013】
請求項4の発明によれば、金型のキャビティに成形材料を導入するためのゲートを、導光板ピースの接合面を除いた面における長手方向端部近傍と対応する位置に配置して、このゲートを介してキャビティ内に成形材料を射出充填することにより。成形材料が冷却されたときに収縮しても、各導光板ピースの接合面が確実に平面に成形されることとなることから、互いの接合面を密着させて確実に接合することができる。
請求項5に記載の発明によれば、請求項4に記載の発明において、キャビティ内に成形材料を射出充填した後に型締する射出圧縮成形または射出プレス成形を行うことにより、導光板ピースを精度よく、特にヒケを発生させることなく、適切に成形することができる。
【0014】
請求項6に記載の発明によれば、導光板ピースを成形する射出成形金型が、キャビティに成形材料を射出充填するためのゲートを導光板ピースの接合面を除いた面における長手方向端部近傍と対応する位置に配置されていることにより、導光板ピースに形成されるゲート痕が接合面を除いた面における長手方向端部近傍に形成されるため、導光板ピースを互いに接合するのに先立って接合面を平坦に成形する工程を行う必要がない。
請求項7に記載の発明によれば、請求項6に記載の発明において、各導光板ピースがその一方端から他方端に向かって漸次厚さの異なるクサビ状に成形されていることにより、導光板ピースにより構成された導光板が発光手段から導入された光を確実に反射して出光させることができる構造の導光板ピースが具現化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
最初に、本発明の射出成形金型の実施の一形態を図1および図2に基づいて説明する。以下の説明および添付の図において、同一符号は同様の部分または相当する部分に付すものとする。
本発明の射出成形金型1は、概略、接合面が長手方向に形成されており、前記接合面が互いに接合されることにより導光板PPを構成するための導光板ピースPを成形するためのもので、キャビティ2に成形材料を射出充填するためのゲート3が、導光板ピースPの長手方向端部近傍であって導光板ピースPの互いに接合する接合面Psを除いた面Pr,Pb,Pe1,Pe2と対応する位置に配置されている。
さらに、本発明の射出成形金型1は、ゲート3が、導光板ピースPの長手方向の両端部近傍と対応する位置に配置されており、また、キャビティ2が、一方端から他方端に向かって漸次板厚が異なるクサビ状の導光板ピースPを成形し得るよう、この導光板ピースPの形状と対応して一方端から他方端に向かって漸次厚さが薄くまたは厚くなるよう異ならせた形状に形成されている。
【0016】
この実施の形態では、成形する導光板ピースPとして、たとえば、長さLが1223mmで、表面Prおよび裏面Pbの幅Wが70mm、薄肉側端部Pe1の高さ(板厚)T1が2.5mm、厚肉側端部Pe2の高さ(板厚)T2が5.0mm程度のものであるが、図においては誇張して示しており、その寸法の比を正確には示していないことに注意されたい。図1に断面図で示すように、射出成形金型1は、固定金型10と可動金型11により構成されている。固定金型10は、固定盤12に取り付けられ、可動金型11は、型締装置(図示は省略した)に接続されることにより固定盤12に対して近接・遠退移動可能に設けられた可動盤13に取り付けられている。この実施の形態における射出成形金型1は、長手方向に厚さが変化するクサビ状の導光板ピースPを2個一対で成形できるようキャビティ2を形成するために、固定金型10のキャビティ形成面10aが型彫りまたは組み立てられている。この固定金型10のキャビティ形成面10aに嵌合するように可動金型11のキャビティ形成面11aが対向して形成された所謂インロータイプの金型となっている。また、固定金型10と可動金型11とのパーティング面には、図1に示した状態のときに、射出プレス成形を行うことができるように間隙が形成されている。なお、図1では、説明の都合上、図1における上方のキャビティ2が厚肉側で、図1における下方のキャビティ2が薄肉側で示されているが、同一平面における断面を示すものではない。本発明はこの実施の形態に限定されることはなく、全長にわたって略均等な厚さの導光板ピースPを成形することもできる。また、本発明の射出成形金型1は、上述したインロータイプに限定されることはなく、外枠が型開閉方向に進退する所謂平当てタイプのものでもよく、また、射出圧縮成形を行うよう制御可能な型締装置により型締めされるものであってもよい。キャビティ2内の、導光板ピースPの反射面となる裏面Pbと対応する位置には、必要に応じて、導入された光を拡散させて出光するためのドット、グルーブ、あるいはホログラムなどからなる拡散層を形成するために、表面加工を施したり、スタンパを配設することもできる。
