説明

少なくとも一つの非酸化物活性種を有するカソード電極を有する電気化学的エネルギー源、およびそのような電気化学的エネルギー源を有する電気装置

本発明は、基板と、前記基板上に設置された、少なくとも一つの電気化学セルと、を有する電気化学的エネルギー源であって、前記セルは、アノード電極、カソード電極、および前記アノード電極と前記カソード電極との間を分離する電解質、を有し、前記カソード電極は、少なくとも一つの非酸化性化合物を有し、前記化合物は、活性種を有することを特徴とする電気化学的エネルギー源に関する。本発明では、リチウム合金アノード電極と、前述の材料とは異なる材料で構成されたカソード電極とで構成されたバッテリが、従来使用の材料を含むバッテリスタックの代替として、特に、高電流容量が必要な用途において、適していることが示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良型の電気化学的エネルギー源に関する。また本発明は、そのような電気化学的エネルギー源を備える電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固体電解質系の電気化学的エネルギー源は、良く知られている。これらの(平坦)エネルギー源、または「固体バッテリ」は、効率的に化学エネルギーを電気エネルギーに変換し、携帯電子機器の電源として使用することができる。そのようなバッテリは、小型化され、例えば、微細電子モジュール、特に集積回路(IC)への電気エネルギーの供給に使用される。この一例は、国際特許出願第WO-A-00/25378号に記載されており、固体薄膜小型バッテリは、特殊な基板上に直接製作される。この製作工程の間、基板上に、スタックとして、第1の電極、中間の固体電解質、および第2の電極が順次成膜される。現在、幅広い範囲の固体電解質が存在し、これらは、薄膜バッテリの設計に利用される。これらには、(特に)ハロゲン化スピネル(Li2FeCl4)、ハロゲン化ロック塩(rocksalts)(LiI、LiBr)、硫化物(Li2S-P2S5)、窒化物(Li3N)、ガーネット型構造(Li5La3Ta2O12)、Li-ケイ酸塩(Li4SiO4、Li9SiAlO8)、ペロブスカイト(Li2/3-3xLaxTiO3)、およびリチウムリン−酸窒化物(LiPON)が含まれる。
【0003】
最も普遍的なLiイオンバッテリシステムは、グラファイト(C)アノード電極、およびリチウムコバルト酸化物(LiCoO2)カソードで構成され、PDA、ノートブックのような用途に、有効に使用される。最近では、移植可能物、小型自動装置、スマートカード、集積照明法(OLED)、または補聴器のような、新たな用途分野が生じている。これらの低出力、小容積用途には、容積エネルギー/電力密度の大きなバッテリが必要となる。重量エネルギー/電力密度は、小型サイズのため、あまり重要ではない。従って、これらの用途に給電するための優れた候補材は、薄膜固体バッテリである。通常、これらは、リチウム金属(Li)アノード電極、および金属酸化物(MOx)カソード電極で構成される。ここで、(MOx)カソード電極は、通常、2Dまたは3Dの化合物層を有し、この中に、リチウムは、そのイオン形態で保管される。
【0004】
最大の可能なエネルギー/電力密度を得る上で、2つの態様が重要である。一つは、特許出願第WO2005/O27245A2号に示されているように、エッチング基板に対して、表面積/専有面積の間の比を最大化することである。第2に、高い体積エネルギー密度のため、高い体積電荷密度の電極材料を使用する必要がある。
【0005】
従来から使用されている、LiCoO2、LiNiO2、またはLiMn2O4のような金属酸化物(MOx)カソード材料は、極めて大きな範囲で、バッテリ全体のインピーダンスに影響する。より単純なケースでは、これらの化合物への/からの、リチウムの挿入/抽出に関連する抵抗は、かなり大きく、そのため、これは、バッテリスタック全体の定率容量において、制限因子となる。この抵抗は、いくつかの材料の特定のパラメータ、例えば、これらの酸化材料の半導体的性質に、直接関連し、特に、高リチウム量において、電子伝導性が劣る結果となる。従来のバッテリの場合、バッテリの全インピーダンスの約90%は、カソード電極に関連するものであり、アノード電極に関連するものは、10%に過ぎない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第WO00/25378号パンフレット
