説明

屋内無線通信システム、フェムトセル基地局、無線電力制御方法、無線電力制御プログラムおよび記録媒体

【課題】個々のユーザ単位に最適な運用形態とするとともに、常時、一定時間経過ごとに周期的な無線電力の測定・設定処理をすることなく、無線品質確保のための処理負荷の低減が可能な屋内無線通信システムを提供する。
【解決手段】フェムトセル基地局10の指向性アンテナ11から放射される無線電波の方向に応じて複数のフェムトセルに分割された各個別セルごとに無線電力を制御する個別セル制御部は、指向性アンテナ11の無線電波が覆う領域を、屋内通信が許可された携帯端末が過去に存在していた屋内の個別セルの範囲内に制限する。また、個別セル制御部は、携帯端末監視部にて携帯端末が個別セルに移動してきたことを検知した際に、個別データ管理部にて個別セル単位に記録されている携帯端末ごとの過去の無線電力の中から、移動した個別セルにおける当該携帯端末に最適な無線電波の無線電力を抽出して、抽出した該無線電力を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内無線通信システム、フェムトセル基地局、無線電力制御方法、無線電力制御プログラムおよびプログラム記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のセルラ移動無線システムにおいては、ビル内や、住宅内や地下街等の電波が届き難い場所の無線通信品質を向上させるために、半径数百m〜数km程度の領域をカバーする通常の基地局(マクロセル基地局)のセルサイズよりも極端に狭い半径数m〜数十m程度の領域をカバーする超小型のフェムトセル(Femto-Cell)基地局を採用して、屋内無線通信システムを構築するようになってきている。フェムトセル基地局は、一般に、通常の基地局(マクロセル基地局)に比して、収容可能な携帯端末数が少なく、最大送信電力も小さいが、複雑に混み入った環境であっても容易に設置することができ、安定な電波環境を実現することができる。
【0003】
ここで、屋内無線通信システムを構成するフェムトセル基地局のアンテナは、通常、指向性がなく、フェムトセルの形状は、特許文献1の特開2009−159355号公報「無線通信システム、基地局および基地局の制御方法」にも記載されているように、円形状であり、該フェムトセル基地局のアンテナからは、図4に示すように、全方向に向かって同一の無線電力の無線電波が出力され、半径数m〜数十m程度の領域をフェムトセルとしてカバーしている。図4は、本発明に関連する屋内無線通信システムを構成する通常のフェムトセル基地局がカバーするフェムトセルの形状を示す模式図である。
【0004】
図4に示すフェムトセル基地局40は、例えば、断面矩形状の住宅20内に設置されており、該フェムトセル基地局40のアンテナ41は、当該住宅20内で携帯端末が移動する領域を完全にカバーすることができるように、当該住宅20のほぼ全域を覆うように、円形状のフェムトセル400を形成している。
【0005】
ここで、住宅20内には、廊下24の他、ROOM1 21,ROOM2 22,ROOM3 23の3つの部屋があり、携帯端末が屋内通信用として利用する領域のみをフェムトセルとしてカバーすれば十分であるが、無指向性のアンテナ41を用いているため、当該住宅20のほぼ全域を覆うような円形状のフェムトセル400を形成せざるを得なく、フェムトセル400は、例えば携帯端末を所持するユーザが出入りすることがない屋内のROOM3 23等のみならず、屋外25の領域までも含んでカバーすることになる。
【0006】
なお、図4の模式図には、住宅20内の廊下24を経由してROOM1 21に携帯端末A 31が現在存在し、廊下24、ROOM1 21を経由してROOM2 22に携帯端末B 32が現在存在していて、携帯端末A 31、携帯端末B 32のいずれも、住宅20内に構築されている屋内無線通信システムの利用を許可されている端末ではあるものの、住宅20内に存在していても、ROOM3 23に移動して存在することはない場合を示している、また、屋外25に現在存在している携帯端末C 33は住宅20内に構築されている屋内無線通信システムの利用を許可されていない場合を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−159355号公報(第5−9頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のように、図4に示すような通常のフェムトセル基地局40は、アンテナ41に指向性がなく、円形状のフェムトセル400を形成して、携帯端末を所持したユーザが移動することがない屋内のROOM3 23等もカバーすることになるのみならず、カバーすることが全く不要な屋外25の領域までも含んでカバーしてしまう。この結果として、フェムトセル基地局40の無線電力を無駄に消費している結果を招いている。
【0009】
前記特許文献1においては、消費電力を節約するための対策として、マクロセル内に階層的に設定された複数のフェムトセルが数珠繋ぎに隣接された構成からなり、各フェムトセル基地局からマクロセル基地局へ定期的に状態情報を通報することにより、或るフェムトセルに隣接のフェムトセル内に携帯端末が存在していない状態を検知した場合には、当該フェムトセルをカバーするフェムトセル基地局は当面使用される状態にはないものとして、当該フェムトセル基地局の無線電波の出力を停止させることにより、フェムトセル基地局の消費電力を低減させるという技術を提案している。
【0010】
しかし、図4に示すように、1つのフェムトセル400により住宅20内のほぼ全域を覆うことができるようなフェムトセル基地局40の場合には、前記特許文献1のような技術を適用することはできない。
