説明

導電性フィルムおよび前記フィルムを有する複合フィルム

【課題】 優れた導電性と水蒸気バリアー性を有し、特に金属板との接着性に優れた導電性フィルム、及び金属材料と接着させ各種電池の正極板、負極板、集電体、端子などに使用した場合、金属材料に耐食性を付与し、電池の内部抵抗の増加や金属溶出による電池性能の低下を防止する導電性フィルムを提供する。
【解決手段】 熱可塑性樹脂に導電剤を混合してなる導電性樹脂層と、接着性を付与した熱可塑性樹脂に導電剤を混合してなる導電性接着層とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性、水蒸気バリアー性に優れ、特に金属板との接着性に優れた導電性フィルム及び、前記導電性フィルムと金属とからなる複合フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロニクス分野において、高分子材料に求められる主要特性は製品や用途によって様々であるが、成形性、耐熱性、耐久性、高導電性、耐食性、金属板との接着性、リサイクル性、電磁波遮蔽性である。前記した主要特性のいくつかを満足させる樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等に代表される熱硬化性樹脂や、ポリフェニレンオキサイド、液晶ポリマー、ポリイミド、ポリカーボネート等に代表されるエンジニアリングプラスチック等が用いられている。
【0003】
また前記したような主要特性は、エレクトロニクス分野に用いられるフィルムに関しても求められている。すなわち、エレクトロニクス分野においての各々用途を考慮して、成形性、耐熱性、耐久性、高導電性、耐食性、金属板との接着性、リサイクル性、電磁波遮蔽性等の主要特性を一つまたは複数有するフィルムの開発が求められている。
【0004】
例えば、上記導電性を有するフィルムの用途として、リチウム電池、酸化銀電池、空気亜鉛電池、リチウムイオン電池、鉛蓄電池、レドックス電池、ペーパー電池、ポリマー電池、電気二重層コンデンサーなどがある。このような電池には、正極板、負極板、集電体、端子などに金属材料が使用されることがあるが、電解液や充放電条件により金属材料が腐食され、電池の内部抵抗の増加や金属溶出による電池性能の低下が大きな問題となっている。
【0005】
前記問題を解決する、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体樹脂と導電剤と、粘着剤またはプロセスオイルとを、有機溶剤に分散混合した溶液中に混合し、離型性を有する基材に塗布乾燥した後、基材から剥離して作製した導電性フィルムが、分極性電極や電極板との接触抵抗を低減させると報告されている。(例えば特許文献1及び2参照)
【特許文献1】特開平10−4034号
【特許文献2】特開平10−4033号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した導電性フィルムは、金属板との接着性に劣り、水蒸気が透過しやすく、金属板が電解液に触れるため腐食しやすいという問題があった。そこで本発明の目的は、優れた水蒸気バリアー性を有し、特に金属板との接着性に優れた導電性フィルムを提供することにあり、さらに金属材料と接着させ各種電池の正極板、負極板、集電体、端子などに使用した場合、金属材料に耐食性を付与し、電池の内部抵抗の増加や金属溶出による電池性能の低下を防止する導電性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上述の問題点を解消できる導電性フィルムを見出したものであり、その要旨とするところは、熱可塑性樹脂に導電剤を混合してなる導電性樹脂層と、金属との接着性を有する熱可塑性樹脂に導電剤を混合してなる導電性接着樹脂層とを少なくとも有する導電性フィルムであることを特徴とするものである。
【0008】
また、前記導電性フィルムの導電性接着樹脂層を金属板に熱融着させた後に、JIS K−6854−2に準じて、前記金属板から前記導電性フィルムを180°方向に剥離したときの剥離強度が、9.8N/25mm以上であること、前記導電性フィルムのJIS K−7194に準じて四深針法で測定した体積抵抗値が10Ωcm以下であること、前記導電性フィルムのJIS K−7129 B法による水蒸気透過率が、40℃、90%RH下で、10g/(m・24時間)以下であること、前記導電性接着樹脂層のJIS K−7194に準じて四深針法で測定した体積抵抗値が5Ωcm以下であること、前記導電性接着樹脂層に含まれる導電剤の含有率が、前記導電性接着樹脂層の全質量に対して20〜65質量%の範囲であること、前記導電性樹脂層に含まれる導電剤の含有率が、前記導電性樹脂層の全質量に対して10〜80質量%の範囲であること、前記導電性樹脂層及び前記導電性接着樹脂層が、導電性樹脂層、導電性接着樹脂層の順、又は導電性接着樹脂層、導電性樹脂層、導電性接着樹脂層の順に積層されてなること、前記金属板が、ステンレス鋼、チタン若しくはその合金、アルミニウム若しくはその合金、銅若しくはその合金、ニッケル若しくはその合金、及び鋼からなる群より選ばれること、前記導電性接着樹脂層に含まれる導電剤が、カーボン繊維およびカーボンナノファイバーから選ばれる少なくとも1種を含む導電剤であること、前記導電性フィルムの導電性樹脂層が加熱溶融させて成形された層であることを含む。
