説明

層廃フィルムのリサイクル方法

【課題】本発明は、ポリエステル(PET)、ポリプロピレン(PP)およびポリエチレン(PE)を主成分とするプラスチック層とアルミニウム層を含む多層フィルムの再生方法を提供する。さらに、アルミニウムの選択的な溶解段階、比重差分離段階、溶融点差による選択的な押し出し段階、および有機溶媒による選択的な溶解段階を用いて、現在リサイクルされないで廃棄される包装用多層プラスチックフィルム中の有価成分を分離してリサイクルするための方法を提供する。
【解決手段】多層フィルム廃棄物のアルミニウムを選択的に溶解させて層分離を誘導し、比重差を用いてPPとPEとの混合物層とPET層に分離する。また、比重差により分離されたPETの純度を高めるために、有機溶媒を用いて、PET層に含まれたPPとPEを抽出することにより、多層フィルムの主構成成分をPET、PPとPEとの混合物、およびアルミニウム成分にそれぞれ分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル(Polyethylene terephthalate、PET)、ポリプロピレン(Polypropylene、PP)、ポリエチレン(Polyethylene、PE)などのプラスチックフィルム層とアルミニウム層を含む包装用多層廃フィルムを、PET、PPとPEとの混合物、およびアルミニウムの3成分に分離してリサイクル可能にする経済的な多層フィルム廃棄物の再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、食品類などの包装には、防湿、美麗な外装などの様々な目的のために、PET、PPおよびPEなどのプラスチックフィルム層とアルミニウム層からなる包装用多層フィルムが主に使われており、この種の包装用多層フィルムの使用は増加しつつある。プラスチックフィルム層には印刷が施されており、フィルム層間には接着剤が使用されることがある。このような多層フィルムが商品の包装用として用いられる場合、多段階の積層工程とグラビア印刷などの印刷工程が行われる。それぞれの積層工程または印刷工程中に不良品が発生する可能性があるが、このような不良品は大部分廃棄されている。廃棄された包装用多層フィルムは、特別な処理なしに一部リサイクルされるが、PET、PPおよびPE成分が様々な割合で混合されており、またアルミニウム層のため加工が難しく且つ物性が劣悪して低級プラスチック製品の生産にのみ極限的に使用されている。また、殆どの家庭から発生する包装用多層フィルム廃棄物は、リサイクルできず、焼却や埋め立てなどの方法で廃棄されている実情である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
アルミニウムは、アルカリまたは酸水溶液と反応して水溶液状に溶解される。一般に、アルミニウムは、酸よりアルカリとの反応速度がさらに速く、この反応速度は、アルカリまたは酸水溶液の濃度、温度、および攪拌による拡散速度などによって決定される。水酸化ナトリウム(NaOH)を例としたアルカリ水溶液とアルミニウムとの反応式は、次のとおりである。
【0004】
Al+NaOH+HO→AlNaO+3/2H
ここで、アルミニウムは、アルミン酸ナトリウム状態で水溶液に溶解される。この反応の結果として、水素ガスが発生する。
【0005】
多層包装材の主成分であるポリエステル(PET)、ポリプロピレン(PP)およびポリエチレン(PE)の3つのプラスチックの場合、ポリプロピレン、ポリエチレンは、分子構造が類似であって相互間に相溶性があるため、ある程度混ぜられるうえ、混合物の物性もよい方である。PPとPEは、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリブチレン、ポリイソブチレンなどと共にポリオレフィン(Polyolefin)と呼ばわれており、化学的、電気的に性質が類似であって同じ用途に多用されている。現在、国内で流通する再生PPと再生PEの殆どは、PPとPEとの混合物である。ところが、PEとPPは両方とも、PETとは相溶性がないためお互い混ぜられず、混合物の物性も劣悪である。したがって、PEとPPをPETと分離することは、それぞれのプラスチックをリサイクルするために非常に重要である。