【特許文献2】国際公開第WO05/O27245号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、前述のような種類のバッテリであって、カソード電極の電子伝導性が改善され、バッテリから高電流が流れる機器および用途により適したバッテリを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、
基板と、
前記基板上に設置された、少なくとも一つの電気化学セルと、
を有する電気化学的エネルギー源であって、
前記セルは、
アノード電極、
カソード電極、および
前記アノード電極と前記カソード電極との間を分離する電解質、
を有し、
前記カソード電極は、少なくとも一つの非酸化性化合物を有し、
前記化合物は、活性種を有することを特徴とする電気化学的エネルギー源によって得られる。
【0009】
ここで、活性種とは、電気エネルギーから化学エネルギーへの変換、およびその逆が生じるような化学種である。金属酸化物カソード電極を、異なる種類のカソード材料に置き換えることにより、これらの限界が克服される。本願に開示された本発明では、リチウム合金アノード電極と、前述のような、これとは異なる種類の材料で構成されたカソード電極とで構成されたバッテリが、特に高電流容量が必要となる用途において、従来の材料を有するバッテリスタックの代替に適していることが示される。
【0010】
また、この異なる種類のカソード材料は、従来のカソード材料とは異なる電極電位を有し、バッテリ電極の間に、低電位が得られることに留意する必要がある。従って、低エネルギー密度のバッテリが得られることになる。しかしながら、特に、高電流容量が必要となる用途では、本発明の特徴により得られる利点は、エネルギー密度が低いという欠点を相殺し得る。
【0011】
本発明によるこの特徴は、いくつかの異なる種類の電気化学的エネルギー源、例えば活性種として水素を含むタイプのエネルギー源(NiMHバッテリ)に使用することも可能であるが、本発明が適用される主分野は、そのような電気化学的エネルギー源であり、ここでは、リチウムが活性種として使用される。その結果、主要実施例では、活性種としてリチウムを含む場合の特徴が提供される。
【0012】
リチウムは、金属または元素の構造で存在するが、リチウムは、合金化合物で存在することも可能である。この場合、リチウムは、その元素(原子)形態であっても、イオンの形態であっても良い。適正で妥当な材料を選定をすることにより、従来使用の(層状)MOxカソード材料は、リチウム合金材料に置換される。提案されたリチウム合金カソード材料は、従来のMOx系のカソード材料を超える、いくつかの利点を有する。すなわち、
1. これらは、混合伝導体型の半導体化合物ではないため、これらの電子伝導性は、高い。
2. リチウム合金内のリチウムの固有拡散は、通常、酸化(層状)化合物よりも大きい。
3. 電気化学的活性に大きな影響を及ぼす、層状MOx材料の優先配向成膜の必要性が排除される。
4. 体積エネルギー密度および重量エネルギー密度が高くなる。
【0013】
リチウム合金化合物からなる、アノード電極およびカソード電極の双方に維持される、これらの全ての特性の結果、バッテリ全体のインピーダンスが低下し、特に、高電流用途に適した、この高エネルギーバッテリスタックを形成することができる。
【0014】
さらに別の好適実施例では、カソード電極は、重量比で、少なくとも90%のリチウム合金を含むという特徴が提供される。そのような量のリチウムを含むカソード電極では、本発明の効果が最適化されることは明らかである。ここで、本発明の主目的は、電極自体に、より良い伝導性を提供することであり、これは、電極に、十分な電気伝導性材料が存在するときにのみ、達成されることに留意する必要がある。残りの材料は、電気化学的に活性ではない材料、例えば構造化バインダ、またはカーボン材料で構成されても良い。
【0015】
本発明による手段は、固体バッテリにおいて特に好適であることは明らかである。そのため、好適実施例では、電気化学的エネルギー源は、カソード電極が少なくとも一つのリチウム合金化合物を有する固体バッテリで構成されるという特徴が提供される。
【0016】
カソード電極にリチウムアンチモン合金(Li-Sb)を使用することにより、特に有意な結果が得られることは、発明者には明らかである。すなわち、高エネルギー密度リチウム(Li)またはリチウム珪素(Li-Si)アノード電極に関して、比較的高いカソード電位が得られ、これは、得られるバッテリのエネルギー密度には、重要な因子である。また、前述の利点と同様の利点、特に、高い電気伝導性、リチウムの大きな固有拡散、高い体積エネルギー密度および重量エネルギー密度、の利点が得られる。また、電気化学的活性に大きな影響を及ぼす、層状MOx材料の優先配向設置の必要性は、回避される。