【0009】
また、本発明は上述の問題点を解消できる導電性複合フィルムを見出したものであり、その要旨とするところは、前記導電性フィルムと金属板とからなることを特徴とする導電性複合フィルムである。また前記金属板が、ステンレス鋼、チタン若しくはその合金、アルミニウム若しくはその合金、銅若しくはその合金、ニッケル若しくはその合金、又は鋼からなる群より選ばれることを特徴とする導電性複合フィルム。
【発明の効果】
【0010】
本発明の導電性樹脂層と導電性接着樹脂層を少なくとも有する導電性フィルムによれば、導電性フィルムと金属との接着性、水蒸気バリアー性、良好な導電性を併せ持つ導電性フィルムを提供することができる。また、本発明の前記導電性フィルムを金属板に貼り合わせた複合フィルムによれば、導電性フィルムと金属板との接着性、張り合わせる導電性フィルムの水蒸気バリアー性が良いために導電性複合フィルムの耐腐食性、良好な導電性を併せもつ導電性複合フィルムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
(導電性樹脂層)
本発明に係る導電性フィルムの導電樹脂層に使用する熱可塑性樹脂としては特に制限はない。例えば、エチレンを含む単独重合体又は共重合体等のポリオレフィン(PO)系樹脂若しくはポリオレフィン系エラストマー、環状ポリオレフィン等の非晶質ポリオレフィン樹脂(APO)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)等のポリスチレン系樹脂若しくはスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)等の水素添加されたスチレン系エラストマー、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、共重合アクリル等のアクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド(PA)系樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等のポリビニルアルコール系樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリサルホン(PS)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂、ポリアリレート(PAR)樹脂、フッ化ビニリデン−四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(THV)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、フッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニル(PVF)、等のフッ素系樹脂若しくはそのエラストマー、(メタ)アクリレート系樹脂などが挙げられる。
【0012】
上記熱可塑性樹脂の中では、水蒸気バリアー性と耐酸性とに優れるポリオレフィン(PO)系樹脂、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)等の水素添加されたスチレン系エラストマー、又はポリオレフィン系エラストマー、フッ素系樹脂又はフッ素系エラストマーの使用が好ましく、中でもポリプロピレン系エラストマー及びフッ素系エラストマーが特に水蒸気バリアー性と耐酸性とに優れているため好ましい。
【0013】
導電性樹脂層に含まれる導電剤は、天然黒鉛、熱分解黒鉛、キッシュ黒鉛等の黒鉛粉、酸性溶液に前述した黒鉛粉を浸漬させた後、加熱して膨張させた膨張黒鉛、ケッチェンブラック、アセチレンブラックやファーネス法等で作られたカーボンブラック、ポリアクリルニトリル(PAN)系、ピッチ系等のカーボン繊維、アーク放電法、レーザ蒸着法、気相成長法等で作られたカーボンナノファイバー、タングステンカーバイト、シリコンカーバイト、炭化ジルコニウム、炭化タンタル、炭化チタン、炭化ニオブ、炭化モリブデン、炭化バナジウムなどの金属炭化物、酸化チタン、酸化ルテニウム、酸化インジウムなどの金属酸化物、窒化クロム、窒化アルミニウム、窒化モリブデン、窒化ジルコニウム、窒化タンタル、窒化チタン、窒化ガリウム、窒化ニオブ、窒化バナジウム、窒化ホウ素などの金属窒化物、鉄繊維、銅繊維、ステンレス繊維などの金属繊維、チタン粉、ニッケル粉、錫紛、タンタル紛、ニオブ粉などの金属粉末が挙げられる。
上記導電剤の中でも特に耐酸性の優れる、黒鉛粉、カーボンブラック、カーボン繊維、又はカーボンナノファイバーの使用が好ましい。
【0014】