【0011】
さらには、図4に示すように、フェムトセル400として屋外25の領域にまで達してしまっているため、かかるフェムトセル400が屋外25をカバーしている領域に偶々存在している任意の携帯端末(図4においては、携帯端末C 33)が、当該屋内無線通信システムの運用者の承認を得ることなく、無断で、フェムトセル基地局40にアクセスする可能性も生じている。
【0012】
また、基本的に、フェムトセル基地局を有する屋内無線通信システムは、不特定多数のユーザに通信サービスを提供する公衆網のインフラストラクチャという性質を有している場合が多く、任意のユーザの携帯端末に対して公平に通信サービスを提供するために、個別ユーザ単位に、無線通信に関わる詳細データを、当該フェムトセル基地局内に長期間に亘って保持することは難しいという傾向がある。
【0013】
したがって、通常のフェムトセル基地局においては、個別ユーザ単位に、セル範囲を限定したり、あるいは、通信中の無線電力を最適な無線電力に設定したりするような処理を適用して、特定のユーザごとに最適な運用形態としてフェムトセル基地局の効率化を図ることができない。つまり、現在までの通常のフェムトセル基地局は、より広域をカバーするマクロセル基地局の場合と同様に、セル範囲や無線電力損失の変動が大きいことを前提とした負荷の大きい無線電力制御処理を実施せざるを得なく、個々の屋内無線通信システムのユーザにとって、当該ユーザ向けに最適な運用形態を実現する屋内無線通信システムを提供することができないという側面も生じていた。
【0014】
(本発明の目的)
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、屋内無線通信システムの個々のユーザ単位に、最適な運用形態とするとともに、常時、あらかじめ定めた一定時間経過ごとに周期的な無線電力の測定・設定処理をすることなく、無線品質確保のための処理の低減を図ることを可能とする屋内無線通信システム、フェムトセル基地局、無線電力制御方法、無線電力制御プログラムおよびプログラム記録媒体を提供することを、その目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述の課題を解決するため、本発明による屋内無線通信システムは、次のような特徴的な構成を採用している。
【0016】
(1)屋内のフェムトセルに存在する携帯端末のうち屋内通信を許可された携帯端末との間で無線通信を行うフェムトセル基地局を備えた屋内無線通信システムであって、前記フェムトセル基地局は、放射する無線電波に指向性を有する指向性アンテナと、該指向性アンテナから放射される無線電波の方向に応じて前記フェムトセルが複数の領域に分割された各個別セルごとに無線電力を制御する電力制御手段と、を少なくとも備え、前記電力制御手段は、前記指向性アンテナから放射される無線電波が覆う領域を、前記フェムトセル基地局が設置された屋内であって、かつ、当該フェムトセル基地局との屋内通信が許可された携帯端末が過去に存在していた屋内の前記個別セルの範囲内に制限する屋内無線通信システム。
【発明の効果】
【0017】
本発明の屋内無線通信システム、フェムトセル基地局、無線電力制御方法、無線電力制御プログラムおよびプログラム記録媒体によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0018】
第1の効果は、フェムトセル基地局の無線電力の制御を、ユーザごとの利用履歴に基づいて個別に行っているので、つまり、従来の通常の屋内無線通信システムとは異なり、フェムトセル基地局の無線電力制御を、常時、周期的に実行することはなく、携帯端末を所持するユーザが、屋内の個別セルへ屋外から移動する時や屋内の個別セル間を移動する時にのみ、当該ユーザの過去の利用履歴に基づいて、最適な無線電力の設定を行うこととしているので、無線電力制御のための処理負荷を軽減するとともに、省電力化を効率的に図ることができる。
【0019】
第2の効果は、フェムトセル基地局のアンテナとして指向性を有するアンテナを採用することにより、如何なる形状の住宅であっても、フェムトセル基地局がカバーするフェムトセルの領域を住宅内に制限することが可能となり、屋外に存在している任意の携帯端末からの屋内無線通信システムへの不正アクセスを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る屋内無線通信システムを構成するフェムトセル基地局の指向性アンテナがフェムトセルとしてカバーする個別セルの形状の一例を示す模式図である。
【図2】図1に示す屋内無線通信システムに適用されるフェムトセル基地局の内部構成の一例を示すブロック構成図である。
【図3】図2に示すフェムトセル基地局の動作の一例を説明するための動作説明図である。
【図4】屋内無線通信システムを構成する通常のフェムトセル基地局がカバーするフェムトセルの形状を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明による屋内無線通信システム、フェムトセル基地局、無線電力制御方法、無線電力制御プログラムおよびプログラム記録媒体の好適な実施形態について添付図を参照して説明する。なお、以下の説明においては、本発明による屋内無線通信システム、フェムトセル基地局および無線電力制御方法について説明するが、かかる無線電力制御方法をコンピュータにより実行可能な無線電力制御プログラムとして実施するようにしても良いし、あるいは、無線電力制御プログラムをコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録するようにしても良いことは言うまでもない。
【0022】
(本発明の特徴)