【0017】
ここで、本実施の形態により成形される導光板ピースPは、表面Prおよび裏面Pbと両端面Pe1,Pe2とが矩形となり、これらの面に隣接する両側面Psがクサビ状(台形形状)となる。そして、この実施の形態では、表面Prが出光面となり、裏面Pbが反射面となり面積の大きい厚肉側端部Pe2の端面が入光面となり、この厚肉側端部Pe2の端面に隣接してLEDなどの発光手段(図6を参照)が設けられる。また、各導光板ピースPの長手方向の少なくとも一方の側面Psは、導光板ピースPを互いに接合するための接合面となる。この導光板ピースPの成形する形状と対応した形状のキャビティ2が射出成形金型1内に形成される。各キャビティ2の薄肉側端部(導光板ピースの板厚が薄い端面Pe1側と対応する)の導光板ピースPの表面Prまたは裏面Pbと対応する側は、薄い帯状の通路構造(フィルムゲート構造という)31が連続するように形成されている。
【0018】
固定盤12の略中央には、射出装置4のノズル4aが進入するテーパ孔14を有しており、その中心には固定金型10のロケートリング15が挿入される孔が設けられている。ロケートリング15内には、ノズルが当接されるスプルブッシュ16が連設されており、スプルブッシュ16にはホットランナ17のマニホールドブロック18が接続されている。スプルブッシュ16の外周にはヒータが設けられている。ホットランナ17のマニホールドブロック18は、図2に示すように、中間部が2箇所のキャビティ2の間でその長手方向と平行に延び、また、先端部が分岐して2個一対で成形される導光板ピースP,Pの両端部Pe1,Pe2の位置とそれぞれ対応して延びるよう形成されており、その外部にはヒータが設けられ、内部には成形材料を常時溶融状態で滞留または流通させるための通路19を備えている。そして、ホットランナ17のマニホールドブロック18の端部には、外部にヒータが設けられたホットランナノズル20がそれぞれ設けられている。図1に示すように、キャビティ2の厚肉側端部(導光板ピースの板厚が厚い端面Pe2側と対応する)であって、導光板ピースPの微細な凹凸パターンが形成された反射面となる裏面Pbと対応する面に臨むように2個のホットランナノズル20の先端が配置されてゲート3を構成するダイレクトゲート構造となっている。また、導光板ピースPの板厚が薄い端面Pe1側と対応するキャビティ2の薄肉側端部と連続するフィルムゲート構造31に臨むようにして単一のホットランナノズル20の先端が配置されている。
【0019】
なお、この実施の形態においては導光板ピースPの板厚に応じた数のホットランナノズル20を設けたが、本発明はこの実施の形態に限定されることなく、導光板ピースPの板厚に応じてゲート3からキャビティ2内に射出充填される成形材料の量や圧力、あるいは射出速度などを変更させることができればよく、たとえば、ホットランナノズル20の先端開口の径を異ならせる、すなわち、成形する導光板ピースPの表面Prまたは裏面Pbと対応する位置において、厚肉側端部に配置されるホットランナノズル20の先端開口径を比較的大きく、薄肉側端部に配置されるホットランナノズル20の先端開口径を比較的小さく形成することもできる。また、この実施の形態においては、成形する導光板ピースPの表面Prまたは裏面Pbと対応する位置における両端部近傍にゲート3を設けた場合により説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されることはなく、一方端部のみまたは一方端部近傍のみにゲート3を設けることもできる。