説明

層状複合物を有する物品

層状複合物を有する物品、ならびにその製造プロセスおよび使用であって、この層状複合物は、第一の非金属層、およびこの第一の非金属層上に適用された第二の金属層を示し、この第一の非金属層は、少なくとも1種のポリマーを含有し、そしてこれらの非金属層と金属層との間に存在する境界は、最大5μmのR値の粗さ、少なくとも12N/mmの接着強度と、この層状複合物の表面にわたって分布する6つの異なる測定値点における、相加平均の最大25%の標準偏差とを示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーおよびその上に存在する金属層からなる、層状複合物を有する物品に関する。
【背景技術】
【0002】
このような物品は、公知であり、そして特に、装飾領域(例えば、ABS(アクリル/ブタジエン/スチレンポリマー)またはポリマー混合物から作製されるクロムめっきされた物品)において、特に、装飾性の成型品、シャワーヘッド、自動車両のラジエーターグリル、コーヒーポットにおいて、使用される。
【0003】
このような複合材料は、いかなる顕著な接着強度をも示さない。その結果、装飾目的とは関係なく、このような物品は、磨耗および引き裂きに対する保護、腐食保護、強化、機械応力に対する保護、熱応力に対する保護および/または化学応力に対する保護の観点で、いかなる技術的機能をも実施し得ない。
【0004】
最近、このような機能を有するこのような複合材料またはこのような複合材料の表面を開発する可能性が、考慮されている。
【0005】
このような層を製造するための1つのプロセスは、溶射である。この場合、金属粒子が加熱され、そして加速された様式で、コーティングされるべき基材上に適用される。この様式で、金属層が、プラスチック上に作製される。しかし、このプロセスによっては、単純な幾何学的形状を有する構造部品のみをコーティングすることが可能である。さらに、このプロセスの主要な欠点は、それらの層が、高い多孔性、高い固有応力、高い層の厚さおよび高い機械応力に供された構造部品に対する不十分な接着を示すという事実からなる。
【0006】
このような複合材料を製造するためのさらなる可能性は、減圧中でのプラスチック上への金属の蒸着(CVD/PVDプロセス)からなる。この様式で、連続的な金属コーティングが、非金属基材(例えば、プラスチック)上に適用される。しかし、このプロセスは、かなり大きい寸法を有する構造部品に対しては、経済的に不適切である。さらに、刻み目を有する構造部品または空隙を有する構造部品は、完全には金属化されない。この様式で製造される物品は、最大3μmの厚さの金属層を有し、これは、多くの産業適用のためには不十分である。さらに、これらの複合層は、非常に低い接着強度のみを有する。
【0007】
この蒸着技術についての広範な適用分野は、プラスチックフィルムのコーティング(例えば、食品の包装のため)である。従って、DE 198 49 661 A1は、特殊なポリエステルフィルム上へのアルミニウムの蒸着を開示する。その様式は、このアルミニウムが、強い酸素障壁、高い光沢および低い摩擦係数を示すような様式である。しかし、この特許出願に示される、3N/mmまでの接着強度は、その金属化フィルムの機械応力を受け機能的な適用に耐えるためには低すぎる。
【0008】
DE 43 12 926 A1において、歯科用の金属−ポリマー複合層の接着強度の改善のためのプロセスが記載されている。この目的のため、ポリマーがすでに適用されている金属基材が、特殊なTe−COレーザーで照射される。必要であれば、接着剤が、さらに使用される。ポリマー基材の金属化は、この文献には記載されていない。
【0009】
DE 42 11 712 A1はまた、接着強度を改善する目的での、エキシマレーザーでの基材表面の照射を記載する。PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムが、引き続いてPVDプロセスの枠組み内で強磁性金属層を蒸着により適用する目的で、この特殊なレーザーで照射される。このようなフィルムは、とりわけ、音声または映像の記録媒体として使用される。
【0010】
さらに、特殊プラスチックのためのプロセスが存在し、この場合、コーティングされるべき物品が、まず適切な物質で膨潤させられ、引き続いて、化学的にエッチングされる。このように達成されるこのプラスチック上に適用される金属層の接着強度は、最大2N/mmになる。このプロセスの主な欠点は、2つの化学処理剤によるかなりの環境汚染であり、その結果、このプロセスは、環境政策の考慮事項に起因して、さほど長期間は使用され得ない。
【0011】
ポリアミドを金属化するための、上記のこのプラスチック基材の表面を膨潤させる上記原理に基づくがクロム硫酸での酸洗いを提供しない、さらに開発されたプロセスが、G.D.WolfおよびF.Fuengerによる論文「Metallisierte Polyamid−Spritzgussteile」,Kunststoffe,1989,442−447頁に提示されている。非晶質ポリアミドの表面が、有機金属活性化剤溶液で処理される。引き続いて、化学的ニッケル層を析出させるために、従来のめっきプロセスが実施される。
【0012】
処理溶液の基材との化学反応に基づくこの型の表面処理の欠点は、膨潤した表面が、環境の影響(例えば、塵埃の包埋)に対して非常に感受性であることである。さらに、処理されるべきポリアミドは、非晶質でなければならない。なぜなら、部分的に結晶性のポリアミドまたは結晶性のポリアミドは、提示される方法によって攻撃を受けないからである。その結果、この方法は、時間を浪費する高価なプロセスであり、これは、ポリマー基材と金属層との間に接着性の複合層を達成する目的での、限定された用途のみしか有さない。
【0013】
さらに、H.Sauer,Siegen 1999による論文から、プラスチックおよびその上に存在する金属層という複合材料を製造することが公知である。このプラスチック表面は、この金属層の適用の前に、ブラスチング剤の使用によって粗くされ、引き続いて、特殊なエタノール/炭酸カルシウム懸濁液で処理される。
【0014】
このような複合材料は、プラスチック基材上の金属層の、異常に高い接着強度を示す。
【0015】