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の特徴についてその概要をまず説明する。本発明は、屋内無線通信システムに適用するフェムトセル基地局の無線電力を制御する技術に関するものであり、フェムトセル基地局のアンテナとして、指向性を有するアンテナを採用し、該アンテナを介して、ユーザごとに使用したセル範囲と無線電力とを取得して、取得したユーザごとのセル範囲と無線電力との利用履歴を記録することにより、セルへの移動が検知される都度つまりセル間の移動が検知される都度、該記録内容(利用履歴)を基にして、前記アンテナの方向に放射する無線電波の無線電力を設定し、無線電力の制御を効率的に実施することを特徴としている。
【0023】
つまり、各ユーザが所持する携帯端末に関して、屋外から屋内に移動してきた際に、または、屋内のセル間の移動が検知された際に、各ユーザが所持する携帯端末ごとに個別に記録されているアンテナの各方向に対応した送受信無線電力の履歴を参照することによって、各ユーザの携帯端末ごとに、該携帯端末が存在する場所に応じて、フェムトセル基地局が送受信する無線電力を該携帯端末との送受信に最適な無線電力に設定するという制御を行うことを特徴としている。
【0024】
かくのごとく、本発明においては、フェムトセル基地局の無線電力の制御を、常時、定期的に実施することなく、屋外から屋内に移動してきたことが検知された際に、または、屋内のセル間移動が検知された際に、はじめて、ユーザごとの利用履歴に基づいて個別に実施することにより、無線電力制御のための処理負荷を軽減するとともに、省電力化を効率的に図ることができる。
【0025】
また、フェムトセル基地局のアンテナとして指向性を有するアンテナを採用することにより、如何なる形状の住宅であっても、フェムトセル基地局がカバーするフェムトセルの領域を住宅内に制限することが可能となり、屋外に存在している任意の携帯端末からの屋内無線通信システムへの不正アクセスを防止することができる。
【0026】
より具体的には、本発明に係るフェムトセル基地局は、以下の4つの手段を少なくとも具備している。
(1)アンテナとして指向性を有する指向性アンテナを用いること
(2)指向性アンテナにより分割した個別セル単位に、各個別セルへの携帯端末の移動を検知する携帯端末監視手段を備えること
(3)指向性アンテナにより分割した個別セル単位で無線電力を制御する電力制御手段を備えること
(4)個別ユーザごとに、利用したそれぞれのセル範囲における無線電力の利用履歴データを記録・集計する個別データ記録手段を備えること
【0027】
フェムトセル基地局は、前述の4つの手段を用いて、住宅内における屋内無線通信システムに対する利用が許可された各ユーザの携帯端末に関して、携帯端末監視手段にて、携帯端末の屋外から屋内の個別セルへの移動を含め携帯端末の個別セル間の移動を検知する都度、個別ユーザ単位に、携帯端末が存在している個別セル範囲に応じた無線電力の制御を行う。ここで、屋内に設置されるフェムトセル基地局は、一般に、マクロセル基地局の場合とは異なり、携帯端末の移動距離や無線損失や損失の変動幅は小さいため、時々刻々変化する通信環境に対応して、無線品質を維持するための無線電力に関して、周期的または即時的な処理によって最適化を図る必要性は小さい。
【0028】
したがって、前記電力制御手段において、前記記録・集計手段によってユーザごとに個別に記録・集計した利用履歴データを検索して、個別セルごとの過去の送受信無線電力の中から、個別セルごとの送受信無線電力の最大値を抽出して、抽出した該送受信無線電力の最大値を固定値として、各ユーザ単位に各個別セルにおいて送受信する最適な無線電力として設定する制御を行うことによって、無線電力制御の負荷を軽減するとともに、省電力化を効率的に実現することを可能としている。
【0029】
(本発明の実施形態)
次に、本発明に係る屋内無線通信システムに適用するフェムトセル基地局の実施形態について、その一例を、図1を用いて説明する。図1は、本発明に係る屋内無線通信システムを構成するフェムトセル基地局の指向性アンテナがフェムトセルとしてカバーする個別セルの形状の一例を示す模式図であり、図1(A)は、背景技術として図4に示した携帯端末A 31が屋内を移動している様子を合わせて示し、図1(B)は、背景技術として図4に示した携帯端末B 32が移動している様子を合わせて示している。
【0030】
図1に示すフェムトセル基地局10は、図4に示した場合と同様の形状からなる断面矩形状の住宅20内に設置されているが、該フェムトセル基地局10のアンテナ11は、図4の場合のフェムトセル基地局40のアンテナ41とは異なり、無線電波の放射方向に指向性を有する指向性アンテナであり、当該住宅20内で携帯端末が移動する領域をカバーすることができるように、携帯端末A 31や携帯端末B 32の存在位置に応じて指向性アンテナ11から放射する無線電波の無線電力を適宜制御することにより、当該住宅20内における携帯端末の移動範囲を覆うように、フェムトセルとして、複数の個別セル101,102,103,104を形成している。
【0031】
ここで、住宅20内には、図4に示した場合と同様、廊下24の他、ROOM1 21,ROOM2 22,ROOM3 23の3つの部屋がある。図1(A)においては、住宅20内に移動した携帯端末A 31は、廊下24を移動中の状態の携帯端末A 31−1から、広い部屋であるROOM1 21の左下の領域に移動した状態の携帯端末A 31−2を経由して、ROOM1 21の右中央の領域に移動した状態の携帯端末A 31−3まで変化するが、残りのROOM2 22,ROOM3 23には移動しない場合を示している。
【0032】