【0017】
同様に、カソード電極へのリチウムビスマス(Li-Bi)合金の使用により、特に有意な結果が得られること、および高エネルギー緻密リチウム(Li)またはリチウム珪素(Li-Si)アノード電極に関して、比較的高いカソード電位が得られることは、発明者等には明らかである。これは、得られるバッテリのエネルギー密度において、重要な因子となる。また、前述のものと同様の利点、特に、高い電気伝導性、リチウムの大きな固有拡散、大きな体積エネルギー密度および重量エネルギー密度が得られる。また、電気化学的活性に大きな影響を及ぼす、層状MOx材料の優先配向設置の必要性は、回避される。
【0018】
本発明の用途の主分野はLiイオンバッテリに関するが、本発明は、活性種として他の材料を使用することを排斥するものではなく、本発明の特徴は、活性種が水素であるニッケル金属水素化物(NiMH)のような、他の種類のバッテリにも適用できる。また、これらの電極では、酸化物の不存在により、電極の内部インピーダンスが抑制される。
【0019】
本発明によるエネルギー源の少なくとも一つの電極は、以下の少なくとも一つの元素の活性種の貯蔵に適合されることが好ましい:ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)、ナトリウム(Na)、およびカリウム(K)、または周期律表の1族もしくは2族に属する他の適当な元素。従って、本発明によるエネルギーシステムの電気化学的エネルギー源は、各種インターカレーション機構に基づき、従って、例えばLiイオンバッテリ、NiMHセル等のような、異なる種類の(貯蔵式)バッテリセルの形成に適する。
【0020】
好適実施例では、少なくとも一つの電極は、以下の材料の少なくとも一つを有する:C、Sn、Ge、Pb、Zn、Li、および好ましくはドープされたSi。また、これらの材料の組み合わせを使用して、電極を構成しても良い。n型もしくはp型のドープ化Si、またはSiGeもしくはSiGeCのような、ドープ化Si関連化合物を、電極として使用することが好ましい。また、他の適当な材料が、アノード電極として適用されても良く、バッテリ電極の材料がインターカレーション、および前述の反応種の貯蔵に適合される場合、好ましくは、周期律表の12〜16の群の一つに属する、いかなる他の元素が使用されても良い。前述の材料は、リチウムイオン系バッテリセルの適用に、特に適する。水素系バッテリセルが使用される場合、アノード電極は、AB5型材料のような水素化物形成材料、特にLaNi5を有することが好ましい。
【0021】
本発明による電気化学的エネルギー源の電極をパターン化または構造化することにより、あるいは好ましくはその両方により、3次元表面領域、さらには、電極専有面積に対して増大した表面積、および少なくとも一つの電極と電解質スタックの間の、単位体積当たりの増大した接触表面、が得られる。この接触表面の増大により、エネルギー源の定率容量が改善され、さらには、本発明によるエネルギー源の特性が向上する。この方法では、エネルギー源の電力密度は、最大化され、最適化される。この増大したセル特性により、本発明による小型エネルギー源は、十分な方法で、小型電子装置への給電に適合される。また、この向上した特性により、本発明による電気化学的エネルギー源によって給電される(小型)電子部材の選択の自由度が、有意に上昇する。パターンの性状、形状および寸法は、様々であり、以下に詳しく示す。少なくとも一つの電極の少なくとも一つの表面は、実質的に規則的にパターン化されていることが好ましく、適合パターンには、1もしくは2以上のキャビティ、特に柱、溝、スリットもしくはホールが設けられることがより好ましく、これらの特定のキャビティは、比較的正確な方法で設置され得る。この方法では、電気化学的エネルギー源の改善された特性を、比較的正確に、事前に定めることができる。本願では、スタックが設置されている基板の表面は、実質的に平坦であり、あるいは(基板を湾曲し、および/または基板に溝、ホールおよび/もしくは柱を提供することにより)パターン化されており、3次元配向セルを製作することができることに留意する必要がある。
【0022】