上記カーボンナノファイバーの繊維径の下限値は、0.0007μm、好ましくは0.005μm、さらに好ましくは、0.01μmであり、上限値は、0.5μm、好ましくは0.2μm、さらに好ましくは0.15μmである。繊維長の下限値は、0.1μm、好ましくは0.15μm、さらに好ましくは0.2μmであり、上限値は、30μm、好ましくは10μm、さらに好ましくは5μmの範囲が、カーボンナノファイバーどうしの接点が多くなり、導電パスが形成しやすくなるため、導電性に優れ好ましい。
【0015】
導電性樹脂層における導電剤の含有率の下限値は、導電性樹脂層の全質量に対して10質量%、好ましくは12質量%、さらに好ましくは15質量%であり、上限値は80質量%、好ましくは77質量%、さらに好ましくは75質量%である。熱可塑性樹脂内の導電剤の含有率が80質量%以下であれば、樹脂の流動性がよく薄膜化が可能であり、また導電性樹脂層の強度もよい。また、熱可塑性樹脂内の導電剤の含有率が10質量%以上であれば、導電性を十分に発現可能である。
【0016】
(導電性接着樹脂層)
本発明に係る導電性フィルム中の導電性接着樹脂層に使用する熱可塑性樹脂としては、酸性変性された熱可塑性樹脂が好ましい。例えば、酸変性された、エチレンを含む単独重合体若しくは共重合体等のポリオレフィン(PO)系樹脂、ポリオレフィン系エラストマー、環状ポリオレフィン等の非晶質ポリオレフィン樹脂(APO)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)等のポリスチレン系樹脂、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)等の水素添加されたスチレン系エラストマー、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、共重合アクリル等のアクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド(PA)系樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等のポリビニルアルコール系樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリサルホン(PS)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂、ポリアリレート(PAR)樹脂、フッ化ビニリデン−四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(THV)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、フッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニル(PVF)、等のフッ素系樹脂又はエラストマー、(メタ)アクリレート系樹脂などが挙げられる。
【0017】
上記導電性接着樹脂層に使用する熱可塑性樹脂の中で、金属との接着性、耐酸性に優れるとの理由から、酸変性された、ポリオレフィン(PO)系樹脂、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)等の水素添加されたスチレン系エラストマーの使用が好ましく、中でも酸変性されたSEBSが特に金属との接着性、耐酸性に優れるため好ましい。
【0018】
また、酸変性する方法は特に制限はないが、無水マレイン酸モノマーを共重合する方法を用いることが接着性を向上させる観点からは好ましい。
【0019】
導電性接着樹脂層に含まれる導電剤としては、カーボン繊維又はカーボンナノファイバーが好ましい。導電性接着樹脂層に、カーボン繊維およびカーボンナノファイバーを使用すると、導電性接着樹脂層からカーボン繊維又はカーボンナノファイバーが露出することで、金属板との接触抵抗を大幅に低減することができる。
【0020】
カーボン繊維は、ポリアクリルニトリル(PAN)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維がよく、繊維径の下限値は1.0μm、好ましくは5.0μm、さらに好ましくは10μm、上限値は30μm、好ましくは25μm、さらに好ましくは20μmの範囲が望ましい。また、繊維長の下限値は0.03mm、好ましくは0.05mm、さらに好ましくは0.10mm、上限値は10mm、さらに好ましくは5.0mm、さらに好ましくは3.0mmの範囲がカーボン繊維どうしの、接点が多くなり、導電パスが形成しやすくなるため導電性に優れ好ましい。
【0021】
導電性接着樹脂層に含まれるカーボンナノファイバーは、アーク放電法、レーザ蒸着法、気相成長法、液相成長法等によって得られる所謂のカーボンナノチューブを使用することができる。カーボンナノファイバーとしては、炭素のチューブ構造が単一チューブであるシングル型、二重チューブであるダブル型、三重以上となっているマルチ型構造を含み、さらに、チューブの少なくとも一方の端が閉じているナノホーン型、底の無いカップ形状をなす炭素網層が多数積層されたカップ型等の形状も含まれる。
【0022】