かくのごとき携帯端末A 31の住宅20内における移動状況に応じて、フェムトセル基地局10は、廊下24を移動中の携帯端末A 31−1の状態にある場合は、指向性アンテナ11から個別セル101に示す方向に対して携帯端末A 31−1と最適な状態で通信を行う無線電力の無線電波が出力されて、当該携帯端末A 31−1と無線通信を行う。また、ROOM1 21の左下の領域に移動した携帯端末A 31−2の状態にある場合は、指向性アンテナ11から個別セル102に示す方向に対して携帯端末A 31−2と最適な状態で通信を行う無線電力の無線電波が出力されて、当該携帯端末A 31−2と無線通信を行う。また、ROOM1 21の右中央の領域に移動した携帯端末A 31−3の状態にある場合は、指向性アンテナ11から個別セル103に示す方向に対して携帯端末A 31−3と最適な状態で通信を行う無線電力の無線電波が出力されて、当該携帯端末A 31−3と無線通信を行うように制御する。
【0033】
一方、図1(B)においては、住宅20内に移動した携帯端末B 32は、廊下24を移動中の状態の携帯端末B 32−1から、広い部屋であるROOM1 21の左下の領域に移動した状態の携帯端末B 32−2を経由して、ROOM1 21の右中央の領域に移動した状態の携帯端末B 32−3に変化した後、さらに、ROOM2 22に移動した状態の携帯端末B 32−4まで変化するが、残りのROOM3 23には移動しない場合を示している。
【0034】
かくのごとき携帯端末B 32の住宅20内における移動状況に応じて、フェムトセル基地局10は、廊下24を移動中の携帯端末B 32−1の状態にある場合は、指向性アンテナ11から個別セル101に示す方向に対して携帯端末B 32−1と最適な状態で通信を行う無線電力の無線電波が出力されて、当該携帯端末B 32−1と無線通信を行う。また、ROOM1 21の左下の領域に移動した携帯端末B 32−2の状態にある場合は、指向性アンテナ11から個別セル102に示す方向に対して携帯端末B 32−2と最適な状態で通信を行う無線電力の無線電波が出力されて、当該携帯端末B 32−2と無線通信を行うように制御する。
【0035】
また、ROOM1 21の右中央の領域に移動した携帯端末B 32−3の状態にある場合は、指向性アンテナ11から個別セル103に示す方向に対して携帯端末B 32−3と最適な状態で通信を行う無線電力の無線電波が出力されて、当該携帯端末B 32−3と無線通信を行うように制御する。さらに、ROOM2 22の領域に移動した携帯端末B 32−4の状態にある場合は、指向性アンテナ11から個別セル104に示す方向に対して携帯端末B 32−4と最適な状態で通信を行う無線電力の無線電波が出力されて、当該携帯端末B 32−4と無線通信を行うように制御する。
【0036】
なお、指向性アンテナ11から出力される無線電波の無線電力量は、当該指向性アンテナ11の方向に応じて、当該指向性アンテナ11の設置環境から見て、住宅20内の屋内通信用として利用する領域を完全に覆い、かつ、住宅20の屋外のような屋内通信用としての利用がない領域には無駄な電波が届かないように、各個別セル101,102,103,104,…により分割して調整されている。
【0037】
また、図1においては、住宅20内の屋内通信の利用が許可されている携帯端末A 31、携帯端末B 32の双方について、廊下24、ROOM1 21の左下の領域、ROOM1 21の右中央の領域のそれぞれに位置している場合には、個別セル101,102,103として、同一の無線電力量によりカバーされている場合を示しているが、携帯端末A 31、携帯端末B 32それぞれに応じて各携帯端末(ユーザ)ごとに異なる無線電力量であっても構わなく、それぞれの通信環境において、携帯端末A 31、携帯端末B 32それぞれに、最適な無線電力量の制御を行うようにすれば良い。
【0038】
(フェムトセル基地局の構成例)
次に、図1に示す屋内無線通信システムに適用されるフェムトセル基地局10の構成例について、図2を用いて説明する。図2は、図1に示す屋内無線通信システムに適用されるフェムトセル基地局10の内部構成の一例を示すブロック構成図である。図2に示すように、フェムトセル基地局10は、指向性アンテナ11、携帯端末監視部12、個別セル制御部13、個別データ管理部14を少なくとも備えて構成されている。
【0039】
図2において、指向性アンテナ11は、前述したように、無線電波の指向性を有しているアンテナであり、アンテナからの方向ごとに放射される無線電波の無線電力を変化させて、無線電波の放射形状を変化させることができる。携帯端末監視部12は、住宅20の屋内にて屋内無線通信を行う携帯端末A 31、携帯端末B 32等の携帯端末との間の無線通信品質状態を基にして、各携帯端末の存在位置を監視する部位として、携帯端末ごとに取得した各携帯端末の位置情報を個別セル制御部13および個別データ管理部14に対して送信するものであり、指向性アンテナ11により分割した個別セル単位に、各個別セルへの携帯端末の移動を検知する携帯端末監視手段を提供している。
【0040】
また、個別セル制御部13は、携帯端末監視部12が取得した位置情報を基にして、個別セル101,102,103,104,…等の個別セルがカバーしている範囲内に、当該携帯端末が存在するように、指向性アンテナ11の無線電波の無線電力を制御するものであり、指向性アンテナ11により分割した各個別セル単位で各携帯端末ごとに最適な無線電力を算出して各個別セルを制御する電力制御手段を提供している。また、個別データ管理部14は、携帯端末監視部12が取得した各携帯端末ごとの位置情報と個別セル制御部13が算出した各個別セル単位の無線電力とを関連付けて、記録・集計するものであり、個別ユーザごとに、利用したそれぞれのセル範囲における無線電力の利用履歴データを記録・集計する個別データ記録手段を提供している。