しかし、非常に大きい表面は、この文献に記載されるプロセスによって、産業規模では製造され得ない。さらに、この様式で得られ得る層は、少量の炭酸カルシウムがプラスチック基材と金属層との間の境界層中に残り、その結果、「所定の破壊点」が形成されるという欠点を有する。この「所定の破壊点」は、物品の種々の点において大いに変動する接着強度をもたらす。これらの偏差は、最も低い接着強度を有する点に、物品が高い機械応力に供される場合の初期の欠損を引き起こさせる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、物品の提供からなり、この物品は、極端な機械応力に供され得、そしてその表面は、部分的にかまたは全体として、少なくとも1種のポリマーおよび1種の金属の層からなる複合材料である。この複合材料は、上記従来技術の欠点を克服する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的は、本発明によって、層状複合物を有する物品によって達成される。この層状複合物は、第一の非金属層、およびこの第一の金属層上に適用された第二の金属層を示し、この第一の非金属層は、少なくとも1種のポリマーを含有し、そしてこれらの非金属層と金属層との間に存在する境界は、最大5μmのR値の粗さを示し、この金属層は、少なくとも12N/mmの接着強度と、この層状複合物の表面にわたって分布する6つの異なる測定値点における接着強度の、相加平均の最大25%の標準偏差とを示す。
【0018】
使用されるポリマー含有材料に依存して、この物品は、いわゆる迅速プロトタイピングプロセスによって、特に、立体リソグラフィーまたはレーザー焼結によって、製造され得る。この様式で、複雑な形状が短時間で製造され得、これらの形状は、外部電流なしで析出した金属層で、強化が縁部領域に観察されることが、刻み目またはアンダーカットの領域内の弱化もなく、均一に、輪郭が精密にコーティングされる。
【0019】
さらなる実施形態において、本発明による物体は好ましく、この物体の表面は、全体的にかまたは部分的に、複合材料を示し、この複合材料は、第一の非金属層、およびその上に適用された第二の金属層を示し、そして
a)この物品の表面は、化学的に前処理されずに金属層が適用され;そして
b)この金属層は、溶射、CVD、PVD、またはレーザー処理によって、適用されない。
【0020】
化学的前処理は、本明細書中で以下において、機械的処理に対する境界として、酸洗い、エッチング、膨潤、蒸着、プラズマ処理、レーザー処理または類似の方法によって実施される、この場合には表面に対する変化が化学反応によって引き起こされる、基材表面の任意の処理であると理解されるべきである。
【0021】
従来技術の、化学的前処理の後に金属化される物品とは対照的に、本発明による物品は、外部電流なしでされた、粗い、鋭利な縁部の境界層を、非金属層と金属層との間に示す。この境界層のこれらの鋭利な縁部の刻み目およびアンダーカットは、例えば、ミクロトーム切片分析(これの実施は、以下に記載される)において、縁部を有する表面の輪郭として明白に認識可能である。従って、これらは、かなり丸みがかった輪郭、およびいずれの場合においても、丸くされた輪郭(これらは、化学的前処理によって形成される)から区別され得る(図2)。
【0022】
粗さ値Rおよび接着強度を決定するために、標本が、本発明による物品から採取され、そしてミクロトーム切片が、以下に詳述される方法に従って作製される。
【0023】
ミクロトーム切片を作製する場合、基材と表面との間の境界面が、この処理によって非常に迅速に破壊され得るか、または剥がれ得るという、特定の困難が存在する。このことを回避するために、Struer製の新たな分離ディスクである、33TRE DSA No.2493型が、各ミクロトーム切片のために使用される。さらに、分離ディスクから基材コーティングへと伝達される適用圧力が、この力がコーティングから基材に向かう方向で流れるように方向付けられることを確実にするために、注意が払われなければならない。この分離の間、適用圧力が可能な限り低く維持されることを確実にするために、注意が払われなければならない。
【0024】
試験されるべき標本は、透明な包埋塊(Struerから入手可能なEpofixパテ)内に配置される。この包埋された標本が、Struer製のKNUTH−ROTOR−2型の卓上粉砕機で粉砕される。炭化ケイ素を含む種々の研磨紙および種々の造粒が、この目的で使用される。正確な手順は、以下のとおりである:
【0025】
【表1】

この粉砕プロセスの間、粉砕粒子を除去するために、水が使用される。断面において摩擦によって生じる接線方向の力は、金属層が非金属基材に対して押し付けられるような様式で、方向付けられる。この様式で、この金属層は、粉砕プロセスの間、この金属層自体が非金属基材から剥がれることを効果的に防止する。
【0026】
引き続いて、このように処理された標本が、Struer製のDAP−A型のモーター駆動式調製デバイスで研磨される。このプロセスのためには、使用されるのは通常の標本移動器ではなく、この標本は、その代わりに、手で徹底的に研磨される。研磨されるべき基材に依存して、40〜60rpm/分の間のトルクおよび5Nと10Nとの間の適応力が使用される。
【0027】
このミクロトーム切片は、引き続いて、SEM顕微鏡写真法に供される。この境界線の拡大の決定のために、非金属基材と金属表面との間の層の境界線が、10,000倍の拡大率で決定される。この評価のために、Wilhelm Mikroelektronik製のOPTIMASプログラムが使用される。その結果が、X−Y値の対(これは、基材と上記層との間の境界線を表す)の形態で決定される。本発明の観点で、境界層の拡大を決定するために、少なくとも100μmの距離が必要とされる。この境界線の移行は、この場合には1μmあたり少なくとも10個の測定点で決定される必要がある。この境界層の拡大は、真の長さを幾何学的長さで割った商から決定される。この幾何学的長さは、測定された距離(すなわち、第一の測定点と最後の測定点との間の距離)の距離に対応する。真の長さとは、記録された全ての測定点を通る線の長さである。
【0028】
表面粗さの値Rは、標準DIN 4768/ISO 4287/1に従って、上で記録されたX−Y値の対を再度使用して、決定される。
【0029】
の値は、表面の粗さの測定技術により、再現可能な測定値であり、輪郭の逸脱(すなわち、極端な谷または隆起)は、表面の積分において、大部分が無視される。
【0030】
本発明による複合物の接着強度(N/mmで示される)は、DIN 50160に従う前端引張試験によって、もっぱら決定される:
DIN 50160に従う前端引張試験(垂直引張試験)は、半導体を試験するため、溶射された層の接着引張強度の決定、および種々のコーティング技術において、多年にわたって使用されている。
【0031】
前端引張試験による接着強度の決定のために、試験されるべき層/基材複合物が、2つの試験ダイの間に結合され、そして一軸方向の力での負荷に、破壊されるまで供される(図1を比較のこと)。この接着剤の接着強度がコーティングの接着強度より大きく、そして層と基材との間で破壊が起こる場合、この接着強度を、式:
【0032】
【数1】

(σ:実験的に決定された接着強度、Fmax:複合物の破壊の際の最大の力、およびA:破壊の幾何学的表面)に従って計算することが可能である。
【0033】
微細構造を有するプラスチック表面上に金属層を保持する、従来技術による基本的な材料の場合には、微量の炭酸カルシウムが、製造プロセスによって検出可能である。これらの混入物質は、エタノールと炭酸カルシウムとの懸濁液を使用する必要な前処理によって、導入される。本発明による物品の場合の、接着強度の改善された均一性の可能な説明は、外来成分の残りの割合が、プラスチック表面と金属層との間の分離物として、または分離層として、もはや働かないような様式で低下されたことであると考えられ得る。
【0034】
この境界面中のカルシウムの割合の決定は、EDX分光法によって実施される。
【0035】
本発明によるこのような物品の例は、自動車両産業のための燃料ポンプの、ポンプハウジングおよび対応するローター(ポンプホイール)である。これらの物品は、熱可塑性物質(特に、ポリオキシメチレン(POM)およびポリフェニレンスルフィド(PPS))から作製される物品である。フェノール樹脂PFが、特に好ましく使用される。上記前処理に続いて、これらの燃料ポンプの部品は、外部電流なしで、5μmの厚さの化学的ニッケル層でコーティングされる。本発明による対応する物品は、腐食および磨耗および引き裂きに対する特に高い保護によって、特徴付けられる。このように製造される物品の耐用年数は、従来技術と比較して、100倍増加される。
【0036】
本発明の好ましい実施形態において、非金属層と金属層との間の境界層は、最大5μmのR値と少なくとも12N/mmの接着強度とを、この層状複合物の表面にわたって分布する6つの異なる測定値点における接着強度の、相加平均の最大25%の標準偏差で有することを除いて、最大35μmのR値の粗さをまた示す。
【0037】
値は、平均的な垂直表面の断片化の測定値である。
【0038】
粗さ(R値およびR値)ならびに接着強度の上記値は、非金属層のポリマーが、プロピレンおよび/またはポリテトラフルオロエチレンから選択されない場合に、達成される。
【0039】
その結果、これらのポリマーは、6N/mmより大きい接着強度が決定的に重要である場合には、使用されない。
【0040】
本発明のさらなる実施形態によれば、非金属基材は、少なくとも1種の繊維強化されたポリマー、特に、炭素繊維で強化されたポリマーを含有し、そして繊維の直径は、10μm未満である。
【0041】
この複合材料が、熱応力のみでなく、機械応力に供される限りにおいて、強化プラスチック、特に、合成繊維で強化されたプラスチック(PRF)、ガラスで強化されたプラスチック(GFP)、およびまた、アラマイト繊維で強化されたプラスチックまたは鉱物繊維で強化されたプラスチックが、特に好ましく使用される。
【0042】
この様式で、高い剛性を有し、非常に低い重量を有する物品が得られ、この物品は、金属層の優れた接着を示す。この特性プロフィールは、広い領域の技術的用途(例えば、航空産業および宇宙産業、ならびに自動車両産業)について興味深い。
【0043】
本発明の目的はまた、層状の複合物を有する物品によって達成され、この層状複合物は、第一の非金属層、およびこの上に適用された第二の金属層を示し、この第一の金属層は、ポリプロピレンおよび/またはポリテトラフルオロエチレンを含有し、これらの非金属層と金属層との間の境界層は、最大35μmのR値および最大5μmのR値を有する粗さを示し、そしてこの金属層は、少なくとも5N/mmの接着強度、およびこの層状複合物の表面にわたって分布する6つの異なる測定値点における接着強度の、相加平均の最大25%の標準偏差を示す。
【0044】
この非金属層が、ポリプロピレンおよび/またはポリテトラフルオロエチレンのいずれかを含有する場合において、少なくとも5N/mmの接着強度が達成される。これは、特に、以前には達成され得なかった接着強度の高い均一性と組み合わせて、優れた値を示す。
【0045】
従って、湿潤性、特定の物質に対する透過性、または血液および血漿との適合性に関して特定の特性を示す層状複合物を有する物品を、初めて提供することが可能である。ポリテトラフルオロエチレンのこのような物品に対する可能な用途は、例えば、ポンプのための膜のような医療技術または燃料電池技術においてであり得る。
【0046】
本発明の目的はまた、層状複合物を有する物品によって達成され、この層状複合物は、第一の非金属層、およびその上に適用された第二の金属層を示し、この第一の非金属層は、少なくとも1種の繊維強化されたポリマー、特に、ガラス繊維で強化されたポリマーを含有し、この繊維の直径は、10μmより大きく、これらの非金属層と金属層との間に存在する境界は、最大10μmのR値の粗さを示し、そしてこの金属層は、少なくとも12N/mmの接着強度と、この層状複合物の表面にわたって分布する6つの異なる測定値点における接着強度の、相加平均の最大25%の標準偏差とを示す。
【0047】
これらの物品を提供することによって、得られる構造部品の高い剛性が、低い重量で達成され、これらの構造部品は、その安い費用に起因して、産業的応用のために興味深い。具体的には、非金属層の成分として使用される、10μmより大きい直径を有する繊維を示すガラス繊維で強化されたポリマーは、非常に安価であり、そして加工が容易である。この繊維の直径は、粗さの値に対して強い影響を有し、その結果、本発明によるこのような材料の場合には、最大10μmの粗さの値Rが達成される。同時に、本発明によって、接着強度についての優れた値を達成することが可能である。さらに、本発明による物品は、高い接着均一性を有する。このことは、応力に供される構造部品の耐用年数をかなり延長させることを、初めて可能にする。なぜなら、層状複合材の局部的な層間剥離でさえも、全体として、この構造部品の不具合を導くからである。特定の重量のものが、10dmより大きい層状複合物によって覆われた表面を有する構造部品の場合(すなわち、大きい構造部品または大きい表面積を有する構造部品の場合)に、有利である。
