説明

層部材を有する剪断バルブ

第1の剪断バルブ部材(100)と、第2の剪断バルブ部材(300)と、前記第1の剪断バルブ部材(100)と前記第2の剪断バルブ部材(300)との間に配置された層部材(200)とを備えた剪断バルブ(10)であって、前記層部材(200)が、前記第1及び第2の剪断バルブ部材(100,300)が互いに対して運動した際に該第1の剪断バルブ部材(100)に対して固定された空間的関係を有するよう構成されている、剪断バルブ(10)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剪断バルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
流体システムでは、流体装置を切換可能な状態で結合させるために剪断バルブが配設される。
【0003】
高性能液体クロマトグラフィ−HPLC−システムでは、流体は通常は、制御された流量(例えばμl/min〜ml/minの範囲)で、及び高圧(例えば100〜2000bar及び更なる高圧)で、供給されなければならない。
【0004】
流体(移動相とも称す)は、分離装置(移動相内に導入されるサンプルの様々な化合物を分離させることができる材料を含む固定相とも称す)に向かって高圧流体供給装置により注入することが可能である。かかる材料(通常はシリカゲルから構成することが可能な所謂ビード)は、分離装置のカラム管内に充填することが可能であり、該分離装置は、更なる要素(例えば検出器及び分留収集器)に接続することが可能である。該システム内にサンプルを挿入するために、剪断バルブによって、固定相から流体駆動装置の結合が解除される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
HPLCシステム内が高圧であること、及びHPLC測定値の精度及び繰り返し精度に対する要求が高いことに起因して、剪断バルブは、卓越した長期間のシール特性を有することが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、改善された剪断バルブを提供することにある。該目的は、独立形式の請求項によって解決される。更なる実施形態は、従属形式の請求項によって示されている。
【0007】
本発明の実施形態によれば、第1の流体装置と第2の流体装置との間で切り替え可能な流体接続を提供することができる剪断バルブが提供される。該剪断バルブは、第1の剪断バルブ部材、第2の剪断バルブ部材、及び該第1の剪断バルブ部材と該第2の剪断バルブ部材との間に配置された層部材を備えており、該層部材又は要素は、前記第1及び第2の剪断バルブ部材が互いに対して運動した際に該第1の剪断バルブ部材に対して固定された空間的関係を有するよう構成されている。該層部材は、本書では、前記第2の剪断バルブ部材の第2の表面に当接する運動可能な第1の表面を含む。
【0008】
一実施形態では、前記第2の剪断バルブ部材の前記第2の表面は、前記層部材の前記第1の表面と比較して硬いものとなるよう実施される。該層部材は、該バルブのシールを提供するために可撓性を有する(例えば変位可能及び/又は圧縮可能な)柔らかい材料からなるものとなるよう選定される。
【0009】
高圧(例えば100〜2000barの範囲内(例えば600bar))で流体を切り換えることを可能にするために、前記剪断バルブ部材は共に高い機械的な力又は負荷で押圧される。しかし、それら表面間の高い機械的圧力は、摩耗効果(例えば、柔らかい表面における摩耗又は擦り傷)をもたらし得るものである。かかる摩耗効果は、第2の表面の表面構造(バルブの剪断運動中に頻繁に横切る溝または穴等)に対向する領域で特に発生し得る。その1つの理由は、かかる表面構造を横切る場合に、層部材の柔らかい材料が機械的な高い圧力によって部分的にかかる表面構造内へと押圧されることにある。該表面構造は、該第2の表面の硬さが故に、かなり鋭い刃先を有し得るものであるため、これが横切る層材料は、時が経つにつれて損傷を受けることになり得る。
【0010】
かかる摩耗効果を低減させるために、本実施形態によれば、第2の剪断バルブ部材の前記構造は、小さな外形を有し又は剪断運動に対する傾斜角を有するよう選定される。更に、1つ又は複数のものと結合するテーパー付き端部を有する第2の剪断バルブ部材の流体経路が配設され、該流体経路の深さ及び/又は幅は、該流体経路の内端からその自由端へと連続的に小さくなることが可能である。更に、前記傾斜角を小さく(例えば、45°未満、25°未満、又は10°未満に)維持することにより、一層大きな角度(例えば、傾斜角90°)の場合と比較して前記流体経路の刃先効果を小さく維持することが可能である。
