説明

導電性ローラおよび導電性ローラの製造方法

【課題】被覆層形成する際に用いられる塗工液中に水を添加することで、材料ロット差によって変化する被覆層の抵抗値の是正や、空気に長期間触れることで抵抗値が変化してしまうような塗工液に対して経時安定性を付与した導電性ローラおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】通電性軸芯体a上に少なくとも1層以上の導電性弾性層bおよび被覆層cを順次積層する導電性ローラにおいて、該被覆層は浸漬塗工法によって得られ、浸漬させる塗工液がウレタン樹脂、有機溶剤および導電剤を含有するものを基本構成材料とし、この基本構成材料にさらに、該塗工液中の水分量が3.0質量%以下となる範囲で水が添加されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置に用いる導電性ローラおよび導電性ローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真などの画像形成装置の部品として用いられる現像ローラには、感光体との均一な圧接幅を確保すること、さらに電圧を印加してトナー像を感光体上に形成するために、均一な導電性や耐リーク性のあることが求められる。そこで例えば通電性軸芯体(芯金と表すことがある)上に、電子導電剤やイオン導電剤等の導電剤を添加して所望の抵抗値に調整した弾性層を形成し、その外周に耐磨耗性やトナー帯電性、トナー搬送性を得るために表面粗さを確保するための樹脂粒子や導電性を確保するための導電剤を適宣添加したナイロン、ウレタン等の樹脂から形成した表面層を設ける場合が多い。また現像ローラの抵抗安定化や弾性層からのブリード成分の染み出しによる感光体汚染の防止のため、弾性層と表面層の間に抵抗調整層(中間層)を設ける場合もある。
【0003】
被覆層を形成する場合、まず結着樹脂および導電剤、表面粗さを確保するための樹脂粒子等の各種材料に溶剤を加え所望の粘度に調整し、必要であればビーズミル等の装置を用いて分散をおこない塗工液を作製する。この塗工液をディッピング、スプレー塗布、ロールコート、刷毛塗りなどの方法により導電性弾性層表面に塗布し乾燥させることで表面被覆層を得る。
【0004】
被覆層にウレタン樹脂を用いる場合を例に挙げると、塗工液の材料にはウレタン溶液、導電剤、樹脂粒子、有機溶剤等が用いられる。これらの材料から均一な塗工液を得るために、ビーズミルによって導電剤を粉砕、分散する工程が加わる場合もある。このときウレタン溶液および導電剤の材料ロットによって、出来上がる被覆層の抵抗値が変化することが多い。被覆層の抵抗値は電子写真画像への影響が大きいため、被覆層の抵抗値のばらつきを無視すると、トナーかぶりの発生や画像濃度のばらつきといった問題が発生する。また材料ロット差による被覆層の電流値変化を、導電剤の添加量で是正しようとすると、膜硬度や表面粗さ等の、被覆層の機械的物性も変化してしまうことが多く、こちらもトナーかぶりの発生や画像濃度などに影響を与えてしまう。
【0005】
さらには、用いるウレタン溶液、導電材および有機溶剤の組合せによっては、分散した塗工液の経時安定性が悪い場合がある。つまり、調合したばかりの塗工液と数日間空気の触れる環境で放置した塗工液とで、抵抗値が変化していることがある。
【0006】
例えば先行技術においては、導電性基体上に高分子材料の層と、導電性フィラーが主に配合された材料で形成される層との少なくとも2層構造を有する現像ローラにおいて、上記導電性基体上の第1層が高分子材料(ベースポリマー)の表層に導電性フィラーを含む導電性高分子材料(マトリクスポリマー)を被覆した第1の複合導電性繊維より形成され、上記第1層上の第2層が上記第1層とは逆に導電性ポリマーの表層に高分子材料が被覆された第2の複合導電性繊維より形成されることを特徴とする現像ローラを用いることで、初期および経時で高画質な画像を得ることを可能にするとある(特許文献1)。
【0007】
しかしながら第1層および第2層に用いられる複合導電性繊維を作製すること、さらには複合導電性繊維を導電性基体上に均一に積層させ安定に生産する難易度が高いと考えられ、生産設備も複雑化してしまう。
【0008】
また、シャフトの外周面上に、基層と、接着層と、少なくとも下層および上層の二層を含む塗膜層とが順次設けられてなる帯電ローラにおいて、上記基層の抵抗値が0.03MΩ・cm以下であり、上記基層がウレタンフォーム、上記塗膜層のうち少なくとも一層がアクリル樹脂を含み、上記塗膜層のうち最表面層にフッ素樹脂を含むことを特徴とする帯電ローラとすることで、基層と接着層との抵抗を適正な範囲内とすることにより、良好な帯電性能を有し、画像不良を生ずることのない、高性能の帯電ローラを提供するとある(特許文献2)。
【0009】