【0048】
さらなる実施形態において、上記物品は、非金属層と金属層との間に、最大100μmのR値の粗さを示す境界を示す。
【0049】
繊維強化されたポリマー、特に、その繊維の厚さが10μmより大きいものの使用について、可能な限り低いR値を達成することが重要である。この組み合わせの場合において、使用される繊維直径と比較して低いR値を用いて、高い接着強度を達成することが、驚くべきことに、可能である。
【0050】
好ましい実施形態によれば、第一の非金属層は、同時に、その物品の表面である。好ましくは、これらの表面は、ポリマー材料に基づく。繊維強化されたプラスチック、熱可塑性物質および他の産業的に使用されるポリマーが、特に好ましいと言及されるべきである。
【0051】
しかし、同様に、第一の非金属層がその物品の表面ではない物品を使用することもまた、可能である。従って、この物品は、金属材料またはセラミック材料からなり得、これが、少なくとも1種のポリマーを含有する第一の非金属層でコーティングされる。このような基材の例は、ポリマー層が転換層上に存在する、コーティングされた構造部品(例えば、コーティングされた物品についてのEX保護)、ならびにアノード処理されたかまたは硬質のアノード処理をされたアルミニウム構造部品である。
【0052】
本発明による、層状複合物の表面にわたって分布する6つの異なる測定値点の接着強度の、相加平均の最大15%、特に、最大10%の標準偏差を示す実施形態が、特に好ましい。
【0053】
この様式で、得られる構造部品の、応力に対するさらに高い機械的抵抗性が、保証される。
【0054】
非金属層のポリマーは、好ましくは、ポリアミド、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオキシメチレン、ポリホルムアルデヒド、ポリアセタール、ポリウレタン、ポリエーテルイミド、ポリフェニルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリールアミド、ポリカーボネートおよびポリイミドからなる群より選択される。
【0055】
本発明のさらなる実施形態(これもまた好ましい)によれば、金属層は、外部電流なしで適用された金属層、金属合金層または金属分散層である。
【0056】
この様式で、非金属層への金属層の優れた接着を示す、層状複合物を有する物品が、初めて提供され得る。この金属層の接着の均一性はまた、構造部品が産業用機械のための高い応力に供される場合に、これらの物品の安定性のための、重要な役割を果たす。非金属基材およびその上に存在する金属層の、この制御された選択は、使用の場の条件に対する特性プロフィールの正確な調節を可能にする。従って、例えば、1,000mmと12,000mmとの間の長さにおいて、その全長にわたって一定の線負荷で使用される、SPFローラの場合に、このローラが全耐用年数にわたって応力要件に耐えるために、正確に規定された接着強度を調節することが重要である。
【0057】
特に好ましくは、銅層、ニッケル層、または金層が、本発明による物品の非金属層の上に、外部電流なしで析出した金属層として、適用される。
【0058】
しかし、外部電流なしで析出した金属分散層、好ましくは、包埋された非金属粒子を有する、銅層、ニッケル層、または金層もまた、適用され得る。
【0059】
この点に関して、非金属粒子は、1,500HVより大きい硬度を示し得、そして炭化ケイ素、コランダム、ダイヤモンドおよび炭素化ホウ素(Tetraborcarbid)からなる群より選択され得る。
【0060】
その結果、これらの分散層は、上記特性を除いて、他の機能を有する;例えば、本発明による物品の、磨耗および引き裂きに対する抵抗性、表面の湿潤性、ならびに緊急の手術の特性が、改善され得る。
【0061】
また好ましくは、非金属粒子は、摩擦低減特性を示し得、そしてポリテトラフルオロエチレン、硫化モリブデン、立方窒化ホウ素および硫化スズからなる群より選択され得る。
【0062】
本発明のさらなる特に好ましい実施形態において、アルミニウム層、チタン層、またはこれらの合金の層が、本発明による物品の、外部電流なしで析出した金属層上に適用され、この頂部層の表面は、アノード酸化またはセラミックコーティングされる。アノード経路によって酸化またはセラミックコーティングされた、このようなアルミニウム層、チタン層、またはこれらの合金の層は、金属物品に関して公知であり、そして例えば、商品名Hart−Coat(登録商標)またはKepla−Coat(登録商標)の下で、例えば、AHC Oberflaechentechnik GmbH & Co.OHG.によって販売されている。これらの層は、特に高い硬度、ならびに高い作動抵抗性および機械応力に対する抵抗性によって、特徴付けられる。
【0063】
本発明による外部電流なしで析出した金属層と、アルミニウム層、チタン層またはそれらの合金層との間に、1つ以上のさらなる金属層が配置され得る。
【0064】
外部電流なしで析出した層とアルミニウム層との間の、このさらなる金属層は、使用目的に従って選択される。このような中間層の選択は、当業者に周知であり、そして例えば、書籍「Die AHC−Oberflaeche−Handbuch fuer Konstruktion und Fertigung」第4改訂増補版、1999に記載されている。
【0065】
このような物品の表面が、アルミニウム、チタンまたはそれらの合金の、外来イオンの包埋によって黒色に着色されたセラミック酸化物層であることもまた、可能である。
【0066】
外来イオンによって黒色に着色された、アルミニウム、チタンまたはこれらの合金のセラミック酸化物の層は、特に、航空機産業および宇宙産業において、高価な光学要素のために特に興味深い。
【0067】
外来イオンの包埋によって黒色に着色されたセラミック酸化物層の製造は、例えば、US−A−5,035,781またはUS−A−5,075,178に記載されている。アルミニウムまたはチタンの上への酸化セラミック層の製造は、例えば、欧州特許第0 545 230号に記載されている。アルミニウム上へのアノードで生成する酸化物層の製造は、欧州特許第0 112 439号に記載されている。