【0011】
更なる実施形態では、両剪断表面は、擦り傷及び摩耗に対して一層高い硬さを有するものとされ、この場合、少なくとも一方の剪断表面は、剪断バルブ運動に応じて変形可能なものとなる。該変形可能な第1の表面に対する機械的なバックアップを提供するために、該表面の材料に対して柔らかい(第1の)材料の第1の層が、該第1の表面の背後に配置される。ここで、該第1の層は、(前記第1及び第2の表面が互いに対して運動している際に生じる)前記第1の表面(の特定部分)における機械的な負荷の変動に応じて、少なくとも部分的に変位可能及び/又は圧縮可能なものである。「変位可能」とは、材料の特定部分に圧力が加えられた結果として凹み又は圧痕が生じる(この場合、該材料の一部は前記特定部分の隣接領域へと「流れ込む」ことが可能である)ことを意味しており、「圧縮可能」とは、材料の前記特定部分に圧力が加えられた結果として該特定部分における該材料の体積が小さくなる圧痕が生じることを意味している。
【0012】
硬度とは、材料が一層柔らかい材料を貫通することができる能力を一般に称するものである。硬い材料からなる物体は、一層柔らかい材料からなる物体に擦り傷をつけるものとなる。鉱物材料の引っかき硬度は、いわゆる鉱物硬度のモーススケールに従って指定されることが多い。モーススケールは、通常は、1(タルク)〜10(ダイヤモンド)の範囲をとる。好適には、第1の表面の材料は、モーススケールでは、少なくとも硬度7(好適には8又は9)の硬度を有する。
【0013】
プラスチック材料の硬度は、いわゆるショアスケール(一層硬いプラスチックにはショアDスケール)に従って指定することが可能である。例えば、第1の層の材料は、ショアDスケールによれば、硬度50〜100、好適には85〜95、例えば90を示すものとなる。
【0014】
硬い材料の2つの表面を配設することにより、機械的な大きな力を加えて両材料を互いに押圧することが可能となる。第1の表面が、柔らかいバックアップ用の第1の層に起因する変形を可能とするため、液体クロマトグラフィで使用される際に流体が高圧でバルブポートに供給される場合であっても、バルブのシールが確実となる。両表面に硬い材料を配設する結果として、バルブで頻繁に用いられるような硬い表面と柔らかい表面との間の摩擦抵抗と比較して、剪断運動の摩擦抵抗が大幅に低減される。更に、剪断バルブ部材の摩耗が大幅に低減される。これは、特に、第1の層の表面が剪断運動に関わらないからであり、この層は摩耗による影響を受けない。
【0015】
一実施形態では、互いに結合された上述したような第1の層及び第2の層からなる層要素が配設され、この場合には、該第1の層が圧力変動に応じて該第2の層を機械的にバックアップし、これにより、前記第1の表面に加えられた機械的負荷又は機械的負荷変動に起因する前記第1の層の圧痕が前記第2の層によって吸収されるようになっている。更に、該第2の層の材料は、該第2の層の材料と比較して一層硬いものとなるよう選定される。
【0016】
好適には、第2の層は、実質的に圧縮可能でも変位可能でもない。それにもかかわらず、該第2の層は、曲げられ又は偏位された第1の表面に加えられた圧力又は圧力変動に対処するために配設される。この場合、該第2の層は、該層の厚さがその断面全体にわたって実質的に不変に維持されるように、その形を変える。換言すれば、第1の表面に加えられた圧痕は、第2の層の反対側の表面に圧痕又は凸部を生じさせるものとなる。これとは異なり、第1の層は、その一方の表面に加えられた圧痕によって少なくとも圧縮及び/又は偏位が生じて、該層の厚さが断面積全体の少なくとも一部にわたって小さくなるように、変形することが可能なものである。
【0017】
一実施形態では、第1の層の厚さは、10〜300μmの範囲内(例えば100μm)とすることが可能である。第2の層の厚さは、5〜200μmの範囲内(例えば50μm)とすることが可能である。
【0018】
一実施形態では、第1の層の第1の材料は、ポリマー材料からなることが可能であり、この場合、該ポリマー材料は好適にはポリイミド又はPEEKを含むものとなる。このため、ポリマーは、反復する構造単位から構成される大きな分子量を有する分子からなる物質とみなされる。
【0019】