しかしながらこの技術を現像ローラに応用したとしても、基層、接着層、被覆第1層、被覆第2層という多層構成のため、ローラ作製に手間がかかり、工程が長いことによる生産設備の複雑化、さらに不良品発生リスクの増加という問題も発生する。
【特許文献1】特開平11-143215号公報
【特許文献2】特開2002-229305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記従来技術の現状に鑑みなされたものであり、材料ロット差によって変化する被覆層の抵抗値のばらつきを簡単な方法で是正すること、空気に長期間触れることで抵抗値が変化してしまうような塗工液においても経時安定性が得られるようにすること、さらには被覆層の抵抗値を任意に修正することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題を調査する中で、塗工液の抵抗値は、塗工液中に含まれる水分に影響を受けていることが解かった。さらに、経時安定性の悪い塗工液には、空気と触れ合うことで空気中の水分を吸収し易いものが多く、水分を含むに従って抵抗値が変化していることに気づいた。そこで塗工液に水を故意に加えることで上記問題を解決するに至った。
【0012】
以下に、導電性ローラとして、現像ローラを例にして本発明に関して詳述するが、現像ローラ以外の、帯電ローラ、転写ローラ、クリーニングローラ、除電ローラ等の被接触物を電気的にコントロールする導電性ローラにおいても、同様の考え方を適用することが出来る。
【0013】
上記課題を達成した本発明の導電性ローラは、通電性軸芯体上に少なくとも1層以上の導電性弾性層および被覆層を順次積層する導電性ローラにおいて、該被覆層は浸漬塗工法によって得られ、浸漬させる塗工液はウレタン樹脂に有機溶剤と導電剤を添加したものを基本構成材料とし、この基本構成材料にさらに該塗工液中の水分量が3.0質量%以下となる範囲で水が添加されていることを特徴とする。
【0014】
また、上記課題を達成した本発明の導電性ローラの製造方法は、通電性軸芯体上に少なくとも1層以上の導電性弾性層及び被覆層を順次積層する導電性ローラの製造方法において、前記通電性軸芯体の外周面上に前記弾性層を形成する工程、ウレタン樹脂に有機溶剤と導電剤を添加したものを基本構成材料とし、この基本構成材料にさらに該塗工液中の水分量が3.0質量%以下となる範囲で水が添加されている塗工液を調整する工程、前記塗工液を前記弾性層の外周面上に浸積塗工して前記被覆層を形成する工程、前記被覆層を乾燥または熱硬化する工程、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、材料ロットによって抵抗値がばらつく処方の塗工液に対してはこのばらつきを吸収する手段を与え、経時安定性が無い処方の塗工液に対しては安定性を増す手段を与える。つまりは導電性ローラの被覆層の抵抗値を安定化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
導電性ローラは図1(A)、(B)に示すような形状であり、導電性支持体(a)上に、弾性層(b)及び被覆層(c)を順次積層した構成となっている。この弾性層及び被覆層は1層であっても良いし、2層以上の多層構造であっても良い。
【0017】
本発明に用いられる導電性支持体(a)は、公知のものが用いられ、例えば鉄、銅、ステンレス等の金属材料の丸棒を用いることができる。さらにこれらの金属表面に防錆や耐傷性付与を目的としてメッキ処理を施しても構わない。
【0018】
弾性層(b)の具体的な材料としては、例えば天然ゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、及びクロロプレンゴム(CR)等の合成ゴム、更にはポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂及びシリコーン樹脂等も挙げられる。これら弾性材料中にカーボンブラック、グラファイト及び導電性金属酸化物等の電子伝導機構を有する導電剤及びアルカリ金属塩や四級アンモニウム塩等のイオン伝導機構を有する導電剤を適宣添加し所望の抵抗に調整することができる。
【0019】
被覆層(c)(表面層)となる樹脂塗料には、ポリウレタン樹脂が用いられる。これに静摩擦係数を小さくする目的でグラファイト、雲母、二硫化モリブデン及びフッ素樹脂粉末等の固体潤滑材、或いはフッ素系界面活性剤、ワックスまたはシリコーンオイル等を添加する場合もある。また、被覆層に導電性を持たせるために、各種導電剤(導電性カーボン、グラファイト、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄粉及び金属酸化物である導電性酸化錫や導電性チタン等)が用いられる。
【0020】