【0068】
本発明の物品は、特に好ましくは、以下の工程:
i.非金属層の表面が、化学的に前処理されずに金属層が適用される工程;
ii.非金属層の表面が、第一の工程において、ブラスチング剤によって微細構造化される工程;
iii.引き続いて、金属層が、外部電流を用いない金属析出によって適用される工程、
を包含する特別なプロセスによって得られる。
【0069】
本発明による物品は、層状の複合物として、何よりもまず、第一の非金属層を示し、この層は、ポリマーを含有する。本発明による層状複合物を製造するために、この非金属層の表面は、ブラスチング処理によって、第一の工程において、微細構造化される。使用されるプロセスは、例えば、DE 197 29 891 A1に記載されている。特に、磨耗および引き裂きに抵抗性の無機粒子が、ブラスチング剤として使用される。好ましくは、これらは、銅−酸化アルミニウムまたは炭化ケイ素からなる。この点に関して、ブラスチング剤は、30μmと300μmとの間の粒子サイズを有することが有利であることが示された。上記文献には、金属層が、外部電流を用いない金属析出によって、この様式で粗くされた表面上に適用され得ることが、さらに記載されている。
【0070】
プロセスの名称がすでに示すように、外部電流を用いない金属析出の場合には、コーティングプロセスの間、電気エネルギーが、外部から供給されず、その代わりに、金属層は、化学反応によってもっぱら析出される。化学反応によって作用する、金属塩溶液中での非伝導性プラスチックの金属化は、そこで金属還元浴の準安定平衡に干渉するため、および触媒の表面に金属を析出させるために、表面に触媒を必要とする。この触媒は、貴金属シード(例えば、パラジウム、銀、金および場合により銅)からなり、これらは、活性化剤浴からプラスチック表面に添加される。しかし、パラジウムシードを用いる活性化が、プロセス技術の理由により、好ましい。
【0071】
本質的に、基材表面の活性化は、2工程で起こる。第一の工程において、構造部品が、コロイド溶液(活性化剤浴)に浸漬される。この点に関して、この金属化のために必要な、この活性化剤溶液中にすでに存在するパラジウムシードが、プラスチック表面に吸着される。シード添加の後に、このコロイド溶液中への浸漬の際にさらに形成される酸化スズ(II)および/または酸化スズ(IV)の水和物が、アルカリ性の水溶液中でのリンスによって溶解され(予備処理)、そしてパラジウムシードが、その結果として露出される。リンスの後に、ニッケルコーティングまたは銅コーティングが、化学還元浴を使用して行われ得る。
【0072】
これは、安定化剤によって準安定平衡に維持された浴中で行われ、この浴は、金属塩と還元剤との両方を含有する。ニッケルおよび/または銅の析出のための浴は、その中に溶解した金属イオンをシードにおいて還元し、そして元素のニッケルまたは銅を析出させる特徴を有する。コーティング浴において、これらの2つの反応物は、プラスチック表面上の貴金属シードに接近しなければならない。この様式で起こる酸化還元反応の結果として、伝導性層が形成され、貴金属シードが、この場合には還元剤の電子を吸着し、そして金属イオンが接近する場合に、これらを再度解放する。この反応において、水素が発生する。パラジウムシードがニッケルおよび/または銅でコーティングされた後に、適用された層が、触媒効果を担う。すなわち、この層は、開始と共に、パラジウムシードから、完全に連続するまで成長する。
【0073】
一例として、ニッケルの析出が、本明細書中でさらに詳細に議論される。ニッケルでのコーティングの間、シード添加された予備処理されたプラスチック表面が、ニッケル金属塩の浴に浸漬され、これによって、82℃と94℃との間の温度範囲内で、化学反応が起こることを可能にする。一般に、この電解質は、4.4と4.9との間のpHを有する、弱酸である。
【0074】
適用された薄いニッケルコーティングは、電解析出された金属層で補強され得る。25μmより大きい層の厚さを有する構造部品のコーティングは、経済的ではない。これは、化学析出プロセスの遅い析出速度に起因する。さらに、ほんの数種のコーティング材料のみが、化学析出プロセスを使用して析出し得、その結果、さらなる産業的に重要な層状材料については、電解プロセスを利用することが有利である。さらなる本質的な局面は、25μmより大きい層の厚さで化学的におよび電解によって析出した層の、異なる性質(例えば、水平化、硬度および光沢)からなる。電解析出の基礎は、例えば、B.Gaida,「Einfuehrung in die Galvanotechnik」E.G.Leuze−Verlag,Saulgau,1988またはH.Simon,M.Thoma,「Angewandte Oberflaechentechnik fuer metallische Werkstoffe」C.Hanser−Verlag,Munich(1985)に記載されている。
【0075】
外部電流なしで適用されるコーティングプロセスの結果として、導電性の層を示すプラスチック部品は、電解金属化に関して、この金属からの金属化とわずかにのみ異なる。それにもかかわらず、いくつかの局面は、金属化ポリマーの電解金属化の場合には、無視されるべきではない。通常は低い伝導性層の厚さの結果として、電流密度が、電解析出の開始の際には低下されなければならない。この局面が無視されると、伝導性層の剥離および燃焼が起こり得る。さらに、望ましくない変色した層が、この目的のために特に適合された酸洗い浴によって除去されることを確実にするように、注意が払われるべきである。さらに、固有の応力が、この層の破壊を引き起こし得る。アンモニア含有浴からのニッケル層の析出物の場合、例えば、約400〜500MPaの引張応力が起こり得る。サッカリンおよびブチンジオールのような添加剤によって、改変された粒度および微細変形の形成の形態でのニッケルコーティングの構造に対する変化が、内部応力の低下を促進し得、これは、コーティングの成熟前の起こり得る失敗に対して、ポジティブな影響を有し得る。
【0076】
外部電流なしで適用される金属層の例は、AHC Oberflaechentechnikの手引書(「Die AHC−Oberflaeche」Handbuch fuer Konstruktion und Fertigung,第4版、1999)に詳細に記載されている。
【0077】
さらに、1層または数層のさらなる層(特に、金属層、セラミック層、および架橋ポリマー層または硬化ポリマー層)が、金属層の上に配置され得る。