一実施形態では、第2の層の第2の材料は、金属(例えば、ばね綱または金属様材料)から作成することが可能である。一実施形態では、第1の表面を形成する層表面は、硬い物質で硬化され又は被覆され、例えば、ダイヤモンド様カーボン-DLC-、ダイヤモンド薄膜、その他のCVDまたはPVDにより生成された薄膜で被覆される。ここで、第2の層は、表面が硬化されたばね綱として又はDLCが被覆された鋼板として実施することが可能である。
【0020】
一実施形態では、第2の層は、第1の層に対する被覆(例えば、加硫処理され、成形され、又はプラズマ重合された薄膜)として直接実施することが可能である。
【0021】
一実施形態では、層要素は、第1の剪断バルブ部材に対して(例えば、ドライバピン及びドライバピン穴によって)取り外し可能な状態で取り付けられる。ここで、該層要素は、1つ又は複数のピン穴を含むことが可能であり、第1の剪断バルブ部材は、該ピン穴に適合する対応するピンを含むことが可能である。これにより、例えばメンテナンス時に、摩耗した層部材を交換用の層部材に容易に交換することが可能となる。
【0022】
代替的には、層要素は、第1の剪断バルブ部材の一体的な部分として配設される。
【0023】
一実施形態では、第1の剪断バルブ部材は、第1のポート及び第2のポートを含み、第2の剪断バルブ部材は、第1の流体経路を含み、該第1の流体経路は、該第1及び第2の剪断バルブ部材を互いに特定の位置へ移動させることにより前記第1のポートと前記第2のポートとの間で切換可能な流体経路を提供するよう構成されたものである。該層部材は、前記第1の剪断バルブ部材のポートを前記第2の剪断バルブ部材の前記第1の流体経路に連結する1つ又は複数のポートを含む。
【0024】
一実施形態では、前記層部材は、更なる流路(例えば流量制限)を実施するための微細構造を有する。一実施形態では、かかる微細構造は、(例えば、所定サイズのキャビティの充填を用いることによる所定体積のサンプルの測定のための固定ループ注入を可能にする)バルブ内部キャビティを形成することが可能である。
【0025】
一実施形態では、前記微細構造は、前記層要素の前記第1及び/又は第2の層内の溝及び/又は穴として実施される。
【0026】
一実施形態では、前記第1の剪断バルブ部材及び前記層要素は、前記第2の剪断バルブ部材に対して回転運動可能になっており、この場合、前記第1のポートと前記第2のポートとの間の流体接続は、前記第1の剪断バルブ部材を前記層要素と共に前記第2の剪断バルブ部材に対して所定位置まで回転させることにより確立され、この場合、前記ポートは両方とも前記流体経路と結合し、また、第1の剪断バルブ部材を所定位置へと回転させることにより接続が解除され、この場合、前記ポートの少なくとも一方は前記流体経路と結合しない。
【0027】
一実施形態では、前記剪断バルブは、移動相に含まれるサンプル流体の化合物を分離させるための固定相を含む分離装置と、移動相を駆動して前記分離装置内を通過させるよう構成された流体供給装置とを備えている、高性能液体クロマトグラフィシステムの一部をなす。この場合には、剪断バルブは、前記流体駆動装置と前記分離装置との間に連結されて、該流体駆動装置と該分離装置との間の切り替え可能な流体接続を提供する。
【0028】
本発明の実施形態は、1つ又は2つ以上の適当なソフトウェアプログラムにより部分的に又は全体的に実施し又は支援することが可能である。該ソフトウェアプログラムは、あらゆる種類のデータ記憶媒体に格納し又は該データ記憶媒体から提供することが可能であり、及びあらゆる適当なデータ処理装置において又は該データ処理装置によって実行することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1の剪断バルブ部材、第2の剪断バルブ部材、及び該第1及び第2の剪断バルブ部材間に配置された層部材を有する剪断バルブを概略的に示している。
【図2】剪断バルブの長手方向の断面を示しており、剪断バルブの典型的な層構造が概略的に示されている。
【図3】第2の剪断バルブ部材の流体経路の典型的な外形を示している。
【図4】液体分離システムのブロック図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施形態の更なる目的及びそれに付随する利点の多くは、以下の実施形態の一層詳細な説明を添付図面に関連して参照することにより、容易に評価され及び一層良好に理解されよう。実質的に又は機能的に等しい又は類似する特徴は、同じ符号で称することとする。
【0031】