各電極は、電流コレクタを有することが好ましい。電流コレクタにより、セルは、電子装置と容易に接続される。電流コレクタは、以下の少なくとも一つの材料で構成されることが好ましい:Al、Ni、Pt、Au、Ag、Cu、Ta、Ti、TaN、およびTiN。他の種類の電流コレクタ、例えば、好ましくはドープされた半導体材料、例えばSi、GaAs、InPを使用して、電流コレクタとして機能させても良い。
【0023】
電気化学的エネルギー源は、基板と少なくとも一つの電極の間に設置された、少なくとも一つのバリア層を有することが好ましく、このバリア層は、少なくとも実質的に、セルの活性種の前記基板への拡散を抑制するように適合される。この方法では、基板および電気化学的セルは、化学的に分離され、その結果、比較的長時間にわたって、電気化学的セルの特性が維持される。リチウムイオン系セルを使用した場合、バリア層は、以下の少なくとも一つの材料で構成されることが好ましい:Ta、TaN、Ti、およびTiN。また、他の適当な材料を使用して、バリア層として機能させても良いことは明らかである。
【0024】
好適実施例では、基板は、理想的には、該基板のパターン化のため表面処理に晒されることに適し、電極のパターン化が容易になることが好ましい。基板は、以下の少なくとも一つの材料で構成されることが好ましい:C、Si、Sn、Ti、Ge、Al、Cu、Ta、およびPb。また、これらの材料の組み合わせを使用して、基板を形成しても良い。基板として、n型もしくはp型のドープ化SiまたはGeを使用し、あるいはドープ化Si系および/もしくはGe系化合物、例えばSiGeもしくはSiGeCを使用することが好ましい。基板の製造のため、比較的剛性のある材料の他、実質的に可撓性のある材料、例えば薄膜状Kapton(登録商標)箔を使用しても良い。基板材料として、他の適当な材料を使用しても良いことは明らかである。
【0025】
本願に示されているように、電気化学的バッテリは、Kapton(登録商標)のような可撓性材料または金属箔で基板を製造することにより、可撓性構造で構成されても良い。
【0026】
さらに別の好適実施例では、請求項の一つによる、少なくとも一つの電気化学的エネルギー源を有するバッテリユニットが提供される。このバッテリユニットでは、本発明の特徴を、有意に使用することができる。これは、これに限られるものではないが、特に、バッテリパックが、高電流の必要な機器に給電するように適合される場合、有意である。
【0027】
また、本発明では、請求項1乃至18のいずれか一つに記載の電気化学的エネルギー源を有する電気装置が提供される。また、そのような実施例では、本発明の効果を満たすことは明らかである。これは、電気装置が、比較的高電流を流すように適合された、小型自立式電気装置のような、電気エネルギー消費部材を有する場合、特に、無線通信移植性バイオセンサ、または電気ドリルのような電力道具などの場合に、当てはまる。
【0028】
また、本発明は、前述のような電気化学的エネルギー源を製造する方法であって、
基板上にアノード電極層を設置するステップと、
前記アノード電極層の上に、固体電解質層を設置するステップと、
前記電解質層の上に、リチウム合金を含むカソード層を設置するステップと、
を有する方法に関する。
【0029】
以下、本発明の実施例の断面を示した図1を参照することにより、本発明は、明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、固体バッテリに限られるものではないが、このタイプのバッテリは、本発明の適用の主要分野の一つである。従って、そのような構造について、本発明を説明する。
【0032】
図1に示す固体バッテリ1は、例えば珪素を有する基板2を有するが、他の種類の基板材料を使用しても良い。基板2には、トランジスタ3のような電子装置が導入される。この基板2の上には、電流コレクタ層4が設置される。この電流コレクタ層4は、バリア層としての機能を有しても良い。この電流コレクタ層4の上には、カソード層5が設置され、これは、本発明による非酸化性のリチウム化合物を有する。カソード層の上には、電解質層6が設置され、その上には、アノード電極層7が設置される。この構造は、アノード層7の上に設置された、第2の電流コレクタ層8によって完成する。電気的接続は、両電流コレクタ層4、8によって行われる。
【0033】
従来の層状MOx系カソード材料は、バッテリのインピーダンスの大部分を占めていたが、これらは、リチウム合金化合物で置換される。従来のものを超える明らかな利点については、既に説明した。カソード材料として使用され得るリチウム合金材料として、2つの想定される主要例は、リチウムアンチモン(Li-Sb)またはリチウムビスマス(Li-Bi)である。これらは、(i)極めて大きなエネルギー密度を呈し、(ii)提案されたリチウム合金材料よりも十分に貴な(デ)インターカレーション電位を有し、良好なバッテリ電位が得られるため、特に適している。原理上は、本発明の特徴とは無関係であるが、アノードは、金属リチウムで構成されても良い。
