説明

導電性接着剤組成物

【課題】従来のペースト状接着剤では実現できなかった熱時の接着力を発現する導電性接着剤組成物を提供すること。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂100質量部、(B)特定構造を有するポリイミド樹脂25〜200質量部、(C)アミン系硬化剤、(D)導電性フィラー、(E)イミダゾール系硬化促進剤ならびに(F)反応性希釈剤及び/又は有機溶媒を配合してなることを特徴とする導電性接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な熱時(150〜260℃)接着性を発現する導電性接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエポキシ樹脂系ペースト状接着剤は、ガラス転移温度(Tg)(TMA法による。以下、特に記載がない場合、TgはTMA法により測定された値を示す。)が100℃程度であり、Tg以上のゴム弾性温度領域では、接着力が大きく低下してしまう。この熱時接着力の低下を減少させるために、接着剤組成物に用いる樹脂を高ガラス転移温度化する手法が用いられている。高ガラス転移温度化の手法として、バインダー樹脂として多官能エポキシ樹脂やポリイミド樹脂が検討されてきた(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、多官能エポキシ樹脂は、従来のエポキシ樹脂よりも10〜20℃程度高いTgを発現するに過ぎない。
一方、ポリイミド樹脂は、200〜300℃の高いTgを示すが、硬化条件として、200℃以上で数時間といった高温長時間の条件を必要とし、そして、一般に、その硬化物は硬くて脆いため、接着剤としての機能を十分発揮することができない。また、ポリイミド樹脂を改質するために、エポキシ樹脂との混合についても多数の研究がされているが、ポリイミド樹脂とエポキシ樹脂とは相溶性が悪いという問題がある。その改善のため特定のビスマレイミド系ポリイミド樹脂を用いた提案もあるが(例えば、特許文献2参照)、その効果は十分ではない。
【0003】
【特許文献1】特開2001−247780号公報
【特許文献2】特開2007−51248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題を解消するためになされたもので、従来のペースト状接着剤では実現できなかった熱時の接着力を発現する導電性接着剤組成物及びこれを用いた半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、エポキシ樹脂と良好な相溶性を示す特定構造を有するポリイミド樹脂を用いることにより、上記目的を達成することを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
【0006】
すなわち、本発明は、下記の導電性接着剤組成物及びこれを用いた半導体装置を提供するものである。
1.(A)エポキシ樹脂100質量部、(B)下記一般式(1)で表わされる構成単位と下記一般式(2)で表わされる構成単位を有し、かつ、下記一般式(3)、(4)及び(5)で表わされる末端構造のいずれか1種以上を有するポリイミド樹脂25〜200質量部、(C)アミン系硬化剤、(D)導電性フィラー、(E)イミダゾール系硬化促進剤ならびに(F)反応性希釈剤及び/又は有機溶媒を配合してなることを特徴とする導電性接着剤組成物。
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、R1は炭素数6〜13の環式脂肪族構造を有する有機基を示し、R2は数平均分子量300〜6,000の線状炭化水素構造を示す。)
【0009】
【化2】

2.(C)成分のアミン系硬化剤が、ジシアンジアミド、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン及びジエチレントリアミンから選ばれる少なくとも一種の化合物であり、(C)成分の配合量が、(A)成分100質量部に対し、0.05〜20質量部である上記1に記載の導電性接着剤組成物。
3.(E)成分のイミダゾール系硬化促進剤が、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−デシル2−フェニルイミダゾール、1−シアノメチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−(2'−メチルイミダゾリル−(1'))−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付与物、2−メチルイミダゾール イソシアヌル酸付与物、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール及び2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ(1,2−a)ベンズイミダゾールから選ばれる一種以上の化合物である上記1又は2に記載の導電性接着剤組成物。