そして、ゲート3を設ける位置は、図5に参照されるように、厚肉側Pe2と対応するキャビティ2の端部においては、端面Pe2または、表面Prもしくは裏面Pbにおいて導光板ピースPの全長Lに対して端部から20パーセント、より好ましくは10パーセント以内の範囲に対応させて設定することが望ましく、また、薄肉側Pe1と対応するキャビティ2の端部においては、端面Pe1または、表面Prにおいて導光板ピースPの全長Lに対して端部から20パーセント、より好ましくは10パーセント以内の範囲と対応させて設定することが望ましい。すなわち、本発明では、射出成形金型1のキャビティ2において、隣接する導光板ピースPと接合される導光板ピースPの少なくとも一方の側面Psを除いて、表面Prまたは裏面Pbの長手方向端部、あるいは端面Pe1,Pe2と対応する位置にゲート3を設けることができる。なお、出光面が平面からなり反射面がパターン面である場合に、薄肉側Pe1のゲートは反射面に設けることが望ましいが、本発明は、これに限定されることはない。
【0020】
各ホットランナノズル20は、内部にゲートバルブ21を備えており、ゲートバルブ21の後端には、これを進退駆動するためのシリンダ22が設けられている。可動金型11には、型開きしたときに成形された導光板ピースPを突き出すためのエジェクタピン23と、これを進退駆動するためのシリンダ24が設けられている。なお、導光板ピースPの離型は、成形された導光板ピースPとキャビティ面10aと11aの少なくとも一方との間にエアを噴出させる離型エア(図示は省略する)のみを適用させてもよく、また、離型エアとエジェクタピン23による突き出しとを併用してもよい。
【0021】
ここで、本発明の射出成形金型1の別の実施の形態を、簡略化して示した図3に基づいて説明する。なお、上述した実施の形態と同様または相当する部分については同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分のみを説明することとする。
上述した第1の実施の形態ではホットランナ17を採用していたのに対し、この第2の実施の形態では、コールドランナ37を採用している。
【0022】
図3に示すように、射出成形金型1は、固定型10と可動型11の間に中間型35が設けられている。中間型35の可動型11との衝合面は、長手方向にクサビ状のキャビティと、その両端にフィルムゲート構造31,31を形成できるよう型彫されている。固定型10にはスプール36が形成されており、中間型35には、スプール36とキャビティ2の長手方向両端のフィルムゲート構造31,31とをそれぞれ連通するランナ38が形成されている。このように構成された射出成形金型1では、成形が完了して型開きした際に、固定型10と中間型35との間からランナ部とスプールからなるコールドランナが取り出され、中間型35と可動型11との間から導光板ピースPが取り出されることとなる。
【0023】
この実施の形態においては、従来の技術と同様にコールドランナを採用しているが、そのゲート3が導光板ピースPの側面Psを除いた面Pr,Pbの端部もしくは端面Pe1,Pe2配設されているため、互いに接合して導光板PPを構成するのに適した接合面にゲート痕が形成されることなく、平坦な平面である接合面を有する導光板ピースPを確実に成形することができる。
【0024】
本発明の射出成形金型1のさらに別の実施の形態を、簡略化して示した図4に基づいて説明する。なお、上述した第1および第2の実施の形態と同様または相当する部分については同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分のみを説明することとする。
上述した第1および第2の実施の形態では、射出装置4のノズル4aが単一であり、これと対応して固定金型10のスプールブッシュ16が単一で形成され、ランナ38(図3)がキャビティ2の両端に配設された各ゲート3,3と連通するように分岐されていたのに対し、この第3の実施の形態では、キャビティ2の両端に配設されたゲート3と対応して個別にスプール36,36が形成されており、各スプール36,36と対応して射出装置4のノズル4a,4aが分岐して一対で設けられている。なお、本発明は、この実施の形態に限定されることはなく、各スプール36,36と対応してそれぞれ射出装置4を個別に設けることもできる。第3の実施の形態によって成形された導光板ピースPは型開き後にスプール部P36と切り離される。また、本発明は、射出成形金型1内に形成されるキャビティ2の数が単一の所謂1個取り金型や、3個以上取りの金型とすることもできる。