【0034】
利点(i)
Hugginsらの研究では、室温のSbおよびBiは、ホスト原子当たり、3つのリチウム原子を貯蔵することができることが示されている(表1参照)。これは、SbおよびBiにおいて、660mAh/gおよび385mAh/gに対応する。通常、従来使用のMOxカソード材料は、重量エネルギー密度は、約130mAh/gしかない。この点に関し、以下の表1が参照される。
【0035】
【表1】

利点(ii)
また、Li-Sbの導入/抽出の電位は、Li/Li+に対して、約0.95Vであり、Li-Biの場合、Li/Li+に対して、約0.815Vである(表1参照)。
【0036】
表1のデータを考慮すると、これらのリチウム合金カソードの重量(CapM)エネルギー密度および体積エネルギー密度(CaV)を計算することができ、これらを、従来のMOx系カソードと比較することができる。これを表2に示す。
【0037】
【表2】

また、リチウム合金アノードを使用することも可能である。これらの化合物の重量(CapM)および体積エネルギー密度(CapV)を再度計算すると、表3に示すデータが得られる。この表には、従来使用のグラファイト、および金属リチウムアノードも示されている。
【0038】
【表3】

最後に、表2および表3に示した電極材料の組み合わせを用いて、バッテリスタック(アノード+カソード)の全体積エネルギー密度(ED)が計算される。これらの組み合わせのいくつかに対して得られたデータは、表4に示されている。
【0039】
【表4】

まとめると、表4には、完全なバッテリスタックの体積エネルギー密度は、リチウム合金アノードとカソード(Li-SiおよびLi-Sb)からなるスタックの場合、従来のスタック(CおよびLiCoO2)に比べて、幾分低くなることが示されている。この低下は、約20%である。しかしながら、MOx系カソードを使用しないため、このスタックの全体のバッテリインピーダンスは、リチウム合金カソードの優れた材料特性のため、低くなる。このため、このバッテリは、高電流用途において、より適したものとなる。基本的に、精度の要求される用途に応じて、体積エネルギー密度のある程度は、犠牲になっても良い。
【0040】
極めて重要なことではあるが、必要な場合、そのようなリチウム合金系バッテリの統合は、次のように構成される必要があることに留意する必要がある。リチウム合金アノードとカソードとで構成されるスタックは、通常、従来に比べて低いバッテリ電位を有する(表4参照)。これは、将来有意な利点となり得る。例えば、IC系電子機器は、低電力/電圧作動に移行しつつあるからである。この場合、低バッテリ電位がより適合する(適正電圧への変換による損失の低下のため)。
【0041】
リチウム合金(Li-SbまたはLi-Bi)カソードと組み合わされるアノード材料として、Li-Siの代わりに、金属リチウムを使用しても良いことに留意する必要がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設置された、少なくとも一つの電気化学セルと、
を有する電気化学的エネルギー源であって、
前記セルは、
アノード電極、
カソード電極、および
前記アノード電極と前記カソード電極との間を分離する電解質、
を有し、
前記カソード電極は、少なくとも一つの非酸化性化合物を有し、
前記化合物は、活性種を有することを特徴とする電気化学的エネルギー源。
【請求項2】
前記活性種は、リチウムを含むことを特徴とする請求項1に記載の電気化学的エネルギー源。
【請求項3】
前記カソード電極は、少なくとも一つのリチウム合金化合物を有することを特徴とする請求項2に記載の電気化学的エネルギー源。
【請求項4】
前記カソード電極は、重量比で、少なくとも90%のリチウム合金を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の電気化学的エネルギー源。
【請求項5】
請求項3に記載の電気化学的エネルギー源を有する固体バッテリであって、
前記アノード電極は、リチウム合金化合物を有し、
前記カソード電極の前記リチウム合金化合物は、前記アノード電極の前記リチウム合金化合物の電極電位とは異なる電極電位を有することを特徴とする固体バッテリ。
【請求項6】