4.上記1〜3のいずれかに記載の導電性接着剤組成物を用いてなる半導体装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高い耐熱性及び良好な熱時(150〜260℃)接着性を発現する導電性接着剤組成物及びこれを用いてなる半導体装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の導電性接着剤組成物は、(A)エポキシ樹脂と(B)特定のポリイミド樹脂を所定の割合で含み、後述する(C)〜(F)成分を配合してなるものである。
【0012】
本発明で用いる(A)成分のエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;ビフェノール型エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物から誘導されるエポキシ化物又はそれらの臭素原子含有エポキシ樹脂やリン原子含有エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート等のヘテロ環含有エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂等の公知慣用のエポキシ樹脂が挙げられる。これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、後述する(F)成分の反応性希釈剤としての単官能エポキシ樹脂を含有していてもよい。
【0013】
本発明で用いる(B)成分のポリイミド樹脂は、下記一般式(1)で表わされる構成単位と下記一般式(2)で表わされる構成単位を有し、かつ、下記一般式(3)、(4)及び(5)で表わされる末端構造のいずれか1種以上を有するポリイミド樹脂である。
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、R1は炭素数6〜13の環式脂肪族構造を有する有機基を示し、R2は数平均分子量300〜6,000の線状炭化水素構造を示す。)
【0016】
【化4】

【0017】
(B)成分に含有される上記一般式(1)〜(5)は、一般式(1)又は(2)に数平均分子量300〜6,000の線状炭化水素構造、ウレタン結合、イミド環、イソシアヌレート環及び環式脂肪族構造を有し、一般式(3)〜(5)にカルボキシル基又は酸無水物を有するものである。これらを有することにより(B)成分は、汎用溶剤、例えばケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤等の非プロトン系極性有機溶剤に対する溶解性、耐熱性及び機械物性に優れるものとなる。
【0018】
上記一般式(2)において、R2の線状炭化水素構造は、数平均分子量が300〜6,000であることを要し、300未満では、硬化物の誘電率と誘電正接が高くなるため好ましくなく、6,000超では、有機溶剤溶解性やエポキシ樹脂や有機溶剤との相溶性と機械物性が不良となるため好ましくない。硬化物の柔軟性と誘電特性のバランスが良好なポリイミド樹脂が得られることから、数平均分子量が700〜4,500であることが好ましく、より好ましくは800〜4,200である。
線状炭化水素構造は、直鎖状でも良く分岐状でも良い。また、前記線状炭化水素構造は、飽和の炭化水素鎖でも良く不飽和の炭化水素鎖でも良いが、加熱時の物性変化や安定性の面から飽和の炭化水素鎖が好ましい。
【0019】
また、(B)成分のポリイミド樹脂は、酸価が20〜250mgKOH/g、一般式(2)のR2で表わされる線状炭化水素構造の含有率が20〜40質量%、イソシアヌレート環の濃度が0.3〜1.2mmol/g、数平均分子量が2,000〜30,000、かつ、重量平均分子量が3,000〜100,000であることが好ましい。
なお、(B)成分の酸価、イソシアヌレート環の濃度、数平均分子量及び重量平均分子量は、例えば次の方法で測定することができる。酸価は、JIS K 5601-2-1に準じて測定することができ、イソシアヌレート環の濃度は、13C−NMR分析を行い、イソシアヌレート環に起因する炭素原子のスペクトル強度から検量線を用いてポリイミド樹脂1g当たりのイソシアヌレート環の濃度(mmol)として求めることができ、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミネーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算値として求めることができる。
また、(B)成分中における線状炭化水素構造の含有率は、後述する(B)成分の製造方法で用いるポリオール化合物の使用割合から求めることができる。製造方法が不明である場合、通常の加水分解法により(B)成分の線状炭化水素構造部分をポリイミド樹脂から切り離し、線状炭化水素構造部分を抽出して、抽出量の測定とGPC分析とを行うことで求めることができる。
【0020】
(B)成分の製造方法は、特に限定されないが、例えば、イソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物と線状炭化水素構造を有するポリオール化合物であって、線状炭化水素構造部分の数平均分子量が300〜6,000のポリオール化合物とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(b−1)と、3個以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸の酸無水物(b−2)とを有機溶剤中で反応させる方法が好ましい。