【0025】
次に、本発明の導光板ピースの成形方法と、成形された導光板ピースPにより構成される導光板PPの実施の一形態を、上述したように構成された第1の実施の形態における射出成形金型1を使用する場合により、図1、図2、および図5を参照しながら、その作動と共に説明する。
本発明の導光板ピースPの成形方法は、概略、射出成形金型1のキャビティ2に成形材料を射出充填することにより接合面が長手方向に形成されており、前記接合面が互いに接合されることにより導光板PPを構成するための導光板ピースPを成形するためのもので、射出成形金型1のキャビティ2に成形材料を導入するためのゲート3を、導光板ピースPの互いに接合する面Psを除いた端面Pe1,Pe2、または表面Prもしくは裏面Pbにおける長手方向端部近傍と対応する位置に配置して、ゲート3を介してキャビティ2内に成形材料を射出充填するものである。
さらに、本発明の導光板ピースPの成形方法は、キャビティ2内に成形材料を射出充填した後に型締する射出圧縮成形または射出プレス成形を行うものである。
【0026】
また、本発明の導光板PPは、概略、射出成形金型1のキャビティ2によって断面矩形の柱状(板状または棒状ということもできる)に成形され、長手方向に接合面が形成された導光板ピースPを互いに接合してなるもので、各導光板ピースPがキャビティ2に成形材料を射出充填するためのゲート3を導光板ピースPの互いに接合する面Psを除いた端面Pe1,Pe2、または表面Prもしくは裏面Pbにおける長手方向端部近傍と対応する位置に配置してなる射出成形金型1により成形されており、この導光板ピースPの側面Psを互いに接合したものである。
さらに、本発明の導光板PPは、各導光板ピースPがその一方端Pe1から他方端Pe2に向かって板厚が漸次厚くなるように、または、その他方端Pe2から一方端Pe1に向かって板厚が漸次薄くなるように、厚さの異なるクサビ状に成形されたものからなる。
【0027】
導光板ピースPを成形するに先立って、射出成形金型1は、上述したように、導光板ピースPの、後に隣接する導光板ピースPと接合される少なくとも一方の側面Psを除いて、表面Prまたは裏面Pbの長手方向端部、あるいは端面Pe1,Pe2と対応する位置にキャビティ2と連通するゲート3が配置されている。この実施の形態においては、クサビ状の導光板ピースPを成形するため、厚肉の端部Pe2側においては、導光板ピースPの裏面Pbである反射面を形成する面にゲート3が設けられ、薄肉の端部Pe1側においては、導光板ピースPの端面Pe1を形成するフィルムゲートとなっている。また、図示は省略するが、射出成形金型1には、温調装置からの冷却媒体が流通される冷却通路が形成されている。冷却通路は、キャビティ2の厚肉側と薄肉側の部分が略均等に冷却されるよう、通路の位置や流通される冷却媒体の温度などが工夫されている。
【0028】
導光板ピースPを成形するに際しては、最初に、固定金型10に対して可動金型11を型近接させて型締めする。このとき、射出圧縮成形を行う場合には型締装置により低圧で閉鎖するよう型締され、また、射出プレス成形を行う場合には図1に示したように固定金型10と可動金型11とのパーティング面が圧縮代だけ開いた状態に型閉じされる。固定金型10のキャビティ形成面10aと可動金型11のキャビティ形成面11aとの間には導光板ピースPの形状と対応した形状のキャビティ2が形成されることとなる。
【0029】
そして、射出装置4の内部で、ポリカーボネート、アクリル、シクロオレフィンポリマーといった導光板成形用の透明樹脂からなる成形材料を混錬可塑化させ、固定金型10のスプルブッシュ16に射出装置4のノズル4aを所定の力で当接させる。このときホットランナ17は、スプルブッシュ16内、マニホールドブロック18内の通路19、およびホットランナノズル20内で成形材料が固化しないように、所定の温度に加熱されている。また、ホットランナノズル20のゲートバルブ21は、シリンダ22によって前進移動されており、その先端がゲート3を構成するホットランナノズル20の先端開口を閉塞している。またこのとき、エジェクタピン23は、シリンダ24によって後退移動されて、その先端面がキャビティ2面の一部を構成している。