前記カソード電極は、リチウムアンチモン合金(Li-Sb)を含むことを特徴とする請求項5に記載の固体バッテリ。
【請求項7】
前記カソード電極は、リチウムビスマス合金(Li-Bi)を含むことを特徴とする請求項5または6に記載の固体バッテリ。
【請求項8】
前記活性種は、水素であることを特徴とする請求項1に記載の電気化学的エネルギー源。
【請求項9】
前記アノード電極および前記カソード電極の少なくとも一つは、以下の少なくとも一つの元素の活性種を貯蔵するように適合されることを特徴とする請求項1乃至4および8のいずれか一つに記載の電気化学的エネルギー源:
Be、Mg、Cu、Ag、Na、Al、およびK。
【請求項10】
前記アノード電極および前記カソード電極の少なくとも一つは、以下の少なくとも一つの材料で構成されることを特徴とする請求項1乃至4、8および9のいずれか一つに記載の電気化学的エネルギー源:C、Sn、Ge、Pb、Zn、Bi、および好ましくはドープされたSi。
【請求項11】
少なくとも一つの電極には、少なくとも一つのパターン化表面が提供されることを特徴とする請求項1乃至4、および8乃至10のいずれか一つに記載の電気化学的エネルギー源。
【請求項12】
前記少なくとも一つの電極の前記少なくとも一つのパターン化された表面には、複数のキャビティが設けられることを特徴とする請求項1乃至4、および8乃至11のいずれか一つに記載の電気化学的エネルギー源。
【請求項13】
前記キャビティの少なくとも一部は、柱、溝、スリット、またはホールを構成することを特徴とする請求項11に記載の電気化学的エネルギー源。
【請求項14】
前記アノード電極および前記カソード電極の各々は、電流コレクタを有することを特徴とする請求項1乃至4、および8乃至13のいずれか一つに記載の電気化学的エネルギー源。
【請求項15】
前記少なくとも一つの電流コレクタは、以下の少なくとも一つの材料で構成されることを特徴とする請求項14に記載の電気化学的エネルギー源:
Al、Ni、Pt、Au、Ag、Cu、Ta、Ti、TaN、およびTiN。
【請求項16】
当該エネルギー源は、さらに、
少なくとも一つの電子伝導性バリア層を有し、
該バリア層は、前記基板と少なくとも一つの電極の間に設置され、
前記バリア層は、前記セルの活性種の前記基板への拡散を、少なくとも実質的に抑制するように適合されることを特徴とする請求項1乃至4、および8乃至15のいずれか一つに記載の電気化学的エネルギー源。
【請求項17】
前記少なくとも一つのバリア層は、以下の材料の少なくとも一つで構成されることを特徴とする請求項16に記載の電気化学的エネルギー源:
Ta、TaN、Ti、およびTiN。
【請求項18】
前記基板は、Siおよび/またはGeを有することを特徴とする請求項1乃至4、および8乃至17のいずれか一つに記載の電気化学的エネルギー源。
【請求項19】
前記基板は、Kapton(登録商標)または金属箔のような可撓性材料で構成されることを特徴とする請求項1乃至4、および8乃至18のいずれか一つに記載の電気化学的エネルギー源。
【請求項20】
請求項1乃至4、および8乃至19のいずれか一つに記載の電気化学的エネルギー源を少なくとも一つ有するバッテリユニット。
【請求項21】
請求項1乃至19のいずれか一つに記載の電気化学的エネルギー源を少なくとも一つ有する電気装置。
【請求項22】
比較的大きな電流が流れるように適合された、無線通信移植バイオセンサ、または電力道具の電子モータのような、電気エネルギー消費部材を有することを特徴とする請求項21に記載の電気装置。
【請求項23】
請求項1乃至19のいずれか一つに記載の電気化学的エネルギー源を製造する方法であって、
基板上にカソード層を設置するステップと、
前記カソード層の上に、固体電解質層を設置するステップと、
前記電解質層の上に、リチウムを含むアノード層を設置するステップと、
を有する方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−509725(P2010−509725A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535863(P2009−535863)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【国際出願番号】PCT/IB2007/054554
【国際公開番号】WO2008/059413
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】