説明

導電性ゴムローラ及び現像ローラ

【課題】高周波による分子振動加熱を採用することで加硫発泡時間の短縮を達成し、かつ連続通電による抵抗上昇が小さく、電子写真感光体汚染が無い導電性ゴムローラ及び現像ローラを提供することである。
【解決手段】通電性軸芯体上に、少なくとも1層はスポンジゴム部材からなる二層以上の構造を備えた導電性弾性層を有し、該導電性弾性層の上に架橋性樹脂を主材とする被覆層を積層する導電性ゴムローラにおいて、
該スポンジゴム部材の組成物は極性ゴムを主成分とし、加熱分解により水が発生する添加剤を含有し、
該組成物が、高周波による分子振動加熱手段により加熱加硫発泡処理された
ことを特徴とする導電性ゴムローラ及び該導電性ゴムローラからなる現像ローラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やレーザービームプリンタ等の電子写真プロセスに使用される導電性ゴムローラ、特には現像ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真部品に用いられる導電性ゴムローラは、多くの場合電子写真感光体に対して均一に圧接ないしは当接させ、電子写真感光体との間に電圧を印加してトナーを電子写真感光体上に現像する、電子写真感光体上に所望の電位を付与する、トナー像を転写材に転写させる等の目的で使用される。
【0003】
かかる目的のため、通常の電子写真用導電性ゴムローラは、ドラムとの密着性を高めるために適度に低硬度であることが望まれている。ローラ硬度が高い場合、電子写真感光体とのニップ幅が小さくなるため、トナーの受け渡し効率が低下したり、電子写真感光体表面の磨耗や損傷により画像欠陥を生じ易い。また硬度が低過ぎる場合には、柔らか過ぎて圧縮永久歪みが大きくなり耐久性が劣るほか、搬送力が強くなり過ぎ画像に欠陥を生じ易い。
【0004】
導電性ゴムローラの低硬度化の方法としては、軟化剤や可塑剤等の各種添加剤を用いる方法が挙げられる。しかしながら、軟化剤や可塑剤等を添加した導電性ゴムローラを感光ドラムと接触使用した場合、導電性ゴムローラ内から低分子量の各種添加剤がブリードアウトし、電子写真感光体表面に付着することで、画像劣化や電子写真感光体汚染を起こすという問題が生じ易い。このような問題から、導電性ゴムローラの導電性弾性層の上にポリアミドやウレタン等の結着樹脂を被覆し、ブリードアウトを防止している。また前記結着樹脂中に、所望の導電性を得るための導電剤や、適宣表面粗さを確保するための粗し粒子等を添加することで、トナー帯電性や搬送性を確保したり、あるいは電子写真感光体への均一な電位付与を達成している。しかし結着樹脂の種類や膜厚によっては、ブリードアウトの防止には不十分な場合がある。言い換えれば、結着樹脂の種類と適正膜厚を達成すればブリードアウトを防止できるが、そのために樹脂の選択の幅や膜厚の自由度を狭めてしまい、導電性ゴムローラの高機能化のためのトナー帯電性や搬送性を犠牲にすることにもなりかねない。つまり、弾性層自身によってブリードアウトを発生させないような対策を取ることが望ましい。軟化剤や可塑剤を用いずに低硬度のゴム層を得る方法としては、一般的に化学発泡剤を用いて発泡させたスポンジゴムを弾性層に用いる方法が多く採用されている。近年では高画質化の検討が進み、スポンジゴムのセル径のバラツキを低減させる検討や、微細セルのスポンジゴム層の外層に平滑なソリッド層を設けた多層構造を有する導電性ゴムローラの検討が行なわれている。
【0005】
スポンジゴムの製法としては、アゾジカルボンアミド(ADCA)の化学発泡剤と尿素の発泡助剤を含有する部材を加硫、発泡させて作られるのが一般的であるが、極性ゴムを主成分とする導電性ゴム材を高周波による分子振動加熱手段で加硫、発泡させると連続通電による抵抗上昇が大きく、耐久性に劣る等の課題が解決されていない。また、p.p’−オキシビススルホニルヒドラジド(OBSH)の化学発泡剤を使用した場合には、連続通電による抵抗上昇は低減できるが、電子写真感光体汚染を起こすという課題が生じ易い。
【0006】