さらに、耐磨耗性やトナー搬送性を得るために表面粗さを付与する樹脂粒子が加えられる。この樹脂粒子には平均粒径が3〜30μmの、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン等の材質によって構成された球形状樹脂粒子が用いられることが多い。この球形状樹脂粒子は使用する溶剤により膨潤や溶解が起こらないことが要求される。
【0021】
これらの材料を塗工できる状態とするため、各種有機溶剤が加わる。本塗工液に使用できる有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンのケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族類、酢酸エチル、n-酢酸ブチル等のエステル類、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、テトラヒドロピラン等のエーテル類が挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。これらの材料を分散し、塗工に適した粘度に調整する。
【0022】
しかしながら、樹脂材料および導電剤のロットのばらつきによっては、被覆層の抵抗値が変化する場合がある。このようなときは、塗工液に水を少量添加することによって所望の抵抗値に是正することができる。ここで使用できる水は、イオン交換水、精製水、超純水、アルカリイオン水、超還元性水、水道水、井戸水等が挙げられ、乾燥後の固形分が1質量%以下で、研磨材や界面活性剤等を含まず、pHが5〜10の範囲であれば、それに限定されるものではない。
【0023】
水を添加するタイミングは、樹脂材料や導電剤の各種物性値から推測できる場合にはあらかじめ材料調合時に水を添加することも出来るが、調整が一旦完了した塗工液の抵抗値を測定してから、修正のために後から水を添加する方法でも構わない。なお、水を添加することによる抵抗値の変化は、同じ材料を使用する限りにおいては高抵抗側、低抵抗側のいずれか1方向にしか修正できないので、水の添加量によってどのくらい抵抗値が変化するのかをあらかじめ実験によって調べておき、且つ水の添加によって抵抗値が修正可能となるような範囲の材料選定や添加量を考慮しておくことが必要となる。
【0024】
塗工液は、材料を混合、分散する工程、塗工液を保管しておく環境によって空気中の水分を吸収する。よって故意に水を添加しなくても塗工液中には水が存在することになり抵抗値に影響を与えている。しかし、空気からの水分の吸収には使用した材料にも因るが飽和点があり、ある一定量以上の水分量増加は無い。本発明においては、飽和水分量以上の水を加えることでより大きな効果を得るものである。
【0025】
さらには飽和水分量以上の水を加えることによって、塗工液がさらに空気中の水分を吸収することを防止できる。すなわち塗工液中に存在する水分量によって塗工液の抵抗値が変化してしまい、経時安定性が無いと判断されていた処方においては、最初から故意に飽和水分量以上の水を添加することによって、水分量の変化を止め、塗工液の抵抗値変化を防止し、経時安定性を得ることが出来るようになる。
【0026】
なお、添加した水と空気中から吸収した水分なら成る溶存水分量は3.0質量%以下である必要がある。3.0質量%を超えると、塗工液中の有機溶剤と水の相溶性の問題から塗工液が不安定になり、ローラ上に形成される塗工膜にスジ状や渦状の塗工ムラが発生することがある。
【0027】
浸漬塗工により被覆層を形成する場合には塗料粘度を1〜250mPa・sの範囲にすることが好ましいが、粘度は膜厚に大きく影響するため、特には5〜50mPa・sの範囲に調整することが好ましい。この液を弾性層上に塗布し、乾燥、硬化工程を経て被覆層(表面層)を得る。なお、被覆層は1層であっても良いし、2層以上の多層構造であっても良い。
【実施例】
【0028】
以下に、導電性ローラの中から現像ローラの製造例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
【0029】
なお、以下の説明では、塗工液に水を加えることによって抵抗値は高抵抗化しているが、これは塗工液の材料によっては低抵抗化するものもあり、発明の効果としてはこの限りではない。
【0030】
(参考例1)
下記の要領で現像ローラを作製した。
【0031】
[導電性弾性層の作成]
外径φ8mmの鉄製軸芯体(通電性軸芯体)を内径φ16mmの円筒状金型内に同心となるように設置し、液状導電性シリコーンゴム(東レダウコーニング社製 体積固有抵抗107Ωcm品)を注型後、130℃のオーブンに入れ20分加熱成型し、脱型後、200℃のオーブンで4時間二次硬化をおこない、通電性軸芯体上に厚み4mm、長さ240mmの導電性弾性層を有するローラを得た。
【0032】