【0030】
型閉じによりキャビティ2が形成されると、シリンダ22の駆動によってホットランナノズル20のゲートバルブ21が後退移動されて、ホットランナノズル20の先端開口を開放し、射出装置4によってノズル4aから可塑化された成形材料を所定の速度で射出充填する。射出圧縮成形を行う場合には、射出装置4の成形材料を射出充填する圧力により、可動金型11が固定金型10に対して僅かに開くように移動した後に、型締装置によって再び型締される。また、射出プレス成形を行う場合には、可動金型11が固定金型10に対して圧縮代だけ僅かに開いた状態から、型締装置によって型締される。
【0031】
このとき、成形材料は、スプルブッシュ16、およびマニホールドブロック18の通路19を経て各ホットランナノズル20に流動し、キャビティ2に面した各ゲート3からキャビティ2内へ流動する。しかも、厚肉の端部Pe2側の方がゲート3の数が多いので、キャビティ2の厚肉部分が薄肉部分と比較して多く射出充填されることとなる。または、ゲートバルブ21の開放のタイミングをずらすことにより、キャビティ2の両端部またはその近傍から流入する樹脂がキャビティ2内の所望の位置で接合されるようにしてもよい。したがって、成形材料はゲート3からキャビティ2内に適切に流動し、これら全体が同じタイミングで冷却され固化し、さらに、ゲート3が導光板ピースPの接合面となる側面Psと対応する位置を避けて、導光板ピースPの表面Prまたは裏面Pbの端部近傍、あるいは端面Pe1,Pe2と対応する位置に配設されているため、導光板ピースPが従来の技術のように弓状に湾曲するよう変形することや、内部応力が偏ることがない。さらにまた、射出圧縮成形または射出プレス成形を行うことにより、特にクサビ状の導光板ピースPを成形する場合には、厚肉Pe2側も充分に成形材料が充填されることとなり、ヒケの発生を防止することができる。
【0032】
そして、成形された導光板ピースPは、接合面となる側面Psではなく、導光板ピースPの表面Prまたは裏面Pbの端部近傍、あるいは端面Pe1,Pe2にゲート痕が形成されるため、各導光板ピースPを互いに接合する際に、接合面となる側面Psを平坦に仕上げ加工処理をする必要がなく、工程数を低減して生産効率を向上させることができる。また、ゲート痕が形成される部分は、導光板ピースPの端部または端部近傍であるため、導光板全体の輝度に影響を及ぼすことが少なく、液晶表示装置の輝度分布としては充分に規格の範囲内となる。
【0033】
導光板ピースPの成形が完了したら、型開きしてエジェクタピン23を突き出し、成形された導光板ピースPを取り出す。そして、上述した工程を繰り返し行って複数の導光板ピースP,P,・・・を成形する。成形された導光板ピースPは、冷却された後、数時間〜1日程度アニーリング処理がなされ、または常温では12時間〜数日放置して潜在的な歪が除去されることが多い。複数の導光板ピースPが準備されたら、所定の数の導光板ピースPを平行に並べて互いの接合面となる側面Psを対向させ、接着剤などを用いて互いに接合し積層することにより、所定の寸法を有する導光板PPを構成する。
【0034】
なお、本発明により成形される導光板ピースPは、上述した実施の形態のようにその長手方向に漸次厚さの異なるクサビ状に成形されたものに限定されることはなく、長手方向に同じ厚さで成形されたものも含まれる。また、導光板ピースPは長手方向に直交する断面形状が正方向、長方形、クサビ形状等のものでもよい。そして、断面クサビ形状のものでは、厚肉側端面と薄肉側端面をそれぞれ接合面として接合し、鎧戸状のタンデム型導光板を構成するようにしてもよい。また、接合面には、接合力を向上させる等の目的により、凸部や凹部が形成されたものでもよい。これらの場合においては、導光板ピースPの少なくともいずれか一方の端面、または表面Prもしくは裏面Pbにおける全長に対して端面から20パーセント、より好ましくは10パーセントの範囲と対応する位置にゲート3を設けることができる。このようにゲート3の位置を設定することにより、従来の技術のように接合面にゲート痕が形成されることによる問題や、弓状の曲げが生じるといった問題が発生することがない。また、製造されたタンデム型導光板は、図5に示されるように、導光板ピースP毎に発光手段が設けられて使用されるのが一般的であり、さらに、導光板の出光面を構成する表面Prには一般にプリズムシート等が配設されるため、ゲート痕による輝度ムラがなく均一な面状に発光させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の射出成形金型の実施の一形態を示す断面図である。