【0006】
本発明は、ポリエステル(Polyethylene terephthalate、PET)、ポリプロピレン(Polypropylene、PP)、ポリエチレン(Polyethylene、PE)などのプラスチックフィルム層とアルミニウム層を含む包装用多層廃フィルムを、PET、PPとPEとの混合物、およびアルミニウムの3成分に分離してリサイクル可能にする経済的な多層フィルム廃棄物の再生方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
貴重な資源である前記包装用多層フィルム廃棄物を埋め立てまたは焼却せずにリサイクルするための研究と実験を行い続けた結果、本発明の完成に至った。本発明は、多層フィルム廃棄物をリサイクルするために、多層フィルム廃棄物のアルミニウムを選択的に溶解させて層分離を誘導し、比重差を用いてポリプロピレンとポリエチレンとの混合物層とポリエステル層に分離する。また、比重差により分離されたポリエステルの純度を高めるために、有機溶媒を用いて、ポリエステル層に含まれたポリプロピレンとポリエチレンを抽出することにより、多層フィルムの主構成成分をポリエステル、ポリプロピレンとポリエチレンとの混合物、およびアルミニウム成分にそれぞれ分離する方法を提供することを目的とする。
【0008】
本発明は、多層フィルムのアルミニウム層を選択的に溶媒と反応させて液状に溶解させて分離することにより、多層フィルムを2つ以上の層に分離し、比重差を用いてポリプロピレンとポリエチレン層をポリエステル層から分離し、比重差により分離されたポリエステル層の純度を高めるために、有機溶媒を用いて、ポリエステル層に含まれたポリプロピレンとポリエチレンを抽出する多層フィルムのリサイクル方法に関する。
【0009】
本発明の多層廃フィルムのリサイクル方法は、
a)粉砕されたアルミニウム層が含まれた多層廃フィルムを反応器に投入し、アルミニウムを溶解させる液体で処理することにより、アルミニウム層を選択的に溶解させて分離する段階と、
b)アルミニウム層が溶解されて分離された残りの粉砕物を、比重差を用いて、比重の低いポリプロピレンとポリエチレンを主成分とする粉砕物と、比重の高いポリエステルを主成分とする粉砕物に分離する段階と、
c)比重差により分離されたポリエステルを主成分とする比重の高い粉砕物を乾燥させて反応器に投入し、有機溶媒と共に加熱することにより、それからポリプロピレンとポリエチレンを溶解させて分離する段階と、
d)前記分離物からアルミニウム成分、ポリプロピレンとポリエチレンとの混合物、およびポリエステルをそれぞれ分離回収する段階とを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の多層廃フィルムのリサイクル方法では、多層フィルムのアルミニウム層を選択的に溶媒と反応させて液状に溶解させて分離することにより、多層フィルムを2つ以上の層に分離し、比重差を用いてポリプロピレンとポリエチレン層をポリエステル層から分離し、比重差により分離されたポリエステル層の純度を高めるために、有機溶媒を用いて、ポリエステル層に含まれたポリプロピレンとポリエチレンを抽出することができる。それゆえ、これら抽出した成分をリサイクルできるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の多層廃フィルムのリサイクル方法について詳細に説明する。
市中での流通過程で廃棄されるかあるいは印刷工場で廃棄される各種の包装用多層フィルムを収集して示差走査型熱分析器(DSC;Perkin Elmer DCS7)、X線回折器(Rigaku、DMAX2200)および後述の溶媒抽出方法などを用いてその成分を分析したところ、PPが45〜77%、PEが20〜40%、PETが0〜50%であり、アルミニウムは0.4〜1.4%程度であって、種類によって非常に大きい差を示した。各種の多層フィルム廃棄物の平均組成成分は、PPが約48%、PEが約29%、PETが約22%、そしてアルミニウムが約1%程度であった。Nylon6がたまに発見されたが、その平均組成成分は、約0.5%程度であって、微量であった。