またカーボンナノファイバーの径の下限値は0.0007μm、好ましくは0.05μm、さらに好ましくは0.01μmであり、上限値は0.5μm、好ましくは0.2、μm、さらに好ましくは0.15μmであることが望ましい。また、カーボンナノファイバーの長さの下限値は0.1μm、好ましくは0.15μm、さらに好ましくは0.2μmであり、上限値は30μm、さらに好ましくは10μm、さらに好ましくは5μmであることが望ましい。カーボンナノファイバーの径が0.0007μm以上であり、かつ長さが0.1μm以上であれば、かさ密度が小さく、また飛散しにくく、作業性が良く、衛生的にも好ましい。また、カーボンナノファイバーの径が0.5μm以下であり、かつ長さが30μm以下であれば、カーボンナノファイバー同士の接合点が多く、良好な導電性が得られ、かつ抵抗値も低くすることができる。
【0023】
導電性接着樹脂層に含まれる導電剤の含有率の下限値は、導電性接着樹脂層の全質量に対して20質量%、好ましくは22質量%、さらに好ましくは25質量%であり、上限値は65質量%、好ましくは63質量%、さらに好ましくは60%質量であることが望ましい。導電性接着樹脂層に含まれる導電剤の含有率が20質量%以上であれば、良好な導電性が得られ、かつ金属板に貼り合わせた場合の接触抵抗も小さくすることができる。一方、導電性接着樹脂層に含まれる導電剤の含有率が65質量%以下であれば、導電剤の割合が適当であるため、金属板と貼り合わせた際に十分な剥離強度が得られるため好ましい。
【0024】
本発明に係る導電性フィルムにおいて、「金属との接着性を有する樹脂」とは、金属板に熱融着させた場合に金属板と接着可能な樹脂をいう。本発明では、接着性を表す指標として接着強度を使用しており、導電性フィルムの導電性接着樹脂層を金属板に熱融着させた後に、JIS K−6854−2に準じて、前記金属板から導電性フィルムを180°方向に剥離したときの剥離強度で表すことができ、4.9N/25mm以上を有するものを、接着性を有する樹脂と定義している。
【0025】
本発明に係る導電性フィルムは、前記剥離強度が9.8N/25mm以上、好ましくは15N/25mm以上、さらに好ましくは20N/25mm以上であることが望ましい。剥離強度が9.8N/25mm以上であれば、導電性フィルムと金属板の複合フィルムを電池の部材に使用した場合、位置的なずれが生じ難く、電池が組み立て易い。一方、本発明の剥離強度の上限値は、特に限定されるものでは無いが、導電性フィルムと金属板の複合フィルムを電池の部材等に使用する場合には150N/25mmあれば十分である。
【0026】
本発明に係る導電性フィルムを金属板に接着させる場合、金属板を構成する金属としては、例えば、ステンレス鋼、チタン若しくはその合金、アルミニウム若しくはその合金、銅若しくはその合金、ニッケル若しくはその合金、鋼等が挙げられる。中でも耐酸性の観点よりステンレス鋼を使用することが好ましい。
【0027】
本発明に係る導電性フィルムの体積抵抗値は、JIS K 7194 に準じて求めた体積抵抗値が10Ωcm以下、好ましくは8Ωcm以下、さらに好ましくは6Ωcm以下であることが望ましい。導電性フィルムの体積抵抗値が10Ωcm以下であれば、電池部材として使用した場合、電気の内部抵抗の増加を抑えることができる。一方、本発明に係る導電性フィルムの体積抵抗値としての下限値は特に定まるものでは無いが、本発明で用いられる樹脂および導電材等の材質を考慮すると0.1Ωcm以上であることが望ましい。
【0028】
導電性接着樹脂層の体積抵抗値は、JIS K 7194に準じて求めた体積抵抗値が5Ωcm以下、好ましくは3Ωcm以下、さらに好ましくは1Ωcm以下であることが望ましい。導電性接着樹脂層の体積抵抗値が5Ωcm以下であれば、金属板に貼り合わせた場合の接触抵抗の増大を抑えることができ、電池部材として使用した場合、電気の内部抵抗の増加を抑えることができる。一方、本発明に係る導電樹脂層の体積抵抗値としての下限値は特に定まるものでは無いが本発明で用いられる樹脂および導電材等の材質を考慮すると0.01Ωcm以上であることが望ましい。
【0029】
本発明に係る導電性フィルムのJIS K−7129 B法による水蒸気透過率は、導電性フィルムの総厚み100μmの場合、40℃、90%RHの環境下で、10g/(m・day)以下、好ましくは8g/(m・day)以下とすることができる。水蒸気透過率が10g/(m・day)以下であれば、導電性フィルムと接する金属材料表面の腐食を防ぐことができ、また電池の内部抵抗の増加や金属溶出による電池性能が低下するという問題を抑制することができる。一方、本発明に係る導電性フィルムの下限値は特に制限は無いが、本発明で用いる樹脂フィルムと及び導電材の材質を考慮すると、水蒸気透過率0.1g/(m・day)以上であることが望ましい。
【0030】
本発明に係る導電性フィルムには、本発明の効果を阻害しない範囲で、酸化防止剤、粘着付与剤、滑剤、薄板晶物、可塑剤などの添加剤等を混合することが可能である。
【0031】