【図2】図1に示した射出成形金型において、ゲートを設ける位置を説明するために概念的に示した正面図である。
【図3】本発明の射出成形金型の、コールドランナを採用した第2の実施の形態を説明するために示した断面図である。
【図4】本発明の射出成形金型の、スプールゲートを採用した第3の実施の形態を説明するために示した断面図である。
【図5】本発明により成形される導光板ピースを説明するために示した側面図である。
【図6】本発明により構成されるタンデム型導光板を説明するために概念的に示した正面図である。
【図7】従来の技術により成形された導光板ピースの各部分における内部応力を検査した結果を示す写真である。
【図8】図7に示した導光板ピースとランナが固化により収縮して、導光板ピースが弓状に変形した状態を説明するために示した正面図である。
【符号の説明】
【0036】
1:射出成形金型、 2:キャビティ、 3:ゲート、 4:射出装置、 10:固定型、 11:可動型、 17:ホットランナ、 PP:導光板、 P:導光板ピース、 Pr:表面、 Pb:裏面、 Pe1,Pe2:端面、 Ps:側面(接合面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合面が長手方向に形成されており、前記接合面が互いに接合されることにより導光板を構成するための導光板ピースを成形する射出成形金型であって、
キャビティに成形材料を射出充填するためのゲートが、前記導光板ピースの接合面を除いた面における長手方向端部近傍と対応する位置に配置されていることを特徴とする射出成形金型。
【請求項2】
前記ゲートが、前記導光板ピースの長手方向の両端部近傍と対応する位置にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項1に記載の射出成形金型。
【請求項3】
前記キャビティが、一方端から他方端に向かって漸次厚さが異なるクサビ状に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の射出成形金型。
【請求項4】
金型のキャビティに成形材料を射出充填することにより、接合面が長手方向に形成され、前記接合面が互いに接合されることにより導光板を構成するための導光板ピースの成形方法であって、
前記金型のキャビティに成形材料を導入するためのゲートを、前記導光板ピースの接合面を除いた面における長手方向端部近傍と対応する位置に配置して、該ゲートを介して前記キャビティ内に成形材料を射出充填することを特徴とする導光板ピースの成形方法。
【請求項5】
キャビティ内に成形材料を射出充填した後に型締する射出圧縮成形または射出プレス成形を行うことを特徴とする請求項4に記載の導光板ピースの成形方法。
【請求項6】
射出成形金型のキャビティによって接合面が長手方向に形成された導光板ピースの前記接合面を互いに接合してなる導光板であって、
キャビティに成形材料を射出充填するためのゲートが前記導光板ピースの接合面を除いた面における長手方向端部近傍と対応する位置に配置された射出成形金型により成形された導光板ピースを互いに接合したことを特徴とする導光板。
【請求項7】
各導光板ピースがその一方端から他方端に向かって漸次厚さの異なるクサビ状に成形されていることを特徴とする請求項6に記載の導光板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−83098(P2010−83098A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257308(P2008−257308)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(000155159)株式会社名機製作所 (255)
【Fターム(参考)】