【0012】
包装用多層フィルムに使用されるPEの溶融点をDSCを用いて測定することにより詳細に分析したところ、大部分はLDPEであったが、LLDPE(Linear Low Density Polyethylene)やEVA(Ethylene Vinyl Acetate)などのエチレンと他の単量体の共重合体とHDPEも一部使用されていることが分かった。
【0013】
包装用多層フィルム廃棄物を、粉砕機を用いて、一辺の長さが1〜50nm程度の不規則な形状の多角形粉砕物に粉砕する。適量の前記粉砕物を反応器に投入し、粉砕物が漬かる程度の量のアルカリ水溶液を反応器に添加した後、攪拌器で適切な回転速度、例えば10〜500rpmで攪拌する。アルカリ水溶液としては、NaOH水溶液、KOH水溶液、Ca(OH)水溶液、LiOH水溶液などが使用でき、アルカリ水溶液の温度を常温ないし沸騰点に調節した後、約5分〜2時間攪拌する。アルミニウム溶解時間は、アルカリ水溶液の濃度および温度、攪拌器の形態および攪拌速度などによって異なる。アルミニウムの溶解速度は、アルカリ水溶液の濃度および温度が高く攪拌が円滑に行われるほど増加する。使用されたアルカリ水溶液の濃度は0.1%ないし飽和状態とすることができるが、1%以上の濃度が適切な溶解速度を示すため好ましい。5%以上の高濃度におけるアルカリ水溶液の温度は、常温または20℃以上が好ましく、5%未満の低濃度における水溶液温度は、60℃ないし沸騰点が好ましい。アルカリ水溶液を用いてアルミニウム層を抽出する工程で、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびポリエステル層は溶解されない。アルミニウム層は、一般に、層間に存在する。よって、アルミニウム層が除去されると、多層フィルムはおよそ2つのフィルム層に分けられる。アルミニウム層の除去された多層フィルムが3〜4個の層に分けられる場合も観察されるが、これは、フィルム層の間に使用された接着成分がアルカリ水溶液に溶解されるためであると判断される。
【0014】
アルミニウム処理のための反応器は、一般的な攪拌装置と加熱装置を備えており、包装材粉砕物および溶媒の入り口と出口を有するものであって、クローズド(closed)システムとオープン(open)システムが両方とも可能である。水素ガスを捕集する場合は、クローズドシステムでなければならず、反応器の上端の水蒸気凝縮用コンデンサと入り口および出口などには開閉弁がなければならない。コンデンサの上端にパイプを設置し、水蒸気を凝縮させて除去する水素ガスの排出管として使用することができる。溶媒に接触する反応器、攪拌器、パイプ、バルブなどの全ての表面は、使用される溶媒と反応し、あるいは溶媒に溶解されてはならず、アルカリ水溶液の場合にはステンレス鋼などが、酸水溶液の場合にはガラス、繊維強化プラスチックおよび特殊合金などが適切である。
【0015】
反応終結の時点は、包装用多層フィルムのアルミニウム層が見えない時である。反応が終結すると、アルミニウム層が溶解されてから残った多層フィルム粉砕物とアルカリ水溶液を反応器から排出して濾布またはメッシュ網付き遠心分離機などの固液分離装置を用いてそれぞれに分離する。分離されたアルカリ水溶液は、貯蔵してさらに使用し、飽和溶液になる過程でアルミニウムとの反応性が減少すると、中和などの方法を用いて、アルカリ水溶液に溶解されているアルミニウム化合物を固相の水酸化アルミニウム(Al(OH))に分離する。分離された多層フィルム粉砕物は、水で洗浄し、洗浄した水が中性(pH7)になるまで多数回洗浄する。
【0016】
PE、PPおよびPETの密度は、結晶化度によって少し異なるが、それぞれ約0.91〜0.97、0.90〜0.91、および1.33〜1.42程度である。このため、PEとPPの混合物層とPET層を比重差によって分離する工程は、比重0.97〜1.33の液体で行うことができる。したがって、アルミニウム溶解工程を行ったアルカリ水溶液の比重が1.0〜1.33であれば、比重差分離工程をアルミニウム溶解工程の直後に連続的に行うことができる。この場合、比重差分離工程の後、粉砕物を中性になるまで洗浄する。PEとPPは、お互い密度が類似しているので、比重差を用いた分離が難しい。