酸化防止剤としては、例えば、イルガノックス1010,イルガノックス1076などのフェノール系、ジフェニルノニルフェニルホスファイトなどのリン系、DLTTDP(ジラウリル−3,3チオジプロピオン酸エステル)などのイオウ系、などが挙げられる。
【0032】
粘着付与剤としては、例えば、ロジン系、水添ロジン系、水添ロジンエステル系、テルペン系、水添テルペン系、テルペン−フェノール系、石油樹脂系、水添石油樹脂系、スチレン系、イソプレン系、などが挙げられる。
【0033】
滑剤としては、例えば、炭化水素系、脂肪酸系、エステル系、アルコール系、天然ワックス系が挙げられる。
【0034】
薄板晶物としては、例えばモンモリトナイト、カリオン、タルクなどの層状粘度鉱物や黒鉛などが挙げられる。
【0035】
可塑剤としては、例えば流動パラフィン、石油樹脂、パラフィンワックス、などが挙げられる。
【0036】
本発明に係る導電性フィルムの層構成は、特に制限はないが、導電性樹脂層/導電性接着樹脂層、又は導電性接着樹脂層/導電性樹脂層/導電性接着樹脂層の層構成からなることが好ましい。前記層構成を採用することにより、金属との接着性を十分に発現することができる。
【0037】
(導電性フィルムの製法)
導電性樹脂層の製法としては、特に制限は無く、樹脂を加熱溶融させて層を成形する方法や、樹脂からなるコート材をコーティングし、層を成形する方法を採用することができる。ここで、加熱溶融させて成形法としては、例えば、押出成形法やカレンダーロール成形法、インフレーション成形法、圧縮成形法、射出成形法、トランスファー成形法、ブロー成形法などがある。一方コート材をコーティングし層を成形する方法としては、材料をに溶融させ流動性を持たせた溶液(ドープ)を、表面が平滑なドラム(キャスティングドラム)やステンレスの平滑ベルト上に流し込んで付着させ、これを加熱する工程に通して溶媒を蒸発させ、フィルムを成形する方法(溶融流延法)がある。しかし、導電性樹脂層の製法としては、加熱溶融させる製法の方が、層の気密性が良くなり、水蒸気バリアー性が良好な点で好ましい。さらに、押出成形法、カレンダー成形法は、薄膜から厚膜まで厚み精度良く成形でき、生産性に優れる点で好ましい成形法である。
【0038】
導電性接着樹脂層の製法は、接着性を付与した熱可塑性樹脂と導電剤を溶媒中に溶解、分散させてなる液状組成物を、支持体の平滑面に塗工し、乾燥させて、支持体上に導電性接着樹脂層を形成した後、予め形成しておいた導電性樹脂層の少なくとも片面に、導電性樹脂層と導電性接着樹脂層とが互いに向き合うように配置し、熱圧着法等により、導電性樹脂層と導電性接着樹脂層を一体化した後、支持体を剥離する方法が好ましい。
【0039】
上記支持体としては、公知の各種フィルムを用いることができる。例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、セロハン、ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリプロピレン等のフィルムが挙げられ、必要に応じて、これらのフィルム表面をシリコーン等で離型処理しても良い。中でも、シリコーンで離型処理されたポリプロピレンフィルム及びポリエステルフィルムが、剥離容易性などの点から好ましい。
【0040】
また、上記支持体の厚みは、5〜500μm、好ましくは10〜300μmの範囲である。支持体の厚みが5μm未満では基材フィルムとして充分な強度が得られず皺が入りやすくなり、また500μmを越えると腰が強くなりすぎて、取り扱いにくく作業性が悪いという問題がある。
【0041】
本発明の導電性接着樹脂層と金属板とを熱圧着する場合の温度の下限値は、110℃、好ましくは130℃、さらに好ましくは150℃であり、上限値は250℃以下、好ましくは230℃以下、さらに好ましくは210℃以下である。250℃未満では、導電性接着樹脂層が流れず、また導電性接着樹脂層中のバインダー樹脂が熱劣化しなく、金属板との接着性が発現する。また、110℃以上では、導電性接着樹脂中のバインダー樹脂が溶融するので、金属板との接着性が発現する。
【0042】
本発明に係る導電性フィルムは、金属材料と接着させ、各種電池の正極板、負極板、集電体、端子などに使用した場合、金属材料に耐食性を付与し、電池の内部抵抗の増加や金属溶出による電池性能の低下を防止することができる。
【0043】
[導電性複合フィルム]
本発明に係る導電性フィルムの用途は、特に限定されるものではないが、金属板と接着し複合フィルムとして使用しても、導電性フィルムとして単独で使用しても良い。金属板と接着した複合フィルムの用途としては、特に限定されるものではないが、例えば、電磁波シールド材、燃料電池用セパレータ、電池及びキャパシター用電極材、ラミネート型電池の端子材、導電性パッキン材、生体用電極材、各種センサー部材、電子部品製造用治具、電解メッキ用電極材などがある。また、導電性フィルムとして単独で使用する用途としては、特に限定されるものではないが、例えば、電磁波シールド材、電池及びキャパシター用集電体、導電性パッキン材、生体用電極材、各種センサー部材、静電気防止用又は除去用フィルムなどがある。
【0044】