例えば先行技術においては、表面にトナーを担持して該トナーの薄膜を形成し、この状態で画像形成体に接触又は近接して、該画像形成体表面に該トナーを供給することにより、該画像形成体表面に可視画像を形成するトナー担持ローラにおいて、良導電性シャフトの外周に第1弾性層を形成し、更にその外周に第2弾性層を形成してなり、上記第1弾性層が導電性を有するゴムの発泡体であり、上記第2弾性層が導電性を有する非発泡ゴムであることを特徴とするトナー担持ローラである(特許文献1)。しかしながら、第1弾性層である導電性を有するゴムの発泡体を設ける工程において、上述したように、極性ゴムを主成分とする導電性ゴム部材を高周波にて加硫、発泡させた場合には連続通電による抵抗上昇が大きく、耐久性に劣る課題が発生する。
【特許文献1】特開平11−119542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述の課題を解決することであり、高周波による分子振動加熱を採用することで加硫発泡時間の短縮を達成し、かつ連続通電による抵抗上昇が小さく、電子写真感光体汚染が無い導電性ゴムローラ及び現像ローラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に従って、通電性軸芯体上に、少なくとも1層はスポンジゴム部材からなる二層以上の構造を備えた導電性弾性層を有し、該導電性弾性層の上に架橋性樹脂を主材とする被覆層を積層する導電性ゴムローラにおいて、
該スポンジゴム部材の組成物は極性ゴムを主成分とし、加熱分解により水が発生する添加剤を含有し、
該組成物が、高周波による分子振動加熱手段により加熱加硫発泡処理された
ことを特徴とする導電性ゴムローラが提供される。
【0009】
また、本発明に従って、現像ローラが上記導電性ゴムローラであることを特徴とする現像ローラが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高周波処理を採用することによる加硫発泡時間の短縮を実現しつつ、従来高周波による分子振動加熱手段で加硫、発泡させたときに生じる連続通電による抵抗上昇を抑制し、耐久性に優れた導電性ゴムローラを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明による導電性ゴムローラの例を図1に示す。導電性支持体(1)上に、スポンジゴム部材からなる導電性弾性層(2a)及びソリッドゴム層からなる導電性弾性層(2b)、更に架橋性樹脂を主材とする被覆層(3)を順次積層した構成となっている。この導電性弾性層は2層以上の構造を有すればよく図1のように2層であってもよいし、3層以上の構成としても構わない。また被覆層も1層であってもよいし、2層以上の多層構造であってもよい。
【0012】
従来の技術においては、高周波を用いた電子振動加熱手段を用いた導電性弾性層(2a)及び(2b)を有する導電性ゴムローラは、連続通電させたときの耐久性が劣る等の課題があった。それゆえ導電性弾性層の加硫発泡には、オーブンを用いたバッチ処理を用いるしかなく、そのため加硫発泡には相当の時間がかかっていた。本発明による導電性ゴムローラの採用により、前記課題を解決し、高周波を用いた電子振動加熱手段の特徴を生かした加硫発泡時間の短縮や、それに伴う装置の小型化を可能としている。
【0013】
本発明による導電性ゴムローラの通電性軸芯体には、導電性、耐熱性、曲げ強度等が求められ、金属を用いることが好ましい。更に、防錆や耐傷性付与を目的として、これらの金属表面にメッキ処理等の被覆処理が施されても構わない。形状も円柱状や円筒状等が挙げられ、軸端部にはギアを取り付けるための溝が設けられる場合もある。
【0014】
本発明による導電性ゴムローラのスポンジゴム部材は、極性ゴムを主成分とし、加熱分解により水が発生する添加剤を含有しており、これが高周波による分子振動加熱によって発生する分解残渣を変化させる働きがある。
【0015】
加熱分解により水が発生する添加剤を含有しない場合には、例えば発泡剤として一般的なアゾジカルボンアミド(ADCA)が含有する導電性ゴム部材を高周波による分子振動加熱手段による加熱加硫発泡処理をマイクロ波発生装置(UHF)で加硫、発泡させると、シアン酸、イソシアン酸、シアメリッド、シアヌル酸、イソシアヌル酸等が発生し導電性ゴム部材中に残留することになる。そしてこれら残渣物質は、極性ゴムの電気特性を阻害する働きがある。また、例えば発泡剤の分解温度を下げる働きがある尿素についてもUHF加硫方式を用いると、残留物質としてシアン酸類が発生する。これらの残留物質も電気特性を阻害する働きがあり、抵抗値を上昇させる。