図1を参照すると、剪断バルブ10の構成要素が概略的に示されており、該剪断バルブ10は、第1の剪断バルブ部材100、層部材200、及び第2の剪断バルブ部材300からなり、その各々は、別個の円形のディスクとして示されている。層部材200の第1の表面S1は、第2の剪断バルブ部材300の第2の表面に隣接している。更に、層部材200の反対側の第3の表面は、第1の剪断バルブ部材100の第4の表面に隣接している。層部材200及び第1の剪断バルブ部材100は、前記第3の表面及び前記第4の表面が互いに固定して当接するように、互いに固定された空間的関係を有するよう構成される。これとは異なり、第2の剪断バルブ部材300は、第1の表面S1及び第2の表面S2が互いに当接した状態で運動することができるように、それら剪断バルブ部材の共通の中心軸を中心として回転運動可能となるよう構成される。
【0032】
第2の剪断バルブ部材300又は回転子は、全ての表面に対して垂直な中心軸を中心として回動することができる。剪断バルブは、例えば、4つのポートと、第1の剪断バルブ部材又は固定子部材100に関する回転子部材300の回転位置に応じて特定のポートを流体的に連結する2つの切換可能な経路とを含む。固定子部材100は、第1のポート11、第2のポート12、第3のポート13、及び第4のポート14を含む。該ポート11〜14は、固定子部材100の第3の表面に周方向に(例えば、等しい角距離90°で)配置された開口を有する貫通孔からなる。回転子部材300は、第2の剪断バルブ部材300の第2の表面内に第1の溝15及び第2の溝16としてそれぞれ実施された第1の切換可能な流体経路及び第2の切換可能な流体経路を含む。層部材200は、ポート11〜14と同様に構成されたチャネル又は層貫通孔211〜214を含み、固定子部材の貫通孔11〜14の各々が対応する層貫通孔211〜214に流体的に連結するようになっている。
【0033】
ここで図2を参照すると、剪断バルブ10の典型的な層構造が一層詳細に示されている。第1及び第2の層201,202からなる層部材は、例えばピン穴及びそれに対応するピンドライバによって固定子部材に取り外し可能な状態で取り付けられたもの又は固定子部材の一体的な部分を形成するものとして実施することができる。
【0034】
図2は更に、回転子部材300が回転子ヘッド301を含むことを示している。第1の流体経路15は、第2の表面S2内の溝として実施されて示されている。
【0035】
典型的には、第1及び第2の層201,202内の貫通孔として実施された2つのチャネル211,212は、所定の位置を有するよう図示されており、この場合には、第1のポート11及び第2のポート12が流体的に接続されるように両チャネルが第1の流体経路15と連結している。更に、微細構造215は、例えば第2のチャネル212と結合するよう構成することが可能である。かかる微細構造は、更なる流路(例えば流量制限)を実施するための、第1及び/又は第2の層201,202の任意の表面内の溝として実施することが可能である。かかる微細構造のもう1つのアプローチは、例えば固定サンプルループ注入を実施するための、1つ又は複数のバルブ内部キャビティを有することである。
【0036】
高圧(例えば100〜2000barの範囲内(例えば600bar))の流体を切り換えることを可能にするために、剪断バルブ部材は共に高い機械的な力又は負荷で押圧される。しかし、それら表面間の高い機械的圧力は、摩耗効果(例えば、第1の表面の摩耗又は擦り傷、特に第2の表面の表面構造(溝又は穴等)に対向する領域における摩耗又は擦り傷)をもたらし得るものである。
【0037】
このため、一実施形態では、運動可能な当接表面S1,S2は両方とも硬いものとなるよう選定される。安全なシールを確実にするために、該表面の少なくとも一方は、剪断バルブ運動に応じて変形可能なものとする。このため、バルブ運動に起因する機械的圧力の変動によって引き起こされる第2の層202の変形又は偏位を第1の層201が機械的にバックアップするように、第1の層201及び第2の層202が共に結合される。
【0038】
一実施形態では、回転子又は少なくとも回転子ヘッド301が硬質材料(例えば、セラミック、硬化鋼、又はその他の硬質被膜で被覆された材料)から作成される。第1の層は、回転子ヘッドと比べて柔らかいものとなるよう選定される。一実施形態では、第1の層201は、プラスチック材料(例えば、ポリイミド又はPEEK等のポリマー(ポリマー薄膜))からなる。第2の層202は、硬質材料からなり、好適には、弾性(ばね荷重式)シールを提供するために、かなり薄くなるように(例えば、高い可撓性を提供するよう50μmに)選定され、換言すれば、該第2の層は、機械的な力の下で、該層の体積も幅も変化させることなく、その形状を弾性的に変化させることが可能となるように、可撓性を有するものである。第2の層202は、表面硬化ばね綱又はDLC被覆鋼板として実施することが可能である。