(B)成分は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)成分として挙げられる具体的な対象製品としては、大日本インキ化学工業社製ユニデックV−8000、V−8001が例示できる。
【0021】
(A)成分と(B)成分の含有量比は、(A)成分100質量部に対して、(B)成分25〜200質量部であることを要する。好ましくは(A)成分100質量部に対して(B)成分50〜150質量部である。25質量部未満であると熱時強度が低くなるため好ましくなく、200質量部を超えると接着強度が下がるため好ましくなく、上記範囲でなければ良好な熱時(150〜260℃)接着性を発現する導電性接着剤組成物を得ることができない。
また、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、(A)成分のエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂及びアクリル樹脂等から選ばれる一種以上の他の樹脂を、(A)成分の一部と置き換えることができる。これらの樹脂の含有量は、(A)成分中50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは25質量%以下である。
【0022】
本発明で用いる(C)成分のアミン系硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン及びジエチレントリアミン等が挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。(C)成分の使用量は、適度の硬化性を得る点から、(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して、通常0.05〜20質量部が好ましく、より好ましくは1〜15質量部である。
本発明で用いる(D)成分の導電性フィラーとしては、例えば、銀粉末、銅粉末、ニッケル粉末等の金属粉末及びカーボン等が挙げられる。本発明においては、平均粒径20μm以下、タップ密度3〜7g/cm3、比表面積0.05〜1.5m2/gの鱗片形状の銀粉末が好ましい。本発明の導電性接着剤組成物における導電性フィラーの充填率は、50〜98質量%が好ましく、より好ましくは60〜95質量%である。この充填率が50質量%以上であると良好な導電性が得られ、また導電性フィラーの充填率の上限は、通常98質量%程度である。
【0023】
本発明で用いる(E)成分のイミダゾール系硬化促進剤としては、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−デシル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノメチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−(2'−メチルイミダゾリル−(1'))−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付与物、2−メチルイミダゾール イソシアヌル酸付与物、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール及び2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ(1,2−a)ベンズイミダゾール等が挙げられる。
これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。(E)成分の使用量は、適度の硬化促進効果を得る点から、(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して、通常0.05〜20質量部が好ましく、より好ましくは0.1〜10質量部である。
【0024】
本発明で用いる(F)成分のうちの反応性希釈剤としては、エポキシ樹脂の開環重合に対する反応性を備えたものである。この反応性希釈剤としては、例えば、n−ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、スチレンオキサイド、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、p−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、(ポリ)エチレングリコールグリシジルエーテル、ブタンジオールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、本発明においては、ブチルグリシジルエーテルが好ましい。
この反応性希釈剤の使用量は、本発明の導電性接着剤組成物の25℃における粘度(E型粘度計を用い、3°コーンの条件で測定した値)が、通常20〜300Pa・s程度、好ましくは50〜150Pa・sとなる量を用いる。
【0025】