【0016】
本発明においては、加熱分解により水が発生する添加剤を含有させることにより、上記残留物質との反応を促し無害化している。従って上記残留物質の存在が抑えられ、通電による抵抗上昇が抑えられる。
【0017】
加熱分解により水が発生する添加剤としては、重曹あるいはp.p’−オキシビススルホニルヒドラジド(OBSH)を使用することが好ましく、重曹は熱分解すると二酸化炭素と水が発生し、p.p’−オキシビススルホニルヒドラジド(OBSH)は窒素と水が発生する。p.p’−オキシビススルホニルヒドラジド(OBSH)を用いる場合には単独でも良いが、重曹を用いる場合には、他の発泡剤としてアゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)等の各種発泡剤、尿素等の各種発泡助剤を併用するのが好ましい。p.p’−オキシビススルホニルヒドラジド(OBSH)を使用した場合は電子写真感光体汚染の問題が生じ易いが、スポンジゴム部材の外側にソリッドゴム層を設け導電性弾性層を2層以上の構造とすることで汚染を抑制している。
【0018】
本発明において用いられるスポンジゴム部材は、極性ゴムを主成分としている。中でもアクリロニトリルブタジエンゴムとエピクロロヒドリン系ゴムは相溶性が高く、ブレンドした場合均一に分散するため、抵抗バラツキの小さいゴム材料として有利であるため好ましい。
【0019】
アクリロニトリルブタジエンゴムは、アクリロニトリル含量が20質量%以下のものが好ましく、更には18質量%以下のものが好ましく、下限は10質量%以上であることが好ましい。アクリロニトリル含量が20質量%よりも多い場合、環境依存性が高くなることがある。また10質量%に満たない場合には、アクリロニトリルブタジエンゴムの抵抗が高くなり易い。
【0020】
エピクロロヒドリン系ゴムは、エピクロロヒドリン/エチレンオキサイド/アリルグリシジルエーテルの三元共重合体、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/アリルグリシジルエーテルの三元共重合体あるいは、その混合物が好ましい。
【0021】
エピクロロヒドリン/エチレンオキサイド/アリルグリシジルエーテルの三元共重合体は、エチレンオキサイド含量が40モル%以上のものが好ましく、更には48モル%以上のものが好ましく、上限は65モル%以下であることが好ましい。このエチレンオキサイド含量は、ポリマー組成中のエチレンオキサイド含量が40モル%以上のものの他、エチレンオキサイド含量の違う複数のエピクロロヒドリンゴムをブレンドすることによって調整されたものでもよい。エピクロロヒドリンゴムの電気抵抗は、エチレンオキサイド含量が大きくなるに従って低抵抗になる。エチレンオキサイド含量が40モル%未満のものを使用した場合、所定の抵抗を得るためのアクリロニトリルブタジエンゴムにブレンドするエピクロロヒドリンゴムが多くなってしまい、環境依存性を高くなることがある。また65モル%を超える場合には、エチレンオキサイドが結晶化し易く、抵抗及び環境依存性が共に高くなり易い。
【0022】
エチレンオキサイド(A)/プロピレンオキサイド(B)/アリルグリシジルエーテル(C)の共重合体は、共重合比率が、(A)+(B)<90モル%であり、且つB+C<20モル%を満たすものが好ましい。(A)と(B)との和、A+Bが90モル%を超えると、結晶性が増大することにより電気伝導が阻害され、体積固有抵抗値も増加し易い。この比率の増大に相対してアリルグリシジルエーテル(C)が減少するので、アリルグリシジルエーテル(C)に由来する架橋サイトが不十分になり、架橋による3次元構造が形成され難くなるため、被覆層を設ける前の弾性層部材の段階において、表面へのブリードが発生することがある。また、この共重合体に係る重合比率(B)と(C)の和、(B)+(C)が20モル%を超えると、電気伝導に寄与する構成単位であるエチレンオキサイド(A)が相対的に減少するため、体積固有抵抗値が増加し易い。
【0023】