【0041】
個別データ管理部14に記録されている履歴データを参照することによって、図1(A)に示した携帯端末A 31の場合、携帯端末A 31は、携帯端末A 31−1→携帯端末A 31−2→携帯端末A 31−3と変化して、廊下24→ROOM1 21の左下の領域→ROOM1 21の右中央の領域に移動しているものの、ROOM2 22、ROOM3 23には移動していないことが分かるとともに、廊下24、ROOM1 21の左下の領域、ROOM1 21の右中央の領域の各個別セル101,102,103において指向性アンテナ11から放射している無線電力を判別することができる。
【0042】
また、図1(B)に示した携帯端末B 32の場合についても、携帯端末B 32−1→携帯端末B 32−2→携帯端末B 32−3→携帯端末B 32−4と変化して、廊下24→ROOM1 21の左下の領域→ROOM1 21の右中央の領域→ROOM2 22に移動しているものの、ROOM3 23には移動していないことが分かるとともに、廊下24、ROOM1 21の左下の領域、ROOM1 21の右中央の領域、ROOM2 22の各個別セル101,102,103,104において指向性アンテナ11から放射している無線電力を判別することができる。
【0043】
(実施形態の動作の説明)
次に、図2に示したフェムトセル基地局10の動作の一例を、図3の動作説明図を用いて説明する。図3は、図2に示すフェムトセル基地局の動作の一例を説明するための動作説明図である。図3(A)は、屋内通信を許可されている携帯端末が、初めて、住宅20内のそれぞれの個別セルがカバーする各領域(廊下24、ROOM1 21、ROOM2 22、ROOM3 23等)に立ち入った場合の動作を示すものであり、各携帯端末の通信履歴(位置情報と無線電力量に関する個別データ)を利用履歴データとして記録している個別データ管理部14の利用履歴データを利用しない場合の動作を示している。また、図3(B)は、屋内通信を許可されている携帯端末が、過去に立ち入ったことがある住宅20内の各領域に立ち入った場合の動作を示すものであり、各携帯端末の通信履歴を利用履歴データとして記録している個別データ管理部14の利用履歴データを利用する場合の動作を示している。
【0044】
まず、図3(A)の場合のように、各携帯端末の通信履歴(個別データ)を利用履歴データとして記録している個別データ管理部14の利用履歴データを利用しない場合の動作について説明する。かかる動作は、従来の通常の屋内無線通信システムの場合と同様の動作を行うものであり、太矢印線の処理Aに示すように、あらかじめ定めた周期で、定期的に、各携帯端末の送受信データの通信品質を携帯端末監視部12にて監視して、監視結果に基づいて、個別セル制御部13にて各携帯端末の無線通信品質を確保するための無線電力を算出して、周期的に、指向性アンテナ11を制御する無線電力制御動作を繰り返すことになる。各携帯端末が存在していた位置における無線電波の無線電力は、初めての利用履歴データとして、個別データ管理部14に逐次記録されていくことになる。
【0045】
一方、図3(B)の場合のように、各携帯端末の通信履歴(個別データ)を利用履歴データとして記録している個別データ管理部14の利用履歴データを利用する場合には、太矢印線の処理Bに示すように、個別データ管理部14に記録されている個別データを利用して半固定的な無線電力制御を行うことによって、各携帯端末の存在位置に応じた最適な無線電力の制御を効率的に処理することを可能とし、図3(A)の場合のように周期的に繰り返す動作を行うことなく、無線電力制御動作にかかる負荷を低減することができる。
【0046】
つまり、個別データ管理部14によって記録される個別データとしては、個別セル単位に、各携帯端末(各ユーザ)ごとに、過去の屋内無線通信において最適な送受信無線電力量として測定された無線電力の設定値が記録されている。したがって、図3(B)の処理Bすなわち各携帯端末ごとの無線電力制御動作は、該当する携帯端末について、個別セル101,102,103,104,…等の個別セル間に跨る移動があった際に、個別データ管理部14にて個別データとして記録されている移動後の個別セルにおける過去の無線電力のうち最大の無線電力を選択して設定する動作として、実施すれば良い。
【0047】
なお、携帯端末監視部12にて各携帯端末の送受信データの通信品質が、最適な通信状態にないことを検知した場合に限って、個別セル制御部13にて最適な通信状態になるように、各携帯端末が存在する方向に対する各個別セルの無線電波の無線電力を調整し直して、指向性アンテナ11から無線電波を放射するとともに、各携帯端末の存在位置における調整後の無線電波の無線電力を、利用履歴データとして、個別データ管理部14に記録することになる。
【0048】
以上のような制御を行うことにより、通常の動作としては、個別セル101,102,103,104,…等の個別セル間に跨る移動(屋外25から住宅20の屋内の個別セル内に移動した場合も含めて)が携帯端末監視部12にて検出された場合にのみ、移動後の個別セルにおける携帯端末に関する過去の個別データを参照して、移動後の個別セルにおける当該携帯端末の屋内無線通信に最適な無線電力として再設定すれば良く、定期的に、常時、繰り返して、最適な無線電力量を算出して設定するような無線電力制御動作を実施する必要はない。
【0049】
例えば、図1(B)に示したように、携帯端末B 32が、携帯端末B 32−1→携帯端末B 32−2→携帯端末B 32−3→携帯端末B 32−4と変化して、廊下24→ROOM1 21の左下の領域→ROOM1 21の右中央の領域→ROOM2 22に移動した場合には、まず、携帯端末B 32が、携帯端末B 32−1と廊下24を移動した状態に変化したことを携帯端末監視部12にて認識した場合、携帯端末B 32−1の位置の携帯端末B 32をカバーする個別セル101に必要な無線電力を個別データ管理部14から読み出す。