【0039】
上述した実施形態は、両表面S1,S2間に高い機械的圧力を与えるために剪断バルブ部材に対して高い機械的な力を加えることを可能にし、これにより、硬い表面と柔らかい表面との間の機械的な結合と比較して第1及び第2の表面間の摩擦抵抗が大幅に低減される。更に、剪断表面が摩耗又は擦り傷に対して高い耐性を有するため、剪断バルブ部材の摩耗が大幅に低減される。必要とされる可撓性は柔らかい第1の層により提供され、この場合、該層の表面は、剪断運動には関与せず、このため、大きな摩耗効果は示さない。
【0040】
図3は、層部材と円滑に相互作用するよう形成された第1の流体経路の外形の一例を示している。図3は更に、第1の流体経路15の典型的な深さ形状を示している。第1の流体経路15は、例えば、2つの端部151,152を含み、その各々は、その自由端に向かってテーパーがつけられ、その中間部分は、前記該2つの端部151,152間で一定の断面形状を有することが可能であり、例えば、第2の表面S2内の半円形の溝として実施することが可能である。端部151,152は、それぞれ、第1の流体経路15の自由端に向かってテーパーがつけられた円錐状の形状を示している。
【0041】
第1の自由端点Aと第1の内側端点Bとの間で深さが最大深さTまで増大する。例えば、深さ及び幅が両方とも、第1の自由端点Aと第1の内側端点Bとの間で実質的に線形的に大きくなり、及び第2の内側端点Cと第2の自由端点Dとの間で小さくなる。第1の内側端点Bと第2の内側端点Cとの間では深さ及び幅は最大深さT及び最大幅Wで一定のままとなる。
【0042】
最大深さDは、0.02〜1mmの範囲内(例えば0.2mm)とすることが可能である。最大幅Wは、0.02〜1mmの範囲内(例えば0.4mm)とすることが可能である。溝の全長は、1〜20mmの範囲内(例えば8mm)とすることが可能であり、端部の長さLは例えば1mmとなる。
【0043】
図3の実施形態によれば、流体経路15は、表面S1,S2に対して一定の断面角を示し、該断面角は、テーパーのついた部分の長さL及び深さTによって決まる。長さLが長くなると傾斜角が小さくなる。好適には、断面角γは、90°よりも遙かに小さくなるように(例えば、10°又は10°未満に)選定される。断面角γを小さくすることにより、運動する表面間の高い圧力下での剪断運動に起因する表面材料への損傷を大幅に低減させることができるという利点が提供される。
【0044】
図4は、液体分離システム400の典型的なブロック図を示している。ポンプ40は、移動相を、サンプル導入装置45を介して、固定相を含む分離装置50(クロマトグラフィカラム等)へ向かって進行させる。該サンプル導入装置45は、サンプルループと上述したような剪断バルブ10を含む流体切換装置とを含むことが可能であり、前記ポンプ40と前記分離装置50との間の流体経路からの前記サンプルループの切り離し、前記サンプルループへのサンプル流体の引き込み、及び挿入されたサンプル流体を分離装置50へ進行させるための流体経路へのサンプルループの結合を、切り換えることが可能なものである。分離装置50の固定相は、サンプル流体の化合物を分離させるよう構成されている。検出器51は、サンプル流体の分離された化合物を検出するために配設されている。フラクションコレクタは、サンプル流体の分離された化合物を収集するために配設することができます。
【0045】
かかる液体分離システム400の更なる細部が、アジレント1200シリーズ Rapid Resolution LC System 又は アジレント 1100 HPLC シリーズに関して開示されており、その何れも、本出願人であるアジレント・テクノロジーズ・インクによりwww.agilent.com において提供されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
剪断バルブ(10)であって、
第1の剪断バルブ部材(100)と、
第2の剪断バルブ部材(300)と、
前記第1の剪断バルブ部材(100)と前記第2の剪断バルブ部材(300)との間に配置された層部材(200)であって、前記第1及び第2の剪断バルブ部材(100,300)が互いに対して移動する際に該第1の剪断バルブ部材(100)に対して固定された空間的関係を有するよう構成されている、層部材(200)と
を備えている、剪断バルブ(10)。
【請求項2】