本発明による導電性ゴムローラのスポンジゴム部材は、極性ゴムを主成分としているが、非極性ゴムを使用した場合は、導電材やカーボン等により導電性を寄与しているためシアン酸、イソシアン酸、シアメリッド、シアヌル酸、イソシアヌル酸等の物質が発生することによる電気特性阻害は発生しない。しかし、非極性ゴムではカーボンを多量に使用したり、ストラクチャーの大きい導電性カーボンを使用するため、電圧依存性が大きく、均一性に乏しい。また低硬度部材にするために可塑剤等の軟化剤を多量に含有させる必要があり、ブリードの発生、もしくはこれを防止するための被覆層への制約が厳しくなってしまう。
【0024】
本発明の導電性ゴムローラは、一般のゴムに使用されるその他の成分を必要に応じて含有してもよい。例えば硫黄や有機含硫黄化合物等の加硫剤、各種加硫促進剤、各種滑剤やサブ等の加工助剤、各種老化防止剤、酸化亜鉛やステアリン酸等の加硫助剤、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、クレー、カーボンブラック等の各種充填剤が必要に応じて配合可能である。
【0025】
本発明の導電性弾性層のうち、ソリッドゴム層に使用されるゴム成分は、クロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、他硫化ゴム、エピクロロヒドリン系ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム及びフッ素ゴム等が挙げられる。これらのゴムの中で、好ましくはアクリロニトリル−ブタジエンゴム、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、エピクロロヒドリン系ゴム、フッ素ゴムである。更に好ましくは、エピクロロヒドリン系ゴム及びアクリロニトリル−ブタジエンゴムである。これらのゴムは1種単独あるいは2種類以上ブレンドして用いてもよい。また熱可塑性ゴムを使用することができ、特に制限されるものではない。
【0026】
上記導電性弾性層ゴム部材は、オープンロールあるいは、密閉式混練機等を用い混練りしたものを、押出し機を使用して成形している。
【0027】
本発明にかかる導電性弾性層の製造方法として、未加硫の導電性ゴム組成物を押し出し機により二層のチューブ状に押出し、高周波による分子振動加熱手段、好ましくはマイクロ波発生装置(UHF)を有する連続加硫炉で加熱し導電性のゴム(弾性体)チューブを作製する。その後、二次加硫をしてもしなくてもよいが、架橋密度を増加させブリードを抑制する効果があるので二次加硫をするのが好ましい。この導電性ゴムチューブに接着剤を塗布した通電性芯体を挿入して、更に加熱することにより通電性芯体と導電性ゴムチューブを接着した後、所定の外径になるまで研磨することにより得られる。もしくは、未加硫の導電性ゴム組成物を押出し機により単層チューブ状に押出し、高周波による分子振動加熱手段、好ましくはマイクロ波発生装置(UHF)を有する連続加硫炉で加熱し導電性ゴムローラにした後、被覆やコーティング、金型を用いた注型等により二層構造以上にすることも可能である。なおソリッドゴム層の厚さは200μm以上であることが好ましい。200μm未満の場合、ソリッドゴム層の厚さのばらつきを考慮した際に、ローラ抵抗の周ムラが大きくなる懸念がある。ローラ抵抗の周ムラは、トナー帯電量のムラ、電子写真感光体上へ付与する電位ムラ、転写材への転写効率ムラ等になるため、出図した画像に濃度ムラが発生する。
【0028】
本発明による導電性ゴムローラの被覆層は、主に耐久性や離型性を付与するため、更には弾性層からのブリードを防止する目的も兼ねて設けられる。被覆層に用いる架橋性樹脂としてはフッ素樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ブチラール樹脂、スチレン−エチレン・ブチレン−オレフィン共重合体(SEBC)又はオレフィン−エチレン・ブチレン−オレフィン共重合体(CEBC)等が用いられる。中でもトナーの離型性や電子写真感光体に対する非汚染性の観点から、ポリアミド樹脂やポリウレタン樹脂が好ましい。これらの架橋性樹脂に静摩擦係数を小さくする目的でグラファイト、雲母、二硫化モリブデン及びフッ素樹脂粉末等の固体潤滑材、或いはフッ素系界面活性剤、ワックス又はシリコーンオイル等を添加する場合もある。