【0078】
従って、例えば、さらなる電解析出したニッケル層を、外部電流なしで析出したニッケル層上に本発明の金属層として適用し、そしてその上に、クロム層を析出させることが可能である。このように得られる表面は、高い表面品質および高い機械的負荷保有能力を示すことが必要とされるローラ上に適用され得る。第二のニッケル層の電解析出は、好ましくは、より大きい層の厚さを、費用効果的に生成し得る目的で、実施される。
【0079】
さらに、本発明の物品は、金属層として銅層を示し得、この上に、引き続いて、スズ層またはさらなる銅層が適用され得る。引き続いて、例えば、金層が、存在する金属層上に適用される。このようなコーティングは、電子工学構造部品をEMV保護するため、または例えば、コーティングされた物品の熱伝導性を改善するために、使用され得る。
【0080】
本発明による物品はまた、金属層としてニッケル層を示し得、この上に、さらなるニッケル層が適用される。この様式で、得られるプラスチック部品の高い剛性を達成することが可能であり、従って、高い機械応力に供される構成要素(例えば、ギアホイール、サスペンションまたはハウジング部品)のための用途を保証する。
【0081】
さらに、銅層が、本発明による物品上の金属層として存在し得、この層は、ニッケル層、および引き続いて、クロム層でコーティングされ得る。このような物品の可能な用途は、複写機において迅速に位置決めされ得る鏡として、またはレーザー技術において使用することからなる。
【0082】
本発明のさらなる特定の例において、エポキシ樹脂が、外部電流なしで析出したニッケル層上に適用され得る。このエポキシ樹脂の表面は、引き続いて、もう1回、ニッケル層でコーティングされる。この様式で、炭化水素と比較して、石油化学産業のための高圧下でさえも拡散抵抗性の構造部品(例えば、配管、およびポンプを完全に保持し得るハウジング)が、製造され得る。
【0083】
産業目的のために特に好ましい実施形態は、電気通信産業における高周波数の構成要素のため(特に、移動無線送信機部門における発信鉄塔ユニットのため)のフィルタハウジングからなる。これらは、表面全体が、最初に6μmの層の厚さで電流なしで化学的に適用されたニッケル/リン合金でコーティングされ、引き続いて、6μmの厚さで電解により適用された銀層でコーティングされている、PPS/PEIの物品である。
【0084】
以前には、このような物品は、アルミニウムで製造され、次いで、ニッケルでコーティングされ、そして最後に、銀でコーティングされた。従来技術のこれらの物品は、特に、排気ガスによって汚染された大都市の領域において、かなりの腐食問題を示す。以前には、これらのフィルタハウジングは、6ヶ月ごとに交換されなければならなかった。本発明による物品の場合、使用期間は、対照的に、2年を超えるまでに延長され得る。
【0085】
さらに、本発明による物品の存在する金属層上に適用されるこれらのさらなる金属層は、電解によってのみでなく、他のプロセス(例えば、CVD/PVDまたは溶射)によってもまた、本発明による金属コーティングを有する物品上に適用され得る。
【0086】
この様式で、アルミニウムまたはステンレス鋼を、例えば、プラスチックからなり、そして本発明によるニッケル層を備えた物品上に適用することが、可能である。
【0087】
本発明による物品のさらなる興味深い例は、最初に、電流なしで適用されたニッケル層を備えたプラスチックである。このニッケル層の上に、銀層および金層が、連続的に電解によって、順番に適用される。このようなかなり特別な層の順序は、医療技術において、診断装置のための構造部品のために使用される。
【0088】
全体として、上に詳述された例は、本発明による物品が、非常に広範囲の技術的用途において使用され得ることを示す。
【0089】
本発明による物品は、例えば、シート製品加工産業(フィルム、紙、布、印刷)のためのローラ、ターボ分子ポンプの構造部品(圧縮器ステージのためのリング)、家庭用品(シチュー鍋、蓋)のためのハンドル、航空産業のための構成要素(ハンドル、手すり)および宇宙産業のための構成要素(サンセール(Sonnensegel))、電子工学産業のための構造部品(コンデンサ、音響場コンデンサ、音響ライダー(Schallreiter)、マイクロ波中空コア導体、アンテナ、アンテナハウジング)、サイクロンの可動構造部品のための構造部品、風向変化器、自動車両産業のための、機械応力に供される構造部品、熱応力に供される構造部品、および/もしくは化学応力に供される構造部品(自動車両のためのブレーキピストン)、または射出成型産業のための鋳型もしくは構成要素からなり得る。
【実施例】
【0090】
((本発明による)実施例)
200×100×12mmの寸法を有し、R=0.64μmおよびR=7.5μmの初期粗さを有する、ポリアミド−6のパネルを、表面処理した:
この表面前処理を、Straaltechnik International製の改変した圧力ブラスチングデバイスで実施する。このブラスチングデバイスを、4バールの圧力で運転する。8mmの直径を有する炭化ホウ素ノズルを、ジェットノズルとして使用する。ブラスチング時間は、4.6秒間である。200〜300μmの平均粒子直径を有する造粒P80のSiCを、ブラスチング剤として使用する。
【0091】
このブラスチングシステムを、特に再現性のある表面トポロジーに関してプラスチック改変の要件に調節するために、2つの圧力回路を、それぞれブラスチング剤を輸送するため、および実際の加速プロセスのために1つずつ、備え付けた。この改変は、非常に一定の体積流動および大きい圧力範囲を与えた。
【0092】
圧縮空気の流動は、ブラスチング剤を、可能な限り低い圧力でノズルへと送達する。この流れ条件は、高い体積流動のブラスチング剤および低い割合の圧縮空気の結果として、このユニットおよびブラスチング剤の、低い磨耗および引き裂きを保障する。混合ノズルの前の搬送ホースの端部においてのみ、所望の体積流動を調節する目的で、断面が減少される。全てのポリマーの前処理の場合において、1l/分の一定の体積流れが設定された。このシステムの第二の部分において、圧縮空気(体積流動1)は、ノズルへと流れ、このノズルは、0.2〜7バールの範囲内の圧力で、無断開に調節され得る。混合ノズル内に非常に低い流量で運ばれるブラスチング剤は、次いで、高い流量の圧縮空気流動によって加速される。
【0093】
