説明

小規模MPU搭載の大規模MPUシステム

【課題】大規模MPU・大規模LSIを使用することで、絶対最大定格値の低下・静電耐圧の減少など故障発生要因の閾値低下により高信頼化が計れなかった。
また、電源投入時に各I/O基板を含めたシステムの異常を監視、異常情報を不揮発性記憶部に格納しても、大規模MPUの基本モニタが動作しない場合、自己診断情報を確認することができずに、原因解明の早期絞込みが困難であるという問題があった。
【解決手段】電源投入時に大規模MPUによる自己診断を行ない、システムに異常があれば立上げを停止する機能を有する小型で最小限の機能を持った故障率の低い小規模MPUを実装し、信頼性の高いシステムの構築を可能とする。また、各I/O基板に実装した書込み可能な不揮発性記憶部に自己診断時の診断情報および異常情報を格納することで、大規模MPUが異常で基本モニタが動作しない場合にも、早期原因の解明を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小規模MPU搭載の大規模MPUシステムに係り、特に、大規模MPUシステムに搭載した小規模MPU(Micro Processor Unit)と小規模CPLD(Complex Programmable Logic Device)とからなり、電源投入時の自己診断によるシステム異常の検出時に、高い信頼性を実現するとともに、原因解明の早期絞込みを可能とする大規模MPUシステムの小規模MPUによる高信頼化に関する。
【背景技術】
【0002】
主MPU冷却ファンで強制冷却された主MPUとサブMPUとからなり、サブMPUが主MPU冷却ファンの異常検出を監視および主MPUへの通知を行ない、主MPUの一時停止と再起動とを制御可能とする主MPUをサブMPUが監視・制御を行なうファン異常制御方法については知られている(例えば、特許文献1を参照)。
しかしながら、従来技術である特許文献1は通常動作時の監視であり、大規模MPUを使用した自己診断動作時では、絶対最大定格値の低下・静電耐圧の減少など故障発生要因の閾値低下による故障率の高い大規模MPUで異常処理を行なっていた。
【0003】
【特許文献1】特開2000−112575号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のごとく、従来の技術では次のような問題点がある。
【0005】
1)従来技術である大規模MPUおよび大規模LSI(FPGA(Field Programmable Gate Array)など)を使用した自己診断システムでは、絶対最大定格値の低下・静電耐圧の減少など故障発生要因の閾値低下による故障率の高い大規模MPUで異常処理を行なっていた。
【0006】
2)電源投入時に各I/O基板を含めたシステムの異常を監視、異常情報を不揮発性記憶部に格納しても、大規模MPUの基本モニタが動作しない場合、自己診断情報を確認することができずに、原因解明の早期絞込みが困難であった。
【0007】
本発明の目的は、故障率の低い小規模MPUと小規模CPLDを用いることで、信頼性の高いシステムを構築することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記に述べた問題点を解決するために最先端技術を使用せず、絶対最大定格及び静電耐圧に裕度のある小型で最小限の機能を有する故障率の低い小規模MPUと小規模CPLDをシステム制御基板に組み込んだことにある。すなわち、電源投入時に大規模MPUによる自己診断を行い、診断結果を前記小規模CPLDに格納する。前記小規模MPUが自己診断正常フラグ信号を監視し、正常であればシステムリセット信号を解除し続け、異常時にはシステムリセット信号を出力する。よって、前記小規模MPUでシステムの起動制御を行なうことで安定したシステムの起動が可能となり、高信頼システムの構築が実現できる。図3の表1に大規模MPUと小規模MPUの性能比較を示す。
【0009】
また、大規模MPUによる自己診断時に、前記小規模CPLDに自己診断結果を格納しているが、その情報をシステムバスとは独立した前記小規模MPUに備わっている通信方式(シリアル通信、I2Cなど)により情報取得を行ない、情報表示器(7セグメントLEDなど)への表示、およびシリアル通信で外部表示装置へ診断情報通知を行なうことで、早期原因の解明が可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、小規模MPUと小規模CPLDを用いることで、信頼性の高いシステムが構築でき、また小規模CPLDに自己診断結果を格納することで早期原因の解明を行なうことができる。 また、微細化技術を用いて高集積化、小型化された大規模LSIを用いたシステムの信頼性向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施例について図1を用いて詳しく説明する。
