説明

小型角度センサ

【課題】 小型、高感度の光学式角度センサを提供すること。
【解決手段】 点光源100から出射した拡散光を、偏光ビームスプリッタ120、1/4波長板130を通した後、コリメートレンズと対物レンズを兼ねるレンズ170で平行光束に直して試料面に照射し、反射光をレンズ170で収束し、1/4波長板130を通り、偏光ビームスプリッタ120で反射した光を焦点位置に置かれた光スポット位置検出素子160で検出する事を特徴とする光学式角度センサ。少ない部品点数で構成出来、高い感度を得る事ができるので、小型、高感度の光学式角度センサを構成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学式の角度センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学機械の利用が広がるにつれ,球面や非球面,円筒および大型平面などの多様な形状の高精度鏡面を必要とする機会が増えている。X線光学,天体観測などに用いられる大型特殊光学素子などはサイズが数百ミリからメートルオーダと大型で,10nmからサブミクロンオーダの高い形状精度が要求される。また近年半導体ウェハや液晶基板などの大型化と高精度化が進んでいる。これらの形状測定には高い計測精度に加え,短時間での測定が求められる。
【0003】
加工面形状の測定法には従来から面測定法の光波干渉法が用いられている。この方法では一度に面全体が測定できるという利点があるが,測定試料の形状によっては測定が不可能な場合があり,また口径が300mm以上の干渉計の製作及びその精度保証は非常に困難である。それに対してセンサを走査して形状を測定する走査法は,案内の精度の問題を除けば,被測定形状の大型化と多様化に柔軟に対応できる利点を持つ。さらに工作機械上でのオンマシン測定の可能性も期待できる。
【0004】
角度センサを走査法に用いる場合には,センサあるいは測定試料を走査することによって形状の導関数である局部傾斜(ローカルスロープ)を測定し,積分により形状を復元する。このとき角度センサの出力に誤差が含まれると,積分によりその誤差が累積されて形状を正しく求めることができない。そのため角度センサには高い測定精度が要求される。また,走査するため,センサを小型にする必要がある。現在一般に広く用いられている角度センサにはオートコリメータが挙げられる。オートコリメータは高い測定精度を有するが,局部傾斜ではなく平面全体の傾きを測定するため、光ビームの直径は数十mmと大きい。またCCD素子を使用しているため,応答が遅く,かつ大型であるために走査法による測定には適さない。
【0005】
一方,超精密加工機,半導体製造・検査装置,精密測定機,OA機器などに精密ステージが多用されている。これらの精密ステージの運動誤差が機械の性能に大きな影響を与えるため,運動誤差の計測が重要である。運動誤差のうち,移動方向の位置決め誤差は干渉測長機あるいはリニアエンコーダによって計測している。また,移動誤差に直交する方向における並進誤差(真直度)は直定規を基準に計測している。しかし,各軸(XYZ軸)回りの角度誤差はほとんど計測されていないのが現状である。従来のオートコリメータは応答が遅いため,動的な角度誤差の測定には使えない。さらに,作業空間の制約や機械への組み込みなどから,センサができるだけ小さいことが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような現状の中で,本発明では,高感度,高精度そしてコンパクトな角度センサを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の角度センサはオートコリメーション法を利用する。その原理を図1に示す。簡略化のため,図1ではX軸回りの回転角を検出する例を示す。
【0008】
コリメーターレンズに入射する光の光軸に対するX軸回りの角度をΔθXとする。対物レンズの焦点距離をfとし,レンズの焦点面上にY方向におけるスポットの変位をd Yとすると,ΔθXが十分小さいとき以下の関係が成り立つ。
【数1】