本発明に係る導電性複合フィルムに使用する金属板の種類としては、特に制限されるものではないが、例えば、ステンレス鋼、チタン若しくはその合金、アルミニウム若しくはその合金、銅若しくはその合金、ニッケル若しくはその合金、鋼等が挙げられる。中でも耐酸性の観点よりステンレス鋼、チタン若しくはその合金を使用することが好ましい。
【0045】
本発明に係わる導電性複合フィルムの金属板と接着する方法としては、特に制限なく接着することができる。接着方法として例えば、熱をかけて圧着する熱圧着法や、接着剤又はプライマーを使用したラミネート法等があげられる。中でも、有機溶剤を使用しない熱圧着法により接着する方法が、作業環境の安全性、衛生性に優れ、更には接着界面の耐薬品性にも優れ、生産工程が軽減できるという点で望ましい。
【0046】
本発明に係わる導電性複合フィルムに使用する金属板の厚さは、上限値は、5mm以下、好ましくは3mm以下 さらに好ましくは1mm以下であり、下限値は、10μm以上、好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上である。金属板が5mmを越えると、金属板重量が重くなり、取り扱いがしにくく、導電性フィルムとの貼り合わせが効率的にできないという問題が生じやすい。一方金属板が10μm未満であると、金属板強度が不足し、破れやすくなり、導電性フィルムとの貼り合わせがし難いという問題が発生しやすい。
[実施例]
以下、実施例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0047】
(導電性樹脂層1〜6の作製)
熱可塑性樹脂と導電剤とを表1記載の割合で2軸押出機(押出機温度230℃)にて混合し、さらに得られた混合物を、単軸押出機(押出機温度230℃)にて口金から押出して、導電性樹脂層1〜6を作製した。
得られた導電性樹脂層1〜3、5、及び6の厚みは、いずれも94μmであった。
導電性樹脂層4に関しては、導電剤の含有率が多いため薄膜化不可能であった。
なお、表1記載の熱可塑性樹脂及び導電剤は以下のものを使用した。
1.ポリオレフィン系エラストマー(リアクター型PP系軟質樹脂)
「出光興産(株)」製 M142E 比重0.88
2.カーボンブラック
「ライオン(株)」製 ケッチェンブラックEC600JD 比重1.5
3.人造黒鉛粉
「昭和電工(株)」製 UFG−30 比重2.2
4.カーボンナノファイバー
「昭和電工(株)」製 VGCF 比重2
5.フッ素系エラストマー
「住友スリーエム(株)」製 THV220G 比重2
【0048】
(導電性樹脂層7の作製)
熱可塑性樹脂(「旭化成ケミカルズ(株)」製 タフテックH1052 SEBS樹脂 比重0.89 MFR13g/10min. 硬さ67(JIS K 6253) 引張強さ11.8MPa 伸び700% 300%の引張応力2.5MPa スチレン/エチレン・ブチレン比(wt比)20/80)とカーボンブラック(ライオン(株))製 ケッチェンブラックEC600JD 比重1.5)を表1記載の通り、それぞれシクロヘキサンに分散し、固形分濃度16質量%になるように、分散液を作製した。
これらの分散液を基材フィルム(離型処理されたポリプロピレンフィルム:厚み50μm)上にバーコータ(「松尾産業製」)で塗布し、80℃で乾燥し、基材フィルム上に導電性樹脂層7を作製した。
なお、導電性樹脂層7は、上記塗布作業を複数回実施し、厚みが94μmになるように作製した。
【0049】
[表1]

【0050】
(導電性接着樹脂層1〜9の作製)
接着性を付与した熱可塑性樹脂(「旭化成ケミカルズ(株)」製 タフテックM1943 無水マレイン酸変性SEBS樹脂 比重0.90 MFR8g/10min 硬さ67(JIS K 6253) 引張強さ11MPa 伸び650% 300%の引張応力2.9MPa スチレン/エチレン・ブチレン比(wt比)20/80、酸価10mgCHONa/g )と導電剤を表2記載の通り、それぞれシクロヘキサンに分散し、固形分濃度8重量%になるように、分散液を作製した。
比較例として、接着性を有さない熱可塑性樹脂(「旭化成ケミカルズ(株)」製 タフテックH1052 SEBS樹脂 比重0.89 MFR13g/10min 硬さ67(JIS K 6253) 引張強さ11.8MPa 伸び700% 300%の引張応力2.5MPa スチレン/エチレン・ブチレン比(wt比)20/80 )と導電剤を表2記載の通り、それぞれシクロヘキサンに分散し、固形分濃度8重量%になるように、分散液を作製した。
これらの分散液を基材フィルム(離型処理されたポリプロピレンフィルム:厚み50μm)上にバーコータ(「松尾産業製」)で塗布し、80℃で乾燥し、基材フィルム上に導電性接着樹脂層1〜9を作製した。
尚、導電性接着樹脂層1〜9は、バーコータの番手を変更して、厚みが、いずれも3μmになるように、作製した。
導電性接着樹脂層1〜9を基材フィルムより剥離し、体積抵抗値を測定した結果を表2に記載した。
1.カーボンナノファイバー
「昭和電工(株)」製 VGCF 比重2
2.カーボン繊維
「大阪ガスケミカル(株)」製 ドナカーボ・ミルド SG−249
比重1.6