この様式で粗くされたパネルは、脱イオン水と3重量%のブチルグリコールとの混合物中で、5分間、超音波浴中で処理される。
【0094】
この伝導性層の金属析出のために使用される一連の浴は、最後の触媒された金属還元に関連して、公知のコロイドパラジウム活性化に基づく。この目的で必要とされるすべての一連の浴を、Max Schloetterから購入した。製造業者によって示される浸漬手順、処理時間および処理温度を、ニッケル析出の全てのプロセス工程において維持した:
(1)予備活性化剤浸漬溶液:
これを、混入物の巻き込みを回避するため、および表面の実際の活性化の前に標本を完全にぬらすために使用する。
浸漬時間:2分間、室温。
【0095】
(2)活性化剤GS 510
スズ/パラジウムコロイドでの表面の活性化。
浸漬時間:4分間、室温。
【0096】
(3)リンス浴:脱イオン水
脱イオン水でリンスすることにより、活性化剤GS 510成分の巻き込みを回避するため。
浸漬時間:1分間、室温。
【0097】
(4)予備処理剤 101:
望ましくないスズ化合物を表面から除去することによる、材料表面の予備処理。
浸漬時間:6分間、室温。
【0098】
(5)リンス浴:脱イオン水
浸漬時間:1分間、室温
(6a)化学ニッケル浴SH 490 LS:
淡く着色した、いくらか明るい非晶質層を有するプラスチックの、88〜92℃の分離温度での金属化。
浸漬時間:10分間。
【0099】
ニッケル浴中への選択された浸漬時間の場合、1.4μmの層の厚さが得られた。ニッケル層のこの厚さは、電解コーティングのために十分である。伝導性層の析出のために必要な全てのプロセス工程を、50lを維持するプラスチックタブ内で実施し、90℃±0.5℃の浴温度を、ニッケル析出の間、コーティングサイクル全体にわたって、温度制御器を備えるさらなるホットプレートによって維持した。均一な再現性のある層の品質を得る目的で、一連の浴を、20の標本を通過させた後に、Max Schloetterによって提供される情報に従って、分析し、そして補充した。
【0100】
伝導性のニッケル層を化学的に適用した後に、その標本を、蒸留水中で、約90℃から約60℃まで冷却し、次いで、ニッケルで55℃でさらに電解によりコーティングした。この中間工程は、反応層の形成を回避し、そして迅速な冷却によって引き起こされる固有の応力を排除する目的を有した。伝導性のニッケル層でもっぱらコーティングされた標本を、蒸留水浴中で、25℃までゆっくりと冷却した。
【0101】
SEM(1,500倍および3,000倍)によるミクロトーム切片調査が、以下の図(図3)に示される。
【0102】
EDX分析の評価は、0.03重量%のカルシウムの残量を与えた。
【0103】
接着強度の調査の結果が、表1に示される。
【0104】
【表2】

((本発明によらない)比較例)
本発明による実施例を繰り返す;しかし、ブラスチング処理の後に、そのパネルを超音波浴中で、96%エタノール中5重量%のCaCOの懸濁液中で、5分間処理する。
【0105】
引き続いて、このパネルを、さらなる超音波浴中で、純粋な96%エタノールで、さらに5分間処理する。
【0106】
SEM(1,500倍および3,000倍)によるミクロトーム切片調査が、以下の図(図4)に示される。
【0107】
EDX分析の評価は、0.91重量%のカルシウムの残量を与え、これは、CaCO/エタノール懸濁液での処理を起源とする。
【0108】
接着強度の調査の結果が、表2に示される。
【0109】
【表3】

これらの結果は、複合材料の表面にわたって分布する異なる測定値点の接着強度の標準偏差の間の、有意な差を明らかに示す。
【0110】
印刷産業のためのローラの製造の間、例えば、この差は、25%より大きい変動係数を有するローラに、粉砕による必要な後処理の間に、粗くされたプラスチック基材からの局所的な金属層の剥離を示させ、この剥離は、低い接着強度に寄与する。
【0111】
本発明による匹敵するローラは、粉砕プロセスの間、剥離を示さない。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】記載なし。
【図2】記載なし。
【図3】記載なし。
【図4】記載なし。
【符号の説明】
【0113】
1 引張ダイ
2 接着剤
3 金属層
4 基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
層状複合物を有する物品であって、該層状複合物は、第一の非金属層、および該第一の非金属層上に適用された第二の金属層を示し、該物品は、該第一の非金属層が、少なくとも1種のポリマーを含有すること、該非金属層と該金属層との間に存在する境界が、最大5μmのR値の粗さを示すこと、ならびに該金属層が、少なくとも12N/mmの接着強度と、該層状複合物の表面にわたって分布する6つの異なる測定値点における該接着強度の、相加平均の最大25%の標準偏差とを示すことを特徴とする、物品。
【請求項2】
前記物品の表面が、全体または一部分において複合材料を示し、該複合材料は、第一の非金属層、および該第一の非金属層上に適用された第二の金属層を示し、該物品は、
a)該物品の表面が、化学的に前処理されずに該金属層が適用されること;および
b)該金属層が、溶射、CVD、PVDまたはレーザー処理によっては適用されないこと、
を特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記非金属層と前記金属層との間の前記境界が、最大35μmのR値の粗さを示すことを特徴とする、請求項1または2に記載の物品。
【請求項4】
前記ポリマーが、ポリプロピレンおよび/またはポリテトラフルオロエチレンからは選択されないことを特徴とする、請求項1、2または3に記載の物品。
【請求項5】
前記非金属層が、少なくとも1種の繊維強化されたポリマー、特に、炭素繊維で強化されたポリマーを含有し、該繊維の直径が、10μm未満であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の物品。
【請求項6】
層状複合物を有する物品であって、該層状複合物は、第一の非金属層、および該第一の非金属層上に適用された第二の金属層を示し、該物品は、該第一の非金属層が、ポリプロピレンおよび/またはポリテトラフルオロエチレンを含有すること、該非金属層と該金属層との間に存在する境界が、最大35μmのR値および最大5μmのR値の粗さを示すこと、ならびに該金属層が、少なくとも5N/mmの接着強度、および該層状複合物の表面にわたって分布する6つの異なる測定値点における接着強度の、相加平均の最大25%の標準偏差を示すことを特徴とする、物品。