【0009】
ここで,入射角の変化を距離の変化に置き換えることが出来る。d Yの値は入射角に依存し,θXが一定であればビームが対物レンズのどこに入射してもかならず焦点面上では同じ点に結像する。光スポットのY方向における位置変化を検出することができるディテクター(光スポット位置検出素子)を用いることによって,d Yの変化を検する事でX軸回りの角度θXを検出することが可能である。また,光スポットのY方向とX方向の位置d Y,d Xを同時に検出できるディテクターを用いることによって,X軸回りの回転角ΔθXとY軸回りの回転角ΔθYを同時に検出することができる。
【0010】
図1から分かるように、オートコリメーション法を原理とする角度センサでは,角度の検出感度・分解能は光スポットの位置を検出するディテクターの位置検出感度・分解能と対物レンズの焦点距離fに比例する。CCD素子をディテクターとして用いる場合,CCD素子の位置検出分解能はCCDピクセルの大きさと同程度である。製造原理上,CCD素子のピクセルのサイズはミクロンオーダに制限されているので,位置検出分解能が低い。そのため,高感度・高分解能の角度センサを実現させるには,焦点距離を大きくとる必要がある。しかし,焦点距離が長いレンズを用いる場合は,センサが大きくなってしまう。高感度かつコンパクトなセンサを実現させるには,焦点距離の短いレンズを使う必要がある。そのためには,光スポット位置検出感度の高い受光素子を利用する必要がある。
【0011】
そこで本発明では,焦点距離の短いレンズを用いる場合でも高感度化が可能な,光位置検出素子PSD(非分割型)と分割型PDを用いる手法を提案する。また,角度センサの光学系において,点光源を平行光にするためのコリメートレンズ及びオートコリメーションユニット用対物レンズという二つのレンズを一つのレンズで代替する小型光学系も合わせて考案した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0013】
まず、PSDを用いた場合の高感度化について説明する。
図2に2次元半導体位置検出素子(PSD)の原理を示す。PSDは非分割型の素子で,直線性に優れ,XY方向のスポットの重心位置をの2次元の位置を一つの素子で連続して検出することができる。また,光の強度分布に影響されない特徴もある。2次元PSDの受光面の幅をXY方向共にとLPし,それによって検出される光スポットの2次元位置をdX,dYとすると,dX,dYはPSDの光電流出力IX1, IX2, IY1, IY2によって計算される。2次元PSDのX,Y出力xout_PSD,yout_PSDから次のように求めることができる。
【数2】

【数3】

【0014】
以上の式から分かるように,xout_PSD/ dX 及びxout_PSDYで定義されるPSDの位置検出感度は主に受光面の幅によって決まる。位置検出感度は受光面の幅に反比例するため,短い受光面幅のほうが高感度化に有利である。つまり,PSD受光面幅を短くすることによって,角度センサを高感度にすることができる。また,要求されるセンサの分解能・感度から,PSDの受光面幅を決める必要がある。例えば,対物レンズの焦点距離を40mmとした場合,0.01秒の試料面の傾斜θY (or θ)に対応するPSD上のスポット移動量dX (or dY)は4nmである。要求されるセンサの角度分解能を0.01秒とし,センサのダイナミックレンジ(測定範囲と分解能との比)を10000とすると,必要な受光面幅が約40μmまでとなる。なお,図では2次元PSDを示しているが,1次元PSDについても同様なことがいえる。
【0015】
次に分割型PDを用いた場合の高感度化について説明する。
光スポット位置を検出する4分割PDの原理を図3に示す。4分割PDは各受光素子にビームが入射するとビームの郷土に比例してそれぞれの素子から電流を測定する事でビームスポット位置を検出可能である。
【0016】
ここで,各素子A,B,C,Dからの出力をそれぞれIA,IB,IC,IDとし,X方向出力Xout_PDおよびY方向出力YOUT_PDをそれぞれ次のように定義する。
【数4】

【数5】

ここで全素子からの出力でわることで光量の変化の影響を補正している。
【0017】
スポットは4分割PDのすべての素子に入射している必要がある。素子はスポットサイズに比べて十分大きいのでスポットサイズによって測定範囲が決定される。
【0018】
次に,分割PDによる光スポットの位置検出感度とPD上の光スポットサイズとの関係について考える。図4にはdXを検出する例を示す。図4のように直径2wでスポット中心がX方向にdXだけ変位している。dXが小さいとき,スポットが中心にある時から変化した部分を長方形と近似できる。X軸上で左右2組のPD素子に光が当たっている部分の面積はそれぞれ
【数6】

【数7】

となる。それぞれのPD上の光スポットの面積はPD素子の出力電流と比例しているので,式(6)(7)を式(4)に代入すると
【数8】

となる。
【0019】
さらに,図5に示すように,光回折の理論に基づき,対物レンズの焦点距離をf,光ビームの波長をλ,レンズに入射するビーム径をDとすると,焦点面上のスポットサイズ2wは
【数9】