【0051】
(導電性接着樹脂層10の作製)
フッ素エラストマー(「住友スリーエム(株)」製 THV220G 比重2)に無水マレイン酸を変性処理し、接着着性を付与した熱可塑性樹脂と導電剤を表2記載の通り、それぞれMIBK(メチルイソブチルケトン)に分散し、固形分濃度8重量%になるように、分散液を作製した。
分散液を基材フィルム(離型処理されたポリプロピレンフィルム:厚み50μm)上にバーコータ(「松尾産業製」)で塗布し、80℃で乾燥し、基材フィルム上に導電性接着樹脂層10を作製した。
尚、導電性接着樹脂層10は、バーコータの番手を変更して、厚みが、いずれも3μmになるように、作製した。
導電性接着樹脂層10を基材フィルムより剥離し、体積抵抗値を測定した結果を表2に記載した。
[表2]

[実施例1〜12]
【0052】
(導電性フィルムの作製)
表1の導電性樹脂層1,2,3,6と表2で示される導電性接着層1,2,3,4,10を、表3の実施例1〜12に記載の組み合わせで、基材フィルム/導電性接着層/導電性樹脂層/導電性接着層/基材フィルムの順に配置し、熱プレスにて一体化し、基材フィルムを剥離し、表3の実施例1〜12に記載の導電性フィルム1〜12を作製した。
熱プレス法の条件は、加熱温度80℃、圧力4.9×10Pa(50kgf/cm)であった。
得られた導電性フィルムの厚みはいずれも100μmであり、導電性接着層側から測定した体積抵抗値及び導電性フィルムの水蒸気透過率を表3に示した。
【0053】
[参考例1〜6][比較例1]
表1に示す導電性樹脂層1,5,7と、表2に示す導電性接着層1,5,6,7,8,9を実施例と同様の方法で一体化し、表3の比較例を作製した。
得られた導電性フィルムの厚みは100μmであり、導電性接着層側から測定した体積抵抗値及び導電性フィルムの水蒸気透過率を表3に示した。
【0054】
(水蒸気透過率の測定法)
本発明における水蒸気透過率は、JIS K−7129 B法に準じ、40℃、90%RH下で、PERMATRAN W 3/31(米国 MOCON社製)を用いて測定した。単位はg/m2/24時間で表した。
【0055】
(体積抵抗値の測定)
本発明における体積抵抗値は、JIS K 7194に準じて、以下のように行い、単位はΩcmで表した。
1. 測定装置
Loresta HP (三菱化学(株)製)
2. 測定方式
四端子四探針法(ASPタイププローブ)
3. 測定印可電流
100mA
【0056】
(金属板との貼り合わせ)
表3記載の実施例および比較例の導電性フィルムをSUS板(厚み0.1mm SUS304)との組み合わせで、SUS板/導電性フィルム/SUS板の順に配置し、熱プレスにて一体化した。
熱プレス法の条件は、加熱温度180℃、圧力2.94×10Pa(30kgf/cm)であった。
SUSから導電性フィルムを180°方向に剥離する際の剥離強度測定の結果を表3に示した。
【0057】
(実施例1のチタン、アルミ、圧延鋼板について)
表3記載の実施例1の導電性フィルム1と、チタン1種(0.1mm)、アルミ#1100(0.1mm)、圧延鋼板(0.1mm)を、金属板/導電性フィルム/金属板の順に配置し、熱プレスにて一体化した。
熱プレス法の条件は、加熱温度180℃、圧力2.94×10Pa(30kgf/cm)であった。
金属板から導電性フィルムを180°方向に剥離する際の剥離強度測定の結果を表3に示した。
【0058】
(剥離強度の測定)
本発明における剥離強度は、一方のチャックに金属板、他方のチャックに導電性フィルム/SUS板を挟み、引っ張り試験機((株)インテスコ社製:恒温槽付き材料試験器201X)にて剥離強度を測定した(JIS K−6854−2)。測定条件は、貼り合わせたサンプル25mm幅のものを使用し、温度25℃でT型180°剥離、剥離速度50mm/分にて実施した。単位はN/25mmで表した。
【0059】
[表3]

【0060】
導電性接着樹脂層に含まれる導電剤の質量比が、20〜65質量%の範囲である、導電性接着樹脂層1〜4,10を用いた実施例1〜9の導電性フィルムは、表3に示す通り、体積抵抗が10mΩcm以下と低く、導電性に優れ、水蒸気透過率も10g/m/24時間以下とバリアー性に優れた導電性フィルムであった。
【0061】
さらに、実施例1〜9の導電性フィルムは、表3に示す通り、SUS板と貼り合わせた後、SUSから導電性フィルムを180°方向に剥離する際の剥離強度は、いずれも9.8N/25mm以上であり、金属板との接着性に優れた導電性フィルムであった。
【0062】
また、表3に示す通り、導電性フィルム1をチタン板及びアルミ板、銅板と貼り合わせた後、チタン板及びアルミ板、銅板から導電性フィルムを180°方向に剥離する際の剥離強度は、いずれも9.8N/25mm以上であり、金属板との接着性に優れた導電性フィルムであった。
【0063】
一方、導電性接着樹脂層に含まれる導電剤の質量比が、20質量%未満である導電性接着樹脂層6及び導電性接着樹脂層8を用いた参考例2及び参考例4の導電性フィルムは、表3に示す通り、水蒸気透過率が低く、金属板との接着強度も大きいが、体積抵抗が10mΩcmより大きくなり、導電性に若干劣ることがわかった。