[被覆層用塗工液の調製]
ポリウレタンポリオール 100質量部
(商品名:ニッポランN5033、日本ポリウレタン社製)
イソシアネート 10質量部
(商品名:コロネートL、日本ポリウレタン社製)
カーボンブラック 20質量部
(商品名:MA77、三菱化学社製)
樹脂粒子 6質量部
(商品名:アートパールC400、根上工業社製)

上記原料にメチルエチルケトンを加え、ビーズミルで十分分散した。分散後さらにメチルエチルケトンを加え十分混合し、塗工液の粘度が測定温度23±1℃にて、回転式粘度計(VISMETRON VDA;芝浦システム製)、No.1ロータ、回転速度60rpmにて15mPa・sになるよう粘度を調製した。
【0033】
[塗工液の測定]
上記塗工液をポリエステルシート(ルミラー;商品名-東レ製)上に125μmのウェット膜厚となるドクターブレードを用いて塗布し、これを常温のオーブンに入れてから140℃で2時間の加熱を行ない抵抗測定用の模擬被覆層を得た。そしてこの模擬被覆層の表面抵抗を測定機(ハイレスタ;商品名-三菱化学製)で測定した。さらにローラを塗工した直後の塗工液を採取し、液中に存在する水分量の測定(カールフィッシャー水分計AQ-200;商品名-平沼産業(株)製)を行なった。
【0034】
上記の被覆層用塗工液の調製から塗工液の測定までの手順を、カーボンブラックのロット(1)および(2)を用いた場合のそれぞれで実施し、各種測定データを得た。
【0035】
[被覆層の形成]
調製した塗工液を塗工槽に装入し、塗工液の液面に対してローラの通電性軸芯体の中心線が垂直になるように保持し、液面に向かって垂直に降下し10mm/sの速度で浸漬してゆき最下点まで降下してから10秒間停止させた後に引き上げることでローラの導電性弾性層の外周面上に塗工層を形成した。引き上げ時の速度は引き上げ開始直後で500mm/min、導電性弾性層下端が塗工液液面から出た時点で200mm/minとなるよう一次関数のプログラムを組んで調速した。このようにして形成した塗工層を室温にて30分間風乾し、150℃のオーブンに入れ1時間加熱硬化して被覆層を形成、現像ローラを得た。なお、被覆層の形成は、カーボンブラックのロット(1)と(2)とでは塗工槽中の液は完全に入れ替え、塗工条件は同一とした。
【0036】
(実施例1)
参考例1と同条件で、導電性弾性層を有するローラ、およびカーボンブラック・ロット(2)を用いた塗工液を調製した。参考例1により、カーボンロット(2)を用いた場合には、カーボンブラック・ロット(1)を用いた場合に比べて低抵抗になることが解かったため、抵抗値を上げる目的で水道水(pH=8.1)を塗工液全質量に対して1.6質量%を添加した。この塗工液を塗工槽に装入し、弾性層ローラを塗工、その後風乾、加熱硬化し現像ローラを得た。さらに塗工直後の塗工液を採取し水分量を測定した。また、この水道水を添加した塗工液を用いて模擬被覆層を作製し、表面抵抗を測定した。
【0037】
(比較例1)
実施例1と同様に、カーボンブラック・ロット(2)を用いて塗工液を調製した後、水道水を添加した。但し水道水の添加量を塗工液全質量に対して3.0質量%とした。この塗工液で弾性層ローラを塗工し現像ローラを得た。さらに塗工直後の塗工液を採取し水分量を測定した。また、この水道水を添加した塗工液を用いて模擬被覆層を作製し、表面抵抗を測定した。
【0038】
このようにして完成した現像ローラの抵抗値および外観状況を以下の表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
実施例1および比較例1はともに、カーボンブラックのロット(2)を分散した塗工液に水道水を添加したものである。表1の参考例1より、カーボンブラックのロット(2)を用いた塗工液は、ロット(1)を用いた塗工液に比べて低抵抗であるが、実施例1や比較例1のように水を加えることで抵抗値が上がっており、これにより材料ロットによる抵抗値のばらつきの解消に効果があることが解かる。但し比較例1においては、本発明の範囲である、塗工液中の水分量が3.0質量%以内であることを満たしていなかったため、浸漬塗工時の上下方向にスジ状の被覆層欠陥が発生してしまった。
【0041】
(参考例2)
下記の要領で現像ローラを作製した。
【0042】
[導電性弾性層の作成]
参考例1と同様に導電性弾性層を有するローラを得た。
【0043】
[被覆層用塗工液の調製]
ポリウレタンポリオール 82質量部
(商品名:タケラックTE5060、三井武田ケミカル社製)
イソシアネート 63質量部
(商品名:コロネート2521、日本ポリウレタン社製)
カーボンブラック 20質量部
(商品名:MA100、三菱化学社製)
樹脂粒子 20質量部
(商品名:アートパールC400、根上工業社製)