図1は本発明に関わるシステムの高信頼を可能とするハードウェア構成図である。図1において、1はシステムを制御するシステム制御基板、2は自己診断、およびシステム制御を主に行なう大規模MPU、3は大規模MPU2からの制御信号のアクセスタイミング制御やシステム制御基板1のステータス情報を格納するレジスタなどを備えた大規模LSI(本実施例ではFPGAとする)、4は自己診断時の診断情報および各I/O基板情報を格納する書込み可能な故障率の低い小規模CPLD、5はリセット制御、および自己診断結果を外部表示装置に転送する機能を有した故障率の低い小規模MPU、6は電源投入時に駆動電圧の電圧値を監視するリセットIC、7は大規模LSI3の回路構成データを記憶した不揮発性記憶部、10はシリアル通信用基板やデジタル入出力インターフェース基板などのI/O基板、11はI/O基板10の機能を実現させるためのLSI、12はシステム制御基板1とI/O基板10とを接続するためのバックプレーン基板、13はシステム制御基板1とI/O基板10とのデータの送受を行なうシステムバス、14はリセットIC6が電圧を監視し、駆動電圧となることで小規模MPU5のみリセットを解除するリセット信号、15は不揮発性記憶部7から大規模LSI3へデータのローディングを行ない、ローディング完了を通知するDONE信号、16はシステム全体のシステムリセット信号、18は大規模MPU2により自己診断を行ない、正常か異常かを小規模MPU5に通知する自己診断正常フラグ信号、20は異常発生時にシステムバスとは独立した小規模MPU5に備わっている通信方式(シリアル通信、I2Cなど)、21は自己診断結果を表示するための情報表示器、22は診断情報の送受信を行なうためのシリアル通信で接続するためのコネクタ、23はコネクタ22と接続して診断情報などを確認するための外部表示装置である。
【0012】
なお、ここで、小規模CPLD4および小規模MPU5のそれぞれは、大規模LSI3や大規模MPU2に比べて、構成する部品の点数が十分に少なく、さらに、製造プロセスも最先端技術を用いずにプロセスロードマップ上で1世代または2世代前のプロセスノードの技術を用いている。すなわち、半導体プロセスでは、プロセス世代ごとに微細化が進み、平面方向および深さ方向が短くなっている。よって、最先端のプロセス世代に比べて、そのプロセスに応じて決定されるレイアウトルール、すなわち、平面方向のスペース余裕が大きく、さらに、半導体基板に形成される拡散層の深さや拡散層間のスペースの余裕が大きく、半導体基板上に形成される膜の厚さもより厚い寸法となるので、絶対最大定格及び静電耐圧に余裕度のある回路構成となる。それにより、低い故障率を保つことが可能となる。その一例を前述の表1に示す。
【0013】
システム制御基板1の電源投入時にリセットIC6が駆動電圧を監視し、ある駆動電圧に達することでリセット信号14を解除し、小規模MPU5のみリセットが解除される。駆動電圧に達したときに大規模LSI3の回路構成データを記憶した不揮発性記憶部7から大規模LSI3へのローディングを行なうが、システム自体はシステムリセット信号16により停止した状態である。大規模LSI3へのローディング完了を通知するDONE信号15を小規模MPU5に通知し、小規模MPU5はシステム全体のシステムリセット信号16の解除を行なう。システムリセット信号16解除後に大規模MPU2は自己診断プログラムを実行し、システム制御基板1およびバックプレーン基板12のシステムバス13を介して接続された各機能を実現するためのLSI11を実装したI/O基板10の両基板の正常/異常を確認し、診断情報および異常情報を小規模CPLD4に格納する。
【0014】
自己診断が正常に終了した場合は自己診断正常フラグ信号18を小規模MPU5に通知し、大規模MPU2は各業務処理動作に移行する。また、自己診断の結果、異常があった場合は、自己診断正常フラグ信号18を立てずに、異常終了としてシステム自体が起動しないように故障率の低い小規模MPU5でシステムリセット信号16を制御することでシステムの高信頼化が可能となる。また、診断情報や異常情報はシステムバス13とは独立した小規模MPU5に備わっている通信方式20(シリアル通信、I2Cなど)から取得し、情報表示器21(7セグメントLEDなど)に表示、およびコネクタ22を介して外部表示装置23にシリアル通信で通知することで大規模MPU2の異常が発生し異常情報が読み出せない場合にも、早期原因の解明が可能となる。
【0015】
図2を用いてシステム制御基板の処理手順を説明する。なお、ここで用いた符号は図1と同様である。
ステップS001において、システムの電源供給を開始し、ステップS002において、リセットIC6により駆動電圧を監視し、動作可能電圧となることでステップS003に進みリセット信号14をネゲートし、小規模MPU5のリセットを解除する。動作不可電圧時には動作可能電圧となるまでリセットIC6により駆動電圧を監視し続ける。
ステップS004において、小規模MPU5の初期化を行ない、通常処理可能な状態とし、ステップS005において、小規模MPU5はデータのローディングが完了したことを通知する大規模LSI3からのDONE信号15を監視し、異常の場合ステップS012に進む。正常の場合は、ステップS006において、小規模MPU5がシステムリセット信号16を解除し、システム制御基板1およびI/O基板10が起動を開始する。