【0050】
次に、個別データ管理部14にて、携帯端末B 32に関して個別セル101において必要な無線電力として記録されている過去の履歴データ(個別データ)のうち、個別セル101における最大無線電力を抽出して、当該個別セル101における携帯端末B 32の屋内無線通信用の最適な無線電力として、個別セル制御部13により、指向性アンテナ11を制御する。該無線電力は、過去の履歴データに基づいて得られるものであり、半固定的な値になっている。
【0051】
以降、携帯端末B 32が、廊下24に存在していて、個別セル101のカバー範囲に存在している限りは、個別セル101に向かう指向性アンテナ11の方向には、先に設定した無線電力の無線電波を放射する状態が、そのまま、継続することになる。
【0052】
しかる後、携帯端末B 32が、携帯端末B 32−1→携帯端末B 32−2の状態に移行して、個別セル101から個別セル102にセル間移動があったことが、携帯端末監視部12にて検知された場合、再度、個別データ管理部14にて、携帯端末B 32に関して個別セル102において必要な無線電力として記録されている過去の履歴データ(個別データ)のうち、個別セル102における最大無線電力を抽出して、当該個別セル102における携帯端末B 32の屋内無線通信用の最適な無線電力として、個別セル制御部13により、指向性アンテナ11を制御する。以降、同様の制御を繰り返し、携帯端末B 32が、携帯端末B 32−2→携帯端末B 32−3の状態に移行した場合、携帯端末B 32−3→携帯端末B 32−4の状態に移行した場合、つまり、個別セル間の移動が発生した場合にのみ、無線電力の再設定を行い、セル間の移動が発生していない場合には、無線電力の制御は一切行わない。
【0053】
なお、送信先の携帯端末を特定しないブロードキャストデータ、もしくは、携帯端末の位置登録のための報知情報等については、個別データ管理部14にて過去の個別履歴データとして記録されている各携帯端末の個別セル単位のセル範囲をすべて包含した領域に対して送信するようにして、過去に存在したことがない領域に対して無駄な電波を出力することを制限するようにしても良い。
【0054】
(実施形態の効果の説明)
以上に詳細に説明したように、本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
【0055】
本実施形態においては、従来の通常の屋内無線通信システムとは異なり、無線電力制御を、常時、周期的に実行することはなく、携帯端末が、住宅20の屋内の個別セルへ屋外から移動する時や屋内の個別セル間を移動する時にのみ、過去の利用履歴データに基づいて最適な無線電力の設定を行うこととしているので、無線電力制御用の処理負荷を低減することができるとともに、省電力化を効率的に図ることができる。なぜならば、マクロセル基地局のように、広範囲をカバーする基地局と異なり、フェムトセル基地局は、フェムトセルとしてのカバー範囲が非常に小さく、通信環境として無線品質の劣化を引き起こす要因が少ないことから、常に、周期的に監視して、無線電力の測定を行い、該測定結果に基づいて無線電力を再設定し直すことにより、無線品質を確保するという必要性が少ないからである。
【0056】
而して、無線電力制御動作として、周期的に実施する定常処理とする必要はないので、処理負荷の低減を図ることが可能となり、フェムトセル基地局の処理能力を向上させることができる。
【0057】
さらには、屋内無線通信用として許可されている携帯端末の過去の個別データを管理することにより、報知情報等のブロードキャストデータをも含め送信する範囲を住宅20の屋内のみに制限することができるので、許可されていない不明な携帯端末からの外部アクセスを回避することも可能である。
【0058】
(本発明の他の実施形態)
前述した実施形態においては、屋内無線通信システムとしてフェムトセル基地局を使用することを前提としているが、本発明は、かかる場合に限るものではなく、フェムトセル基地局にて許容することが可能なユーザ数と同等のユーザ数となるようにユーザ数の制限を設定すれば、フェムトセルよりも広域のマイクロセルをカバーするマイクロセル基地局等に対しても、同様の無線電力の制御動作を適用することが可能である。
【0059】
以上、本発明の好適実施例の構成を説明した。しかし、斯かる実施例は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることが、当業者には容易に理解できよう。例えば、本発明の実施態様は、課題を解決するための手段における構成(1)に加えて、次のような構成として表現できる。
(2)前記フェムトセル基地局は、屋内の前記個別セルに存在する前記携帯端末を検知する携帯端末監視手段と、前記個別セルごとに前記携帯端末ごとの過去の無線電力を利用履歴データとして記録する個別データ記録手段とをさらに備え、前記携帯端末監視手段により前記携帯端末が前記個別セルに移動してきたことを検知した際に、前記電力制御手段は、前記個別データ記録手段により記録されている前記利用履歴データを参照して、当該携帯端末が移動してきた前記個別セルに当該携帯端末が過去存在していたか否かを確認し、当該個別セルに過去に存在した記録があった場合、前記利用履歴データの中から当該個別セルにおいて当該携帯端末に最適な無線電波の無線電力を抽出して、抽出した最適な無線電波の無線電力に設定し、一方、前記利用履歴データとして前記携帯端末が移動してきた前記個別セルに当該携帯端末が過去存在した記録がなかった場合、あるいは、前記携帯端末監視手段により、前記個別セルにおける前記携帯端末との通信品質が最適な状態ではないことを検知した場合、前記電力制御手段は、当該個別セルにおける当該携帯端末に最適な無線電波の無線電力に調整して設定するとともに、設定した最適な無線電波の無線電力を、前記個別データ記録手段により前記利用履歴データとして逐次記録する上記(1)の屋内無線通信システム。