また、被覆層に導電性を持たせるためには、導電性カーボン、グラファイト、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄粉又は金属酸化物である導電性酸化錫や導電性チタン等の各種導電剤が用いられる。更に、耐磨耗性やトナー搬送性を得るために粗し粒子が加えられる場合もある。これらの材料を塗工できる状態とするため、各種有機溶剤や水等が加えられる。本塗工液に使用できる有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンのケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族類、酢酸エチル、n−酢酸ブチル等のエステル類、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、テトラヒドロピラン等のエーテル類が挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。これらの材料を分散し、塗工に適した粘度に調整する。このように調製された塗工液を、ディップ、スプレーコート又はロールコート等の方法により導電性弾性層上に形成し、熱硬化の工程を経て被覆層を得る。また別に、上記材料を基にチューブを作製し、これを導線性弾性層上に被覆するという方法もある。被覆層の膜厚は導電性ゴムローラの種類、更に使用する架橋性樹脂の種類にもよるので一概に好ましい範囲は明言しないが、導電性ゴムローラの種類を問わず、少なくとも耐久最後まで導電性弾性層が露出しないことが求められる。導電性弾性層が露出してしまった場合、その部分の抵抗ムラ及びリーク画像が発生することがある。
【0029】
次に、本発明の導電性ゴムローラは、以下のようにして加熱加硫発泡処理されて作製される。
【0030】
図2は導電性ゴムローラーの高周波による分子振動加熱手段を用いた連続加硫による製造装置を示し、本発明で使用した押出し加硫装置は、押出し機11、マイクロ波加硫装置(UHF)12、熱風加硫装置(HAV)13、引取り機14、定尺切断機15で構成される。
【0031】
導電性弾性層のゴム材料はバンバリーミキサー又はニーダー等の密閉式混練機を用い混練した後、加熱分解により水が発生する添加剤をオープンロールで含有させ、リボン成形分出し機によりリボン状に成形し、上記押出し機11に投入している。上記UHF12は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂でコーティングされたメッシュのベルト、又はPTFE樹脂を被覆したコロで上記押出し機11より押出されたゴムチューブを搬送し、HAV13はPTFE樹脂を被覆したコロで搬送を行っている。UHF12とHAV13の間は、PTFE樹脂を被覆したコロで連結されている。
【0032】
上記マイクロ波を用いた連続加硫による製造装置において、押出し機11よりチューブ状に成形され押出されたゴムチューブは、該押出し機11より押し出された直後に炉内雰囲気温度200〜250℃に設定したUHF12内に搬送され、該ゴムチューブに2450±50MHzのマイクロ波を照射させて、該ゴムチューブを加熱させて加硫発泡し、つづいて、HAV13に搬送し、加硫を完了させている。
【0033】
上記加硫発泡工程において、UHF12のマイクロ波加硫炉で照射するマイクロ波は2450±50MHzが好ましく、この範囲内あることにより該ゴムチューブに対し、照射ムラが少なく、かつ効率良く照射が可能である。UHF炉内での熱風の温度は150℃〜250℃が好ましく、特には180℃〜230℃が好ましい。
【0034】
加硫、発泡後に引取り機14より排出された直後に、定尺切断機15により所望の寸法に切断し、チューブ状の導電性ゴム成形物を作製した。次いでホットメルト接着剤、又は加硫接着剤を所望の領域に塗布した導電性芯体を前記チューブ状の導電性ゴム成形物の内径部に圧入し、ローラ状の成形体が得られる。
【0035】
次に、本発明に係る導電性ゴムローラーを画像形成装置に利用した一例を図面を用いて説明する。
【0036】