【0017】
比重差分離は、比重約1.0の水でも行うことができるが、比重が1より小さくて水に浮かぶ粉砕物は、アルミニウム溶解工程で分離されたPPとPE層が主成分であり、1つまたは2つ以上のフィルムが積層されている。比重が1より大きくて水に沈む成分としては、PETフィルム、およびPETフィルムと分離されていない多層フィルムがある。粉砕物の比重差分離が正確に行われない場合がある。例えば、比重約1.33〜1.42のPET層は、気泡または油成分が表面に付いているかあるいは多数のPPまたはPEフィルム上に載せていると、水に浮かぶ。また、比重約0.9〜0.97のPPまたはPE層は、比重の大きいPET層と分離されないか或いは多数のPET層の下に敷かれていると、水に沈む。このような誤りは、界面活性剤の添加または多数回の比重差分離工程などで改善できる。
【0018】
PE、PP、PETおよびアルミニウムの溶融点は、それぞれ約100〜135℃、155〜165℃、245〜275℃、および660℃である。PEまたはPPを加工するに際して押し出し器をよく使用するが、押し出し器内の温度を205〜260℃とすることが一般的な押し出し加工条件である。押し出し器の最高温度が220℃以下の運転条件では、押し出し器内のPE、PPおよびPETフィルム混合物のうち、PETフィルムは、溶融せず固体状に進んで、スクリューとダイ間のブレーカープレート(Breaker Plate)に装着されたスクリーンまたはメッシュ網にかかる。このような実験結果を用いて、前記比重差分離工程で分離された低比重のPEとPP層を主成分とする粉砕物を乾燥させた後、スクリーン付き押し出し器を用いて220℃以下の運転温度条件で押し出すと、PEとPPのみが押し出されてペレットまたは押し出し成形品に加工される。
【0019】
メッシュ網またはスクリーンの孔径は20〜200メッシュとすることができるが、孔径が小さいほど、PETなどの溶解されない不純物をさらに完璧に濾すことができる。この場合、メッシュ網またはスクリーンにかかったPETフィルムが押し出し速度を減少させるので、よく除去しなければならない。ブレーカープレートに固定されたスクリーンまたはメッシュ網を使用すると、溶融されていないPETフィルムなどを除去する間、押し出し工程が中断される。連続式スクリーンチェンジャー(Screen Changer)などの装置を使用すると、押し出し工程を中断することなく、溶融されていないPETフィルムなどを除去することができる。除去されたPETなどの不純物は、固体状態であり、PETフィルム粉砕物を主成分とし、残りは大部分PEとPP成分なので、後述の有機溶媒によるPEとPP抽出工程によって純粋なPETフィルムとPEおよびPPを互いに分離することができる。
【0020】
前述した比重差工程で分離された高比重の粉砕物は、アルミニウム分離工程で剥離されたPETフィルム、およびPETフィルムと分離されていない多層フィルムが主な構成成分である。PETフィルム以外の成分は、リサイクルを阻害するので、PETフィルムと分離されなければならない。PETの押し出し工程の温度は、約290℃以上であって、PEとPPの溶融点より高い。したがって、PET加工用押し出し器内におけるPEとPPは液状なので、ブレーカープレートに装着されたメッシュ網に掛からない。したがって、PETフィルムを押し出す過程でPEとPPを分離することができない。
【0021】
純粋なPETフィルムを得るために、PEとPPを有機溶媒を用いて選択的に溶解させる。本溶解工程で使用することが可能な有機溶媒の例としては、キシレンやトルエンなどの炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エステル類、ケトン類などを挙げることができるが、これらを単独で使用することもでき、2種以上を混合して使用することもできる。PEとPPをそれぞれ連続的に抽出し、あるいはPEとPPを同時に抽出する2つの方法が使用できる。例えば、有機溶媒としてキシレンを使用する場合、多層包装材に主に使用されるPEは、70〜95℃のキシレンに溶解され、多層包装材に主に使用されるPPは、95℃以下のキシレンには殆ど溶解されず、100℃以上のキシレンに溶解される。PETは、常圧で沸くキシレン(約135℃)などのいずれの温度でも全く溶解されない。