(3)前記電力制御手段は、前記利用履歴データから抽出する前記携帯端末に最適な無線電波の無線電力として、前記利用履歴データとして前記個別データ記録手段により記録されている前記個別セルにおける当該携帯端末に関する無線電波の無線電力のうち、最大の無線電波の無線電力を抽出する上記(2)の屋内無線通信システム。
(4)送信先の前記携帯端末を特定することなく、各前記個別セル内に存在するすべての前記携帯端末に対して、ブロードキャストデータや位置登録用の報知情報を送信する場合、前記個別データ記録手段により記録されている各前記携帯端末の前記個別セルのすべてを包含した領域に対して、各前記個別セルごとに過去に記録されている最大の無線電波の無線電力を用いて送信する上記(2)または(3)の屋内無線通信システム。
(5)屋内のフェムトセルに存在する携帯端末のうち屋内通信を許可された携帯端末との間で無線通信を行うフェムトセル基地局であって、放射する無線電波に指向性を有する指向性アンテナと、該指向性アンテナから放射される無線電波の方向に応じて前記フェムトセルが複数の領域に分割された各個別セルごとに無線電力を制御する電力制御手段と、を少なくとも備え、前記電力制御手段は、前記指向性アンテナから放射される無線電波が覆う領域を、前記フェムトセル基地局が設置された屋内であって、かつ、当該フェムトセル基地局との屋内通信が許可された携帯端末が過去に存在していた屋内の前記個別セルの範囲内に制限するフェムトセル基地局。
(6)屋内のフェムトセルに存在する携帯端末のうち屋内通信を許可された携帯端末との間で無線電波に指向性を有する指向性アンテナを用いて無線通信を行うフェムトセル基地局における無線電力制御方法であって、前記フェムトセル基地局は、前記指向性アンテナから放射される無線電波の方向に応じて前記フェムトセルが複数の領域に分割された各個別セルごとに無線電力を制御する際に、前記指向性アンテナから放射される無線電波が覆う領域を、前記フェムトセル基地局が設置された屋内であって、かつ、当該フェムトセル基地局との屋内通信が許可された携帯端末が過去に存在していた屋内の前記個別セルの範囲内に制限する無線電力制御方法。
(7)前記フェムトセル基地局は、前記個別セルごとに前記携帯端末ごとの過去の無線電力を利用履歴データとして記録し、前記携帯端末が前記個別セルに移動してきたことを検知した際に、記録されている前記利用履歴データを参照して、当該携帯端末が移動してきた前記個別セルに当該携帯端末が過去存在していたか否かを確認し、当該個別セルに過去に存在した記録があった場合、前記利用履歴データの中から当該個別セルにおいて当該携帯端末に最適な無線電波の無線電力を抽出して、抽出した最適な無線電波の無線電力に設定し、一方、前記利用履歴データとして前記携帯端末が移動してきた前記個別セルに当該携帯端末が過去存在した記録がなかった場合、あるいは、前記個別セルにおける前記携帯端末との通信品質が最適な状態ではないことが検知された場合、当該個別セルにおける当該携帯端末に最適な無線電波の無線電力に調整して設定するとともに、設定した最適な無線電波の無線電力を、前記利用履歴データとして逐次記録する上記(6)の無線電力制御方法。
(8)前記利用履歴データから抽出する前記携帯端末に最適な無線電波の無線電力として、前記利用履歴データとして記録されている前記個別セルにおける当該携帯端末に関する無線電波の無線電力のうち、最大の無線電波の無線電力を抽出する上記(7)の無線電力制御方法。
(9)上記(6)ないし(8)のいずれかの無線電力制御方法を、コンピュータによって実行可能なプログラムとして実施している無線電力制御プログラム。
(10)上記(9)の無線電力制御プログラムを、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体に記録しているプログラム記録媒体。
【符号の説明】
【0060】
10 フェムトセル基地局
11 アンテナ(指向性アンテナ)
12 携帯端末監視部
13 個別セル制御部
14 個別データ管理部
20 住宅
21 ROOM1
22 ROOM2
23 ROOM3
24 廊下
25 屋外
31 携帯端末A
31−1 携帯端末A
31−2 携帯端末A
31−3 携帯端末A
32 携帯端末B
32−1 携帯端末B
32−2 携帯端末B
32−3 携帯端末B
32−4 携帯端末B
33 携帯端末C
40 フェムトセル基地局
41 アンテナ
101 個別セル
102 個別セル
103 個別セル
104 個別セル
400 フェムトセル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内のフェムトセルに存在する携帯端末のうち屋内通信を許可された携帯端末との間で無線通信を行うフェムトセル基地局を備えた屋内無線通信システムであって、前記フェムトセル基地局は、放射する無線電波に指向性を有する指向性アンテナと、該指向性アンテナから放射される無線電波の方向に応じて前記フェムトセルが複数の領域に分割された各個別セルごとに無線電力を制御する電力制御手段と、を少なくとも備え、前記電力制御手段は、前記指向性アンテナから放射される無線電波が覆う領域を、前記フェムトセル基地局が設置された屋内であって、かつ、当該フェムトセル基地局との屋内通信が許可された携帯端末が過去に存在していた屋内の前記個別セルの範囲内に制限することを特徴とする屋内無線通信システム。
【請求項2】