図3に示される画像形成装置では、潜像担持体としての感光ドラム21が矢印方向に回転し、感光ドラム21を帯電処理するための帯電装置22によってそこを通過した感光ドラム21の領域が一様に帯電され、更にこの帯電領域において、静電潜像を書き込む露光手段であるレーザー光23により、その表面に静電潜像が形成される。静電潜像は、感光ドラム21に対して近接配置され、画像形成装置本体に対し着脱自在なプロセスカートリッジ(不図示)に保持される現像装置24によって現像剤たるトナーを付与されることにより現像され、トナー像として可視化(顕在化)される。
【0037】
現像には、露光部にトナー像を形成するいわゆる反転現像等の方式が利用できる。可視化された感光ドラム21上のトナー像(画像)は、転写ローラ29によって紙等の転写材33に転写される。トナー像を転写された転写材33は、定着装置32により定着処理され、装置外に排出されプリント動作が終了する。転写ローラ29は、感光ドラム21のトナー像を保持する領域に、転写材33をその裏面から押当てて、トナー像を転写材の表面に転写させるもので、感光ドラムのトナー像を保持する領域と逆に帯電していることで、トナー像の転写が促進される。転写材33の感光ドラム21の表面への押し当ては、感光ドラム21と転写ローラ29とが接触している部分に、これらの回転に伴って、転写材33が自動的に挿入されることにより達成される。
【0038】
一方、転写されずに感光ドラム上21上に残存した転写残トナーはクリーニングブレード30により掻き取られ廃トナー容器31に収納され、クリーニングされた感光ドラム21に対して上記のプロセスを繰り返すことで、同一画像のコピーや、新たな画像の転写を行うことができる。
【0039】
図示した例では、現像装置は、一成分現像剤として非磁性トナー28を収容した現像装置24と、現像容器34内の長手方向に延在する開口部に位置し感光ドラム21と対向設置された現像剤担持体としての現像ローラ25とを備え、感光ドラム21上の静電潜像を現像して可視化するようになっている。
【0040】
尚、現像ローラ25は感光ドラム21と当接幅をもって接触している。現像装置24においては、弾性を有する補助ローラ26が、現像容器34内で、弾性ブレード27の現像ローラ25表面との当接部に対し現像ローラ25の回転方向上流側に当接され、かつ、回転可能に支持されている。補助ローラ26の構造としては、発泡骨格状スポンジ構造や芯金上にレーヨンやポリアミド等の繊維を植毛したファーブラシ構造のものが、現像ローラ25へのトナー28の供給及び未現像トナーの剥ぎ取りの点から好ましい。本実施形態においては、芯金上にポリウレタンフォームを設けた直径16mmの補助ローラ26を用いた。
【0041】
この補助ローラ26の現像ローラ25に対する当接幅としては、1〜8mmが有効であり、また、現像ローラ25に対してその当接部において相対速度を持たせることが好ましく、本実施形態においては、当接幅を3mmに設定し、弾性ローラ26の周速として現像動作時に50mm/s(現像ローラ25との相対速度は130mm/s)となるように駆動手段(不図示)により所定タイミングで回転駆動させている。
【0042】
本発明にかかる導電性ゴムローラは、感光ドラム21の表面のクリーニングされた領域に当接又は圧接してこの領域を帯電するための帯電ローラ22や、電子写真感光体ドラム21のトナー像を保持する領域に当接又は圧接して配置される転写ローラ29としても好適に利用できる。
【実施例】
【0043】
以下に具体的な実施例及び比較例を用いて本発明を更に詳細に説明する。なお以下の実施例及び比較例は現像ローラでの結果であるが、本発明の用途は現像ローラに限るものではなく、その他の導電性ゴムローラに対しても有効であり、これら実施例に限定されるものではない。
【0044】
(導電性弾性層の材料)
各実施例、比較例に用いたゴム材料の配合割合及び試験結果は表の通りである。なお、配合量の単位は質量部である。
1:アクリロニトリルブタジエンゴム
[結合アクリロニトリル量18質量%;商品名:NipolDN401LL、日本ゼオン(株)製]
2:エピクロロヒドリン系ゴム
[エチレンオキサイド含量56モル%;商品名:HydrinT3106、日本ゼオン(株)製]
3:エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/アリルグリシジルエーテル(EO−PO−AGE)共重合体
[エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合比率=87:1:12;商品名:ゼオスパン8010、日本ゼオン(株)社製]