また、(F)成分のうちの有機溶媒は、(A)成分と(B)成分を含む樹脂混合物の粘度を調整するために用いる。この有機溶媒としては、酢酸セロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジアセトンアルコール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン及び3,5−ジメチル−1−アダマンタンアミン(DMA)等が挙げられる。これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのうち、本発明においては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)及び3,5−ジメチル−1−アダマンタンアミン(DMA)が好ましい。
この有機溶媒の使用量は、(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して、通常20質量部以下が好ましく、より好ましくは10質量部以下である。この有機溶媒の使用量を20質量部以下とすることにより、本発明の導電性接着剤組成物を硬化させる際のボイドの発生が抑制される。
【0026】
本発明の導電性接着剤組成物には、上記成分の他に、接着する基材に対する濡れ性や接着性を改善させるためのシランカップリング剤、チクソトロピー性を付与するためのチクソトロピー付与剤、及び消泡剤等を必要に応じて添加することができる。上記シランカップリング剤としては、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランやγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
また、(B)成分のポリイミド樹脂の硬化を促進するために、有機過酸化物を添加することができる。有機過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、ターシャルブチルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、アシルパーオキサイド及びクメンパーオキサイド等が挙げられる。これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。有機過酸化物の添加量は、(B)成分100質量部に対して、通常0.1〜10質量部が好ましい。
【0027】
本発明の導電性接着剤組成物は、まず、常法に従い各成分を十分混合した後、さらに、ディスパース、ニーダー、3本ロール混練機等により混練処理を行い、その後減圧脱泡することで容易に製造することができる。また、必要に応じて、上記(F)成分のうちの有機溶媒を用いて粘度を調整する。
このようにして製造した本発明の導電性接着剤組成物は、通常80〜250℃程度で0.1〜3時間程度加熱することにより、硬化させることができる。
【0028】
また、本発明は、前述した本発明の導電性接着剤組成物を用いた半導体装置をも提供する。
本発明の半導体装置は、前述した本発明の導電性接着剤組成物を用いて、半導体素子(チップ)をリードフレーム、有機基板等の基板に接着することにより製造することができる。接着を行う半導体としては、特に制限はなく、例えば、IC(集積回路)、LSI(大規模集積回路)、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード等を挙げることができる。
本発明の半導体装置は、素子接着時にボイドなどの不良の発生が少なく、接着強度の安定した信頼性の高いものである。
【実施例】
【0029】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において「部」は「質量部」を意味する。
【0030】
実施例1
テトラグリシジルメタキシリレンジアミン〔(A)成分:エポキシ樹脂、商品名 604、ジャパンエポキシレジン社製〕14部、ポリイミド樹脂〔(B)成分:商品名 ユニデックV−8000、大日本インキ化学工業社製〕7部、ジエチレントリアミン〔(C)成分:東ソー社製〕3部、銀粉〔(D)成分:商品名 SF−80、FERO JAPA社製、平均粒径7.5μm、タップ密度4.5g/cm3、比表面積0.5m2/g〕70部、1−シアノメチル−2−ウンデシルイミダゾール〔(E)成分:商品名 C11Z−CN、四国化成工業社製〕1部、N−メチル−2−ピロリドン〔(F)成分:有機溶剤、商品名 NMP、東燃化学社製〕1部、及びγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤、商品名 A−187、日本ユニカー社製)2部を3本ロール混練機にて混練した後、ブチルグリシジルエーテル〔(F)成分:反応性希釈剤、商品名 BGE、坂本薬品工業社製〕5部を加えて、25℃において粘度100Pa・s(E型粘度計を用い、3°コーンの条件で測定した値)の導電性接着剤組成物を製造した。得られた導電性接着剤組成物について、下記の特性評価法により評価を行った。結果を表1に示す。
【0031】
<特性評価法>
(1)熱時ダイシェア強度