前記層部材(200)が第1の表面(S1)を有し、前記第2の剪断バルブ部材(300)が第2の表面(S2)を有し、前記第1の表面(S1)及び前記第2の表面(S2)が、互いに当接した状態で運動できるよう構成され、前記層部材(200)が、前記第1及び第2の剪断バルブ部材(100,300)の互いに対する運動に起因する前記第1の表面(S1)の変形を吸収するよう構成された第1の層(201)を含む、請求項1に記載の剪断バルブ(10)。
【請求項3】
前記第1の層が、前記層部材(200)の前記第1の表面(S1)と第3の界面(S3)との間に配置され、前記第1の剪断バルブ部材(100)の第4の界面(S4)に固定されて当接する、請求項2に記載の剪断バルブ(10)。
【請求項4】
前記第1の層(201)が、前記第1の表面(S1)の変形に応じて、変位可能な材料、圧縮可能な材料、及び変位可能かつ圧縮可能な材料のうちの1つである第1の材料からなる、請求項2または請求項3に記載の剪断バルブ(10)。
【請求項5】
前記第1の材料が、プラスチック材料からなり、好適にはポリマー材料からなり、より好適にはポリイミド材料またはPEEK材料からなる、請求項4に記載の剪断バルブ(10)。
【請求項6】
前記第1の表面(S1)及び前記第2の表面(S2)の各々が、例えばショアDスケールによる硬度90の第1の層(201)の第1の材料と比べて、例えばモーススケールによる少なくとも硬度7の、擦り傷又は摩耗に対して高い耐性を有する硬い材料からなる、請求項2ないし請求項5の何れか一項に記載の剪断バルブ(10)。
【請求項7】
前記第1の表面(S1)及び前記第2の表面(S2)の少なくとも一方が、セラミック、ダイヤモンド様カーボン、ダイヤモンド薄膜、ステンレス鋼のうちの1つからなる、請求項2ないし請求項6の何れか一項に記載の剪断バルブ(10)。
【請求項8】
前記層部材(200)が第2の層(202)を含み、該第2の層の一方の表面が第1の表面(S1)を形成し、該第2の層の反対側の表面が前記第1の層(201)に取り付けられる、請求項2ないし請求項7の何れか一項に記載の剪断バルブ(10)。
【請求項9】
前記層部材(200)が、好適にはドライバピン及びドライバピン穴によって、前記第1の剪断バルブ部材(100)に対して取り外し可能な状態で取り付けられる、請求項1ないし請求項8の何れか一項に記載の剪断バルブ(10)。
【請求項10】
前記第1の剪断バルブ部材(100)が、第1のポート(11)及び第2のポートを含み、前記層部材が、前記第1のポート(11)及び前記第2のポート(12)にそれぞれ連結する第1のチャネル(211)及び第2のチャネル(212)を含み、前記第2の剪断バルブ部材(300)が流体経路(15)を含み、該流体経路(15)が、前記第1及び第2の剪断バルブ部材(100,300)を対応する位置へと互いに対して移動させることにより、前記第1のチャネル及び前記第2のチャネルを介して前記第1のポート(11)及び前記第2のポート(12)を切換可能な状態で連結するよう構成されている、請求項1ないし請求項9の何れか一項に記載の剪断バルブ(10)。
【請求項11】
前記第1の剪断バルブ部材(100)が、前記第2の剪断バルブ部材(300)に対して回転運動可能となっている、請求項1ないし請求項10の何れか一項に記載の剪断バルブ(10)。
【請求項12】
高性能液体クロマトグラフィシステム(350)であって、
請求項1ないし請求項11の何れか一項に記載の剪断バルブ(10)と、
移動相に含まれるサンプル流体の化合物を分離させるための固定層を含む分離装置(50)と、
前記分離装置内に移動相を通過させるよう構成されたポンプ(40)とを備えており、
該ポンプ(40)と前記分離装置(50)との間で切換可能な流体接続を提供するよう前記剪断バルブ(10)が前記流体駆動装置(40)と前記分離装置(50)との間に連結される、
高性能液体クロマトグラフィシステム(350)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−531960(P2010−531960A)
【公表日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513671(P2010−513671)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【国際出願番号】PCT/EP2007/056737
【国際公開番号】WO2009/003521
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
【Fターム(参考)】