前記フェムトセル基地局は、屋内の前記個別セルに存在する前記携帯端末を検知する携帯端末監視手段と、前記個別セルごとに前記携帯端末ごとの過去の無線電力を利用履歴データとして記録する個別データ記録手段とをさらに備え、前記携帯端末監視手段により前記携帯端末が前記個別セルに移動してきたことを検知した際に、前記電力制御手段は、前記個別データ記録手段により記録されている前記利用履歴データを参照して、当該携帯端末が移動してきた前記個別セルに当該携帯端末が過去存在していたか否かを確認し、当該個別セルに過去に存在した記録があった場合、前記利用履歴データの中から当該個別セルにおいて当該携帯端末に最適な無線電波の無線電力を抽出して、抽出した最適な無線電波の無線電力に設定し、一方、前記利用履歴データとして前記携帯端末が移動してきた前記個別セルに当該携帯端末が過去存在した記録がなかった場合、あるいは、前記携帯端末監視手段により、前記個別セルにおける前記携帯端末との通信品質が最適な状態ではないことを検知した場合、前記電力制御手段は、当該個別セルにおける当該携帯端末に最適な無線電波の無線電力に調整して設定するとともに、設定した最適な無線電波の無線電力を、前記個別データ記録手段により前記利用履歴データとして逐次記録することを特徴とする請求項1に記載の屋内無線通信システム。
【請求項3】
前記電力制御手段は、前記利用履歴データから抽出する前記携帯端末に最適な無線電波の無線電力として、前記利用履歴データとして前記個別データ記録手段により記録されている前記個別セルにおける当該携帯端末に関する無線電波の無線電力のうち、最大の無線電波の無線電力を抽出することを特徴とする請求項2に記載の屋内無線通信システム。
【請求項4】
送信先の前記携帯端末を特定することなく、各前記個別セル内に存在するすべての前記携帯端末に対して、ブロードキャストデータや位置登録用の報知情報を送信する場合、前記個別データ記録手段により記録されている各前記携帯端末の前記個別セルのすべてを包含した領域に対して、各前記個別セルごとに過去に記録されている最大の無線電波の無線電力を用いて送信することを特徴とする請求項2または3に記載の屋内無線通信システム。
【請求項5】
屋内のフェムトセルに存在する携帯端末のうち屋内通信を許可された携帯端末との間で無線通信を行うフェムトセル基地局であって、放射する無線電波に指向性を有する指向性アンテナと、該指向性アンテナから放射される無線電波の方向に応じて前記フェムトセルが複数の領域に分割された各個別セルごとに無線電力を制御する電力制御手段と、を少なくとも備え、前記電力制御手段は、前記指向性アンテナから放射される無線電波が覆う領域を、前記フェムトセル基地局が設置された屋内であって、かつ、当該フェムトセル基地局との屋内通信が許可された携帯端末が過去に存在していた屋内の前記個別セルの範囲内に制限することを特徴とするフェムトセル基地局。
【請求項6】
屋内のフェムトセルに存在する携帯端末のうち屋内通信を許可された携帯端末との間で無線電波に指向性を有する指向性アンテナを用いて無線通信を行うフェムトセル基地局における無線電力制御方法であって、前記フェムトセル基地局は、前記指向性アンテナから放射される無線電波の方向に応じて前記フェムトセルが複数の領域に分割された各個別セルごとに無線電力を制御する際に、前記指向性アンテナから放射される無線電波が覆う領域を、前記フェムトセル基地局が設置された屋内であって、かつ、当該フェムトセル基地局との屋内通信が許可された携帯端末が過去に存在していた屋内の前記個別セルの範囲内に制限することを特徴とする無線電力制御方法。
【請求項7】
前記フェムトセル基地局は、前記個別セルごとに前記携帯端末ごとの過去の無線電力を利用履歴データとして記録し、前記携帯端末が前記個別セルに移動してきたことを検知した際に、記録されている前記利用履歴データを参照して、当該携帯端末が移動してきた前記個別セルに当該携帯端末が過去存在していたか否かを確認し、当該個別セルに過去に存在した記録があった場合、前記利用履歴データの中から当該個別セルにおいて当該携帯端末に最適な無線電波の無線電力を抽出して、抽出した最適な無線電波の無線電力に設定し、一方、前記利用履歴データとして前記携帯端末が移動してきた前記個別セルに当該携帯端末が過去存在した記録がなかった場合、あるいは、前記個別セルにおける前記携帯端末との通信品質が最適な状態ではないことが検知された場合、当該個別セルにおける当該携帯端末に最適な無線電波の無線電力に調整して設定するとともに、設定した最適な無線電波の無線電力を、前記利用履歴データとして逐次記録することを特徴とする請求項6に記載の無線電力制御方法。
【請求項8】
前記利用履歴データから抽出する前記携帯端末に最適な無線電波の無線電力として、前記利用履歴データとして記録されている前記個別セルにおける当該携帯端末に関する無線電波の無線電力のうち、最大の無線電波の無線電力を抽出することを特徴とする請求項7に記載の無線電力制御方法。
【請求項9】
請求項6ないし8のいずれかに記載の無線電力制御方法を、コンピュータによって実行可能なプログラムとして実施していることを特徴とする無線電力制御プログラム。
【請求項10】
請求項9に記載の無線電力制御プログラムを、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体に記録していることを特徴とするプログラム記録媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−176670(P2011−176670A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39900(P2010−39900)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】