銀メッキを施した銅リードフレームに、2mm×2mm×300μmのシリコンチップを、導電性接着剤組成物を用いて接着し、200℃に調節したオーブン中に60分間放置して、導電性接着剤組成物を乾燥又は硬化させた。次いで、室温まで放冷した後、150℃、200℃及び260℃の熱板上に載せ、上記リードフレームに対して水平方向から力を加えることにより、上記シリコンチップに力を加え、シリコンチップが剥がれたときの力を、熱時ダイシェア強度とした。
(2)耐ボイド性
銀メッキを施した銅リードフレームに、2mm×2mm×300μmのガラスチップを、導電性接着剤組成物を用いて接着し、200℃に調節したオーブン中に60分間放置して、導電性接着剤組成物を乾燥又は硬化させた。次いで、室温まで放冷した後、上記ガラスチップ裏面におけるボイドの有無を確認した。
(3)ガラス転移温度(Tg)
導電性接着剤組成物を、200℃に調節したオーブン中に60分間放置して、厚さが1mm以上となるように乾燥又は硬化させ、この乾燥物又は硬化物を用いて、TMA法により測定した。
【0032】
(4)吸湿率
導電性接着剤組成物を、200℃に調節したオーブン中に60分間放置して、厚さが0.15mmとなるように乾燥又は硬化させ、20mm×50mm×0.15mmのサンプルを作製した。このサンプルの初期質量W0を測定し、85℃/85%RHに調節した恒温恒湿槽に36時間放置し、吸湿後の質量W1を測定し、以下の式により吸湿率を算出した。
吸湿率=[(W1−W0)/W0]×100(質量%)
(5)接続信頼性
Cuフレーム(Ni−Pd−Auで表面処理、4mm×4mmのダイパット)に、3mm×3mm×200μmのシリコンチップを、導電性接着剤組成物を用いて接着し、200℃に調節したオーブン中に60分間放置して、導電性接着剤組成物を乾燥又は硬化させた。その後、封止用樹脂(商品名 KE−G3000D、京セラケミカル社製)でモールドキュアし、v−QFPを作製した。このv−QFPを接続信頼性試験用サンプルとし、導電性接着剤組成物について8個ずつ作製した。試験用サンプルを、85℃/85%RHに調節した恒温恒湿槽に168時間放置した後、内部温度260℃の赤外線リフロー炉に3回投入し、超音波映像装置SAT(Scan Acoustic Tomograph)にて、導電性接着剤組成物の乾燥物層又は硬化物層の剥離の有無を観察した。
【0033】
実施例2
テトラグリシジルメタキシリレンジアミン〔(A)成分:アミン変性液状エポキシ樹脂、商品名 604、ジャパンエポキシレジン社製〕14部、ポリイミド樹脂〔(B)成分:商品名 ユニデックV−8001、大日本インキ化学工業社製〕7部、ジエチレントリアミン〔(C)成分:東ソー社製〕3部、銀粉〔(D)成分:商品名 SF−80、FERO JAPA社製、平均粒径7.5μm、タップ密度4.5g/cm3、比表面積0.5m2/g〕70部、1−シアノメチル−2−ウンデシルイミダゾール〔(E)成分:商品名 C11Z−CN、四国化成工業社製〕1部、N−メチル−2−ピロリドン〔(F)成分:有機溶媒、商品名 NMP、東燃化学社製〕1部、及びγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤、商品名 A−187、日本ユニカー社製)2部を3本ロール混練機にて混練した後、ブチルグリシジルエーテル〔(F)成分:反応性希釈剤、商品名 BGE、坂本薬品工業社製〕5部を加えて、25℃において粘度100Pa・s(E型粘度計を用い、3°コーンの条件で測定した値)の導電性接着剤組成物を製造した。得られた導電性接着剤組成物について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0034】
実施例3
液状ビスA型エポキシ樹脂〔(A)成分:商品名 YL980、ジャパンエポキシレジン社製〕14部、ポリイミド樹脂〔(B)成分:商品名 ユニデックV−8001、大日本インキ化学工業社製)7部、ジエチレントリアミン〔(C)成分:東ソー社製〕3部、銀粉〔(D)成分:商品名 SF−80、FERO JAPA社製、平均粒径7.5μm、タップ密度4.5g/cm3、比表面積0.5m2/g〕70部、1−シアノメチル−2−ウンデシルイミダゾール〔(E)成分:商品名 C11Z−CN、四国化成工業社製〕1部、N−メチル−2−ピロリドン〔(F)成分:有機溶媒、商品名 NMP、東燃化学社製〕1部、及びγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤、商品名 A−187、日本ユニカー社製)2部を3本ロール混練機にて混練した後、ブチルグリシジルエーテル〔(F)成分:反応性希釈剤、商品名 BGE、坂本薬品工業社製〕5部を加えて、25℃において100Pa・s(E型粘度計を用い、3°コーンの条件で測定した値)の導電性接着剤組成物を製造した。得られた導電性接着剤組成物について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0035】
比較例1
テトラグリシジルメタキシリレンジアミン(アミン変性液状エポキシ樹脂、商品名 604、ジャパンエポキシレジン社製)14部、3,3'−ジメチル−5,5'−ジエチル−4,4'−ジフェニルメタン ビスマレイミド(ビスマレイド型ポリイミド樹脂、商品名 BMI−5000、大和化成工業社製、分子量 442.5)7部及びN−メチル−2−ピロリドン(有機溶媒、商品名 NMP、東燃化学社製)1部を加え、80℃において60分間攪拌した。これらが完全に溶解したことを確認した後、濾紙を用いてろ過し、エポキシ樹脂とポリイミド樹脂との液状複合樹脂を製造した。