となる。ここで,式(1),(8),(9)を用いて角度の検出感度を計算すると
【数10】

となり整理すると
【数11】

となる。
【0020】
つまり,感度は焦点距離には依存せず。対物レンズに入射する光の波長と入射ビーム径にのみ依存するという事がわかる。つまり,使用する光の波長を短く,対物レンズの入射ビーム径を大きくすることによって,角度センサを高感度にすることができる。これにより焦点距離による感度の低下を気にせずレンズを選定することが可能となる。
【0021】
角度センサの小型化について説明する。
まず,これまでの2次元角度センサの光学系のレイアウト例を図6に示す。レーザダイオード(LD)などの点光源から出た直線P偏光の光ビームはコリメートレンズで平行光にされ,偏光ビームスプリッタ(PBS),四分の一波長板(1/4λ)を通り円偏光となって,測定試料に照射される。試料面の角度情報を持った反射光は再び四分の一波長板を通り,偏光状態がS偏光と変わる。その光は偏光ビームスプリッタで反射された後,対物レンズとその焦点面位置に置かれる光スポット位置検出素子からなるオートコリメーションユニットに入る。光スポット位置検出素子で光スポットの変位を測定することによって,試料面の角度を求めることができる。ここでいう光スポット位置検出素子はPSD、分割型PD、CCD素子、CMOS素子などが利用される。
【0022】
図7に,小型な角度センサが実現可能な光学系を示す。コンパクトな設計にする為に点光源の光を平行光にする為のコリメートレンズとオートコリメーションユニットの対物レンズの二つを一枚のレンズによって行うということである。これまで,二つ必要であったレンズを一枚にすることが出来るので部品点数を減らす事ができ尚且つ,全体の小型化にも繋がっている。この光学系では,レーザダイオード(LD)などの点光源から出た直線P偏光の光ビームはレンズで平行光にされ,偏光ビームスプリッタ,四分の一波長板を通り円偏光となって,測定試料に照射される。試料面の角度情報を持った反射光が再び同じレンズに入り,四分の一波長板を通った後,S偏光となる。その光は偏光ビームスプリッタで反射され,レンズの焦点面位置に置かれる光スポット位置検出素子に集光される。光スポット位置検出素子で光スポットの変位を測定することによって,試料面の角度を求めることができる。ここでいう光スポット位置検出素子はPSD、分割型PD、CCD素子あるいはCMOSエリアセンサCMOSエリアセンサ(例えば浜松ホトニクス株式会社製プロファ イルセンサS9132)などが利用される。
【0023】
このとき、PBSの1辺の長さをL、1/4λ板の厚みをT1、レンズの厚みをT2,レンズの焦点距離をfとすると、レンズがPBSの中で焦点を結ばないためには、
f≧L+T1+T2/2
でなければならない。T1>0、T2>0であるから、
f>L
でなければならない。また、レンズによりコリメートされた光束の直径をD、LDから出た光の拡がり角をφとすると、
D=2・f・tanφ
となる。LDから出た光がPBSの側面に漏れないためには
L≧D
でなければならない。 よって、f、L、φを設計パラメータにすると、
f>L≧2・f・tanφ
の関係を満たす必要がある。
【実施例2】
【0024】
図7に示す光学系を元に,図8のように,光スポット位置検出素子が作り込まれた半導体シリコン基板の上に,LD、PBS、1/4λ板、レンズが直接配置する設計にすると,センサがコンパクトに実現できる。
【実施例3】
【0025】
また,図9,10のように,PBSのサイズを小さいものにすることによって,短い焦点距離のレンズが利用できるようになり,小型なセンサが実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明により小型でしかも高精度の測定が可能な光学式角度センサを安価に構成できるので、角度センサ単体で用いるほかに、各種測定器,工作機械,OA機器などのステージに組み込んでステージの角度運動誤差をリアルタイムで測定し,誤差補正にも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】オートコリメーション法の原理を示す図である。
【図2】PSDによる光スポット位置検出原理を説明する図である。
【図3】分割型PDによる光スポット位置検出原理を説明する図である。
【図4】分割型PDによる光スポット位置検出感度とスポット径との関係。
【図5】対物レンズ焦点面上でのスポット径を説明する図。
【図6】従来の角度センサの光学系の例。
【図7】本発明の小型角度センサの光学系。
【図8】半導体シリコン基板上部品を直接配置した小型角度センサの例。
【図9】短い焦点距離のレンズを利用した小型センサ例(実施例2)。
【図10】短い焦点距離のレンズを利用した小型センサ例(実施例3)。
【符号の説明】
【0028】
100 点光源
101 レーザーダイオード
102 LDケース
110 コリメートレンズ
120 PBS(偏光ビームスプリッタ)
130 1/4波長板
140 試料面
150 対物レンズ
160 光スポット位置検出素子
170 コリメート/対物レンズ
180 スペーサー
200 光ビーム
300 シリコン基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
点光源1から出射した拡散光を、偏光ビームスプリッタ、1/4波長板を通した後、コリメートレンズと対物レンズを兼ねるレンズで平行光束に直して試料面に照射し、反射光をコリメートレンズと対物レンズを兼ねるレンズで収束し、1/4波長板を通り、偏光ビームスプリッタで反射した光を焦点位置に置かれた光スポット位置検出素子で検出する事を特徴とする光学式角度センサ。
【請求項2】
請求項1の光学式角度センサにおいて、拡散光の拡がり角をφ、偏光ビームスプリッタの1辺の長さをL、コリメートレンズと対物レンズを兼ねるレンズの焦点距離をfとするとき、f>L≧2・f・tanφの関係を満たす光学式角度センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−112872(P2006−112872A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−299194(P2004−299194)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【出願人】(899000035)株式会社東北テクノアーチ (68)
【出願人】(598141604)株式会社交洋製作所 (6)
【Fターム(参考)】