【0022】
したがって、前述した比重差工程で分離されたPETを主成分とする粉砕物を反応器内のメッシュ筒中に仕込み、キシレンを反応器に仕込んで粉砕物がキシレンに漬かるようにした後、キシレンの温度を70〜95℃に維持させながら、適切な時間(10分〜2時間)メッシュ筒内の粉砕物を攪拌すると、PEが選択的にキシレンに溶解される。メッシュ筒は、内容物の重量に耐えられる適切な構造を有し、側面と底面がメッシュ網(10〜200メッシュ)で取り囲まれるように製作され、反応器の内部に固定できるように製作されたものである。
【0023】
PEは、70〜95℃のキシレンに溶解された状態でメッシュ筒を通過して反応器の外部に排出できるが、PPとPETは、キシレンに溶解されないため、メッシュ筒の内部に残る。PEの溶解されたキシレンを反応器の外部に排出した後、メッシュ筒の内部に残ったPPとPETの混合粉砕物に連続して100℃以上の新しいキシレンを接触させ、適切な時間(10分〜2時間)攪拌すると、PPのみが選択的に溶解される。メッシュ筒を通過したPPを溶解させたキシレン溶液を反応器の外部に排出すると、メッシュ筒内には純粋なPETのみが残る。
【0024】
もしPEとPPを同時にPETから分離したければ、PE、PPおよびPETの混合粉砕物を反応器内のメッシュ筒中に仕込み、キシレンを反応器に仕込んで粉砕物がキシレンに漬かるようにした後、キシレンの温度を100℃以上に維持させ、適切な時間(10分〜2時間)メッシュ筒内の粉砕物を攪拌すると、PEとPPが同時に溶解される。溶解が完了すると、PEとPPを溶解させたキシレン溶液を反応器の外部に排出することにより、溶解されていないPETと分離することができる。
【0025】
この溶解工程を行う反応器は、凝縮用コンデンサを装着して、有機溶媒が反応器の外部に蒸発することを防ぐことができなければならず、攪拌器と加熱装置を備えており、適切な大きさのメッシュ筒を内部に固定させることができることが適切である。有機溶媒と接触する反応器や攪拌器などは、有機溶媒に溶解されたり反応したりしてはならない。
【0026】
分離されたポリエチレンとポリプロピレンを溶解させた有機溶媒溶液は、乾燥過程によって有機溶媒を蒸発させることにより、ポリエステル成分のないポリエチレンとポリプロピレンまたはこれらの混合物を得ることができる。キシレンに溶解されないためメッシュ筒の内部に残されたフィルムは、大部分ポリエステルであり、乾燥させてリサイクルする。
【実施例】
【0027】
以下、下記の非制限的な実施例によって本発明についてさらに詳しく説明する。
【0028】
〔実施例1〕
アルミニウム層が含まれた、6種の包装用として印刷された多層フィルムそれぞれを3mm×3mmの四角形に切って、90℃の10%水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液でアルミニウム層を溶解させた。アルミニウム層が全て溶解される時間を表1にまとめた。アルミニウム層が全て溶解されると、大部分2つ以上の層に分離された。多層フィルムが3つ以上の層に分離される場合は、アルカリ水溶液がアルミニウムだけでなく層間の接着成分も溶解するためであると思われる。アルミニウム層が全て溶解された後、それぞれの粉砕品を篩で分離して多数回水で洗浄した後、水に浸漬して比重約1.0の水に浮かぶ層と水に沈む層に分離した。水に浮かぶ層は大部分PPとPE層であり、水に沈む層は大部分PETであることを、示差走査型熱分析器(DSC;Perkin Elmer DSC7)で溶融温度を測定することにより確認した。それぞれの層に分離されていない粉砕品は、全体比重によって浮かぶ場合と沈む場合があった。本実施例で使用された包装用多層フィルムは、2つに大別されるが、表1の試料1、2、3のようにPET、PPおよびPE、並びにアルミニウム層から構成されたものと、表1の試料4、5、6のようにPPおよびPEとアルミニウム層から構成されたものがあった。PET層が含まれた多層フィルムのアルミニウム溶解時間が、PET層のない多層フィルムより短い傾向があった。