4:加硫剤
[硫黄;商品名 サルファックスPMC、鶴見化学工業(株)製]
5:加硫促進剤
[ジベンゾチアジルジスルフィド(DM);商品名:ノクセラーDM、大内新興化学工業(株)製]
[テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT);商品名:ノクセラーTOT、大内新興化学工業(株)社製]
6:加硫促進助剤
[酸化亜鉛;商品名:亜鉛華2種、ハクスイテック(株)製]
7:発泡剤
[アゾジカルボンアミド(ADCA);商品名:ビニホールAC#LQ、永和化成(株)製]
[p.p’−オキシビススルホニルヒドラジド(OBSH);商品名:ネオセルボンN1000#S、永和化成(株)製]
[炭酸水素ナトリウム(重曹);商品名:FE−507、永和化成(株)製]
8:発泡助剤
[尿素;商品名:セルペースト101、永和化成(株)製]
9:助剤
[ステアリン酸;商品名:ルナックS20、花王(株)製]
10:充填剤
[カーボンブラック;商品名:旭#35、旭カーボン(株)製]
【0045】
(導電性弾性層の作製)
実施例及び比較例の配合とした材料をオープンロールあるいは、密閉式混練機等を用い混練りしたものを押出し機で成形した。多層構造の現像ローラは二台の押出し機を用いてクロスヘッドで二層のチューブ状にゴム組成物を押出し成形した。チューブの内外径は、加硫、発泡によって変化するため、所望のローラを得るための調整を行った。成型後に単層、多層どちらのチューブとも連続加硫炉にて加硫を行いチューブ状のゴム加硫物を作製し、これにφ6mmステンレス製の導電性芯体を挿入した。更に150℃の熱風炉にて2時間二次加硫を行い、両端部を切断してゴム長240mmのローラ状の成形体とした。この成形体を外径がφ12mmになるように研磨し現像ローラの導電性弾性層を得た。なお、連続加硫炉の条件詳細は以下に記す。
【0046】
「加硫条件の詳細」
図2の高周波による分子振動加熱手段を用いた連続加硫による製造装置を用いて、2m/minの速度で押出し機11よりチューブ状に成形され押出されたゴムチューブを、マイクロ波加硫装置(UHF)12内に搬送し、ゴムチューブに1〜2kW、2450±50MHzのマイクロ波を照射させて、ゴムチューブの温度を200〜250℃に加熱させて加硫発泡し、続いて200℃の熱風加硫装置(HAV)に搬送する。加硫、発泡後に引取り装置14より排出された直後に、定尺切断機15により260mmの長さに切断し、チューブ状の導電性ゴム組成物を得る。
【0047】
(被覆層の作製)
まず以下の材料から塗工液を調製した。
1:ポリウレタンポリオール 100部
[商品名:ニッポランN5033、日本ポリウレタン工業(株)製]
2:イソシアネート 10部
[商品名:コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製]
3:カーボンブラック 20部
[商品名:MA77、三菱化学(株)製]
4:樹脂粒子 6部
[商品名:アートパールC400、根上工業(株)製]
【0048】
上記原料にメチルエチルケトン(MEK)を加え、ビーズミルで充分分散した。分散後更にMEKを加え十分混合し、塗工液の粘度が測定温度23±1℃にて、回転式粘度計(VISMETRON VDA;芝浦システム製)、No.1ロータ、回転速度60rpmにて20mPa・sになるよう粘度を調整した。調製した塗工液を塗工槽に装入し、塗工液の液面に対してローラ状成形体の導電性芯体の中心線が垂直になるように保持した。その状態で、塗工液の液面に向かってローラ状成形体を垂直に降下し塗工液に浸漬してゆき、最下点まで降下後に100mm/minの速度で引き上げることで、ローラ状成形体の導電性弾性層の外周面上に塗膜を形成した。なお最下点とは、導電性弾性層の外周面端部と塗工液の液面の高さが同じとなる位置とした。このようにして形成した被覆層を室温にて30分間風乾し、150℃のオーブンに入れ2時間加熱硬化して被覆層を形成、現像ローラを得た。
【0049】
<通電耐久試験>