上記原料にメチルエチルケトンを加え、ビーズミルで十分分散した。分散後さらにメチルエチルケトンを加え十分混合し、塗工液の粘度が測定温度23±1℃にて、回転式粘度計、No.1ロータ、回転速度60rpmにて15mPa・sになるよう粘度を調整した。
【0044】
[塗工液の測定]
参考例1と同様に抵抗測定用の模擬被覆層の作製および測定を行ない、またローラを塗工した直後の塗工液を採取し、液中に存在する水分量の測定を行なった。
【0045】
[被覆層の形成]
参考例1と同じ条件で被覆層を形成、現像ローラを得た。
【0046】
以上のように、上記塗工液の測定と被覆層の形成の工程を、塗工液の調製が完了し、その後間もないときと、粘度を調節しながら塗工槽に1週間放置した塗工液とでそれぞれ行ない、塗工液の物性がどのように変化するかを確認した。
【0047】
(実施例2)
被覆層用塗工液の調製を、参考例2と同様の材料および工程で作製したのち、この塗工液に水道水を塗工液全質量に対して2.0質量%となるように添加した。この塗工液を塗工槽に装入し、参考例1、2と同様に作製した弾性層ローラを塗工、その後風乾、加熱硬化し現像ローラを得た。さらに塗工直後の塗工液を採取、水分量を測定した。また、この水道水を添加した塗工液を用いて模擬被覆層を作製し、表面抵抗を測定した。
【0048】
塗工液の測定と被覆層の形成は、塗工液の調製が完了し、その後間もないときと、粘度を調節しながら塗工槽に1週間放置した塗工液とでそれぞれ行なった。
【0049】
(比較例2)
実施例2と同様に塗工液を調製した後、水道水を添加した。但し水道水の添加量を塗工液全質量に対して2.7質量%とした。この塗工液で弾性層ローラを塗工し現像ローラを得た。さらに塗工直後の塗工液を採取し水分量を測定した。また、この水道水を添加した塗工液を用いて模擬被覆層を作製し、表面抵抗を測定した。
【0050】
比較例2においては、塗工液の調製が完了して間もなく塗工を行なった際に、浸漬塗工時の上下方向にスジ状の被覆層欠陥が発生してしまったため、塗工液を1週間放置する試験は行なわなかった。
【0051】
このようにして完成した現像ローラの抵抗値および外観状況を以下の表2に示す。
【0052】
【表2】

【0053】
参考例2では、塗工液を、粘度を調節しながら1週間放置したことにより模擬被覆層の表面抵抗が約1桁上昇する結果となった。これに対し実施例2では塗工液の調製の後に適量の水を添加したことにより、経時変化する塗工液の抵抗値を収束させることに成功した。比較例2では、本発明の範囲である塗工液中の水分量が3.0質量%以内であることを満たしていなかったため、被覆層表面に浸漬塗工時の上下方向にスジ状の被覆層欠陥が発生してしまった。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】(A)導電性ローラの概念的断面図である。
【0055】
(B)導電性ローラの概念的側面断面図である。
【図2】被塗工物を塗工液に浸漬した状態を示す模式図(断面図)である。
【符号の説明】
【0056】
a:通電性軸芯体
b:導電性弾性層
c:被覆層
d:塗工液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電性軸芯体上に少なくとも1層以上の導電性弾性層および被覆層を順次積層する導電性ローラにおいて、該被覆層が浸漬塗工法によって得られ、浸漬させる塗工液がウレタン樹脂、有機溶剤および導電剤を含有するものを基本構成材料とし、この基本構成材料にさらに、該塗工液中の水分量が3.0質量%以下となる範囲で水が添加されていることを特徴とする導電性ローラ。
【請求項2】
通電性軸芯体上に少なくとも1層以上の導電性弾性層及び被覆層を順次積層する導電性ローラの製造方法において、
該通電性軸芯体の外周面上に該弾性層を形成する工程、
浸漬させる塗工液がウレタン樹脂、有機溶剤および導電剤を含有するものを基本構成材料とし、この基本構成材料にさらに該塗工液中の水分量が3.0質量%以下となる範囲で水が添加されている塗工液を調整する工程、
該塗工液を該弾性層の外周面上に浸積塗工して該被覆層を形成する工程、
該被覆層を乾燥または熱硬化する工程
を有することを特徴とする導電性ローラの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の導電性ローラ、または請求項2に記載の製造方法で製造された導電性ローラを具備する電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−25455(P2007−25455A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−209942(P2005−209942)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】