【0029】
【表1】

【0030】
〔実施例2〕
いろいろの包装用多層フィルムが混合された廃棄物を粉砕して90℃の10%水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液でアルミニウム層を30分間溶解した。粉砕物をNaOH水溶液から分離した後、粉砕物の表面に付いているNaOH水溶液が中性(pH7)になるまで水で洗浄した。アルミニウム層が完全に溶解された粉砕物は大部分2つ以上のフィルムに分けられることが分かった。
【0031】
粉砕物を常温の水中に入れ、比重が水(比重1)より高くて沈んだものと、比重が水より低くて水に浮かぶものに分離した。比重が常温の水より高い粉砕物は、重量で約25%であった。この粉砕物をメッシュ網で包んで粉砕物がメッシュ網を通り抜けないようにした後、90℃のキシレン中で約30分間溶解抽出させた後、乾燥させて重量を測定することにより、PE成分の分率を計算した。90℃のキシレンで抽出したプラスチックは、乾燥させて示差走査型熱分析器で確認した結果、LDPEを主成分とするPEが大部分であり、微量のPPが検出されたが、PETなどの他のプラスチックはないものと確認された。90℃のキシレンで抽出したメッシュ網内に残った粉砕物を連続して130℃のキシレン中で約30分間溶解させた後、乾燥させて重量を測定し、PPとPET成分の分率を計算した。130℃のキシレンで抽出したプラスチック成分は、乾燥させてDSCで確認した結果、PPが99%以上であった。2回のキシレン抽出(90℃と130℃)後、残った粉砕物は無色透明であるか或いは印刷が施されていたが、これらはPETが99%以上であった。前述した方法のようなキシレン抽出方法により、水に浮かぶ粉砕物のプラスチック成分も分析して、水に沈む粉砕物の分析結果と共に表2にまとめた。水に浮かぶ粉砕物のPEとPP含量は約96%、PETは約4%であった。水に沈んだ粉砕物のPET含量は、約75%であり、約25%のPEとPPが含まれていた。
【0032】
【表2】

【0033】
〔実施例3〕
前記実施例2でアルミニウム層が溶解された多層フィルム粉砕物を比重1.2の塩水で比重差分離工程を行った。この塩水に浮かぶ層と沈む層は、それぞれ約95%と5%であった。この2層をそれぞれ水で洗浄して塩成分を除去した後、乾燥させてメッシュ網で包んだ。その後、130℃のキシレンで約30分間溶解抽出して重量の変化を測定することにより、PEとPPの混合物、PETの分率を計算して表3にまとめた。PEとPPは両方とも130℃のキシレンに溶解され、PETは溶解されない。表3を表2と比較すると、比重1.2の塩水に沈む粉砕物のPET分率が比重1.0の水に沈む粉砕物より高いことが分かる。
【0034】
【表3】

【0035】
〔実施例4〕
前記実施例2で水に浮かぶ粉砕物を乾燥させた後、一軸スクリュー押し出し器を用いて押し出した。スクリューとダイ間のブレーカープレートに30メッシュと60メッシュの2枚のメッシュ網を重ねて装着して押し出した。押し出し器の温度は位置によって異なるが、180〜220℃の範囲で押し出した。押し出されたプラスチックストランドを冷たい水に浸漬させた後、一定の寸法に切ってペレットに加工した。作られたペレットを乾燥させた後、シート状に圧縮成形し、その後DSCを用いて溶融点と溶融熱を測定して構成成分を分析した結果を表4にまとめた。押し出されたプラスチックは、99%以上がPPとPEであり、1%未満がPETであった。押し出し前の粉砕物のPET分率は4%であったが、押し出されたストランドのPET分率は1%未満であった。すなわち、水に浮かぶ粉砕物に含まれているPETフィルムの75%程度は、ブレーカープレートに装着されたメッシュ網にかかり、残りの25%程度はメッシュ網を通過したものと分析される。
【0036】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明のリサイクル方法によって、現在埋立てまたは焼却される包装用多層廃フィルムをその構成成分別に分離してリサイクルすることができ、分離回収されたポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびアルミニウム化合物は、新規製品のようなそれぞれの用途に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン、ポリエチレンおよびポリエステルを含むプラスチック層およびアルミニウム層を含む多層廃フィルム再生方法であって、