【0016】
ステップS007において、大規模MPU2の初期化を行ない、通常処理可能な状態とし、ステップS008において自己診断プログラムを実行し、システム制御基板1およびI/O基板10の診断を実行し、ステップS009において小規模CPLD4に診断結果を格納していく。ステップS010において、大規模MPU2の自己診断の結果、正常の場合は自己診断正常フラグ信号18を立て小規模MPU5に通知し、ステップS011に進み、各業務処理の実行を行なう。異常を検出した場合ステップS012に進む。このとき自己診断正常フラグ信号18を立てずに小規模MPU5に異常の発生を通知する。
ステップS012において、小規模MPU5はシステムが立上がらないようシステムリセット信号16をアサートする。ステップS013において、システム制御基板1およびI/O基板10に実装されている小規模CPLD4に格納されている診断情報をシステムバス13とは独立した通信方式20(シリアル通信、I2Cなど)により読出し、情報表示器21(7セグメントLEDなど)に表示を行なう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】システムの高信頼を可能とするハードウェア構成を示した説明図である。
【図2】本発明の実施例のフローチャートである。
【図3】大規模MPUと小規模MPUの性能比較を示す表である。
【符号の説明】
【0018】
1…システム制御基板、
2…大規模MPU、
3…大規模LSI、
4…小規模CPLD、
5…小規模MPU、
6…リセットIC、
7…不揮発性記憶部、
10…I/O基板、
11…LSI、
12…バックプレーン基板、
13…システムバス、
14…リセット信号、
15…DONE信号、
16…システムリセット信号、
18…自己診断正常フラグ信号、
20…通信方式、
21…情報表示器、
22…コネクタ、
23…外部表示装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のLSIを搭載した第1の基板と、前記複数のLSIとシステムバスを介して信号の送受信を行う大規模MPUを搭載した第2の基板とを含むシステムであって、
前記システムの起動に際して、起動時の電源電圧をモニターし、所定の電圧に達した時点でリセット信号を発信するリセットICと、
前記リセットICからのリセット解除信号を受信し前記大規模MPUのリセットを解除する信号を送信することにより前記大規模MPUによる前記システムの異常の有無を確認するための自己診断を開始させる小規模MPUと、を備え、
前記小規模MPUは、前記大規模MPUより少ない部品数で構成され前記大規模MPUより低い故障率を有し、
前記システムの立ち上げ時において、前記大規模MPUにより実行された自己診断の結果を基に前記システムの異常を検出した場合に、前記小規模MPUにより、前記システムの立ち上げを停止する手段を有することを特徴とする大規模MPUシステム。
【請求項2】
前記システムの電源起動時に、前記小規模MPU以外の回路を動作させない手段を有することを特徴とする請求項1に記載の大規模MPUシステム。
【請求項3】
前記小規模MPUは、製造プロセスの微細化世代が前記大規模MPUより前のものを用いて製造されていることを特徴とする請求項1に記載の大規模MPUシステム。
【請求項4】
前記小規模MPUは、前記小規模MPUを製造するプロセス世代のレイアウトルールを用いて設計されていることを特徴とする請求項3に記載の大規模MPUシステム。
【請求項5】
前記自己診断の結果を格納する小規模ロジック回路を有することを特徴とする請求項1に記載の大規模MPUシステム。
【請求項6】
前記小規模ロジック回路は、前記小規模MPUのプロセス世代を用いて製造されることを特徴とする請求項5に記載の大規模MPUシステム。
【請求項7】
前記自己診断の結果を格納する小規模ロジック回路と、
前記自己診断結果を前記小規模MPUにより読出し、エラーコードを表示するエラー情報表示器と、を有し、
前記自己診断結果を表示により確認可能とすることを特徴とする請求項5に記載の大規模MPUシステム。
【請求項8】
前記小規模ロジック回路に格納された自己診断結果の送受信は、前記システムバスとは独立して設けられた前記小規模MPUに装備された通信回線を用いて行われることを特徴とする請求項5に記載の大規模MPUシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−171115(P2008−171115A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−2383(P2007−2383)
【出願日】平成19年1月10日(2007.1.10)
【出願人】(000233549)株式会社日立ハイテクコントロールシステムズ (130)
【Fターム(参考)】