現像ローラを50℃の環境下に置き、芯体に片側4.9Nの荷重が両側に掛かるようにして外径30mmのアルミニウム製のドラムに圧着し、30rpmで回転させた状態で、芯体とアルミニウムとの間に24時間、80μAの定電流を印加し続けた。その後23℃/55%RHの環境にて24時間以上放置した後でローラ抵抗を測定した。この値と、耐久前に23℃/55%RHの環境で測定した抵抗値の差を耐久変動幅として、0.3桁以上を「×」とし、0.3桁未満を「○」とした。
【0050】
<電子写真感光体汚染>
現像ローラをキヤノン製プリンタLASER SHOT LBP2510に使用されるカートリッジの電子写真感光体に接触させ、芯体に片側4.9Nの荷重が両側に掛かるようにして、40℃/95%RHの環境下に一週間放置した。放置後、荷重を外し、電子写真感光体の表面状態を観察し、変色や張り付きがあるものを「×」、ないものを「○」とした。
【0051】
以下に、実施例と比較例の配合及び結果をまとめる。
【0052】
【表1】

【0053】
実施例1〜3に関しては、本発明に従ったものであり、連続通電による抵抗上昇が抑制されており、電子写真感光体の汚染も無い、良好な現像ローラが得られた。
【0054】
対して比較例1と比較例2は加熱分解により水が発生する添加剤を含有しなかったため、通電耐久試験による抵抗値変動が大きくなる結果となった。比較例3は加熱分解により水が発生する添加剤としてp.p’−オキシビススルホニルヒドラジド(OBSH)を含有しているのが、導電性弾性層をスポンジ単層としたために、被覆層を有するにもかかわらず電子写真感光体汚染が発生した。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係る現像ローラの断面図である。
【図2】本発明に係る導電性ゴムローラの高周波による分子振動加熱手段を用いた連続加硫による加硫成形装置の全体断面図である。
【図3】本発明に係る導電性ゴムローラーを備えた画像形成装置の概略断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 導電性軸芯体(芯金)
2a 導電性弾性層(第1層、スポンジ層)
2b 導電性弾性層(第2層、ソリッドゴム層)
3 被覆層
11 押出し機
12 マイクロ波加硫装置(UHF)
13 熱風加硫装置(HAV)
14 引取り機
15 定尺切断機
21 感光ドラム
22 帯電装置
23 レーザー光
24 現像装置
25 現像ローラ
26 補助ローラ
27 弾性ブレード
28 トナー
29 転写ローラ
30 クリーニングブレード
31 廃トナー容器
32 定着装置
33 転写材
34 現像容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電性軸芯体上に、少なくとも1層はスポンジゴム部材からなる二層以上の構造を備えた導電性弾性層を有し、該導電性弾性層の上に架橋性樹脂を主材とする被覆層を積層する導電性ゴムローラにおいて、
該スポンジゴム部材の組成物は極性ゴムを主成分とし、加熱分解により水が発生する添加剤を含有し、
該組成物が、高周波による分子振動加熱手段により加熱加硫発泡処理された
ことを特徴とする導電性ゴムローラ。
【請求項2】
前記分子振動加熱手段が、マイクロ波発生装置(UHF)である請求項1に記載の導電性ゴムローラ。
【請求項3】
前記極性ゴムが、アクリロニトリルゴム又はエピクロロヒドリン系ゴムである請求項1又は2に記載の導電性ゴムローラ。
【請求項4】
前記添加剤が、重曹又はp.p’−オキシビススルホニルヒドラジド(OBSH)である請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ゴムローラ。
【請求項5】
通電性軸芯体上に、少なくとも1層はスポンジゴム部材からなる二層以上の構造を備えた導電性弾性層を有し、該導電性弾性層の上に架橋性樹脂を主材とする被覆層を積層する現像ローラにおいて、該現像ローラが請求項1〜4のいずれかに記載の導電性ゴムローラであることを特徴とする現像ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−180273(P2008−180273A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−13872(P2007−13872)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】