a)粉砕されたアルミニウム層が含まれた多層廃フィルムを反応器に投入し、アルミニウムを溶解させる液体で処理することにより、アルミニウム層を選択的に溶解させて分離する段階と、
b)アルミニウム層が溶解されて分離された残りの粉砕物を、比重差を用いて、比重の低いポリプロピレンとポリエチレンを主成分とする粉砕物層と、比重の高いポリエステルを主成分とする粉砕物層に分離する段階と、
c)比重差により分離されたポリエステルを主成分とする粉砕物を乾燥させて反応器に投入し、有機溶媒と共に加熱することにより、それからポリプロピレンとポリエチレンを溶解させて分離する段階と、
d)前記分離物等からアルミニウム成分、ポリプロピレンとポリエチレンとの混合物、およびポリエステルをそれぞれ回収する段階とを含む、多層廃フィルムの再生方法。
【請求項2】
前記a)段階でアルミニウム層を溶解させるために、アルカリ水溶液として、NaOH水溶液、KOH水溶液、Ca(OH)水溶液およびLiOH水溶液よりなる群から選ばれた1種以上の水溶液を使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
比重差分離を比重0.97以上1.33未満の液体で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
比重差により分離されたポリプロピレンとポリエチレン層を主成分とする比重の低い粉砕物を乾燥させて内部最高温度220℃以下の押し出し器で加工するが、スクリューとダイ間のブレーカープレートにスクリーンを装着しまたは連続式スクリーンチェンジャーを設置することにより、溶融されていないPETフィルムなどをスクリーンで濾別すると同時にポリエチレンとポリプロピレンをペレットまたは押し出し成形品に加工する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記有機溶媒は、キシレンやトルエンなどの炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エステル類、ケトン類の単独またはこれらの混合物よりなる群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ポリエステルを主成分とする比重の高い粉砕物からポリプロピレンとポリエチレンを分離する段階では、前記粉砕物を有機溶媒と共に70℃〜95℃で加熱してポリエチレンを溶解させて分離し、残りの粉砕物を連続的に100℃ないし沸騰点の有機溶媒で処理してポリプロピレンを溶解させ、溶解されないPETフィルム層と分離するか、あるいは前記粉砕物を有機溶媒と共に100℃ないし沸騰点で加熱し、ポリエチレンとポリプロピレンを同時に溶解させてポリエステルフィルム層から分離する、請求項1または5に記載の方法。
【請求項7】
前記有機溶媒がキシレンである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記a)段階で、アルミニウムとアルカリとが反応して生成された水素を捕集する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
請求項4の方法によって製造されるポリエチレンおよびポリプロピレンの再生押し出し成形品。
【請求項10】
請求項6の方法によって製造される再生ポリエステル。

【公開番号】特開2006−205160(P2006−205160A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−378958(P2005−378958)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(505214010)コリア インスティチュート オブ インダストリアル テクノロジー (20)
【Fターム(参考)】