【0064】
また、導電性接着樹脂層に含まれる導電剤の質量比が、65質量%を越える導電性接着樹脂層5及び導電性接着樹脂層7を用いた参考例1及び参考例3の導電性フィルムは、表3に示す通り、導電性、水蒸気バリアー性には優れているが、SUS板と貼り合わせた後、SUSから導電性フィルムを180°方向に剥離する際の剥離強度は、いずれも9.8N/25mm未満であり、金属板との接着性に若干劣る導電性フィルムであった。
【0065】
また、導電性樹脂層を流延法にて作製した導電性樹脂層7を用いた参考例5の導電性フィルムは、表3に示すように、接着性、導電性には優れているが、水蒸気透過率が10g/m2/24時間以上となり、水蒸気バリアー性に若干劣る導電性フィルムであった。
また、導電性樹脂層の導電剤の質量比が10質量%以下である導電性樹脂層5を用いた参考例6の導電性フィルムは、接着性、水蒸気バリアー性には優れているが、体積抵抗が10mΩcmより大きくなり、導電性に若干劣ることがわかった。
【0066】
さらに、酸変性されてないSBESを使用した導電性接着樹脂層9を用いた比較例1の導電性フィルムは、表3に示すように導電性、水蒸気バリアー性には優れているが金属板には接着しない。
【0067】
以上、本発明の形態によれば、優れた導電性と水蒸気バリアー性を有し、特に金属板との接着性に優れた導電性フィルムが提供でき、さらに金属材料と接着させ各種電池、コンデンサーの正極板、負極板、集電体、端子などに使用した場合、金属材料に耐食性を付与し、電池の内部抵抗の増加や金属溶出による電池性能の低下を防止することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂に導電剤を混合してなる導電性樹脂層と、金属との接着性を有する熱可塑性樹脂に導電剤を混合してなる導電性接着樹脂層とを少なくとも有することを特徴とする導電性フィルム。
【請求項2】
前記導電性フィルムの導電性接着樹脂層を金属板に熱融着させた後に、JIS K−6854−2に準じて、前記金属板から前記導電性フィルムを180°方向に剥離したときの剥離強度が、9.8N/25mm以上である請求項1記載の導電性フィルム。
【請求項3】
前記導電性フィルムのJIS K−7194に準じて四深針法で測定した体積抵抗値が10Ωcm以下である請求項1乃至2のいずれか1項に記載の導電性フィルム。
【請求項4】
前記導電性フィルムのJIS K−7129 B法による水蒸気透過率が、40℃、90%RH下で、10g/(m・24時間)以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の導電性フィルム。
【請求項5】
前記導電性接着樹脂層のJIS K−7194に準じて四深針法で測定した体積抵抗値が5Ωcm以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の導電性フィルム。
【請求項6】
前記導電性接着樹脂層に含まれる導電剤の含有率が、前記導電性接着樹脂層の全質量に対して20〜65質量%の範囲である請求項1乃至5いずれか1項に記載の導電性フィルム。
【請求項7】
前記導電性樹脂層に含まれる導電剤の含有率が、前記導電性樹脂層の全質量に対して10〜80質量%の範囲である請求項1乃至6のいずれか1項に記載の導電性フィルム。
【請求項8】
前記導電性樹脂層及び前記導電性接着樹脂層が、導電性樹脂層、導電性接着樹脂層の順、又は導電性接着樹脂層、導電性樹脂層、導電性接着樹脂層の順に積層されてなる請求項1乃至7のいずれか1項に記載の導電性フィルム。
【請求項9】
前記請求項2記載の金属板が、ステンレス鋼、チタン若しくはその合金、アルミニウム若しくはその合金、銅若しくはその合金、ニッケル若しくはその合金、及び鋼からなる群より選ばれる請求項1乃至8のいずれか1項に記載の導電性フィルム。
【請求項10】
前記導電性接着樹脂層に含まれる導電剤が、カーボン繊維およびカーボンナノファイバーから選ばれる少なくとも1種を含む導電剤である請求項1乃至9のいずれか1項に記載の導電性フィルム。
【請求項11】
前記導電性フィルムの導電性樹脂層が加熱溶融させて成形された層である請求項1乃至10のいずれか1項に記載の導電性フィルム。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の導電性フィルムと金属板とからなることを特徴とする導電性複合フィルム。
【請求項13】
前記金属板が、ステンレス鋼、チタン若しくはその合金、アルミニウム若しくはその合金、銅若しくはその合金、ニッケル若しくはその合金、又は鋼からなる群より選ばれることを特徴とする請求項12に記載の導電性複合フィルム。

【公開番号】特開2008−207404(P2008−207404A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−44703(P2007−44703)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】