この液状複合樹脂22部、1−シアノメチル−2−ウンデシルイミダゾール3部、ジエチレントリアミン3部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤、商品名 A−187、日本ユニカー社製)2部、及び銀粉(商品名 SF−80、FERO JAPA社製、平均粒径7.5μm、タップ密度4.5g/cm3、比表面積0.5m2/g)70部を3本ロール混練機にて混練した後、ブチルグリシジルエーテル(反応性希釈剤、商品名 BGE、坂本薬品工業社製)5部を加えて、25℃において粘度100Pa・s(E型粘度計を用い、3°コーンの条件で測定した値)の導電性接着剤組成物を製造した。得られた導電性接着剤組成物について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0036】
比較例2
アリルナジイミド(液状ビスマレイミド型エポキシ樹脂、商品名 BANI−X、丸善石油化学社製)48部、p−トルエンスルホン酸2部、及び銀粉(商品名 SF−80、FERO JAPA社製、平均粒径7.5μm、タップ密度4.5g/cm3、比表面積0.5m2/g)70部を3本ロール混練機にて混練した後、ブチルグリシジルエーテル(反応性希釈剤、商品名 BGE、坂本薬品工業社製)2部を加えて、25℃において粘度100Pa・s(E型粘度計を用い、3°コーンの条件で測定した値)の導電性接着剤組成物を製造した。得られた導電性接着剤組成物について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0037】
比較例3
市販のエポキシ樹脂ベースの一液型銀ペースト(商品名 CT212H、京セラケミカル社製)について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
上記表から、実施例の導電性接着剤組成物は、良好な熱時ダイシェア強度とガラス転移温度(Tg)を有することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の導電性接着剤組成物は、IC(集積回路)、LSI(大規模集積回路)等の半導体素子を、リードフレーム、有機基板等の基板に接着させる用途に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂100質量部、(B)下記一般式(1)で表わされる構成単位と下記一般式(2)で表わされる構成単位を有し、かつ、下記一般式(3)、(4)及び(5)で表わされる末端構造のいずれか1種以上を有するポリイミド樹脂25〜200質量部、(C)アミン系硬化剤、(D)導電性フィラー、(E)イミダゾール系硬化促進剤ならびに(F)反応性希釈剤及び/又は有機溶媒を配合してなることを特徴とする導電性接着剤組成物。
【化1】

(式中、R1は炭素数6〜13の環式脂肪族構造を有する有機基を示し、R2は数平均分子量300〜6,000の線状炭化水素構造を示す。)
【化2】

【請求項2】
(C)成分のアミン系硬化剤が、ジシアンジアミド、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン及びジエチレントリアミンから選ばれる少なくとも一種の化合物であり、(C)成分の配合量が、(A)成分100質量部に対し、0.05〜20質量部である請求項1に記載の導電性接着剤組成物。
【請求項3】
(E)成分のイミダゾール系硬化促進剤が、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−デシル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノメチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−(2'−メチルイミダゾリル−(1'))−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付与物、2−メチルイミダゾール イソシアヌル酸付与物、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール及び2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ(1,2−a)ベンズイミダゾールから選ばれる一種以上の化合物である請求項1又は2に記載の導電性接着剤組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の導電性接着剤組成物を用いてなる半導体装置。

【公開番号】特開2009−263454(P2009−263454A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−112914(P2008−112914)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】