【請求項7】
層状複合物を有する物品であって、該層状複合物は、第一の非金属層、および該第一の非金属層上に適用された第二の金属層を示し、該物品は、該第一の非金属層が、少なくとも1種の繊維強化されたポリマー、特に、ガラス繊維で強化されたポリマーを含有すること、該繊維の直径が、10μmより大きいこと、該非金属層と金属層との間に存在する境界が、最大10μmのR値の粗さを有すること、ならびに該金属層が、少なくとも12N/mmの接着強度と、該層状複合物の表面にわたって分布する6つの異なる測定値点における接着強度の、相加平均の最大25%の標準偏差とを示すことを特徴とする、物品。
【請求項8】
前記非金属層と前記金属層との間に存在する前記境界が、最大100μmのR値の粗さを示すことを特徴とする、請求項7に記載の物品。
【請求項9】
前記第一の非金属層が、前記物品の表面であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の物品。
【請求項10】
前記第一の非金属層が、前記物品の表面ではないことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の物品。
【請求項11】
前記接着強度の標準偏差が、前記相加平均の最大15%、特に、最大10%となることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の物品。
【請求項12】
前記ポリマーが、ポリアミド、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオキシメチレン、ポリホルムアルデヒド、ポリアセタール、ポリウレタン、ポリエーテルイミド、ポリフェニルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリールアミド、ポリカーボネートおよびポリイミドからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の物品。
【請求項13】
前記金属層が、外部電流なしで析出した金属層、金属合金層または金属分散層であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の物品。
【請求項14】
前記外部電流なしで析出した金属層が、銅層、ニッケル層、または金層であることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の物品。
【請求項15】
前記外部電流なしで析出した金属分散層が、包埋された非金属粒子を有する銅層、ニッケル層、または金層であることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載の物品。
【請求項16】
前記非金属粒子が、1,500HVより大きい硬度を示し、そして炭化ケイ素、コランダム、ダイヤモンドおよび炭化ホウ素からなる群より選択されることを特徴とする、請求項15に記載の物品。
【請求項17】
前記非金属粒子が、摩擦低減特性を示し、そして該非金属粒子は、ポリテトラフルオロエチレン、硫化モリブデン、立方晶窒化ホウ素および硫化スズからなる群より選択されることを特徴とする、請求項15または16に記載の物品。
【請求項18】
前記外部電流なしで析出した金属層の上に、アルミニウム層、チタン層、または合金層が適用されており、該アルミニウム層、チタン層または合金層の表面が、アノード酸化またはセラミック処理されていることを特徴とする、請求項1〜17のいずれか1項に記載の物品。
【請求項19】
1層または数層の金属層がまた、前記外部電流なしで析出した金属層と、前記アルミニウム層、チタン層またはこれらの合金の層との間に配置されていることを特徴とする、請求項18に記載の物品。
【請求項20】
前記物品の表面が、アルミニウム、チタン、またはこれらの合金の酸化物セラミック層であり、該層が、外来イオンの包埋によって黒色に着色されていることを特徴とする、請求項18または19に記載の物品。
【請求項21】
請求項1に記載の物品の製造のためのプロセスであって:
i.前記非金属層の表面を化学的には前処理せずに、前記金属層を適用する工程;
ii.該非金属層の表面を、第一の工程において、ブラスチング剤によって微細構造化する工程;
iii.引き続いて、外部電流なしでの金属析出によって、該金属層を適用する工程、
を包含する、方法。
【請求項22】
シート製品加工産業(フィルム、紙、布、印刷)のためのローラ、ターボ分子ポンプの構造部品(圧縮器ステージのためのリング)、家庭用品(シチュー鍋、蓋)のためのハンドル、航空産業のための構成要素(ハンドル、手すり)および宇宙産業のための構成要素(サンセール)、電子工学産業のための構造部品(コンデンサ、音響場コンデンサ、音響ライダー、マイクロ波中空コア導体、アンテナ、アンテナハウジング)、サイクロンの可動構造部品のための構造部品、風向変化器、自動車両産業のための、機械応力に供される構造部品、熱応力に供される構造部品、および/もしくは化学応力に供される構造部品(自動車両のためのブレーキピストン)、または射出成型産業のための鋳型もしくは構成要素としての、請求項1〜20のいずれか1項に記載の物品の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−523545(P2006−523545A)
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500365(P2006−500365)
【出願日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【国際出願番号】PCT/IB2004/050459
【国際公開番号】WO2004/092256
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(503134778)アーハーツェー オーバーフレッヒェンテヒニーク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフト ウント コンパニー オッフェネ ハンデルスゲゼルシャフト (6)
【Fターム(参考)】